文語訳舊約聖書(1953年版)(振り仮名付き)

章: 1  2  3  4

ヨナ書

  第1章

1:1 ヱホバのことばアミタイのヨナにのぞめりいはく

1:2 たちてかのおほいなるまちニネベにきこれをよばはりめよ そはそのあくわがまへのぼきたればなりと

1:3 しかるにヨナはヱホバのかほをさけてタルシシへのがれんとたちてヨツパにくだゆきけるがをりしもタルシシへふねあひければその價値あたひあたへヱホバのかほをさけてともにタルシシへゆかんとてそのふねれり

1:4 ときにヱホバ大風おほかぜうみうへおこしたまひてはげしき?風はやてうみにありければふねほとんどやぶれんとせり

1:5 かかりしかば船夫ふなびとおそれておのおのおのれのかみまたふねかろくせんとてそのうちなる載荷つみにうみなげすてたり しかるにヨナはふねおくくだりゐてふし酣睡うまいせり

1:6 船長ふなをさきたりてかれいひけるはなんぢなんぞかく酣睡うまいするやおきなんぢかみべあるひはかれわれらを眷顧かへりみ淪亡ほろびざらしめんと

1:7 かくて人衆ひとびとたがひいひけるはこのわざはひ我儕われらにのぞめるはたれゆゑなるかをしらんがため去來いざくじひかんと やがてくじをひきしにくじヨナにあたりければ

1:8 みなかれいひけるはこの災禍わざはひなにゆゑにわれらにのぞめるかげよ なんぢげふなになるや 何處いづこよりきたれるや なんぢくに何處いづこぞや 何處いづこたみなるや

1:9 ヨナ彼等かれらにいひけるはわれはヘブルびとにしてうみくがとをつくりたまひしてんかみヱホバをおそるるものなり

1:10 ここおい船夫ふなびとはなはだしくおそれてかれいひけるはなんぢなんぞそのことをなせしやと その人々ひとびとかれがヱホバのかほをさけてのがれしなるをれり はさきにヨナ彼等かれらつげたればなり

1:11 つひ船夫ふなびとかれにいひけるは我儕われらのためにうみしづかにせんにはなんぢ如何いかがなすべきや うみいよいよはなはだしく狂蕩あれたればなり

1:12 ヨナ彼等かれらいひけるはわれをりてうみなげいれよ さらばうみ汝等なんぢらためしづかにならん そはこのおほいなる?風はやて汝等なんぢらにのぞめるはわがゆゑなるをればなり

1:13 されど船夫ふなびとくがこぎもどさんとつとめたりしがつひにあたはざりき うみかれらにむかひていよいよはげしくあれたればなり

1:14 ここにおいて彼等かれらヱホバによばはりていひけるはヱホバよこひねがはくは此人このひといのちため我儕われら滅亡ほろぼしたまふなかまたつみなきのをわれらにたまふなかれ そはヱホバよなんぢ聖意みこころにかなふところをたまへるなればなりと

1:15 すなわちヨナをりてうみなげいれたり しかしてうみのあるることやみぬ

1:16 かかりしかばその人々ひとびとおほいにヱホバをおそれヱホバに犧牲いけにへささ誓願せいぐわんたてたり

1:17 さてヱホバすでにおほいなるうをそなへおきてヨナをのましめたまへり ヨナは三日三夜みつかみようをはらなかにありき

  第2章

2:1 ヨナうをはらなかよりそのかみヱホバに祈祷いのり

2:2 いひけるは われ患難なやみうちよりヱホバをびしにかれわれこたへたまへり われ陰府よみはらなかよりよばはりしになんぢわがこゑききたまへり

2:3 なんぢわれふちのうちうみ中心もなかなげいれたまひてうみみづわれめぐなんぢ波濤なみ巨浪おほなみすべてわがうへにながる

2:4 われいひけるはわれなんぢのまへよりおはれたれどもまたなんぢ聖殿きよきみやのぞまん

2:5 みづわれをめぐりて たましひにもおよばんとしふちわれをとりかこみうみくさわがかうべまとへり

2:6 われやま根基ねもとにまでくだれり 關木くわんぬきいつもわがうしろにありき しかるにわがかみヱホバよなんぢはわがいのちふかあなよりすくひあげたまへり

2:7 わが靈魂たましひうちに弱りしときわれヱホバをおもへり しかしてわがいのりなんぢにいたりなんぢの聖殿きよきみやにおよべり

2:8 いつはりなるむなしものにつかふるものは自己おのれめぐみたるもの

2:9 されどわれ感謝かんしやこゑをもてなんぢ獻祭ささげものをなし またわが誓願せいぐわんをなんぢにはたさん すくひはヱホバよりいづるなりと

2:10 ヱホバそのうをめいじたまひければヨナをくがはきいだせり

  第3章

3:1 ヱホバのことばふたたびヨナにのぞめり いは

3:2 たちてかのおほいなるまちニネベにきわがなんぢめいずるところをのべ

3:3 ヨナすなはちヱホバのことばしたがひてたちてニネベにゆけり ニネベははなはおほいなるまちにしてこれをめぐるに三日みつかほどなり

3:4 ヨナそのまちいりはじめ一日路いちにちぢゆきつつよばはりいひけるは四十にちばニネベは滅亡ほろびさるべし

3:5 かかりしかばニネベの人々ひとびとかみしん斷食だんじきおほいなるものよりちひさものいたるまでみなあさぬのたり

3:6 このことニネベのわうきこえければかれくらゐより朝服てうふく麻布あさぬのまとふてはひなかせり

3:7 またわう大臣だいじんとともにめいをくだしてニネベぢゆうふれしめていはひとけものうしひつじもともになにをもあじはふべからず またものをくらひみづのむべからず

3:8 ひとけもの麻布あさぬのをまとひ只管ひたすらかみよばはりかつおのおのそのあしみちおよびその邪惡よこしまはなるべし

3:9 あるひかみその聖旨みこころをかへてそのはげしきいかりやめてわれらを滅亡ほろぼさざらん たれかそのしからざるをしらんや

3:10 かみかれらのすところをかんがみそのあしきみちはなるるをそなはし彼等かれらになさんといひところ災禍わざはひくいこれをなしたまはざりき

  第4章

4:1 ヨナこのことはなはあししとしてはげしいか

4:2 ヱホバにいのりていひけるはヱホバよわれなほ本國くににありしときかくあらんといひしにあらずや さればこそさきにタルシシへのがれたるなれ われなんぢは矜恤めぐみあるかみ憐憫あはれみあり いかることおそ慈悲じひふかくして災禍わざはひくいたまふものなりとしればなり

4:3 ヱホバよねがはくはいまわがいのちとりたまへ いくることよりもしぬるかたわれよければなり

4:4 ヱホバいひたまひけるはなんぢいかこといかでよろしからんや

4:5 ヨナはまちよりいでてそのひがしかたおのため其處そこひとつ小屋こやをしつらひそのかげしたしてまち如何いかなりくかを

4:6 ヱホバかみひさごそなへこれをして發生はえてヨナのうへおほはしめたり こはヨナのかうべため庇蔭かげをまうけてそのうれひなぐさめんがためなりき ヨナはこのひさごによりてはなはよろこべり

4:7 されどかみあくる夜明よあけむしをそなへてそのひさごをかませたまひければひさごかれたり

4:8 かくていでときかみあつ東風ひがしかぜそなたままたヨナのかうべてらしければかれよわりてこころうちしぬることをねがひていくることよりもしぬるかたわれ

4:9 かみまたヨナにいひたまひけるはひさごためなんぢのいかることいかでよろしからんや かれいひけるはわれいかりてしぬるともよろし

4:10 ヱホバいひたまひけるはなんぢらうをくはへず生育そだてざる一夜いちやしやうじて一夜いちやほろびしひさごをしめり

4:11 まして十二まんあまり右左みぎひだりわきまへざるもの許多あまた家畜けものとあるこのおほいなるまちニネベをわれをしまざらんや