文語訳舊約聖書(1953年版)(振り仮名付き)

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列王紀略上

  第8章

8:1 爰ここにソロモン、ヱホバの契約けいやくの櫃はこをダビデの城まち即すなはちシオンより舁かき上のぼらんとてイスラエルの長老としよりと諸すべての支派わかれの首かしらイスラエルの子孫ひとびとの家いへの長等きみたちをエルサレムにてソロモン王わうの所もとに召集よびあつむ

8:2 イスラエルの人ひと皆みなエタニムの月つき即すなはち七月ぐわつの節筵いはひに當あたりてソロモン王わうの所ところに集あつまれり

8:3 イスラエルの長老としより皆みな至いたり祭司さいし櫃はこを執とりあげて

8:4 ヱホバの櫃はこと集會あつまりの幕屋まくやと幕屋まくやにありし諸もろもろの聖きよき器うつはを舁かき上のぼれり即すなはち祭司さいしとレビの人びと之これを舁かきのぼれり

8:5 ソロモン王わうおよび其その許もとに集あつまれるイスラエルの會衆くわいしう皆みな彼かれと偕ともに櫃はこの前まへにありて羊ひつじと牛うしを献ささげたりしが其その數かず多おほくして書しるすことも數かぞふることも能あたはざりき

8:6 祭司さいしヱホバの契約けいやくの櫃はこを其その處ところに舁かきいれたり即すなはち家いへの神殿しんでんなる至し聖所せいじよの中うちのケルビムの翼つばさの下したに置おさめたり

8:7 ケルビムは翼つばさを櫃はこの所ところに舒のべ且かつケルビム上うへより櫃はこと其その棹さをを掩おほへり

8:8 杠さを長ながかりければ杠さをの末はしは神殿しんでんの前まへの聖所せいじよより見みえたり然しかれども外そとには見みえざりき其その杠さをは今日けふまで彼處かしこにあり

8:9 櫃はこの内うちには二ふたつの石いしの牌いたの外ほか何なにもあらざりき是これはイスラエルの子孫ひとびとのエジプトの地ちより出いでたる時ときヱホバの彼等かれらと契約けいやくを結むすびたまへる時ときにモーセがホレブにて其處そこに置おさめたる者ものなり

8:10 斯かくて祭司さいし聖所せいじよより出いでけるに雲くもヱホバの家いへに盈みちたれば

8:11 祭司さいしは雲くものために立たちて供事つかふること能あたはざりき其そはヱホバの榮光えいくわうヱホバの家いへに盈みちたればなり

8:12 是ここにおいてソロモンいひけるはヱホバは濃あつき雲くもの中うちに居ゐんといひたまへり

8:13 我われ誠まことに汝なんぢのために住すむべき家いへ永久とこしなへに居をるべき所ところを建たてたりと

8:14 王わう其その面かほを轉ふりむけてイスラエルの凡すべての會衆くわいしうを祝しゆくせり時ときにイスラエルの會衆くわいしうは皆みな立たちゐたり

8:15 彼かれ言いひけるはイスラエルの神かみヱホバは譽ほむべきかなヱホバは其その口くちをもて吾わが父ちちダビデに言いひ其その手てをもて之これを成なし遂とげたまへり

8:16 即すなはち我われは吾わが民たみイスラエルをエジプトより導みちびき出いだせし日ひより我わが名なを置おくべき家いへを建たてしめんためにイスラエルの諸もろもろの支派わかれの中うちより何いづれの城邑まちをも選えらみしことなし但ただダビデを選えらみてわが民たみイスラエルの上うへに立たたしめたりと言いひたまへり

8:17 夫それイスラエルの神かみヱホバの名なのために家いへを建たつることはわが父ちちダビデの心こころにありき

8:18 しかるにヱホバわが父ちちダビデにいひたまひけるはわが名なのために家いへを建たつること汝なんぢの心こころにあり汝なんぢの心こころに此事このことあるは善よし

8:19 然しかれども汝なんぢは其その家いへを建たつべからず汝なんぢの腰こしより出いづる汝なんぢの子こ其人そのひと吾わが名なのために家いへを建たつべしと

8:20 而しかしてヱホバ其その言いひたまひし言ことばを行おこなひたまへり即すなはち我われわが父ちちダビデに代かはりて立たちヱホバの言いひたまひし如ごとくイスラエルの位くらゐに坐ざしイスラエルの神かみヱホバの名なのために家いへを建たてたり

8:21 我われ又また其處そこにヱホバの契約けいやくを蔵をさめたる櫃はこのために一ひとつの所ところを設まうけたり即すなはち我儕われらの父祖せんぞをエジプトの地ちより導みちびき出いだしたまひし時ときに彼等かれらに爲なしたまひし者ものなりと

8:22 ソロモン、イスラエルの凡すべての會衆くわいしうの前まへにてヱホバの壇だんのまへに立たち其その手てを天てんに舒のべて

8:23 言いひけるはイスラエルの神かみヱホバよ上うへの天てんにも下したの地ちにも汝なんぢの如ごとき神かみなし汝なんぢは契約けいやくを持たもちたまひ心こころを全まつたうして汝なんぢのまへに歩あゆむところの汝なんぢの僕しもべ等らに恩惠めぐみを施ほどこしたまふ

8:24 汝なんぢは汝なんぢの僕しもべわが父ちちダビデに語いふたまへる所ところを持たもちたまへり汝なんぢは口くちをもて語いひ手てをもて成なし遂とげたまへること今日こんにちのごとし

8:25 イスラエルの神かみヱホバよ然されば汝なんぢが僕しもべわが父ちちダビデに語かたりて若もし汝なんぢの子孫しそん其その道みちを愼つつしみて汝なんぢがわが前まへに歩あゆめるごとくわが前まへに歩あゆまばイスラエルの位くらゐに坐ざする人ひとわがまへにて汝なんぢに缺かくること無なかるべしといひたまひし事ことをダビデのために持たもちたまへ

8:26 然さればイスラエルの神かみよ爾なんぢが僕しもべわが父ちちダビデに言いひたまへる爾なんぢの言ことばに效驗しるしあらしめたまへ

8:27 神かみ果はたして地ちの上うへに住すみたまふや視みよ天てんも諸もろもろの天てんの天てんも爾なんぢを容いるるに足たらず况まして我わが建たてたる此この家いへをや

8:28 然しかれどもわが神かみヱホバよ僕しもべの祈祷いのりと懇願ねがひを顧かへりみて其その號呼よばはりと僕しもべが今日こんにち爾なんぢのまへに祈いのる祈祷いのりを聽ききたまへ

8:29 願ねがはくは爾なんぢの目めを夜よる晝ひる此この家いへに即すなはち爾なんぢが我わが名なは彼處そこに在あるべしといひたまへる處ところに向むかひて開ひらきたまへ願ねがはくは僕しもべの此處このところに向むかひて祈いのらん祈祷いのりを聽ききたまへ

8:30 願ねがはくは僕しもべと爾なんぢの民たみイスラエルが此この處ところに向むかひて祈いのる時ときに爾なんぢ其その懇願ねがひを聽ききたまへ爾なんぢは爾なんぢの居處すみかなる天てんにおいて聽きき聽ききて赦ゆるしたまへ

8:31 若もし人ひと其その隣人となりびとに對むかひて犯をかせることありて其人そのひと誓ちかひをもて誓ちかふことを要もとめられんに來きたりて此この家いへにおいて爾なんぢの壇だんのまへに誓ちかひなば

8:32 爾なんぢ天てんにおいて聽ききて行おこなひ爾なんぢの僕しもべ等らを鞫さばき惡あしき者ものを罪つみして其その道みちを其その首かうべに歸きし義ただしき者ものを義ぎとして其その義ただしきに循したがひて之これに報むくいたまへ

8:33 若もし爾なんぢの民たみイスラエル爾なんぢに罪つみを犯をかしたるがために敵てきの前まへに敗やぶられんに爾なんぢに歸かへりて爾なんぢの名なを崇あがめ此この家いへにて爾なんぢに祈いのり願ねがひなば

8:34 爾なんぢ天てんにおいて聽きき爾なんぢの民たみイスラエルの罪つみを赦ゆるして彼等かれらを爾なんぢが其その父祖せんぞに與あたへし地ちに歸かへらしめたまへ

8:35 若もし彼等かれらが爾なんぢに罪つみを犯をかしたるが爲ために天てん閉とぢて雨あめ无なからんに彼等かれら若もし此處このところにむかひて祈いのり爾なんぢの名なを崇あがめ爾なんぢが彼等かれらを苦くるしめたまふときに其その罪つみを離はなれなば

8:36 爾なんぢ天てんにおいて聽きき爾なんぢの僕しもべ等ら爾なんぢの民たみイスラエルの罪つみを赦ゆるしたまへ爾なんぢ彼等かれらに其その歩あゆむべき善よき道みちを��をしへたまふ時ときは爾なんぢが爾なんぢの民たみに與あたへて?業さんげふとなさしめたまひし爾なんぢの地ちに雨あめを降くだしたまへ

8:37 若もし國くにに饑饉ききんあるか若もしくは疫病やきびやう枯死ふけ朽腐くさり噬くひ亡ほろぼす蝗蟲いなごあるか若もしくは其その敵てき國くににいりて彼等かれらを其その門もんに圍かこむか如何いかなる災害わざはひ如何いかなる病疾やまひあるも

8:38 若もし一人ひとりか或あるひは爾なんぢの民たみイスラエル皆みな各おのおの己おのれの心こころの災わざはひを知しりて此この家いへに向むかひて手てを舒のべなば其人そのひと如何いかなる祈祷いのり如何いかなる懇願ねがひを爲なすとも

8:39 爾なんぢの居處すみかなる天てんに於おいて聽ききて赦ゆるし行おこなひ各おのおのの人ひとに其心そのこころを知しり給たまふ如ごとく其その道々みちみちにしたがひて報むくい給たまへ其そは爾なんぢのみ凡すべての人ひとの心こころを知しりたまへばなり

8:40 爾なんぢかく彼等かれらをして爾なんぢが彼等かれらの父祖せんぞに與あたへたまへる地ちに居をる日ひに常つねに爾なんぢを畏おそれしめたまへ

8:41 且かつ又また爾なんぢの民たみイスラエルの者ものにあらずして爾なんぢの名なのために遠とほき國くにより來きたる異邦人ことくにびとは

8:42 (其そは彼等かれら爾なんぢの大おほいなる名なと強つよき手てと伸のべたる腕うでを聞ききおよぶべければなり)若もし來きたりて此この家いへにむかひて祈いのらば

8:43 爾なんぢの居處すみかなる天てんに於おいて聽きき凡すべて異邦人ことくにびとの爾なんぢに?よび求もとむる如ごとく爲なしたまへ爾なんぢかく地ちの諸すべての民たみをして爾なんぢの名なをしらしめ爾なんぢの民たみイスラエルのごとく爾なんぢを畏おそれしめ又また我わが建たてたる此この家いへは爾なんぢの名なをもて稱呼となへらるるといふことを知しらしめ給たまへ

8:44 爾なんぢの民たみ其その敵てきと戰たたかはんとて爾なんぢの遣つかはしたまふ所ところに出いでたる時とき彼等かれら若もし爾なんぢが選えらみたまへる城まちとわが爾なんぢの名なのために建たてたる家いへの方かたに向むかひてヱホバに祈いのらば

8:45 爾なんぢ天てんにおいて彼等かれらの祈祷いのりと懇願ねがひを聽ききて彼等かれらを助たすけたまへ

8:46 人ひとは罪つみを犯をかさざる者ものなければ彼等かれら爾なんぢに罪つみを犯をかすことありて爾なんぢ彼等かれらを怒いかり彼等かれらを其その敵てきに付わたし敵てきかれらを虜とりことして遠とほき近ちかきを諭いはず敵てきの地ちに引ひきゆかん時ときは

8:47 若もし彼等かれら虜とらはれゆきし地ちにおいて自みづから顧かへりみて悔くい己おのれを虜とらへゆきし者ものの地ちにて爾なんぢに願ねがひて我儕われら罪つみを犯をかし悖もとれる事ことを爲なしたり我儕われら惡あくを行おこなひたりと言いひ

8:48 己おのれを虜とらへゆきし敵てきの地ちにて一いつ心しん一いち念ねんに爾なんぢに歸かへり爾なんぢが其その父祖せんぞに與あたへたまへる地ち爾なんぢが選えらみたまへる城まちとわが爾なんぢの名なのために建たてたる家いへの方かたに向むかひて爾なんぢに祈いのらば

8:49 爾なんぢの居處すみかなる天てんにおいて爾なんぢ彼等かれらの祈祷いのりと懇願ねがひを聽ききてかれらを助たすけ

8:50 爾なんぢの民たみの爾なんぢに對むかひて犯をかしたる事ことと爾なんぢに對むかひて過あやまてる其その凡すべての罪過あやまちを赦ゆるし彼等かれらを虜とらへゆける者ものの前まへにて彼等かれらに憐あはれみを得えさせ其その人々ひとびとをして彼等かれらを憐あはれましめたまへ

8:51 其そは彼等かれらは爾なんぢがエジプトより即すなはち鐵てつの鑪かまどの中うちよりいだしたまひし爾なんぢの民たみ爾なんぢの?業さんげふなればなり

8:52 願ねがはくは僕しもべの祈祷ねがひと爾なんぢの民たみイスラエルの祈願ねがひに爾なんぢの目めを開ひらきて凡すべて其その爾なんぢに?よび求もとむる所ところを聽ききたまへ

8:53 其そは爾なんぢ彼等かれらを地ちの凡すべての民たみの中うちより別わかちて爾なんぢの?業さんげふとなしたまへばなり神かみヱホバ爾なんぢが我儕われらの父祖せんぞをエジプトより導みちびき出いだせし時ときモーセによりて言いひ給たまひし如ごとし

8:54 ソロモン此この祈祷いのりと祈願ねがひを悉ことごとくヱホバに祈いのり終をはりし時とき其その天てんにむかひて手てを舒のべ膝ひざを屈かがめ居ゐたるを止やめてヱホバの壇だんのまへより起たちあがり

8:55 立たちて大おほいなる聲こゑにてイスラエルの凡すべての會衆くわいしうを祝しゆくして言いひけるは

8:56 ヱホバは譽ほむべきかなヱホバは凡すべて其その言いひたまひし如ごとく其その民たみイスラエルに太平たいへいを與あたへたまへり其その僕しもべモーセによりて言いひたまひし其その善言よきことばは皆みな一ひとつも違たがはざりき

8:57 願ねがはくは我儕われらの神かみヱホバ我儕われらの父祖せんぞと偕ともに在いませしごとく我儕われらとともに在いませ我儕われらを離はなれたまふなかれ我儕われらを棄すてたまふなかれ

8:58 願ねがはくは我儕われらの心こころをおのれに傾かたむけたまひて其その凡すべての道みちに歩あゆましめ其その我儕われらの父祖せんぞに命めいじたまひし誡命いましめと法憲のりと律例さだめを守まもらしめたまへ

8:59 願ねがはくはヱホバの前まへにわが願ねがひし是等これらの言ことば日夜よるひるわれらの神かみヱホバに近ちかくあれ而しかしてヱホバ日々ひびの事ことに僕しもべを助たすけ其その民たみイスラエルを助たすけたまへ

8:60 斯かくして地ちの諸もろもろの民たみにヱホバの神かみなることと他ほかに神かみなきことを知しらしめたまへ

8:61 されば爾等なんぢら我儕われらの神かみヱホバとともにありて今日こんにちの如ごとく爾なんぢらの心こころを完全まつたうしヱホバの法憲のりに歩あゆみ其その誡命いましめを守まもるべしと

8:62 斯かくて王わうおよび王わうと偕ともにありしイスラエル皆みなヱホバのまへに犠牲いけにへを献ささげたり

8:63 ソロモン酬恩祭しうおんさいの犠牲いけにへを献ささげたり即すなはち之これをヱホバに献ささぐ其その牛うし二萬まん二千せん羊ひつじ十二萬まんなりき斯かく王わうとイスラエルの子孫ひとびと皆みなヱホバの家いへを開ひらけり

8:64 其その日ひに王わうヱホバの家いへの前まへなる庭にはの中なかを聖別きよめ其處そこにて燔祭はんさいと?祭やくさいと酬恩祭しうおんさいの脂あぶらとを献ささげたり是こはヱホバの前まへなる銅あかがねの壇だん小ちひさくして燔祭はんさいと?祭やくさいと酬恩祭しうおんさいの脂あぶらとを受うくるにたらざりしが故ゆゑなり

8:65 其時そのときソロモン七日なぬかに七日なぬか合あはせて十じふ四よつ日か我儕われらの神かみヱホバのまへに節筵いはひを爲なせりイスラエルの大おほいなる會衆くわいしうハマテの入處いるくちよりエジプトの河かはにいたるまで悉ことごとく彼かれと偕ともにありき

8:66 第八日やうかめにソロモン民たみを歸かへせり民たみは王わうを祝しゆくしヱホバが其その僕しもべダビデと其その民たみイスラエルに施ほどこしたまひし諸もろもろの恩惠めぐみのために喜よろこび且かつ心こころに樂たのしみて其その天てん幕まくに往ゆけり

  第9章

9:1 ソロモン、ヱホバの家いへと王わうの家いへを建たつる事ことを終をへ且かつ凡すべてソロモンが爲なさんと欲ほつし望のぞみを遂とげし時とき

9:2 ヱホバ再ふたたびソロモンに甞かつてギベオンにて顯現あらはれたまひし如ごとくあらはれたまひて

9:3 彼かれに言いひたまひけるは我われは爾なんぢが我われまへに願ねがひし祈祷いのりと祈願ねがひを聽ききたり我われ爾なんぢが建たてたる此この家いへを聖別きよめてわが名なを永ながく其處そこに置おくべし且かつわが目めとわが心こころは恒つねに其處そこにあるべし

9:4 爾なんぢ若もし爾なんぢの父ちちダビデの歩あゆみし如ごとく心こころを完まつたうして正ただしく我わが前まへに歩あゆみわが爾なんぢに命めいじたる如ごとく凡すべて行おこなひてわが憲法のりと律例さだめを守まもらば

9:5 我われは爾なんぢの父ちちダビデに告つげてイスラエルの位くらゐに上のぼる人ひと爾なんぢに缺かくること無なかるべしと言いひしごとく爾なんぢのイスラエルに王わうたる位くらゐを固かたうすべし

9:6 若もし爾等なんぢら又または爾等なんぢらの子孫しそん全まつたく轉そむきて我われにしたがはずわが爾等なんぢらのまへに置おきたるわが誡命いましめと法憲のりを守まもらずして往ゆきて他ほかの神かみに事つかへ之これを拝をがまば

9:7 我われイスラエルをわが與あたへたる地ちの面おもてより絶たたん又またわが名なのために我わが聖別きよめたる此この家いへをば我われわがまへより投なげげ棄すてんしかしてイスラエルは諸もろもろの民たみの中うちに諺語ことわざとなり嘲笑あざけりとなるべし

9:8 且かつ又また此この家いへは高たかくあれども其その傍かたはらを過すぐる者ものは皆みな之これに驚おどろき嘶うそぶきて言いはんヱホバ何故なにゆゑに此地このちに此この家いへに斯かく爲なしたまひしやと

9:9 人ひと答こたへて彼等かれらは己おのれの父祖せんぞをエジプトの地ちより導みちびき出いだせし其その神かみヱホバを棄すてて他ほかの神かみに附つき從したがひ之これを拝をがみ之これに事つかへしに因よりてヱホバ此この凡すべての害がい惡あくを其その上うへに降くだせるなりと言いはん

9:10 ソロモン二十年ねんを經へて二ふたつの家いへ即すなはちヱホバの家いへと王わうの家いへを建たてをはりヒウムにガリラヤの地ちの城邑まち二十を與あたへたり

9:11 其そはツロの王わうヒラムはソロモンに凡すべて其その望のぞみに循したがひて香柏かうはくと松まつの木きと金きんを供給おくりたればなり

9:12 ヒラム、ツロより出いでてソロモンが己おのれに與あたへたる諸邑まちまちを見しめしに其その目めに善よからざりければ

9:13 我わが兄第きやうだいよ爾なんぢが我われに與あたへたる此これ等らの城邑まちは何なになるやといひて之これをカブルの地ちとなづけたり其その名な今日こんにちまでのこる

9:14 甞かつてヒラムは金きん百ひやく二十タラントを王わうに遣おくれり

9:15 ソロモン王わうの徴募ちようぼ人にんを興おこせし事つかは是これなり即すなはちヱホバの家いへと自己おのれの家いへとミロとエルサレムの石垣いしがきとハゾルとメギドンとゲゼルを建たてんが爲ためなりき

9:16 エジプトの王わうパロ嘗かつて上のぼりてゲゼルを取とり火ひを以もて之これを燬やき其その邑まちに住すめるカナン人びとを殺ころし之これをソロモンの妻つまなる其その女むすめに與あたへて粧奩おくりものと爲なせり

9:17 ソロモン、ゲゼルと下しもベテホロンと

9:18 バアラと國くにの野のにあるタデモル

9:19 及およびソロモンの有たもてる府庫くらの諸邑まちまち其その戰車いくさぐるまの諸邑まちまち其その騎兵きへいの諸邑まちまち並ならびにソロモンがエルサレム、レバノンおよび其その凡すべての領地りやうちに於おいて建たてんと欲ねがひし者ものを盡ことごとく建たてたり

9:20 凡すべてイスラエルの子孫しそんに非あらざるアモリ人びとヘテ人びとペリジ人びとヒビ人ひとヱブス人びとの遺存のこれる者もの

9:21 其その地ちに在ありて彼等かれらの後あとに遺存のこれる子孫しそん即すなはちイスラエルの子孫ひとびとの滅ほろぼし盡つくすことを得えざりし者ものにソロモン奴隸どれいの徴募ちようぼを行おこなひて今日こんにちに至いたる

9:22 然しかれどもイステエルの子孫ひとびとをばソロモン一人ひとりも奴隸どれいと爲なさざりき其そは彼等かれらは軍人いくさびと彼かれの臣僕けらい牧伯つかさ大將たいしやうたり戰いくさ車ぐるまと騎兵きへいの長かしらたればなり

9:23 ソロモンの工事こうじを管理つかさどれる首かしらなる官吏くわんりは五百ひやく五十人にんにして工事こうじに働はたらく民たみを治をさめたり

9:24 爰ここにパロの女むすめダビデの城まちより上のぼりてソロモンが彼かれのために建たてたる家いへに至いたる其時そのときにソロモン、ミロを建たてたり

9:25 ソロモン、ヱホバに築きづきたる壇だんの上うへに年としに三次みたび燔祭はんさいと酬恩祭しうおんさいを献ささげ又またヱホバの前まへなる壇だんに香かうを焚たけりソロモン斯かく家いへを全まつたうせり

9:26 ソロモン王わうエドムの地ち紅海こうかいの濱はまに於おいてエラテの邊ほとりなるエジオンゲベルにて船ふね數すう雙さうを造つくれり

9:27 ヒラム海うみの事ことを知しれる舟ふな人びとなる其その僕しもべをソロモンの僕しもべと偕ともに其その船ふねにて遣つかはせり

9:28 彼等かれらオフルに至いたり其處そこより金きん四百ひやく二十タラントを取とりてこれをソロモン王わうの所ところに携もち來きたる

  第10章

10:1 シバの女王によわうヱホバの名なに關かかはるソロモンの風聞うはさを聞きき及および難問なんもんを以もてソロモンを試こころみんとて來きたれり

10:2 彼かれ甚はなはだ多おほくの部從ともまはり香物かうもつと甚はなはだ多おほくの金きんと寶石たまを負おふ駱駝らくだを從したがへてエルサレムに至いたる彼かれソロモンの許もとに來きたり其心そのこころにある所ところを悉ことごとく之これに言いひたるに

10:3 ソロモン彼かれに其その凡すべての事ことを告つげたり王わうの知しらずして彼かれに告つげざる事こと無なかりき

10:4 シバの女王によわうソロモンの諸もろもろの智慧ちゑと其その建たてたる家いへと

10:5 其その席せきの食物しよくもつと其その臣僕けらいの列なみ坐ゐる事ことと其その侍臣そばつかへの伺候たちをることおよび彼等かれらの衣服ころもと其その酒人さかびとと其そのヱホバの家いへに上のぼる階級はしごとを見みて全まつたく其その氣きを奪うばはれたり

10:6 彼かれ王わうにいひけるは我わが自己おのれの國くににて爾なんぢの行爲わざと爾なんぢの智慧ちゑに付ついて聞ききたる言ことばは眞實まことなりき

10:7 然されど我われ來きたりて目めに見みるまでは其その言ことばを信しんぜざりしが今いま視みるに其その半なかばも我われに聞きこえざりしなり爾なんぢの智慧ちゑと昌盛さかえはわが聞ききたる風聞うはさに越こゆ

10:8 常つねに爾なんぢの前まへに立たちて爾なんぢの智慧ちゑを聽きく是等これらの人ひと爾なんぢの臣僕けらいは幸福さいはひなるかな

10:9 爾なんぢの神かみヱホバは讃ほむべきかなヱホバ爾なんぢを悦よろこび爾なんぢをイスラエルの位くらゐに上のぼらせたまへりヱホバ永久とこしなへにイスラエルを愛あいしたまふに因よりて爾なんぢを王わうとなして公道おほやけと義ただしきを行おこなはしめたまふなりと

10:10 彼かれ乃すなはち金きん百二十タラント及および甚はなはだ多おほくの香物かうもつと寶石たまとを王わうに饋おくれりシバの女王によわうのソロモン王わうに饋おくりたるが如ごとき多おほくの香物かうもつは重かさねて至いたらざりき

10:11 オフルより金きんを載のせ來きたりたるヒラムの船ふねは亦またオフルより多おほくの白檀びやくだんの木きと寶石たまとを運はこび來きたりければ

10:12 王わう白檀びやくだんの木きを以もてヱホバの家いへと王わうの家いへとに欄干らんかんを造つくり歌うた謡うたふ者もののために琴ことと瑟しつを造つくれり是かくの如ごとき白檀びやくだんの木きは至いたらざりき亦また今日こんにちまでも見みたることなし

10:13 ソロモン王わう王わうの例ならはしに循したがひてシバの女王によわうに物ものを饋おくりたる外ほかに又また彼かれが望のぞみに任まかせて凡すべて其その求もとむる物ものを饋おくれり斯かくて彼かれ其その臣僕しもべ等らとともに歸かへりて其その國くにに往ゆけり

10:14 偖さて一年ねんにソロモンの所ところに至いたれる金きんの重量めかたは六百ぴやく六十六タラントなり

10:15 外ほかに又また商買あきうどおよび商旅たびあきうどの交易かうえき並ならびにアラビヤの王等わうたちと國くにの知事つかさ等たちよりも至いたれり

10:16 ソロモン王わう展のべ金きんの大楯おほだて二百ひやくを造つくれり其その大楯おほだてには各おのおの六百ぴやくシケルの金きんを用もちひたり

10:17 又また展のべ金きんの干たて三百びやくを造つくれり一ひとつの干たてに三斤ぎんの金きんを用もちひたり王わう是等これらをレバノン森林もりの家いへに置おけり

10:18 王わう又また象牙ざうげをもて大おほいなる寳座くらゐを造つくり純金じゆんきんを以もて之これを蔽おほへり

10:19 其その寳座くらゐに六むつの階級きだあり寳座くらゐの後うしろに圓まろき頭あたまあり坐ざする處ところの兩りやう旁はうに扶手てかけありて扶手てかけの側わきに二ふたつの獅子しし立たてり

10:20 又また其その六むつの階級きだに十二の獅子しし此旁こなた彼旁かなたに立たてり是かくの如ごとき者ものを作つくれる國くにはあらざりき

10:21 ソロモン王わうの用もちひて飮のめる器うつはは皆みな金きんなり又またレバノン森林もりの家いへの器うつはも皆みな純金じゆんきんにして銀ぎんの物もの無なかりき銀ぎんはソロモンの世よには貴たふとまざりしなり

10:22 其そは王わう海うみにタルシシの船ふねを有もちてヒラムの船ふねと供ともにあらしめタルシシの船ふねをして三さん年ねんに一ひと度たび金銀きんぎん象牙ざうげ猿猴さるおよび孔雀くじやくを載のせて來きたらしめたればなり

10:23 抑そもそもソロモン王わうは富有とみと智慧ちゑに於おいて天てん下かの諸すべての王わうよりも大おほいなりければ

10:24 天てん下か皆みな神かみがソロモンの心こころに授さづけたまへる智慧ちゑを聽きかんとてソロモンの面かほを見みんことを求もとめたり

10:25 人々ひとびと各おのおの其その禮物れいもつを携たづさへ來きたる即すなはち銀ぎんの器うつは金きんの器うつは衣服ころも甲冑よろひ香物かうもつ馬むま騾ら毎歳としどし定分さだまりありき

10:26 ソロモン戰車いくさぐるまと騎兵きへいを集あつめたるに戰車いくさぐるま千四百ひやく輛りやう騎兵きへい壱いち萬まん二千せんありきソロモン之これを戰車いくさぐるまの城邑まちに置おき或あるひはエルサレムにて王わうの所ところに置おけり

10:27 王わうエルサレムに於おいて銀ぎんを石いしの如ごとくに爲なし香柏かうはくを平地ひらちの桑くはの樹きの如ごとくに爲なして多おほく用もちひたり

10:28 ソロモンの馬むまを獲えたるはエジプトとコアよりなり即すなはち王わうの商賣あきうどコアより價値あたひを以もて取とれり

10:29 エジプトより上のぼり出いづる戰車いくさぐるま一いち輛りやうは銀ぎん六百ぴやくにして馬むまは百ひやく五十なりき斯かくのごとくヘテ人びとの凡すべての王等わうたちおよびスリアの王等わうたちのために其その手てをもて取とり出いだせり

  第11章

11:1 ソロモン王わうパロの女むすめの外ほかに多おほくの外國ことくにの婦をんなを寵愛ちようあいせり即すなはちモアブ人びとアンモニ人びとエドミ人ひとシドン人びとヘテ人びとの婦をんなを寵愛ちようあいせり

11:2 ヱホバ曾かつて是等これらの國民くにたみについてイスラエルの子孫ひとびとに言いひたまひけらく爾等なんぢらは彼等かれらと交まじはるべからず彼等かれらも亦また爾等なんぢらと交まじはるべからず彼等かれら必かならず爾等なんぢらの心こころを轉うつして彼等かれらの神々かみがみに從したがはしめんとしかるにソロモン彼等かれらを愛あいして離はなれざりき

11:3 彼かれ妃公つまひめ主みや七百ひやく人にん嬪おもひもの三百びやく人にんあり其その妃ひめ等たち彼かれの心こころを轉うつせり

11:4 ソロモンの年とし老おいたる時とき妃つま等たち其心そのこころを轉移うつして他ほかの神かみに從したがはしめければ彼かれの心こころ其その父ちちダビデの心こころの如ごとく其その神かみヱホバに全まつたからざりき

11:5 其そはソロモン、シドン人びとの神かみアシタロテに從したがひアンモニ人びとの惡にくむべき者ものなるモロクに從したがひたればなり

11:6 ソロモン斯かくヱホバの目めのまへに惡あくを行おこなひ其その父ちちダビデの如ごとく全まつたくはヱホバに從したがはざりき

11:7 爰ここにソロモン、モアブの憎にくむべき者ものなるケモシの爲ため又またアンモンの子孫ひとびとの憎にくむべき者ものなるモロクのためにエルサレムの前まへなる山やまに崇邱たかきところを築きづけり

11:8 彼かれ又また其その異邦ことくにの凡すべての妃つまの爲ためにも然しかせしかば彼等かれらは香かうを焚たきて己々おのれおのれの神かみを祭まつれり

11:9 ソロモンの心こころ轉うつりてイスラエルの神かみヱホバを離はなれしによりてヱホバ彼かれを怒いかりたまふヱホバ嘗かつて兩次ふたたび彼かれに顯あらはれ

11:10 此事このことに付ついて彼かれに他ほかの神かみに從したがふべからずと命めいじたまひけるに彼かれヱホバの命めいじたまひし事ことを守まもらざりしなり

11:11 ヱホバ、ソロモンに言いひたまひけるは此事このこと爾なんぢにありしに因より又また汝なんぢわが契約けいやくとわが爾なんぢに命めいじたる法憲のりを守まもらざりしに因よりて我われ必かならず爾なんぢより國くにを裂さきはなして之これを爾なんぢの臣僕けらいに與あたふべし

11:12 然されど爾なんぢの父ちちダビデの爲ために爾なんぢの世よには之これを爲なさざるべし我われ爾なんぢの子この手てより之これを裂さきはなさん

11:13 但ただし我われは國くにを盡ことごとくは裂さきはなさずしてわが僕しもべダビデのために又またわが選えらみたるエルサレムのために一ひとつの支派わかれを爾なんぢの子こに與あたへんと

11:14 是ここに於おいてヱホバ、エドミ人びとハダデを興おこしてソロモンの敵てきと爲なしたまふ彼かれはエドム王わうの裔すゑなり

11:15 曩さきにダビデ、エドムに事ことありし時とき軍ぐんの長かしらヨアブ上のぼりて其その戰死うちじにせし者ものを葬はうむりエドムの男をとこを盡ことごとく撃うち殺ころしける時ときに方あたりて

11:16 (ヨアブはエドムの男をとこを盡ことごとく絶たつまでイスラエルの群衆ぐんしうと偕ともに六む月つき其處そこに止とどまれり)

11:17 ハダデ其その父ちちの僕しもべなる數人すうにんのエドミ人びとと共ともに逃にげてエジブトに往ゆかんとせり時ときにハダデは尚なほ小こ童子わらべなりき

11:18 彼等かれらミデアンを起たち出いでてバランに至いたりパランより人ひとを伴ともなひてエジプトに往ゆきエジプトの王わうパロに詣いたるにバロ彼かれに家いへを與あたへ食糧しよくりやうを定さだめ且かつ土地とちを與あたへたり

11:19 ハダデ大おほいにパロの心こころにかなひしかばパロ己おのれの妻つまの妹いもうと即すなはち王妃きさきタペネスの妹いもうとを彼かれに妻めあはせり

11:20 タペネスの妹いもうと彼かれに男子をとこのこゲヌバテを生うみければタペネス之これをパロの家いへの中うちにて乳ち離ばなれせしむゲヌバテ、パロの家いへにてパロの子この中うちにありき

11:21 ハダデ、エジプトに在ありてダビデの其その先祖せんぞと偕ともに寝ねむりたると軍ぐんの長かしらヨアブの死しにたるを聞きいしかばハダデ、パロに言いひけるは我われを去さらしめてわが國くにに往ゆかしめよと

11:22 パロ彼かれにいひけるは爾なんぢ我われとともにありて何なにの缺かけたる處ところありてか爾なんぢの國くにに往ゆかん事ことを求もとむる彼かれ言いふ何なにも無なし然されどもねがはくは我われを去さらしめよ去さらしめよ

11:23 神かみ父ちちエリアダの子こレゾンを興おこしてソロモンの敵てきとなせり彼かれは其その主人しゆじんゾバの王わうハダデゼルの許もとを逃にげさりたる者ものなり

11:24 ダビデがゾバの人ひとを殺ころしたる時ときに彼かれ人ひとを自己おのれに集あつめて一隊ひとくみの首領かしらとなりしが彼等かれらダマスコに往ゆきて彼處そこに住すみダマスコを治をさめたり

11:25 ハダデが爲なしたる害がいの外ほかにレゾン、ソロモンの一いつ生しやうの間あひだイスラエルの敵てきとなれり彼かれイステエルを惡にくみてスリアに王わうたりき

11:26 ゼレダのヱフラタ人びとネバテの子こヤラベアムはソロモンの僕けらいなりしが其その母ははの名なはゼルヤと曰いひて?やもめ婦をんななりき彼かれも亦また其その手てを擧あげて王わうに敵てきす

11:27 彼かれが手てを擧あげて王わうに敵てきせし故ゆゑは此これなりソロモン、ミロを築きづき其その父ちちダビデの城まちの損缺やぶれを塞ふさぎ居ゐたり

11:28 其人そのひとヤラベアムは大おほいなる能力ちからある者ものなりしかばソロモン此この少者わかきものが事ことに勤つとむるを見みて之これを立たててヨセフの家いへの凡すべての役つとめを督つかさどらしむ

11:29 其その頃ころヤラベアム、エルサレムを出いでし時ときシロ人びとなる預言者よげんしやアヒヤ路みちにて彼かれに遭あへり彼かれは新あたらしき衣服ころもを著きゐたりしが彼等かれら二人ふたりのみ野のにありき

11:30 アヒヤ其その著きたる新あたらしき衣服ころもを執とらへて之これを十じふ二に片きれに裂さき

11:31 ヤラベアムに言いひけるは爾なんぢ自みづから十と片きれを取とれイスラエルの神かみヱホバ斯かく言いひたまふ視みよ我われ國くにをソロモンの手てより裂さきはなして爾なんぢに十とをの支派わかれを與あたへん

11:32 (但ただし彼かれはわが僕しもべダビデの故ゆゑに因より又またわがイスラエルの凡すべての支派わかれの中うちより選えらみたる城まちエルサレムの故ゆゑに因よりて一ひとつの支派わかれを有たもつべし)

11:33 其そは彼等かれら我われを棄すててシドン人びとの神かみアシタロテとモアブの神かみケモシとアンモンの子孫ひとびとの神かみモロクを拝をがみ其その父ちちダビデの如ごとくわが道みちに歩あゆみてわが目めに適かなふ事ことわが法とのりとわが律例さだめを行おこなはざればなり

11:34 然しかれども我われは國くにを盡ことごとくは彼かれの手てより取とらざるべし我わが選えらみたるわが僕しもべダビデわが命令めいれいとわが法憲のりを守まもりたるに因よりて我われ彼かれが爲ためにソロモンを一いつ生しやうの間あひだ主きみたらしむべし

11:35 然されど我われ其その子この手てより國くにを取とりて其その十とをの支派わかれを爾なんぢに與あたへん

11:36 其その子こには我われ一ひとつの支派わかれを與あたへてわが僕しもべダビデをしてわが己おのれの名なを置おかんとてわがために擇えらみたる城まちエルサレムにてわが前まへに常つねに一ひとつの光明ひかりを有たもたしめん

11:37 我われ爾なんぢを取とらん爾なんぢは凡すべて爾なんぢの心こころの望のぞむ所ところを治をさめイスラエルの上うへに王わうとなるべし

11:38 爾なんぢ若もしわが爾なんぢに命めいずる凡すべての事ことを聽ききて吾わが道みちに歩あゆみわが目めに適かなふ事ことを爲なしわが僕しもべダビデが爲なせし如ごとく我わが法憲のりと誡命いましめを守まもらば我われ爾なんぢと偕ともにありてわがダビデのために建たてしごとく爾なんぢのために鞏固かたき家いへを建たててイスラエルを爾なんぢに與あたふべし

11:39 我われ之これがためにダビデの裔すゑを苦くるしめんされど永遠とこしなへには非あらじと

11:40 ソロモン、ヤラベアムを殺ころさんと求もとめければヤラベアム起たちてエジプトに逃遁のがれエジプトの王わうシシヤクに至いたりてソロモンの死しぬるまでエジプトに居ゐたり

11:41 ソロモンの其その餘ほかの行爲わざと凡すべて彼かれが爲なしたる事ことおよび其その智慧ちゑはソロモンの行爲わざの書しよに記しるさるるにあらすや

11:42 ソロモンのエルサレムにてイスラエルの全地ぜんちを治をさめたる日ひは四十年ねんなりき

11:43 ソロモン其その父祖せんぞと偕ともに寝ねむりて其その父ちちダビデの城まちに葬はうむらる其その子こレハベアム之これに代かはりて王わうとなれり

  第12章

12:1 爰ここにレハベアム、シケムに往ゆけり其そはイスラエル皆みな彼かれを王わうと爲なさんとてシケムに至いたりたればなり

12:2 ネバテの子こヤラベアム尚なほエジブトに在ありて聞きけりヤラベアムはソロモン王わうの面かほをさけて逃にげさりエジプトに住居すみゐたるなり

12:3 時ときに人衆ひとびと人ひとを遣つかはして彼かれを招まねけり斯かくてヤラベアムとイスラエルの會衆くわいしう皆みな來きたりてレハベアムに告つげて言いひけるは

12:4 汝なんぢの父ちち我儕われらの軛くびきを難かたくせり然しかれども爾なんぢ今いま爾なんぢの父ちちの難かたき役つとめと爾なんぢの父ちちの我儕われらに蒙かうむらせたる重おもき軛くびきを軽かろくせよ然しからば我儕われら爾なんぢに事つかへん

12:5 レハベアム彼等かれらに言いひけるは去さりて三日みつかを經へて再ふたたび我われに來きたれと民たみ乃すなはち去されり

12:6 レハベアム王わう其その父ちちソロモンの生いける間あひだ其その前まへに立たちたる老人らうじん等たちと計はかりていひけるは爾等なんぢら如何いかに��をしへて此これ民たみに答こたへしむるや

12:7 彼等かれらレハベアムに告つげて言いひけるは爾なんぢ若もし今日こんにち此この民たみの僕しもべとなり之これに事つかへて之これに答こたへ善よき言ことばを之これに語かたらば彼等かれら永ながく爾なんぢの僕しもべとなるべしと

12:8 然しかるに彼かれ老人らうじんの��をしへし��をしへを棄すて自己おのれと倶ともに生長そだちて己おのれのまへに立たつ少年せうねん等らと計はかれり

12:9 即すなはち彼等かれらに言いひけるは爾等なんぢら何なにを��をしへて我儕われらをして此この我われに告つげて爾なんぢの父ちちの我儕われらに蒙かうむらせし軛くびきを軽かろくせよと言いふ民たみに答こたへしむるやと

12:10 彼かれと偕ともに生長そだちたる少年せうねん彼かれに告つげていひけるは爾なんぢに告つげて爾なんぢの父ちち我儕われらの軛くびきを重おもくしたれど爾なんぢこれを我儕われらのために軽かろくせよと言いひたる此この民たみに爾なんぢ斯かく言いふベし我わが小こ指ゆびはわが父ちちの腰こしよりも太ふとし

12:11 またわが父ちち爾等なんぢらに重おもき軛くびきを負おはせたりしが我われは更さらに爾等なんぢらの軛くびきを重おもくせん我わが父ちちは鞭むちにて爾等なんぢらを懲こらしたれども我われは蠍さそりをもて爾等なんぢらを懲こらさんと爾なんぢ斯かく彼等かれらに告つぐべしと

12:12 ヤラベアムと民たみ皆みな王わうの告つげて第三日みつかめに再ふたたび我われに來きたれと言いひしごとく第三日みつかめにレハベアムに詣いたりしに

12:13 王わう荒々あらあらしく民たみに答こたへ老人らうじんの��をしへし��をしへを棄すて

12:14 少年せいねんの��をしへの如ごとく彼等かれらに告つげて言いひけるは我わが父ちちは爾等なんぢらの軛くびきを重おもくしたりしが我われは更さらに爾等なんぢらの軛くびきを重おもくせん我わが父ちちは鞭むちを以もて爾等なんぢらを懲こらしたれども我われは蠍さそりをもて爾等なんぢらを懲こらさんと

12:15 王わう斯かく民たみに聽きかざりき此事このことはヱホバより出いでたる者ものなり是こはヱホバその甞かつてシロ人びとアヒヤに由よりてネバテの子こヤラベアムに告つげし言ことばをおこなはんとて爲なしたまへるなり

12:16 かくイスラエル皆みな王わうの己おのれに聽きかざるを見みたり是ここにおいて民たみ王わうに答こたへて言いひけるは我儕われらダビデの中うちに何なにの分ぶんあらんやヱサイの子この中うちに?業さんげふなしイスラエルよ爾等なんぢらの天てん幕まくに歸かへれダビデよ今いま爾なんぢの家いへを視みよと而しかしてイスラエルは其その天てん幕まくに去さりゆけり

12:17 然しかれどもユダの諸邑まちまちに住すめるイスラエルの子孫ひとびとの上うへにはレハベアム其その王わうとなれり

12:18 レハベアム王わう徴募ちやうぼ頭がしらなるアドラムを遣つかはしけるにイスラエル皆みな石いしにて彼かれを撃うちて死しなしめたればレハベアム王わう急いそぎて其その車くるまに登のぼりエルサレムに逃にげたり

12:19 斯かくイスラエル、ダビデの家いへに背そむきて今日こんにちにいたる

12:20 爰ここにイスラエル皆みなヤラベアムの歸かへりしを聞ききて人ひとを遣つかはして彼かれを集會しふくわいに招まねき彼かれをイスラエルの全家ぜんかの上うへに王わうと爲なせりユダの支派わかれの外ほかはダビデの家いへに從したがふ者ものなし

12:21 ソロモンの子こレハベアム、エルサレムに至いたりてユダの全家ぜんかとベニヤミンの支派わかれの者もの即すなはち壯年さかりの武夫つはもの十八萬まんを集あつむ斯かくしてレハベアム國くにを己おのれに皈かへさんがためにイスラエルの家いへと戰たたかはんとせしが

12:22 神かみの言ことば神かみの人ひとシマヤに臨のぞみて曰いはく

12:23 ソロモンの子こユダの王わうレハベアムおよびユダとベニヤミンの全家ぜんか並ならびに其その餘ほかの民たみに告つげて言いふべし

12:24 ヱホバ斯かく言いふ爾等なんぢら上のぼるべからず爾等なんぢらの兄弟きやうだいなるイスラエルの子孫ひとびとと戰たたかふべからず各人おのおの其その家いへに歸かへれ此事このことは我われより出いでたるなりと彼等かれらヱホバの言ことばを聽ききヱホバの言ことばに循したがひて轉かへり去さりぬ

12:25 ヤラベアムはエフライムの山地やまちにシケムを建たてて其處そこに住すみ又また其所そこより出いでてペヌエルを建たてたり

12:26 爰ここにヤラベアム其心そのこころに謂いひけるは國くには今いまダビデの家いへに歸かへらん

12:27 若もし此この民たみエルサレムにあるヱホバの家いへに禮物そなへものを献ささげんとて上のぼらば此この民たみの心こころユダの王わうなる其その主しゆレハベアムに歸かへりて我われを殺ころしユダの王わうレハベアムに歸かへらんと

12:28 是ここに於おいて王わう計議はかりて二ふたつの金きんの犢こうしを造つくり人々ひとびとに言いひけるは爾なんぢらのエルサレムに上のぼること?すでに足たれりイスラエルよ爾なんぢをエジブトの地ちより導みちびき上のぼりし汝なんぢの神かみを視みよと

12:29 而しかして彼かれ一ひとつをベテルに安すゑ一ひとつをダンに置おけり

12:30 此事このこと罪つみとなれりそは民たみダンに迄まで往ゆきて其その一ひとつの前まへに詣まうでたればなり

12:31 彼かれ又また崇邱たかきところの家いへを建たててレビの子孫ひとびとにあらざる凡そのつねの民たみを祭司さいしとなせり

12:32 ヤラベアム八月ぐわつに節期いはひを定さだめたり即すなはち其その月つきの十五日にちなりユダにある節期いはひに等ひとし而しかして壇だんの上うへに上のぼりたりベテルにて彼かれ斯かく爲なし其その作つくりたる犢こうしに禮物そなへものを献ささげたり又また彼かれ其その つくりたる崇邱たかきところの祭司さいしをベテルに立たてたり

12:33 かく彼かれ其そのベテルに造つくれる壇だんの上うへに八月ぐわつの十五日にちに上のぼれり是これは彼かれが己おのれの心こころより造つくり出いだしたる月つきなり而しかしてイスラエルの人々ひとびとのために節期いはひを定さだめ壇だんの上うへにのぼりて香かうを焚たけり

  第13章

13:1 視みよ爰ここに神かみの人ひとヱホバの言ことばに由よりてユダよりベテルに來きたれり時ときにヤラベアムは壇だんの上うへに立たちて香かうを焚たきゐたり

13:2 神かみの人ひと乃すなはちヱホバの言ことばを以もて壇だんに向むかひて呼よばはり言いひけるは壇だんよ壇だんよヱホバ斯かく言いひたまふ視みよダビデの家いへにヨシアと名なづくる一人ひとりの子こ生うまるべし彼かれ爾なんぢの上うへに香かうを焚たく所ところの崇邱たかきところの祭司さいしを爾なんぢの上うへに献ささげん且かつ人ひとの骨ほね爾なんぢの上うへに燒やかれんと

13:3 是この日ひ彼かれ異蹟しるしを示しめして言いひけるは是これはヱホバの言いひたまへる事ことの異蹟しるしなり視みよ壇だんは裂さけ其その上うへにある灰はひは傾出こぼれんと

13:4 ヤラベアム王わう神かみの人ひとがベテルにある壇だんに向むかひて呼よばはりたる言ことばを聞きける時とき其その手てを壇だんより伸のばし彼かれを執とらへよと言いひけるが其その彼かれに向むかひて伸のばしたる手て枯かれて再ふたたび屈縮ちぢむることを得えざりき

13:5 しかして神かみの人ひとがヱホバの言ことばを以もて示しめしたる異蹟しるしの如ごとく壇だんは裂さけ灰はひは壇だんより傾出こぼれたり

13:6 王わう答こたへて神かみの人ひとに言いひけるは請こふ爾なんぢの神かみヱホバの面かほを和なごめわが爲ために祈いのりてわが手てを本もとに復かへらしめよ神かみの人ひと乃すなはちヱホバの面かほを和なごめければ王わうの手て本もとに復かへりて前まへのごとくに成なれり

13:7 是ここにおいて王わう神かみの人ひとに言いひけるは我われと與ともに家いへに來きたりて身みを息やすめよ我われ爾なんぢに禮物れいもつを與あたへんと

13:8 神かみの人ひと王わうに言いひけるは爾なんぢ假令たとひ爾なんぢの家いへの半なかばを我われに與あたふるも我われは爾なんぢとともに入いらじ又また此この所ところにてパンを食くはず水みづを飮のまざるべし

13:9 其そはヱホバの言ことば我われにパンを食くらふなかれ水みづを飮のむなかれ又また爾なんぢが往ゆける途みちより歸かへるなかれと命めいじたればなりと

13:10 斯かく彼かれ他ほかの途みちを往ゆき自己おのれがベテルに來きたれる途みちよりは歸かへらざりき

13:11 爰ここにベテルに一人ひとりの老おいたる預言よげん者しや住すみゐたりしが其その子等こら來きたりて是この日ひ神かみの人ひとがベテルにて爲なしたる諸事ことどもを彼かれに宣のべたり亦また神かみの人ひとの王わうに言いひたる言ことばをも其その父ちちに宣のべたり

13:12 其その父ちち彼等かれらに彼かれは何いづれの途みちを往ゆきしやといふ其その子等こらユダより來きたりし神かみの人ひとの往ゆきたる途みちを見みたればなり

13:13 彼かれ其その子等こらに言いひけるは我わがために驢馬ろばに鞍くらおけと彼等かれら驢馬ろばに鞍くらおきければ彼かれ之これに乗のり

13:14 神かみの人ひとの後あとに往ゆきて橡かしの樹きの下したに坐ざするを見み之これにいひけるは汝なんぢはユダより來きたれる神かみの人ひとなるか其人そのひと然しかりと言いふ

13:15 彼かれ其人そのひとにいひけるは我われと偕ともに家いへに往ゆきてパンを食くらへ

13:16 其人そのひといふ我われは汝なんぢと偕ともに歸かへる能あたはず汝なんぢと偕ともに入いるあたはず又また我われは此處このところにて爾なんぢと偕ともにパンを食くはず水みづを飮のまじ

13:17 其そはヱホバの言ことば我われに爾なんぢ彼處かしこにてパンを食くらふなかれ水みづを飮のむなかれ又また爾なんぢが至いたれる所ところの途みちより歸かへり往ゆくなかれと言いひたればなりと

13:18 彼かれ其人そのひとにいひけるは我われも亦また爾なんぢの如ごとく預言者よげんしやなるが天てんの使つかひヱホバの言ことばを以もて我われに告つげて彼かれを爾なんぢと偕ともに爾なんぢの家いへに携つれかへり彼かれにパンを食くらはしめ水みづを飮のましめよといへりと是これ其人そのひとを誑あざむけるなり

13:19 是ここにおいて其人そのひと彼かれと偕ともに歸かへり其その家いへにてパンを食くらひ水みづを飮のめり

13:20 彼等かれらが席せきに坐いませし時ときヱホバの言ことば其人そのひとを携つれ歸かへりし預言者よげんしやに臨のぞみければ

13:21 彼かれユダより來きたれる神かみの人ひとに向むかひて呼よばはり言いひけるはヱホバ斯かく言いひたまふ爾なんぢヱホバの口くちに違そむき爾なんぢの神かみヱホバの爾なんぢに命めいじたまひし命令めいれいを守まもらずして歸かへり

13:22 ヱホバの爾なんぢにパンを食くらふなかれ水みづを飮のむなかれと言いひたまひし處ところにてパンを食くらひ水みづを飮のみたれば爾なんぢの屍しかばねは爾なんぢの父祖ふその墓はかに至いたらざるべしと

13:23 其人そのひとのパンを食くらひ水みづを飮のみし後のち彼かれ其人そのひとのため即すなはち己おのれが携つれ歸かへりたる預言者よげんしやのために驢馬ろばに鞍くらおけり

13:24 斯かくて其人そのひと往ゆきけるが獅子しし途みちにて之これに遇あひて之これを殺ころせり而しかして其その屍しかばねは途みちに棄すてられ驢馬ろばは其その傍かたはらに立たち獅子ししも亦また其その屍しかばねの側かたはらに立たてり

13:25 人々ひとびと經過とほりて途みちに棄すてられたる屍しかばねと其その屍しかばねの側かたはらに立たてる獅子ししを見みて來きたり彼かの老おいたる預言者よげんしやの住すめる邑まちにて語かたれり

13:26 彼人かのひとを途みちより携つれ歸かへりたる預言者よげんしや聞ききて言いひけるは其それはヱホバの口くちに違そむきたる神かみの人ひとなりヱホバの彼かれに言いひたまひし言ことばの如ごとくヱホバ彼かれを獅子ししに付わたしたまひて獅子しし彼かれを裂さき殺ころせりと

13:27 しかして其その子等こらに語かたりて言いひけるは我わがために驢馬ろばに鞍くらおけと彼等かれら鞍くらおきければ

13:28 彼かれ往ゆきて其その屍しかばねの途みちに棄すてられ驢馬ろばと獅子ししの其その屍しかばねの傍かたはらに立たてるを見みたり獅子ししは屍しかばねを食くらはず驢馬ろばをも裂さかざりき

13:29 預言者よげんしや乃すなはち神かみの人ひとの屍しかばねを取とりあげて之これを驢馬ろばに載のせて携もち歸かへれりしかして其その老おいたる預言者よげんしや邑まちに入いり哀哭かなしみて之これを葬はうむれり

13:30 即すなはち其その屍しかばねを自己おのれの墓はかに置をさめ皆みな之これがために嗚呼ああわが兄弟きやうだいよといひて哀哭かなしめり

13:31 彼人かのひとを葬はうむりし後のち彼かれ其その子等こらに語かたりて言いひけるは我わが死しにたる時ときは神かみの人ひとを葬はうむりたる墓はかに我われを葬はうむりわが骨ほねを彼かれの骨ほねの側そばに置をさめよ

13:32 其そは彼かれがヱホバの言ことばを以もてベテルにある壇だんにむかひ又またサマリアの諸邑まちまちに在ある崇邱たかきところの凡すべての家いへに向むかひて呼よばはりたる言ことばは必かならず成なるべければなり

13:33 斯この事ことの後のちヤラベアム其その惡あしき途みちを離はなれ歸かへらずして復また凡よのつねの民たみを崇邱たかきところの祭司さいしと爲なせり即すなはち誰たれにても好このむ者ものは之これを立たてければ其人そのひとは崇邱たかきところの祭司さいしと爲なれり

13:34 此事このことヤラベアムの家いへの罪戻つみとなりて遂つひに之これをして地ちの表面おもてより消失きえうせ滅亡ほろぶるに至いたらしむ

  第14章

14:1 當時そのころヤラベアムの子こアビヤ疾やみゐたり

14:2 ヤラベアム其その妻つまに言いひけるは請こふ起たちて装すがたを改かへ人ひとをして汝なんぢがヤラベアムの妻つまなるを知しらしめずしてシロに往ゆけ彼處かしこにわが此この民たみの王わうとなるべきを我われに告つげたる預言者よげんしやアヒヤをる

14:3 汝なんぢの手てに十とをのパン及および菓くわ子こと一いち瓶びんの蜜みつを取とりて彼かれの所ところに往ゆけ彼かれ汝なんぢに此この子この如何いかになるかを示しめすべしと

14:4 ヤラベアムの妻つま是かく爲なし起たちてシロに往ゆきアヒヤの家いへに至いたりしがアヒヤは年齢としのために其その目め凝かたまりて見みることを得えざりき

14:5 ヱホバ、アヒヤにいひたまひけるは視みよヤラベアムの妻つま其その子こ疾やめるに因よりて其それに付つきて汝なんぢに一ひとつの事ことを諮たづねんとて來きたる汝なんぢ斯々かくかく彼かれに言いふべし其そは彼かれ入いり來きたる時とき其その身みを他ほかの人ひととすべければなり

14:6 彼かれが戸との所ところに入いり來きたれる時ときアヒヤ其その履あし聲おとを聞ききて言いひけるはヤラベアムの妻つま入いれよ汝なんぢ何なんぞ其その身みを他ほかの人ひととするや我われ汝なんぢに嚴酷きびしき事ことを告つぐるを命めいぜらる

14:7 往ゆきてヤラベアムに告つぐべしイスラエルの神かみヱホバ斯かく言いひたまふ我われ汝なんぢを民たみの中うちより擧あげ我民わがたみイスラエルの上うへに汝なんぢを君きみとなし

14:8 國くにをダビデの家いへより裂さき離はなして之これを汝なんぢに與あたへたるに汝なんぢは我わが僕しもべダビデの我わが命令めいれいを守まもりて一いつ心しんに我われに從したがひ唯ただわが目めに適かなふ事ことのみを爲なせしが如ごとくならずして

14:9 汝なんぢの前まへに在ありし凡すべての者ものよりも惡あくを爲なし往ゆきて汝なんぢのために他ほかの神かみと鋳いたる像ざうを造つくり我わが怒いかりを激おこし我われを汝なんぢの背後うしろに棄すてたり

14:10 是故このゆえに視みよ我われヤラベアムの家いへに災害わざはひを下くだしヤラベアムに屬ぞくする男をとこはイスラエルにありて繋つながれたる者ものも繋つながれざる者ものも盡ことごとく絶たち人ひとの塵埃あくたを殘のこりなく除のぞくがごとくヤラベアムの家いへの後あとを除のぞくべし

14:11 ヤラベアムに屬ぞくする者ものの邑まちに死しぬるをば犬いぬ之これを食くらひ野のに死しぬるをば天空そらの鳥とり之これを食くらはんヱホバ之これを語いひたまへばなり

14:12 爾なんぢ起たちて爾なんぢの家いへに往ゆけ爾なんぢの足あしの邑まちに入いる時とき子こは死しぬべし

14:13 而しかしてイスラエル皆みな彼かれのために哀かなしみて彼かれを葬はうむらんヤラベアムに屬ぞくする者ものは唯ただ是これのみ墓はかに入いるべし其そはヤラベアムの家いへの中うちにて彼かれはイスラエルの神かみヱホバに向むかひて善よき意おもひを懐いだけばなり

14:14 ヱホバ、イスラエル上うへに一人ひとりの王わうを興おこさん彼かれ其その日ひにヤラベアムの家いへを斷絶たつべし但ただし何いづれの時ときなるか今いま即すなはち是これなり

14:15 又またヱホバ、イスラエルを撃うちて水みづに搖撼ゆるぐ葦あしの如ごとくになしたまひイスラエルを其その父祖せんぞに賜たまひし此この善よき地ちより抜ぬき去さりて之これを河かはの外さきに散ちらしたまはん彼等かれら其そのアシラ像ざうを つくりてヱホバの怒いかりを激おこしたればなり

14:16 ヱホバ、ヤラベアムの罪つみの爲ためにイスラエルを棄すてたまふべし彼かれは罪つみを犯をかし又またイスラエルに罪つみを犯をかさしめたりと

14:17 ヤラベアムの妻つま起たちて去さりテルザに至いたりて家いへの閾しきゐに臻いたれる時とき子こは死しねり

14:18 イスラエル皆みな彼かれを葬はうむり彼かれの爲ために哀かなしめりヱホバの其その僕しもべ預言者よげんしやアヒヤによりて言いひたまへる言ことばの如ごとし

14:19 ヤラベアムの其その餘ほかの行爲わざ彼かれが如何いかに戰たたかひしか如何いかに世よを治をさめしかは視みよイスラエルの王わうの歴代れきだい志しの書しよに記載しるさる

14:20 ヤラベアムの王わうたりし日ひは二十二年ねんなりき彼かれ其その父祖せんぞと偕ともに寝ねむりて其その子こナダブ之これに代かはりて王わうとなれり

14:21 ソロモンの子こレハベアムはユダに王わうたりきレハベアムは王わうと成なれる時とき四十一歳さいなりしがヱホバの其その名なを置おかんとてイスラエルの諸すべての支派わかれの中うちより選えらみたまひし邑まちなるエルサレムにて十七年ねん王わうたりき其その母ははの名なはナアマといひてアンモニ人びとなり

14:22 ユダ其その父祖せんぞの爲なしたる諸すべての事ことに超こえてヱホバの目めの前まへに惡あくを爲なし其その犯をかしたる罪つみに由よりてヱホバの震怒いかりを激おこせり

14:23 其そは彼等かれらも諸すべての高山たかやまの上うへと諸すべての��あを木きの下したに崇邱たかきところと碑ひとアシラ像ざうを建たてたればなり

14:24 其その國くにには亦また男なん色しよくを行おこなふ者ものありぎ彼等かれらはヱホバがイスラエルの子孫ひとびとの前まへより逐おひ攘はらひたまひし國民くにたみの中うちにありし諸すべての憎にくむべき事ことを傚ならひ行おこなへり

14:25 レハベアム王わうの第だい五年ねんにエジプトの王わうシシヤク、エルサレムに攻せめ上のぼり

14:26 ヱホバの家いへの寶物たからと王わうの家いへの寶物たからを奪うばひたり即すなはち盡ことごとく之これを奪うばひ亦またソロモンの造つくりたる金きんの楯たてを皆みな奪うばひたり

14:27 レハベアム王わう其その代かはりに銅あかがねの楯たてを造つくりて王わうの家いへの門もんを守まもる侍衛じゑいの長かしらの手てに付わたせり

14:28 王わうのヱホバの家いへに入いる毎ごとに侍衛じゑい之これを負おひ復また之これを侍衛じゑいの房いへに携もち歸かへれり

14:29 レハベアムの其その餘ほかの行爲わざと其その凡すべて爲なしたる事ことはユダの王わうの歴代れきだい志しの書しよに記しるさるるに非あらずや

14:30 レハベアムとヤラベアムの間あひだに戰爭いくさありき

14:31 レハベアム其その父祖せんぞと偕ともに寝ねむりて其その父祖せんぞと共ともにダビデの城まちに葬はうむらる其その母ははのナアマといひてアンモニ人びとなり其その子こアビヤム之これに代かはりて王わうと爲なれり