口語訳聖書(振り仮名付き)
章: 1 2 3 4 5 6 7 8
列王紀れつおうき下げ
第1章 2Kn-Audio
1:1 アハブが死しんだ後のち、モアブはイスラエルにそむいた。
1:2 さてアハジヤはサマリヤにある高殿たかどののらんかんから落おちて病気びょうきになったので、使者ししゃをつかわし、「行いってエクロンの神かみバアル・ゼブブに、この病気びょうきがなおるかどうかを尋たずねよ」と命めいじた。
1:3 時ときに、主しゅの使つかいはテシベびとエリヤに言いった、「立たって、上のぼって行いき、サマリヤの王おうの使者ししゃに会あって言いいなさい、『あなたがたがエクロンの神かみバアル・ゼブブに尋たずねようとして行いくのは、イスラエルに神かみがないためか』。
1:4 それゆえ主しゅはこう仰おおせられる、『あなたは、登のぼった寝台しんだいから降おりることなく、必かならず死しぬであろう』」。そこでエリヤは上のぼって行いった。
1:5 使者ししゃたちがアハジヤのもとに帰かえってきたので、アハジヤは彼かれらに言いった、「なぜ帰かえってきたのか」。
1:6 彼かれらは言いった、「ひとりの人ひとが上のぼってきて、われわれに会あって言いいました、『おまえたちをつかわした王おうの所ところへ帰かえって言いいなさい。主しゅはこう仰おおせられる、あなたがエクロンの神かみバアル・ゼブブに尋たずねようとして人ひとをつかわすのは、イスラエルに神かみがないためなのか。それゆえあなたは、登のぼった寝台しんだいから降おりることなく、必かならず死しぬであろう』」。
1:7 アハジヤは彼かれらに言いった、「上のぼってきて、あなたがたに会あって、これらの事ことを告つげた人ひとはどんな人ひとであったか」。
1:8 彼かれらは答こたえた、「その人ひとは毛けごろもを着きて、腰こしに皮かわの帯おびを締しめていました」。彼かれは言いった、「その人ひとはテシべびとエリヤだ」。
1:9 そこで王おうは五十人にんの長ちょうを、部下ぶかの五十人にんと共ともにエリヤの所ところへつかわした。彼かれがエリヤの所ところへ上のぼっていくと、エリヤは山やまの頂いただきにすわっていたので、エリヤに言いった、「神かみの人ひとよ、王おうがあなたに、下くだって来くるようにと言いわれます」。
1:10 しかしエリヤは五十人にんの長ちょうに答こたえた、「わたしがもし神かみの人ひとであるならば、火ひが天てんから下くだって、あなたと部下ぶかの五十人にんとを焼やき尽つくすでしょう」。そのように火ひが天てんから下くだって、彼かれと部下ぶかの五十人にんとを焼やき尽つくした。
1:11 王おうはまた他たの五十人にんの長ちょうを、部下ぶかの五十人にんと共ともにエリヤにつかわした。彼かれは上のぼっていってエリヤに言いった、「神かみの人ひとよ、王おうがこう命めいじられます、『すみやかに下くだってきなさい』」。
1:12 しかしエリヤは彼かれらに答こたえた、「わたしがもし神かみの人ひとであるならば、火ひが天てんから下くだって、あなたと部下ぶかの五十人にんとを焼やき尽つくすでしょう」。そのように神かみの火ひが天てんから下くだって、彼かれと部下ぶかの五十人にんとを焼やき尽つくした。
1:13 王おうはまた第だい三の五十人にんの長ちょうを部下ぶかの五十人にんと共ともにつかわした。第だい三の五十人にんの長ちょうは上のぼっていって、エリヤの前まえにひざまずき、彼かれに願ねがって言いった、「神かみの人ひとよ、どうぞ、わたしの命いのちと、あなたのしもべであるこの五十人にんの命いのちをあなたの目めに尊たっといものとみなしてください。
1:14 ごらんなさい、火ひが天てんからくだって、さきの五十人にんの長ちょうふたりと、その部下ぶかの五十人にんずつとを焼やき尽つくしました。しかし今いまわたしの命いのちをあなたの目めに尊たっといものとみなしてください」。
1:15 その時とき、主しゅの使つかいはエリヤに言いった、「彼かれと共ともに下くだりなさい。彼かれを恐おそれてはならない」。そこでエリヤは立たって、彼かれと共ともに下くだり、王おうのもとへ行いって、
1:16 王おうに言いった、「主しゅはこう仰おおせられます、『あなたはエクロンの神かみバアル・ゼブブに尋たずねようと使者ししゃをつかわしたが、それはイスラエルに、その言葉ことばを求もとむべき神かみがないためであるか。それゆえあなたは、登のぼった寝台しんだいから降おりることなく、必かならず死しぬであろう』」。
1:17 彼かれはエリヤが言いった主しゅの言葉ことばのとおりに死しんだが、彼かれに子こがなかったので、その兄弟きょうだいヨラムが彼かれに代かわって王おうとなった。これはユダの王おうヨシャパテの子こヨラムの第だい二年ねんである。
1:18 アハジヤのその他たの事績じせきは、イスラエルの王おうの歴代志れきだいしの書しょにしるされているではないか。
第2章 2:1 主しゅがつむじ風かぜをもってエリヤを天てんに上のぼらせようとされた時とき、エリヤはエリシャと共ともにギルガルを出でて行いった。2:2 エリヤはエリシャに言いった、「どうぞ、ここにとどまってください。主しゅはわたしをベテルにつかわされるのですから」。しかしエリシャは言いった、「主しゅは生いきておられます。またあなたも生いきておられます。わたしはあなたを離はなれません」。そして彼かれらはベテルへ下くだった。2:3 ベテルにいる預言者よげんしゃのともがらが、エリシャのもとに出でてきて彼かれに言いった、「主しゅがきょう、あなたの師事しじする主人しゅじんをあなたから取とられるのを知しっていますか」。彼かれは言いった、「はい、知しっています。あなたがたは黙だまっていてください」。 2:4 エリヤは彼かれに言いった、「エリシャよ、どうぞ、ここにとどまってください。主しゅはわたしをエリコにつかわされるのですから」。しかしエリシャは言いった、「主しゅは生いきておられます。またあなたも生いきておられます。わたしはあなたを離はなれません」。そして彼かれらはエリコへ行いった。2:5 エリコにいた預言者よげんしゃのともがらが、エリシャのもとにきて彼かれに言いった、「主しゅがきょう、あなたの師事しじする主人しゅじんをあなたから取とられるのを知しっていますか」。彼かれは言いった、「はい、知しっています。あなたがたは黙だまっていてください」。 2:6 エリヤはまた彼かれに言いった、「どうぞ、ここにとどまってください。主しゅはわたしをヨルダンにつかわされるのですから」。しかし彼かれは言いった、「主しゅは生いきておられます。またあなたも生いきておられます。わたしはあなたを離はなれません」。そしてふたりは進すすんで行いった。2:7 預言者よげんしゃのともがら五十人にんも行いって、彼かれらにむかって、はるかに離はなれて立たっていた。彼かれらふたりは、ヨルダンのほとりに立たったが、2:8 エリヤは外套がいとうを取とり、それを巻まいて水みずを打うつと、水みずが左右さゆうに分わかれたので、ふたりはかわいた土つちの上うえを渡わたることができた。 2:9 彼かれらが渡わたったとき、エリヤはエリシャに言いった、「わたしが取とられて、あなたを離はなれる前まえに、あなたのしてほしい事ことを求もとめなさい」。エリシャは言いった、「どうぞ、あなたの霊れいの二つの分ぶんをわたしに継つがせてください」。2:10 エリヤは言いった、「あなたはむずかしい事ことを求もとめる。あなたがもし、わたしが取とられて、あなたを離はなれるのを見みるならば、そのようになるであろう。しかし見みないならば、そのようにはならない」。2:11 彼かれらが進すすみながら語かたっていた時とき、火ひの車くるまと火ひの馬うまがあらわれて、ふたりを隔へだてた。そしてエリヤはつむじ風かぜに乗のって天てんにのぼった。2:12 エリシャはこれを見みて「わが父ちちよ、わが父ちちよ、イスラエルの戦車せんしゃよ、その騎兵きへいよ」と叫さけんだが、再ふたたび彼かれを見みなかった。 そこでエリシャは自分じぶんの着物きものをつかんで、それを二つに裂さき、2:13 またエリヤの身みから落おちた外套がいとうを取とり上あげ、帰かえってきてヨルダンの岸きしに立たった。2:14 そしてエリヤの身みから落おちたその外套がいとうを取とって水みずを打うち、「エリヤの神かみ、主しゅはどこにおられますか」と言いい、彼かれが水みずを打うつと、水みずは左右さゆうに分わかれたので、エリシャは渡わたった。 2:15 エリコにいる預言者よげんしゃのともがらは彼かれの近ちかづいて来くるのを見みて、「エリヤの霊れいがエリシャの上うえにとどまっている」と言いった。そして彼かれらは来きて彼かれを迎むかえ、その前まえに地ちに伏ふして、2:16 彼かれに言いった、「しもべらの所ところに力ちからの強つよい者ものが五十人にんいます。どうぞ彼かれらをつかわして、あなたの主人しゅじんを尋たずねさせてください。主しゅの霊れいが彼かれを引ひきあげて、彼かれを山やまか谷たにに投なげたのかも知しれません」。エリシャは「つかわしてはならない」と言いったが、2:17 彼かれの恥はじるまで、しいたので、彼かれは「つかわしなさい」と言いった。それで彼かれらは五十人にんの者ものをつかわし、三日かの間あいだ尋たずねたが、彼かれを見みいださなかった。2:18 エリシャのなおエリコにとどまっている時とき、彼かれらが帰かえってきたので、エリシャは彼かれらに言いった、「わたしは、あなたがたに、行いってはならないと告つげたではないか」。 2:19 町まちの人々ひとびとはエリシャに言いった、「見みられるとおり、この町まちの場所ばしょは良よいが水みずが悪わるいので、この地ちは流産りゅうざんを起おこすのです」。2:20 エリシャは言いった、「新あたらしい皿さらに塩しおを盛もって、わたしに持もってきなさい」。彼かれらは持もってきた。2:21 エリシャは水みずの源みなもとへ出でて行いって、塩しおをそこに投なげ入いれて言いった、「主しゅはこう仰おおせられる、『わたしはこの水みずを良よい水みずにした。もはやここには死しも流産りゅうざんも起おこらないであろう』」。2:22 こうしてその水みずはエリシャの言いったとおりに良よい水みずになって今日こんにちに至いたっている。 2:23 彼かれはそこからベテルへ上のぼったが、上のぼって行いく途中とちゅう、小ちいさい子供こどもらが町まちから出でてきて彼かれをあざけり、彼かれにむかって「はげ頭あたまよ、のぼれ。はげ頭あたまよ、のぼれ」と言いったので、2:24 彼かれはふり返かえって彼かれらを見み、主しゅの名なをもって彼かれらをのろった。すると林はやしの中なかから二頭とうの雌めぐまが出でてきて、その子こ供ともらのうち四十二人にんを裂さいた。2:25 彼かれはそこからカルメル山やまへ行いき、そこからサマリヤに帰かえった。 第3章 3:1 ユダの王おうヨシャパテの第だい十八年ねんにアハブの子こヨラムはサマリヤでイスラエルの王おうとなり、十二年ねん世よを治おさめた。3:2 彼かれは主しゅの目めの前まえに悪あくをおこなったが、その父母ふぼのようではなかった。彼かれがその父ちちの つくったバアルの石柱せきちゅうを除のぞいたからである。3:3 しかし彼かれはイスラエルに罪つみを犯おかさせたネバテの子こヤラベアムの罪つみにつき従したがって、それを離はなれなかった。 3:4 モアブの王おうメシャは羊ひつじの飼育しいく者もので、十万の小羊こひつじと、十万の雄羊おひつじの毛けとを年々ねんねんイスラエルの王おうに納おさめていたが、3:5 アハブが死しんだ後のち、モアブの王おうはイスラエルの王おうにそむいた。3:6 そこでヨラム王おうはその時ときサマリヤを出でて、イスラエルびとをことごとく集あつめ、3:7 また、人ひとをユダの王おうヨシャパテにつかわし、「モアブの王おうはわたしにそむきました。あなたはモアブと戦たたかうために、わたしと一緒いっしょに行いかれませんか」と言いわせた。彼かれは言いった、「行いきましょう。わたしはあなたと一つです。わたしの民たみはあなたの民たみと一つです。わたしの馬うまはあなたの馬うまと一つです」。3:8 彼かれはまた言いった、「われわれはどの道みちを上のぼるのですか」。ヨラムは答こたえた、「エドムの荒野あらのの道みちを上のぼりましょう」。 3:9 こうしてイスラエルの王おうはユダの王おうおよびエドムの王おうと共ともに出でて行いった。しかし彼かれらは回まわり道みちをして、七日なぬかの間あいだ進すすんだが、軍勢ぐんぜいとそれに従したがう家畜かちくの飲のむ水みずがなかったので、3:10 イスラエルの王おうは言いった、「ああ、主しゅは、この三人にんの王おうをモアブの手てに渡わたそうとして召めし集あつめられたのだ」。3:11 ヨシャパテは言いった、「われわれが主しゅに問とうことのできる主しゅの預言者よげんしゃはここにいませんか」。イスラエルの王おうのひとりの家来けらいが答こたえた、「エリヤの手てに水みずを注そそいだシャパテの子こエリシャがここにいます」。3:12 ヨシャパテは言いった、「主しゅの言葉ことばが彼かれにあります」。そこでイスラエルの王おうとヨシャパテとエドムの王おうとは彼かれのもとへ下くだっていった。 3:13 エリシャはイスラエルの王おうに言いった、「わたしはあなたとなんのかかわりがありますか。あなたの父上ちちうえの預言者よげんしゃたちと母上ははうえの預言者よげんしゃたちの所ところへ行いきなさい」。イスラエルの王おうは彼かれに言いった、「いいえ、主しゅがこの三人にんの王おうをモアブの手てに渡わたそうとして召めし集あつめられたのです」。3:14 エリシャは言いった、「わたしの仕つかえる万軍ばんぐんの主しゅは生いきておられます。わたしはユダの王おうヨシャパテのためにするのでなければ、あなたを顧かえりみ、あなたに会あうことはしないのだが、3:15 いま楽人がくじんをわたしの所ところに連つれてきなさい」。そこで楽人がくじんが楽がくを奏そうすると、主しゅの手てが彼かれに臨のぞんで、3:16 彼かれは言いった、「主しゅはこう仰おおせられる、『わたしはこの谷たにを水みずたまりで満みたそう』。3:17 これは主しゅがこう仰おおせられるからである、『あなたがたは風かぜも雨あめも見みないのに、この谷たにに水みずが満みちて、あなたがたと、その家畜かちくおよび獣けものが飲のむであろう』。3:18 これは主しゅの目めには小ちいさい事ことである。主しゅはモアブびとをも、あなたがたの手てに渡わたされる。3:19 そしてあなたがたはすべての堅固けんごな町まちと、すべての良よい町まちを撃うち、すべての良よい木きを切きり倒たおし、すべての水みずの井戸いどをふさぎ、石いしをもって地ちのすべての良よい所ところを荒あらすであろう」。3:20 あくる朝あさになって、供そなえ物ものをささげる時ときに、水みずがエドムの方ほうから流ながれてきて、水みずは国くにに満みちた。 3:21 さてモアブびとは皆みな、王おうたちが自分じぶんたちを攻せめるために上のぼってきたのを聞きいたので、よろいを着きることのできる者ものを、老おいも若わかきもことごとく召集しょうしゅうして、国境こっきょうに配置はいちしたが、3:22 朝あさはやく起おきて、太陽たいようがのぼって水みずを照てらしたとき、モアブびとは目めの前まえに血ちのように赤あかい水みずを見みたので、3:23 彼かれらは言いった、「これは血ちだ、きっと王おうたちが互たがいに戦たたかって殺ころし合あったのだ。だから、モアブよ、ぶんどりに行いきなさい」。3:24 しかしモアブびとがイスラエルの陣営じんえいに行いくと、イスラエルびとは立たちあがってモアブびとを撃うったので、彼かれらはイスラエルの前まえから逃にげ去さった。イスラエルびとは進すすんで、モアブびとを撃うち、その国くににはいって、3:25 町々まちまちを滅ほろぼし、おのおの石いしを一つずつ、地ちのすべての良よい所ところに投なげて、これに満みたし、水みずの井戸いどをことごとくふさぎ、良よい木きをことごとく切きり倒たおして、ただキル・ハラセテはその名なを残のこすのみとなったが、石いしを投なげる者ものがこれを囲かこんで撃うち滅ほろぼした。3:26 モアブの王おうは戦たたかいがあまりに激はげしく、当あたりがたいのを見みて、つるぎを抜ぬく者もの七百人にんを率ひきい、エドムの王おうの所ところに突つき入はいろうとしたが、果はたさなかったので、3:27 自分じぶんの位くらいを継つぐべきその長子ちょうしをとって城壁じょうへきの上うえで燔祭はんさいとしてささげた。その時ときイスラエルに大おおいなる憤いきどおりが臨のぞんだので、彼かれらは彼かれをすてて自分じぶんの国くにに帰かえった。 第4章 4:1 預言者よげんしゃのともがらの、ひとりの妻つまがエリシャに呼よばわって言いった、「あなたのしもべであるわたしの夫おっとが死しにました。ごぞんじのように、あなたのしもべは主しゅを恐おそれる者ものでありましたが、今いま、債さい主しゅがきて、わたしのふたりの子供こどもを取とって奴隷どれいにしようとしているのです」。4:2 エリシャは彼女かのじょに言いった、「あなたのために何なにをしましょうか。あなたの家いえにどんな物ものがあるか、言いいなさい」。彼女かのじょは言いった、「一びんの油あぶらのほかは、はしための家いえに何なにもありません」。4:3 彼かれは言いった、「ほかへ行いって、隣となりの人々ひとびとから器うつわを借かりなさい。あいた器うつわを借かりなさい。少すこしばかりではいけません。4:4 そして内うちにはいって、あなたの子供こどもたちと一緒いっしょに戸との内うちに閉とじこもり、そのすべての器うつわに油あぶらをついで、いっぱいになったとき、一つずつそれを取とりのけておきなさい」。4:5 彼女かのじょは彼かれを離はなれて去さり、子供こどもたちと一緒いっしょに戸との内うちに閉とじこもり、子供こどもたちの持もって来くる器うつわに油あぶらをついだ。4:6 油あぶらが満みちたとき、彼女かのじょは子供こどもに「もっと器うつわを持もってきなさい」と言いったが、子供こどもが「器うつわはもうありません」と言いったので、油あぶらはとまった。4:7 そこで彼女かのじょは神かみの人ひとのところにきて告つげたので、彼かれは言いった、「行いって、その油あぶらを売うって負債ふさいを払はらいなさい。あなたと、あなたの子供こどもたちはその残のこりで暮くらすことができます」。 4:8 ある日ひエリシャはシュネムへ行いったが、そこにひとりの裕福ゆうふくな婦人ふじんがいて、しきりに彼かれに食事しょくじをすすめたので、彼かれはそこを通とおるごとに、そこに寄よって食事しょくじをした。4:9 その女おんなは夫おっとに言いった、「いつもわたしたちの所ところを通とおるあの人ひとは確たしかに神かみの聖せいなる人ひとです。4:10 わたしたちは屋上おくじょうに壁かべのある一つの小ちいさいへやを造つくり、そこに寝台しんだいと机つくえといすと燭台しょくだいとを彼かれのために備そなえましょう。そうすれば彼かれがわたしたちの所ところに来くるとき、そこに、はいることができます」。 4:11 さて、ある日ひエリシャはそこにきて、そのへやにはいり、そこに休やすんだが、4:12 彼かれはそのしもべゲハジに「このシュネムの女おんなを呼よんできなさい」と言いった。彼かれがその女おんなを呼よぶと、彼女かのじょはきてエリシャの前まえに立たったので、4:13 エリシャはゲハジに言いった、「彼女かのじょに言いいなさい、『あなたはこんなにねんごろに、わたしたちのために心こころを用もちいられたが、あなたのためには何なにをしたらよいでしょうか。王おうまたは軍勢ぐんぜいの長ちょうにあなたの事ことをよろしく頼たのむことをお望のぞみですか』」。彼女かのじょは答こたえて言いった、「わたしは自分じぶんの民たみのうちに住すんでいます」。4:14 エリシャは言いった、「それでは彼女かのじょのために何なにをしようか」。ゲハジは言いった、「彼女かのじょには子供こどもがなく、その夫おっとは老おいています」。4:15 するとエリシャが「彼女かのじょを呼よびなさい」と言いったので、彼女かのじょを呼よぶと、来きて戸口とぐちに立たった。4:16 エリシャは言いった、「来年らいねんの今いまごろ、あなたはひとりの子こを抱だくでしょう」。彼女かのじょは言いった、「いいえ、わが主しゅよ、神かみの人ひとよ、はしためを欺あざむかないでください」。4:17 しかし女おんなはついに身みごもって、エリシャが彼女かのじょに言いったように、次つぎの年ねんのそのころに子こを産うんだ。 4:18 その子こが成長せいちょうして、ある日ひ、刈入かりいれびとの所ところへ出でていって、父ちちのもとへ行いったが、4:19 父ちちにむかって「頭あたまが、頭あたまが」と言いったので、父ちちはしもべに「彼かれを母ははのもとへ背負せおっていきなさい」と言いった。4:20 彼かれを背負せおって母ははのもとへ行いくと、昼ひるまで母ははのひざの上うえにすわっていたが、ついに死しんだ。4:21 母ははは上あがっていって、これを神かみの人ひとの寝台しんだいの上うえに置おき、戸とを閉とじて出でてきた。4:22 そして夫おっとを呼よんで言いった、「どうぞ、しもべひとりと、ろば一頭とうをわたしにかしてください。急いそいで神かみの人ひとの所ところへ行いって、また帰かえってきます」。4:23 夫おっとは言いった、「どうしてきょう彼かれの所ところへ行いこうとするのか。きょうは、ついたちでもなく、安息日あんそくにちでもない」。彼女かのじょは言いった、「よろしいのです」。4:24 そして彼女かのじょはろばにくらを置おいて、しもべに言いった、「速はやく駆かけさせなさい。わたしが命めいじる時ときでなければ、歩調ほちょうをゆるめてはなりません」。4:25 こうして彼女かのじょは出発しゅっぱつしてカルメル山やまへ行いき、神かみの人ひとの所ところへ行いった。 神かみの人ひとは彼女かのじょの近ちかづいてくるのを見みて、しもべゲハジに言いった、「向むこうから、あのシュネムの女おんなが来くる。4:26 すぐ走はしって行いって、彼女かのじょを迎むかえて言いいなさい、『あなたは無事ぶじですか。あなたの夫おっとは無事ぶじですか。あなたの子供こどもは無事ぶじですか』」。彼女かのじょは答こたえた、「無事ぶじです」。4:27 ところが彼女かのじょは山やまにきて、神かみの人ひとの所ところへくるとエリシャの足あしにすがりついた。ゲハジが彼女かのじょを追おいのけようと近ちかよった時とき、神かみの人ひとは言いった、「かまわずにおきなさい。彼女かのじょは心こころに苦くるしみがあるのだから。主しゅはそれを隠かくして、まだわたしにお告つげにならないのだ」。4:28 そこで彼女かのじょは言いった、「わたしがあなたに子こを求もとめましたか。わたしを欺あざむかないでくださいと言いったではありませんか」。4:29 エリシャはゲハジに言いった、「腰こしをひきからげ、わたしのつえを手てに持もって行いきなさい。だれに会あっても、あいさつしてはならない。またあなたにあいさつする者ものがあっても、それに答こたえてはならない。わたしのつえを子供こどもの顔かおの上うえに置おきなさい」。4:30 子供こどもの母ははは言いった、「主しゅは生いきておられます。あなたも生いきておられます。わたしはあなたを離はなれません」。そこでエリシャはついに立たちあがって彼女かのじょのあとについて行いった。4:31 ゲハジは彼かれらの先さきに行いって、つえを子供こどもの顔かおの上うえに置おいたが、なんの声こえもなく、生いきかえったしるしもなかったので、帰かえってきてエリシャに会あい、彼かれに告つげて「子供こどもはまだ目めをさましません」と言いった。 4:32 エリシャが家いえにはいって見みると、子供こどもは死しんで、寝台しんだいの上うえに横よこたわっていたので、4:33 彼かれははいって戸とを閉とじ、彼かれらふたりだけ内うちにいて主しゅに祈いのった。4:34 そしてエリシャが上あがって子供こどもの上うえに伏ふし、自分じぶんの口くちを子供こどもの口くちの上うえに、自分じぶんの目めを子供こどもの目めの上うえに、自分じぶんの両手りょうてを子供こどもの両手りょうての上うえにあて、その身みを子供こどもの上うえに伸のばしたとき、子供こどものからだは暖あたたかになった。4:35 こうしてエリシャは再ふたたび起おきあがって、家いえの中なかをあちらこちらと歩あゆみ、また上うえがって、その身みを子供こどもの上うえに伸のばすと、子供こどもは七たびくしゃみをして目めを開ひらいた。4:36 エリシャはただちにゲハジを呼よんで、「あのシュネムの女おんなを呼よべ」と言いったので、彼女かのじょを呼よんだ。彼女かのじょがはいってくるとエリシャは言いった、「あなたの子供こどもをつれて行いきなさい」。4:37 彼女かのじょははいってきて、エリシャの足あしもとに伏ふし、地ちに身みをかがめた。そしてその子こ供ともを取とりあげて出でていった。 4:38 エリシャはギルガルに帰かえったが、その地ちにききんがあった。預言者よげんしゃのともがらが彼かれの前まえに座ざしていたので、エリシャはそのしもべに言いった、「大おおきなかまをすえて、預言者よげんしゃのともがらのために野菜やさいの煮物にものをつくりなさい」。4:39 彼かれらのうちのひとりが畑はたけに出でていって青物あおものをつんだが、つる草くさのあるのを見みて、その野のうりを一包つつみつんできて、煮物にもののかまの中なかに切きり込こんだ。彼かれらはそれが何なにであるかを知しらなかったからである。4:40 やがてこれを盛もって人々ひとびとに食たべさせようとしたが、彼かれらがその煮物にものを食たべようとした時とき、叫さけんで、「ああ神かみの人ひとよ、かまの中なかに、たべると死しぬものがはいっています」と言いって、食たべることができなかったので、4:41 エリシャは「それでは粉こなを持もって来きなさい」と言いって、それをかまに投なげ入いれ、「盛もって人々ひとびとに食たべさせなさい」と言いった。かまの中なかには、なんの毒物どくぶつもなくなった。 4:42 その時とき、バアル・シャリシャから人ひとがきて、初穂はつほのパンと、大麦おおむぎのパン二十個こと、新穀しんこく一袋ふくろとを神かみの人ひとのもとに持もってきたので、エリシャは「人々ひとびとに与あたえて食たべさせなさい」と言いったが、4:43 その召使めしつかいは言いった、「どうしてこれを百人にんの前まえに供そなえるのですか」。しかし彼かれは言いった、「人々ひとびとに与あたえて食たべさせなさい。主しゅはこう言いわれる、『彼かれらは食たべてなお余あますであろう』」。4:44 そこで彼かれはそれを彼かれらの前まえに供そなえたので、彼かれらは食たべてなお余あました。主しゅの言葉ことばのとおりであった。 第5章 5:1 スリヤ王おうの軍勢ぐんぜいの長ちょうナアマンはその主君しゅくんに重おもんじられた有力ゆうりょくな人ひとであった。主しゅがかつて彼かれを用もちいてスリヤに勝利しょうりを得えさせられたからである。彼かれは大だい勇士ゆうしであったが、らい病びょうをわずらっていた。5:2 さきにスリヤびとが略奪りゃくだつ隊たいを組くんで出でてきたとき、イスラエルの地ちからひとりの少女しょうじょを捕とらえて行いった。彼女かのじょはナアマンの妻つまに仕つかえたが、5:3 その女おんな主人しゅじんにむかって、「ああ、御ご主人しゅじんがサマリヤにいる預言者よげんしゃと共ともにおられたらよかったでしょうに。彼かれはそのらい病びょうをいやしたことでしょう」と言いったので、5:4 ナアマンは行いって、その主君しゅくんに、「イスラエルの地ちからきた娘むすめがこういう事ことを言いいました」と告つげると、5:5 スリヤ王おうは言いった、「それでは行いきなさい。わたしはイスラエルの王おうに手紙てがみを書かきましょう」。 そこで彼かれは銀ぎん十タラントと、金きん六千シケルと、晴はれ着ぎ十着ちゃくを携たずさえて行いった。5:6 彼かれがイスラエルの王おうに持もって行いった手紙てがみには、「この手紙てがみがあなたにとどいたならば、わたしの家来けらいナアマンを、あなたにつかわしたことと御ご承知しょうちください。あなたに彼かれのらい病びょうをいやしていただくためです」とあった。5:7 イスラエルの王おうはその手紙てがみを読よんだ時とき、衣ころもを裂さいて言いった、「わたしは殺ころしたり、生いかしたりすることのできる神かみであろうか。どうしてこの人ひとは、らい病人びょうにんをわたしにつかわして、それをいやせと言いうのか。あなたがたは、彼かれがわたしに争あらそいをしかけているのを知しって警戒けいかいするがよい」。 5:8 神かみの人ひとエリシャは、イスラエルの王おうがその衣ころもを裂さいたことを聞きき、王おうに人ひとをつかわして言いった、「どうしてあなたは衣ころもを裂さいたのですか。彼かれをわたしのもとにこさせなさい。そうすれば彼かれはイスラエルに預言者よげんしゃのあることを知しるようになるでしょう」。5:9 そこでナアマンは馬うまと車くるまとを従したがえてきて、エリシャの家いえの入口いりぐちに立たった。5:10 するとエリシャは彼かれに使者ししゃをつかわして言いった、「あなたはヨルダンへ行いって七たび身みを洗あらいなさい。そうすれば、あなたの肉にくはもとにかえって清きよくなるでしょう」。5:11 しかしナアマンは怒いかって去さり、そして言いった、「わたしは、彼かれがきっとわたしのもとに出でてきて立たち、その神かみ、主しゅの名なを呼よんで、その箇所かしょの上うえに手てを動うごかして、らい病びょうをいやすのだろうと思おもった。5:12 ダマスコの川かわアバナとパルパルはイスラエルのすべての川かわ水みずにまさるではないか。わたしはこれらの川かわに身みを洗あらって清きよまることができないのであろうか」。こうして彼かれは身みをめぐらし、怒いかって去さった。5:13 その時とき、しもべたちは彼かれに近ちかよって言いった、「わが父ちちよ、預言者よげんしゃがあなたに、何なにか大おおきな事ことをせよと命めいじても、あなたはそれをなさらなかったでしょうか。まして彼かれはあなたに『身みを洗あらって清きよくなれ』と言いうだけではありませんか」。5:14 そこでナアマンは下くだって行いって、神かみの人ひとの言葉ことばのように七たびヨルダンに身みを浸ひたすと、その肉にくがもとにかえって幼おさな子ごの肉にくのようになり、清きよくなった。 5:15 彼かれはすべての従者じゅうしゃを連つれて神かみの人ひとのもとに帰かえってきて、その前まえに立たって言いった、「わたしは今いま、イスラエルのほか、全ぜん地ちのどこにも神かみのおられないことを知しりました。それゆえ、どうぞ、しもべの贈おくり物ものを受うけてください」。5:16 エリシャは言いった、「わたしの仕つかえる主しゅは生いきておられる。わたしは何なにも受うけません」。彼かれはしいて受うけさせようとしたが、それを拒こばんだ。5:17 そこでナアマンは言いった、「もしお受うけにならないのであれば、どうぞ騾馬らばに二駄だの土つちをしもべにください。これから後のちしもべは、他たの神かみには燔祭はんさいも犠牲ぎせいもささげず、ただ主しゅにのみささげます。5:18 どうぞ主しゅがこの事ことを、しもべにおゆるしくださるように。すなわち、わたしの主君しゅくんがリンモンの宮みやにはいって、そこで礼れい拝はいするとき、わたしの手てによりかかることがあり、またわたしもリンモンの宮みやで身みをかがめることがありましょう。わたしがリンモンの宮みやで身みをかがめる時とき、どうぞ主しゅがその事ことを、しもべにおゆるしくださるように」。5:19 エリシャは彼かれに言いった、「安やすんじて行いきなさい」。 ナアマンがエリシャを離はなれて少すこし行いったとき、5:20 神かみの人ひとエリシャのしもべゲハジは言いった、「主人しゅじんはこのスリヤびとナアマンをいたわって、彼かれが携たずさえてきた物ものを受うけなかった。主しゅは生いきておられる。わたしは彼かれのあとを追おいかけて、彼かれから少すこし、物ものを受うけよう」。5:21 そしてゲハジはナアマンのあとを追おったが、ナアマンは自分じぶんのあとから彼かれが走はしってくるのを見みて、車くるまから降ふり、彼かれを迎むかえて、「変かわった事ことがあるのですか」と言いうと、5:22 彼かれは言いった、「無事ぶじです。主人しゅじんがわたしをつかわして言いわせます、『ただいまエフライムの山地さんちから、預言者よげんしゃのともがらのふたりの若者わかものが、わたしのもとに来きましたので、どうぞ彼かれらに銀ぎん一タラントと晴はれ着ぎ二着ちゃくを与あたえてください』」。5:23 ナアマンは、「どうぞ二タラントを受うけてください」と言いって彼かれにしい、銀ぎん二タラントを二つの袋ふくろに入いれ、晴はれ着ぎ二着ちゃくを添そえて、自分じぶんのふたりのしもべに渡わたしたので、彼かれらはそれを負おってゲハジの先さきに立たって進すすんだが、5:24 彼かれは丘おかにきたとき、それを彼かれらの手てから受うけ取とって家いえのうちにおさめ、人々ひとびとを送おくりかえしたので、彼かれらは去さった。5:25 彼かれがはいって主人しゅじんの前まえに立たつと、エリシャは彼かれに言いった、「ゲハジよ、どこへ行いってきたのか」。彼かれは言いった、「しもべはどこへも行いきません」。5:26 エリシャは言いった、「あの人ひとが車くるまをはなれて、あなたを迎むかえたとき、わたしの心こころはあなたと一緒いっしょにそこにいたではないか。今いまは金きんを受うけ、着物きものを受うけ、オリブ畑はたけ、ぶどう畑はたけ、羊ひつじ、牛うし、しもべ、はしためを受うける時ときであろうか。5:27 それゆえ、ナアマンのらい病びょうはあなたに着つき、ながくあなたの子孫しそんに及およぶであろう」。彼かれがエリシャの前まえを出でていくとき、らい病びょうが発はっして雪ゆきのように白しろくなっていた。 第6章 6:1 さて預言者よげんしゃのともがらはエリシャに言いった、「わたしたちがあなたと共ともに住すんでいる所ところは狭せまくなりましたので、6:2 わたしたちをヨルダンに行いかせ、そこからめいめい一本ぽんずつ材木ざいもくを取とってきて、わたしたちの住すむ場所ばしょを造つくらせてください」。エリシャは言いった、「行いきなさい」。6:3 時ときにそのひとりが、「どうぞあなたも、しもべらと一緒いっしょに行いってください」と言いったので、エリシャは「行いきましょう」と答こたえた。6:4 そしてエリシャは彼かれらと一緒いっしょに行いった。彼かれらはヨルダンへ行いって木きを切きり倒たおしたが、6:5 ひとりが材木ざいもくを切きり倒たおしているとき、おのの頭あたまが水みずの中なかに落おちたので、彼かれは叫さけんで言いった。「ああ、わが主しゅよ。これは借かりたものです」。6:6 神かみの人ひとは言いった、「それはどこに落おちたのか」。彼かれがその場所ばしょを知しらせると、エリシャは一本ぽんの枝えだを切きり落おとし、そこに投なげ入いれて、そのおのの頭あたまを浮うかばせ、6:7 「それを取とりあげよ」と言いったので、その人ひとは手てを伸のべてそれを取とった。 6:8 かつてスリヤの王おうがイスラエルと戦たたかっていたとき、家来けらいたちと評議ひょうぎして「しかじかの所ところにわたしの陣じんを張はろう」と言いうと、6:9 神かみの人ひとはイスラエルの王おうに「あなたは用心ようじんして、この所ところをとおってはなりません。スリヤびとがそこに下くだってきますから」と言いい送おくった。6:10 それでイスラエルの王おうは神かみの人ひとが自分じぶんに告つげてくれた所ところに人ひとをつかわし、警戒けいかいしたので、その所ところでみずからを防ふせぎえたことは一、二回かいにとどまらなかった。 6:11 スリヤの王おうはこの事ことのために心こころを悩なやまし、家来けらいたちを召めして言いった、「われわれのうち、だれがイスラエルの王おうと通つうじているのか、わたしに告つげる者ものはないか」。6:12 ひとりの家来けらいが言いった、「王おう、わが主しゅよ、だれも通つうじている者ものはいません。ただイスラエルの預言者よげんしゃエリシャが、あなたが寝室しんしつで語かたられる言葉ことばでもイスラエルの王おうに告つげるのです」。6:13 王おうは言いった、「彼かれがどこにいるか行いって捜さがしなさい。わたしは人ひとをやって彼かれを捕とらえよう」。時ときに「彼かれはドタンにいる」と王おうに告つげる者ものがあったので、6:14 王おうはそこに馬うまと戦車せんしゃおよび大軍たいぐんをつかわした。彼かれらは夜よるのうちに来きて、その町まちを囲かこんだ。 6:15 神かみの人ひとの召使めしつかいが朝あさ早はやく起おきて出でて見みると、軍勢ぐんぜいが馬うまと戦車せんしゃをもって町まちを囲かこんでいたので、その若者わかものはエリシャに言いった、「ああ、わが主しゅよ、わたしたちはどうしましょうか」。6:16 エリシャは言いった、「恐おそれることはない。われわれと共ともにいる者ものは彼かれらと共ともにいる者ものよりも多おおいのだから」。6:17 そしてエリシャが祈いのって「主しゅよ、どうぞ、彼かれの目めを開ひらいて見みさせてください」と言いうと、主しゅはその若者わかものの目めを開ひらかれたので、彼かれが見みると、火ひの馬うまと火ひの戦車せんしゃが山やまに満みちてエリシャのまわりにあった。6:18 スリヤびとがエリシャの所ところに下くだってきた時とき、エリシャは主しゅに祈いのって言いった、「どうぞ、この人々ひとびとの目めをくらましてください」。するとエリシャの言葉ことばのとおりに彼かれらの目めをくらまされた。6:19 そこでエリシャは彼かれらに「これはその道みちではない。これはその町まちでもない。わたしについてきなさい。わたしはあなたがたを、あなたがたの尋たずねる人ひとの所ところへ連つれて行いきましょう」と言いって、彼かれらをサマリヤへ連つれて行いった。 6:20 彼かれらがサマリヤにはいったとき、エリシャは言いった、「主しゅよ、この人々ひとびとの目めを開ひらいて見みさせてください」。主しゅは彼かれらの目めを開ひらかれたので、彼かれらが見みると、見みよ、彼かれらはサマリヤのうちに来きていた。6:21 イスラエルの王おうは彼かれらを見みて、エリシャに言いった、「わが父ちちよ、彼かれらを撃うち殺ころしましょうか。彼かれらを撃うち殺ころしましょうか」。6:22 エリシャは答こたえた、「撃うち殺ころしてはならない。あなたはつるぎと弓ゆみをもって、捕虜ほりょにした者ものどもを撃うち殺ころすでしょうか。パンと水みずを彼かれらの前まえに供そなえて食くい飲のみさせ、その主君しゅくんのもとへ行いかせなさい」。6:23 そこで王おうは彼かれらのために盛さかんなふるまいを設もうけた。彼かれらが食くい飲のみを終おわると彼かれらを去さらせたので、その主君しゅくんの所ところへ帰かえった。スリヤの略奪りゃくだつ隊たいは再ふたたびイスラエルの地ちにこなかった。 6:24 この後のちスリヤの王おうベネハダデはその全ぜん軍ぐんを集あつめ、上のぼってきてサマリヤを攻せめ囲かこんだので、6:25 サマリヤに激はげしいききんが起たった。すなわち彼かれらがこれを攻せめ囲かこんだので、ついに、ろばの頭あたま一つが銀ぎん八十シケルで売うられ、はとのふん一カブの四分ぶんの一が銀ぎん五シケルで売うられるようになった。6:26 イスラエルの王おうが城壁じょうへきの上うえをとおっていた時とき、ひとりの女おんなが彼かれに呼よばわって、「わが主しゅ、王おうよ、助たすけてください」と言いったので、6:27 彼かれは言いった、「もし主しゅがあなたを助たすけられないならば、何なにをもってわたしがあなたを助たすけることができよう。打うち場ばの物ものをもってか、酒さかぶねの物ものをもってか」。6:28 そして王おうは女おんなに尋たずねた、「何事なにごとなのですか」。彼女かのじょは答こたえた、「この女おんなはわたしにむかって『あなたの子こをください。わたしたちは、きょうそれを食たべ、あす、わたしの子こを食たべましょう』と言いいました。6:29 それでわたしたちは、まずわたしの子こを煮にて食たべましたが、次つぎの日ひわたしが彼女かのじょにむかって『あなたの子こをください。わたしたちはそれを食たべましょう』と言いいますと、彼女かのじょはその子こを隠かくしました」。6:30 王おうはその女おんなの言葉ことばを聞きいて、衣ころもを裂さき、――王おうは城壁じょうへきの上うえをとおっていたが、民たみが見みると、その身みに荒布あらぬのを着つけていた――6:31 そして王おうは言いった「きょう、シャパテの子こエリシャの首くびがその肩かたの上うえにすわっているならば、神かみがどんなにでもわたしを罰ばっしてくださるように」。 6:32 さてエリシャはその家いえに座ざしていたが、長老ちょうろうたちもきて彼かれと共ともに座ざした。王おうは自分じぶんの所ところから人ひとをつかわしたが、エリシャはその使者ししゃがまだ着つかないうちに長老ちょうろうたちに言いった、「あなたがたは、この人ひとを殺ころす者ものがわたしの首くびを取とるために、人ひとをつかわすのを見みますか。その使者ししゃがきたならば、戸とを閉とじて、内うちに入いれてはなりません。彼かれのうしろに、その主君しゅくんの足音あしおとがするではありませんか」。6:33 彼かれがなお彼かれらと語かたっているうちに、王おうは彼かれのもとに下くだってきて言いった、「この災わざわいは主しゅから出でたのです。わたしはどうしてこの上うえ、主しゅを待またなければならないでしょうか」。 第7章 7:1 エリシャは言いった、「主しゅの言葉ことばを聞ききなさい。主しゅはこう仰おおせられる、『あすの今いまごろサマリヤの門もんで、麦粉むぎこ一セアを一シケルで売うり、大麦おおむぎ二セアを一シケルで売うるようになるであろう』」。7:2 時ときにひとりの副官ふくかんすなわち王おうがその人ひとの手てによりかかっていた者ものが神かみの人ひとに答こたえて言いった、「たとい主しゅが天てんに窓まどを開ひらかれても、そんな事ことがありえましょうか」。エリシャは言いった、「あなたは自分じぶんの目めをもってそれを見みるであろう。しかしそれを食たべることはなかろう」。 7:3 さて町まちの門もんの入口いりぐちに四人にんのらい病人びょうにんがいたが、彼かれらは互たがいに言いった、「われわれはどうしてここに座ざして死しを待またねばならないのか。7:4 われわれがもし町まちにはいろうといえば、町まちには食物しょくもつが尽つきているから、われわれはそこで死しぬであろう。しかしここに座ざしていても死しぬのだ。いっその事こと、われわれはスリヤびとの陣営じんえいへ逃にげて行いこう。もし彼かれらがわれわれを生いかしておいてくれるならば、助たすかるが、たといわれわれを殺ころしても死しぬばかりだ」。7:5 そこで彼かれらはスリヤびとの陣営じんえいへ行いこうと、たそがれに立たちあがったが、スリヤびとの陣営じんえいのほとりに行いって見みると、そこにはだれもいなかった。7:6 これは主しゅがスリヤびとの軍勢ぐんぜいに戦車せんしゃの音おと、馬うまの音おと、大軍たいぐんの音おとを聞きかせられたので、彼かれらは互たがいに「見みよ、イスラエルの王おうがわれわれを攻せめるために、ヘテびとの王おうたちおよびエジプトの王おうたちを雇やとってきて、われわれを襲おそうのだ」と言いって、7:7 たそがれに立たって逃にげ、その天幕てんまくと、馬うまと、ろばを捨すて、陣営じんえいをそのままにしておいて、命いのちを全まっとうしようと逃にげたからである。7:8 そこでらい病人びょうにんたちは陣営じんえいのほとりに行いき、一つの天幕てんまくにはいって食くい飲のみし、そこから金銀きんぎん、衣服いふくを持もち出だしてそれを隠かくし、また来きて、他たの天幕てんまくに入はいり、そこからも持もち出だしてそれを隠かくした。 7:9 そして彼かれらは互たがいに言いった、「われわれのしている事ことはよくない。きょうは良よいおとずれのある日ひであるのに、黙だまっていて、夜明よあけまで待まつならば、われわれは罰ばつをこうむるであろう。さあ、われわれは行いって王おうの家族かぞくに告つげよう」。7:10 そこで彼かれらは来きて、町まちの門もんを守まもる者ものを呼よんで言いった、「わたしたちがスリヤびとの陣営じんえいに行いって見みると、そこにはだれの姿すがたも見みえず、また人声ひとごえもなく、ただ、馬うまとろばがつないであり、天幕てんまくはそのままでした」。7:11 そこで門もんを守まもる者ものは呼よばわって、それを王おうの家族かぞくのうちに知しらせた。7:12 王おうは夜よるのうちに起おきて、家来けらいたちに言いった、「スリヤびとがわれわれに対たいして図はかっている事ことをあなたがたに告つげよう。彼かれらは、われわれの飢うえているのを知しって、陣営じんえいを出でて野のに隠かくれ、『イスラエルびとが町まちを出でたら、いけどりにして、町まちに押おし入いろう』と考かんがえているのだ」。7:13 家来けらいのひとりが答こたえて言いった、「人々ひとびとに、ここに残のこっている馬うまのうち五頭とうを連つれてこさせてください。ここに残のこっているこれらの人々ひとびとは、すでに滅ほろびうせたイスラエルの全ぜん群衆ぐんしゅうと同おなじ運命うんめいにあうのですから。わたしたちは人ひとをやってうかがわせましょう」。7:14 そこで彼かれらはふたりの騎兵きへいを選えらんだ。王おうはそれをつかわし、「行いって見みよ」と言いって、スリヤびとの軍勢ぐんぜいのあとをつけさせたので、7:15 彼かれらはそのあとを追おってヨルダンまで行いったが、道みちにはすべて、スリヤびとがあわてて逃にげる時ときに捨すてていった衣服いふくと武器ぶきが散ちらばっていた。その使者ししゃは帰かえってきて、これを王おうに告つげた。 7:16 そこで民たみが出でていって、スリヤびとの陣営じんえいをかすめたので、麦粉むぎこ一セアは一シケルで売うられ、大麦おおむぎ二セアは一シケルで売うられ、主しゅの言葉ことばのとおりになった。7:17 王おうは自分じぶんがその人ひとの手てによりかかっていた、あの副官ふくかんを立たてて門もんを管理かんりさせたが、民たみは門もんで彼かれを踏ふみつけたので、彼かれは死しんだ。すなわち、王おうが神かみの人ひとのところに下くだってきた時とき、神かみの人ひとが言いったとおりであった。7:18 これは神かみの人ひとが王おうにむかって、「あすの今いまごろ、サマリヤの門もんで大麦おおむぎ二セアを一シケルで売うり、麦粉むぎこ一セアを一シケルで売うるようになるであろう」と言いったときに、7:19 その副官ふくかんが神かみの人ひとに答こたえて、「たとい主しゅが天てんに窓まどを開ひらかれても、そんな事ことがありえようか」と言いったからである。そのとき神かみの人ひとは「あなたは自分じぶんの目めをもってそれを見みるであろう。しかしそれを食たべることはなかろう」と言いったが、7:20 これはそのとおり彼かれに臨のぞんだ。すなわち民たみが門もんで彼かれを踏ふみつけたので彼かれは死しんだ。 第8章 8:1 エリシャはかつて、その子こを生いきかえらせてやった女おんなに言いったことがある。「あなたは、ここを立たって、あなたの家族かぞくと共ともに行いき、寄留きりゅうしようと思おもう所ところに寄留きりゅうしなさい。主しゅがききんを呼よび下くだされたので、七年ねんの間あいだそれがこの地ちに臨のぞむから」。8:2 そこで女おんなは立たって神かみの人ひとの言葉ことばのようにし、その家族かぞくと共ともに行いってペリシテびとの地ちに七年ねん寄留きりゅうした。8:3 七年ねんたって後のち、女おんなはペリシテびとの地ちから帰かえってきて、自分じぶんの家いえと畑はたけのために王おうに訴うったえようと出でていった。8:4 時ときに王おうは神かみの人ひとのしもべゲハジにむかって「エリシャがしたもろもろの大おおきな事ことをわたしに話はなしてください」と言いって、彼かれと物語ものがたっていた。8:5 すなわちエリシャが死人しにんを生いきかえらせた事ことを、ゲハジが王おうと物語ものがたっていたとき、その子こを生いきかえらせてもらった女おんなが、自分じぶんの家いえと畑はたけのために王おうに訴うったえてきたので、ゲハジは言いった、「わが主しゅ、王おうよ、これがその女おんなです。またこれがその子こで、エリシャが生いきかえらせたのです」。8:6 王おうがその女おんなに尋たずねると、彼女かのじょは王おうに話はなしたので、王おうは彼女かのじょのためにひとりの役人やくにんに命めいじて言いった、「すべて彼女かのじょに属ぞくする物もの、ならびに彼女かのじょがこの地ちを去さった日ひから今いままでのその畑はたけの産物さんぶつをことごとく彼女かのじょに返かえしなさい」。 8:7 さてエリシャはダマスコに来きた。時ときにスリヤの王おうベネハダデは病気びょうきであったが、「神かみの人ひとがここに来きた」と告つげる者ものがあったので、8:8 王おうはハザエルに言いった、「贈おくり物ものを携たずさえて行いって神かみの人ひとを迎むかえ、彼かれによって主しゅに『わたしのこの病気びょうきはなおりましょうか』と言いって尋たずねなさい」。8:9 そこでハザエルは彼かれを迎むかえようと、ダマスコのもろもろの良よい物ものをらくだ四十頭とうに載のせ、贈おくり物ものとして携たずさえ行いき、エリシャの前まえに立たって言いった、「あなたの子こ、スリヤの王おうベネハダデがわたしをあなたにつかわして、『わたしのこの病気びょうきはなおりましょうか』と言いわせています」。8:10 エリシャは彼かれに言いった、「行いって彼かれに『あなたは必かならずなおります』と告つげなさい。ただし主しゅはわたしに、彼かれが必かならず死しぬことを示しめされました」。8:11 そして神かみの人ひとがひとみを定さだめて彼かれの恥はじるまでに見みつめ、やがて泣なき出だしたので、8:12 ハザエルは言いった、「わが主しゅよ、どうして泣なかれるのですか」。エリシャは答こたえた、「わたしはあなたがイスラエルの人々ひとびとにしようとする害悪がいあくを知しっているからです。すなわち、あなたは彼かれらの城しろに火ひをかけ、つるぎをもって若者わかものを殺ころし、幼おさな子ごを投なげうち、妊 にんしんの女おんなを引ひき裂さくでしょう」。8:13 ハザエルは言いった、「しもべは一匹ぴきの犬いぬにすぎないのに、どうしてそんな大おおきな事ことをすることができましょう」。エリシャは言いった、「主しゅがわたしに示しめされました。あなたはスリヤの王おうとなるでしょう」。8:14 彼かれがエリシャのもとを去さって、主君しゅくんのところへ行いくと、「エリシャはあなたになんと言いったか」と尋たずねられたので、「あなたが必かならずなおるでしょうと、彼かれはわたしに告つげました」と答こたえた。8:15 しかし翌日よくじつになってハザエルは布ぬのを取とって水みずに浸ひたし、それをもって王おうの顔かおをおおったので、王おうは死しんだ。ハザエルは彼かれに代かわって王おうとなった。 8:16 イスラエルの王おうアハブの子こヨラムの第だい五年ねんに、ユダの王おうヨシャパテの子こヨラムが位くらいについた。8:17 彼かれは王おうとなったとき三十二歳さいで、八年ねんの間あいだエルサレムで世よを治おさめた。8:18 彼かれはアハブの家いえがしたようにイスラエルの王おうたちの道みちに歩あゆんだ。アハブの娘むすめが彼かれの妻つまであったからである。彼かれは主しゅの目めの前まえに悪あくをおこなったが、8:19 主しゅはしもべダビデのためにユダを滅ほろぼすことを好このまれなかった。すなわち主しゅは彼かれとその子孫しそんに常つねにともしびを与あたえると、彼かれに約束やくそくされたからである。 8:20 ヨラムの世よにエドムがそむいてユダの支配しはいを脱だっし、みずから王おうを立たてたので、8:21 ヨラムはすべての戦車せんしゃを従したがえてザイルにわたって行いき、その戦車せんしゃの指揮しき官かんたちと共ともに、夜よのうちに立たちあがって、彼かれを包囲ほういしているエドムびとを撃うった。しかしヨラムの軍隊ぐんたいは天幕てんまくに逃にげ帰かえった。8:22 エドムはこのようにそむいてユダの支配しはいを脱だっし、今日こんにちに至いたっている。リブナもまた同時どうじにそむいた。8:23 ヨラムのその他たの事績じせきおよび彼かれがしたすべての事ことは、ユダの歴代志れきだいしの書しょにしるされているではないか。8:24 ヨラムはその先祖せんぞたちと共ともに ねむって、ダビデの町まちにその先祖せんぞたちと共ともに葬ほうむられ、その子こアハジヤが代かわって王おうとなった。 8:25 イスラエルの王おうアハブの子こヨラムの第だい十二年ねんにユダの王おうヨラムの子こアハジヤが位くらいについた。8:26 アハジヤは王おうとなったとき二十二歳さいで、エルサレムで一年ねん世よを治おさめた。その母ははは名なをアタリヤと言いって、イスラエルの王おうオムリの孫娘まごむすめであった。8:27 アハジヤはまたアハブの家いえの道みちに歩あゆみ、アハブの家いえがしたように主しゅの目めの前まえに悪あくをおこなった。彼かれはアハブの家いえの婿むこであったからである。 8:28 彼かれはアハブの子こヨラムと共ともに行いって、スリヤの王おうハザエルとラモテ・ギレアデで戦たたかったが、スリヤびとらはヨラムに傷きずを負おわせた。8:29 ヨラム王おうはそのスリヤの王おうハザエルと戦たたかうときにラマでスリヤびとに負おわされた傷きずをいやすため、エズレルに帰かえったが、ユダの王おうヨラムの子こアハジヤはアハブの子こヨラムが病やんでいたので、エズレルに下くだって彼かれをおとずれた。
2:1 主しゅがつむじ風かぜをもってエリヤを天てんに上のぼらせようとされた時とき、エリヤはエリシャと共ともにギルガルを出でて行いった。
2:2 エリヤはエリシャに言いった、「どうぞ、ここにとどまってください。主しゅはわたしをベテルにつかわされるのですから」。しかしエリシャは言いった、「主しゅは生いきておられます。またあなたも生いきておられます。わたしはあなたを離はなれません」。そして彼かれらはベテルへ下くだった。
2:3 ベテルにいる預言者よげんしゃのともがらが、エリシャのもとに出でてきて彼かれに言いった、「主しゅがきょう、あなたの師事しじする主人しゅじんをあなたから取とられるのを知しっていますか」。彼かれは言いった、「はい、知しっています。あなたがたは黙だまっていてください」。
2:4 エリヤは彼かれに言いった、「エリシャよ、どうぞ、ここにとどまってください。主しゅはわたしをエリコにつかわされるのですから」。しかしエリシャは言いった、「主しゅは生いきておられます。またあなたも生いきておられます。わたしはあなたを離はなれません」。そして彼かれらはエリコへ行いった。
2:5 エリコにいた預言者よげんしゃのともがらが、エリシャのもとにきて彼かれに言いった、「主しゅがきょう、あなたの師事しじする主人しゅじんをあなたから取とられるのを知しっていますか」。彼かれは言いった、「はい、知しっています。あなたがたは黙だまっていてください」。
2:6 エリヤはまた彼かれに言いった、「どうぞ、ここにとどまってください。主しゅはわたしをヨルダンにつかわされるのですから」。しかし彼かれは言いった、「主しゅは生いきておられます。またあなたも生いきておられます。わたしはあなたを離はなれません」。そしてふたりは進すすんで行いった。
2:7 預言者よげんしゃのともがら五十人にんも行いって、彼かれらにむかって、はるかに離はなれて立たっていた。彼かれらふたりは、ヨルダンのほとりに立たったが、
2:8 エリヤは外套がいとうを取とり、それを巻まいて水みずを打うつと、水みずが左右さゆうに分わかれたので、ふたりはかわいた土つちの上うえを渡わたることができた。
2:9 彼かれらが渡わたったとき、エリヤはエリシャに言いった、「わたしが取とられて、あなたを離はなれる前まえに、あなたのしてほしい事ことを求もとめなさい」。エリシャは言いった、「どうぞ、あなたの霊れいの二つの分ぶんをわたしに継つがせてください」。
2:10 エリヤは言いった、「あなたはむずかしい事ことを求もとめる。あなたがもし、わたしが取とられて、あなたを離はなれるのを見みるならば、そのようになるであろう。しかし見みないならば、そのようにはならない」。
2:11 彼かれらが進すすみながら語かたっていた時とき、火ひの車くるまと火ひの馬うまがあらわれて、ふたりを隔へだてた。そしてエリヤはつむじ風かぜに乗のって天てんにのぼった。
2:12 エリシャはこれを見みて「わが父ちちよ、わが父ちちよ、イスラエルの戦車せんしゃよ、その騎兵きへいよ」と叫さけんだが、再ふたたび彼かれを見みなかった。
そこでエリシャは自分じぶんの着物きものをつかんで、それを二つに裂さき、
2:13 またエリヤの身みから落おちた外套がいとうを取とり上あげ、帰かえってきてヨルダンの岸きしに立たった。
2:14 そしてエリヤの身みから落おちたその外套がいとうを取とって水みずを打うち、「エリヤの神かみ、主しゅはどこにおられますか」と言いい、彼かれが水みずを打うつと、水みずは左右さゆうに分わかれたので、エリシャは渡わたった。
2:15 エリコにいる預言者よげんしゃのともがらは彼かれの近ちかづいて来くるのを見みて、「エリヤの霊れいがエリシャの上うえにとどまっている」と言いった。そして彼かれらは来きて彼かれを迎むかえ、その前まえに地ちに伏ふして、
2:16 彼かれに言いった、「しもべらの所ところに力ちからの強つよい者ものが五十人にんいます。どうぞ彼かれらをつかわして、あなたの主人しゅじんを尋たずねさせてください。主しゅの霊れいが彼かれを引ひきあげて、彼かれを山やまか谷たにに投なげたのかも知しれません」。エリシャは「つかわしてはならない」と言いったが、
2:17 彼かれの恥はじるまで、しいたので、彼かれは「つかわしなさい」と言いった。それで彼かれらは五十人にんの者ものをつかわし、三日かの間あいだ尋たずねたが、彼かれを見みいださなかった。
2:18 エリシャのなおエリコにとどまっている時とき、彼かれらが帰かえってきたので、エリシャは彼かれらに言いった、「わたしは、あなたがたに、行いってはならないと告つげたではないか」。
2:19 町まちの人々ひとびとはエリシャに言いった、「見みられるとおり、この町まちの場所ばしょは良よいが水みずが悪わるいので、この地ちは流産りゅうざんを起おこすのです」。
2:20 エリシャは言いった、「新あたらしい皿さらに塩しおを盛もって、わたしに持もってきなさい」。彼かれらは持もってきた。
2:21 エリシャは水みずの源みなもとへ出でて行いって、塩しおをそこに投なげ入いれて言いった、「主しゅはこう仰おおせられる、『わたしはこの水みずを良よい水みずにした。もはやここには死しも流産りゅうざんも起おこらないであろう』」。
2:22 こうしてその水みずはエリシャの言いったとおりに良よい水みずになって今日こんにちに至いたっている。
2:23 彼かれはそこからベテルへ上のぼったが、上のぼって行いく途中とちゅう、小ちいさい子供こどもらが町まちから出でてきて彼かれをあざけり、彼かれにむかって「はげ頭あたまよ、のぼれ。はげ頭あたまよ、のぼれ」と言いったので、
2:24 彼かれはふり返かえって彼かれらを見み、主しゅの名なをもって彼かれらをのろった。すると林はやしの中なかから二頭とうの雌めぐまが出でてきて、その子こ供ともらのうち四十二人にんを裂さいた。
2:25 彼かれはそこからカルメル山やまへ行いき、そこからサマリヤに帰かえった。
第3章 3:1 ユダの王おうヨシャパテの第だい十八年ねんにアハブの子こヨラムはサマリヤでイスラエルの王おうとなり、十二年ねん世よを治おさめた。3:2 彼かれは主しゅの目めの前まえに悪あくをおこなったが、その父母ふぼのようではなかった。彼かれがその父ちちの つくったバアルの石柱せきちゅうを除のぞいたからである。3:3 しかし彼かれはイスラエルに罪つみを犯おかさせたネバテの子こヤラベアムの罪つみにつき従したがって、それを離はなれなかった。 3:4 モアブの王おうメシャは羊ひつじの飼育しいく者もので、十万の小羊こひつじと、十万の雄羊おひつじの毛けとを年々ねんねんイスラエルの王おうに納おさめていたが、3:5 アハブが死しんだ後のち、モアブの王おうはイスラエルの王おうにそむいた。3:6 そこでヨラム王おうはその時ときサマリヤを出でて、イスラエルびとをことごとく集あつめ、3:7 また、人ひとをユダの王おうヨシャパテにつかわし、「モアブの王おうはわたしにそむきました。あなたはモアブと戦たたかうために、わたしと一緒いっしょに行いかれませんか」と言いわせた。彼かれは言いった、「行いきましょう。わたしはあなたと一つです。わたしの民たみはあなたの民たみと一つです。わたしの馬うまはあなたの馬うまと一つです」。3:8 彼かれはまた言いった、「われわれはどの道みちを上のぼるのですか」。ヨラムは答こたえた、「エドムの荒野あらのの道みちを上のぼりましょう」。 3:9 こうしてイスラエルの王おうはユダの王おうおよびエドムの王おうと共ともに出でて行いった。しかし彼かれらは回まわり道みちをして、七日なぬかの間あいだ進すすんだが、軍勢ぐんぜいとそれに従したがう家畜かちくの飲のむ水みずがなかったので、3:10 イスラエルの王おうは言いった、「ああ、主しゅは、この三人にんの王おうをモアブの手てに渡わたそうとして召めし集あつめられたのだ」。3:11 ヨシャパテは言いった、「われわれが主しゅに問とうことのできる主しゅの預言者よげんしゃはここにいませんか」。イスラエルの王おうのひとりの家来けらいが答こたえた、「エリヤの手てに水みずを注そそいだシャパテの子こエリシャがここにいます」。3:12 ヨシャパテは言いった、「主しゅの言葉ことばが彼かれにあります」。そこでイスラエルの王おうとヨシャパテとエドムの王おうとは彼かれのもとへ下くだっていった。 3:13 エリシャはイスラエルの王おうに言いった、「わたしはあなたとなんのかかわりがありますか。あなたの父上ちちうえの預言者よげんしゃたちと母上ははうえの預言者よげんしゃたちの所ところへ行いきなさい」。イスラエルの王おうは彼かれに言いった、「いいえ、主しゅがこの三人にんの王おうをモアブの手てに渡わたそうとして召めし集あつめられたのです」。3:14 エリシャは言いった、「わたしの仕つかえる万軍ばんぐんの主しゅは生いきておられます。わたしはユダの王おうヨシャパテのためにするのでなければ、あなたを顧かえりみ、あなたに会あうことはしないのだが、3:15 いま楽人がくじんをわたしの所ところに連つれてきなさい」。そこで楽人がくじんが楽がくを奏そうすると、主しゅの手てが彼かれに臨のぞんで、3:16 彼かれは言いった、「主しゅはこう仰おおせられる、『わたしはこの谷たにを水みずたまりで満みたそう』。3:17 これは主しゅがこう仰おおせられるからである、『あなたがたは風かぜも雨あめも見みないのに、この谷たにに水みずが満みちて、あなたがたと、その家畜かちくおよび獣けものが飲のむであろう』。3:18 これは主しゅの目めには小ちいさい事ことである。主しゅはモアブびとをも、あなたがたの手てに渡わたされる。3:19 そしてあなたがたはすべての堅固けんごな町まちと、すべての良よい町まちを撃うち、すべての良よい木きを切きり倒たおし、すべての水みずの井戸いどをふさぎ、石いしをもって地ちのすべての良よい所ところを荒あらすであろう」。3:20 あくる朝あさになって、供そなえ物ものをささげる時ときに、水みずがエドムの方ほうから流ながれてきて、水みずは国くにに満みちた。 3:21 さてモアブびとは皆みな、王おうたちが自分じぶんたちを攻せめるために上のぼってきたのを聞きいたので、よろいを着きることのできる者ものを、老おいも若わかきもことごとく召集しょうしゅうして、国境こっきょうに配置はいちしたが、3:22 朝あさはやく起おきて、太陽たいようがのぼって水みずを照てらしたとき、モアブびとは目めの前まえに血ちのように赤あかい水みずを見みたので、3:23 彼かれらは言いった、「これは血ちだ、きっと王おうたちが互たがいに戦たたかって殺ころし合あったのだ。だから、モアブよ、ぶんどりに行いきなさい」。3:24 しかしモアブびとがイスラエルの陣営じんえいに行いくと、イスラエルびとは立たちあがってモアブびとを撃うったので、彼かれらはイスラエルの前まえから逃にげ去さった。イスラエルびとは進すすんで、モアブびとを撃うち、その国くににはいって、3:25 町々まちまちを滅ほろぼし、おのおの石いしを一つずつ、地ちのすべての良よい所ところに投なげて、これに満みたし、水みずの井戸いどをことごとくふさぎ、良よい木きをことごとく切きり倒たおして、ただキル・ハラセテはその名なを残のこすのみとなったが、石いしを投なげる者ものがこれを囲かこんで撃うち滅ほろぼした。3:26 モアブの王おうは戦たたかいがあまりに激はげしく、当あたりがたいのを見みて、つるぎを抜ぬく者もの七百人にんを率ひきい、エドムの王おうの所ところに突つき入はいろうとしたが、果はたさなかったので、3:27 自分じぶんの位くらいを継つぐべきその長子ちょうしをとって城壁じょうへきの上うえで燔祭はんさいとしてささげた。その時ときイスラエルに大おおいなる憤いきどおりが臨のぞんだので、彼かれらは彼かれをすてて自分じぶんの国くにに帰かえった。 第4章 4:1 預言者よげんしゃのともがらの、ひとりの妻つまがエリシャに呼よばわって言いった、「あなたのしもべであるわたしの夫おっとが死しにました。ごぞんじのように、あなたのしもべは主しゅを恐おそれる者ものでありましたが、今いま、債さい主しゅがきて、わたしのふたりの子供こどもを取とって奴隷どれいにしようとしているのです」。4:2 エリシャは彼女かのじょに言いった、「あなたのために何なにをしましょうか。あなたの家いえにどんな物ものがあるか、言いいなさい」。彼女かのじょは言いった、「一びんの油あぶらのほかは、はしための家いえに何なにもありません」。4:3 彼かれは言いった、「ほかへ行いって、隣となりの人々ひとびとから器うつわを借かりなさい。あいた器うつわを借かりなさい。少すこしばかりではいけません。4:4 そして内うちにはいって、あなたの子供こどもたちと一緒いっしょに戸との内うちに閉とじこもり、そのすべての器うつわに油あぶらをついで、いっぱいになったとき、一つずつそれを取とりのけておきなさい」。4:5 彼女かのじょは彼かれを離はなれて去さり、子供こどもたちと一緒いっしょに戸との内うちに閉とじこもり、子供こどもたちの持もって来くる器うつわに油あぶらをついだ。4:6 油あぶらが満みちたとき、彼女かのじょは子供こどもに「もっと器うつわを持もってきなさい」と言いったが、子供こどもが「器うつわはもうありません」と言いったので、油あぶらはとまった。4:7 そこで彼女かのじょは神かみの人ひとのところにきて告つげたので、彼かれは言いった、「行いって、その油あぶらを売うって負債ふさいを払はらいなさい。あなたと、あなたの子供こどもたちはその残のこりで暮くらすことができます」。 4:8 ある日ひエリシャはシュネムへ行いったが、そこにひとりの裕福ゆうふくな婦人ふじんがいて、しきりに彼かれに食事しょくじをすすめたので、彼かれはそこを通とおるごとに、そこに寄よって食事しょくじをした。4:9 その女おんなは夫おっとに言いった、「いつもわたしたちの所ところを通とおるあの人ひとは確たしかに神かみの聖せいなる人ひとです。4:10 わたしたちは屋上おくじょうに壁かべのある一つの小ちいさいへやを造つくり、そこに寝台しんだいと机つくえといすと燭台しょくだいとを彼かれのために備そなえましょう。そうすれば彼かれがわたしたちの所ところに来くるとき、そこに、はいることができます」。 4:11 さて、ある日ひエリシャはそこにきて、そのへやにはいり、そこに休やすんだが、4:12 彼かれはそのしもべゲハジに「このシュネムの女おんなを呼よんできなさい」と言いった。彼かれがその女おんなを呼よぶと、彼女かのじょはきてエリシャの前まえに立たったので、4:13 エリシャはゲハジに言いった、「彼女かのじょに言いいなさい、『あなたはこんなにねんごろに、わたしたちのために心こころを用もちいられたが、あなたのためには何なにをしたらよいでしょうか。王おうまたは軍勢ぐんぜいの長ちょうにあなたの事ことをよろしく頼たのむことをお望のぞみですか』」。彼女かのじょは答こたえて言いった、「わたしは自分じぶんの民たみのうちに住すんでいます」。4:14 エリシャは言いった、「それでは彼女かのじょのために何なにをしようか」。ゲハジは言いった、「彼女かのじょには子供こどもがなく、その夫おっとは老おいています」。4:15 するとエリシャが「彼女かのじょを呼よびなさい」と言いったので、彼女かのじょを呼よぶと、来きて戸口とぐちに立たった。4:16 エリシャは言いった、「来年らいねんの今いまごろ、あなたはひとりの子こを抱だくでしょう」。彼女かのじょは言いった、「いいえ、わが主しゅよ、神かみの人ひとよ、はしためを欺あざむかないでください」。4:17 しかし女おんなはついに身みごもって、エリシャが彼女かのじょに言いったように、次つぎの年ねんのそのころに子こを産うんだ。 4:18 その子こが成長せいちょうして、ある日ひ、刈入かりいれびとの所ところへ出でていって、父ちちのもとへ行いったが、4:19 父ちちにむかって「頭あたまが、頭あたまが」と言いったので、父ちちはしもべに「彼かれを母ははのもとへ背負せおっていきなさい」と言いった。4:20 彼かれを背負せおって母ははのもとへ行いくと、昼ひるまで母ははのひざの上うえにすわっていたが、ついに死しんだ。4:21 母ははは上あがっていって、これを神かみの人ひとの寝台しんだいの上うえに置おき、戸とを閉とじて出でてきた。4:22 そして夫おっとを呼よんで言いった、「どうぞ、しもべひとりと、ろば一頭とうをわたしにかしてください。急いそいで神かみの人ひとの所ところへ行いって、また帰かえってきます」。4:23 夫おっとは言いった、「どうしてきょう彼かれの所ところへ行いこうとするのか。きょうは、ついたちでもなく、安息日あんそくにちでもない」。彼女かのじょは言いった、「よろしいのです」。4:24 そして彼女かのじょはろばにくらを置おいて、しもべに言いった、「速はやく駆かけさせなさい。わたしが命めいじる時ときでなければ、歩調ほちょうをゆるめてはなりません」。4:25 こうして彼女かのじょは出発しゅっぱつしてカルメル山やまへ行いき、神かみの人ひとの所ところへ行いった。 神かみの人ひとは彼女かのじょの近ちかづいてくるのを見みて、しもべゲハジに言いった、「向むこうから、あのシュネムの女おんなが来くる。4:26 すぐ走はしって行いって、彼女かのじょを迎むかえて言いいなさい、『あなたは無事ぶじですか。あなたの夫おっとは無事ぶじですか。あなたの子供こどもは無事ぶじですか』」。彼女かのじょは答こたえた、「無事ぶじです」。4:27 ところが彼女かのじょは山やまにきて、神かみの人ひとの所ところへくるとエリシャの足あしにすがりついた。ゲハジが彼女かのじょを追おいのけようと近ちかよった時とき、神かみの人ひとは言いった、「かまわずにおきなさい。彼女かのじょは心こころに苦くるしみがあるのだから。主しゅはそれを隠かくして、まだわたしにお告つげにならないのだ」。4:28 そこで彼女かのじょは言いった、「わたしがあなたに子こを求もとめましたか。わたしを欺あざむかないでくださいと言いったではありませんか」。4:29 エリシャはゲハジに言いった、「腰こしをひきからげ、わたしのつえを手てに持もって行いきなさい。だれに会あっても、あいさつしてはならない。またあなたにあいさつする者ものがあっても、それに答こたえてはならない。わたしのつえを子供こどもの顔かおの上うえに置おきなさい」。4:30 子供こどもの母ははは言いった、「主しゅは生いきておられます。あなたも生いきておられます。わたしはあなたを離はなれません」。そこでエリシャはついに立たちあがって彼女かのじょのあとについて行いった。4:31 ゲハジは彼かれらの先さきに行いって、つえを子供こどもの顔かおの上うえに置おいたが、なんの声こえもなく、生いきかえったしるしもなかったので、帰かえってきてエリシャに会あい、彼かれに告つげて「子供こどもはまだ目めをさましません」と言いった。 4:32 エリシャが家いえにはいって見みると、子供こどもは死しんで、寝台しんだいの上うえに横よこたわっていたので、4:33 彼かれははいって戸とを閉とじ、彼かれらふたりだけ内うちにいて主しゅに祈いのった。4:34 そしてエリシャが上あがって子供こどもの上うえに伏ふし、自分じぶんの口くちを子供こどもの口くちの上うえに、自分じぶんの目めを子供こどもの目めの上うえに、自分じぶんの両手りょうてを子供こどもの両手りょうての上うえにあて、その身みを子供こどもの上うえに伸のばしたとき、子供こどものからだは暖あたたかになった。4:35 こうしてエリシャは再ふたたび起おきあがって、家いえの中なかをあちらこちらと歩あゆみ、また上うえがって、その身みを子供こどもの上うえに伸のばすと、子供こどもは七たびくしゃみをして目めを開ひらいた。4:36 エリシャはただちにゲハジを呼よんで、「あのシュネムの女おんなを呼よべ」と言いったので、彼女かのじょを呼よんだ。彼女かのじょがはいってくるとエリシャは言いった、「あなたの子供こどもをつれて行いきなさい」。4:37 彼女かのじょははいってきて、エリシャの足あしもとに伏ふし、地ちに身みをかがめた。そしてその子こ供ともを取とりあげて出でていった。 4:38 エリシャはギルガルに帰かえったが、その地ちにききんがあった。預言者よげんしゃのともがらが彼かれの前まえに座ざしていたので、エリシャはそのしもべに言いった、「大おおきなかまをすえて、預言者よげんしゃのともがらのために野菜やさいの煮物にものをつくりなさい」。4:39 彼かれらのうちのひとりが畑はたけに出でていって青物あおものをつんだが、つる草くさのあるのを見みて、その野のうりを一包つつみつんできて、煮物にもののかまの中なかに切きり込こんだ。彼かれらはそれが何なにであるかを知しらなかったからである。4:40 やがてこれを盛もって人々ひとびとに食たべさせようとしたが、彼かれらがその煮物にものを食たべようとした時とき、叫さけんで、「ああ神かみの人ひとよ、かまの中なかに、たべると死しぬものがはいっています」と言いって、食たべることができなかったので、4:41 エリシャは「それでは粉こなを持もって来きなさい」と言いって、それをかまに投なげ入いれ、「盛もって人々ひとびとに食たべさせなさい」と言いった。かまの中なかには、なんの毒物どくぶつもなくなった。 4:42 その時とき、バアル・シャリシャから人ひとがきて、初穂はつほのパンと、大麦おおむぎのパン二十個こと、新穀しんこく一袋ふくろとを神かみの人ひとのもとに持もってきたので、エリシャは「人々ひとびとに与あたえて食たべさせなさい」と言いったが、4:43 その召使めしつかいは言いった、「どうしてこれを百人にんの前まえに供そなえるのですか」。しかし彼かれは言いった、「人々ひとびとに与あたえて食たべさせなさい。主しゅはこう言いわれる、『彼かれらは食たべてなお余あますであろう』」。4:44 そこで彼かれはそれを彼かれらの前まえに供そなえたので、彼かれらは食たべてなお余あました。主しゅの言葉ことばのとおりであった。 第5章 5:1 スリヤ王おうの軍勢ぐんぜいの長ちょうナアマンはその主君しゅくんに重おもんじられた有力ゆうりょくな人ひとであった。主しゅがかつて彼かれを用もちいてスリヤに勝利しょうりを得えさせられたからである。彼かれは大だい勇士ゆうしであったが、らい病びょうをわずらっていた。5:2 さきにスリヤびとが略奪りゃくだつ隊たいを組くんで出でてきたとき、イスラエルの地ちからひとりの少女しょうじょを捕とらえて行いった。彼女かのじょはナアマンの妻つまに仕つかえたが、5:3 その女おんな主人しゅじんにむかって、「ああ、御ご主人しゅじんがサマリヤにいる預言者よげんしゃと共ともにおられたらよかったでしょうに。彼かれはそのらい病びょうをいやしたことでしょう」と言いったので、5:4 ナアマンは行いって、その主君しゅくんに、「イスラエルの地ちからきた娘むすめがこういう事ことを言いいました」と告つげると、5:5 スリヤ王おうは言いった、「それでは行いきなさい。わたしはイスラエルの王おうに手紙てがみを書かきましょう」。 そこで彼かれは銀ぎん十タラントと、金きん六千シケルと、晴はれ着ぎ十着ちゃくを携たずさえて行いった。5:6 彼かれがイスラエルの王おうに持もって行いった手紙てがみには、「この手紙てがみがあなたにとどいたならば、わたしの家来けらいナアマンを、あなたにつかわしたことと御ご承知しょうちください。あなたに彼かれのらい病びょうをいやしていただくためです」とあった。5:7 イスラエルの王おうはその手紙てがみを読よんだ時とき、衣ころもを裂さいて言いった、「わたしは殺ころしたり、生いかしたりすることのできる神かみであろうか。どうしてこの人ひとは、らい病人びょうにんをわたしにつかわして、それをいやせと言いうのか。あなたがたは、彼かれがわたしに争あらそいをしかけているのを知しって警戒けいかいするがよい」。 5:8 神かみの人ひとエリシャは、イスラエルの王おうがその衣ころもを裂さいたことを聞きき、王おうに人ひとをつかわして言いった、「どうしてあなたは衣ころもを裂さいたのですか。彼かれをわたしのもとにこさせなさい。そうすれば彼かれはイスラエルに預言者よげんしゃのあることを知しるようになるでしょう」。5:9 そこでナアマンは馬うまと車くるまとを従したがえてきて、エリシャの家いえの入口いりぐちに立たった。5:10 するとエリシャは彼かれに使者ししゃをつかわして言いった、「あなたはヨルダンへ行いって七たび身みを洗あらいなさい。そうすれば、あなたの肉にくはもとにかえって清きよくなるでしょう」。5:11 しかしナアマンは怒いかって去さり、そして言いった、「わたしは、彼かれがきっとわたしのもとに出でてきて立たち、その神かみ、主しゅの名なを呼よんで、その箇所かしょの上うえに手てを動うごかして、らい病びょうをいやすのだろうと思おもった。5:12 ダマスコの川かわアバナとパルパルはイスラエルのすべての川かわ水みずにまさるではないか。わたしはこれらの川かわに身みを洗あらって清きよまることができないのであろうか」。こうして彼かれは身みをめぐらし、怒いかって去さった。5:13 その時とき、しもべたちは彼かれに近ちかよって言いった、「わが父ちちよ、預言者よげんしゃがあなたに、何なにか大おおきな事ことをせよと命めいじても、あなたはそれをなさらなかったでしょうか。まして彼かれはあなたに『身みを洗あらって清きよくなれ』と言いうだけではありませんか」。5:14 そこでナアマンは下くだって行いって、神かみの人ひとの言葉ことばのように七たびヨルダンに身みを浸ひたすと、その肉にくがもとにかえって幼おさな子ごの肉にくのようになり、清きよくなった。 5:15 彼かれはすべての従者じゅうしゃを連つれて神かみの人ひとのもとに帰かえってきて、その前まえに立たって言いった、「わたしは今いま、イスラエルのほか、全ぜん地ちのどこにも神かみのおられないことを知しりました。それゆえ、どうぞ、しもべの贈おくり物ものを受うけてください」。5:16 エリシャは言いった、「わたしの仕つかえる主しゅは生いきておられる。わたしは何なにも受うけません」。彼かれはしいて受うけさせようとしたが、それを拒こばんだ。5:17 そこでナアマンは言いった、「もしお受うけにならないのであれば、どうぞ騾馬らばに二駄だの土つちをしもべにください。これから後のちしもべは、他たの神かみには燔祭はんさいも犠牲ぎせいもささげず、ただ主しゅにのみささげます。5:18 どうぞ主しゅがこの事ことを、しもべにおゆるしくださるように。すなわち、わたしの主君しゅくんがリンモンの宮みやにはいって、そこで礼れい拝はいするとき、わたしの手てによりかかることがあり、またわたしもリンモンの宮みやで身みをかがめることがありましょう。わたしがリンモンの宮みやで身みをかがめる時とき、どうぞ主しゅがその事ことを、しもべにおゆるしくださるように」。5:19 エリシャは彼かれに言いった、「安やすんじて行いきなさい」。 ナアマンがエリシャを離はなれて少すこし行いったとき、5:20 神かみの人ひとエリシャのしもべゲハジは言いった、「主人しゅじんはこのスリヤびとナアマンをいたわって、彼かれが携たずさえてきた物ものを受うけなかった。主しゅは生いきておられる。わたしは彼かれのあとを追おいかけて、彼かれから少すこし、物ものを受うけよう」。5:21 そしてゲハジはナアマンのあとを追おったが、ナアマンは自分じぶんのあとから彼かれが走はしってくるのを見みて、車くるまから降ふり、彼かれを迎むかえて、「変かわった事ことがあるのですか」と言いうと、5:22 彼かれは言いった、「無事ぶじです。主人しゅじんがわたしをつかわして言いわせます、『ただいまエフライムの山地さんちから、預言者よげんしゃのともがらのふたりの若者わかものが、わたしのもとに来きましたので、どうぞ彼かれらに銀ぎん一タラントと晴はれ着ぎ二着ちゃくを与あたえてください』」。5:23 ナアマンは、「どうぞ二タラントを受うけてください」と言いって彼かれにしい、銀ぎん二タラントを二つの袋ふくろに入いれ、晴はれ着ぎ二着ちゃくを添そえて、自分じぶんのふたりのしもべに渡わたしたので、彼かれらはそれを負おってゲハジの先さきに立たって進すすんだが、5:24 彼かれは丘おかにきたとき、それを彼かれらの手てから受うけ取とって家いえのうちにおさめ、人々ひとびとを送おくりかえしたので、彼かれらは去さった。5:25 彼かれがはいって主人しゅじんの前まえに立たつと、エリシャは彼かれに言いった、「ゲハジよ、どこへ行いってきたのか」。彼かれは言いった、「しもべはどこへも行いきません」。5:26 エリシャは言いった、「あの人ひとが車くるまをはなれて、あなたを迎むかえたとき、わたしの心こころはあなたと一緒いっしょにそこにいたではないか。今いまは金きんを受うけ、着物きものを受うけ、オリブ畑はたけ、ぶどう畑はたけ、羊ひつじ、牛うし、しもべ、はしためを受うける時ときであろうか。5:27 それゆえ、ナアマンのらい病びょうはあなたに着つき、ながくあなたの子孫しそんに及およぶであろう」。彼かれがエリシャの前まえを出でていくとき、らい病びょうが発はっして雪ゆきのように白しろくなっていた。 第6章 6:1 さて預言者よげんしゃのともがらはエリシャに言いった、「わたしたちがあなたと共ともに住すんでいる所ところは狭せまくなりましたので、6:2 わたしたちをヨルダンに行いかせ、そこからめいめい一本ぽんずつ材木ざいもくを取とってきて、わたしたちの住すむ場所ばしょを造つくらせてください」。エリシャは言いった、「行いきなさい」。6:3 時ときにそのひとりが、「どうぞあなたも、しもべらと一緒いっしょに行いってください」と言いったので、エリシャは「行いきましょう」と答こたえた。6:4 そしてエリシャは彼かれらと一緒いっしょに行いった。彼かれらはヨルダンへ行いって木きを切きり倒たおしたが、6:5 ひとりが材木ざいもくを切きり倒たおしているとき、おのの頭あたまが水みずの中なかに落おちたので、彼かれは叫さけんで言いった。「ああ、わが主しゅよ。これは借かりたものです」。6:6 神かみの人ひとは言いった、「それはどこに落おちたのか」。彼かれがその場所ばしょを知しらせると、エリシャは一本ぽんの枝えだを切きり落おとし、そこに投なげ入いれて、そのおのの頭あたまを浮うかばせ、6:7 「それを取とりあげよ」と言いったので、その人ひとは手てを伸のべてそれを取とった。 6:8 かつてスリヤの王おうがイスラエルと戦たたかっていたとき、家来けらいたちと評議ひょうぎして「しかじかの所ところにわたしの陣じんを張はろう」と言いうと、6:9 神かみの人ひとはイスラエルの王おうに「あなたは用心ようじんして、この所ところをとおってはなりません。スリヤびとがそこに下くだってきますから」と言いい送おくった。6:10 それでイスラエルの王おうは神かみの人ひとが自分じぶんに告つげてくれた所ところに人ひとをつかわし、警戒けいかいしたので、その所ところでみずからを防ふせぎえたことは一、二回かいにとどまらなかった。 6:11 スリヤの王おうはこの事ことのために心こころを悩なやまし、家来けらいたちを召めして言いった、「われわれのうち、だれがイスラエルの王おうと通つうじているのか、わたしに告つげる者ものはないか」。6:12 ひとりの家来けらいが言いった、「王おう、わが主しゅよ、だれも通つうじている者ものはいません。ただイスラエルの預言者よげんしゃエリシャが、あなたが寝室しんしつで語かたられる言葉ことばでもイスラエルの王おうに告つげるのです」。6:13 王おうは言いった、「彼かれがどこにいるか行いって捜さがしなさい。わたしは人ひとをやって彼かれを捕とらえよう」。時ときに「彼かれはドタンにいる」と王おうに告つげる者ものがあったので、6:14 王おうはそこに馬うまと戦車せんしゃおよび大軍たいぐんをつかわした。彼かれらは夜よるのうちに来きて、その町まちを囲かこんだ。 6:15 神かみの人ひとの召使めしつかいが朝あさ早はやく起おきて出でて見みると、軍勢ぐんぜいが馬うまと戦車せんしゃをもって町まちを囲かこんでいたので、その若者わかものはエリシャに言いった、「ああ、わが主しゅよ、わたしたちはどうしましょうか」。6:16 エリシャは言いった、「恐おそれることはない。われわれと共ともにいる者ものは彼かれらと共ともにいる者ものよりも多おおいのだから」。6:17 そしてエリシャが祈いのって「主しゅよ、どうぞ、彼かれの目めを開ひらいて見みさせてください」と言いうと、主しゅはその若者わかものの目めを開ひらかれたので、彼かれが見みると、火ひの馬うまと火ひの戦車せんしゃが山やまに満みちてエリシャのまわりにあった。6:18 スリヤびとがエリシャの所ところに下くだってきた時とき、エリシャは主しゅに祈いのって言いった、「どうぞ、この人々ひとびとの目めをくらましてください」。するとエリシャの言葉ことばのとおりに彼かれらの目めをくらまされた。6:19 そこでエリシャは彼かれらに「これはその道みちではない。これはその町まちでもない。わたしについてきなさい。わたしはあなたがたを、あなたがたの尋たずねる人ひとの所ところへ連つれて行いきましょう」と言いって、彼かれらをサマリヤへ連つれて行いった。 6:20 彼かれらがサマリヤにはいったとき、エリシャは言いった、「主しゅよ、この人々ひとびとの目めを開ひらいて見みさせてください」。主しゅは彼かれらの目めを開ひらかれたので、彼かれらが見みると、見みよ、彼かれらはサマリヤのうちに来きていた。6:21 イスラエルの王おうは彼かれらを見みて、エリシャに言いった、「わが父ちちよ、彼かれらを撃うち殺ころしましょうか。彼かれらを撃うち殺ころしましょうか」。6:22 エリシャは答こたえた、「撃うち殺ころしてはならない。あなたはつるぎと弓ゆみをもって、捕虜ほりょにした者ものどもを撃うち殺ころすでしょうか。パンと水みずを彼かれらの前まえに供そなえて食くい飲のみさせ、その主君しゅくんのもとへ行いかせなさい」。6:23 そこで王おうは彼かれらのために盛さかんなふるまいを設もうけた。彼かれらが食くい飲のみを終おわると彼かれらを去さらせたので、その主君しゅくんの所ところへ帰かえった。スリヤの略奪りゃくだつ隊たいは再ふたたびイスラエルの地ちにこなかった。 6:24 この後のちスリヤの王おうベネハダデはその全ぜん軍ぐんを集あつめ、上のぼってきてサマリヤを攻せめ囲かこんだので、6:25 サマリヤに激はげしいききんが起たった。すなわち彼かれらがこれを攻せめ囲かこんだので、ついに、ろばの頭あたま一つが銀ぎん八十シケルで売うられ、はとのふん一カブの四分ぶんの一が銀ぎん五シケルで売うられるようになった。6:26 イスラエルの王おうが城壁じょうへきの上うえをとおっていた時とき、ひとりの女おんなが彼かれに呼よばわって、「わが主しゅ、王おうよ、助たすけてください」と言いったので、6:27 彼かれは言いった、「もし主しゅがあなたを助たすけられないならば、何なにをもってわたしがあなたを助たすけることができよう。打うち場ばの物ものをもってか、酒さかぶねの物ものをもってか」。6:28 そして王おうは女おんなに尋たずねた、「何事なにごとなのですか」。彼女かのじょは答こたえた、「この女おんなはわたしにむかって『あなたの子こをください。わたしたちは、きょうそれを食たべ、あす、わたしの子こを食たべましょう』と言いいました。6:29 それでわたしたちは、まずわたしの子こを煮にて食たべましたが、次つぎの日ひわたしが彼女かのじょにむかって『あなたの子こをください。わたしたちはそれを食たべましょう』と言いいますと、彼女かのじょはその子こを隠かくしました」。6:30 王おうはその女おんなの言葉ことばを聞きいて、衣ころもを裂さき、――王おうは城壁じょうへきの上うえをとおっていたが、民たみが見みると、その身みに荒布あらぬのを着つけていた――6:31 そして王おうは言いった「きょう、シャパテの子こエリシャの首くびがその肩かたの上うえにすわっているならば、神かみがどんなにでもわたしを罰ばっしてくださるように」。 6:32 さてエリシャはその家いえに座ざしていたが、長老ちょうろうたちもきて彼かれと共ともに座ざした。王おうは自分じぶんの所ところから人ひとをつかわしたが、エリシャはその使者ししゃがまだ着つかないうちに長老ちょうろうたちに言いった、「あなたがたは、この人ひとを殺ころす者ものがわたしの首くびを取とるために、人ひとをつかわすのを見みますか。その使者ししゃがきたならば、戸とを閉とじて、内うちに入いれてはなりません。彼かれのうしろに、その主君しゅくんの足音あしおとがするではありませんか」。6:33 彼かれがなお彼かれらと語かたっているうちに、王おうは彼かれのもとに下くだってきて言いった、「この災わざわいは主しゅから出でたのです。わたしはどうしてこの上うえ、主しゅを待またなければならないでしょうか」。 第7章 7:1 エリシャは言いった、「主しゅの言葉ことばを聞ききなさい。主しゅはこう仰おおせられる、『あすの今いまごろサマリヤの門もんで、麦粉むぎこ一セアを一シケルで売うり、大麦おおむぎ二セアを一シケルで売うるようになるであろう』」。7:2 時ときにひとりの副官ふくかんすなわち王おうがその人ひとの手てによりかかっていた者ものが神かみの人ひとに答こたえて言いった、「たとい主しゅが天てんに窓まどを開ひらかれても、そんな事ことがありえましょうか」。エリシャは言いった、「あなたは自分じぶんの目めをもってそれを見みるであろう。しかしそれを食たべることはなかろう」。 7:3 さて町まちの門もんの入口いりぐちに四人にんのらい病人びょうにんがいたが、彼かれらは互たがいに言いった、「われわれはどうしてここに座ざして死しを待またねばならないのか。7:4 われわれがもし町まちにはいろうといえば、町まちには食物しょくもつが尽つきているから、われわれはそこで死しぬであろう。しかしここに座ざしていても死しぬのだ。いっその事こと、われわれはスリヤびとの陣営じんえいへ逃にげて行いこう。もし彼かれらがわれわれを生いかしておいてくれるならば、助たすかるが、たといわれわれを殺ころしても死しぬばかりだ」。7:5 そこで彼かれらはスリヤびとの陣営じんえいへ行いこうと、たそがれに立たちあがったが、スリヤびとの陣営じんえいのほとりに行いって見みると、そこにはだれもいなかった。7:6 これは主しゅがスリヤびとの軍勢ぐんぜいに戦車せんしゃの音おと、馬うまの音おと、大軍たいぐんの音おとを聞きかせられたので、彼かれらは互たがいに「見みよ、イスラエルの王おうがわれわれを攻せめるために、ヘテびとの王おうたちおよびエジプトの王おうたちを雇やとってきて、われわれを襲おそうのだ」と言いって、7:7 たそがれに立たって逃にげ、その天幕てんまくと、馬うまと、ろばを捨すて、陣営じんえいをそのままにしておいて、命いのちを全まっとうしようと逃にげたからである。7:8 そこでらい病人びょうにんたちは陣営じんえいのほとりに行いき、一つの天幕てんまくにはいって食くい飲のみし、そこから金銀きんぎん、衣服いふくを持もち出だしてそれを隠かくし、また来きて、他たの天幕てんまくに入はいり、そこからも持もち出だしてそれを隠かくした。 7:9 そして彼かれらは互たがいに言いった、「われわれのしている事ことはよくない。きょうは良よいおとずれのある日ひであるのに、黙だまっていて、夜明よあけまで待まつならば、われわれは罰ばつをこうむるであろう。さあ、われわれは行いって王おうの家族かぞくに告つげよう」。7:10 そこで彼かれらは来きて、町まちの門もんを守まもる者ものを呼よんで言いった、「わたしたちがスリヤびとの陣営じんえいに行いって見みると、そこにはだれの姿すがたも見みえず、また人声ひとごえもなく、ただ、馬うまとろばがつないであり、天幕てんまくはそのままでした」。7:11 そこで門もんを守まもる者ものは呼よばわって、それを王おうの家族かぞくのうちに知しらせた。7:12 王おうは夜よるのうちに起おきて、家来けらいたちに言いった、「スリヤびとがわれわれに対たいして図はかっている事ことをあなたがたに告つげよう。彼かれらは、われわれの飢うえているのを知しって、陣営じんえいを出でて野のに隠かくれ、『イスラエルびとが町まちを出でたら、いけどりにして、町まちに押おし入いろう』と考かんがえているのだ」。7:13 家来けらいのひとりが答こたえて言いった、「人々ひとびとに、ここに残のこっている馬うまのうち五頭とうを連つれてこさせてください。ここに残のこっているこれらの人々ひとびとは、すでに滅ほろびうせたイスラエルの全ぜん群衆ぐんしゅうと同おなじ運命うんめいにあうのですから。わたしたちは人ひとをやってうかがわせましょう」。7:14 そこで彼かれらはふたりの騎兵きへいを選えらんだ。王おうはそれをつかわし、「行いって見みよ」と言いって、スリヤびとの軍勢ぐんぜいのあとをつけさせたので、7:15 彼かれらはそのあとを追おってヨルダンまで行いったが、道みちにはすべて、スリヤびとがあわてて逃にげる時ときに捨すてていった衣服いふくと武器ぶきが散ちらばっていた。その使者ししゃは帰かえってきて、これを王おうに告つげた。 7:16 そこで民たみが出でていって、スリヤびとの陣営じんえいをかすめたので、麦粉むぎこ一セアは一シケルで売うられ、大麦おおむぎ二セアは一シケルで売うられ、主しゅの言葉ことばのとおりになった。7:17 王おうは自分じぶんがその人ひとの手てによりかかっていた、あの副官ふくかんを立たてて門もんを管理かんりさせたが、民たみは門もんで彼かれを踏ふみつけたので、彼かれは死しんだ。すなわち、王おうが神かみの人ひとのところに下くだってきた時とき、神かみの人ひとが言いったとおりであった。7:18 これは神かみの人ひとが王おうにむかって、「あすの今いまごろ、サマリヤの門もんで大麦おおむぎ二セアを一シケルで売うり、麦粉むぎこ一セアを一シケルで売うるようになるであろう」と言いったときに、7:19 その副官ふくかんが神かみの人ひとに答こたえて、「たとい主しゅが天てんに窓まどを開ひらかれても、そんな事ことがありえようか」と言いったからである。そのとき神かみの人ひとは「あなたは自分じぶんの目めをもってそれを見みるであろう。しかしそれを食たべることはなかろう」と言いったが、7:20 これはそのとおり彼かれに臨のぞんだ。すなわち民たみが門もんで彼かれを踏ふみつけたので彼かれは死しんだ。 第8章 8:1 エリシャはかつて、その子こを生いきかえらせてやった女おんなに言いったことがある。「あなたは、ここを立たって、あなたの家族かぞくと共ともに行いき、寄留きりゅうしようと思おもう所ところに寄留きりゅうしなさい。主しゅがききんを呼よび下くだされたので、七年ねんの間あいだそれがこの地ちに臨のぞむから」。8:2 そこで女おんなは立たって神かみの人ひとの言葉ことばのようにし、その家族かぞくと共ともに行いってペリシテびとの地ちに七年ねん寄留きりゅうした。8:3 七年ねんたって後のち、女おんなはペリシテびとの地ちから帰かえってきて、自分じぶんの家いえと畑はたけのために王おうに訴うったえようと出でていった。8:4 時ときに王おうは神かみの人ひとのしもべゲハジにむかって「エリシャがしたもろもろの大おおきな事ことをわたしに話はなしてください」と言いって、彼かれと物語ものがたっていた。8:5 すなわちエリシャが死人しにんを生いきかえらせた事ことを、ゲハジが王おうと物語ものがたっていたとき、その子こを生いきかえらせてもらった女おんなが、自分じぶんの家いえと畑はたけのために王おうに訴うったえてきたので、ゲハジは言いった、「わが主しゅ、王おうよ、これがその女おんなです。またこれがその子こで、エリシャが生いきかえらせたのです」。8:6 王おうがその女おんなに尋たずねると、彼女かのじょは王おうに話はなしたので、王おうは彼女かのじょのためにひとりの役人やくにんに命めいじて言いった、「すべて彼女かのじょに属ぞくする物もの、ならびに彼女かのじょがこの地ちを去さった日ひから今いままでのその畑はたけの産物さんぶつをことごとく彼女かのじょに返かえしなさい」。 8:7 さてエリシャはダマスコに来きた。時ときにスリヤの王おうベネハダデは病気びょうきであったが、「神かみの人ひとがここに来きた」と告つげる者ものがあったので、8:8 王おうはハザエルに言いった、「贈おくり物ものを携たずさえて行いって神かみの人ひとを迎むかえ、彼かれによって主しゅに『わたしのこの病気びょうきはなおりましょうか』と言いって尋たずねなさい」。8:9 そこでハザエルは彼かれを迎むかえようと、ダマスコのもろもろの良よい物ものをらくだ四十頭とうに載のせ、贈おくり物ものとして携たずさえ行いき、エリシャの前まえに立たって言いった、「あなたの子こ、スリヤの王おうベネハダデがわたしをあなたにつかわして、『わたしのこの病気びょうきはなおりましょうか』と言いわせています」。8:10 エリシャは彼かれに言いった、「行いって彼かれに『あなたは必かならずなおります』と告つげなさい。ただし主しゅはわたしに、彼かれが必かならず死しぬことを示しめされました」。8:11 そして神かみの人ひとがひとみを定さだめて彼かれの恥はじるまでに見みつめ、やがて泣なき出だしたので、8:12 ハザエルは言いった、「わが主しゅよ、どうして泣なかれるのですか」。エリシャは答こたえた、「わたしはあなたがイスラエルの人々ひとびとにしようとする害悪がいあくを知しっているからです。すなわち、あなたは彼かれらの城しろに火ひをかけ、つるぎをもって若者わかものを殺ころし、幼おさな子ごを投なげうち、妊 にんしんの女おんなを引ひき裂さくでしょう」。8:13 ハザエルは言いった、「しもべは一匹ぴきの犬いぬにすぎないのに、どうしてそんな大おおきな事ことをすることができましょう」。エリシャは言いった、「主しゅがわたしに示しめされました。あなたはスリヤの王おうとなるでしょう」。8:14 彼かれがエリシャのもとを去さって、主君しゅくんのところへ行いくと、「エリシャはあなたになんと言いったか」と尋たずねられたので、「あなたが必かならずなおるでしょうと、彼かれはわたしに告つげました」と答こたえた。8:15 しかし翌日よくじつになってハザエルは布ぬのを取とって水みずに浸ひたし、それをもって王おうの顔かおをおおったので、王おうは死しんだ。ハザエルは彼かれに代かわって王おうとなった。 8:16 イスラエルの王おうアハブの子こヨラムの第だい五年ねんに、ユダの王おうヨシャパテの子こヨラムが位くらいについた。8:17 彼かれは王おうとなったとき三十二歳さいで、八年ねんの間あいだエルサレムで世よを治おさめた。8:18 彼かれはアハブの家いえがしたようにイスラエルの王おうたちの道みちに歩あゆんだ。アハブの娘むすめが彼かれの妻つまであったからである。彼かれは主しゅの目めの前まえに悪あくをおこなったが、8:19 主しゅはしもべダビデのためにユダを滅ほろぼすことを好このまれなかった。すなわち主しゅは彼かれとその子孫しそんに常つねにともしびを与あたえると、彼かれに約束やくそくされたからである。 8:20 ヨラムの世よにエドムがそむいてユダの支配しはいを脱だっし、みずから王おうを立たてたので、8:21 ヨラムはすべての戦車せんしゃを従したがえてザイルにわたって行いき、その戦車せんしゃの指揮しき官かんたちと共ともに、夜よのうちに立たちあがって、彼かれを包囲ほういしているエドムびとを撃うった。しかしヨラムの軍隊ぐんたいは天幕てんまくに逃にげ帰かえった。8:22 エドムはこのようにそむいてユダの支配しはいを脱だっし、今日こんにちに至いたっている。リブナもまた同時どうじにそむいた。8:23 ヨラムのその他たの事績じせきおよび彼かれがしたすべての事ことは、ユダの歴代志れきだいしの書しょにしるされているではないか。8:24 ヨラムはその先祖せんぞたちと共ともに ねむって、ダビデの町まちにその先祖せんぞたちと共ともに葬ほうむられ、その子こアハジヤが代かわって王おうとなった。 8:25 イスラエルの王おうアハブの子こヨラムの第だい十二年ねんにユダの王おうヨラムの子こアハジヤが位くらいについた。8:26 アハジヤは王おうとなったとき二十二歳さいで、エルサレムで一年ねん世よを治おさめた。その母ははは名なをアタリヤと言いって、イスラエルの王おうオムリの孫娘まごむすめであった。8:27 アハジヤはまたアハブの家いえの道みちに歩あゆみ、アハブの家いえがしたように主しゅの目めの前まえに悪あくをおこなった。彼かれはアハブの家いえの婿むこであったからである。 8:28 彼かれはアハブの子こヨラムと共ともに行いって、スリヤの王おうハザエルとラモテ・ギレアデで戦たたかったが、スリヤびとらはヨラムに傷きずを負おわせた。8:29 ヨラム王おうはそのスリヤの王おうハザエルと戦たたかうときにラマでスリヤびとに負おわされた傷きずをいやすため、エズレルに帰かえったが、ユダの王おうヨラムの子こアハジヤはアハブの子こヨラムが病やんでいたので、エズレルに下くだって彼かれをおとずれた。
3:1 ユダの王おうヨシャパテの第だい十八年ねんにアハブの子こヨラムはサマリヤでイスラエルの王おうとなり、十二年ねん世よを治おさめた。
3:2 彼かれは主しゅの目めの前まえに悪あくをおこなったが、その父母ふぼのようではなかった。彼かれがその父ちちの つくったバアルの石柱せきちゅうを除のぞいたからである。
3:3 しかし彼かれはイスラエルに罪つみを犯おかさせたネバテの子こヤラベアムの罪つみにつき従したがって、それを離はなれなかった。
3:4 モアブの王おうメシャは羊ひつじの飼育しいく者もので、十万の小羊こひつじと、十万の雄羊おひつじの毛けとを年々ねんねんイスラエルの王おうに納おさめていたが、
3:5 アハブが死しんだ後のち、モアブの王おうはイスラエルの王おうにそむいた。
3:6 そこでヨラム王おうはその時ときサマリヤを出でて、イスラエルびとをことごとく集あつめ、
3:7 また、人ひとをユダの王おうヨシャパテにつかわし、「モアブの王おうはわたしにそむきました。あなたはモアブと戦たたかうために、わたしと一緒いっしょに行いかれませんか」と言いわせた。彼かれは言いった、「行いきましょう。わたしはあなたと一つです。わたしの民たみはあなたの民たみと一つです。わたしの馬うまはあなたの馬うまと一つです」。
3:8 彼かれはまた言いった、「われわれはどの道みちを上のぼるのですか」。ヨラムは答こたえた、「エドムの荒野あらのの道みちを上のぼりましょう」。
3:9 こうしてイスラエルの王おうはユダの王おうおよびエドムの王おうと共ともに出でて行いった。しかし彼かれらは回まわり道みちをして、七日なぬかの間あいだ進すすんだが、軍勢ぐんぜいとそれに従したがう家畜かちくの飲のむ水みずがなかったので、
3:10 イスラエルの王おうは言いった、「ああ、主しゅは、この三人にんの王おうをモアブの手てに渡わたそうとして召めし集あつめられたのだ」。
3:11 ヨシャパテは言いった、「われわれが主しゅに問とうことのできる主しゅの預言者よげんしゃはここにいませんか」。イスラエルの王おうのひとりの家来けらいが答こたえた、「エリヤの手てに水みずを注そそいだシャパテの子こエリシャがここにいます」。
3:12 ヨシャパテは言いった、「主しゅの言葉ことばが彼かれにあります」。そこでイスラエルの王おうとヨシャパテとエドムの王おうとは彼かれのもとへ下くだっていった。
3:13 エリシャはイスラエルの王おうに言いった、「わたしはあなたとなんのかかわりがありますか。あなたの父上ちちうえの預言者よげんしゃたちと母上ははうえの預言者よげんしゃたちの所ところへ行いきなさい」。イスラエルの王おうは彼かれに言いった、「いいえ、主しゅがこの三人にんの王おうをモアブの手てに渡わたそうとして召めし集あつめられたのです」。
3:14 エリシャは言いった、「わたしの仕つかえる万軍ばんぐんの主しゅは生いきておられます。わたしはユダの王おうヨシャパテのためにするのでなければ、あなたを顧かえりみ、あなたに会あうことはしないのだが、
3:15 いま楽人がくじんをわたしの所ところに連つれてきなさい」。そこで楽人がくじんが楽がくを奏そうすると、主しゅの手てが彼かれに臨のぞんで、
3:16 彼かれは言いった、「主しゅはこう仰おおせられる、『わたしはこの谷たにを水みずたまりで満みたそう』。
3:17 これは主しゅがこう仰おおせられるからである、『あなたがたは風かぜも雨あめも見みないのに、この谷たにに水みずが満みちて、あなたがたと、その家畜かちくおよび獣けものが飲のむであろう』。
3:18 これは主しゅの目めには小ちいさい事ことである。主しゅはモアブびとをも、あなたがたの手てに渡わたされる。
3:19 そしてあなたがたはすべての堅固けんごな町まちと、すべての良よい町まちを撃うち、すべての良よい木きを切きり倒たおし、すべての水みずの井戸いどをふさぎ、石いしをもって地ちのすべての良よい所ところを荒あらすであろう」。
3:20 あくる朝あさになって、供そなえ物ものをささげる時ときに、水みずがエドムの方ほうから流ながれてきて、水みずは国くにに満みちた。
3:21 さてモアブびとは皆みな、王おうたちが自分じぶんたちを攻せめるために上のぼってきたのを聞きいたので、よろいを着きることのできる者ものを、老おいも若わかきもことごとく召集しょうしゅうして、国境こっきょうに配置はいちしたが、
3:22 朝あさはやく起おきて、太陽たいようがのぼって水みずを照てらしたとき、モアブびとは目めの前まえに血ちのように赤あかい水みずを見みたので、
3:23 彼かれらは言いった、「これは血ちだ、きっと王おうたちが互たがいに戦たたかって殺ころし合あったのだ。だから、モアブよ、ぶんどりに行いきなさい」。
3:24 しかしモアブびとがイスラエルの陣営じんえいに行いくと、イスラエルびとは立たちあがってモアブびとを撃うったので、彼かれらはイスラエルの前まえから逃にげ去さった。イスラエルびとは進すすんで、モアブびとを撃うち、その国くににはいって、
3:25 町々まちまちを滅ほろぼし、おのおの石いしを一つずつ、地ちのすべての良よい所ところに投なげて、これに満みたし、水みずの井戸いどをことごとくふさぎ、良よい木きをことごとく切きり倒たおして、ただキル・ハラセテはその名なを残のこすのみとなったが、石いしを投なげる者ものがこれを囲かこんで撃うち滅ほろぼした。
3:26 モアブの王おうは戦たたかいがあまりに激はげしく、当あたりがたいのを見みて、つるぎを抜ぬく者もの七百人にんを率ひきい、エドムの王おうの所ところに突つき入はいろうとしたが、果はたさなかったので、
3:27 自分じぶんの位くらいを継つぐべきその長子ちょうしをとって城壁じょうへきの上うえで燔祭はんさいとしてささげた。その時ときイスラエルに大おおいなる憤いきどおりが臨のぞんだので、彼かれらは彼かれをすてて自分じぶんの国くにに帰かえった。
第4章 4:1 預言者よげんしゃのともがらの、ひとりの妻つまがエリシャに呼よばわって言いった、「あなたのしもべであるわたしの夫おっとが死しにました。ごぞんじのように、あなたのしもべは主しゅを恐おそれる者ものでありましたが、今いま、債さい主しゅがきて、わたしのふたりの子供こどもを取とって奴隷どれいにしようとしているのです」。4:2 エリシャは彼女かのじょに言いった、「あなたのために何なにをしましょうか。あなたの家いえにどんな物ものがあるか、言いいなさい」。彼女かのじょは言いった、「一びんの油あぶらのほかは、はしための家いえに何なにもありません」。4:3 彼かれは言いった、「ほかへ行いって、隣となりの人々ひとびとから器うつわを借かりなさい。あいた器うつわを借かりなさい。少すこしばかりではいけません。4:4 そして内うちにはいって、あなたの子供こどもたちと一緒いっしょに戸との内うちに閉とじこもり、そのすべての器うつわに油あぶらをついで、いっぱいになったとき、一つずつそれを取とりのけておきなさい」。4:5 彼女かのじょは彼かれを離はなれて去さり、子供こどもたちと一緒いっしょに戸との内うちに閉とじこもり、子供こどもたちの持もって来くる器うつわに油あぶらをついだ。4:6 油あぶらが満みちたとき、彼女かのじょは子供こどもに「もっと器うつわを持もってきなさい」と言いったが、子供こどもが「器うつわはもうありません」と言いったので、油あぶらはとまった。4:7 そこで彼女かのじょは神かみの人ひとのところにきて告つげたので、彼かれは言いった、「行いって、その油あぶらを売うって負債ふさいを払はらいなさい。あなたと、あなたの子供こどもたちはその残のこりで暮くらすことができます」。 4:8 ある日ひエリシャはシュネムへ行いったが、そこにひとりの裕福ゆうふくな婦人ふじんがいて、しきりに彼かれに食事しょくじをすすめたので、彼かれはそこを通とおるごとに、そこに寄よって食事しょくじをした。4:9 その女おんなは夫おっとに言いった、「いつもわたしたちの所ところを通とおるあの人ひとは確たしかに神かみの聖せいなる人ひとです。4:10 わたしたちは屋上おくじょうに壁かべのある一つの小ちいさいへやを造つくり、そこに寝台しんだいと机つくえといすと燭台しょくだいとを彼かれのために備そなえましょう。そうすれば彼かれがわたしたちの所ところに来くるとき、そこに、はいることができます」。 4:11 さて、ある日ひエリシャはそこにきて、そのへやにはいり、そこに休やすんだが、4:12 彼かれはそのしもべゲハジに「このシュネムの女おんなを呼よんできなさい」と言いった。彼かれがその女おんなを呼よぶと、彼女かのじょはきてエリシャの前まえに立たったので、4:13 エリシャはゲハジに言いった、「彼女かのじょに言いいなさい、『あなたはこんなにねんごろに、わたしたちのために心こころを用もちいられたが、あなたのためには何なにをしたらよいでしょうか。王おうまたは軍勢ぐんぜいの長ちょうにあなたの事ことをよろしく頼たのむことをお望のぞみですか』」。彼女かのじょは答こたえて言いった、「わたしは自分じぶんの民たみのうちに住すんでいます」。4:14 エリシャは言いった、「それでは彼女かのじょのために何なにをしようか」。ゲハジは言いった、「彼女かのじょには子供こどもがなく、その夫おっとは老おいています」。4:15 するとエリシャが「彼女かのじょを呼よびなさい」と言いったので、彼女かのじょを呼よぶと、来きて戸口とぐちに立たった。4:16 エリシャは言いった、「来年らいねんの今いまごろ、あなたはひとりの子こを抱だくでしょう」。彼女かのじょは言いった、「いいえ、わが主しゅよ、神かみの人ひとよ、はしためを欺あざむかないでください」。4:17 しかし女おんなはついに身みごもって、エリシャが彼女かのじょに言いったように、次つぎの年ねんのそのころに子こを産うんだ。 4:18 その子こが成長せいちょうして、ある日ひ、刈入かりいれびとの所ところへ出でていって、父ちちのもとへ行いったが、4:19 父ちちにむかって「頭あたまが、頭あたまが」と言いったので、父ちちはしもべに「彼かれを母ははのもとへ背負せおっていきなさい」と言いった。4:20 彼かれを背負せおって母ははのもとへ行いくと、昼ひるまで母ははのひざの上うえにすわっていたが、ついに死しんだ。4:21 母ははは上あがっていって、これを神かみの人ひとの寝台しんだいの上うえに置おき、戸とを閉とじて出でてきた。4:22 そして夫おっとを呼よんで言いった、「どうぞ、しもべひとりと、ろば一頭とうをわたしにかしてください。急いそいで神かみの人ひとの所ところへ行いって、また帰かえってきます」。4:23 夫おっとは言いった、「どうしてきょう彼かれの所ところへ行いこうとするのか。きょうは、ついたちでもなく、安息日あんそくにちでもない」。彼女かのじょは言いった、「よろしいのです」。4:24 そして彼女かのじょはろばにくらを置おいて、しもべに言いった、「速はやく駆かけさせなさい。わたしが命めいじる時ときでなければ、歩調ほちょうをゆるめてはなりません」。4:25 こうして彼女かのじょは出発しゅっぱつしてカルメル山やまへ行いき、神かみの人ひとの所ところへ行いった。 神かみの人ひとは彼女かのじょの近ちかづいてくるのを見みて、しもべゲハジに言いった、「向むこうから、あのシュネムの女おんなが来くる。4:26 すぐ走はしって行いって、彼女かのじょを迎むかえて言いいなさい、『あなたは無事ぶじですか。あなたの夫おっとは無事ぶじですか。あなたの子供こどもは無事ぶじですか』」。彼女かのじょは答こたえた、「無事ぶじです」。4:27 ところが彼女かのじょは山やまにきて、神かみの人ひとの所ところへくるとエリシャの足あしにすがりついた。ゲハジが彼女かのじょを追おいのけようと近ちかよった時とき、神かみの人ひとは言いった、「かまわずにおきなさい。彼女かのじょは心こころに苦くるしみがあるのだから。主しゅはそれを隠かくして、まだわたしにお告つげにならないのだ」。4:28 そこで彼女かのじょは言いった、「わたしがあなたに子こを求もとめましたか。わたしを欺あざむかないでくださいと言いったではありませんか」。4:29 エリシャはゲハジに言いった、「腰こしをひきからげ、わたしのつえを手てに持もって行いきなさい。だれに会あっても、あいさつしてはならない。またあなたにあいさつする者ものがあっても、それに答こたえてはならない。わたしのつえを子供こどもの顔かおの上うえに置おきなさい」。4:30 子供こどもの母ははは言いった、「主しゅは生いきておられます。あなたも生いきておられます。わたしはあなたを離はなれません」。そこでエリシャはついに立たちあがって彼女かのじょのあとについて行いった。4:31 ゲハジは彼かれらの先さきに行いって、つえを子供こどもの顔かおの上うえに置おいたが、なんの声こえもなく、生いきかえったしるしもなかったので、帰かえってきてエリシャに会あい、彼かれに告つげて「子供こどもはまだ目めをさましません」と言いった。 4:32 エリシャが家いえにはいって見みると、子供こどもは死しんで、寝台しんだいの上うえに横よこたわっていたので、4:33 彼かれははいって戸とを閉とじ、彼かれらふたりだけ内うちにいて主しゅに祈いのった。4:34 そしてエリシャが上あがって子供こどもの上うえに伏ふし、自分じぶんの口くちを子供こどもの口くちの上うえに、自分じぶんの目めを子供こどもの目めの上うえに、自分じぶんの両手りょうてを子供こどもの両手りょうての上うえにあて、その身みを子供こどもの上うえに伸のばしたとき、子供こどものからだは暖あたたかになった。4:35 こうしてエリシャは再ふたたび起おきあがって、家いえの中なかをあちらこちらと歩あゆみ、また上うえがって、その身みを子供こどもの上うえに伸のばすと、子供こどもは七たびくしゃみをして目めを開ひらいた。4:36 エリシャはただちにゲハジを呼よんで、「あのシュネムの女おんなを呼よべ」と言いったので、彼女かのじょを呼よんだ。彼女かのじょがはいってくるとエリシャは言いった、「あなたの子供こどもをつれて行いきなさい」。4:37 彼女かのじょははいってきて、エリシャの足あしもとに伏ふし、地ちに身みをかがめた。そしてその子こ供ともを取とりあげて出でていった。 4:38 エリシャはギルガルに帰かえったが、その地ちにききんがあった。預言者よげんしゃのともがらが彼かれの前まえに座ざしていたので、エリシャはそのしもべに言いった、「大おおきなかまをすえて、預言者よげんしゃのともがらのために野菜やさいの煮物にものをつくりなさい」。4:39 彼かれらのうちのひとりが畑はたけに出でていって青物あおものをつんだが、つる草くさのあるのを見みて、その野のうりを一包つつみつんできて、煮物にもののかまの中なかに切きり込こんだ。彼かれらはそれが何なにであるかを知しらなかったからである。4:40 やがてこれを盛もって人々ひとびとに食たべさせようとしたが、彼かれらがその煮物にものを食たべようとした時とき、叫さけんで、「ああ神かみの人ひとよ、かまの中なかに、たべると死しぬものがはいっています」と言いって、食たべることができなかったので、4:41 エリシャは「それでは粉こなを持もって来きなさい」と言いって、それをかまに投なげ入いれ、「盛もって人々ひとびとに食たべさせなさい」と言いった。かまの中なかには、なんの毒物どくぶつもなくなった。 4:42 その時とき、バアル・シャリシャから人ひとがきて、初穂はつほのパンと、大麦おおむぎのパン二十個こと、新穀しんこく一袋ふくろとを神かみの人ひとのもとに持もってきたので、エリシャは「人々ひとびとに与あたえて食たべさせなさい」と言いったが、4:43 その召使めしつかいは言いった、「どうしてこれを百人にんの前まえに供そなえるのですか」。しかし彼かれは言いった、「人々ひとびとに与あたえて食たべさせなさい。主しゅはこう言いわれる、『彼かれらは食たべてなお余あますであろう』」。4:44 そこで彼かれはそれを彼かれらの前まえに供そなえたので、彼かれらは食たべてなお余あました。主しゅの言葉ことばのとおりであった。 第5章 5:1 スリヤ王おうの軍勢ぐんぜいの長ちょうナアマンはその主君しゅくんに重おもんじられた有力ゆうりょくな人ひとであった。主しゅがかつて彼かれを用もちいてスリヤに勝利しょうりを得えさせられたからである。彼かれは大だい勇士ゆうしであったが、らい病びょうをわずらっていた。5:2 さきにスリヤびとが略奪りゃくだつ隊たいを組くんで出でてきたとき、イスラエルの地ちからひとりの少女しょうじょを捕とらえて行いった。彼女かのじょはナアマンの妻つまに仕つかえたが、5:3 その女おんな主人しゅじんにむかって、「ああ、御ご主人しゅじんがサマリヤにいる預言者よげんしゃと共ともにおられたらよかったでしょうに。彼かれはそのらい病びょうをいやしたことでしょう」と言いったので、5:4 ナアマンは行いって、その主君しゅくんに、「イスラエルの地ちからきた娘むすめがこういう事ことを言いいました」と告つげると、5:5 スリヤ王おうは言いった、「それでは行いきなさい。わたしはイスラエルの王おうに手紙てがみを書かきましょう」。 そこで彼かれは銀ぎん十タラントと、金きん六千シケルと、晴はれ着ぎ十着ちゃくを携たずさえて行いった。5:6 彼かれがイスラエルの王おうに持もって行いった手紙てがみには、「この手紙てがみがあなたにとどいたならば、わたしの家来けらいナアマンを、あなたにつかわしたことと御ご承知しょうちください。あなたに彼かれのらい病びょうをいやしていただくためです」とあった。5:7 イスラエルの王おうはその手紙てがみを読よんだ時とき、衣ころもを裂さいて言いった、「わたしは殺ころしたり、生いかしたりすることのできる神かみであろうか。どうしてこの人ひとは、らい病人びょうにんをわたしにつかわして、それをいやせと言いうのか。あなたがたは、彼かれがわたしに争あらそいをしかけているのを知しって警戒けいかいするがよい」。 5:8 神かみの人ひとエリシャは、イスラエルの王おうがその衣ころもを裂さいたことを聞きき、王おうに人ひとをつかわして言いった、「どうしてあなたは衣ころもを裂さいたのですか。彼かれをわたしのもとにこさせなさい。そうすれば彼かれはイスラエルに預言者よげんしゃのあることを知しるようになるでしょう」。5:9 そこでナアマンは馬うまと車くるまとを従したがえてきて、エリシャの家いえの入口いりぐちに立たった。5:10 するとエリシャは彼かれに使者ししゃをつかわして言いった、「あなたはヨルダンへ行いって七たび身みを洗あらいなさい。そうすれば、あなたの肉にくはもとにかえって清きよくなるでしょう」。5:11 しかしナアマンは怒いかって去さり、そして言いった、「わたしは、彼かれがきっとわたしのもとに出でてきて立たち、その神かみ、主しゅの名なを呼よんで、その箇所かしょの上うえに手てを動うごかして、らい病びょうをいやすのだろうと思おもった。5:12 ダマスコの川かわアバナとパルパルはイスラエルのすべての川かわ水みずにまさるではないか。わたしはこれらの川かわに身みを洗あらって清きよまることができないのであろうか」。こうして彼かれは身みをめぐらし、怒いかって去さった。5:13 その時とき、しもべたちは彼かれに近ちかよって言いった、「わが父ちちよ、預言者よげんしゃがあなたに、何なにか大おおきな事ことをせよと命めいじても、あなたはそれをなさらなかったでしょうか。まして彼かれはあなたに『身みを洗あらって清きよくなれ』と言いうだけではありませんか」。5:14 そこでナアマンは下くだって行いって、神かみの人ひとの言葉ことばのように七たびヨルダンに身みを浸ひたすと、その肉にくがもとにかえって幼おさな子ごの肉にくのようになり、清きよくなった。 5:15 彼かれはすべての従者じゅうしゃを連つれて神かみの人ひとのもとに帰かえってきて、その前まえに立たって言いった、「わたしは今いま、イスラエルのほか、全ぜん地ちのどこにも神かみのおられないことを知しりました。それゆえ、どうぞ、しもべの贈おくり物ものを受うけてください」。5:16 エリシャは言いった、「わたしの仕つかえる主しゅは生いきておられる。わたしは何なにも受うけません」。彼かれはしいて受うけさせようとしたが、それを拒こばんだ。5:17 そこでナアマンは言いった、「もしお受うけにならないのであれば、どうぞ騾馬らばに二駄だの土つちをしもべにください。これから後のちしもべは、他たの神かみには燔祭はんさいも犠牲ぎせいもささげず、ただ主しゅにのみささげます。5:18 どうぞ主しゅがこの事ことを、しもべにおゆるしくださるように。すなわち、わたしの主君しゅくんがリンモンの宮みやにはいって、そこで礼れい拝はいするとき、わたしの手てによりかかることがあり、またわたしもリンモンの宮みやで身みをかがめることがありましょう。わたしがリンモンの宮みやで身みをかがめる時とき、どうぞ主しゅがその事ことを、しもべにおゆるしくださるように」。5:19 エリシャは彼かれに言いった、「安やすんじて行いきなさい」。 ナアマンがエリシャを離はなれて少すこし行いったとき、5:20 神かみの人ひとエリシャのしもべゲハジは言いった、「主人しゅじんはこのスリヤびとナアマンをいたわって、彼かれが携たずさえてきた物ものを受うけなかった。主しゅは生いきておられる。わたしは彼かれのあとを追おいかけて、彼かれから少すこし、物ものを受うけよう」。5:21 そしてゲハジはナアマンのあとを追おったが、ナアマンは自分じぶんのあとから彼かれが走はしってくるのを見みて、車くるまから降ふり、彼かれを迎むかえて、「変かわった事ことがあるのですか」と言いうと、5:22 彼かれは言いった、「無事ぶじです。主人しゅじんがわたしをつかわして言いわせます、『ただいまエフライムの山地さんちから、預言者よげんしゃのともがらのふたりの若者わかものが、わたしのもとに来きましたので、どうぞ彼かれらに銀ぎん一タラントと晴はれ着ぎ二着ちゃくを与あたえてください』」。5:23 ナアマンは、「どうぞ二タラントを受うけてください」と言いって彼かれにしい、銀ぎん二タラントを二つの袋ふくろに入いれ、晴はれ着ぎ二着ちゃくを添そえて、自分じぶんのふたりのしもべに渡わたしたので、彼かれらはそれを負おってゲハジの先さきに立たって進すすんだが、5:24 彼かれは丘おかにきたとき、それを彼かれらの手てから受うけ取とって家いえのうちにおさめ、人々ひとびとを送おくりかえしたので、彼かれらは去さった。5:25 彼かれがはいって主人しゅじんの前まえに立たつと、エリシャは彼かれに言いった、「ゲハジよ、どこへ行いってきたのか」。彼かれは言いった、「しもべはどこへも行いきません」。5:26 エリシャは言いった、「あの人ひとが車くるまをはなれて、あなたを迎むかえたとき、わたしの心こころはあなたと一緒いっしょにそこにいたではないか。今いまは金きんを受うけ、着物きものを受うけ、オリブ畑はたけ、ぶどう畑はたけ、羊ひつじ、牛うし、しもべ、はしためを受うける時ときであろうか。5:27 それゆえ、ナアマンのらい病びょうはあなたに着つき、ながくあなたの子孫しそんに及およぶであろう」。彼かれがエリシャの前まえを出でていくとき、らい病びょうが発はっして雪ゆきのように白しろくなっていた。 第6章 6:1 さて預言者よげんしゃのともがらはエリシャに言いった、「わたしたちがあなたと共ともに住すんでいる所ところは狭せまくなりましたので、6:2 わたしたちをヨルダンに行いかせ、そこからめいめい一本ぽんずつ材木ざいもくを取とってきて、わたしたちの住すむ場所ばしょを造つくらせてください」。エリシャは言いった、「行いきなさい」。6:3 時ときにそのひとりが、「どうぞあなたも、しもべらと一緒いっしょに行いってください」と言いったので、エリシャは「行いきましょう」と答こたえた。6:4 そしてエリシャは彼かれらと一緒いっしょに行いった。彼かれらはヨルダンへ行いって木きを切きり倒たおしたが、6:5 ひとりが材木ざいもくを切きり倒たおしているとき、おのの頭あたまが水みずの中なかに落おちたので、彼かれは叫さけんで言いった。「ああ、わが主しゅよ。これは借かりたものです」。6:6 神かみの人ひとは言いった、「それはどこに落おちたのか」。彼かれがその場所ばしょを知しらせると、エリシャは一本ぽんの枝えだを切きり落おとし、そこに投なげ入いれて、そのおのの頭あたまを浮うかばせ、6:7 「それを取とりあげよ」と言いったので、その人ひとは手てを伸のべてそれを取とった。 6:8 かつてスリヤの王おうがイスラエルと戦たたかっていたとき、家来けらいたちと評議ひょうぎして「しかじかの所ところにわたしの陣じんを張はろう」と言いうと、6:9 神かみの人ひとはイスラエルの王おうに「あなたは用心ようじんして、この所ところをとおってはなりません。スリヤびとがそこに下くだってきますから」と言いい送おくった。6:10 それでイスラエルの王おうは神かみの人ひとが自分じぶんに告つげてくれた所ところに人ひとをつかわし、警戒けいかいしたので、その所ところでみずからを防ふせぎえたことは一、二回かいにとどまらなかった。 6:11 スリヤの王おうはこの事ことのために心こころを悩なやまし、家来けらいたちを召めして言いった、「われわれのうち、だれがイスラエルの王おうと通つうじているのか、わたしに告つげる者ものはないか」。6:12 ひとりの家来けらいが言いった、「王おう、わが主しゅよ、だれも通つうじている者ものはいません。ただイスラエルの預言者よげんしゃエリシャが、あなたが寝室しんしつで語かたられる言葉ことばでもイスラエルの王おうに告つげるのです」。6:13 王おうは言いった、「彼かれがどこにいるか行いって捜さがしなさい。わたしは人ひとをやって彼かれを捕とらえよう」。時ときに「彼かれはドタンにいる」と王おうに告つげる者ものがあったので、6:14 王おうはそこに馬うまと戦車せんしゃおよび大軍たいぐんをつかわした。彼かれらは夜よるのうちに来きて、その町まちを囲かこんだ。 6:15 神かみの人ひとの召使めしつかいが朝あさ早はやく起おきて出でて見みると、軍勢ぐんぜいが馬うまと戦車せんしゃをもって町まちを囲かこんでいたので、その若者わかものはエリシャに言いった、「ああ、わが主しゅよ、わたしたちはどうしましょうか」。6:16 エリシャは言いった、「恐おそれることはない。われわれと共ともにいる者ものは彼かれらと共ともにいる者ものよりも多おおいのだから」。6:17 そしてエリシャが祈いのって「主しゅよ、どうぞ、彼かれの目めを開ひらいて見みさせてください」と言いうと、主しゅはその若者わかものの目めを開ひらかれたので、彼かれが見みると、火ひの馬うまと火ひの戦車せんしゃが山やまに満みちてエリシャのまわりにあった。6:18 スリヤびとがエリシャの所ところに下くだってきた時とき、エリシャは主しゅに祈いのって言いった、「どうぞ、この人々ひとびとの目めをくらましてください」。するとエリシャの言葉ことばのとおりに彼かれらの目めをくらまされた。6:19 そこでエリシャは彼かれらに「これはその道みちではない。これはその町まちでもない。わたしについてきなさい。わたしはあなたがたを、あなたがたの尋たずねる人ひとの所ところへ連つれて行いきましょう」と言いって、彼かれらをサマリヤへ連つれて行いった。 6:20 彼かれらがサマリヤにはいったとき、エリシャは言いった、「主しゅよ、この人々ひとびとの目めを開ひらいて見みさせてください」。主しゅは彼かれらの目めを開ひらかれたので、彼かれらが見みると、見みよ、彼かれらはサマリヤのうちに来きていた。6:21 イスラエルの王おうは彼かれらを見みて、エリシャに言いった、「わが父ちちよ、彼かれらを撃うち殺ころしましょうか。彼かれらを撃うち殺ころしましょうか」。6:22 エリシャは答こたえた、「撃うち殺ころしてはならない。あなたはつるぎと弓ゆみをもって、捕虜ほりょにした者ものどもを撃うち殺ころすでしょうか。パンと水みずを彼かれらの前まえに供そなえて食くい飲のみさせ、その主君しゅくんのもとへ行いかせなさい」。6:23 そこで王おうは彼かれらのために盛さかんなふるまいを設もうけた。彼かれらが食くい飲のみを終おわると彼かれらを去さらせたので、その主君しゅくんの所ところへ帰かえった。スリヤの略奪りゃくだつ隊たいは再ふたたびイスラエルの地ちにこなかった。 6:24 この後のちスリヤの王おうベネハダデはその全ぜん軍ぐんを集あつめ、上のぼってきてサマリヤを攻せめ囲かこんだので、6:25 サマリヤに激はげしいききんが起たった。すなわち彼かれらがこれを攻せめ囲かこんだので、ついに、ろばの頭あたま一つが銀ぎん八十シケルで売うられ、はとのふん一カブの四分ぶんの一が銀ぎん五シケルで売うられるようになった。6:26 イスラエルの王おうが城壁じょうへきの上うえをとおっていた時とき、ひとりの女おんなが彼かれに呼よばわって、「わが主しゅ、王おうよ、助たすけてください」と言いったので、6:27 彼かれは言いった、「もし主しゅがあなたを助たすけられないならば、何なにをもってわたしがあなたを助たすけることができよう。打うち場ばの物ものをもってか、酒さかぶねの物ものをもってか」。6:28 そして王おうは女おんなに尋たずねた、「何事なにごとなのですか」。彼女かのじょは答こたえた、「この女おんなはわたしにむかって『あなたの子こをください。わたしたちは、きょうそれを食たべ、あす、わたしの子こを食たべましょう』と言いいました。6:29 それでわたしたちは、まずわたしの子こを煮にて食たべましたが、次つぎの日ひわたしが彼女かのじょにむかって『あなたの子こをください。わたしたちはそれを食たべましょう』と言いいますと、彼女かのじょはその子こを隠かくしました」。6:30 王おうはその女おんなの言葉ことばを聞きいて、衣ころもを裂さき、――王おうは城壁じょうへきの上うえをとおっていたが、民たみが見みると、その身みに荒布あらぬのを着つけていた――6:31 そして王おうは言いった「きょう、シャパテの子こエリシャの首くびがその肩かたの上うえにすわっているならば、神かみがどんなにでもわたしを罰ばっしてくださるように」。 6:32 さてエリシャはその家いえに座ざしていたが、長老ちょうろうたちもきて彼かれと共ともに座ざした。王おうは自分じぶんの所ところから人ひとをつかわしたが、エリシャはその使者ししゃがまだ着つかないうちに長老ちょうろうたちに言いった、「あなたがたは、この人ひとを殺ころす者ものがわたしの首くびを取とるために、人ひとをつかわすのを見みますか。その使者ししゃがきたならば、戸とを閉とじて、内うちに入いれてはなりません。彼かれのうしろに、その主君しゅくんの足音あしおとがするではありませんか」。6:33 彼かれがなお彼かれらと語かたっているうちに、王おうは彼かれのもとに下くだってきて言いった、「この災わざわいは主しゅから出でたのです。わたしはどうしてこの上うえ、主しゅを待またなければならないでしょうか」。 第7章 7:1 エリシャは言いった、「主しゅの言葉ことばを聞ききなさい。主しゅはこう仰おおせられる、『あすの今いまごろサマリヤの門もんで、麦粉むぎこ一セアを一シケルで売うり、大麦おおむぎ二セアを一シケルで売うるようになるであろう』」。7:2 時ときにひとりの副官ふくかんすなわち王おうがその人ひとの手てによりかかっていた者ものが神かみの人ひとに答こたえて言いった、「たとい主しゅが天てんに窓まどを開ひらかれても、そんな事ことがありえましょうか」。エリシャは言いった、「あなたは自分じぶんの目めをもってそれを見みるであろう。しかしそれを食たべることはなかろう」。 7:3 さて町まちの門もんの入口いりぐちに四人にんのらい病人びょうにんがいたが、彼かれらは互たがいに言いった、「われわれはどうしてここに座ざして死しを待またねばならないのか。7:4 われわれがもし町まちにはいろうといえば、町まちには食物しょくもつが尽つきているから、われわれはそこで死しぬであろう。しかしここに座ざしていても死しぬのだ。いっその事こと、われわれはスリヤびとの陣営じんえいへ逃にげて行いこう。もし彼かれらがわれわれを生いかしておいてくれるならば、助たすかるが、たといわれわれを殺ころしても死しぬばかりだ」。7:5 そこで彼かれらはスリヤびとの陣営じんえいへ行いこうと、たそがれに立たちあがったが、スリヤびとの陣営じんえいのほとりに行いって見みると、そこにはだれもいなかった。7:6 これは主しゅがスリヤびとの軍勢ぐんぜいに戦車せんしゃの音おと、馬うまの音おと、大軍たいぐんの音おとを聞きかせられたので、彼かれらは互たがいに「見みよ、イスラエルの王おうがわれわれを攻せめるために、ヘテびとの王おうたちおよびエジプトの王おうたちを雇やとってきて、われわれを襲おそうのだ」と言いって、7:7 たそがれに立たって逃にげ、その天幕てんまくと、馬うまと、ろばを捨すて、陣営じんえいをそのままにしておいて、命いのちを全まっとうしようと逃にげたからである。7:8 そこでらい病人びょうにんたちは陣営じんえいのほとりに行いき、一つの天幕てんまくにはいって食くい飲のみし、そこから金銀きんぎん、衣服いふくを持もち出だしてそれを隠かくし、また来きて、他たの天幕てんまくに入はいり、そこからも持もち出だしてそれを隠かくした。 7:9 そして彼かれらは互たがいに言いった、「われわれのしている事ことはよくない。きょうは良よいおとずれのある日ひであるのに、黙だまっていて、夜明よあけまで待まつならば、われわれは罰ばつをこうむるであろう。さあ、われわれは行いって王おうの家族かぞくに告つげよう」。7:10 そこで彼かれらは来きて、町まちの門もんを守まもる者ものを呼よんで言いった、「わたしたちがスリヤびとの陣営じんえいに行いって見みると、そこにはだれの姿すがたも見みえず、また人声ひとごえもなく、ただ、馬うまとろばがつないであり、天幕てんまくはそのままでした」。7:11 そこで門もんを守まもる者ものは呼よばわって、それを王おうの家族かぞくのうちに知しらせた。7:12 王おうは夜よるのうちに起おきて、家来けらいたちに言いった、「スリヤびとがわれわれに対たいして図はかっている事ことをあなたがたに告つげよう。彼かれらは、われわれの飢うえているのを知しって、陣営じんえいを出でて野のに隠かくれ、『イスラエルびとが町まちを出でたら、いけどりにして、町まちに押おし入いろう』と考かんがえているのだ」。7:13 家来けらいのひとりが答こたえて言いった、「人々ひとびとに、ここに残のこっている馬うまのうち五頭とうを連つれてこさせてください。ここに残のこっているこれらの人々ひとびとは、すでに滅ほろびうせたイスラエルの全ぜん群衆ぐんしゅうと同おなじ運命うんめいにあうのですから。わたしたちは人ひとをやってうかがわせましょう」。7:14 そこで彼かれらはふたりの騎兵きへいを選えらんだ。王おうはそれをつかわし、「行いって見みよ」と言いって、スリヤびとの軍勢ぐんぜいのあとをつけさせたので、7:15 彼かれらはそのあとを追おってヨルダンまで行いったが、道みちにはすべて、スリヤびとがあわてて逃にげる時ときに捨すてていった衣服いふくと武器ぶきが散ちらばっていた。その使者ししゃは帰かえってきて、これを王おうに告つげた。 7:16 そこで民たみが出でていって、スリヤびとの陣営じんえいをかすめたので、麦粉むぎこ一セアは一シケルで売うられ、大麦おおむぎ二セアは一シケルで売うられ、主しゅの言葉ことばのとおりになった。7:17 王おうは自分じぶんがその人ひとの手てによりかかっていた、あの副官ふくかんを立たてて門もんを管理かんりさせたが、民たみは門もんで彼かれを踏ふみつけたので、彼かれは死しんだ。すなわち、王おうが神かみの人ひとのところに下くだってきた時とき、神かみの人ひとが言いったとおりであった。7:18 これは神かみの人ひとが王おうにむかって、「あすの今いまごろ、サマリヤの門もんで大麦おおむぎ二セアを一シケルで売うり、麦粉むぎこ一セアを一シケルで売うるようになるであろう」と言いったときに、7:19 その副官ふくかんが神かみの人ひとに答こたえて、「たとい主しゅが天てんに窓まどを開ひらかれても、そんな事ことがありえようか」と言いったからである。そのとき神かみの人ひとは「あなたは自分じぶんの目めをもってそれを見みるであろう。しかしそれを食たべることはなかろう」と言いったが、7:20 これはそのとおり彼かれに臨のぞんだ。すなわち民たみが門もんで彼かれを踏ふみつけたので彼かれは死しんだ。 第8章 8:1 エリシャはかつて、その子こを生いきかえらせてやった女おんなに言いったことがある。「あなたは、ここを立たって、あなたの家族かぞくと共ともに行いき、寄留きりゅうしようと思おもう所ところに寄留きりゅうしなさい。主しゅがききんを呼よび下くだされたので、七年ねんの間あいだそれがこの地ちに臨のぞむから」。8:2 そこで女おんなは立たって神かみの人ひとの言葉ことばのようにし、その家族かぞくと共ともに行いってペリシテびとの地ちに七年ねん寄留きりゅうした。8:3 七年ねんたって後のち、女おんなはペリシテびとの地ちから帰かえってきて、自分じぶんの家いえと畑はたけのために王おうに訴うったえようと出でていった。8:4 時ときに王おうは神かみの人ひとのしもべゲハジにむかって「エリシャがしたもろもろの大おおきな事ことをわたしに話はなしてください」と言いって、彼かれと物語ものがたっていた。8:5 すなわちエリシャが死人しにんを生いきかえらせた事ことを、ゲハジが王おうと物語ものがたっていたとき、その子こを生いきかえらせてもらった女おんなが、自分じぶんの家いえと畑はたけのために王おうに訴うったえてきたので、ゲハジは言いった、「わが主しゅ、王おうよ、これがその女おんなです。またこれがその子こで、エリシャが生いきかえらせたのです」。8:6 王おうがその女おんなに尋たずねると、彼女かのじょは王おうに話はなしたので、王おうは彼女かのじょのためにひとりの役人やくにんに命めいじて言いった、「すべて彼女かのじょに属ぞくする物もの、ならびに彼女かのじょがこの地ちを去さった日ひから今いままでのその畑はたけの産物さんぶつをことごとく彼女かのじょに返かえしなさい」。 8:7 さてエリシャはダマスコに来きた。時ときにスリヤの王おうベネハダデは病気びょうきであったが、「神かみの人ひとがここに来きた」と告つげる者ものがあったので、8:8 王おうはハザエルに言いった、「贈おくり物ものを携たずさえて行いって神かみの人ひとを迎むかえ、彼かれによって主しゅに『わたしのこの病気びょうきはなおりましょうか』と言いって尋たずねなさい」。8:9 そこでハザエルは彼かれを迎むかえようと、ダマスコのもろもろの良よい物ものをらくだ四十頭とうに載のせ、贈おくり物ものとして携たずさえ行いき、エリシャの前まえに立たって言いった、「あなたの子こ、スリヤの王おうベネハダデがわたしをあなたにつかわして、『わたしのこの病気びょうきはなおりましょうか』と言いわせています」。8:10 エリシャは彼かれに言いった、「行いって彼かれに『あなたは必かならずなおります』と告つげなさい。ただし主しゅはわたしに、彼かれが必かならず死しぬことを示しめされました」。8:11 そして神かみの人ひとがひとみを定さだめて彼かれの恥はじるまでに見みつめ、やがて泣なき出だしたので、8:12 ハザエルは言いった、「わが主しゅよ、どうして泣なかれるのですか」。エリシャは答こたえた、「わたしはあなたがイスラエルの人々ひとびとにしようとする害悪がいあくを知しっているからです。すなわち、あなたは彼かれらの城しろに火ひをかけ、つるぎをもって若者わかものを殺ころし、幼おさな子ごを投なげうち、妊 にんしんの女おんなを引ひき裂さくでしょう」。8:13 ハザエルは言いった、「しもべは一匹ぴきの犬いぬにすぎないのに、どうしてそんな大おおきな事ことをすることができましょう」。エリシャは言いった、「主しゅがわたしに示しめされました。あなたはスリヤの王おうとなるでしょう」。8:14 彼かれがエリシャのもとを去さって、主君しゅくんのところへ行いくと、「エリシャはあなたになんと言いったか」と尋たずねられたので、「あなたが必かならずなおるでしょうと、彼かれはわたしに告つげました」と答こたえた。8:15 しかし翌日よくじつになってハザエルは布ぬのを取とって水みずに浸ひたし、それをもって王おうの顔かおをおおったので、王おうは死しんだ。ハザエルは彼かれに代かわって王おうとなった。 8:16 イスラエルの王おうアハブの子こヨラムの第だい五年ねんに、ユダの王おうヨシャパテの子こヨラムが位くらいについた。8:17 彼かれは王おうとなったとき三十二歳さいで、八年ねんの間あいだエルサレムで世よを治おさめた。8:18 彼かれはアハブの家いえがしたようにイスラエルの王おうたちの道みちに歩あゆんだ。アハブの娘むすめが彼かれの妻つまであったからである。彼かれは主しゅの目めの前まえに悪あくをおこなったが、8:19 主しゅはしもべダビデのためにユダを滅ほろぼすことを好このまれなかった。すなわち主しゅは彼かれとその子孫しそんに常つねにともしびを与あたえると、彼かれに約束やくそくされたからである。 8:20 ヨラムの世よにエドムがそむいてユダの支配しはいを脱だっし、みずから王おうを立たてたので、8:21 ヨラムはすべての戦車せんしゃを従したがえてザイルにわたって行いき、その戦車せんしゃの指揮しき官かんたちと共ともに、夜よのうちに立たちあがって、彼かれを包囲ほういしているエドムびとを撃うった。しかしヨラムの軍隊ぐんたいは天幕てんまくに逃にげ帰かえった。8:22 エドムはこのようにそむいてユダの支配しはいを脱だっし、今日こんにちに至いたっている。リブナもまた同時どうじにそむいた。8:23 ヨラムのその他たの事績じせきおよび彼かれがしたすべての事ことは、ユダの歴代志れきだいしの書しょにしるされているではないか。8:24 ヨラムはその先祖せんぞたちと共ともに ねむって、ダビデの町まちにその先祖せんぞたちと共ともに葬ほうむられ、その子こアハジヤが代かわって王おうとなった。 8:25 イスラエルの王おうアハブの子こヨラムの第だい十二年ねんにユダの王おうヨラムの子こアハジヤが位くらいについた。8:26 アハジヤは王おうとなったとき二十二歳さいで、エルサレムで一年ねん世よを治おさめた。その母ははは名なをアタリヤと言いって、イスラエルの王おうオムリの孫娘まごむすめであった。8:27 アハジヤはまたアハブの家いえの道みちに歩あゆみ、アハブの家いえがしたように主しゅの目めの前まえに悪あくをおこなった。彼かれはアハブの家いえの婿むこであったからである。 8:28 彼かれはアハブの子こヨラムと共ともに行いって、スリヤの王おうハザエルとラモテ・ギレアデで戦たたかったが、スリヤびとらはヨラムに傷きずを負おわせた。8:29 ヨラム王おうはそのスリヤの王おうハザエルと戦たたかうときにラマでスリヤびとに負おわされた傷きずをいやすため、エズレルに帰かえったが、ユダの王おうヨラムの子こアハジヤはアハブの子こヨラムが病やんでいたので、エズレルに下くだって彼かれをおとずれた。
4:1 預言者よげんしゃのともがらの、ひとりの妻つまがエリシャに呼よばわって言いった、「あなたのしもべであるわたしの夫おっとが死しにました。ごぞんじのように、あなたのしもべは主しゅを恐おそれる者ものでありましたが、今いま、債さい主しゅがきて、わたしのふたりの子供こどもを取とって奴隷どれいにしようとしているのです」。
4:2 エリシャは彼女かのじょに言いった、「あなたのために何なにをしましょうか。あなたの家いえにどんな物ものがあるか、言いいなさい」。彼女かのじょは言いった、「一びんの油あぶらのほかは、はしための家いえに何なにもありません」。
4:3 彼かれは言いった、「ほかへ行いって、隣となりの人々ひとびとから器うつわを借かりなさい。あいた器うつわを借かりなさい。少すこしばかりではいけません。
4:4 そして内うちにはいって、あなたの子供こどもたちと一緒いっしょに戸との内うちに閉とじこもり、そのすべての器うつわに油あぶらをついで、いっぱいになったとき、一つずつそれを取とりのけておきなさい」。
4:5 彼女かのじょは彼かれを離はなれて去さり、子供こどもたちと一緒いっしょに戸との内うちに閉とじこもり、子供こどもたちの持もって来くる器うつわに油あぶらをついだ。
4:6 油あぶらが満みちたとき、彼女かのじょは子供こどもに「もっと器うつわを持もってきなさい」と言いったが、子供こどもが「器うつわはもうありません」と言いったので、油あぶらはとまった。
4:7 そこで彼女かのじょは神かみの人ひとのところにきて告つげたので、彼かれは言いった、「行いって、その油あぶらを売うって負債ふさいを払はらいなさい。あなたと、あなたの子供こどもたちはその残のこりで暮くらすことができます」。
4:8 ある日ひエリシャはシュネムへ行いったが、そこにひとりの裕福ゆうふくな婦人ふじんがいて、しきりに彼かれに食事しょくじをすすめたので、彼かれはそこを通とおるごとに、そこに寄よって食事しょくじをした。
4:9 その女おんなは夫おっとに言いった、「いつもわたしたちの所ところを通とおるあの人ひとは確たしかに神かみの聖せいなる人ひとです。
4:10 わたしたちは屋上おくじょうに壁かべのある一つの小ちいさいへやを造つくり、そこに寝台しんだいと机つくえといすと燭台しょくだいとを彼かれのために備そなえましょう。そうすれば彼かれがわたしたちの所ところに来くるとき、そこに、はいることができます」。
4:11 さて、ある日ひエリシャはそこにきて、そのへやにはいり、そこに休やすんだが、
4:12 彼かれはそのしもべゲハジに「このシュネムの女おんなを呼よんできなさい」と言いった。彼かれがその女おんなを呼よぶと、彼女かのじょはきてエリシャの前まえに立たったので、
4:13 エリシャはゲハジに言いった、「彼女かのじょに言いいなさい、『あなたはこんなにねんごろに、わたしたちのために心こころを用もちいられたが、あなたのためには何なにをしたらよいでしょうか。王おうまたは軍勢ぐんぜいの長ちょうにあなたの事ことをよろしく頼たのむことをお望のぞみですか』」。彼女かのじょは答こたえて言いった、「わたしは自分じぶんの民たみのうちに住すんでいます」。
4:14 エリシャは言いった、「それでは彼女かのじょのために何なにをしようか」。ゲハジは言いった、「彼女かのじょには子供こどもがなく、その夫おっとは老おいています」。
4:15 するとエリシャが「彼女かのじょを呼よびなさい」と言いったので、彼女かのじょを呼よぶと、来きて戸口とぐちに立たった。
4:16 エリシャは言いった、「来年らいねんの今いまごろ、あなたはひとりの子こを抱だくでしょう」。彼女かのじょは言いった、「いいえ、わが主しゅよ、神かみの人ひとよ、はしためを欺あざむかないでください」。
4:17 しかし女おんなはついに身みごもって、エリシャが彼女かのじょに言いったように、次つぎの年ねんのそのころに子こを産うんだ。
4:18 その子こが成長せいちょうして、ある日ひ、刈入かりいれびとの所ところへ出でていって、父ちちのもとへ行いったが、
4:19 父ちちにむかって「頭あたまが、頭あたまが」と言いったので、父ちちはしもべに「彼かれを母ははのもとへ背負せおっていきなさい」と言いった。
4:20 彼かれを背負せおって母ははのもとへ行いくと、昼ひるまで母ははのひざの上うえにすわっていたが、ついに死しんだ。
4:21 母ははは上あがっていって、これを神かみの人ひとの寝台しんだいの上うえに置おき、戸とを閉とじて出でてきた。
4:22 そして夫おっとを呼よんで言いった、「どうぞ、しもべひとりと、ろば一頭とうをわたしにかしてください。急いそいで神かみの人ひとの所ところへ行いって、また帰かえってきます」。
4:23 夫おっとは言いった、「どうしてきょう彼かれの所ところへ行いこうとするのか。きょうは、ついたちでもなく、安息日あんそくにちでもない」。彼女かのじょは言いった、「よろしいのです」。
4:24 そして彼女かのじょはろばにくらを置おいて、しもべに言いった、「速はやく駆かけさせなさい。わたしが命めいじる時ときでなければ、歩調ほちょうをゆるめてはなりません」。
4:25 こうして彼女かのじょは出発しゅっぱつしてカルメル山やまへ行いき、神かみの人ひとの所ところへ行いった。
神かみの人ひとは彼女かのじょの近ちかづいてくるのを見みて、しもべゲハジに言いった、「向むこうから、あのシュネムの女おんなが来くる。
4:26 すぐ走はしって行いって、彼女かのじょを迎むかえて言いいなさい、『あなたは無事ぶじですか。あなたの夫おっとは無事ぶじですか。あなたの子供こどもは無事ぶじですか』」。彼女かのじょは答こたえた、「無事ぶじです」。
4:27 ところが彼女かのじょは山やまにきて、神かみの人ひとの所ところへくるとエリシャの足あしにすがりついた。ゲハジが彼女かのじょを追おいのけようと近ちかよった時とき、神かみの人ひとは言いった、「かまわずにおきなさい。彼女かのじょは心こころに苦くるしみがあるのだから。主しゅはそれを隠かくして、まだわたしにお告つげにならないのだ」。
4:28 そこで彼女かのじょは言いった、「わたしがあなたに子こを求もとめましたか。わたしを欺あざむかないでくださいと言いったではありませんか」。
4:29 エリシャはゲハジに言いった、「腰こしをひきからげ、わたしのつえを手てに持もって行いきなさい。だれに会あっても、あいさつしてはならない。またあなたにあいさつする者ものがあっても、それに答こたえてはならない。わたしのつえを子供こどもの顔かおの上うえに置おきなさい」。
4:30 子供こどもの母ははは言いった、「主しゅは生いきておられます。あなたも生いきておられます。わたしはあなたを離はなれません」。そこでエリシャはついに立たちあがって彼女かのじょのあとについて行いった。
4:31 ゲハジは彼かれらの先さきに行いって、つえを子供こどもの顔かおの上うえに置おいたが、なんの声こえもなく、生いきかえったしるしもなかったので、帰かえってきてエリシャに会あい、彼かれに告つげて「子供こどもはまだ目めをさましません」と言いった。
4:32 エリシャが家いえにはいって見みると、子供こどもは死しんで、寝台しんだいの上うえに横よこたわっていたので、
4:33 彼かれははいって戸とを閉とじ、彼かれらふたりだけ内うちにいて主しゅに祈いのった。
4:34 そしてエリシャが上あがって子供こどもの上うえに伏ふし、自分じぶんの口くちを子供こどもの口くちの上うえに、自分じぶんの目めを子供こどもの目めの上うえに、自分じぶんの両手りょうてを子供こどもの両手りょうての上うえにあて、その身みを子供こどもの上うえに伸のばしたとき、子供こどものからだは暖あたたかになった。
4:35 こうしてエリシャは再ふたたび起おきあがって、家いえの中なかをあちらこちらと歩あゆみ、また上うえがって、その身みを子供こどもの上うえに伸のばすと、子供こどもは七たびくしゃみをして目めを開ひらいた。
4:36 エリシャはただちにゲハジを呼よんで、「あのシュネムの女おんなを呼よべ」と言いったので、彼女かのじょを呼よんだ。彼女かのじょがはいってくるとエリシャは言いった、「あなたの子供こどもをつれて行いきなさい」。
4:37 彼女かのじょははいってきて、エリシャの足あしもとに伏ふし、地ちに身みをかがめた。そしてその子こ供ともを取とりあげて出でていった。
4:38 エリシャはギルガルに帰かえったが、その地ちにききんがあった。預言者よげんしゃのともがらが彼かれの前まえに座ざしていたので、エリシャはそのしもべに言いった、「大おおきなかまをすえて、預言者よげんしゃのともがらのために野菜やさいの煮物にものをつくりなさい」。
4:39 彼かれらのうちのひとりが畑はたけに出でていって青物あおものをつんだが、つる草くさのあるのを見みて、その野のうりを一包つつみつんできて、煮物にもののかまの中なかに切きり込こんだ。彼かれらはそれが何なにであるかを知しらなかったからである。
4:40 やがてこれを盛もって人々ひとびとに食たべさせようとしたが、彼かれらがその煮物にものを食たべようとした時とき、叫さけんで、「ああ神かみの人ひとよ、かまの中なかに、たべると死しぬものがはいっています」と言いって、食たべることができなかったので、
4:41 エリシャは「それでは粉こなを持もって来きなさい」と言いって、それをかまに投なげ入いれ、「盛もって人々ひとびとに食たべさせなさい」と言いった。かまの中なかには、なんの毒物どくぶつもなくなった。
4:42 その時とき、バアル・シャリシャから人ひとがきて、初穂はつほのパンと、大麦おおむぎのパン二十個こと、新穀しんこく一袋ふくろとを神かみの人ひとのもとに持もってきたので、エリシャは「人々ひとびとに与あたえて食たべさせなさい」と言いったが、
4:43 その召使めしつかいは言いった、「どうしてこれを百人にんの前まえに供そなえるのですか」。しかし彼かれは言いった、「人々ひとびとに与あたえて食たべさせなさい。主しゅはこう言いわれる、『彼かれらは食たべてなお余あますであろう』」。
4:44 そこで彼かれはそれを彼かれらの前まえに供そなえたので、彼かれらは食たべてなお余あました。主しゅの言葉ことばのとおりであった。
第5章 5:1 スリヤ王おうの軍勢ぐんぜいの長ちょうナアマンはその主君しゅくんに重おもんじられた有力ゆうりょくな人ひとであった。主しゅがかつて彼かれを用もちいてスリヤに勝利しょうりを得えさせられたからである。彼かれは大だい勇士ゆうしであったが、らい病びょうをわずらっていた。5:2 さきにスリヤびとが略奪りゃくだつ隊たいを組くんで出でてきたとき、イスラエルの地ちからひとりの少女しょうじょを捕とらえて行いった。彼女かのじょはナアマンの妻つまに仕つかえたが、5:3 その女おんな主人しゅじんにむかって、「ああ、御ご主人しゅじんがサマリヤにいる預言者よげんしゃと共ともにおられたらよかったでしょうに。彼かれはそのらい病びょうをいやしたことでしょう」と言いったので、5:4 ナアマンは行いって、その主君しゅくんに、「イスラエルの地ちからきた娘むすめがこういう事ことを言いいました」と告つげると、5:5 スリヤ王おうは言いった、「それでは行いきなさい。わたしはイスラエルの王おうに手紙てがみを書かきましょう」。 そこで彼かれは銀ぎん十タラントと、金きん六千シケルと、晴はれ着ぎ十着ちゃくを携たずさえて行いった。5:6 彼かれがイスラエルの王おうに持もって行いった手紙てがみには、「この手紙てがみがあなたにとどいたならば、わたしの家来けらいナアマンを、あなたにつかわしたことと御ご承知しょうちください。あなたに彼かれのらい病びょうをいやしていただくためです」とあった。5:7 イスラエルの王おうはその手紙てがみを読よんだ時とき、衣ころもを裂さいて言いった、「わたしは殺ころしたり、生いかしたりすることのできる神かみであろうか。どうしてこの人ひとは、らい病人びょうにんをわたしにつかわして、それをいやせと言いうのか。あなたがたは、彼かれがわたしに争あらそいをしかけているのを知しって警戒けいかいするがよい」。 5:8 神かみの人ひとエリシャは、イスラエルの王おうがその衣ころもを裂さいたことを聞きき、王おうに人ひとをつかわして言いった、「どうしてあなたは衣ころもを裂さいたのですか。彼かれをわたしのもとにこさせなさい。そうすれば彼かれはイスラエルに預言者よげんしゃのあることを知しるようになるでしょう」。5:9 そこでナアマンは馬うまと車くるまとを従したがえてきて、エリシャの家いえの入口いりぐちに立たった。5:10 するとエリシャは彼かれに使者ししゃをつかわして言いった、「あなたはヨルダンへ行いって七たび身みを洗あらいなさい。そうすれば、あなたの肉にくはもとにかえって清きよくなるでしょう」。5:11 しかしナアマンは怒いかって去さり、そして言いった、「わたしは、彼かれがきっとわたしのもとに出でてきて立たち、その神かみ、主しゅの名なを呼よんで、その箇所かしょの上うえに手てを動うごかして、らい病びょうをいやすのだろうと思おもった。5:12 ダマスコの川かわアバナとパルパルはイスラエルのすべての川かわ水みずにまさるではないか。わたしはこれらの川かわに身みを洗あらって清きよまることができないのであろうか」。こうして彼かれは身みをめぐらし、怒いかって去さった。5:13 その時とき、しもべたちは彼かれに近ちかよって言いった、「わが父ちちよ、預言者よげんしゃがあなたに、何なにか大おおきな事ことをせよと命めいじても、あなたはそれをなさらなかったでしょうか。まして彼かれはあなたに『身みを洗あらって清きよくなれ』と言いうだけではありませんか」。5:14 そこでナアマンは下くだって行いって、神かみの人ひとの言葉ことばのように七たびヨルダンに身みを浸ひたすと、その肉にくがもとにかえって幼おさな子ごの肉にくのようになり、清きよくなった。 5:15 彼かれはすべての従者じゅうしゃを連つれて神かみの人ひとのもとに帰かえってきて、その前まえに立たって言いった、「わたしは今いま、イスラエルのほか、全ぜん地ちのどこにも神かみのおられないことを知しりました。それゆえ、どうぞ、しもべの贈おくり物ものを受うけてください」。5:16 エリシャは言いった、「わたしの仕つかえる主しゅは生いきておられる。わたしは何なにも受うけません」。彼かれはしいて受うけさせようとしたが、それを拒こばんだ。5:17 そこでナアマンは言いった、「もしお受うけにならないのであれば、どうぞ騾馬らばに二駄だの土つちをしもべにください。これから後のちしもべは、他たの神かみには燔祭はんさいも犠牲ぎせいもささげず、ただ主しゅにのみささげます。5:18 どうぞ主しゅがこの事ことを、しもべにおゆるしくださるように。すなわち、わたしの主君しゅくんがリンモンの宮みやにはいって、そこで礼れい拝はいするとき、わたしの手てによりかかることがあり、またわたしもリンモンの宮みやで身みをかがめることがありましょう。わたしがリンモンの宮みやで身みをかがめる時とき、どうぞ主しゅがその事ことを、しもべにおゆるしくださるように」。5:19 エリシャは彼かれに言いった、「安やすんじて行いきなさい」。 ナアマンがエリシャを離はなれて少すこし行いったとき、5:20 神かみの人ひとエリシャのしもべゲハジは言いった、「主人しゅじんはこのスリヤびとナアマンをいたわって、彼かれが携たずさえてきた物ものを受うけなかった。主しゅは生いきておられる。わたしは彼かれのあとを追おいかけて、彼かれから少すこし、物ものを受うけよう」。5:21 そしてゲハジはナアマンのあとを追おったが、ナアマンは自分じぶんのあとから彼かれが走はしってくるのを見みて、車くるまから降ふり、彼かれを迎むかえて、「変かわった事ことがあるのですか」と言いうと、5:22 彼かれは言いった、「無事ぶじです。主人しゅじんがわたしをつかわして言いわせます、『ただいまエフライムの山地さんちから、預言者よげんしゃのともがらのふたりの若者わかものが、わたしのもとに来きましたので、どうぞ彼かれらに銀ぎん一タラントと晴はれ着ぎ二着ちゃくを与あたえてください』」。5:23 ナアマンは、「どうぞ二タラントを受うけてください」と言いって彼かれにしい、銀ぎん二タラントを二つの袋ふくろに入いれ、晴はれ着ぎ二着ちゃくを添そえて、自分じぶんのふたりのしもべに渡わたしたので、彼かれらはそれを負おってゲハジの先さきに立たって進すすんだが、5:24 彼かれは丘おかにきたとき、それを彼かれらの手てから受うけ取とって家いえのうちにおさめ、人々ひとびとを送おくりかえしたので、彼かれらは去さった。5:25 彼かれがはいって主人しゅじんの前まえに立たつと、エリシャは彼かれに言いった、「ゲハジよ、どこへ行いってきたのか」。彼かれは言いった、「しもべはどこへも行いきません」。5:26 エリシャは言いった、「あの人ひとが車くるまをはなれて、あなたを迎むかえたとき、わたしの心こころはあなたと一緒いっしょにそこにいたではないか。今いまは金きんを受うけ、着物きものを受うけ、オリブ畑はたけ、ぶどう畑はたけ、羊ひつじ、牛うし、しもべ、はしためを受うける時ときであろうか。5:27 それゆえ、ナアマンのらい病びょうはあなたに着つき、ながくあなたの子孫しそんに及およぶであろう」。彼かれがエリシャの前まえを出でていくとき、らい病びょうが発はっして雪ゆきのように白しろくなっていた。 第6章 6:1 さて預言者よげんしゃのともがらはエリシャに言いった、「わたしたちがあなたと共ともに住すんでいる所ところは狭せまくなりましたので、6:2 わたしたちをヨルダンに行いかせ、そこからめいめい一本ぽんずつ材木ざいもくを取とってきて、わたしたちの住すむ場所ばしょを造つくらせてください」。エリシャは言いった、「行いきなさい」。6:3 時ときにそのひとりが、「どうぞあなたも、しもべらと一緒いっしょに行いってください」と言いったので、エリシャは「行いきましょう」と答こたえた。6:4 そしてエリシャは彼かれらと一緒いっしょに行いった。彼かれらはヨルダンへ行いって木きを切きり倒たおしたが、6:5 ひとりが材木ざいもくを切きり倒たおしているとき、おのの頭あたまが水みずの中なかに落おちたので、彼かれは叫さけんで言いった。「ああ、わが主しゅよ。これは借かりたものです」。6:6 神かみの人ひとは言いった、「それはどこに落おちたのか」。彼かれがその場所ばしょを知しらせると、エリシャは一本ぽんの枝えだを切きり落おとし、そこに投なげ入いれて、そのおのの頭あたまを浮うかばせ、6:7 「それを取とりあげよ」と言いったので、その人ひとは手てを伸のべてそれを取とった。 6:8 かつてスリヤの王おうがイスラエルと戦たたかっていたとき、家来けらいたちと評議ひょうぎして「しかじかの所ところにわたしの陣じんを張はろう」と言いうと、6:9 神かみの人ひとはイスラエルの王おうに「あなたは用心ようじんして、この所ところをとおってはなりません。スリヤびとがそこに下くだってきますから」と言いい送おくった。6:10 それでイスラエルの王おうは神かみの人ひとが自分じぶんに告つげてくれた所ところに人ひとをつかわし、警戒けいかいしたので、その所ところでみずからを防ふせぎえたことは一、二回かいにとどまらなかった。 6:11 スリヤの王おうはこの事ことのために心こころを悩なやまし、家来けらいたちを召めして言いった、「われわれのうち、だれがイスラエルの王おうと通つうじているのか、わたしに告つげる者ものはないか」。6:12 ひとりの家来けらいが言いった、「王おう、わが主しゅよ、だれも通つうじている者ものはいません。ただイスラエルの預言者よげんしゃエリシャが、あなたが寝室しんしつで語かたられる言葉ことばでもイスラエルの王おうに告つげるのです」。6:13 王おうは言いった、「彼かれがどこにいるか行いって捜さがしなさい。わたしは人ひとをやって彼かれを捕とらえよう」。時ときに「彼かれはドタンにいる」と王おうに告つげる者ものがあったので、6:14 王おうはそこに馬うまと戦車せんしゃおよび大軍たいぐんをつかわした。彼かれらは夜よるのうちに来きて、その町まちを囲かこんだ。 6:15 神かみの人ひとの召使めしつかいが朝あさ早はやく起おきて出でて見みると、軍勢ぐんぜいが馬うまと戦車せんしゃをもって町まちを囲かこんでいたので、その若者わかものはエリシャに言いった、「ああ、わが主しゅよ、わたしたちはどうしましょうか」。6:16 エリシャは言いった、「恐おそれることはない。われわれと共ともにいる者ものは彼かれらと共ともにいる者ものよりも多おおいのだから」。6:17 そしてエリシャが祈いのって「主しゅよ、どうぞ、彼かれの目めを開ひらいて見みさせてください」と言いうと、主しゅはその若者わかものの目めを開ひらかれたので、彼かれが見みると、火ひの馬うまと火ひの戦車せんしゃが山やまに満みちてエリシャのまわりにあった。6:18 スリヤびとがエリシャの所ところに下くだってきた時とき、エリシャは主しゅに祈いのって言いった、「どうぞ、この人々ひとびとの目めをくらましてください」。するとエリシャの言葉ことばのとおりに彼かれらの目めをくらまされた。6:19 そこでエリシャは彼かれらに「これはその道みちではない。これはその町まちでもない。わたしについてきなさい。わたしはあなたがたを、あなたがたの尋たずねる人ひとの所ところへ連つれて行いきましょう」と言いって、彼かれらをサマリヤへ連つれて行いった。 6:20 彼かれらがサマリヤにはいったとき、エリシャは言いった、「主しゅよ、この人々ひとびとの目めを開ひらいて見みさせてください」。主しゅは彼かれらの目めを開ひらかれたので、彼かれらが見みると、見みよ、彼かれらはサマリヤのうちに来きていた。6:21 イスラエルの王おうは彼かれらを見みて、エリシャに言いった、「わが父ちちよ、彼かれらを撃うち殺ころしましょうか。彼かれらを撃うち殺ころしましょうか」。6:22 エリシャは答こたえた、「撃うち殺ころしてはならない。あなたはつるぎと弓ゆみをもって、捕虜ほりょにした者ものどもを撃うち殺ころすでしょうか。パンと水みずを彼かれらの前まえに供そなえて食くい飲のみさせ、その主君しゅくんのもとへ行いかせなさい」。6:23 そこで王おうは彼かれらのために盛さかんなふるまいを設もうけた。彼かれらが食くい飲のみを終おわると彼かれらを去さらせたので、その主君しゅくんの所ところへ帰かえった。スリヤの略奪りゃくだつ隊たいは再ふたたびイスラエルの地ちにこなかった。 6:24 この後のちスリヤの王おうベネハダデはその全ぜん軍ぐんを集あつめ、上のぼってきてサマリヤを攻せめ囲かこんだので、6:25 サマリヤに激はげしいききんが起たった。すなわち彼かれらがこれを攻せめ囲かこんだので、ついに、ろばの頭あたま一つが銀ぎん八十シケルで売うられ、はとのふん一カブの四分ぶんの一が銀ぎん五シケルで売うられるようになった。6:26 イスラエルの王おうが城壁じょうへきの上うえをとおっていた時とき、ひとりの女おんなが彼かれに呼よばわって、「わが主しゅ、王おうよ、助たすけてください」と言いったので、6:27 彼かれは言いった、「もし主しゅがあなたを助たすけられないならば、何なにをもってわたしがあなたを助たすけることができよう。打うち場ばの物ものをもってか、酒さかぶねの物ものをもってか」。6:28 そして王おうは女おんなに尋たずねた、「何事なにごとなのですか」。彼女かのじょは答こたえた、「この女おんなはわたしにむかって『あなたの子こをください。わたしたちは、きょうそれを食たべ、あす、わたしの子こを食たべましょう』と言いいました。6:29 それでわたしたちは、まずわたしの子こを煮にて食たべましたが、次つぎの日ひわたしが彼女かのじょにむかって『あなたの子こをください。わたしたちはそれを食たべましょう』と言いいますと、彼女かのじょはその子こを隠かくしました」。6:30 王おうはその女おんなの言葉ことばを聞きいて、衣ころもを裂さき、――王おうは城壁じょうへきの上うえをとおっていたが、民たみが見みると、その身みに荒布あらぬのを着つけていた――6:31 そして王おうは言いった「きょう、シャパテの子こエリシャの首くびがその肩かたの上うえにすわっているならば、神かみがどんなにでもわたしを罰ばっしてくださるように」。 6:32 さてエリシャはその家いえに座ざしていたが、長老ちょうろうたちもきて彼かれと共ともに座ざした。王おうは自分じぶんの所ところから人ひとをつかわしたが、エリシャはその使者ししゃがまだ着つかないうちに長老ちょうろうたちに言いった、「あなたがたは、この人ひとを殺ころす者ものがわたしの首くびを取とるために、人ひとをつかわすのを見みますか。その使者ししゃがきたならば、戸とを閉とじて、内うちに入いれてはなりません。彼かれのうしろに、その主君しゅくんの足音あしおとがするではありませんか」。6:33 彼かれがなお彼かれらと語かたっているうちに、王おうは彼かれのもとに下くだってきて言いった、「この災わざわいは主しゅから出でたのです。わたしはどうしてこの上うえ、主しゅを待またなければならないでしょうか」。 第7章 7:1 エリシャは言いった、「主しゅの言葉ことばを聞ききなさい。主しゅはこう仰おおせられる、『あすの今いまごろサマリヤの門もんで、麦粉むぎこ一セアを一シケルで売うり、大麦おおむぎ二セアを一シケルで売うるようになるであろう』」。7:2 時ときにひとりの副官ふくかんすなわち王おうがその人ひとの手てによりかかっていた者ものが神かみの人ひとに答こたえて言いった、「たとい主しゅが天てんに窓まどを開ひらかれても、そんな事ことがありえましょうか」。エリシャは言いった、「あなたは自分じぶんの目めをもってそれを見みるであろう。しかしそれを食たべることはなかろう」。 7:3 さて町まちの門もんの入口いりぐちに四人にんのらい病人びょうにんがいたが、彼かれらは互たがいに言いった、「われわれはどうしてここに座ざして死しを待またねばならないのか。7:4 われわれがもし町まちにはいろうといえば、町まちには食物しょくもつが尽つきているから、われわれはそこで死しぬであろう。しかしここに座ざしていても死しぬのだ。いっその事こと、われわれはスリヤびとの陣営じんえいへ逃にげて行いこう。もし彼かれらがわれわれを生いかしておいてくれるならば、助たすかるが、たといわれわれを殺ころしても死しぬばかりだ」。7:5 そこで彼かれらはスリヤびとの陣営じんえいへ行いこうと、たそがれに立たちあがったが、スリヤびとの陣営じんえいのほとりに行いって見みると、そこにはだれもいなかった。7:6 これは主しゅがスリヤびとの軍勢ぐんぜいに戦車せんしゃの音おと、馬うまの音おと、大軍たいぐんの音おとを聞きかせられたので、彼かれらは互たがいに「見みよ、イスラエルの王おうがわれわれを攻せめるために、ヘテびとの王おうたちおよびエジプトの王おうたちを雇やとってきて、われわれを襲おそうのだ」と言いって、7:7 たそがれに立たって逃にげ、その天幕てんまくと、馬うまと、ろばを捨すて、陣営じんえいをそのままにしておいて、命いのちを全まっとうしようと逃にげたからである。7:8 そこでらい病人びょうにんたちは陣営じんえいのほとりに行いき、一つの天幕てんまくにはいって食くい飲のみし、そこから金銀きんぎん、衣服いふくを持もち出だしてそれを隠かくし、また来きて、他たの天幕てんまくに入はいり、そこからも持もち出だしてそれを隠かくした。 7:9 そして彼かれらは互たがいに言いった、「われわれのしている事ことはよくない。きょうは良よいおとずれのある日ひであるのに、黙だまっていて、夜明よあけまで待まつならば、われわれは罰ばつをこうむるであろう。さあ、われわれは行いって王おうの家族かぞくに告つげよう」。7:10 そこで彼かれらは来きて、町まちの門もんを守まもる者ものを呼よんで言いった、「わたしたちがスリヤびとの陣営じんえいに行いって見みると、そこにはだれの姿すがたも見みえず、また人声ひとごえもなく、ただ、馬うまとろばがつないであり、天幕てんまくはそのままでした」。7:11 そこで門もんを守まもる者ものは呼よばわって、それを王おうの家族かぞくのうちに知しらせた。7:12 王おうは夜よるのうちに起おきて、家来けらいたちに言いった、「スリヤびとがわれわれに対たいして図はかっている事ことをあなたがたに告つげよう。彼かれらは、われわれの飢うえているのを知しって、陣営じんえいを出でて野のに隠かくれ、『イスラエルびとが町まちを出でたら、いけどりにして、町まちに押おし入いろう』と考かんがえているのだ」。7:13 家来けらいのひとりが答こたえて言いった、「人々ひとびとに、ここに残のこっている馬うまのうち五頭とうを連つれてこさせてください。ここに残のこっているこれらの人々ひとびとは、すでに滅ほろびうせたイスラエルの全ぜん群衆ぐんしゅうと同おなじ運命うんめいにあうのですから。わたしたちは人ひとをやってうかがわせましょう」。7:14 そこで彼かれらはふたりの騎兵きへいを選えらんだ。王おうはそれをつかわし、「行いって見みよ」と言いって、スリヤびとの軍勢ぐんぜいのあとをつけさせたので、7:15 彼かれらはそのあとを追おってヨルダンまで行いったが、道みちにはすべて、スリヤびとがあわてて逃にげる時ときに捨すてていった衣服いふくと武器ぶきが散ちらばっていた。その使者ししゃは帰かえってきて、これを王おうに告つげた。 7:16 そこで民たみが出でていって、スリヤびとの陣営じんえいをかすめたので、麦粉むぎこ一セアは一シケルで売うられ、大麦おおむぎ二セアは一シケルで売うられ、主しゅの言葉ことばのとおりになった。7:17 王おうは自分じぶんがその人ひとの手てによりかかっていた、あの副官ふくかんを立たてて門もんを管理かんりさせたが、民たみは門もんで彼かれを踏ふみつけたので、彼かれは死しんだ。すなわち、王おうが神かみの人ひとのところに下くだってきた時とき、神かみの人ひとが言いったとおりであった。7:18 これは神かみの人ひとが王おうにむかって、「あすの今いまごろ、サマリヤの門もんで大麦おおむぎ二セアを一シケルで売うり、麦粉むぎこ一セアを一シケルで売うるようになるであろう」と言いったときに、7:19 その副官ふくかんが神かみの人ひとに答こたえて、「たとい主しゅが天てんに窓まどを開ひらかれても、そんな事ことがありえようか」と言いったからである。そのとき神かみの人ひとは「あなたは自分じぶんの目めをもってそれを見みるであろう。しかしそれを食たべることはなかろう」と言いったが、7:20 これはそのとおり彼かれに臨のぞんだ。すなわち民たみが門もんで彼かれを踏ふみつけたので彼かれは死しんだ。 第8章 8:1 エリシャはかつて、その子こを生いきかえらせてやった女おんなに言いったことがある。「あなたは、ここを立たって、あなたの家族かぞくと共ともに行いき、寄留きりゅうしようと思おもう所ところに寄留きりゅうしなさい。主しゅがききんを呼よび下くだされたので、七年ねんの間あいだそれがこの地ちに臨のぞむから」。8:2 そこで女おんなは立たって神かみの人ひとの言葉ことばのようにし、その家族かぞくと共ともに行いってペリシテびとの地ちに七年ねん寄留きりゅうした。8:3 七年ねんたって後のち、女おんなはペリシテびとの地ちから帰かえってきて、自分じぶんの家いえと畑はたけのために王おうに訴うったえようと出でていった。8:4 時ときに王おうは神かみの人ひとのしもべゲハジにむかって「エリシャがしたもろもろの大おおきな事ことをわたしに話はなしてください」と言いって、彼かれと物語ものがたっていた。8:5 すなわちエリシャが死人しにんを生いきかえらせた事ことを、ゲハジが王おうと物語ものがたっていたとき、その子こを生いきかえらせてもらった女おんなが、自分じぶんの家いえと畑はたけのために王おうに訴うったえてきたので、ゲハジは言いった、「わが主しゅ、王おうよ、これがその女おんなです。またこれがその子こで、エリシャが生いきかえらせたのです」。8:6 王おうがその女おんなに尋たずねると、彼女かのじょは王おうに話はなしたので、王おうは彼女かのじょのためにひとりの役人やくにんに命めいじて言いった、「すべて彼女かのじょに属ぞくする物もの、ならびに彼女かのじょがこの地ちを去さった日ひから今いままでのその畑はたけの産物さんぶつをことごとく彼女かのじょに返かえしなさい」。 8:7 さてエリシャはダマスコに来きた。時ときにスリヤの王おうベネハダデは病気びょうきであったが、「神かみの人ひとがここに来きた」と告つげる者ものがあったので、8:8 王おうはハザエルに言いった、「贈おくり物ものを携たずさえて行いって神かみの人ひとを迎むかえ、彼かれによって主しゅに『わたしのこの病気びょうきはなおりましょうか』と言いって尋たずねなさい」。8:9 そこでハザエルは彼かれを迎むかえようと、ダマスコのもろもろの良よい物ものをらくだ四十頭とうに載のせ、贈おくり物ものとして携たずさえ行いき、エリシャの前まえに立たって言いった、「あなたの子こ、スリヤの王おうベネハダデがわたしをあなたにつかわして、『わたしのこの病気びょうきはなおりましょうか』と言いわせています」。8:10 エリシャは彼かれに言いった、「行いって彼かれに『あなたは必かならずなおります』と告つげなさい。ただし主しゅはわたしに、彼かれが必かならず死しぬことを示しめされました」。8:11 そして神かみの人ひとがひとみを定さだめて彼かれの恥はじるまでに見みつめ、やがて泣なき出だしたので、8:12 ハザエルは言いった、「わが主しゅよ、どうして泣なかれるのですか」。エリシャは答こたえた、「わたしはあなたがイスラエルの人々ひとびとにしようとする害悪がいあくを知しっているからです。すなわち、あなたは彼かれらの城しろに火ひをかけ、つるぎをもって若者わかものを殺ころし、幼おさな子ごを投なげうち、妊 にんしんの女おんなを引ひき裂さくでしょう」。8:13 ハザエルは言いった、「しもべは一匹ぴきの犬いぬにすぎないのに、どうしてそんな大おおきな事ことをすることができましょう」。エリシャは言いった、「主しゅがわたしに示しめされました。あなたはスリヤの王おうとなるでしょう」。8:14 彼かれがエリシャのもとを去さって、主君しゅくんのところへ行いくと、「エリシャはあなたになんと言いったか」と尋たずねられたので、「あなたが必かならずなおるでしょうと、彼かれはわたしに告つげました」と答こたえた。8:15 しかし翌日よくじつになってハザエルは布ぬのを取とって水みずに浸ひたし、それをもって王おうの顔かおをおおったので、王おうは死しんだ。ハザエルは彼かれに代かわって王おうとなった。 8:16 イスラエルの王おうアハブの子こヨラムの第だい五年ねんに、ユダの王おうヨシャパテの子こヨラムが位くらいについた。8:17 彼かれは王おうとなったとき三十二歳さいで、八年ねんの間あいだエルサレムで世よを治おさめた。8:18 彼かれはアハブの家いえがしたようにイスラエルの王おうたちの道みちに歩あゆんだ。アハブの娘むすめが彼かれの妻つまであったからである。彼かれは主しゅの目めの前まえに悪あくをおこなったが、8:19 主しゅはしもべダビデのためにユダを滅ほろぼすことを好このまれなかった。すなわち主しゅは彼かれとその子孫しそんに常つねにともしびを与あたえると、彼かれに約束やくそくされたからである。 8:20 ヨラムの世よにエドムがそむいてユダの支配しはいを脱だっし、みずから王おうを立たてたので、8:21 ヨラムはすべての戦車せんしゃを従したがえてザイルにわたって行いき、その戦車せんしゃの指揮しき官かんたちと共ともに、夜よのうちに立たちあがって、彼かれを包囲ほういしているエドムびとを撃うった。しかしヨラムの軍隊ぐんたいは天幕てんまくに逃にげ帰かえった。8:22 エドムはこのようにそむいてユダの支配しはいを脱だっし、今日こんにちに至いたっている。リブナもまた同時どうじにそむいた。8:23 ヨラムのその他たの事績じせきおよび彼かれがしたすべての事ことは、ユダの歴代志れきだいしの書しょにしるされているではないか。8:24 ヨラムはその先祖せんぞたちと共ともに ねむって、ダビデの町まちにその先祖せんぞたちと共ともに葬ほうむられ、その子こアハジヤが代かわって王おうとなった。 8:25 イスラエルの王おうアハブの子こヨラムの第だい十二年ねんにユダの王おうヨラムの子こアハジヤが位くらいについた。8:26 アハジヤは王おうとなったとき二十二歳さいで、エルサレムで一年ねん世よを治おさめた。その母ははは名なをアタリヤと言いって、イスラエルの王おうオムリの孫娘まごむすめであった。8:27 アハジヤはまたアハブの家いえの道みちに歩あゆみ、アハブの家いえがしたように主しゅの目めの前まえに悪あくをおこなった。彼かれはアハブの家いえの婿むこであったからである。 8:28 彼かれはアハブの子こヨラムと共ともに行いって、スリヤの王おうハザエルとラモテ・ギレアデで戦たたかったが、スリヤびとらはヨラムに傷きずを負おわせた。8:29 ヨラム王おうはそのスリヤの王おうハザエルと戦たたかうときにラマでスリヤびとに負おわされた傷きずをいやすため、エズレルに帰かえったが、ユダの王おうヨラムの子こアハジヤはアハブの子こヨラムが病やんでいたので、エズレルに下くだって彼かれをおとずれた。
5:1 スリヤ王おうの軍勢ぐんぜいの長ちょうナアマンはその主君しゅくんに重おもんじられた有力ゆうりょくな人ひとであった。主しゅがかつて彼かれを用もちいてスリヤに勝利しょうりを得えさせられたからである。彼かれは大だい勇士ゆうしであったが、らい病びょうをわずらっていた。
5:2 さきにスリヤびとが略奪りゃくだつ隊たいを組くんで出でてきたとき、イスラエルの地ちからひとりの少女しょうじょを捕とらえて行いった。彼女かのじょはナアマンの妻つまに仕つかえたが、
5:3 その女おんな主人しゅじんにむかって、「ああ、御ご主人しゅじんがサマリヤにいる預言者よげんしゃと共ともにおられたらよかったでしょうに。彼かれはそのらい病びょうをいやしたことでしょう」と言いったので、
5:4 ナアマンは行いって、その主君しゅくんに、「イスラエルの地ちからきた娘むすめがこういう事ことを言いいました」と告つげると、
5:5 スリヤ王おうは言いった、「それでは行いきなさい。わたしはイスラエルの王おうに手紙てがみを書かきましょう」。
そこで彼かれは銀ぎん十タラントと、金きん六千シケルと、晴はれ着ぎ十着ちゃくを携たずさえて行いった。
5:6 彼かれがイスラエルの王おうに持もって行いった手紙てがみには、「この手紙てがみがあなたにとどいたならば、わたしの家来けらいナアマンを、あなたにつかわしたことと御ご承知しょうちください。あなたに彼かれのらい病びょうをいやしていただくためです」とあった。
5:7 イスラエルの王おうはその手紙てがみを読よんだ時とき、衣ころもを裂さいて言いった、「わたしは殺ころしたり、生いかしたりすることのできる神かみであろうか。どうしてこの人ひとは、らい病人びょうにんをわたしにつかわして、それをいやせと言いうのか。あなたがたは、彼かれがわたしに争あらそいをしかけているのを知しって警戒けいかいするがよい」。
5:8 神かみの人ひとエリシャは、イスラエルの王おうがその衣ころもを裂さいたことを聞きき、王おうに人ひとをつかわして言いった、「どうしてあなたは衣ころもを裂さいたのですか。彼かれをわたしのもとにこさせなさい。そうすれば彼かれはイスラエルに預言者よげんしゃのあることを知しるようになるでしょう」。
5:9 そこでナアマンは馬うまと車くるまとを従したがえてきて、エリシャの家いえの入口いりぐちに立たった。
5:10 するとエリシャは彼かれに使者ししゃをつかわして言いった、「あなたはヨルダンへ行いって七たび身みを洗あらいなさい。そうすれば、あなたの肉にくはもとにかえって清きよくなるでしょう」。
5:11 しかしナアマンは怒いかって去さり、そして言いった、「わたしは、彼かれがきっとわたしのもとに出でてきて立たち、その神かみ、主しゅの名なを呼よんで、その箇所かしょの上うえに手てを動うごかして、らい病びょうをいやすのだろうと思おもった。
5:12 ダマスコの川かわアバナとパルパルはイスラエルのすべての川かわ水みずにまさるではないか。わたしはこれらの川かわに身みを洗あらって清きよまることができないのであろうか」。こうして彼かれは身みをめぐらし、怒いかって去さった。
5:13 その時とき、しもべたちは彼かれに近ちかよって言いった、「わが父ちちよ、預言者よげんしゃがあなたに、何なにか大おおきな事ことをせよと命めいじても、あなたはそれをなさらなかったでしょうか。まして彼かれはあなたに『身みを洗あらって清きよくなれ』と言いうだけではありませんか」。
5:14 そこでナアマンは下くだって行いって、神かみの人ひとの言葉ことばのように七たびヨルダンに身みを浸ひたすと、その肉にくがもとにかえって幼おさな子ごの肉にくのようになり、清きよくなった。
5:15 彼かれはすべての従者じゅうしゃを連つれて神かみの人ひとのもとに帰かえってきて、その前まえに立たって言いった、「わたしは今いま、イスラエルのほか、全ぜん地ちのどこにも神かみのおられないことを知しりました。それゆえ、どうぞ、しもべの贈おくり物ものを受うけてください」。
5:16 エリシャは言いった、「わたしの仕つかえる主しゅは生いきておられる。わたしは何なにも受うけません」。彼かれはしいて受うけさせようとしたが、それを拒こばんだ。
5:17 そこでナアマンは言いった、「もしお受うけにならないのであれば、どうぞ騾馬らばに二駄だの土つちをしもべにください。これから後のちしもべは、他たの神かみには燔祭はんさいも犠牲ぎせいもささげず、ただ主しゅにのみささげます。
5:18 どうぞ主しゅがこの事ことを、しもべにおゆるしくださるように。すなわち、わたしの主君しゅくんがリンモンの宮みやにはいって、そこで礼れい拝はいするとき、わたしの手てによりかかることがあり、またわたしもリンモンの宮みやで身みをかがめることがありましょう。わたしがリンモンの宮みやで身みをかがめる時とき、どうぞ主しゅがその事ことを、しもべにおゆるしくださるように」。
5:19 エリシャは彼かれに言いった、「安やすんじて行いきなさい」。
ナアマンがエリシャを離はなれて少すこし行いったとき、
5:20 神かみの人ひとエリシャのしもべゲハジは言いった、「主人しゅじんはこのスリヤびとナアマンをいたわって、彼かれが携たずさえてきた物ものを受うけなかった。主しゅは生いきておられる。わたしは彼かれのあとを追おいかけて、彼かれから少すこし、物ものを受うけよう」。
5:21 そしてゲハジはナアマンのあとを追おったが、ナアマンは自分じぶんのあとから彼かれが走はしってくるのを見みて、車くるまから降ふり、彼かれを迎むかえて、「変かわった事ことがあるのですか」と言いうと、
5:22 彼かれは言いった、「無事ぶじです。主人しゅじんがわたしをつかわして言いわせます、『ただいまエフライムの山地さんちから、預言者よげんしゃのともがらのふたりの若者わかものが、わたしのもとに来きましたので、どうぞ彼かれらに銀ぎん一タラントと晴はれ着ぎ二着ちゃくを与あたえてください』」。
5:23 ナアマンは、「どうぞ二タラントを受うけてください」と言いって彼かれにしい、銀ぎん二タラントを二つの袋ふくろに入いれ、晴はれ着ぎ二着ちゃくを添そえて、自分じぶんのふたりのしもべに渡わたしたので、彼かれらはそれを負おってゲハジの先さきに立たって進すすんだが、
5:24 彼かれは丘おかにきたとき、それを彼かれらの手てから受うけ取とって家いえのうちにおさめ、人々ひとびとを送おくりかえしたので、彼かれらは去さった。
5:25 彼かれがはいって主人しゅじんの前まえに立たつと、エリシャは彼かれに言いった、「ゲハジよ、どこへ行いってきたのか」。彼かれは言いった、「しもべはどこへも行いきません」。
5:26 エリシャは言いった、「あの人ひとが車くるまをはなれて、あなたを迎むかえたとき、わたしの心こころはあなたと一緒いっしょにそこにいたではないか。今いまは金きんを受うけ、着物きものを受うけ、オリブ畑はたけ、ぶどう畑はたけ、羊ひつじ、牛うし、しもべ、はしためを受うける時ときであろうか。
5:27 それゆえ、ナアマンのらい病びょうはあなたに着つき、ながくあなたの子孫しそんに及およぶであろう」。彼かれがエリシャの前まえを出でていくとき、らい病びょうが発はっして雪ゆきのように白しろくなっていた。
第6章 6:1 さて預言者よげんしゃのともがらはエリシャに言いった、「わたしたちがあなたと共ともに住すんでいる所ところは狭せまくなりましたので、6:2 わたしたちをヨルダンに行いかせ、そこからめいめい一本ぽんずつ材木ざいもくを取とってきて、わたしたちの住すむ場所ばしょを造つくらせてください」。エリシャは言いった、「行いきなさい」。6:3 時ときにそのひとりが、「どうぞあなたも、しもべらと一緒いっしょに行いってください」と言いったので、エリシャは「行いきましょう」と答こたえた。6:4 そしてエリシャは彼かれらと一緒いっしょに行いった。彼かれらはヨルダンへ行いって木きを切きり倒たおしたが、6:5 ひとりが材木ざいもくを切きり倒たおしているとき、おのの頭あたまが水みずの中なかに落おちたので、彼かれは叫さけんで言いった。「ああ、わが主しゅよ。これは借かりたものです」。6:6 神かみの人ひとは言いった、「それはどこに落おちたのか」。彼かれがその場所ばしょを知しらせると、エリシャは一本ぽんの枝えだを切きり落おとし、そこに投なげ入いれて、そのおのの頭あたまを浮うかばせ、6:7 「それを取とりあげよ」と言いったので、その人ひとは手てを伸のべてそれを取とった。 6:8 かつてスリヤの王おうがイスラエルと戦たたかっていたとき、家来けらいたちと評議ひょうぎして「しかじかの所ところにわたしの陣じんを張はろう」と言いうと、6:9 神かみの人ひとはイスラエルの王おうに「あなたは用心ようじんして、この所ところをとおってはなりません。スリヤびとがそこに下くだってきますから」と言いい送おくった。6:10 それでイスラエルの王おうは神かみの人ひとが自分じぶんに告つげてくれた所ところに人ひとをつかわし、警戒けいかいしたので、その所ところでみずからを防ふせぎえたことは一、二回かいにとどまらなかった。 6:11 スリヤの王おうはこの事ことのために心こころを悩なやまし、家来けらいたちを召めして言いった、「われわれのうち、だれがイスラエルの王おうと通つうじているのか、わたしに告つげる者ものはないか」。6:12 ひとりの家来けらいが言いった、「王おう、わが主しゅよ、だれも通つうじている者ものはいません。ただイスラエルの預言者よげんしゃエリシャが、あなたが寝室しんしつで語かたられる言葉ことばでもイスラエルの王おうに告つげるのです」。6:13 王おうは言いった、「彼かれがどこにいるか行いって捜さがしなさい。わたしは人ひとをやって彼かれを捕とらえよう」。時ときに「彼かれはドタンにいる」と王おうに告つげる者ものがあったので、6:14 王おうはそこに馬うまと戦車せんしゃおよび大軍たいぐんをつかわした。彼かれらは夜よるのうちに来きて、その町まちを囲かこんだ。 6:15 神かみの人ひとの召使めしつかいが朝あさ早はやく起おきて出でて見みると、軍勢ぐんぜいが馬うまと戦車せんしゃをもって町まちを囲かこんでいたので、その若者わかものはエリシャに言いった、「ああ、わが主しゅよ、わたしたちはどうしましょうか」。6:16 エリシャは言いった、「恐おそれることはない。われわれと共ともにいる者ものは彼かれらと共ともにいる者ものよりも多おおいのだから」。6:17 そしてエリシャが祈いのって「主しゅよ、どうぞ、彼かれの目めを開ひらいて見みさせてください」と言いうと、主しゅはその若者わかものの目めを開ひらかれたので、彼かれが見みると、火ひの馬うまと火ひの戦車せんしゃが山やまに満みちてエリシャのまわりにあった。6:18 スリヤびとがエリシャの所ところに下くだってきた時とき、エリシャは主しゅに祈いのって言いった、「どうぞ、この人々ひとびとの目めをくらましてください」。するとエリシャの言葉ことばのとおりに彼かれらの目めをくらまされた。6:19 そこでエリシャは彼かれらに「これはその道みちではない。これはその町まちでもない。わたしについてきなさい。わたしはあなたがたを、あなたがたの尋たずねる人ひとの所ところへ連つれて行いきましょう」と言いって、彼かれらをサマリヤへ連つれて行いった。 6:20 彼かれらがサマリヤにはいったとき、エリシャは言いった、「主しゅよ、この人々ひとびとの目めを開ひらいて見みさせてください」。主しゅは彼かれらの目めを開ひらかれたので、彼かれらが見みると、見みよ、彼かれらはサマリヤのうちに来きていた。6:21 イスラエルの王おうは彼かれらを見みて、エリシャに言いった、「わが父ちちよ、彼かれらを撃うち殺ころしましょうか。彼かれらを撃うち殺ころしましょうか」。6:22 エリシャは答こたえた、「撃うち殺ころしてはならない。あなたはつるぎと弓ゆみをもって、捕虜ほりょにした者ものどもを撃うち殺ころすでしょうか。パンと水みずを彼かれらの前まえに供そなえて食くい飲のみさせ、その主君しゅくんのもとへ行いかせなさい」。6:23 そこで王おうは彼かれらのために盛さかんなふるまいを設もうけた。彼かれらが食くい飲のみを終おわると彼かれらを去さらせたので、その主君しゅくんの所ところへ帰かえった。スリヤの略奪りゃくだつ隊たいは再ふたたびイスラエルの地ちにこなかった。 6:24 この後のちスリヤの王おうベネハダデはその全ぜん軍ぐんを集あつめ、上のぼってきてサマリヤを攻せめ囲かこんだので、6:25 サマリヤに激はげしいききんが起たった。すなわち彼かれらがこれを攻せめ囲かこんだので、ついに、ろばの頭あたま一つが銀ぎん八十シケルで売うられ、はとのふん一カブの四分ぶんの一が銀ぎん五シケルで売うられるようになった。6:26 イスラエルの王おうが城壁じょうへきの上うえをとおっていた時とき、ひとりの女おんなが彼かれに呼よばわって、「わが主しゅ、王おうよ、助たすけてください」と言いったので、6:27 彼かれは言いった、「もし主しゅがあなたを助たすけられないならば、何なにをもってわたしがあなたを助たすけることができよう。打うち場ばの物ものをもってか、酒さかぶねの物ものをもってか」。6:28 そして王おうは女おんなに尋たずねた、「何事なにごとなのですか」。彼女かのじょは答こたえた、「この女おんなはわたしにむかって『あなたの子こをください。わたしたちは、きょうそれを食たべ、あす、わたしの子こを食たべましょう』と言いいました。6:29 それでわたしたちは、まずわたしの子こを煮にて食たべましたが、次つぎの日ひわたしが彼女かのじょにむかって『あなたの子こをください。わたしたちはそれを食たべましょう』と言いいますと、彼女かのじょはその子こを隠かくしました」。6:30 王おうはその女おんなの言葉ことばを聞きいて、衣ころもを裂さき、――王おうは城壁じょうへきの上うえをとおっていたが、民たみが見みると、その身みに荒布あらぬのを着つけていた――6:31 そして王おうは言いった「きょう、シャパテの子こエリシャの首くびがその肩かたの上うえにすわっているならば、神かみがどんなにでもわたしを罰ばっしてくださるように」。 6:32 さてエリシャはその家いえに座ざしていたが、長老ちょうろうたちもきて彼かれと共ともに座ざした。王おうは自分じぶんの所ところから人ひとをつかわしたが、エリシャはその使者ししゃがまだ着つかないうちに長老ちょうろうたちに言いった、「あなたがたは、この人ひとを殺ころす者ものがわたしの首くびを取とるために、人ひとをつかわすのを見みますか。その使者ししゃがきたならば、戸とを閉とじて、内うちに入いれてはなりません。彼かれのうしろに、その主君しゅくんの足音あしおとがするではありませんか」。6:33 彼かれがなお彼かれらと語かたっているうちに、王おうは彼かれのもとに下くだってきて言いった、「この災わざわいは主しゅから出でたのです。わたしはどうしてこの上うえ、主しゅを待またなければならないでしょうか」。 第7章 7:1 エリシャは言いった、「主しゅの言葉ことばを聞ききなさい。主しゅはこう仰おおせられる、『あすの今いまごろサマリヤの門もんで、麦粉むぎこ一セアを一シケルで売うり、大麦おおむぎ二セアを一シケルで売うるようになるであろう』」。7:2 時ときにひとりの副官ふくかんすなわち王おうがその人ひとの手てによりかかっていた者ものが神かみの人ひとに答こたえて言いった、「たとい主しゅが天てんに窓まどを開ひらかれても、そんな事ことがありえましょうか」。エリシャは言いった、「あなたは自分じぶんの目めをもってそれを見みるであろう。しかしそれを食たべることはなかろう」。 7:3 さて町まちの門もんの入口いりぐちに四人にんのらい病人びょうにんがいたが、彼かれらは互たがいに言いった、「われわれはどうしてここに座ざして死しを待またねばならないのか。7:4 われわれがもし町まちにはいろうといえば、町まちには食物しょくもつが尽つきているから、われわれはそこで死しぬであろう。しかしここに座ざしていても死しぬのだ。いっその事こと、われわれはスリヤびとの陣営じんえいへ逃にげて行いこう。もし彼かれらがわれわれを生いかしておいてくれるならば、助たすかるが、たといわれわれを殺ころしても死しぬばかりだ」。7:5 そこで彼かれらはスリヤびとの陣営じんえいへ行いこうと、たそがれに立たちあがったが、スリヤびとの陣営じんえいのほとりに行いって見みると、そこにはだれもいなかった。7:6 これは主しゅがスリヤびとの軍勢ぐんぜいに戦車せんしゃの音おと、馬うまの音おと、大軍たいぐんの音おとを聞きかせられたので、彼かれらは互たがいに「見みよ、イスラエルの王おうがわれわれを攻せめるために、ヘテびとの王おうたちおよびエジプトの王おうたちを雇やとってきて、われわれを襲おそうのだ」と言いって、7:7 たそがれに立たって逃にげ、その天幕てんまくと、馬うまと、ろばを捨すて、陣営じんえいをそのままにしておいて、命いのちを全まっとうしようと逃にげたからである。7:8 そこでらい病人びょうにんたちは陣営じんえいのほとりに行いき、一つの天幕てんまくにはいって食くい飲のみし、そこから金銀きんぎん、衣服いふくを持もち出だしてそれを隠かくし、また来きて、他たの天幕てんまくに入はいり、そこからも持もち出だしてそれを隠かくした。 7:9 そして彼かれらは互たがいに言いった、「われわれのしている事ことはよくない。きょうは良よいおとずれのある日ひであるのに、黙だまっていて、夜明よあけまで待まつならば、われわれは罰ばつをこうむるであろう。さあ、われわれは行いって王おうの家族かぞくに告つげよう」。7:10 そこで彼かれらは来きて、町まちの門もんを守まもる者ものを呼よんで言いった、「わたしたちがスリヤびとの陣営じんえいに行いって見みると、そこにはだれの姿すがたも見みえず、また人声ひとごえもなく、ただ、馬うまとろばがつないであり、天幕てんまくはそのままでした」。7:11 そこで門もんを守まもる者ものは呼よばわって、それを王おうの家族かぞくのうちに知しらせた。7:12 王おうは夜よるのうちに起おきて、家来けらいたちに言いった、「スリヤびとがわれわれに対たいして図はかっている事ことをあなたがたに告つげよう。彼かれらは、われわれの飢うえているのを知しって、陣営じんえいを出でて野のに隠かくれ、『イスラエルびとが町まちを出でたら、いけどりにして、町まちに押おし入いろう』と考かんがえているのだ」。7:13 家来けらいのひとりが答こたえて言いった、「人々ひとびとに、ここに残のこっている馬うまのうち五頭とうを連つれてこさせてください。ここに残のこっているこれらの人々ひとびとは、すでに滅ほろびうせたイスラエルの全ぜん群衆ぐんしゅうと同おなじ運命うんめいにあうのですから。わたしたちは人ひとをやってうかがわせましょう」。7:14 そこで彼かれらはふたりの騎兵きへいを選えらんだ。王おうはそれをつかわし、「行いって見みよ」と言いって、スリヤびとの軍勢ぐんぜいのあとをつけさせたので、7:15 彼かれらはそのあとを追おってヨルダンまで行いったが、道みちにはすべて、スリヤびとがあわてて逃にげる時ときに捨すてていった衣服いふくと武器ぶきが散ちらばっていた。その使者ししゃは帰かえってきて、これを王おうに告つげた。 7:16 そこで民たみが出でていって、スリヤびとの陣営じんえいをかすめたので、麦粉むぎこ一セアは一シケルで売うられ、大麦おおむぎ二セアは一シケルで売うられ、主しゅの言葉ことばのとおりになった。7:17 王おうは自分じぶんがその人ひとの手てによりかかっていた、あの副官ふくかんを立たてて門もんを管理かんりさせたが、民たみは門もんで彼かれを踏ふみつけたので、彼かれは死しんだ。すなわち、王おうが神かみの人ひとのところに下くだってきた時とき、神かみの人ひとが言いったとおりであった。7:18 これは神かみの人ひとが王おうにむかって、「あすの今いまごろ、サマリヤの門もんで大麦おおむぎ二セアを一シケルで売うり、麦粉むぎこ一セアを一シケルで売うるようになるであろう」と言いったときに、7:19 その副官ふくかんが神かみの人ひとに答こたえて、「たとい主しゅが天てんに窓まどを開ひらかれても、そんな事ことがありえようか」と言いったからである。そのとき神かみの人ひとは「あなたは自分じぶんの目めをもってそれを見みるであろう。しかしそれを食たべることはなかろう」と言いったが、7:20 これはそのとおり彼かれに臨のぞんだ。すなわち民たみが門もんで彼かれを踏ふみつけたので彼かれは死しんだ。 第8章 8:1 エリシャはかつて、その子こを生いきかえらせてやった女おんなに言いったことがある。「あなたは、ここを立たって、あなたの家族かぞくと共ともに行いき、寄留きりゅうしようと思おもう所ところに寄留きりゅうしなさい。主しゅがききんを呼よび下くだされたので、七年ねんの間あいだそれがこの地ちに臨のぞむから」。8:2 そこで女おんなは立たって神かみの人ひとの言葉ことばのようにし、その家族かぞくと共ともに行いってペリシテびとの地ちに七年ねん寄留きりゅうした。8:3 七年ねんたって後のち、女おんなはペリシテびとの地ちから帰かえってきて、自分じぶんの家いえと畑はたけのために王おうに訴うったえようと出でていった。8:4 時ときに王おうは神かみの人ひとのしもべゲハジにむかって「エリシャがしたもろもろの大おおきな事ことをわたしに話はなしてください」と言いって、彼かれと物語ものがたっていた。8:5 すなわちエリシャが死人しにんを生いきかえらせた事ことを、ゲハジが王おうと物語ものがたっていたとき、その子こを生いきかえらせてもらった女おんなが、自分じぶんの家いえと畑はたけのために王おうに訴うったえてきたので、ゲハジは言いった、「わが主しゅ、王おうよ、これがその女おんなです。またこれがその子こで、エリシャが生いきかえらせたのです」。8:6 王おうがその女おんなに尋たずねると、彼女かのじょは王おうに話はなしたので、王おうは彼女かのじょのためにひとりの役人やくにんに命めいじて言いった、「すべて彼女かのじょに属ぞくする物もの、ならびに彼女かのじょがこの地ちを去さった日ひから今いままでのその畑はたけの産物さんぶつをことごとく彼女かのじょに返かえしなさい」。 8:7 さてエリシャはダマスコに来きた。時ときにスリヤの王おうベネハダデは病気びょうきであったが、「神かみの人ひとがここに来きた」と告つげる者ものがあったので、8:8 王おうはハザエルに言いった、「贈おくり物ものを携たずさえて行いって神かみの人ひとを迎むかえ、彼かれによって主しゅに『わたしのこの病気びょうきはなおりましょうか』と言いって尋たずねなさい」。8:9 そこでハザエルは彼かれを迎むかえようと、ダマスコのもろもろの良よい物ものをらくだ四十頭とうに載のせ、贈おくり物ものとして携たずさえ行いき、エリシャの前まえに立たって言いった、「あなたの子こ、スリヤの王おうベネハダデがわたしをあなたにつかわして、『わたしのこの病気びょうきはなおりましょうか』と言いわせています」。8:10 エリシャは彼かれに言いった、「行いって彼かれに『あなたは必かならずなおります』と告つげなさい。ただし主しゅはわたしに、彼かれが必かならず死しぬことを示しめされました」。8:11 そして神かみの人ひとがひとみを定さだめて彼かれの恥はじるまでに見みつめ、やがて泣なき出だしたので、8:12 ハザエルは言いった、「わが主しゅよ、どうして泣なかれるのですか」。エリシャは答こたえた、「わたしはあなたがイスラエルの人々ひとびとにしようとする害悪がいあくを知しっているからです。すなわち、あなたは彼かれらの城しろに火ひをかけ、つるぎをもって若者わかものを殺ころし、幼おさな子ごを投なげうち、妊 にんしんの女おんなを引ひき裂さくでしょう」。8:13 ハザエルは言いった、「しもべは一匹ぴきの犬いぬにすぎないのに、どうしてそんな大おおきな事ことをすることができましょう」。エリシャは言いった、「主しゅがわたしに示しめされました。あなたはスリヤの王おうとなるでしょう」。8:14 彼かれがエリシャのもとを去さって、主君しゅくんのところへ行いくと、「エリシャはあなたになんと言いったか」と尋たずねられたので、「あなたが必かならずなおるでしょうと、彼かれはわたしに告つげました」と答こたえた。8:15 しかし翌日よくじつになってハザエルは布ぬのを取とって水みずに浸ひたし、それをもって王おうの顔かおをおおったので、王おうは死しんだ。ハザエルは彼かれに代かわって王おうとなった。 8:16 イスラエルの王おうアハブの子こヨラムの第だい五年ねんに、ユダの王おうヨシャパテの子こヨラムが位くらいについた。8:17 彼かれは王おうとなったとき三十二歳さいで、八年ねんの間あいだエルサレムで世よを治おさめた。8:18 彼かれはアハブの家いえがしたようにイスラエルの王おうたちの道みちに歩あゆんだ。アハブの娘むすめが彼かれの妻つまであったからである。彼かれは主しゅの目めの前まえに悪あくをおこなったが、8:19 主しゅはしもべダビデのためにユダを滅ほろぼすことを好このまれなかった。すなわち主しゅは彼かれとその子孫しそんに常つねにともしびを与あたえると、彼かれに約束やくそくされたからである。 8:20 ヨラムの世よにエドムがそむいてユダの支配しはいを脱だっし、みずから王おうを立たてたので、8:21 ヨラムはすべての戦車せんしゃを従したがえてザイルにわたって行いき、その戦車せんしゃの指揮しき官かんたちと共ともに、夜よのうちに立たちあがって、彼かれを包囲ほういしているエドムびとを撃うった。しかしヨラムの軍隊ぐんたいは天幕てんまくに逃にげ帰かえった。8:22 エドムはこのようにそむいてユダの支配しはいを脱だっし、今日こんにちに至いたっている。リブナもまた同時どうじにそむいた。8:23 ヨラムのその他たの事績じせきおよび彼かれがしたすべての事ことは、ユダの歴代志れきだいしの書しょにしるされているではないか。8:24 ヨラムはその先祖せんぞたちと共ともに ねむって、ダビデの町まちにその先祖せんぞたちと共ともに葬ほうむられ、その子こアハジヤが代かわって王おうとなった。 8:25 イスラエルの王おうアハブの子こヨラムの第だい十二年ねんにユダの王おうヨラムの子こアハジヤが位くらいについた。8:26 アハジヤは王おうとなったとき二十二歳さいで、エルサレムで一年ねん世よを治おさめた。その母ははは名なをアタリヤと言いって、イスラエルの王おうオムリの孫娘まごむすめであった。8:27 アハジヤはまたアハブの家いえの道みちに歩あゆみ、アハブの家いえがしたように主しゅの目めの前まえに悪あくをおこなった。彼かれはアハブの家いえの婿むこであったからである。 8:28 彼かれはアハブの子こヨラムと共ともに行いって、スリヤの王おうハザエルとラモテ・ギレアデで戦たたかったが、スリヤびとらはヨラムに傷きずを負おわせた。8:29 ヨラム王おうはそのスリヤの王おうハザエルと戦たたかうときにラマでスリヤびとに負おわされた傷きずをいやすため、エズレルに帰かえったが、ユダの王おうヨラムの子こアハジヤはアハブの子こヨラムが病やんでいたので、エズレルに下くだって彼かれをおとずれた。
6:1 さて預言者よげんしゃのともがらはエリシャに言いった、「わたしたちがあなたと共ともに住すんでいる所ところは狭せまくなりましたので、
6:2 わたしたちをヨルダンに行いかせ、そこからめいめい一本ぽんずつ材木ざいもくを取とってきて、わたしたちの住すむ場所ばしょを造つくらせてください」。エリシャは言いった、「行いきなさい」。
6:3 時ときにそのひとりが、「どうぞあなたも、しもべらと一緒いっしょに行いってください」と言いったので、エリシャは「行いきましょう」と答こたえた。
6:4 そしてエリシャは彼かれらと一緒いっしょに行いった。彼かれらはヨルダンへ行いって木きを切きり倒たおしたが、
6:5 ひとりが材木ざいもくを切きり倒たおしているとき、おのの頭あたまが水みずの中なかに落おちたので、彼かれは叫さけんで言いった。「ああ、わが主しゅよ。これは借かりたものです」。
6:6 神かみの人ひとは言いった、「それはどこに落おちたのか」。彼かれがその場所ばしょを知しらせると、エリシャは一本ぽんの枝えだを切きり落おとし、そこに投なげ入いれて、そのおのの頭あたまを浮うかばせ、
6:7 「それを取とりあげよ」と言いったので、その人ひとは手てを伸のべてそれを取とった。
6:8 かつてスリヤの王おうがイスラエルと戦たたかっていたとき、家来けらいたちと評議ひょうぎして「しかじかの所ところにわたしの陣じんを張はろう」と言いうと、
6:9 神かみの人ひとはイスラエルの王おうに「あなたは用心ようじんして、この所ところをとおってはなりません。スリヤびとがそこに下くだってきますから」と言いい送おくった。
6:10 それでイスラエルの王おうは神かみの人ひとが自分じぶんに告つげてくれた所ところに人ひとをつかわし、警戒けいかいしたので、その所ところでみずからを防ふせぎえたことは一、二回かいにとどまらなかった。
6:11 スリヤの王おうはこの事ことのために心こころを悩なやまし、家来けらいたちを召めして言いった、「われわれのうち、だれがイスラエルの王おうと通つうじているのか、わたしに告つげる者ものはないか」。
6:12 ひとりの家来けらいが言いった、「王おう、わが主しゅよ、だれも通つうじている者ものはいません。ただイスラエルの預言者よげんしゃエリシャが、あなたが寝室しんしつで語かたられる言葉ことばでもイスラエルの王おうに告つげるのです」。
6:13 王おうは言いった、「彼かれがどこにいるか行いって捜さがしなさい。わたしは人ひとをやって彼かれを捕とらえよう」。時ときに「彼かれはドタンにいる」と王おうに告つげる者ものがあったので、
6:14 王おうはそこに馬うまと戦車せんしゃおよび大軍たいぐんをつかわした。彼かれらは夜よるのうちに来きて、その町まちを囲かこんだ。
6:15 神かみの人ひとの召使めしつかいが朝あさ早はやく起おきて出でて見みると、軍勢ぐんぜいが馬うまと戦車せんしゃをもって町まちを囲かこんでいたので、その若者わかものはエリシャに言いった、「ああ、わが主しゅよ、わたしたちはどうしましょうか」。
6:16 エリシャは言いった、「恐おそれることはない。われわれと共ともにいる者ものは彼かれらと共ともにいる者ものよりも多おおいのだから」。
6:17 そしてエリシャが祈いのって「主しゅよ、どうぞ、彼かれの目めを開ひらいて見みさせてください」と言いうと、主しゅはその若者わかものの目めを開ひらかれたので、彼かれが見みると、火ひの馬うまと火ひの戦車せんしゃが山やまに満みちてエリシャのまわりにあった。
6:18 スリヤびとがエリシャの所ところに下くだってきた時とき、エリシャは主しゅに祈いのって言いった、「どうぞ、この人々ひとびとの目めをくらましてください」。するとエリシャの言葉ことばのとおりに彼かれらの目めをくらまされた。
6:19 そこでエリシャは彼かれらに「これはその道みちではない。これはその町まちでもない。わたしについてきなさい。わたしはあなたがたを、あなたがたの尋たずねる人ひとの所ところへ連つれて行いきましょう」と言いって、彼かれらをサマリヤへ連つれて行いった。
6:20 彼かれらがサマリヤにはいったとき、エリシャは言いった、「主しゅよ、この人々ひとびとの目めを開ひらいて見みさせてください」。主しゅは彼かれらの目めを開ひらかれたので、彼かれらが見みると、見みよ、彼かれらはサマリヤのうちに来きていた。
6:21 イスラエルの王おうは彼かれらを見みて、エリシャに言いった、「わが父ちちよ、彼かれらを撃うち殺ころしましょうか。彼かれらを撃うち殺ころしましょうか」。
6:22 エリシャは答こたえた、「撃うち殺ころしてはならない。あなたはつるぎと弓ゆみをもって、捕虜ほりょにした者ものどもを撃うち殺ころすでしょうか。パンと水みずを彼かれらの前まえに供そなえて食くい飲のみさせ、その主君しゅくんのもとへ行いかせなさい」。
6:23 そこで王おうは彼かれらのために盛さかんなふるまいを設もうけた。彼かれらが食くい飲のみを終おわると彼かれらを去さらせたので、その主君しゅくんの所ところへ帰かえった。スリヤの略奪りゃくだつ隊たいは再ふたたびイスラエルの地ちにこなかった。
6:24 この後のちスリヤの王おうベネハダデはその全ぜん軍ぐんを集あつめ、上のぼってきてサマリヤを攻せめ囲かこんだので、
6:25 サマリヤに激はげしいききんが起たった。すなわち彼かれらがこれを攻せめ囲かこんだので、ついに、ろばの頭あたま一つが銀ぎん八十シケルで売うられ、はとのふん一カブの四分ぶんの一が銀ぎん五シケルで売うられるようになった。
6:26 イスラエルの王おうが城壁じょうへきの上うえをとおっていた時とき、ひとりの女おんなが彼かれに呼よばわって、「わが主しゅ、王おうよ、助たすけてください」と言いったので、
6:27 彼かれは言いった、「もし主しゅがあなたを助たすけられないならば、何なにをもってわたしがあなたを助たすけることができよう。打うち場ばの物ものをもってか、酒さかぶねの物ものをもってか」。
6:28 そして王おうは女おんなに尋たずねた、「何事なにごとなのですか」。彼女かのじょは答こたえた、「この女おんなはわたしにむかって『あなたの子こをください。わたしたちは、きょうそれを食たべ、あす、わたしの子こを食たべましょう』と言いいました。
6:29 それでわたしたちは、まずわたしの子こを煮にて食たべましたが、次つぎの日ひわたしが彼女かのじょにむかって『あなたの子こをください。わたしたちはそれを食たべましょう』と言いいますと、彼女かのじょはその子こを隠かくしました」。
6:30 王おうはその女おんなの言葉ことばを聞きいて、衣ころもを裂さき、――王おうは城壁じょうへきの上うえをとおっていたが、民たみが見みると、その身みに荒布あらぬのを着つけていた――
6:31 そして王おうは言いった「きょう、シャパテの子こエリシャの首くびがその肩かたの上うえにすわっているならば、神かみがどんなにでもわたしを罰ばっしてくださるように」。
6:32 さてエリシャはその家いえに座ざしていたが、長老ちょうろうたちもきて彼かれと共ともに座ざした。王おうは自分じぶんの所ところから人ひとをつかわしたが、エリシャはその使者ししゃがまだ着つかないうちに長老ちょうろうたちに言いった、「あなたがたは、この人ひとを殺ころす者ものがわたしの首くびを取とるために、人ひとをつかわすのを見みますか。その使者ししゃがきたならば、戸とを閉とじて、内うちに入いれてはなりません。彼かれのうしろに、その主君しゅくんの足音あしおとがするではありませんか」。
6:33 彼かれがなお彼かれらと語かたっているうちに、王おうは彼かれのもとに下くだってきて言いった、「この災わざわいは主しゅから出でたのです。わたしはどうしてこの上うえ、主しゅを待またなければならないでしょうか」。
第7章 7:1 エリシャは言いった、「主しゅの言葉ことばを聞ききなさい。主しゅはこう仰おおせられる、『あすの今いまごろサマリヤの門もんで、麦粉むぎこ一セアを一シケルで売うり、大麦おおむぎ二セアを一シケルで売うるようになるであろう』」。7:2 時ときにひとりの副官ふくかんすなわち王おうがその人ひとの手てによりかかっていた者ものが神かみの人ひとに答こたえて言いった、「たとい主しゅが天てんに窓まどを開ひらかれても、そんな事ことがありえましょうか」。エリシャは言いった、「あなたは自分じぶんの目めをもってそれを見みるであろう。しかしそれを食たべることはなかろう」。 7:3 さて町まちの門もんの入口いりぐちに四人にんのらい病人びょうにんがいたが、彼かれらは互たがいに言いった、「われわれはどうしてここに座ざして死しを待またねばならないのか。7:4 われわれがもし町まちにはいろうといえば、町まちには食物しょくもつが尽つきているから、われわれはそこで死しぬであろう。しかしここに座ざしていても死しぬのだ。いっその事こと、われわれはスリヤびとの陣営じんえいへ逃にげて行いこう。もし彼かれらがわれわれを生いかしておいてくれるならば、助たすかるが、たといわれわれを殺ころしても死しぬばかりだ」。7:5 そこで彼かれらはスリヤびとの陣営じんえいへ行いこうと、たそがれに立たちあがったが、スリヤびとの陣営じんえいのほとりに行いって見みると、そこにはだれもいなかった。7:6 これは主しゅがスリヤびとの軍勢ぐんぜいに戦車せんしゃの音おと、馬うまの音おと、大軍たいぐんの音おとを聞きかせられたので、彼かれらは互たがいに「見みよ、イスラエルの王おうがわれわれを攻せめるために、ヘテびとの王おうたちおよびエジプトの王おうたちを雇やとってきて、われわれを襲おそうのだ」と言いって、7:7 たそがれに立たって逃にげ、その天幕てんまくと、馬うまと、ろばを捨すて、陣営じんえいをそのままにしておいて、命いのちを全まっとうしようと逃にげたからである。7:8 そこでらい病人びょうにんたちは陣営じんえいのほとりに行いき、一つの天幕てんまくにはいって食くい飲のみし、そこから金銀きんぎん、衣服いふくを持もち出だしてそれを隠かくし、また来きて、他たの天幕てんまくに入はいり、そこからも持もち出だしてそれを隠かくした。 7:9 そして彼かれらは互たがいに言いった、「われわれのしている事ことはよくない。きょうは良よいおとずれのある日ひであるのに、黙だまっていて、夜明よあけまで待まつならば、われわれは罰ばつをこうむるであろう。さあ、われわれは行いって王おうの家族かぞくに告つげよう」。7:10 そこで彼かれらは来きて、町まちの門もんを守まもる者ものを呼よんで言いった、「わたしたちがスリヤびとの陣営じんえいに行いって見みると、そこにはだれの姿すがたも見みえず、また人声ひとごえもなく、ただ、馬うまとろばがつないであり、天幕てんまくはそのままでした」。7:11 そこで門もんを守まもる者ものは呼よばわって、それを王おうの家族かぞくのうちに知しらせた。7:12 王おうは夜よるのうちに起おきて、家来けらいたちに言いった、「スリヤびとがわれわれに対たいして図はかっている事ことをあなたがたに告つげよう。彼かれらは、われわれの飢うえているのを知しって、陣営じんえいを出でて野のに隠かくれ、『イスラエルびとが町まちを出でたら、いけどりにして、町まちに押おし入いろう』と考かんがえているのだ」。7:13 家来けらいのひとりが答こたえて言いった、「人々ひとびとに、ここに残のこっている馬うまのうち五頭とうを連つれてこさせてください。ここに残のこっているこれらの人々ひとびとは、すでに滅ほろびうせたイスラエルの全ぜん群衆ぐんしゅうと同おなじ運命うんめいにあうのですから。わたしたちは人ひとをやってうかがわせましょう」。7:14 そこで彼かれらはふたりの騎兵きへいを選えらんだ。王おうはそれをつかわし、「行いって見みよ」と言いって、スリヤびとの軍勢ぐんぜいのあとをつけさせたので、7:15 彼かれらはそのあとを追おってヨルダンまで行いったが、道みちにはすべて、スリヤびとがあわてて逃にげる時ときに捨すてていった衣服いふくと武器ぶきが散ちらばっていた。その使者ししゃは帰かえってきて、これを王おうに告つげた。 7:16 そこで民たみが出でていって、スリヤびとの陣営じんえいをかすめたので、麦粉むぎこ一セアは一シケルで売うられ、大麦おおむぎ二セアは一シケルで売うられ、主しゅの言葉ことばのとおりになった。7:17 王おうは自分じぶんがその人ひとの手てによりかかっていた、あの副官ふくかんを立たてて門もんを管理かんりさせたが、民たみは門もんで彼かれを踏ふみつけたので、彼かれは死しんだ。すなわち、王おうが神かみの人ひとのところに下くだってきた時とき、神かみの人ひとが言いったとおりであった。7:18 これは神かみの人ひとが王おうにむかって、「あすの今いまごろ、サマリヤの門もんで大麦おおむぎ二セアを一シケルで売うり、麦粉むぎこ一セアを一シケルで売うるようになるであろう」と言いったときに、7:19 その副官ふくかんが神かみの人ひとに答こたえて、「たとい主しゅが天てんに窓まどを開ひらかれても、そんな事ことがありえようか」と言いったからである。そのとき神かみの人ひとは「あなたは自分じぶんの目めをもってそれを見みるであろう。しかしそれを食たべることはなかろう」と言いったが、7:20 これはそのとおり彼かれに臨のぞんだ。すなわち民たみが門もんで彼かれを踏ふみつけたので彼かれは死しんだ。 第8章 8:1 エリシャはかつて、その子こを生いきかえらせてやった女おんなに言いったことがある。「あなたは、ここを立たって、あなたの家族かぞくと共ともに行いき、寄留きりゅうしようと思おもう所ところに寄留きりゅうしなさい。主しゅがききんを呼よび下くだされたので、七年ねんの間あいだそれがこの地ちに臨のぞむから」。8:2 そこで女おんなは立たって神かみの人ひとの言葉ことばのようにし、その家族かぞくと共ともに行いってペリシテびとの地ちに七年ねん寄留きりゅうした。8:3 七年ねんたって後のち、女おんなはペリシテびとの地ちから帰かえってきて、自分じぶんの家いえと畑はたけのために王おうに訴うったえようと出でていった。8:4 時ときに王おうは神かみの人ひとのしもべゲハジにむかって「エリシャがしたもろもろの大おおきな事ことをわたしに話はなしてください」と言いって、彼かれと物語ものがたっていた。8:5 すなわちエリシャが死人しにんを生いきかえらせた事ことを、ゲハジが王おうと物語ものがたっていたとき、その子こを生いきかえらせてもらった女おんなが、自分じぶんの家いえと畑はたけのために王おうに訴うったえてきたので、ゲハジは言いった、「わが主しゅ、王おうよ、これがその女おんなです。またこれがその子こで、エリシャが生いきかえらせたのです」。8:6 王おうがその女おんなに尋たずねると、彼女かのじょは王おうに話はなしたので、王おうは彼女かのじょのためにひとりの役人やくにんに命めいじて言いった、「すべて彼女かのじょに属ぞくする物もの、ならびに彼女かのじょがこの地ちを去さった日ひから今いままでのその畑はたけの産物さんぶつをことごとく彼女かのじょに返かえしなさい」。 8:7 さてエリシャはダマスコに来きた。時ときにスリヤの王おうベネハダデは病気びょうきであったが、「神かみの人ひとがここに来きた」と告つげる者ものがあったので、8:8 王おうはハザエルに言いった、「贈おくり物ものを携たずさえて行いって神かみの人ひとを迎むかえ、彼かれによって主しゅに『わたしのこの病気びょうきはなおりましょうか』と言いって尋たずねなさい」。8:9 そこでハザエルは彼かれを迎むかえようと、ダマスコのもろもろの良よい物ものをらくだ四十頭とうに載のせ、贈おくり物ものとして携たずさえ行いき、エリシャの前まえに立たって言いった、「あなたの子こ、スリヤの王おうベネハダデがわたしをあなたにつかわして、『わたしのこの病気びょうきはなおりましょうか』と言いわせています」。8:10 エリシャは彼かれに言いった、「行いって彼かれに『あなたは必かならずなおります』と告つげなさい。ただし主しゅはわたしに、彼かれが必かならず死しぬことを示しめされました」。8:11 そして神かみの人ひとがひとみを定さだめて彼かれの恥はじるまでに見みつめ、やがて泣なき出だしたので、8:12 ハザエルは言いった、「わが主しゅよ、どうして泣なかれるのですか」。エリシャは答こたえた、「わたしはあなたがイスラエルの人々ひとびとにしようとする害悪がいあくを知しっているからです。すなわち、あなたは彼かれらの城しろに火ひをかけ、つるぎをもって若者わかものを殺ころし、幼おさな子ごを投なげうち、妊 にんしんの女おんなを引ひき裂さくでしょう」。8:13 ハザエルは言いった、「しもべは一匹ぴきの犬いぬにすぎないのに、どうしてそんな大おおきな事ことをすることができましょう」。エリシャは言いった、「主しゅがわたしに示しめされました。あなたはスリヤの王おうとなるでしょう」。8:14 彼かれがエリシャのもとを去さって、主君しゅくんのところへ行いくと、「エリシャはあなたになんと言いったか」と尋たずねられたので、「あなたが必かならずなおるでしょうと、彼かれはわたしに告つげました」と答こたえた。8:15 しかし翌日よくじつになってハザエルは布ぬのを取とって水みずに浸ひたし、それをもって王おうの顔かおをおおったので、王おうは死しんだ。ハザエルは彼かれに代かわって王おうとなった。 8:16 イスラエルの王おうアハブの子こヨラムの第だい五年ねんに、ユダの王おうヨシャパテの子こヨラムが位くらいについた。8:17 彼かれは王おうとなったとき三十二歳さいで、八年ねんの間あいだエルサレムで世よを治おさめた。8:18 彼かれはアハブの家いえがしたようにイスラエルの王おうたちの道みちに歩あゆんだ。アハブの娘むすめが彼かれの妻つまであったからである。彼かれは主しゅの目めの前まえに悪あくをおこなったが、8:19 主しゅはしもべダビデのためにユダを滅ほろぼすことを好このまれなかった。すなわち主しゅは彼かれとその子孫しそんに常つねにともしびを与あたえると、彼かれに約束やくそくされたからである。 8:20 ヨラムの世よにエドムがそむいてユダの支配しはいを脱だっし、みずから王おうを立たてたので、8:21 ヨラムはすべての戦車せんしゃを従したがえてザイルにわたって行いき、その戦車せんしゃの指揮しき官かんたちと共ともに、夜よのうちに立たちあがって、彼かれを包囲ほういしているエドムびとを撃うった。しかしヨラムの軍隊ぐんたいは天幕てんまくに逃にげ帰かえった。8:22 エドムはこのようにそむいてユダの支配しはいを脱だっし、今日こんにちに至いたっている。リブナもまた同時どうじにそむいた。8:23 ヨラムのその他たの事績じせきおよび彼かれがしたすべての事ことは、ユダの歴代志れきだいしの書しょにしるされているではないか。8:24 ヨラムはその先祖せんぞたちと共ともに ねむって、ダビデの町まちにその先祖せんぞたちと共ともに葬ほうむられ、その子こアハジヤが代かわって王おうとなった。 8:25 イスラエルの王おうアハブの子こヨラムの第だい十二年ねんにユダの王おうヨラムの子こアハジヤが位くらいについた。8:26 アハジヤは王おうとなったとき二十二歳さいで、エルサレムで一年ねん世よを治おさめた。その母ははは名なをアタリヤと言いって、イスラエルの王おうオムリの孫娘まごむすめであった。8:27 アハジヤはまたアハブの家いえの道みちに歩あゆみ、アハブの家いえがしたように主しゅの目めの前まえに悪あくをおこなった。彼かれはアハブの家いえの婿むこであったからである。 8:28 彼かれはアハブの子こヨラムと共ともに行いって、スリヤの王おうハザエルとラモテ・ギレアデで戦たたかったが、スリヤびとらはヨラムに傷きずを負おわせた。8:29 ヨラム王おうはそのスリヤの王おうハザエルと戦たたかうときにラマでスリヤびとに負おわされた傷きずをいやすため、エズレルに帰かえったが、ユダの王おうヨラムの子こアハジヤはアハブの子こヨラムが病やんでいたので、エズレルに下くだって彼かれをおとずれた。
7:1 エリシャは言いった、「主しゅの言葉ことばを聞ききなさい。主しゅはこう仰おおせられる、『あすの今いまごろサマリヤの門もんで、麦粉むぎこ一セアを一シケルで売うり、大麦おおむぎ二セアを一シケルで売うるようになるであろう』」。
7:2 時ときにひとりの副官ふくかんすなわち王おうがその人ひとの手てによりかかっていた者ものが神かみの人ひとに答こたえて言いった、「たとい主しゅが天てんに窓まどを開ひらかれても、そんな事ことがありえましょうか」。エリシャは言いった、「あなたは自分じぶんの目めをもってそれを見みるであろう。しかしそれを食たべることはなかろう」。
7:3 さて町まちの門もんの入口いりぐちに四人にんのらい病人びょうにんがいたが、彼かれらは互たがいに言いった、「われわれはどうしてここに座ざして死しを待またねばならないのか。
7:4 われわれがもし町まちにはいろうといえば、町まちには食物しょくもつが尽つきているから、われわれはそこで死しぬであろう。しかしここに座ざしていても死しぬのだ。いっその事こと、われわれはスリヤびとの陣営じんえいへ逃にげて行いこう。もし彼かれらがわれわれを生いかしておいてくれるならば、助たすかるが、たといわれわれを殺ころしても死しぬばかりだ」。
7:5 そこで彼かれらはスリヤびとの陣営じんえいへ行いこうと、たそがれに立たちあがったが、スリヤびとの陣営じんえいのほとりに行いって見みると、そこにはだれもいなかった。
7:6 これは主しゅがスリヤびとの軍勢ぐんぜいに戦車せんしゃの音おと、馬うまの音おと、大軍たいぐんの音おとを聞きかせられたので、彼かれらは互たがいに「見みよ、イスラエルの王おうがわれわれを攻せめるために、ヘテびとの王おうたちおよびエジプトの王おうたちを雇やとってきて、われわれを襲おそうのだ」と言いって、
7:7 たそがれに立たって逃にげ、その天幕てんまくと、馬うまと、ろばを捨すて、陣営じんえいをそのままにしておいて、命いのちを全まっとうしようと逃にげたからである。
7:8 そこでらい病人びょうにんたちは陣営じんえいのほとりに行いき、一つの天幕てんまくにはいって食くい飲のみし、そこから金銀きんぎん、衣服いふくを持もち出だしてそれを隠かくし、また来きて、他たの天幕てんまくに入はいり、そこからも持もち出だしてそれを隠かくした。
7:9 そして彼かれらは互たがいに言いった、「われわれのしている事ことはよくない。きょうは良よいおとずれのある日ひであるのに、黙だまっていて、夜明よあけまで待まつならば、われわれは罰ばつをこうむるであろう。さあ、われわれは行いって王おうの家族かぞくに告つげよう」。
7:10 そこで彼かれらは来きて、町まちの門もんを守まもる者ものを呼よんで言いった、「わたしたちがスリヤびとの陣営じんえいに行いって見みると、そこにはだれの姿すがたも見みえず、また人声ひとごえもなく、ただ、馬うまとろばがつないであり、天幕てんまくはそのままでした」。
7:11 そこで門もんを守まもる者ものは呼よばわって、それを王おうの家族かぞくのうちに知しらせた。
7:12 王おうは夜よるのうちに起おきて、家来けらいたちに言いった、「スリヤびとがわれわれに対たいして図はかっている事ことをあなたがたに告つげよう。彼かれらは、われわれの飢うえているのを知しって、陣営じんえいを出でて野のに隠かくれ、『イスラエルびとが町まちを出でたら、いけどりにして、町まちに押おし入いろう』と考かんがえているのだ」。
7:13 家来けらいのひとりが答こたえて言いった、「人々ひとびとに、ここに残のこっている馬うまのうち五頭とうを連つれてこさせてください。ここに残のこっているこれらの人々ひとびとは、すでに滅ほろびうせたイスラエルの全ぜん群衆ぐんしゅうと同おなじ運命うんめいにあうのですから。わたしたちは人ひとをやってうかがわせましょう」。
7:14 そこで彼かれらはふたりの騎兵きへいを選えらんだ。王おうはそれをつかわし、「行いって見みよ」と言いって、スリヤびとの軍勢ぐんぜいのあとをつけさせたので、
7:15 彼かれらはそのあとを追おってヨルダンまで行いったが、道みちにはすべて、スリヤびとがあわてて逃にげる時ときに捨すてていった衣服いふくと武器ぶきが散ちらばっていた。その使者ししゃは帰かえってきて、これを王おうに告つげた。
7:16 そこで民たみが出でていって、スリヤびとの陣営じんえいをかすめたので、麦粉むぎこ一セアは一シケルで売うられ、大麦おおむぎ二セアは一シケルで売うられ、主しゅの言葉ことばのとおりになった。
7:17 王おうは自分じぶんがその人ひとの手てによりかかっていた、あの副官ふくかんを立たてて門もんを管理かんりさせたが、民たみは門もんで彼かれを踏ふみつけたので、彼かれは死しんだ。すなわち、王おうが神かみの人ひとのところに下くだってきた時とき、神かみの人ひとが言いったとおりであった。
7:18 これは神かみの人ひとが王おうにむかって、「あすの今いまごろ、サマリヤの門もんで大麦おおむぎ二セアを一シケルで売うり、麦粉むぎこ一セアを一シケルで売うるようになるであろう」と言いったときに、
7:19 その副官ふくかんが神かみの人ひとに答こたえて、「たとい主しゅが天てんに窓まどを開ひらかれても、そんな事ことがありえようか」と言いったからである。そのとき神かみの人ひとは「あなたは自分じぶんの目めをもってそれを見みるであろう。しかしそれを食たべることはなかろう」と言いったが、
7:20 これはそのとおり彼かれに臨のぞんだ。すなわち民たみが門もんで彼かれを踏ふみつけたので彼かれは死しんだ。
第8章 8:1 エリシャはかつて、その子こを生いきかえらせてやった女おんなに言いったことがある。「あなたは、ここを立たって、あなたの家族かぞくと共ともに行いき、寄留きりゅうしようと思おもう所ところに寄留きりゅうしなさい。主しゅがききんを呼よび下くだされたので、七年ねんの間あいだそれがこの地ちに臨のぞむから」。8:2 そこで女おんなは立たって神かみの人ひとの言葉ことばのようにし、その家族かぞくと共ともに行いってペリシテびとの地ちに七年ねん寄留きりゅうした。8:3 七年ねんたって後のち、女おんなはペリシテびとの地ちから帰かえってきて、自分じぶんの家いえと畑はたけのために王おうに訴うったえようと出でていった。8:4 時ときに王おうは神かみの人ひとのしもべゲハジにむかって「エリシャがしたもろもろの大おおきな事ことをわたしに話はなしてください」と言いって、彼かれと物語ものがたっていた。8:5 すなわちエリシャが死人しにんを生いきかえらせた事ことを、ゲハジが王おうと物語ものがたっていたとき、その子こを生いきかえらせてもらった女おんなが、自分じぶんの家いえと畑はたけのために王おうに訴うったえてきたので、ゲハジは言いった、「わが主しゅ、王おうよ、これがその女おんなです。またこれがその子こで、エリシャが生いきかえらせたのです」。8:6 王おうがその女おんなに尋たずねると、彼女かのじょは王おうに話はなしたので、王おうは彼女かのじょのためにひとりの役人やくにんに命めいじて言いった、「すべて彼女かのじょに属ぞくする物もの、ならびに彼女かのじょがこの地ちを去さった日ひから今いままでのその畑はたけの産物さんぶつをことごとく彼女かのじょに返かえしなさい」。 8:7 さてエリシャはダマスコに来きた。時ときにスリヤの王おうベネハダデは病気びょうきであったが、「神かみの人ひとがここに来きた」と告つげる者ものがあったので、8:8 王おうはハザエルに言いった、「贈おくり物ものを携たずさえて行いって神かみの人ひとを迎むかえ、彼かれによって主しゅに『わたしのこの病気びょうきはなおりましょうか』と言いって尋たずねなさい」。8:9 そこでハザエルは彼かれを迎むかえようと、ダマスコのもろもろの良よい物ものをらくだ四十頭とうに載のせ、贈おくり物ものとして携たずさえ行いき、エリシャの前まえに立たって言いった、「あなたの子こ、スリヤの王おうベネハダデがわたしをあなたにつかわして、『わたしのこの病気びょうきはなおりましょうか』と言いわせています」。8:10 エリシャは彼かれに言いった、「行いって彼かれに『あなたは必かならずなおります』と告つげなさい。ただし主しゅはわたしに、彼かれが必かならず死しぬことを示しめされました」。8:11 そして神かみの人ひとがひとみを定さだめて彼かれの恥はじるまでに見みつめ、やがて泣なき出だしたので、8:12 ハザエルは言いった、「わが主しゅよ、どうして泣なかれるのですか」。エリシャは答こたえた、「わたしはあなたがイスラエルの人々ひとびとにしようとする害悪がいあくを知しっているからです。すなわち、あなたは彼かれらの城しろに火ひをかけ、つるぎをもって若者わかものを殺ころし、幼おさな子ごを投なげうち、妊 にんしんの女おんなを引ひき裂さくでしょう」。8:13 ハザエルは言いった、「しもべは一匹ぴきの犬いぬにすぎないのに、どうしてそんな大おおきな事ことをすることができましょう」。エリシャは言いった、「主しゅがわたしに示しめされました。あなたはスリヤの王おうとなるでしょう」。8:14 彼かれがエリシャのもとを去さって、主君しゅくんのところへ行いくと、「エリシャはあなたになんと言いったか」と尋たずねられたので、「あなたが必かならずなおるでしょうと、彼かれはわたしに告つげました」と答こたえた。8:15 しかし翌日よくじつになってハザエルは布ぬのを取とって水みずに浸ひたし、それをもって王おうの顔かおをおおったので、王おうは死しんだ。ハザエルは彼かれに代かわって王おうとなった。 8:16 イスラエルの王おうアハブの子こヨラムの第だい五年ねんに、ユダの王おうヨシャパテの子こヨラムが位くらいについた。8:17 彼かれは王おうとなったとき三十二歳さいで、八年ねんの間あいだエルサレムで世よを治おさめた。8:18 彼かれはアハブの家いえがしたようにイスラエルの王おうたちの道みちに歩あゆんだ。アハブの娘むすめが彼かれの妻つまであったからである。彼かれは主しゅの目めの前まえに悪あくをおこなったが、8:19 主しゅはしもべダビデのためにユダを滅ほろぼすことを好このまれなかった。すなわち主しゅは彼かれとその子孫しそんに常つねにともしびを与あたえると、彼かれに約束やくそくされたからである。 8:20 ヨラムの世よにエドムがそむいてユダの支配しはいを脱だっし、みずから王おうを立たてたので、8:21 ヨラムはすべての戦車せんしゃを従したがえてザイルにわたって行いき、その戦車せんしゃの指揮しき官かんたちと共ともに、夜よのうちに立たちあがって、彼かれを包囲ほういしているエドムびとを撃うった。しかしヨラムの軍隊ぐんたいは天幕てんまくに逃にげ帰かえった。8:22 エドムはこのようにそむいてユダの支配しはいを脱だっし、今日こんにちに至いたっている。リブナもまた同時どうじにそむいた。8:23 ヨラムのその他たの事績じせきおよび彼かれがしたすべての事ことは、ユダの歴代志れきだいしの書しょにしるされているではないか。8:24 ヨラムはその先祖せんぞたちと共ともに ねむって、ダビデの町まちにその先祖せんぞたちと共ともに葬ほうむられ、その子こアハジヤが代かわって王おうとなった。 8:25 イスラエルの王おうアハブの子こヨラムの第だい十二年ねんにユダの王おうヨラムの子こアハジヤが位くらいについた。8:26 アハジヤは王おうとなったとき二十二歳さいで、エルサレムで一年ねん世よを治おさめた。その母ははは名なをアタリヤと言いって、イスラエルの王おうオムリの孫娘まごむすめであった。8:27 アハジヤはまたアハブの家いえの道みちに歩あゆみ、アハブの家いえがしたように主しゅの目めの前まえに悪あくをおこなった。彼かれはアハブの家いえの婿むこであったからである。 8:28 彼かれはアハブの子こヨラムと共ともに行いって、スリヤの王おうハザエルとラモテ・ギレアデで戦たたかったが、スリヤびとらはヨラムに傷きずを負おわせた。8:29 ヨラム王おうはそのスリヤの王おうハザエルと戦たたかうときにラマでスリヤびとに負おわされた傷きずをいやすため、エズレルに帰かえったが、ユダの王おうヨラムの子こアハジヤはアハブの子こヨラムが病やんでいたので、エズレルに下くだって彼かれをおとずれた。
8:1 エリシャはかつて、その子こを生いきかえらせてやった女おんなに言いったことがある。「あなたは、ここを立たって、あなたの家族かぞくと共ともに行いき、寄留きりゅうしようと思おもう所ところに寄留きりゅうしなさい。主しゅがききんを呼よび下くだされたので、七年ねんの間あいだそれがこの地ちに臨のぞむから」。
8:2 そこで女おんなは立たって神かみの人ひとの言葉ことばのようにし、その家族かぞくと共ともに行いってペリシテびとの地ちに七年ねん寄留きりゅうした。
8:3 七年ねんたって後のち、女おんなはペリシテびとの地ちから帰かえってきて、自分じぶんの家いえと畑はたけのために王おうに訴うったえようと出でていった。
8:4 時ときに王おうは神かみの人ひとのしもべゲハジにむかって「エリシャがしたもろもろの大おおきな事ことをわたしに話はなしてください」と言いって、彼かれと物語ものがたっていた。
8:5 すなわちエリシャが死人しにんを生いきかえらせた事ことを、ゲハジが王おうと物語ものがたっていたとき、その子こを生いきかえらせてもらった女おんなが、自分じぶんの家いえと畑はたけのために王おうに訴うったえてきたので、ゲハジは言いった、「わが主しゅ、王おうよ、これがその女おんなです。またこれがその子こで、エリシャが生いきかえらせたのです」。
8:6 王おうがその女おんなに尋たずねると、彼女かのじょは王おうに話はなしたので、王おうは彼女かのじょのためにひとりの役人やくにんに命めいじて言いった、「すべて彼女かのじょに属ぞくする物もの、ならびに彼女かのじょがこの地ちを去さった日ひから今いままでのその畑はたけの産物さんぶつをことごとく彼女かのじょに返かえしなさい」。
8:7 さてエリシャはダマスコに来きた。時ときにスリヤの王おうベネハダデは病気びょうきであったが、「神かみの人ひとがここに来きた」と告つげる者ものがあったので、
8:8 王おうはハザエルに言いった、「贈おくり物ものを携たずさえて行いって神かみの人ひとを迎むかえ、彼かれによって主しゅに『わたしのこの病気びょうきはなおりましょうか』と言いって尋たずねなさい」。
8:9 そこでハザエルは彼かれを迎むかえようと、ダマスコのもろもろの良よい物ものをらくだ四十頭とうに載のせ、贈おくり物ものとして携たずさえ行いき、エリシャの前まえに立たって言いった、「あなたの子こ、スリヤの王おうベネハダデがわたしをあなたにつかわして、『わたしのこの病気びょうきはなおりましょうか』と言いわせています」。
8:10 エリシャは彼かれに言いった、「行いって彼かれに『あなたは必かならずなおります』と告つげなさい。ただし主しゅはわたしに、彼かれが必かならず死しぬことを示しめされました」。
8:11 そして神かみの人ひとがひとみを定さだめて彼かれの恥はじるまでに見みつめ、やがて泣なき出だしたので、
8:12 ハザエルは言いった、「わが主しゅよ、どうして泣なかれるのですか」。エリシャは答こたえた、「わたしはあなたがイスラエルの人々ひとびとにしようとする害悪がいあくを知しっているからです。すなわち、あなたは彼かれらの城しろに火ひをかけ、つるぎをもって若者わかものを殺ころし、幼おさな子ごを投なげうち、妊 にんしんの女おんなを引ひき裂さくでしょう」。
8:13 ハザエルは言いった、「しもべは一匹ぴきの犬いぬにすぎないのに、どうしてそんな大おおきな事ことをすることができましょう」。エリシャは言いった、「主しゅがわたしに示しめされました。あなたはスリヤの王おうとなるでしょう」。
8:14 彼かれがエリシャのもとを去さって、主君しゅくんのところへ行いくと、「エリシャはあなたになんと言いったか」と尋たずねられたので、「あなたが必かならずなおるでしょうと、彼かれはわたしに告つげました」と答こたえた。
8:15 しかし翌日よくじつになってハザエルは布ぬのを取とって水みずに浸ひたし、それをもって王おうの顔かおをおおったので、王おうは死しんだ。ハザエルは彼かれに代かわって王おうとなった。
8:16 イスラエルの王おうアハブの子こヨラムの第だい五年ねんに、ユダの王おうヨシャパテの子こヨラムが位くらいについた。
8:17 彼かれは王おうとなったとき三十二歳さいで、八年ねんの間あいだエルサレムで世よを治おさめた。
8:18 彼かれはアハブの家いえがしたようにイスラエルの王おうたちの道みちに歩あゆんだ。アハブの娘むすめが彼かれの妻つまであったからである。彼かれは主しゅの目めの前まえに悪あくをおこなったが、
8:19 主しゅはしもべダビデのためにユダを滅ほろぼすことを好このまれなかった。すなわち主しゅは彼かれとその子孫しそんに常つねにともしびを与あたえると、彼かれに約束やくそくされたからである。
8:20 ヨラムの世よにエドムがそむいてユダの支配しはいを脱だっし、みずから王おうを立たてたので、
8:21 ヨラムはすべての戦車せんしゃを従したがえてザイルにわたって行いき、その戦車せんしゃの指揮しき官かんたちと共ともに、夜よのうちに立たちあがって、彼かれを包囲ほういしているエドムびとを撃うった。しかしヨラムの軍隊ぐんたいは天幕てんまくに逃にげ帰かえった。
8:22 エドムはこのようにそむいてユダの支配しはいを脱だっし、今日こんにちに至いたっている。リブナもまた同時どうじにそむいた。
8:23 ヨラムのその他たの事績じせきおよび彼かれがしたすべての事ことは、ユダの歴代志れきだいしの書しょにしるされているではないか。
8:24 ヨラムはその先祖せんぞたちと共ともに ねむって、ダビデの町まちにその先祖せんぞたちと共ともに葬ほうむられ、その子こアハジヤが代かわって王おうとなった。
8:25 イスラエルの王おうアハブの子こヨラムの第だい十二年ねんにユダの王おうヨラムの子こアハジヤが位くらいについた。
8:26 アハジヤは王おうとなったとき二十二歳さいで、エルサレムで一年ねん世よを治おさめた。その母ははは名なをアタリヤと言いって、イスラエルの王おうオムリの孫娘まごむすめであった。
8:27 アハジヤはまたアハブの家いえの道みちに歩あゆみ、アハブの家いえがしたように主しゅの目めの前まえに悪あくをおこなった。彼かれはアハブの家いえの婿むこであったからである。
8:28 彼かれはアハブの子こヨラムと共ともに行いって、スリヤの王おうハザエルとラモテ・ギレアデで戦たたかったが、スリヤびとらはヨラムに傷きずを負おわせた。
8:29 ヨラム王おうはそのスリヤの王おうハザエルと戦たたかうときにラマでスリヤびとに負おわされた傷きずをいやすため、エズレルに帰かえったが、ユダの王おうヨラムの子こアハジヤはアハブの子こヨラムが病やんでいたので、エズレルに下くだって彼かれをおとずれた。