口語訳聖書(振り仮名付き)

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サムエルじょう

第1章    1Sm-Audio 

1:1 エフライムの山地さんちのラマタイム・ゾピムに、エルカナというひとがあった。エフライムびとで、エロハムのであった。エロハムはエリウの、エリウはトフの、トフはツフのである。

1:2 エルカナには、ふたりのつまがあって、ひとりのはハンナといい、ひとりのはペニンナといった。ペニンナにはどもがあったが、ハンナにはどもがなかった。

1:3 このひととしごとに、そのまちからシロにのぼっていって、万軍ばんぐんしゅはいし、しゅ犠牲ぎせいをささげるのをつねとした。シロには、エリのふたりの、ホフニとピネハスとがいて、しゅつかえる祭司さいしであった。

1:4 エルカナは、犠牲ぎせいをささげるつまペニンナとそのむすこむすめにはみな、そのまえあたえた。

1:5 エルカナはハンナをあいしていたが、彼女かのじょには、ただ一つのまえあたえるだけであった。しゅがそのたいざされたからである。

1:6 また彼女かのじょにくんでいるつまは、ひどく彼女かのじょなやまして、しゅがそのたいざされたことをうらませようとした。

1:7 こうしてとしれ、としけたが、ハンナがしゅみやのぼるごとに、ペニンナは彼女かのじょなやましたので、ハンナはいてべることもしなかった。

1:8 おっとエルカナは彼女かのじょった、「ハンナよ、なぜくのか。なぜべないのか。どうしてこころかなしむのか。わたしはあなたにとって十にんどもよりもまさっているではないか」。

1:9 シロでかれらがいしたのち、ハンナはちあがった。そのとき祭司さいしエリはしゅ神殿しんでんはしらのかたわらのにすわっていた。

1:10 ハンナはこころふかかなしみ、しゅいのって、はげしくいた。

1:11 そしてちかいをててった、「万軍ばんぐんしゅよ、まことに、はしためのなやみをかえりみ、わたしをおぼえ、はしためをわすれずに、はしためにおとこたまわりますなら、わたしはその一生いっしょうのあいだしゅにささげ、かみそりをそのあたまにあてません」。

1:12 彼女かのじょしゅまえながいのっていたので、エリは彼女かのじょくちをとめた。

1:13 ハンナはこころのうちでものっていたので、くちびるがうごくだけで、こえきこえなかった。それゆえエリは、っているのだとおもって、

1:14 彼女かのじょった、「いつまでっているのか。いをさましなさい」。

1:15 しかしハンナはこたえた、「いいえ、わがしゅよ。わたしは不幸ふこうおんなです。ぶどうしゅさけんだのではありません。ただしゅまえこころそそしていたのです。

1:16 はしためを、わるおんなおもわないでください。つもうれいとなやみのゆえに、わたしはいままでものっていたのです」。

1:17 そこでエリはこたえた、「安心あんしんしてきなさい。どうかイスラエルのかみがあなたのもとめるねがいをきとどけられるように」。

1:18 彼女かのじょった、「どうぞ、はしためにも、あなたのまえめぐみをさせてください」。こうして、そのおんなって食事しょくじし、そのかおは、もはやかなしげではなくなった。

1:19 かれらはあさはやきて、しゅまえ礼拝れいはいし、そして、ラマにあるいえかえってった。エルカナはつまハンナをり、しゅ彼女かのじょかえりみられたので、

1:20 彼女かのじょはみごもり、そのときめぐってきて、おとこみ、「わたしがこのしゅもとめたからだ」といって、そのをサムエルとづけた。

1:21 エルカナそのひととその家族かぞくとはみなのぼっていって、としごとの犠牲ぎせいと、ちかいのそなものとをささげた。

1:22 しかしハンナはのぼってかず、おっとった、「わたしはこの乳離ちばなれしてから、しゅまえれていって、いつまでも、そこにおらせましょう」。

1:23 おっとエルカナは彼女かのじょった、「あなたがいとおもうようにして、この乳離ちばなれするまでちなさい。ただどうかしゅがそのわれたことを実現じつげんしてくださるように」。こうしてそのおんなはとどまって、そのちちをのませ、乳離ちばなれするのをっていたが、

1:24 乳離ちばなれしたとき、三さい雄牛おうしとう麦粉むぎこ一エパ、ぶどうしゅのはいったかわぶくろ一つをり、そのれて、シロにあるしゅみやった。そのはなおおさなかった。

1:25 そしてかれらはそのうしころし、子供こどもをエリのもとへれてった。

1:26 ハンナはった、「わがきみよ、あなたはきておられます。わたしは、かつてここにって、あなたのまえで、しゅいのったおんなです。

1:27 このあたえてくださいと、わたしはいのりましたが、しゅはわたしのもとめたねがいをきとどけられました。

1:28 それゆえ、わたしもこのしゅにささげます。この一生いっしょうのあいだしゅにささげたものです」。

そしてかれらはそこでしゅ礼拝れいはいした。 

第2章 

2:1 ハンナはいのってった、

「わたしのこころしゅによってよろこび、わたしのちからしゅによってつよめられた、わたしのくちてきをあざわらう、あなたのすくいによってわたしはたのしむからである。

2:2 しゅのようにせいなるものはない、あなたのほかには、だれもない、われわれのかみのようないわはない。

2:3 あなたがたはかさねて高慢こうまんかたってはならない、たかぶりの言葉ことばくちにすることをやめよ。しゅはすべてをかみであって、もろもろのおこないはしゅによってはかられる。

2:4 勇士ゆうしゆみれ、よわものちからびる。

2:5 りたものしょくのためにやとわれ、えたものは、もはやえることがない。うまずめは七にんみ、おおくのをもつおんな孤独こどくとなる。

2:6 しゅころし、またかし、陰府よみにくだし、またうえげられる。

2:7 しゅまずしくし、またませ、ひくくし、またたかくされる。

2:8 まずしいものを、ちりのなかからちあがらせ、とぼしいものを、あくたのなかからげて、王侯おうこうともにすわらせ、栄誉えいよくらいがせられる。はしらしゅのものであって、そのはしらうえに、世界せかいをすえられたからである。

2:9 しゅはその聖徒せいとたちのあしまもられる、しかしわるいものどもは暗黒あんこくのうちにほろびる。ひとちからをもってつことができないからである。

2:10 しゅあらそうものは粉々こなごなくだかれるであろう、しゅかれらにむかっててんからかみなりをとどろかし、のはてまでもさばき、おうちからあたえ、あぶらそそがれたものちからつよくされるであろう」。

2:11 エルカナはラマにあるいえかえったが、おさ祭司さいしエリのまえにいてしゅつかえた。

2:12 さて、エリのらは、よこしまな人々ひとびとで、しゅおそれなかった。

2:13 たみのささげものについての祭司さいしのならわしはこうである。ひと犠牲ぎせいをささげるとき、そのにくあいだに、祭司さいしのしもべは、みつまたのにくしをってきて、

2:14 それをかま、またはなべ、またはおおがま、またははちきいれ、にくしのげるものは祭司さいしがみな自分じぶんのものとした。かれらはシロで、そこにるすべてのイスラエルのひとに、このようにした。

2:15 人々ひとびと脂肪しぼうまえにもまた、祭司さいしのしもべがきて、犠牲ぎせいをささげるひとうのであった、「祭司さいしのためににくあたえよ。祭司さいしはあなたからにくけない。なまにくがよい」。

2:16 そのひとが、「まず脂肪しぼうかせましょう。そののちほしいだけってください」とうと、しもべは、「いや、いまもらいたい。くれないなら、わたしはちからづくで、それをろう」とう。

2:17 このように、その若者わかものたちのつみは、しゅまえ非常ひじょうおおきかった。この人々ひとびとしゅそなものかろんじたからである。

2:18 サムエルはまだおさなく、亜麻あまぬののエポデをけて、しゅまえつかえていた。

2:19 ははかれのためにちいさい上着うわぎつくり、としごとに、おっとともにそのとし犠牲ぎせいをささげるためにのぼとき、それをってきた。

2:20 エリはいつもエルカナとそのつま祝福しゅくふくしてった、「このおんなしゅにささげたもののかわりに、しゅがこのおんなによってあなたにあたえられるように」。そしてかれらはそのいえかえるのをつねとした。

2:21 こうしてしゅがハンナをかえりみられたので、ハンナはみごもって、三にんおとことふたりのおんなんだ。わらべサムエルはしゅまえそだった。

2:22 エリはひじょうにとしをとった。そしてそのらがイスラエルの人々ひとびとにしたいろいろのことをき、また会見かいけん幕屋まくや入口いりぐちつとめていたおんなたちとたことをいて、

2:23 かれらにった、「なにゆえ、そのようなことをするのか。わたしはこのすべてのたみから、あなたがたのわるいおこないのことをく。

2:24 わがらよ、それはいけない。わたしのく、しゅたみいふらしている風説ふうせつくない。

2:25 もしひとひとたいしてつみおかすならば、かみ仲裁ちゅうさいされるであろう。しかしひとしゅたいしてつみおかすならば、だれが、そのとりなしをすることができようか」。しかしかれらはちちうことにみみかたむけようともしなかった。しゅかれらをころそうとされたからである。

2:26 わらべサムエルはそだっていき、しゅにも、人々ひとびとにも、ますますあいせられた。

2:27 このとき、ひとりのかみひとが、エリのもとにきてった、「しゅはかくおおせられる、『あなたの先祖せんぞいえがエジプトでパロのいえ奴隷どれいであったとき、わたしはその先祖せんぞいえみずからをあらわした。

2:28 そしてイスラエルのすべての部族ぶぞくのうちからそれをえらして、わたしの祭司さいしとし、わたしの祭壇さいだんのぼって、こうをたかせ、わたしのまえでエポデをけさせ、また、イスラエルの人々ひとびと火祭かさいをことごとくあなたの先祖せんぞいえあたえた。

2:29 それにどうしてあなたがたは、わたしがめいじた犠牲ぎせいそなものをむさぼりのをもってるのか。またなにゆえ、わたしよりも自分じぶんらをたっとび、わたしのたみイスラエルのささげるもろもろのそなものの、もっと部分ぶぶんをもって自分じぶんやすのか』。

2:30 それゆえイスラエルのかみしゅおおせられる、『わたしはかつて、「あなたのいえとあなたのちちいえとは、永久えいきゅうにわたしのまえあゆむであろう」とった』。しかしいましゅおおせられる、『けっしてそうはしない。わたしをたっとものを、わたしはたっとび、わたしをいやしめるものは、かろんぜられるであろう。

2:31 よ、るであろう。その、わたしはあなたのちからと、あなたのちちいえちからち、あなたのいえ年老としおいたものをなくするであろう。

2:32 そのとき、あなたはわざわいのうちにあって、イスラエルにあたえられるもろもろの繁栄はんえいを、ねたみるであろう。あなたのいえには永久えいきゅう年老としおいたものがいなくなるであろう。

2:33 しかしあなたの一族いちぞくのひとりを、わたしの祭壇さいだんからたないであろう。かれのこされてそのきはらし、こころいためるであろう。またあなたのいえうまるものは、みなつるぎにぬであろう。

2:34 あなたのふたりのホフニとピネハスのおこることが、あなたのためにそのしるしとなるであろう。すなわちそのふたりはともおなぬであろう。

2:35 わたしは自分じぶんのために、ひとりの忠実ちゅうじつ祭司さいしおこす。そのひとはわたしのこころおもいとにしたがっておこなうであろう。わたしはそのいえ確立かくりつしよう。そのひとはわたしがあぶらそそいだものまえにつねにあゆむであろう。

2:36 そしてあなたのいえのこっている人々ひとびとはみなきて、かれに一まいぎんと一のパンをもとめ、「どうぞ、わたしを祭司さいししょくの一つににんじ、一口ひとくちのパンでもべることができるようにしてください」とうであろう』」。 

第3章 

3:1 わらべサムエルは、エリのまえで、しゅつかえていた。そのころ、しゅ言葉ことばはまれで、黙示もくしつねではなかった。

3:2 さてエリは、しだいにがかすんで、ることができなくなり、そのとき自分じぶんのへやでていた。

3:3 かみのともしびはまだえず、サムエルがかみはこのあるしゅ神殿しんでんていたとき

3:4 しゅは「サムエルよ、サムエルよ」とばれた。かれは「はい、ここにおります」とって、

3:5 エリのところはしっていってった、「あなたがおおよびになりました。わたしは、ここにおります」。しかしエリはった、「わたしはばない。かえってなさい」。かれってた。

3:6 しゅはまたかさねて「サムエルよ、サムエルよ」とばれた。サムエルはきてエリのもとへってった、「あなたがおおよびになりました。わたしは、ここにおります」。エリはった、「よ、わたしはばない。もう一なさい」。

3:7 サムエルはまだしゅらず、しゅ言葉ことばがまだかれあらわされなかった。

3:8 しゅはまた三度目どめにサムエルをばれたので、サムエルはきてエリのもとへってった、「あなたがおおよびになりました。わたしは、ここにおります」。そのとき、エリはしゅがわらべをばれたのであることをさとった。

3:9 そしてエリはサムエルにった、「ってなさい。もしあなたをばれたら、『しもべはきます。しゅよ、おはなしください』といなさい」。サムエルはって自分じぶんところた。

3:10 しゅはきてち、まえのように、「サムエルよ、サムエルよ」とばれたので、サムエルはった、「しもべはきます。おはなしください」。

3:11 そのときしゅはサムエルにわれた、「よ、わたしはイスラエルのうちに一つのことをする。それをものはみな、みみが二つともるであろう。

3:12 そのには、わたしが、かつてエリのいえについてはなしたことを、はじめからおわりまでことごとく、エリにおこなうであろう。

3:13 わたしはエリに、かれっている悪事あくじのゆえに、そのいえ永久えいきゅうばっすることをげる。そのらがかみをけがしているのに、かれがそれをとめなかったからである。

3:14 それゆえ、わたしはエリのいえちかう。エリのいえあくは、犠牲ぎせいそなものをもってしても、永久えいきゅうにあがなわれないであろう」。

3:15 サムエルはあさまでて、しゅみやをあけたが、サムエルはそのまぼろしのことをエリにかたるのをおそれた。

3:16 しかしエリはサムエルをんでった、「わがサムエルよ」。サムエルはった、「はい、ここにおります」。

3:17 エリはった、「何事なにごとをおげになったのか。かくさずはなしてください。もしおげになったことを一つでもかくして、わたしにわないならば、どうぞかみがあなたをばっし、さらにおもばっせられるように」。

3:18 そこでサムエルは、そのことをことごとくはなして、なにかれかくさなかった。エリはった、「それはしゅである。どうぞしゅが、いとおもうことをおこなわれるように」。

3:19 サムエルはそだっていった。しゅかれともにおられて、その言葉ことばを一つもちないようにされたので、

3:20 ダンからベエルシバまで、イスラエルのすべてのひとは、サムエルがしゅ預言者よげんしゃさだめられたことをった。

3:21 しゅはふたたびシロであらわれられた。すなわちしゅはシロで、しゅ言葉ことばによって、サムエルにみずからをあらわされた。こうしてサムエルの言葉ことばは、あまねくイスラエルの人々ひとびとおよんだ。 

第4章 

4:1 イスラエルびとはてペリシテびととたたかおうとして、エベネゼルのほとりにじんをしき、ペリシテびとはアペクにじんをしいた。

4:2 ペリシテびとはイスラエルびとにむかってじんそなえをしたが、たたかうにおよんで、イスラエルびとはペリシテびとのまえやぶれ、ペリシテびとは戦場せんじょうにおいて、おおよそ四千にんころした。

4:3 たみ陣営じんえい退しりぞいたとき、イスラエルの長老ちょうろうたちはった、「なにゆえ、しゅはきょう、ペリシテびとのまえにわれわれをやぶられたのか。シロへってしゅ契約けいやくはこをここへたずさえてくることにしよう。そしてしゅをわれわれのうちにむかえて、てきからすくっていただこう」。

4:4 そこでたみひとをシロにつかわし、ケルビムのうえしておられる万軍ばんぐんしゅ契約けいやくはこを、そこからたずさえてこさせた。そのときエリのふたりの、ホフニとピネハスはかみ契約けいやくはこともに、そのところにいた。

4:5 しゅ契約けいやくはこ陣営じんえいについたとき、イスラエルびとはみな大声おおごえさけんだので、ひびいた。

4:6 ペリシテびとは、そのさけごえいてった、「ヘブルびとの陣営じんえいの、このおおきなさけごえ何事なにごとか」。そしてしゅはこが、陣営じんえいいたことをったとき

4:7 ペリシテびとはおそれてった、「神々かみがみ陣営じんえいにきたのだ」。かれらはまたった、「ああ、われわれはわざわいである。このようなことはいままでなかった。

4:8 ああ、われわれはわざわいである。だれがわれわれをこれらのつよ神々かみがみからすくすことができようか。これらの神々かみがみは、もろもろのわざわいをもってエジプトびとを荒野あらのったのだ。

4:9 ペリシテびとよ、勇気ゆうきしておとこらしくせよ。ヘブルびとがあなたがたにつかえたように、あなたがたがかれらにつかえることのないために、おとこらしくたたかえ」。

4:10 こうしてペリシテびとがたたかったので、イスラエルびとはやぶれて、おのおのそのいえげてかえった。戦死者せんししゃはひじょうにおおく、イスラエルの歩兵ほへいたおれたものは三万であった。

4:11 またかみはこうばわれ、エリのふたりの、ホフニとピネハスはころされた。

4:12 そのひとりのベニヤミンびとが、衣服いふくき、あたまつちをかぶって、戦場せんじょうからはしってシロにきた。

4:13 かれいたとき、エリはみちのかたわらにある自分じぶんにすわってちかまえていた。そのこころかみはこことづかっていたからである。そのひとまちにはいって、情報じょうほうをつたえたので、まちはこぞってさけんだ。

4:14 エリはそのさけごえいてった、「このさわこえなにか」。そのひといそいでエリのところへきてエリにげた。

4:15 そのときエリは九十八さいで、そのかたまってることができなかった。

4:16 そのひとはエリにった、「わたしは戦場せんじょうからきたものです。きょう戦場せんじょうからのがれたのです」。エリはった、「わがよ、様子ようすはどうであったか」。

4:17 しらせをもたらしたそのひとこたえてった、「イスラエルびとは、ペリシテびとのまえからげ、たみのうちにはまたおおくの戦死者せんししゃがあり、あなたのふたりの、ホフニとピネハスもに、かみはこうばわれました」。

4:18 かれかみはこのことをったとき、エリはそのから、あおむけにもんのかたわらにち、くびってんだ。いておもかったからである。かれのイスラエルをさばいたのは四十ねんであった。

4:19 かれよめ、ピネハスのつまはみごもって出産しゅっさんときちかづいていたが、かみはこうばわれたこと、しゅうととおっとんだというしらせをいたとき、陣痛じんつうおこをかがめてんだ。

4:20 彼女かのじょにかかっているとき世話せわをしていたおんな彼女かのじょった、「おそれることはありません。おとこうまれました」。しかし彼女かのじょこたえもせず、またかえりみもしなかった。

4:21 ただ彼女かのじょは「栄光えいこうはイスラエルをった」とって、そのをイカボデとづけた。これはかみはこうばわれたこと、また彼女かのじょのしゅうととおっとのことによるのである。

4:22 彼女かのじょはまた、「栄光えいこうはイスラエルをった。かみはこうばわれたからです」とった。 

第5章 

5:1 ペリシテびとはかみはこをぶんどって、エベネゼルからアシドドにはこんできた。

5:2 そしてペリシテびとはそのかみはこってダゴンのみやはこびこみ、ダゴンのかたわらにいた。

5:3 アシドドの人々ひとびとが、つぎはやきてると、ダゴンがしゅはこまえに、うつむきにたおれていたので、かれらはダゴンをおこして、それをもとのところいた。

5:4 そのつぎあさまたはやきてると、ダゴンはまた、しゅはこまえに、うつむきにたおれていた。そしてダゴンのあたま両手りょうてとはれてはなれ、しきいのうえにあり、ダゴンはただ胴体どうたいだけとなっていた。

5:5 それゆえダゴンの祭司さいしたちやダゴンのみやにはいる人々ひとびとは、だれも今日こんにちにいたるまで、アシドドのダゴンのしきいをまない。

5:6 そしてしゅはアシドドびとのうえにきびしくのぞみ、しゅ腫物はれものをもってアシドドとその領域りょういき人々ひとびとおそれさせ、またなやまされた。

5:7 アシドドの人々ひとびとは、このありさまをった、「イスラエルのかみはこを、われわれのところに、とどめいてはならない。そのかみが、われわれと、われわれのかみダゴンのうえにきびしくのぞむからである」。

5:8 そこでかれらはひとをつかわして、ペリシテびとのきみたちをあつめてった、「イスラエルのかみはこをどうしましょう」。かれらはった、「イスラエルのかみはこはガテにうつそう」。人々ひとびとはイスラエルのかみはこをそこにうつした。

5:9 かれらがそれをうつすと、しゅがそのまちのぞみ、非常ひじょうさわぎがった。そして老若ろうにゃくわずまち人々ひとびとたれたので、かれらの腫物はれものができた。

5:10 そこで人々ひとびとかみはこをエクロンにおくったが、かみはこがエクロンにいたとき、エクロンの人々ひとびとさけんでった、「かれらがイスラエルのかみはこをわれわれのところうつしたのは、われわれとたみほろぼすためである」。

5:11 そこでかれらはひとをつかわして、ペリシテびとのきみたちをみなあつめてった、「イスラエルのかみはこおくして、もとのところかえし、われわれとたみほろぼすことのないようにしよう」。おそろしいさわぎが町中まちぢゅうっていたからである。そこにはかみ非常ひじょうにきびしくのぞんでいたので、

5:12 なないひと腫物はれものをもってたれ、まちさけびはてんたっした。 

第6章 

6:1 しゅはこは七かげつあいだペリシテびとのにあった。

6:2 ペリシテびとは、祭司さいしうらなんでった、「イスラエルのかみはこをどうしましょうか。どのようにして、それをもとのところおくかえせばよいかげてください」。

6:3 かれらはった、「イスラエルのかみはこおくかえときには、それをむなしくかえしてはならない。かならかれにとがのそなものをもってつぐないをしなければならない。そうすれば、あなたがたはいやされ、またかれがなぜあなたがたをはなれないかをることができるであろう」。

6:4 人々ひとびとった、「われわれがつぐなうとがのそなものにはなにをしましょうか」。かれらはこたえた、「ペリシテびとのきみたちのかずにしたがって、きん腫物はれもの五つときんのねずみ五つである。あなたがたすべてと、きみたちにのぞんだわざわいは一つだからである。

6:5 それゆえ、あなたがたの腫物はれものぞうと、あらすねずみのぞうつくり、イスラエルのかみ栄光えいこうするならば、たぶんかれは、あなたがた、およびあなたがたの神々かみがみと、あなたがたのに、そのくわえることをかるくされるであろう。

6:6 なにゆえ、あなたがたはエジプトびととパロがそのこころをかたくなにしたように、自分じぶんこころをかたくなにするのか。かみかれらをなやましたので、かれらはたみかせ、たみったではないか。

6:7 それゆえいまあたらしいくるまりょう つくり、まだくびきをけたことのない乳牛にゅうぎゅうとうをとり、そのうしくるまにつなぎ、そのおのおののうし乳牛にゅうぎゅうからはなしていえかえり、

6:8 しゅはこをとって、それをそのくるませ、あなたがたがとがのそなものとしてかれつぐなきんつくものを一つのはこにおさめてそのかたわらにき、それをおくってらせなさい。

6:9 そしてていて、それが自分じぶん領地りょうちみちを、ベテシメシへのぼるならば、このおおいなるわざわいを、われわれにくだしたのはかれである。しかし、そうしないときは、われわれをったのはかれではなく、そのこと偶然ぐうぜんであったことをるであろう」。

6:10 人々ひとびとはそのようにした。すなわち、かれらは二とう乳牛にゅうぎゅうをとって、これをくるまにつなぎ、そのおのおののうしいえじこめ、

6:11 しゅはこ、およびきんのねずみと、腫物はれものぞうをおさめたはことをくるませた。

6:12 すると雌牛めうしはまっすぐにベテシメシの方向ほうこうへ、ひとすじに大路おおじあゆみ、きながらすすんでいって、みぎにもひだりにもまがらなかった。ペリシテびとのきみたちは、ベテシメシのさかいまでそのあとについていった。

6:13 ときにベテシメシの人々ひとびとたに小麦こむぎれていたが、をあげて、そのはこ、それをむかえてよろこんだ。

6:14 くるまはベテシメシびとヨシュアのはたけにはいって、そこにとどまった。そのところおおきないしがあった。人々ひとびとくるまり、その雌牛めうし燔祭はんさいとしてしゅにささげた。

6:15 レビびとはしゅはこと、そのかたわらの、きんつくものをおさめたはこりおろし、それを大石おおいしうえいた。そしてベテシメシの人々ひとびとは、そのしゅ燔祭はんさいそなえ、犠牲ぎせいをささげた。

6:16 ペリシテびとの五にんきみたちはこれをて、その、エクロンにかえった。

6:17 ペリシテびとが、とがのそなものとして、しゅつぐないをしたきん腫物はれものは、つぎのとおりである。すなわちアシドドのために一つ、ガザのために一つ、アシケロンのために一つ、ガテのために一つ、エクロンのために一つであった。

6:18 またきんのねずみは、城壁じょうへきをめぐらしたまちから城壁じょうへきのない村里むらざとにいたるまで、すべて五にんきみたちにぞくするペリシテびとのまちかずにしたがって つくった。しゅはこをおろしたところのかたわらにあった大石おおいしは、今日こんにちにいたるまで、ベテシメシびとヨシュアのはたけにあって、あかしとなっている。

6:19 ベテシメシの人々ひとびとしゅはこなかたものがあったので、しゅはこれをたれた。すなわちたみのうち七十にんたれた。しゅたみっておおくのものころされたので、たみはなげきかなしんだ。

6:20 ベテシメシの人々ひとびとった、「だれが、このせいなるかみしゅまえつことができようか。しゅはわれわれをはなれてだれのところのぼってかれたらよいのか」。

6:21 そしてかれらは、使者ししゃをキリアテ・ヤリムの人々ひとびとにつかわしてった、「ペリシテびとがしゅはこかえしたから、くだってきて、それをあなたがたのところたずさのぼってください」。 

第7章 

7:1 キリアテ・ヤリムの人々ひとびとは、きて、しゅはこたずさのぼり、おかうえのアビナダブのいえってきて、そのエレアザルを聖別せいべつして、しゅはこまもらせた。

7:2 そのはこひさしくキリアテ・ヤリムにとどまって、二十ねんた。イスラエルの全家ぜんかしゅしたってなげいた。

7:3 そのときサムエルはイスラエルの全家ぜんかげていった、「もし、あなたがたが一心いっしんしゅかえるのであれば、ほかの神々かみがみとアシタロテを、あなたがたのうちからり、こころしゅけ、しゅにのみつかえなければならない。そうすれば、しゅはあなたがたをペリシテびとのからすくされるであろう」。

7:4 そこでイスラエルの人々ひとびとはバアルとアシタロテをり、ただしゅにのみつかえた。

7:5 サムエルはまたった、「イスラエルびとを、ことごとくミヅパにあつめなさい。わたしはあなたがたのためにしゅいのりましょう」。

7:6 人々ひとびとはミヅパにあつまり、みずをくんでそれをしゅまえそそぎ、その断食だんじきしてそのところった、「われわれはしゅたいしてつみおかした」。サムエルはミヅパでイスラエルの人々ひとびとをさばいた。

7:7 イスラエルの人々ひとびとのミヅパにあつまったことがペリシテびとにきこえたので、ペリシテびとのきみたちは、イスラエルにのぼってきた。イスラエルの人々ひとびとはそれをいて、ペリシテびとをおそれた。

7:8 そしてイスラエルの人々ひとびとはサムエルにった、「われわれのため、われわれのかみしゅさけぶことを、やめないでください。そうすればしゅがペリシテびとのからわれわれをすくされるでしょう」。

7:9 そこでサムエルはちち小羊こひつじとうをとり、これをまった燔祭はんさいとしてしゅにささげた。そしてサムエルはイスラエルのためにしゅさけんだので、しゅはこれにこたえられた。

7:10 サムエルが燔祭はんさいをささげていたとき、ペリシテびとはイスラエルとたたかおうとしてちかづいてきた。しかししゅはそのおおいなるかみなりをペリシテびとのうえにとどろかせて、かれらをみだされたので、かれらはイスラエルびとのまえやぶれてげた。

7:11 イスラエルの人々ひとびとはミヅパをてペリシテびとをい、これをって、ベテカルのしたまでった。

7:12 そのときサムエルは一つのいしをとってミヅパとエシャナのあいだにすえ、「しゅいまいたるまでわれわれをたすけられた」とって、そのをエベネゼルとづけた。

7:13 こうしてペリシテびとは征服せいふくされ、ふたたびイスラエルの領地りょうちに、はいらなかった。サムエルの一生いっしょうあいだしゅが、ペリシテびとをふせいだ。

7:14 ペリシテびとがイスラエルからった町々まちまちは、エクロンからガテまで、イスラエルにかえり、イスラエルはその周囲しゅういをもペリシテびとのからりかえした。またイスラエルとアモリびととのあいだには平和へいわがあった。

7:15 サムエルは一生いっしょうあいだイスラエルをさばいた。

7:16 としごとにサムエルはベテルとギルガル、およびミヅパをめぐって、その所々ところどころでイスラエルをさばき、

7:17 ラマにかえった。そこにかれいえがあったからである。そのところでもかれはイスラエルをさばき、またそこでしゅ祭壇さいだんきずいた。 

第8章 

8:1 サムエルは年老としおいて、そのらをイスラエルのさばきづかさとした。

8:2 長子ちょうしはヨエルといい、つぎはアビヤとった。かれらはベエルシバでさばきづかさであった。

8:3 しかしそのらはちちみちあゆまないで、にむかい、まいないをって、さばきをげた。

8:4 このとき、イスラエルの長老ちょうろうたちはみなあつまってラマにおるサムエルのもとにきて、

8:5 った、「あなたは年老としおい、あなたのたちはあなたのみちあゆまない。いまほかの国々くにぐにのように、われわれをさばくおうを、われわれのためにててください」。

8:6 しかしかれらが、「われわれをさばくおうを、われわれにあたえよ」とうのをいて、サムエルはよろこばなかった。そしてサムエルがしゅいのると、

8:7 しゅはサムエルにわれた、「たみが、すべてあなたにところこえしたがいなさい。かれらがてるのはあなたではなく、わたしをてて、かれらのうえにわたしがおうであることをみとめないのである。

8:8 かれらは、わたしがエジプトからのぼったから、きょうまで、わたしをててほかの神々かみがみつかえ、さまざまのことをわたしにしたように、あなたにもしているのである。

8:9 いまそのこえしたがいなさい。ただし、ふかかれらをいましめて、かれらをおさめるおうのならわしをかれらにしめさなければならない」。

8:10 サムエルはおうてることをもとめるたみしゅ言葉ことばをことごとくげて、

8:11 った、「あなたがたをおさめるおうのならわしはつぎのとおりである。かれはあなたがたのむすこをって、戦車せんしゃたいれ、騎兵きへいとし、自分じぶん戦車せんしゃまえはしらせるであろう。

8:12 かれはまたそれを千にんちょう、五十にんちょうにんじ、またそのたがやさせ、その作物さくもつらせ、またその武器ぶき戦車せんしゃ装備そうびつくらせるであろう。

8:13 また、あなたがたのむすめって、こうをつくるものとし、料理りょうりをするものとし、パンをものとするであろう。

8:14 また、あなたがたのはたけとぶどうはたけとオリブはたけもっとものって、その家来けらいあたえ、

8:15 あなたがたの穀物こくもつと、ぶどうはたけの、十ぶんの一をって、その役人やくにん家来けらいあたえ、

8:16 また、あなたがたの男女だんじょ奴隷どれいおよび、あなたがたのもっとうしとろばをって、自分じぶんのためにはたらかせ、

8:17 また、あなたがたのひつじの十ぶんの一をり、あなたがたは、その奴隷どれいとなるであろう。

8:18 そしてそのあなたがたは自分じぶんのためにえらんだおうのゆえにばわるであろう。しかししゅはそのにあなたがたにこたえられないであろう」。

8:19 ところがたみはサムエルのこえしたがうことをこばんでった、「いいえ、われわれをおさめるおうがなければならない。

8:20 われわれも国々くにぐにのようになり、おうがわれわれをさばき、われわれをひきいて、われわれのたたかいにたたかうのである」。

8:21 サムエルはたみ言葉ことばをことごとくいて、それをしゅみみげた。

8:22 しゅはサムエルにわれた、「かれらのこえしたがい、かれらのためにおうてよ」。サムエルはイスラエルの人々ひとびとった、「あなたがたは、めいめいそのまちかえりなさい」。 

第9章 

9:1 さて、ベニヤミンのひとで、キシという裕福ゆうふくひとがあった。キシはアビエルの、アビエルはゼロルの、ゼロルはベコラテの、ベコラテはアピヤの、アピヤはベニヤミンびとである。

9:2 キシにはサウルというがあった。わかくてうるわしく、イスラエルの人々ひとびとのうちにかれよりもうるわしいひとはなく、たみのだれよりもかたからうえたかかった。

9:3 サウルのちちキシのすうとうのろばがいなくなった。そこでキシは、そのサウルにった、「しもべをひとりれて、ってき、ろばをさがしてきなさい」。

9:4 そこでふたりはエフライムの山地さんちとおりすぎ、シャリシャのとおぎたけれども見当みあたらず、シャリムのとおぎたけれどもおらず、ベニヤミンのとおぎたけれども見当みあたらなかった。

9:5 かれらがツフのにきたとき、サウルはれてきたしもべにった、「さあ、かえろう。ちちは、ろばのことよりも、われわれのことを心配しんぱいするだろう」。

9:6 ところが、しもべはった、「このまちにはかみひとがおられます。たっとひとで、そのわれることはみなそのとおりになります。そのところきましょう。われわれのてきたたびのことについてなにしめされるでしょう」。

9:7 サウルはしもべにった、「しかしくのであれば、そのひとなにおくろうか。ふくろのパンはもはや、なくなり、かみひとっていくおくものがない。なにかありますか」。

9:8 しもべは、またサウルにこたえた、「わたしのに四ぶんの一シケルのぎんがあります。わたしはこれを、かみひとあたえて、われわれのみちしめしてもらいましょう」。

9:9 ――むかしイスラエルでは、かみうためにときには、こうった、「さあ、われわれは先見者せんけんしゃのところへこう」。いま預言者よげんしゃは、むかし先見者せんけんしゃといわれていたのである。――

9:10 サウルはそのしもべにった、「それはい。さあ、こう」。こうしてかれらは、かみひとのいるそのまちった。

9:11 かれらはまちさかのぼっているときみずをくむためにてくるおとめたちに出会であったので、かれらにった、「先見者せんけんしゃはここにおられますか」。

9:12 おとめたちはこたえた、「おられます。ごらんなさい、このさきです。いそいできなさい。たみがきょうたかところ犠牲ぎせいをささげるので、たったいままちにこられたところです。

9:13 あなたがたは、まちにはいるとすぐ、あのかたがたかところのぼって食事しょくじされるまええるでしょう。たみはそのかたがこられるまでは食事しょくじをしません。あのかたが犠牲ぎせい祝福しゅくふくされてから、まねかれた人々ひとびと食事しょくじをするのです。さあ、のぼっていきなさい。すぐにえるでしょう」。

9:14 こうしてかれらはまちのぼっていった。そしてまちなかに、はいろうとしたとき、サムエルはたかところのぼるためかれらのほうにかっててきた。

9:15 さてサウルがる一にちまえに、しゅはサムエルのみみげてわれた、

9:16 「あすのいまごろ、あなたのところに、ベニヤミンのから、ひとりのひとをつかわすであろう。あなたはそのひとあぶらそそいで、わたしのたみイスラエルのきみとしなさい。かれはわたしのたみをペリシテびとのからすくすであろう。わたしのたみさけびがわたしにとどき、わたしがそのなやみをかえりみるからである」。

9:17 サムエルがサウルをときしゅわれた、「よ、わたしのったのはこのひとである。このひとがわたしのたみおさめるであろう」。

9:18 そのときサウルは、もんなかでサムエルにちかづいてった、「先見者せんけんしゃいえはどこですか。どうかおしえてください」。

9:19 サムエルはサウルにこたえた、「わたしがその先見者せんけんしゃです。わたしのまえって、たかところのぼりなさい。あなたがたは、きょう、わたしと一緒いっしょ食事しょくじしなさい。わたしはあすのあさあなたをかえらせ、あなたのこころにあることをみなしめしましょう。

9:20 三まえに、いなくなったあなたのろばは、もはやつかったのでこころにかけなくてもよろしい。しかしイスラエルのすべてののぞましきものはだれのものですか。それはあなたのもの、あなたのちちいえのすべてのひとのものではありませんか」。

9:21 サウルはこたえた、「わたしはイスラエルのうちのもっとちいさい部族ぶぞくのベニヤミンびとであって、わたしの一族いちぞくはまたベニヤミンのどの一族いちぞくよりもいやしいものではありませんか。どうしてあなたは、そのようなことをわたしにわれるのですか」。

9:22 サムエルはサウルとそのしもべをみちびいて、へやにはいり、まねかれた三十にんほどのうちの上座かみざにすわらせた。

9:23 そしてサムエルは料理りょうりにんった、「あなたにわたして、りのけておくようにとっておいたぶんってきなさい」。

9:24 料理りょうりにんは、ももとそのうえ部分ぶぶんげて、それをサウルのまえいた。そしてサムエルはった、「ごらんなさい。っておいたものが、あなたのまえかれています。しあがってください。あなたが客人きゃくじんたちと一緒いっしょ食事しょくじができるように、このときまで、あなたのためにっておいたものです」。

こうしてサウルはそのサムエルと一緒いっしょ食事しょくじをした。

9:25 そしてかれらがたかところくだってまちにはいったとき、サウルのために屋上おくじょうとこもうけられ、かれはそのうえよこたえてた。

9:26 そして夜明よあけになって、サムエルは屋上おくじょうのサウルにばわってった、「きなさい。あなたをおおくりします」。サウルはがった。そしてサウルとサムエルのふたりは、ともそとた。

9:27 かれらがまちはずれにくだったとき、サムエルはサウルにった、「あなたのしもべにさきくようにいなさい。しもべがさきったら、あなたは、しばらくここにちとどまってください。かみ言葉ことばらせましょう」。 

第10章 

10:1 そのときサムエルはあぶらのびんをって、サウルのあたまそそぎ、かれくちづけしてった、「しゅはあなたにあぶらそそいで、そのたみイスラエルのきみとされたではありませんか。あなたはしゅたみおさめ、周囲しゅういてきからかれらをすくわなければならない。しゅがあなたにあぶらそそいで、そのぎょうきみとされたことの、しるしはつぎのとおりです。

10:2 あなたがきょう、わたしをはなれて、ってくとき、ベニヤミンの領地りょうちのゼルザにあるラケルのはかのかたわらで、ふたりのひとうでしょう。そしてかれらはあなたにいます、『あなたがさがしにかれたろばはつかりました。いま父上ちちうえは、ろばよりもあなたがたのこと心配しんぱいして、「わがのことは、どうしよう」とっておられます』。

10:3 あなたが、そこからなおすすんで、タボルのかしのところくと、そこでベテルにのぼってかみおがもうとする三にんものうでしょう。ひとりは三とうやぎをれ、ひとりは三つのパンをたずさえ、ひとりは、ぶどうしゅのはいったかわぶくろ一つをたずさえている。

10:4 かれらはあなたにあいさつし、二つのパンをくれるでしょう。あなたはそれを、そのからけなければならない。

10:5 そののち、あなたはかみのギベアへく。そこはペリシテびとの守備しゅびへいのいるところである。あなたはそのところって、まちにはいるとき立琴たてごとつづみふえこと人々ひとびとさきかせて、預言よげんしながらたかところからりてくる一群いちぐん預言者よげんしゃうでしょう。

10:6 そのときしゅれいがあなたのうえにもはげしくくだって、あなたはかれらと一緒いっしょ預言よげんし、かわってあたらしいひととなるでしょう。

10:7 これらのしるしが、あなたのったならば、あなたは手当てあたりしだいになんでもしなさい。かみがあなたと一緒いっしょにおられるからです。

10:8 あなたはわたしに先立さきだってギルガルにくだらなければならない。わたしはあなたのもとにくだっていって、燔祭はんさいそなえ、酬恩祭しゅうおんさいをささげるでしょう。わたしがあなたのもとにって、あなたのしなければならないことをあなたにしめすまで、七日なぬかのあいだたなければならない」。

10:9 サウルがをかえしてサムエルをはなれたとき、かみかれあたらしいこころあたえられた。これらのしるしはみなそのった。

10:10 かれらはギベアにきたとき預言者よげんしゃ一群いちぐん出会であった。そしてかみれいが、はげしくサウルのうえくだり、かれかれらのうちにいて預言よげんした。

10:11 もとからサウルをっていた人々ひとびとはみな、サウルが預言者よげんしゃたちととも預言よげんするのをたがいった、「キシの何事なにごとったのか。サウルもまた預言者よげんしゃたちのうちにいるのか」。

10:12 そのところのひとりのものこたえた、「かれらのちちはだれなのか」。それで「サウルもまた預言者よげんしゃたちのうちにいるのか」というのが、ことわざとなった。

10:13 サウルは預言よげんすることをえて、たかところった。

10:14 サウルのおじが、サウルとそのしもべとにった、「あなたがたは、どこへったのか」。サウルはった、「ろばをさがしにいったのですが、どこにもいないので、サムエルのもとにきました」。

10:15 サウルのおじはった、「サムエルが、どんなことをったか、どうぞはなしてください」。

10:16 サウルはおじにった、「ろばがつかったと、はっきり、わたしたちにいました」。しかしサムエルがった王国おうこくのことについて、おじにはなにげなかった。

10:17 さて、サムエルはたみをミヅパでしゅまえあつめ、

10:18 イスラエルの人々ひとびとった、「イスラエルのかみしゅはこうおおせられる、『わたしはイスラエルをエジプトからみちびし、あなたがたをエジプトびとの、およびすべてあなたがたをしえたげる王国おうこくからすくした』。

10:19 しかしあなたがたは、きょう、あなたがたをそのなやみとくるしみのなかからすくわれるあなたがたのかみて、そのうえ、『いいえ、われわれのうえおうてよ』とう。それゆえいま、あなたがたは、部族ぶぞくにしたがい、また氏族しぞくにしたがって、しゅまえなさい」。

10:20 こうしてサムエルがイスラエルのすべての部族ぶぞくせたとき、ベニヤミンの部族ぶぞくが、くじにあたった。

10:21 またベニヤミンの部族ぶぞくをその氏族しぞくにしたがってせたとき、マテリの氏族しぞくが、くじにあたり、マテリの氏族しぞくひとごとにせたとき、キシのサウルが、くじにあたった。しかし人々ひとびとかれさがしたときつからなかった。

10:22 そこでまたしゅに「そのひとはここにきているのですか」とうと、しゅわれた、「かれ荷物にもつあいだかくれている」。

10:23 人々ひとびとはしってって、かれをそこかられてきた。かれたみなかったが、かたからうえは、たみのどのひとよりもたかかった。

10:24 サムエルはすべてのたみった、「しゅえらばれたひとをごらんなさい。たみのうちにかれのようなひとはないではありませんか」。たみはみな「おう万歳ばんざい」とさけんだ。

10:25 そのときサムエルは王国おうこくのならわしをたみかたり、それをしょにしるして、しゅまえにおさめた。こうしてサムエルはすべてのたみをそれぞれいえかえらせた。

10:26 サウルもまたギベアにあるかれいえかえった。そしてかみにそのこころうごかされた勇士ゆうしたちもかれともった。

10:27 しかし、よこしまな人々ひとびとは「このおとこがどうしてわれわれをすくうことができよう」とって、かれかろんじ、おくものをしなかった。しかしサウルはだまっていた。 

第11章 

11:1 アンモンびとナハシはのぼってきて、ヤベシ・ギレアデをかこんだ。ヤベシの人々ひとびとはナハシにった、「われわれと契約けいやくむすびなさい。そうすればわれわれはあなたにつかえます」。

11:2 しかしアンモンびとナハシはかれらにった、「つぎ条件じょうけんであなたがたと契約けいやくむすぼう。すなわち、わたしが、あなたがたすべてのみぎをえぐりって、ぜんイスラエルをはずかしめるということだ」。

11:3 ヤベシの長老ちょうろうたちはかれった、「われわれに七日なぬか猶予ゆうよあたえ、イスラエルのぜん領土りょうど使者ししゃおくることをゆるしてください。そしてもしわれわれをすくものがないとき降伏こうふくします」。

11:4 こうして使者ししゃが、サウルのギベアにきて、このことたみみみげたので、たみはみなこえをあげていた。

11:5 そのときサウルははたけからうしのあとについてきた。そしてサウルはった、「たみいているのは、どうしたのか」。人々ひとびとかれにヤベシの人々ひとびとことげた。

11:6 サウルがこの言葉ことばいたときかみれいはげしくかれうえのぞんだので、かれいかりははなはだしくえた。

11:7 かれは一くびきのうしをとり、それをき、使者ししゃによってイスラエルのぜん領土りょうどおくってわせた、「だれであってもサウルとサムエルとにしたがってないものは、そのうしがこのようにされるであろう」。たみしゅおそれて、ひとりのようにてきた。

11:8 サウルはベゼクでそれをかぞえたが、イスラエルの人々ひとびとは三十万、ユダの人々ひとびとは三万であった。

11:9 そして人々ひとびとは、きた使者ししゃたちにった、「ヤベシ・ギレアデのひとにこういなさい、『あす、あつくなるころ、あなたがたはすくいるであろう』と」。使者ししゃかえって、ヤベシの人々ひとびとげたので、かれらはよろこんだ。

11:10 そこでヤベシの人々ひとびとった、「あす、われわれは降伏こうふくします。なんでも、あなたがたがいとおもうことを、われわれにしてください」。

11:11 くる、サウルはたみを三つの部隊ぶたいけ、あかつきにてき陣営じんえいり、あつくなるころまで、アンモンびとをころした。のこったものはちりぢりになって、ふたり一緒いっしょにいるものはなかった。

11:12 そのときたみはサムエルにった、「さきに、『サウルがどうしてわれわれをおさめることができようか』とったものはだれでしょうか。その人々ひとびとしてください。われわれはその人々ひとびところします」。

11:13 しかしサウルはった、「しゅはきょう、イスラエルにすくいほどこされたのですから、きょうはひところしてはなりません」。

11:14 そこでサムエルはたみった、「さあ、ギルガルへって、あそこで王国おうこく一新いっしんしよう」。

11:15 こうしてたみはみなギルガルへって、そのところしゅまえにサウルをおうとし、酬恩祭しゅうおんさいしゅまえにささげ、サウルとイスラエルの人々ひとびとみな、そのところおおいにいわった。 

第12章 

12:1 サムエルはイスラエルの人々ひとびとった、「よ、わたしは、あなたがたの言葉ことばしたがって、あなたがたのうえおうてた。

12:2 おういま、あなたがたのまえあゆむ。わたしは年老としおいてかみしろくなった。わたしのらもあなたがたとともにいる。わたしはわかときから、きょうまで、あなたがたのまえあゆんだ。

12:3 わたしはここにいる。しゅまえと、そのあぶらそそがれたものまえに、わたしをうったえよ。わたしが、だれのうしったか。だれのろばをったか。だれをあざむいたか。だれをしえたげたか。だれのから、まいないをって、自分じぶんをくらましたか。もしそのようなことがあれば、わたしはそれを、あなたがたにつぐなおう」。

12:4 かれらはった、「あなたは、われわれをあざむいたことも、しえたげたこともありません。またひとからなにったことはありません」。

12:5 サムエルはかれらにった、「あなたがたが、わたしののうちに、なんの不正ふせいをもいださないことを、しゅはあなたがたにあかしされる。そのあぶらそそがれたものも、きょうそれをあかしする」。かれらはった、「あかしされます」。

12:6 サムエルはたみった、「モーセとアロンをてて、あなたがたの先祖せんぞをエジプトのからみちびされたしゅ証人しょうにんです。

12:7 それゆえ、あなたがたはいまちなさい。わたしはしゅが、あなたがたとあなたがたの先祖せんぞのためにおこなわれたすべてのすくいのわざについて、しゅまえに、あなたがたとろんじよう。

12:8 ヤコブがエジプトにって、エジプトびとが、かれらを、しえたげたとき、あなたがたの先祖せんぞしゅばわったので、しゅはモーセとアロンをつかわされた。そこでかれらは、あなたがたの先祖せんぞをエジプトからみちびして、このところまわせた。

12:9 しかし、かれらがそのかみしゅわすれたので、しゅかれらをハゾルのおうヤビンのぐんちょうシセラのわたし、またペリシテびとのとモアブのおうにわたされた。そこでかれらがイスラエルをめたので、

12:10 たみしゅばわってった、『われわれはしゅて、バアルとアシタロテにつかえて、つみおかしました。いま、われわれをてきからすくしてください。われわれはあなたにつかえます』。

12:11 しゅはエルバアルとバラクとエフタとサムエルをつかわして、あなたがたを周囲しゅういてきからすくされたので、あなたがたはやすらかにむことができた。

12:12 ところが、アンモンびとのおうナハシがめてくるのをたとき、あなたがたのかみしゅがあなたがたのおうであるのに、あなたがたはわたしに、『いいえ、われわれをおさめるおうがなければならない』とった。

12:13 それゆえ、いまあなたがたのえらんだおう、あなたがたがもとめたおうなさい。しゅはあなたがたのうえおうてられた。

12:14 もし、あなたがたがしゅおそれ、しゅつかえて、そのこえしたがい、しゅいましめにそむかず、あなたがたも、あなたがたをおさめるおうともに、あなたがたのかみしゅしたがうならば、それでい。

12:15 しかし、もしあなたがたがしゅこえしたがわず、しゅいましめにそむくならば、しゅは、あなたがたとあなたがたのおうめるであろう。

12:16 それゆえ、いま、あなたがたはって、しゅが、あなたがたのまえおこなわれる、このおおいなることなさい。

12:17 きょうは小麦こむぎかりときではないか。わたしはしゅばわるであろう。そのときしゅかみなりあめくだして、あなたがたがおうもとめて、しゅまえおかしたつみおおいなることをさせ、またらせられるであろう」。

12:18 そしてサムエルがしゅばわったので、しゅはそのかみなりあめくだされた。たみみなひじょうにしゅとサムエルとをおそれた。

12:19 たみはみなサムエルにった、「しもべらのために、あなたのかみしゅいのって、われわれのなないようにしてください。われわれは、もろもろのつみおかしたうえに、またおうもとめて、あくくわえました」。

12:20 サムエルはたみった、「おそれることはない。あなたがたは、このすべてのあくをおこなった。しかししゅしたがうことをやめず、こころをつくしてしゅつかえなさい。

12:21 むなしいものまよってってはならない。それは、あなたがたをたすけることもすくうこともできないむなしいものだからである。

12:22 しゅは、そのおおいなるのゆえに、そのたみてられないであろう。しゅが、あなたがたを自分じぶんたみとすることをしとされるからである。

12:23 また、わたしは、あなたがたのためにいのることをやめてしゅつみおかすことは、けっしてしないであろう。わたしはまたい、ただしいみちを、あなたがたにおしえるであろう。

12:24 あなたがたは、ただしゅおそれ、こころをつくして、誠実せいじつしゅつかえなければならない。そしてしゅがどんなにおおきいことをあなたがたのためにされたかをかんがえなければならない。

12:25 しかし、あなたがたが、なおもあくおこなうならば、あなたがたも、あなたがたのおうも、ともほろぼされるであろう」。