口語訳聖書(振り仮名付き)

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サムエル

第1章    2Sm-Audio 

1:1 サウルがんだのち、ダビデはアマレクびとをってかえり、ふつかのあいだチクラグにとどまっていたが、

1:2 三となって、ひとりのひとが、その着物きものき、あたまつちをかぶって、サウルの陣営じんえいからきた。そしてダビデのもとにきて、してはいした。

1:3 ダビデはかれった、「あなたはどこからきたのか」。かれはダビデにった、「わたしはイスラエルの陣営じんえいから、のがれてきたのです」。

1:4 ダビデはかれった、「様子ようすはどうであったかはなしなさい」。かれこたえた、「たみたたかいからげ、たみおおくはたおれてに、サウルとそのヨナタンもまたにました」。

1:5 ダビデは自分じぶんはなしている若者わかものった、「あなたはサウルとそのヨナタンがんだのを、どうしてったのか」。

1:6 かれはなしている若者わかものった、「わたしは、はからずも、ギルボアやまにいましたが、サウルはそのやりによりかかっており、戦車せんしゃ騎兵きへいとがかれろうとしていました。

1:7 そのときかれはうしろをいてわたしを、わたしをびましたので、『ここにいます』とわたしはこたえました。

1:8 かれは『おまえはだれか』といましたので、『アマレクびとです』とこたえました。

1:9 かれはまたわたしにいました、『そばにきてころしてください。わたしはくるしみにえない。まだいのちがあるからです』。

1:10 そこで、わたしはそのそばにいってかれころしました。かれがすでにたおれて、きることのできないのをったからです。そしてわたしはかれあたまにあったかんむりと、うでにつけていた腕輪うでわとをって、それをわがしゅのもとにたずさえてきたのです」。

1:11 そのときダビデは自分じぶん着物きものをつかんでそれをき、かれともにいた人々ひとびとみなおなじようにした。

1:12 かれらはサウルのため、またそのヨナタンのため、またしゅたみのため、またイスラエルのいえのためにかなしみいて、夕暮ゆうぐれまでしょくった。それはかれらがつるぎにたおれたからである。

1:13 ダビデは自分じぶんはなしていた若者わかものった、「あなたはどこのひとですか」。かれった、「アマレクびとで、寄留きりゅう他国たこくじんです」。

1:14 ダビデはまたかれった、「どうしてあなたはべてしゅあぶらそそがれたものころすことをおそれなかったのですか」。

1:15 ダビデはひとりの若者わかものび、「近寄ちかよってかれて」とった。そこでかれったのでんだ。

1:16 ダビデはかれった、「あなたのながしためはあなたにする。あなたが自分じぶんくちから、『わたしはしゅあぶらそそがれたものころした』とって、自身じしんにむかって証拠しょうこてたからである」。

1:17 ダビデはこのかなしみのうたをもって、サウルとそのヨナタンのために哀悼あいとうした。――

1:18 これは、ユダの人々ひとびとおしえるためのゆみうたで、ヤシャルのしょにしるされている。――かれった、

1:19 「イスラエルよ、あなたの栄光えいこうは、あなたのたかところころされた。ああ、勇士ゆうしたちは、ついにたおれた。

1:20 ガテにこのことげてはいけない。アシケロンのちまたにつたえてはならない。おそらくはペリシテびとのむすめたちがよろこび、割礼かつれいなきものむすめたちがちほこるであろう。

1:21 ギルボアのやまよ、つゆはおまえのうえにおりるな。よ、あめもおまえのうえるな。そのところ勇士ゆうしたちのたててられ、サウルのたてあぶららずにてられた。

1:22 ころしたものまずには、ヨナタンのゆみ退しりぞかず、勇士ゆうし脂肪しぼうべないでは、サウルのつるぎは、むなしくはかえらなかった。

1:23 サウルとヨナタンとは、あいされ、かつよろこばれた。かれらはきるにも、ぬにもはなれず、わしよりもはやく、ししよりもつよかった。

1:24 イスラエルのむすめたちよ、サウルのためにけ。かれ緋色ひいろ着物きものをもって、はなやかにあなたがたをよそおい、あなたがたの着物きものきんかざりをつけた。

1:25 ああ、勇士ゆうしたちはたたかいのさなかにたおれた。ヨナタンは、あなたのたかところころされた。

1:26 わが兄弟きょうだいヨナタンよ、あなたのためわたしはかなしむ。あなたはわたしにとって、いともたのしいものであった。あなたがわたしをあいするのはつねのようでなく、おんなあいにもまさっていた。

1:27 ああ、勇士ゆうしたちはたおれた。たたかいのうつわはうせた」。 

第2章 

2:1 こののち、ダビデはしゅうてった、「わたしはユダの一つのまちのぼるべきでしょうか」。しゅかれわれた、「のぼりなさい」。ダビデはった、「どこへのぼるべきでしょうか」。しゅわれた、「ヘブロンへ」。

2:2 そこでダビデはそのところのぼった。かれのふたりのつま、エズレルのおんなアヒノアムと、カルメルびとナバルのつまであったアビガイルものぼった。

2:3 ダビデはまた自分じぶんともにいた人々ひとびとを、みなその家族かぞくともれてのぼった。そしてかれらはヘブロンの町々まちまちんだ。

2:4 ときにユダの人々ひとびとがきて、そのところでダビデにあぶらそそぎ、ユダのいえおうとした。

人々ひとびとがダビデにげて、「サウルをほうむったのはヤベシ・ギレアデの人々ひとびとである」とったので、

2:5 ダビデは使者ししゃをヤベシ・ギレアデの人々ひとびとにつかわしてかれらにった、「あなたがたは、主君しゅくんサウルにこの忠誠ちゅうせいをあらわしてかれほうむった。どうぞしゅがあなたがたを祝福しゅくふくされるように。

2:6 どうぞしゅがいまあなたがたに、いつくしみと真実しんじつしめされるように。あなたがたが、このことをしたので、わたしもまたあなたがたに好意こういしめすであろう。

2:7 いまあなたがたはつよくし、雄々おおしくあれ。あなたがたの主君しゅくんサウルはに、ユダのいえがわたしにあぶらそそいで、かれらのおうとしたからである」。

2:8 さてサウルのぐんちょう、ネルのアブネルは、さきにサウルのイシボセテをり、マハナイムにれてわたり、

2:9 かれをギレアデ、アシュルびと、エズレル、エフライム、ベニヤミンおよびぜんイスラエルのおうとした。

2:10 サウルのイシボセテはイスラエルのおうとなったとき、四十さいであって、二ねんあいだおさめたが、ユダのいえはダビデにしたがった。

2:11 ダビデがヘブロンにいてユダのいえおうであった日数にっすうは七ねんと六かげつであった。

2:12 ネルのアブネル、およびサウルのイシボセテの家来けらいたちはマハナイムをてギベオンへった。

2:13 ゼルヤのヨアブとダビデの家来けらいたちもていって、ギベオンのいけのそばでかれらと出会であい、一方いっぽういけのこちらがわに、一方いっぽういけのあちらがわにすわった。

2:14 アブネルはヨアブにった、「さあ、若者わかものたちをたせて、われわれのまえ勝負しょうぶをさせよう」。ヨアブはった、「かれらをたせよう」。

2:15 こうしてサウルのイシボセテとベニヤミンびととのために十二にん、およびダビデの家来けらいたち十二にんかぞえてした。かれらはってすすみ、

2:16 おのおの相手あいてあたまとらえ、つるぎを相手あいてのわきばらし、こうしてかれらはともたおれた。それゆえ、そのところはヘルカテ・ハヅリムとばれた。それはギベオンにある。

2:17 そのたたかいはひじょうにはげしく、アブネルとイスラエルの人々ひとびとはダビデの家来けらいたちのまえやぶれた。

2:18 そのところにゼルヤの三にん、ヨアブ、アビシャイ、およびアサヘルがいたが、アサヘルはあしはやいこと、のかもしかのようであった。

2:19 アサヘルはアブネルのあとをっていったが、くのにみぎにもひだりにもまがることなく、アブネルのあとにはしった。

2:20 アブネルはうしろをふりむいてった、「あなたはアサヘルであったか」。アサヘルはこたえた、「わたしです」。

2:21 アブネルはかれった、「みぎひだりまがって、若者わかもののひとりをとらえ、そのよろいをうばいなさい」。しかしアサヘルはアブネルをうことをやめず、ほかにかおうともしなかった。

2:22 アブネルはふたたびアサヘルにった、「わたしをうことをやめて、ほかにかいなさい。あなたをたおすことなど、どうしてわたしにできようか。それをすれば、わたしは、どうしてあなたのあにヨアブにかおわせることができようか」。

2:23 それでもなおかれは、ほかにかうことをこばんだので、アブネルは、やりのいしきでかれはらいたので、やりはその背中せなかた。かれはそこにたおれて、そのんだ。そしてアサヘルがたおれてんでいる場所ばしょものみなちとどまった。

2:24 しかしヨアブとアビシャイとは、なおアブネルのあとをったが、かれらがギベオンの荒野あらのみちのほとり、ギアのまえにあるアンマのやまにきたときれた。

2:25 ベニヤミンの人々ひとびとはアブネルのあとについてきて、あつまり、一たいとなって、一つのやまいただきった。

2:26 そのときアブネルはヨアブにばわってった、「いつまでもつるぎをもってほろぼそうとするのか。あなたはその結果けっか悲惨ひさんなのをらないのか。いつまでたみにその兄弟きょうだいうことをやめよとめいじないのか」。

2:27 ヨアブはった、「かみきておられる。もしあなたがいださなかったならば、たみはおのおのその兄弟きょうだいわずに、あさのうちにっていたであろう」。

2:28 こうしてヨアブは角笛つのぶえいたので、たみはみなちとどまって、もはやイスラエルのあとをわず、またかさねてたたかわなかった。

2:29 アブネルとその従者じゅうしゃたちは、もすがら、アラバをとおってき、ヨルダンをわたり、ひるまで行進こうしんつづけてマハナイムにいた。

2:30 ヨアブはアブネルをうことをやめてかえり、たみをみなあつめたが、ダビデの家来けらいたち十九ひととアサヘルとが見当みあたらなかった。

2:31 しかし、ダビデの家来けらいたちは、アブネルの従者じゅうしゃであるベニヤミンの人々ひとびと三百六十にんころした。

2:32 人々ひとびとはアサヘルをげてベツレヘムにあるそのちちはかほうむった。ヨアブとその従者じゅうしゃたちは、もすがらって、夜明よあけにヘブロンにいた。 

第3章 

3:1 サウルのいえとダビデのいえとのあいだ戦争せんそうひさしくつづき、ダビデはますますつよくなり、サウルのいえはますますよわくなった。

3:2 ヘブロンでダビデにおとこうまれた。かれ長子ちょうしはエズレルのおんなアヒノアムのんだアムノン、

3:3 そのつぎはカルメルびとナバルのつまであったアビガイルのんだキレアブ、だい三はゲシュルのおうタルマイのむすめマアカのアブサロム、

3:4 だい四はハギテのアドニヤ、だい五はアビタルのシパテヤ、

3:5 だい六はダビデのつまエグラのんだイテレアム。これらのがヘブロンでダビデにうまれた。

3:6 サウルのいえとダビデのいえとがたたかいをつづけているあいだに、アブネルはサウルのいえで、つよくなってきた。

3:7 さてサウルには、ひとりのそばめがあった。そのをリヅパといい、アヤのむすめであったが、イシボセテはアブネルにった、「あなたはなぜわたしのちちのそばめのところにはいったのですか」。

3:8 アブネルはイシボセテの言葉ことばき、非常ひじょういかってった、「わたしはユダのいぬのかしらですか。わたしはきょう、あなたのちちサウルのいえと、その兄弟きょうだいと、その友人ゆうじんとに忠誠ちゅうせいをあらわして、あなたをダビデのわたすことをしなかったのに、あなたはきょう、おんなことのあやまちをげてわたしをめられる。

3:9 しゅがダビデにちかわれたことを、わたしがかれのためになしげないならば、かみがアブネルをいくえにもばっしられるように。

3:10 すなわち王国おうこくをサウルのいえからうつし、ダビデのくらいをダンからベエルシバにいたるまで、イスラエルとユダのうえたせられるであろう」。

3:11 イシボセテはアブネルをおそれたので、ひとことかれこたえることができなかった。

3:12 アブネルはヘブロンにいるダビデのもとに使者ししゃをつかわしてった、「くにはだれのものですか。わたしと契約けいやくむすびなさい。わたしはあなたに力添ちからぞえして、イスラエルをことごとくあなたのものにしましょう」。

3:13 ダビデはった、「よろしい。わたしは、あなたと契約けいやくむすびましょう。ただし一つのことをあなたにもとめます。あなたがきてわたしのかおるとき、まずサウルのむすめミカルをれてるのでなければ、わたしのかおることはできません」。

3:14 それからダビデは使者ししゃをサウルのイシボセテにつかわしてった、「ペリシテびとのようかわ一百をもってめとったわたしのつまミカルをわたしなさい」。

3:15 そこでイシボセテはひとをやって彼女かのじょをそのおっと、ライシのパルテエルからったので、

3:16 そのおっと彼女かのじょともき、きながら彼女かのじょのあとについて、バホリムまでったが、アブネルがかれに「かえってけ」とったのでかれかえった。

3:17 アブネルはイスラエルの長老ちょうろうたちと協議きょうぎしてった、「あなたがたは以前いぜんからダビデをあなたがたのおうとすることをもとめていましたが、

3:18 いまそれをしなさい。しゅがダビデについて、『わたしのしもべダビデのによって、わたしのたみイスラエルをペリシテびとの、およびもろもろのてきからすくすであろう』とわれたからです」。

3:19 アブネルはまたベニヤミンにもかたった。そしてアブネルは、イスラエルとベニヤミンの全家ぜんかいとおもうことをみな、ヘブロンでダビデにげようとして出発しゅっぱつした。

3:20 アブネルが二十にんしたがえてヘブロンにいるダビデのもとにったとき、ダビデはアブネルとかれしたがっている従者じゅうしゃたちのために酒宴しゅえんもうけた。

3:21 アブネルはダビデにった、「わたしはってき、イスラエルをことごとく、わがしゅおうのもとにあつめて、あなたと契約けいやくむすばせ、あなたののぞむものをことごとくおさめられるようにいたしましょう」。こうしてダビデはアブネルをおくかえらせたのでかれ安全あんぜんってった。

3:22 ちょうどそのとき、ダビデの家来けらいたちはヨアブとともおおくのぶんどりものたずさえて略奪りゃくだつからかえってきた。しかしアブネルはヘブロンのダビデのもとにはいなかった。ダビデがかれかえらせてかれ安全あんぜんったからである。

3:23 ヨアブおよびかれともにいた軍勢ぐんぜいがみなかえってきたとき、人々ひとびとはヨアブにった、「ネルのアブネルがおうのもとにきたが、おうかれかえらせたのでかれ安全あんぜんった」。

3:24 そこでヨアブはおうのもとにってった、「あなたはなにをなさったのですか。アブネルがあなたのところにきたのに、あなたはどうして、かれかえらせられたのですか。

3:25 ネルのアブネルがあなたをあざむくためにきたこと、そしてあなたの出入でいりをり、またあなたのなさっていることを、ことごとくるためにきたことをあなたはごぞんじです」。

3:26 ヨアブはダビデのところからてきて、使者ししゃをつかわし、アブネルをわせたので、かれらはシラの井戸いどからかれれてかえった。しかしダビデはそのことらなかった。

3:27 アブネルがヘブロンにかえってきたとき、ヨアブはひそかにかたろうといってかれもんのうちにれてき、そのところかれはらしてなせ、自分じぶん兄弟きょうだいアサヘルのむくいた。

3:28 そののちダビデはこのこといてった、「わたしとわたしの王国おうこくとは、ネルのアブネルのかんして、しゅまえ永久えいきゅうつみはない。

3:29 どうぞ、そのつみがヨアブのあたまと、そのちち全家ぜんかするように。またヨアブのいえには流出りゅうしゅつもの、らい病人びょうにん、つえにたよるもの、つるぎにたおれるもの、または食物しょくもつとぼしいものえないように」。

3:30 こうしてヨアブとそのおとうとアビシャイとはアブネルをころしたが、それはかれがギベオンのたたかいでかれらの兄弟きょうだいアサヘルをころしたためであった。

3:31 ダビデはヨアブおよび自分じぶんともにいるすべてのたみった、「あなたがたは着物きものき、荒布あらぬのをまとい、アブネルのまえなげきながらきなさい」。そしてダビデおうはそのかんのあとにしたがった。

3:32 人々ひとびとはアブネルをヘブロンにほうむった。おうはアブネルのはかこえをあげてき、たみもみないた。

3:33 おうはアブネルのためにかなしみのうたつくってった、

おろかなひとぬように、アブネルがどうしてんだのか。

3:34 あなたのしばられず、あしにはあしかせもかけられないのに、悪人あくにんまえたおれるひとのように、あなたはたおれた」。

そしてたみみな、ふたたびかれのためにいた。

3:35 たみはみなきて、のあるうちに、ダビデにパンをべさせようとしたが、ダビデはちかってった、「もしわたしがまえに、パンでも、ほかのものでもあじわうならば、かみがわたしをいくえにもばっしられるように」。

3:36 たみはみなそれを満足まんぞくした。すべておうのすることはたみ満足まんぞくさせた。

3:37 そのすべてのたみおよびイスラエルはみな、ネルのアブネルをころしたのは、おう意思いしによるものでないことをった。

3:38 おうはその家来けらいたちにった、「このイスラエルで、ひとりの偉大いだいなる将軍しょうぐんたおれたのをあなたがたはらないのか。

3:39 わたしはあぶらそそがれたおうであるけれども、今日こんにちなおよわい。ゼルヤのであるこれらの人々ひとびとはわたしのにおえない。どうぞしゅあくおこなものに、そのあくにしたがってむくいられるように」。 

第4章 

4:1 サウルのイシボセテは、アブネルがヘブロンでんだことをいて、そのちからうしない、イスラエルはみなあわてた。

4:2 サウルのイシボセテにはふたりの略奪りゃくだつたい隊長たいちょうがあった。ひとりのはバアナ、のひとりのはレカブといって、ベニヤミンの子孫しそんであるベロテびとリンモンのたちであった。(それはベロテもまたベニヤミンのうちにかぞえられているからである。

4:3 ベロテびとはギッタイムにげていって、今日こんにちまでそのところ寄留きりゅうしている)。

4:4 さてサウルのヨナタンにあしのなえたがひとりあった。エズレルからサウルとヨナタンのことらせがきたときかれは五さいであった。うばがかれいてげたが、いそいでげるとき、そのちてあしなえとなった。そのはメピボセテといった。

4:5 ベロテびとリンモンのたち、レカブとバアナとは出立しゅったつして、あついころイシボセテのいえにきたが、イシボセテは昼寝ひるねをしていた。

4:6 いえもんまもおんなむぎをあおぎけていたが、ねむくなっててしまった。そこでレカブとその兄弟きょうだいバアナは、ひそかになかにはいった。

4:7 かれらがいえにはいったとき、イシボセテは寝室しんしつゆかうえていたので、かれらはそれをってころし、そのくびをはね、そのくびって、よもすがらアラバのみちき、

4:8 イシボセテのくびをヘブロンにいるダビデのもとにたずさえてっておうった、「あなたのいのちもとめたあなたのてきサウルのイシボセテのくびです。しゅはきょう、わがきみおうのためにサウルとそのすえとに報復ほうふくされました」。

4:9 ダビデはベロテびとリンモンのレカブとその兄弟きょうだいバアナにこたえた、「わたしのいのちを、もろもろの苦難くなんからすくわれたしゅきておられる。

4:10 わたしはかつて、ひとがわたしにげて、『よ、サウルはんだ』とって、みずからいおとずれをつたえるものおもっていたものとらえてチクラグでころし、そのおとずれにむくいたのだ。

4:11 悪人あくにんただしいひとをそのいえゆかうえころしたときは、なおさらのことだ。いまわたしが、かれながしたつみむくい、あなたがたを、このからほろぼさないでおくであろうか」。

4:12 そしてダビデは若者わかものたちにめいじたので、若者わかものたちはかれらをころし、その手足てあしはなし、ヘブロンのいけのほとりでけた。人々ひとびとはイシボセテのくびってって、ヘブロンにあるアブネルのはかほうむった。 

第5章 

5:1 イスラエルのすべての部族ぶぞくはヘブロンにいるダビデのもとにきてった、「われわれは、あなたの骨肉こつにくです。

5:2 さきにサウルがわれわれのおうであったときにも、あなたはイスラエルをひきいて出入でいりされました。そしてしゅはあなたに、『あなたはわたしのたみイスラエルをぼくするであろう。またあなたはイスラエルのきみとなるであろう』とわれました」。

5:3 このようにイスラエルの長老ちょうろうたちがみな、ヘブロンにいるおうのもとにきたので、ダビデおうはヘブロンでしゅまえかれらと契約けいやくむすんだ。そしてかれらはダビデにあぶらそそいでイスラエルのおうとした。

5:4 ダビデはおうとなったとき三十さいで、四十ねんあいだおさめた。

5:5 すなわちヘブロンで七ねん六かげつユダをおさめ、またエルサレムで三十三ねんぜんイスラエルとユダをおさめた。

5:6 おうとその従者じゅうしゃたちとはエルサレムへって、その住民じゅうみんエブスびとをめた。エブスびとはダビデにった、「あなたはけっして、ここにることはできない。かえって、めしいやあしなえでも、あなたをはらうであろう」。かれらが「ダビデはここにることはできない」とおもったからである。

5:7 ところがダビデはシオンの要害ようがいった。これがダビデのまちである。

5:8 そのダビデは、「だれでもエブスびとをとうとするひとは、みずをくみげる縦穴たてあなのぼってって、ダビデがこころにくんでいるあしなえやめしいをて」とった。それゆえに人々ひとびとは、「めしいやあしなえは、みやにはいってはならない」といならわしている。

5:9 ダビデはその要害ようがいんで、これをダビデのまちづけた。またダビデはミロからうち周囲しゅうい城壁じょうへききずいた。

5:10 こうしてダビデはますますおおいなるものとなり、かつ万軍ばんぐんかみしゅかれともにおられた。

5:11 ツロのおうヒラムはダビデに使者ししゃをつかわして、香柏こうはくおよび大工だいく石工いしくおくった。かれらはダビデのためにいえてた。

5:12 そしてダビデはしゅ自分じぶんかたててイスラエルのおうとされたこと、しゅがそのたみイスラエルのためにその王国おうこくおこされたことをさとった。

5:13 ダビデはヘブロンからきてのち、さらにエルサレムでつまとそばめをれたので、むすことむすめがまたダビデにうまれた。

5:14 エルサレムでかれうまれたものつぎのとおりである。シャンムア、ショバブ、ナタン、ソロモン、

5:15 イブハル、エリシュア、ネペグ、ヤピア、

5:16 エリシャマ、エリアダ、およびエリペレテ。

5:17 さてペリシテびとは、ダビデがあぶらそそがれてイスラエルのおうになったことをき、みなのぼってきてダビデをさがしたが、ダビデはそれをいて要害ようがいくだってった。

5:18 ペリシテびとはきて、レパイムのたにひろがっていた。

5:19 ダビデはしゅうてった、「ペリシテびとにかってのぼるべきでしょうか。あなたはかれらをわたしのわたされるでしょうか」。しゅはダビデにわれた、「のぼるがよい。わたしはかならずペリシテびとをあなたのわたすであろう」。

5:20 そこでダビデはバアル・ペラジムへって、かれらをそのところやぶり、そしてった、「しゅは、やぶみずのように、てきをわたしのまえやぶられた」。それゆえにそのところはバアル・ペラジムとばれている。

5:21 ペリシテびとはそのところかれらの偶像ぐうぞうててったので、ダビデとその従者じゅうしゃたちはそれをはこった。

5:22 ペリシテびとが、ふたたびのぼってきて、レパイムのたにひろがったので、

5:23 ダビデはしゅうたが、しゅわれた、「のぼってはならない。かれらのうしろにまわり、バルサムのまえからかれらをおそいなさい。

5:24 バルサムのうえ行進こうしんおときこえたならば、あなたはふるたなければならない。そのときしゅがあなたのまえて、ペリシテびとの軍勢ぐんぜいたれるからである」。

5:25 ダビデは、しゅめいじられたようにして、ペリシテびとをち、ゲバからゲゼルにおよんだ。 

第6章 

6:1 ダビデはふたたびイスラエルのえりきのもの三万にんをことごとくあつめた。

6:2 そしてダビデはって、自分じぶんともにいるすべてのたみともにバアレ・ユダへって、かみはこをそこからかきのぼろうとした。このはこはケルビムのうえしておられる万軍ばんぐんしゅをもってばれている。

6:3 かれらはかみはこあたらしいくるませて、やまうえにあるアビナダブのいえからはこした。

6:4 アビナダブのたち、ウザとアヒオとがかみはこせたあたらしいくるま指揮しきし、ウザはかみはこのかたわらに沿い、アヒオははこまえすすんだ。

6:5 ダビデとイスラエルの全家ぜんかこと立琴たてごとつづみすずとシンバルとをもってうたをうたい、ちからをきわめて、しゅまえおどった。

6:6 かれらがナコンのにきたとき、ウザはかみはこべて、それをおさえた。うしがつまずいたからである。

6:7 するとしゅはウザにかっていかりをはっし、かれはこべたので、かれをそのたれた。かれかみはこのかたわらでんだ。

6:8 しゅがウザをたれたので、ダビデはいかった。そのところ今日こんにちまでペレヅ・ウザとばれている。

6:9 そのダビデはしゅおそれてった、「どうしてしゅはこがわたしのところることができようか」。

6:10 ダビデはしゅはこをダビデのまちれることをこのまず、これをうつしてガテびとオベデエドムのいえはこばせた。

6:11 かみはこはガテびとオベデエドムのいえに三かげつとどまった。しゅはオベデエドムとその全家ぜんか祝福しゅくふくされた。

6:12 しかしダビデおうは、「しゅかみはこのゆえに、オベデエドムのいえとそのすべての所有しょゆう祝福しゅくふくされている」とき、ダビデはって、よろこびをもって、かみはこをオベデエドムのいえからダビデのまちにかきのぼった。

6:13 しゅはこをかくものが六すすんだとき、ダビデはうしえたもの犠牲ぎせいとしてささげた。

6:14 そしてダビデはちからをきわめて、しゅはこまえおどった。そのときダビデは亜麻あまぬののエポデをつけていた。

6:15 こうしてダビデとイスラエルの全家ぜんかとは、よろこびのさけびと角笛つのぶえおとをもって、かみはこをかきのぼった。

6:16 しゅはこがダビデのまちにはいったとき、サウルのむすめミカルはまどからながめ、ダビデおうしゅまえおどるのをて、こころのうちにダビデをさげすんだ。

6:17 人々ひとびとしゅはこをかきれて、ダビデがそのためにった天幕てんまくなかのその場所ばしょいた。そしてダビデは燔祭はんさい酬恩祭しゅうおんさいしゅまえにささげた。

6:18 ダビデは燔祭はんさい酬恩祭しゅうおんさいをささげおわったとき万軍ばんぐんしゅによってたみ祝福しゅくふくした。

6:19 そしてすべてのたみ、イスラエルのぜん民衆みんしゅうに、おとこにもおんなにも、おのおのパンの菓子かしにく一きれ、ほしぶどう一かたまりをあたえた。こうしてたみはみなおのおのそのいえかえった。

6:20 ダビデが家族かぞく祝福しゅくふくしようとしてかえってきたとき、サウルのむすめミカルはダビデを出迎でむかえてった、「きょうイスラエルのおうはなんと威厳いげんのあったことでしょう。いたずらものが、はじらず、そのあらわすように、きょう家来けらいたちのはしためらのまえ自分じぶんあらわされました」。

6:21 ダビデはミカルにった、「あなたのちちよりも、またその全家ぜんかよりも、むしろわたしをえらんで、しゅたみイスラエルのきみとせられたしゅまえおどったのだ。わたしはまたしゅまえおどるであろう。

6:22 わたしはこれよりももっとかろんじられるようにしよう。そしてあなたのにはいやしめられるであろう。しかしわたしは、あなたがさきにった、はしためたちにほまれるであろう」。

6:23 こうしてサウルのむすめミカルはまで子供こどもがなかった。 

第7章 

7:1 さて、おう自分じぶんいえみ、またしゅ周囲しゅういてきをことごとく退しりぞけてかれ安息あんそくたまわったとき

7:2 おう預言者よげんしゃナタンにった、「よ、いまわたしは、香柏こうはくいえんでいるが、かみはこはなお幕屋まくやのうちにある」。

7:3 ナタンはおうった、「しゅがあなたとともにおられますから、って、すべてあなたのこころにあるところをおこないなさい」。

7:4 そのしゅ言葉ことばがナタンにのぞんでった、

7:5 「って、わたしのしもべダビデにいなさい、『しゅはこうおおせられる。あなたはわたしのいえてようとするのか。

7:6 わたしはイスラエルの人々ひとびとをエジプトからみちびしたから今日こんにちまで、いえまわず、天幕てんまくをすまいとしてあゆんできた。

7:7 わたしがイスラエルのすべての人々ひとびとともあゆんだすべてのところで、わたしがわたしのたみイスラエルをぼくすることをめいじたイスラエルのさばきづかさのひとりに、ひとことでも「どうしてあなたがたはわたしのために香柏こうはくいえてないのか」と、ったことがあるであろうか』。

7:8 それゆえ、いまあなたは、わたしのしもべダビデにこういなさい、『万軍ばんぐんしゅはこうおおせられる。わたしはあなたを牧場まきばから、ひつじしたがっているところからって、わたしのたみイスラエルのきみとし、

7:9 あなたがどこへくにも、あなたとともにおり、あなたのすべてのてきをあなたのまえからった。わたしはまた地上ちじょうおおいなるもののようなおおいなるをあなたにさせよう。

7:10 そしてわたしのたみイスラエルのために一つのところさだめて、かれらをえつけ、かれらを自分じぶんところませ、かさねてうごくことのないようにするであろう。

7:11 またまえのように、わたしがわたしのたみイスラエルのうえにさばきづかさをてたからこのかたのように、悪人あくにんかさねてこれをなやますことはない。わたしはあなたのもろもろのてき退しりぞけて、あなたに安息あんそくあたえるであろう。しゅはまた「あなたのためにいえ つくる」とおおせられる。

7:12 あなたがちて、先祖せんぞたちとともねむとき、わたしはあなたのからを、あなたのあとにてて、その王国おうこくかたくするであろう。

7:13 かれはわたしののためにいえてる。わたしはながくそのくにくらいかたくしよう。

7:14 わたしはかれちちとなり、かれはわたしのとなるであろう。もしかれつみおかすならば、わたしはひとのつえとひとのむちをもってかれらす。

7:15 しかしわたしはわたしのいつくしみを、わたしがあなたのまえからのぞいたサウルからったように、かれからはらない。

7:16 あなたのいえ王国おうこくはわたしのまえながたもつであろう。あなたのくらいながかとうせられる』」。

7:17 ナタンはすべてこれらの言葉ことばのように、またすべてこのまぼろしのようにダビデにかたった。

7:18 そのときダビデおうは、はいってしゅまえしてった、「しゅなるかみよ、わたしがだれ、わたしのいえなにであるので、あなたはこれまでわたしをみちびかれたのですか。

7:19 しゅなるかみよ、これはなおあなたのにはちいさいことです。しゅなるかみよ、あなたはまたしもべのいえの、はるかのちことかたって、きたるべき代々よよのことをしめされました。

7:20 ダビデはこのうえなにをあなたにもうしあげることができましょう。しゅなるかみよ、あなたはしもべをっておられるのです。

7:21 あなたの約束やくそくのゆえに、またあなたのこころしたがって、あなたはこのもろもろのおおいなることおこない、しもべにそれをらせられました。

7:22 しゅなるかみよ、あなたは偉大いだいです。それは、われわれがすべてみみいたところによれば、あなたのようなものはなく、またあなたのほかにかみはないからです。

7:23 のどの国民こくみんが、あなたのたみイスラエルのようでありましょうか。これはかみって、自分じぶんのためにあがなってたみとし、みずからのをあげられたもの、またかれらのためにおおいなるおそるべきことをなし、そのたみまえからくにびととその神々かみがみとをされたものです。

7:24 そしてあなたのたみイスラエルを永遠えいえんにあなたのたみとして、自分じぶんのために、さだめられました。しゅよ、あなたはかれらのかみとなられたのです。

7:25 しゅなるかみよ、いまあなたが、しもべとしもべのいえとについてかたられた言葉ことばながかとうして、あなたのわれたとおりにしてください。

7:26 そうすれば、あなたのはとこしえにあがめられて、『万軍ばんぐんしゅはイスラエルのかみである』とわれ、あなたのしもべダビデのいえは、あなたのまえかたつことができましょう。

7:27 万軍ばんぐんしゅ、イスラエルのかみよ、あなたはしもべにしめして、『おまえのためにいえてよう』とわれました。それゆえ、しもべはこのいのりをあなたにささげる勇気ゆうきたのです。

7:28 しゅなるかみよ、あなたはかみにましまし、あなたの言葉ことば真実しんじつです。あなたはこのことをしもべに約束やくそくされました。

7:29 どうぞいま、しもべのいえ祝福しゅくふくし、あなたのまえながくつづかせてくださるように。しゅなるかみよ、あなたがそれをわれたのです。どうぞあなたの祝福しゅくふくによって、しもべのいえがながく祝福しゅくふくされますように」。 

第8章 

8:1 こののちダビデはペリシテびとをって、これを征服せいふくした。ダビデはまたペリシテびとのからメテグ・アンマをった。

8:2 かれはまたモアブをち、かれらをさせ、なわをもってかれらをはかった。すなわち二すじのなわをもってころすべきものはかり、一すじのなわをもってかしておくものはかった。そしてモアブびとは、ダビデのしもべとなって、みつぎをおさめた。

8:3 ダビデはまたレホブのであるゾバのおうハダデゼルが、ユフラテかわのほとりにその勢力せいりょく回復かいふくしようとしてくところをった。

8:4 そしてダビデはかれから騎兵きへい千七百にん歩兵ほへい二万にんった。ダビデはまた一百の戦車せんしゃうまのこして、そのほかの戦車せんしゃうまはみなそのあしすじった。

8:5 ダマスコのスリヤびとが、ゾバのおうハダデゼルをたすけるためにきたので、ダビデはスリヤびと二万二千にんころした。

8:6 そしてダビデはダマスコのスリヤに守備しゅびたいいた。スリヤびとは、ダビデのしもべとなって、みつぎをおさめた。しゅはダビデにすべてそのところ勝利しょうりあたえられた。

8:7 ダビデはハダデゼルのしもべらがっていたきんたてうばって、エルサレムにってきた。

8:8 ダビデおうはまたハダデゼルのまち、ベタとベロタイから、ひじょうにおおくの青銅せいどうった。

8:9 ときにハマテのおうトイは、ダビデがハダデゼルのすべての軍勢ぐんぜいやぶったことをき、

8:10 そのヨラムをダビデおうのもとにつかわして、かれにあいさつし、かつしゅくべさせた。ハダデゼルはかつてしばしばトイとたたかいをまじえたが、ダビデがハダデゼルとたたかってこれをやぶったからである。ヨラムがぎんうつわきんうつわ青銅せいどううつわたずさえてきたので、

8:11 ダビデおう征服せいふくしたすべての国民こくみんからってささげた金銀きんぎんともにこれらをもしゅにささげた。

8:12 すなわちエドム、モアブ、アンモンの人々ひとびと、ペリシテびと、アマレクからもの、およびゾバのおうレホブのハダデゼルからたぶんどりものともにこれをささげた。

8:13 こうしてダビデは名声めいせいた。かれかえってきてからしおたにでエドムびと一万八千にんころした。

8:14 そしてエドムに守備しゅびたいいた。すなわちエドムのぜん守備しゅびたいき、エドムびとはみなダビデのしもべとなった。しゅはダビデにすべてそのところ勝利しょうりあたえられた。

8:15 こうしてダビデはイスラエルのぜんおさめ、そのすべてのたみ正義せいぎ公平こうへいおこなった。

8:16 ゼルヤのヨアブはぐんちょう、アヒルデのヨシャパテは史官しかん

8:17 アヒトブのザドクとアビヤタルのアヒメレクは祭司さいし、セラヤは書記官しょきかん

8:18 エホヤダのベナヤはケレテびととペレテびとのちょう、ダビデのたちは祭司さいしであった。 

第9章 

9:1 ときにダビデはった、「サウルのいえひとで、なおのこっているものがあるか。わたしはヨナタンのために、そのひとめぐみをほどこそう」。

9:2 さて、サウルのいえにヂバというのしもべがあったが、人々ひとびとかれをダビデのもとにせたので、おうかれった、「あなたがヂバか」。かれった、「しもべがそうです」。

9:3 おうった、「サウルのいえひとがまだのこっていませんか。わたしはそのひとかみめぐみをほどこそうとおもう」。ヂバはおうった、「ヨナタンのがまだおります。あしなえです」。

9:4 おうかれった、「そのひとはどこにいるのか」。ヂバはおうった、「かれはロ・デバルのアンミエルのマキルのいえにおります」。

9:5 ダビデおうひとをつかわして、ロ・デバルのアンミエルのマキルのいえから、かれれてこさせた。

9:6 サウルのヨナタンのであるメピボセテはダビデのもとにきて、ひれしてはいした。ダビデが、「メピボセテよ」とったので、かれは、「しもべは、ここにおります」とこたえた。

9:7 ダビデはかれった、「おそれることはない。わたしはかならずあなたのちちヨナタンのためにあなたにめぐみをほどこしましょう。あなたのちちサウルのをみなあなたにかえします。またあなたはつねにわたしの食卓しょくたく食事しょくじをしなさい」。

9:8 かれはいしてった、「あなたは、しもべをなんとおぼしめして、んだいぬのようなわたしをかえりみられるのですか」。

9:9 おうはサウルのしもべヂバをんでった、「すべてサウルとそのいえぞくするものみな、わたしはあなたの主人しゅじんあたえた。

9:10 あなたと、あなたのたちと、しもべたちとは、かれのためにたがやして、あなたの主人しゅじんべる食物しょくもつれなければならない。しかしあなたの主人しゅじんメピボセテはいつもわたしの食卓しょくたく食事しょくじをするであろう」。ヂバには十五にんおとこと二十にんのしもべがあった。

9:11 ヂバはおうった、「すべておうわが主君しゅくんがしもべにめいじられるとおりに、しもべはいたしましょう」。こうしてメピボセテはおうのひとりのようにダビデの食卓しょくたく食事しょくじをした。

9:12 メピボセテにはちいさいがあって、をミカといった。そしてヂバのいえんでいるものはみなメピボセテのしもべとなった。

9:13 メピボセテはエルサレムにんだ。かれがいつもおう食卓しょくたく食事しょくじをしたからである。かれ両足りょうあしともに、なえていた。 

第10章 

10:1 こののちアンモンの人々ひとびとおうんで、そのハヌンがこれにかわっておうとなった。

10:2 そのときダビデはった、「わたしはナハシのハヌンに、そのちちがわたしにめぐみをほどこしたように、めぐみをほどこそう」。そしてダビデはかれを、そのちちのゆえになぐさめようと、しもべをつかわした。ダビデのしもべたちはアンモンの人々ひとびとったが、

10:3 アンモンの人々ひとびとのつかさたちはその主君しゅくんハヌンにった、「ダビデがなぐさめるものをあなたのもとにつかわしたのはかれがあなたのちちたっとぶためだとおもわれますか。ダビデがあなたのもとに、しもべたちをつかわしたのは、このまちをうかがい、それをさぐって、ほろぼすためではありませんか」。

10:4 そこでハヌンはダビデのしもべたちをとらえ、おのおの、ひげのなかばをそりおとし、その着物きものなかほどからこしところまでにして、かれらをかえらせた。

10:5 人々ひとびとがこれをダビデにげたので、ダビデはひとをつかわしてかれらをむかえさせた。その人々ひとびとはひじょうにじたからである。そこでおうった、「ひげがのびるまでエリコにとどまって、そののちかえりなさい」。

10:6 アンモンの人々ひとびと自分じぶんたちがダビデににくまれていることがわかったので、ひとをつかわして、ベテ・レホブのスリヤびととゾバのスリヤびととの歩兵ほへい二万にんおよびマアカのおうとその一千にん、トブのひと一万二千にんやとれた。

10:7 ダビデはそれをいて、ヨアブと勇士ゆうしぜんぐんをつかわしたので、

10:8 アンモンの人々ひとびとて、もん入口いりぐちたたかいのそなえをした。ゾバとレホブとのスリヤびと、およびトブとマアカの人々ひとびとべつにいた。

10:9 ヨアブはたたかいが前後ぜんごから自分じぶんせまってくるのをて、イスラエルのえりきの兵士へいしのうちからえらんで、これをスリヤびとにたいしてそなえ、

10:10 そのほかのたみ自分じぶん兄弟きょうだいアビシャイのにわたして、アンモンの人々ひとびとたいしてそなえさせ、

10:11 そしてった、「もしスリヤびとがわたしにごわいときは、わたしをたすけてください。もしアンモンの人々ひとびとがあなたにごわいときは、ってあなたをたすけましょう。

10:12 いさましくしてください。われわれのたみのため、われわれのかみ町々まちまちのため、いさましくしましょう。どうぞしゅいとおもわれることをされるように」。

10:13 ヨアブが自分じぶん一緒いっしょにいるたみともに、スリヤびとにかってたたかおうとしてちかづいたとき、スリヤびとはかれまえからげた。

10:14 アンモンの人々ひとびとはスリヤびとがげるのをて、かれらもまたアビシャイのまえからげてまちにはいった。そこでヨアブはアンモンの人々ひとびとつことをやめてエルサレムにかえった。

10:15 しかしスリヤびとは自分じぶんたちのイスラエルにやぶられたのをて、ともあつまった。

10:16 そしてハダデゼルはひとをつかわし、ユフラテかわこうがわにいるスリヤびとをひきいてヘラムにこさせた。ハダデゼルのぐんちょうショバクがこれをひきいた。

10:17 このことがダビデにきこえたので、かれはイスラエルをことごとくあつめ、ヨルダンをわたってヘラムにきた。スリヤびとはダビデにかってそなえをしてかれたたかった。

10:18 しかしスリヤびとがイスラエルのまえからげたので、ダビデはスリヤびとの戦車せんしゃへい七百、騎兵きへい四万をころし、またそのぐんちょうショバクをったので、かれはそのところんだ。

10:19 ハダデゼルの家来けらいであったおうたちはみな、自分じぶんたちがイスラエルにやぶられたのをて、イスラエルとこうじ、これにつかえた。こうしてスリヤびとはおそれてふたたびアンモンの人々ひとびとたすけることをしなかった。 

第11章 

11:1 はるになって、おうたちがたたかいにるにおよんで、ダビデはヨアブおよび自分じぶんともにいる家来けらいたち、ならびにイスラエルのぜんぐんをつかわした。かれらはアンモンの人々ひとびとほろぼし、ラバを包囲ほういした。しかしダビデはエルサレムにとどまっていた。

11:2 さて、ある夕暮ゆうぐれ、ダビデはゆかからて、おういえ屋上おくじょうあるいていたが、屋上おくじょうから、ひとりのおんながからだをあらっているのをた。そのおんな非常ひじょううつくしかった。

11:3 ダビデはひとをつかわしてそのおんなのことをさぐらせたが、あるひとった、「これはエリアムのむすめで、ヘテびとウリヤのつまバテシバではありませんか」。

11:4 そこでダビデは使者ししゃをつかわして、そのおんなれてきた。おんなかれところにきて、かれはそのおんなた。(おんなけがれをきよめていたのである。)こうしておんなはそのいえかえった。

11:5 おんな妊娠にんしんしたので、ひとをつかわしてダビデにげてった、「わたしはをはらみました」。

11:6 そこでダビデはヨアブに、「ヘテびとウリヤをわたしのところにつかわせ」とってやったので、ヨアブはウリヤをダビデのところにつかわした。

11:7 ウリヤがダビデのところにきたので、ダビデは、ヨアブはどうしているか、たみはどうしているか、たたかいはうまくいっているかとたずねた。

11:8 そしてダビデはウリヤにった、「あなたのいえって、あしあらいなさい」。ウリヤはおういえていったが、おうおくものかれのちしたがった。

11:9 しかしウリヤはおういえ入口いりぐち主君しゅくん家来けらいたちとともて、自分じぶんいえかえらなかった。

11:10 人々ひとびとがダビデに、「ウリヤは自分じぶんいえかえりませんでした」とげたので、ダビデはウリヤにった、「たびからかえってきたのではないか。どうしていえかえらなかったのか」。

11:11 ウリヤはダビデにった、「かみはこも、イスラエルも、ユダも、小屋こやなかみ、わたしの主人しゅじんヨアブと、わが主君しゅくん家来けらいたちがのおもてにじんっているのに、わたしはどうしていえかえってみし、つまることができましょう。あなたはきておられます。あなたのたましいきています。わたしはこのことをいたしません」。

11:12 ダビデはウリヤにった、「きょうも、ここにとどまりなさい。わたしはあす、あなたをらせましょう」。そこでウリヤはそのつぎエルサレムにとどまった。

11:13 ダビデはかれまねいて自分じぶんまえみさせ、かれわせた。夕暮ゆうぐれになってかれていって、そのゆかに、主君しゅくん家来けらいたちとともた。そして自分じぶんいえにはくだってかなかった。

11:14 あさになってダビデはヨアブにあてた手紙てがみき、ウリヤのたくしてそれをおくった。

11:15 かれはその手紙てがみに、「あなたがたはウリヤをはげしいたたかいの最前線さいぜんせんし、かれうしろから退しりぞいて、かれ討死うちじにさせよ」といた。

11:16 ヨアブはまちかこんでいたので、勇士ゆうしたちがいるとっていた場所ばしょにウリヤをいた。

11:17 まち人々ひとびとてきてヨアブとたたかったので、たみのうち、ダビデの家来けらいたちにも、たおれるものがあり、ヘテびとウリヤもんだ。

11:18 ヨアブはひとをつかわしてたたかいのことをつぶさにダビデにげた。

11:19 ヨアブはその使者ししゃめいじてった、「あなたがたたかいのことをつぶさにおうかたおわったとき、

11:20 もしおういかりをおこして、『あなたがたはなぜたたかおうとしてそんなにまちちかづいたのか。かれらが城壁じょうへきうえからるのをらなかったのか。

11:21 エルベセテのアビメレクをったのはだれか。ひとりのおんな城壁じょうへきうえからいしうすの上石うわいしげてかれをテベツでころしたのではなかったか。あなたがたはなぜそんなに城壁じょうへきちかづいたのか』とわれたならば、そのときあなたは、『あなたのしもべ、ヘテびとウリヤもまたにました』といなさい」。

11:22 こうして使者ししゃき、ダビデのもとにきて、ヨアブがいつかわしたことをことごとくげた。

11:23 使者ししゃはダビデにった、「てきはわれわれよりも有利ゆうり位置いちめ、てきてわれわれをめましたが、われわれはまち入口いりぐちまでかれらをかえしました。

11:24 そのとき射手しゃしゅどもは城壁じょうへきからあなたの家来けらいたちをましたので、おう家来けらいのあるものに、また、あなたの家来けらいヘテびとウリヤもにました」。

11:25 ダビデは使者ししゃった、「あなたはヨアブにこういなさい、『このこと心配しんぱいすることはない。つるぎはこれをもかれをもおなじくほろぼすからである。つよまちめてたたかい、それをおとしなさい』と。そしてヨアブをはげましなさい」。

11:26 ウリヤのつまおっとウリヤがんだことをいて、おっとのためにかなしんだ。

11:27 そのぎたとき、ダビデはひとをつかわして彼女かのじょ自分じぶんいえれた。彼女かのじょかれつまとなっておとこんだ。しかしダビデがしたこのことしゅいからせた。 

第12章 

12:1 しゅはナタンをダビデにつかわされたので、かれはダビデのところにきてった、「あるまちにふたりのひとがあって、ひとりはみ、ひとりはまずしかった。

12:2 んでいるひと非常ひじょうおおくのひつじうしっていたが、

12:3 まずしいひと自分じぶんった一とうちいさいめす小羊こひつじのほかはなにっていなかった。かれがそれをそだてたので、その小羊こひつじかれおよびかれ子供こどもたちととも成長せいちょうし、かれ食物しょくもつべ、かれのわんからみ、かれのふところでて、かれにとってはむすめのようであった。

12:4 ときに、ひとりのたびびとが、そのんでいるひとのもとにきたが、自分じぶんひつじまたはうしのうちから一いっとうって、自分じぶんところにきたたびびとのために調理ちょうりすることをしみ、そのまずしいひと小羊こひつじって、これを自分じぶんところにきたひとのために調理ちょうりした」。

12:5 ダビデはそのひとことをひじょうにいかってナタンにった、「しゅきておられる。このことをしたそのひとぬべきである。

12:6 かつそのひとはこのことをしたため、またあわれまなかったため、その小羊こひつじを四ばいにしてつぐなわなければならない」。

12:7 ナタンはダビデにった、「あなたがそのひとです。イスラエルのかみしゅはこうおおせられる、『わたしはあなたにあぶらそそいでイスラエルのおうとし、あなたをサウルのからすくいだし、

12:8 あなたに主人しゅじんいえあたえ、主人しゅじんつまたちをあなたのふところにあたえ、またイスラエルとユダのいえをあなたにあたえた。もしすくなかったならば、わたしはもっとおおくのものをあなたにくわえたであろう。

12:9 どうしてあなたはしゅ言葉ことばかろんじ、そのまえ悪事あくじをおこなったのですか。あなたはつるぎをもってヘテびとウリヤをころし、そのつまをとって自分じぶんつまとした。すなわちアンモンの人々ひとびとのつるぎをもってかれころした。

12:10 あなたがわたしをかろんじてヘテびとウリヤのつまをとり、自分じぶんつまとしたので、つるぎはいつまでもあなたのいえはなれないであろう』。

12:11 しゅはこうおおせられる、『よ、わたしはあなたのいえからあなたのうえわざわいおこすであろう。わたしはあなたのまえであなたのつまたちをって、となりびとにあたえるであろう。そのひとはこの太陽たいようまえつまたちと一緒いっしょるであろう。

12:12 あなたはひそかにそれをしたが、わたしはぜんイスラエルのまえと、太陽たいようまえにこのことをするのである』」。

12:13 ダビデはナタンにった、「わたしはしゅつみをおかしました」。ナタンはダビデにった、「しゅもまたあなたのつみのぞかれました。あなたはぬことはないでしょう。

12:14 しかしあなたはこのおこないによっておおいにしゅあなどったので、あなたにうまれる子供こどもはかならずぬでしょう」。

12:15 こうしてナタンはいえかえった。

さてしゅは、ウリヤのつまがダビデにんだたれたので、病気びょうきになった。

12:16 ダビデはそののためにかみ嘆願たんがんした。すなわちダビデは断食だんじきして、へやにはいり終夜しゅうやした。

12:17 ダビデのいえ長老ちょうろうたちは、かれのかたわらにってかれからおこそうとしたが、かれきようとはせず、またかれらと一緒いっしょ食事しょくじをしなかった。

12:18 七日なぬかにそのんだ。ダビデの家来けらいたちはそのんだことをダビデにげるのをおそれた。それはかれらが、「よ、のなおきているあいだに、われわれがかれかたったのにかれはその言葉ことばきいれなかった。どうしてかれにそのんだことをげることができようか。かれみずからをがいするかもれない」とおもったからである。

12:19 しかしダビデは、家来けらいたちがたがいにささやきうのをて、そのんだのをさとり、家来けらいたちにった、「んだのか」。かれらはった、「なれました」。

12:20 そこで、ダビデはからがり、あらい、あぶらをぬり、その着物きものえて、しゅいえにはいってはいした。そののち自分じぶんいえき、もとめて自分じぶんのために食物しょくもつそなえさせてべた。

12:21 家来けらいたちはかれった、「あなたのなさったこのことはなんでしょうか。あなたはきているあいだはそののために断食だんじきしてかれました。しかしぬと、あなたはきて食事しょくじをなさいました」。

12:22 ダビデはった、「きているあいだに、わたしが断食だんじきしていたのは、『しゅがわたしをあわれんで、このかしてくださるかもれない』とおもったからです。

12:23 しかしいまんだので、わたしはどうして断食だんじきしなければならないでしょうか。わたしはふたたかれをかえらせることができますか。わたしはかれところくでしょうが、かれはわたしのところかえってこないでしょう」。

12:24 ダビデはつまバテシバをなぐさめ、彼女かのじょところにはいって、彼女かのじょともたので、彼女かのじょおとこんだ。ダビデはそのをソロモンとづけた。しゅはこれをあいされた。

12:25 そして預言者よげんしゃナタンをつかわし、めいじてそのをエデデアとばせられた。

12:26 さてヨアブはアンモンの人々ひとびとのラバをめておうまちった。

12:27 ヨアブは使者ししゃをダビデにつかわしてった、「わたしはラバをめてみずまちりました。

12:28 あなたはいまのこりのたみあつめ、このまちかってじんをしき、これをりなさい。わたしがこのまちって、ひとがわたしのをもって、これをぶようにならないためです」。

12:29 そこでダビデはたみをことごとくあつめてラバへき、めてこれをった。

12:30 そしてダビデはかれらのおうかんむりをそのあたまからりはなした。それはきんおもさは一タラントであった。宝石ほうせきがはめてあり、それをダビデのあたまいた。ダビデはそのまちからぶんどりもの非常ひじょうおおした。

12:31 またダビデはそのうちのたみして、かれらをのこぎりや、てつのつるはし、てつのおのを使つか仕事しごとにつかせ、また、れんがつくりの労役ろうえきにつかせた。かれはアンモンの人々ひとびとのすべてのまちにこのようにした。そしてダビデとたみとはみなエルサレムにかえった。 

第13章 

13:1 さてダビデのアブサロムにはをタマルといううつくしいいもうとがあったが、そののちダビデのアムノンはこれをこいした。

13:2 アムノンはいもうとタマルのためになやんでついにわずらった。それはタマルが処女しょじょであって、アムノンは彼女かのじょ何事なにごともすることができないとおもったからである。

13:3 ところがアムノンにはひとりのともだちがあった。をヨナダブといい、ダビデの兄弟きょうだいシメアのである。ヨナダブはひじょうにかしこひとであった。

13:4 かれはアムノンにった、「王子おうじよ、あなたは、どうしてあさごとに、そんなにやせおとろえるのですか。わたしにはなさないのですか」。アムノンはかれった、「わたしは兄弟きょうだいアブサロムのいもうとタマルをこいしているのです」。

13:5 ヨナダブはかれった、「あなたはやまいいつわり、寝床ねどこよこたわって、あなたのちちがきてあなたをるときかれいなさい、『どうぞ、わたしのいもうとタマルをこさせ、わたしのところ食物しょくもつはこばせてください。そして彼女かのじょがわたしのまえ食物しょくもつをととのえ、彼女かのじょからわたしがべることのできるようにさせてください』」。

13:6 そこでアムノンはよこになってやまいいつわったが、おうがきてかれとき、アムノンはおうった、「どうぞわたしのいもうとタマルをこさせ、わたしのまえで二つの菓子かしつくらせて、彼女かのじょからわたしがべることのできるようにしてください」。

13:7 ダビデはタマルのいえひとをつかわしてわせた、「あなたのあにアムノンのいえって、かれのために食物しょくもつをととのえなさい」。

13:8 そこでタマルはそのあにアムノンのいえったところ、アムノンはていた。タマルはこなって、これをこね、かれまえで、菓子かしつくり、その菓子かしき、

13:9 なべをってかれまえにそれをあけた。しかしかれべることをこばんだ。そしてアムノンは、「みな、わたしをはなれててください」とったので、みなかれはなれてた。

13:10 アムノンはタマルにった、「食物しょくもつ寝室しんしつってきてください。わたしはあなたのからべます」。そこでタマルは自分じぶんつくった菓子かしをとって、寝室しんしつにはいりあにアムノンのところっていった。

13:11 タマルがかれべさせようとしてちかくにってったときかれはタマルをとらえて彼女かのじょった、「いもうとよ、て、わたしとなさい」。

13:12 タマルはった、「いいえ、あにうえよ、わたしをはずかしめてはなりません。このようなことはイスラエルではおこなわれません。このおろかなことをしてはなりません。

13:13 わたしのはじをわたしはどこへってくことができましょう。あなたはイスラエルのおろもののひとりとなるでしょう。それゆえ、どうぞおうはなしてください。おうがわたしをあなたにあたえないことはないでしょう」。

13:14 しかしアムノンは彼女かのじょうことをこうともせず、タマルよりもつよかったので、タマルをはずかしめてこれとともた。

13:15 それからアムノンは、ひじょうにふかくタマルをにくむようになった。彼女かのじょにくにくしみは、彼女かのじょこいしたこいよりもおおきかった。アムノンは彼女かのじょった、「って、きなさい」。

13:16 タマルはアムノンにった、「いいえ、あにうえよ、わたしをかえすことは、あなたがさきにわたしになさったことよりもおおきいあくです」。しかしアムノンは彼女かのじょうことをこうともせず、

13:17 かれつかえている若者わかものんでった、「このおんなをわたしのところからそとにおくりし、そのあとにざすがよい」。

13:18 このとき、タマルはながそでの着物きものていた。むかしおうひめたちの処女しょじょであるものはこのような着物きものたからである。アムノンのしもべは彼女かのじょそとして、そのあとにざした。

13:19 タマルははいあたまにかぶり、ていたながそでの着物きものき、あたまにのせて、さけびながらってった。

13:20 あにアブサロムは彼女かのじょった、「あにアムノンがあなたと一緒いっしょにいたのか。しかしいもうとよ、いまだまっていなさい。かれはあなたのあにです。このことこころにとめなくてよろしい」。こうしてタマルはあにアブサロムのいえさびしくんでいた。

13:21 ダビデおうはこれらのことをことごとくいて、ひじょうにいかった。

13:22 アブサロムはアムノンにいこともわるいこともかたることをしなかった。それはアムノンがアブサロムのいもうとタマルをはずかしめたので、アブサロムがかれにくんでいたからである。

13:23 まんねんのち、アブサロムはエフライムのちかくにあるバアル・ハゾルでひつじらせていたときおうたちをことごとくまねいた。

13:24 そしてアブサロムはおうのもとにきてった、「よ、しもべはひつじらせております。どうぞおうおう家来けらいたちも、しもべとともにきてください」。

13:25 おうはアブサロムにった、「いいえ、わがよ、われわれがみなってはならない。あなたの重荷おもにになるといけないから」。アブサロムはダビデにしいてねがった。しかしダビデはくことを承知しょうちせずかれ祝福しゅくふくあたえた。

13:26 そこでアブサロムはった、「それでは、どうぞわたしのあにアムノンをわれわれとともかせてください」。おうかれった、「どうしてかれがあなたとともかなければならないのか」。

13:27 しかしアブサロムはかれにしいてねがったので、ついにアムノンとおうたちをみな、アブサロムとともかせた。

13:28 そこでアブサロムは若者わかものたちにめいじてった、「アムノンがさけんで、こころたのしくなったときすまし、わたしがあなたがたに、『アムノンをて』とときかれころしなさい。おそれることはない。わたしがめいじるのではないか。雄々おおしくしなさい。いさましくしなさい」。

13:29 アブサロムの若者わかものたちはアブサロムのめいじたようにアムノンにおこなったので、おうたちはみなって、おのおのその騾馬らばってげた。

13:30 かれらがまだかないうちに、「アブサロムはおうたちをことごとくころして、ひとりものこっているものがない」というらせがダビデにたっしたので、

13:31 おうち、その着物きものいて、した。そのかたわらにっていた家来けらいたちもみなその着物きものいた。

13:32 しかしダビデの兄弟きょうだいシメアのヨナダブはった、「わがしゅよ、おうたちである若者わかものたちがみなころされたと、おかんがえになってはなりません。アムノンだけがんだのです。これはかれがアブサロムのいもうとタマルをはずかしめたから、アブサロムのいのちによってさだめられていたことなのです。

13:33 それゆえ、わがしゅおうよ、おうたちがみなんだとおもって、このことこころにとめられてはなりません。アムノンだけがんだのです」。

13:34 アブサロムはのがれた。とき見張みはりをしていた若者わかものをあげてると、やまのかたわらのホロナイムのみちからおおくのたみるのがえた。

13:35 ヨナダブはおうった、「よ、おうたちがきました。しもべのったとおりです」。

13:36 かれかたることをおわったときおうたちはきてこえをあげていた。おうもその家来けらいたちもみな非常ひじょうにはげしくいた。

13:37 しかしアブサロムはのがれて、ゲシュルのおうアミホデのタルマイのもとにった。ダビデは日々ひびそののためにかなしんだ。

13:38 アブサロムはのがれてゲシュルにき、三ねんあいだそこにいた。

13:39 おうこころに、アブサロムにうことを、せつにのぞんだ。アムノンはんでしまい、ダビデがかれのことはあきらめていたからである。