口語訳聖書(振り仮名付き)

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使徒しと行伝ぎょうでん

第19章    Ac-Audio 

19:1 アポロがコリントにいたとき、パウロは奥地おくちをとおってエペソにきた。そして、ある弟子でしたちに出会であって、

19:2 かれらに「あなたがたは、信仰しんこうにはいったときに、聖霊せいれいけたのか」とたずねたところ、「いいえ、聖霊せいれいなるものがあることさえ、いたことがありません」とこたえた。

19:3 「では、だれのによってバプテスマをけたのか」とかれがきくと、かれらは「ヨハネのによるバプテスマをけました」とこたえた。

19:4 そこで、パウロがった、「ヨハネは悔改くいあらためのバプテスマをさづけたが、それによって、自分じぶんのあとにるかた、すなわち、イエスをしんじるように、人々ひとびとすすめたのである」。

19:5 人々ひとびとはこれをいて、しゅイエスのによるバプテスマをけた。

19:6 そして、パウロがかれらのうえをおくと、聖霊せいれいかれらにくだり、それからかれらは異言いげんかたったり、預言よげんをしたりしした。

19:7 そのひとたちはみんなで十二にんほどであった。

19:8 それから、パウロは会堂かいどうにはいって、三かげつのあいだ、大胆だいたんかみくにについてろんじ、またすすめをした。

19:9 ところが、あるひとたちはこころをかたくなにして、しんじようとせず、会衆かいしゅうまえでこのみちをあしざまにったので、かれ弟子でしたちをれて、そのひとたちからはなれ、ツラノの講堂こうどう毎日まいにちろんじた。

19:10 それが二年間ねんかんつづいたので、アジヤにんでいるものは、ユダヤじんもギリシヤじんみなしゅことばいた。

19:11 かみは、パウロのによって、異常いじょうちからあるわざを次々つぎつぎになされた。

19:12 たとえば、人々ひとびとが、かれにつけているぬぐいや前掛まえかけをって病人びょうにんにあてると、その病気びょうきのぞかれ、悪霊あくれいくのであった。

19:13 そこで、ユダヤじんのまじないで、遍歴へんれきしているものたちが、悪霊あくれいにつかれているものにむかって、しゅイエスのをとなえ、「パウロのつたえているイエスによってめいじる。け」と、ためしにってみた。

19:14 ユダヤの祭司長さいしちょうスケワというものの七にんのむすこたちも、そんなことをしていた。

19:15 すると悪霊あくれいがこれにたいしてった、「イエスなら自分じぶんっている。パウロもわかっている。だが、おまえたちは、いったい何者なにものだ」。

19:16 そして、悪霊あくれいにつかれているひとが、かれらにびかかり、みんなをおさえつけてかしたので、かれらはきずったままはだかになって、そのいえした。

19:17 このことがエペソにむすべてのユダヤじんやギリシヤじんれわたって、みんな恐怖きょうふおそわれ、そして、しゅイエスのがあがめられた。

19:18 また信者しんじゃになったものおおぜいきて、自分じぶん行為こういちあけて告白こくはくした。

19:19 それから、魔術まじゅつおこなっていたおおくのものが、魔術まじゅつほんしてきては、みんなのまえてた。その値段ねだん総計そうけいしたところ、ぎん五万にものぼることがわかった。

19:20 このようにして、しゅことばはますますさかんにひろまり、またちからくわえていった。

19:21 これらのことがあったのち、パウロは御霊みたまかんじて、マケドニヤ、アカヤをとおって、エルサレムへ決心けっしんをした。そしてった、「わたしは、そこにったのち、ぜひローマをもなければならない」。

19:22 そこで、自分じぶんつかえているものなかから、テモテとエラストとのふたりを、まずマケドニヤにおくし、パウロ自身じしんは、なおしばらくアジヤにとどまった。

19:23 そのころ、このみちについて容易よういならぬ騒動そうどうおこった。

19:24 そのいきさつは、こうである。デメテリオという銀細工人ぎんざいくにんが、ぎんでアルテミス神殿しんでん模型もけいつくって、職人しょくにんたちにすくなからぬ利益りえきさせていた。

19:25 このおとこがその職人しょくにんたちや、同類どうるい仕事しごとをしていたものたちをあつめてった、「諸君しょくん、われわれがこの仕事しごとで、かねもうけをしていることは、ご承知しょうちのとおりだ。

19:26 しかるに、諸君しょくん見聞みききしているように、あのパウロが、つくられたものは神様かみさまではないなどとって、エペソばかりか、ほとんどアジヤ全体ぜんたいにわたって、おおぜいの人々ひとびときつけてあやまらせた。

19:27 これでは、おたがい仕事しごと悪評あくひょうつおそれがあるばかりか、おお女神めがみアルテミスのみやかろんじられ、ひいてはぜんアジヤ、いやぜん世界せかいおがんでいるこのおお女神めがみのご威光いこうさえも、えてしまいそうである」。

19:28 これをくと、人々ひとびといかりにえ、大声おおごえで「おおいなるかな、エペソびとのアルテミス」とさけびつづけた。

19:29 そして、町中まちじゅうだい混乱こんらんおちいり、人々ひとびとはパウロの道連みちづれであるマケドニヤびとガイオとアリスタルコとをとらえて、いっせいに劇場げきじょうへなだれんだ。

19:30 パウロは群衆ぐんしゅうなかにはいってこうとしたが、弟子でしたちがそれをさせなかった。

19:31 アジヤしゅう議員ぎいんで、パウロの友人ゆうじんであったひとたちも、かれ使つかいをよこして、劇場げきじょうにはいってかないようにと、しきりにたのんだ。

19:32 なかでは、集会しゅうかい混乱こんらんおちいってしまって、あるものはこのことを、ほかのものはあのことを、どなりつづけていたので、大多数だいたすうものは、なんのためにあつまったのかも、わからないでいた。

19:33 そこで、ユダヤじんたちが、まえしたアレキサンデルなるものを、群衆ぐんしゅうなかのあるひとたちがうながしたため、かれって、人々ひとびと弁明べんめいこころみようとした。

19:34 ところが、かれがユダヤじんだとわかると、みんなのものがいっせいに「おおいなるかな、エペソびとのアルテミス」と二時間じかんばかりもさけびつづけた。

19:35 ついに、書記しょきやく群衆ぐんしゅうしずめてった、「エペソの諸君しょくん、エペソおお女神めがみアルテミスと、あまくだったご神体しんたいとの守護しゅごやくであることをらないものが、ひとりでもいるだろうか。

19:36 これは否定ひていのできない事実じじつであるから、諸君しょくんはよろしくしずかにしているべきで、乱暴らんぼう行動こうどうは、いっさいしてはならない。

19:37 諸君しょくんはこのひとたちをここにひっぱってきたが、かれらはみやあらものでも、われわれの女神めがみをそしるものでもない。

19:38 だから、もしデメテリオなりその職人しょくにん仲間なかまなりが、だれかにたいしてうったことがあるなら、裁判さいばんはあるし、総督そうとくもいるのだから、それぞれうったるがよい。

19:39 しかし、なにかもっと要求ようきゅうしたいことがあれば、それは正式せいしき議会ぎかい解決かいけつしてもらうべきだ。

19:40 きょうの事件じけんについては、このさわぎを弁護べんごできるような理由りゆうまったくないのだから、われわれは治安ちあんをみだすつみわれるおそれがある」。

19:41 こうって、かれはこの集会しゅうかい解散かいさんさせた。 

第20章 

20:1 さわぎがやんだのち、パウロは弟子でしたちをあつめて激励げきれいあたえたうえわかれのあいさつをべ、マケドニヤへかって出発しゅっぱつした。

20:2 そして、その地方ちほうをとおり、おおくの言葉ことば人々ひとびとはげましたのち、ギリシヤにきた。

20:3 かれはそこで三かげつごした。それからシリヤへかって、船出ふなでしようとしていた矢先やさきかれたいするユダヤじん陰謀いんぼうおこったので、マケドニヤを経由けいゆしてかえることにけっした。

20:4 プロのであるエペソびとソパテロ、テサロニケびとアリスタルコとセクンド、デルベびとガイオ、それからテモテ、またアジヤびとテキコとトロピモがパウロの同行者どうこうしゃであった。

20:5 このひとたちはせんぱつして、トロアスでわたしたちをっていた。

20:6 わたしたちは、除酵祭じょこうさいおわったのちに、ピリピから出帆しゅっぱんし、五かかってトロアスに到着とうちゃくして、かれらとい、そこに七日間なぬかかん滞在たいざいした。

20:7 しゅうはじめのに、わたしたちがパンをさくためにあつまったとき、パウロは翌日よくじつ出発しゅっぱつすることにしていたので、しきりに人々ひとびとかたい、夜中よなかまでかたりつづけた。

20:8 わたしたちがあつまっていた屋上おくじょうには、あかりがたくさんともしてあった。

20:9 ユテコという若者わかものまどこしをかけていたところ、パウロのはなしがながながとつづくので、ひどくねむけがさしてきて、とうとうぐっすり寝入ねいってしまい、三かいからしたちた。いだおこしてみたら、もうんでいた。

20:10 そこでパウロはりてきて、若者わかものうえをかがめ、かれいだきあげて、「さわぐことはない。まだいのちがある」とった。

20:11 そして、またがってって、パンをさいてべてから、けがたまでながいあいだ人々ひとびとかたって、ついに出発しゅっぱつした。

20:12 人々ひとびときかえった若者わかものれかえり、ひとかたならずなぐさめられた。

20:13 さて、わたしたちはさきふねみ、アソスへかって出帆しゅっぱんした。そこからパウロをふねせてくことにしていた。かれだけは陸路りくろをとることにめていたからである。

20:14 パウロがアソスで、わたしたちとったとき、わたしたちはかれふねせてミテレネにった。

20:15 そこから出帆しゅっぱんして、翌日よくじつキヨスの沖合おきあいにいたり、つぎにサモスにり、その翌日よくじつミレトにいた。

20:16 それは、パウロがアジヤで時間じかんをとられないため、エペソにはらないでぞっこうすることにめていたからである。かれは、できればペンテコステのには、エルサレムにいていたかったので、たびいそいだわけである。

20:17 そこでパウロは、ミレトからエペソに使つかいをやって、教会きょうかい長老ちょうろうたちをせた。

20:18 そして、かれのところにあつまってきたときかれらにった。

「わたしが、アジヤのあしれた最初さいしょ以来いらい、いつもあなたがたとどんなふうにごしてきたか、よくごぞんじである。

20:19 すなわち、謙遜けんそんかぎりをつくし、なみだながし、ユダヤじん陰謀いんぼうによってわたしのおよんだ数々かずかず試練しれんなかにあって、しゅつかえてきた。

20:20 また、あなたがたのえきになることは、公衆こうしゅうまえでも、また家々いえいえでも、すべてあますところなくはなしてかせ、またおしえ、

20:21 ユダヤじんにもギリシヤじんにも、かみたいする悔改くいあらためと、わたしたちのしゅイエスにたいする信仰しんこうとを、つよすすめてきたのである。

20:22 いまや、わたしは御霊みたませまられてエルサレムへく。あのみやこで、どんなことがわたしのにふりかかってるか、わたしにはわからない。

20:23 ただ、聖霊せいれいいたるところの町々まちまちで、わたしにはっきりげているのは、投獄とうごく患難かんなんとが、わたしをちうけているということだ。

20:24 しかし、わたしは自分じぶん行程こうていはしえ、しゅイエスからたまわった、かみのめぐみの福音ふくいんをあかしする任務にんむはたさえしたら、このいのちは自分じぶんにとって、すこしもしいとはおもわない。

20:25 わたしはいましんじている、あなたがたのあいだあるまわって御国みくにつたえたこのわたしのかおを、みんなが今後こんごることはあるまい。

20:26 だから、きょう、このにあなたがたに断言だんげんしておく。わたしは、すべてのひとについて、なんら責任せきにんがない。

20:27 かみのみむねみなあますところなく、あなたがたにつたえておいたからである。

20:28 どうか、あなたがた自身じしんをつけ、また、すべてのれにをくばっていただきたい。聖霊せいれいは、かみ御子みこであがないられたかみ教会きょうかいぼくさせるために、あなたがたをそのれの監督者かんとくしゃにおてになったのである。

20:29 わたしがったのち狂暴きょうぼうなおおかみが、あなたがたのなかにはいりんできて、容赦ようしゃなくれをあらすようになることを、わたしはっている。

20:30 また、あなたがた自身じしんなかからも、いろいろまがったことをって、弟子でしたちを自分じぶんほうに、ひっぱりもうとするものらがおこるであろう。

20:31 だから、をさましていなさい。そして、わたしが三ねんあいだよるひるなみだをもって、あなたがたひとりびとりをえずさとしてきたことを、わすれないでほしい。

20:32 いまわたしは、しゅとそのめぐみのことばとに、あなたがたをゆだねる。御言みことばには、あなたがたのとくをたて、せいべつされたすべての人々ひとびとともに、御国みくにをつがせるちからがある。

20:33 わたしは、ひときんぎん衣服いふくをほしがったことはない。

20:34 あなたがた自身じしんっているとおり、わたしのこの両手りょうては、自分じぶん生活せいかつのためにも、また一緒いっしょにいたひとたちのためにも、はたらいてきたのだ。

20:35 わたしは、あなたがたもこのようにはたらいて、よわものたすけなければならないこと、また『けるよりはあたえるほうが、さいわいである』とわれたしゅイエスの言葉ことば記憶きおくしているべきことを、万事ばんじについておししめしたのである」。

20:36 こうって、パウロは一同いちどうともにひざまずいていのった。

20:37 みんなのものは、はげしくかなしみ、パウロのくびいだいて、幾度いくど接吻せっぷんし、

20:38 もう二自分じぶんかおることはあるまいとかれったので、とくこころいためた。それからかれふねまで見送みおくった。 

第21章 

21:1 さて、わたしたちは人々ひとびとわかれて船出ふなでしてから、コスに直航ちょっこうし、つぎはロドスに、そこからパタラにいた。

21:2 ここでピニケきのふねつけたので、それにんで出帆しゅっぱんした。

21:3 やがてクプロがえてきたが、それを左手ひだりてにしてとおりすぎ、シリヤへ航行こうこうをつづけ、ツロに入港にゅうこうした。ここで積荷つみに陸上りくあげされることになっていたからである。

21:4 わたしたちは、弟子でしたちをさがして、そこに七日間なぬかかんまった。ところがかれらは、御霊みたましめしをけて、エルサレムにはのぼってかないようにと、しきりにパウロに注意ちゅういした。

21:5 しかし、滞在たいざい期間きかんおわったとき、わたしたちはまた旅立たびだつことにしたので、みんなのものは、つま子供こどもれて、まちはずれまで、わたしたちを見送みおくりにきてくれた。そこで、とも海岸かいがんにひざまずいていのり、

21:6 たがいわかれをげた。それから、わたしたちはふねみ、かれらはそれぞれ自分じぶんいえかえった。

21:7 わたしたちは、ツロからの航行こうこうおわってトレマイにき、そこの兄弟きょうだいたちにあいさつをし、かれらのところに一にち滞在たいざいした。

21:8 翌日よくじつそこをたって、カイザリヤにき、かの七にんのひとりである伝道者でんどうしゃピリポのいえき、そこにまった。

21:9 このひとに四にんむすめがあったが、いずれも処女しょじょであって、預言よげんをしていた。

21:10 幾日いくにち滞在たいざいしているあいだに、アガボという預言者よげんしゃがユダヤからくだってきた。

21:11 そして、わたしたちのところにきて、パウロのおびり、それで自分じぶん手足てあししばってった、「聖霊せいれいがこうおげになっている、『このおびぬしを、ユダヤじんたちがエルサレムでこのようにしばって、異邦人いほうじんわたすであろう』」。

21:12 わたしたちはこれをいて、土地とちひとたちと一緒いっしょになって、エルサレムにはのぼってかないようにと、パウロにねがつづけた。

21:13 そのときパウロはこたえた、「あなたがたは、いたり、わたしのこころをくじいたりして、いったい、どうしようとするのか。わたしは、しゅイエスののためなら、エルサレムでしばられるだけでなく、ぬことをも覚悟かくごしているのだ」。

21:14 こうして、パウロが勧告かんこくきいれてくれないので、わたしたちは「しゅのみこころがおこなわれますように」とっただけで、それ以上いじょうなにわなかった。

21:15 数日後すうじつご、わたしたちは旅装りょそうととのえてエルサレムへのぼってった。

21:16 カイザリヤの弟子でしたちも数人すうにん、わたしたちと同行どうこうして、ふるくからの弟子でしであるクプロびとマナソンのいえ案内あんないしてくれた。わたしたちはそのいえまることになっていたのである。

21:17 わたしたちがエルサレムに到着とうちゃくすると、兄弟きょうだいたちはよろこんでむかえてくれた。

21:18 翌日よくじつパウロはわたしたちをれて、ヤコブを訪問ほうもんしにった。そこに長老ちょうろうたちがみなあつまっていた。

21:19 パウロはかれらにあいさつをしたのちかみ自分じぶんはたらきをとおして、異邦人いほうじんあいだになさったことどもを一々いちいち説明せつめいした。

21:20 一同いちどうはこれをいてかみをほめたたえ、そしてかれった、「兄弟きょうだいよ、ご承知しょうちのように、ユダヤじんなか信者しんじゃになったものが、数万すうまんにものぼっているが、みんな律法りっぽう熱心ねっしんひとたちである。

21:21 ところが、かれらがつたいているところによれば、あなたは異邦人いほうじんなかにいるユダヤじん一同いちどうたいして、子供こども割礼かつれいほどこすな、またユダヤの慣例かんれいにしたがうなとって、モーセにそむくことをおしえている、ということである。

21:22 どうしたらよいか。あなたがここにきていることは、かれらもきっとむにちがいない。

21:23 ついては、いまわたしたちがうとおりのことをしなさい。わたしたちのなかに、誓願せいがんてているものが四にんいる。

21:24 このひとたちをれてって、かれらとともにきよめをおこない、またかれらのあたまをそる費用ひようけてやりなさい。そうすれば、あなたについて、うわさされていることは、もないことで、あなたは律法りっぽうまもって、ただしい生活せいかつをしていることが、みんなにわかるであろう。

21:25 異邦人いほうじん信者しんじゃになったひとたちには、すでに手紙てがみで、偶像ぐうぞうそなえたものと、と、ころしたものと、不品行ふひんこうとを、つつしむようにとの決議けつぎが、わたしたちかららせてある」。

21:26 そこでパウロは、そのつぎに四にんものれて、かれらとともにきよめをけてからみやにはいった。そしてきよめの期間きかんおわって、ひとりびとりのためにそなものをささげるとき報告ほうこくしておいた。

21:27 七日なぬか期間きかんおわろうとしていたとき、アジヤからきたユダヤじんたちが、みやうちでパウロをかけて、群衆ぐんしゅう全体ぜんたい煽動せんどうしはじめ、パウロにをかけてさけてた、

21:28 「イスラエルの人々ひとびとよ、加勢かせいにきてくれ。このひとは、いたるところでたみ律法りっぽうとこの場所ばしょにそむくことを、みんなにおしえている。そのうえに、ギリシヤじんみやうちんで、この神聖しんせい場所ばしょけがしたのだ」。

21:29 かれらは、まえにエペソびとトロピモが、パウロと一緒いっしょまちあるいていたのをかけて、そのひとをパウロがみやうちんだのだとおもったのである。

21:30 そこで、全体ぜんたいさわし、民衆みんしゅうあつまってきて、パウロをとらえ、みやそときずりした。そして、すぐそのあとにみやもんざされた。

21:31 かれらがパウロをころそうとしていたときに、エルサレム全体ぜんたい混乱こんらん状態じょうたいおちいっているとの情報じょうほうが、守備しゅびたい千卒長せんそつちょうにとどいた。

21:32 そこで、かれはさっそく、兵卒へいそつ百卒長ひゃくそつちょうたちをひきいて、そのけつけた。人々ひとびと千卒長せんそつちょう兵卒へいそつたちをて、パウロをちたたくのをやめた。

21:33 千卒長せんそつちょう近寄ちかよってきてパウロをとらえ、かれ二重にじゅうくさりしばっておくようにめいじたうえ、パウロは何者なにものか、またなにをしたのか、とたずねた。

21:34 しかし、群衆ぐんしゅうがそれぞれちがったことをさけびつづけるため、さわがしくて、たしかなことがわからないので、かれはパウロを兵営へいえいれてくようにめいじた。

21:35 パウロが階段かいだんにさしかかったときには、群衆ぐんしゅう暴行ぼうこうけるため、兵卒へいそつたちにかつがれてくという始末しまつであった。

21:36 おおぜいの民衆みんしゅうが「あれをやっつけてしまえ」とさけびながら、ついてきたからである。

21:37 パウロが兵営へいえいなかれてかれようとしたとき千卒長せんそつちょうに、「ひとことあなたにおはなしてもよろしいですか」とたずねると、千卒長せんそつちょうった、「おまえはギリシヤはなせるのか。

21:38 では、もしかおまえは、さきごろ反乱はんらんおこしたのち、四千にん刺客しかくれて荒野あらのげてったあのエジプトじんではないのか」。

21:39 パウロはこたえた、「わたしはタルソうまれのユダヤじんで、キリキヤのれっきとした都市とし市民しみんです。おねがいですが、民衆みんしゅうはなしをさせてください」。

21:40 千卒長せんそつちょうゆるしてくれたので、パウロは階段かいだんうえち、民衆みんしゅうにむかってった。すると、一同いちどうがすっかり静粛せいしゅくになったので、パウロはヘブルはなした。 

第22章 

22:1 「兄弟きょうだいたち、ちちたちよ、いまもうげるわたしの弁明べんめいいていただきたい」。

22:2 パウロが、ヘブルでこうかたりかけるのをいて、人々ひとびとはますます静粛せいしゅくになった。

22:3 そこでかれ言葉ことばをついでった、「わたしはキリキヤのタルソでうまれたユダヤじんであるが、このみやこそだてられ、ガマリエルのひざもとで先祖せんぞ伝来でんらい律法りっぽうについて、きびしい薫陶くんとうけ、今日きょうみなさんとおなじくかみたいして熱心ねっしんものであった。

22:4 そして、このみち迫害はくがいし、おとこであれおんなであれ、しばりあげてごくとうじ、かれらをいたらせた。

22:5 このことは、大祭司だいさいし長老ちょうろうたち一同いちどうも、証明しょうめいするところである。さらにわたしは、このひとたちからダマスコの同志どうしたちへあてた手紙てがみをもらって、そのにいるものたちをしばりあげ、エルサレムにひっぱってきて、処罰しょばつするため、かけてった。

22:6 たびをつづけてダマスコのちかくにきたときに、真昼まひるごろ、突然とつぜん、つよいひかりてんからわたしをめぐりてらした。

22:7 わたしはたおれた。そして、『サウロ、サウロ、なぜわたしを迫害はくがいするのか』と、びかけるこえいた。

22:8 これにたいしてわたしは、『しゅよ、あなたはどなたですか』とった。すると、そのこえが、『わたしは、あなたが迫害はくがいしているナザレびとイエスである』とこたえた。

22:9 わたしと一緒いっしょにいたものたちは、そのひかりたが、わたしにかたりかけたかたのこえかなかった。

22:10 わたしが『しゅよ、わたしはなにをしたらよいでしょうか』とたずねたところ、しゅわれた、『きあがってダマスコにきなさい。そうすれば、あなたがするようにめてあることが、すべてそこでげられるであろう』。

22:11 わたしは、ひかりかがやきでがくらみ、なにえなくなっていたので、れのものたちにかれながら、ダマスコにった。

22:12 すると、律法りっぽう忠実ちゅうじつで、ダマスコ在住ざいじゅうのユダヤじん全体ぜんたい評判ひょうばんのよいアナニヤというひとが、

22:13 わたしのところにきて、そばにち、『兄弟きょうだいサウロよ、えるようになりなさい』とった。するとその瞬間しゅんかんに、わたしのひらいて、かれ姿すがたえた。

22:14 かれった、『わたしたちの先祖せんぞかみが、あなたをえらんでみむねらせ、かの義人ぎじんさせ、そのくちからこえをおかせになった。

22:15 それはあなたが、その見聞みききしたことにつき、すべてのひとたいして、かれ証人しょうにんになるためである。

22:16 そこでいま、なんのためらうことがあろうか。すぐって、みをとなえてバプテスマをけ、あなたのつみあらおとしなさい』。

22:17 それからわたしは、エルサレムにかえってみやいのっているうちに、ゆめうつつになり、

22:18 しゅにまみえたが、しゅわれた、『いそいで、すぐにエルサレムをきなさい。わたしについてのあなたのあかしを、人々ひとびとけいれないから』。

22:19 そこで、わたしがった、『しゅよ、かれらは、わたしがいたるところの会堂かいどうで、あなたをしんじる人々ひとびとごくとうじたり、むちったりしていたことを、っています。

22:20 また、あなたの証人しょうにんステパノのながされたときも、わたしはっていてそれに賛成さんせいし、またかれころしたひとたちの上着うわぎばんをしていたのです』。

22:21 すると、しゅがわたしにわれた、『きなさい。わたしが、あなたをとお異邦いほうたみへつかわすのだ』」。

22:22 かれ言葉ことばをここまでいていた人々ひとびとは、このとき、こえりあげてった、「こんなおとこ地上ちじょうからのぞいてしまえ。かしおくべきではない」。

22:23 人々ひとびとがこうわめきてて、空中くうちゅう上着うわぎげ、ちりをまきらす始末しまつであったので、

22:24 千卒長せんそつちょうはパウロを兵営へいえいれるようにめいじ、どういうわけで、かれたいしてこんなにわめきてているのかをたしかめるため、かれをむちの拷問ごうもんにかけて、調しらべるようにいわたした。

22:25 かれらがむちをてるため、かれしばりつけていたとき、パウロはそばにっている百卒長ひゃくそつちょうった、「ローマの市民しみんたるものを、裁判さいばんにかけもしないで、むちってよいのか」。

22:26 百卒長ひゃくそつちょうはこれをき、千卒長せんそつちょうのところにって報告ほうこくし、そしてった、「どうなさいますか。あのひとはローマの市民しみんなのです」。

22:27 そこで、千卒長せんそつちょうがパウロのところにきてった、「わたしにってくれ。あなたはローマの市民しみんなのか」。パウロは「そうです」とった。

22:28 これにたいして千卒長せんそつちょうった、「わたしはこの市民しみんけんを、多額たがくかねったのだ」。するとパウロはった、「わたしはうまれながらの市民しみんです」。

22:29 そこで、パウロを調しらべようとしていたひとたちは、ただちにかれからいた。千卒長せんそつちょうも、パウロがローマの市民しみんであること、また、そういうひとしばっていたことがわかって、おそれた。

22:30 翌日よくじつかれは、ユダヤじんがなぜパウロをうったたのか、その真相しんそうろうとおもってかれいてやり、同時どうじ祭司長さいしちょうたちとぜん議会ぎかいとを召集しょうしゅうさせ、そこにかれして、かれらのまえたせた。 

第23章 

23:1 パウロは議会ぎかいつめてった、「兄弟きょうだいたちよ、わたしは今日きょうまで、かみまえに、ひたすらあきらかな良心りょうしんにしたがって行動こうどうしてきた」。

23:2 すると、大祭司だいさいしアナニヤが、パウロのそばにっているものたちに、かれくちてとめいじた。

23:3 そのとき、パウロはアナニヤにむかってった、「しろられたかべよ、かみがあなたをつであろう。あなたは、律法りっぽうにしたがって、わたしをさばくためにについているのに、律法りっぽうにそむいて、わたしをつことをめいじるのか」。

23:4 すると、そばにっているものたちがった、「かみ大祭司だいさいしたいして無礼ぶれいなことをうのか」。

23:5 パウロはった、「兄弟きょうだいたちよ、かれ大祭司だいさいしだとはらなかった。聖書せいしょに『たみのかしらをわるってはいけない』と、いてあるのだった」。

23:6 パウロは、議員ぎいん一部いちぶがサドカイびとであり、一部いちぶはパリサイびとであるのをて、議会ぎかいなかこえたかめてった、「兄弟きょうだいたちよ、わたしはパリサイびとであり、パリサイびとである。わたしは、死人しにん復活ふっかつのぞみをいだいていることで、裁判さいばんけているのである」。

23:7 かれがこうったところ、パリサイびととサドカイびととのあいだ争論そうろんしょうじ、会衆かいしゅうあいわかれた。

23:8 元来がんらい、サドカイびとは、復活ふっかつとか天使てんしとかれいとかは、いっさい存在そんざいしないとい、パリサイびとは、それらは、みな存在そんざいすると主張しゅちょうしている。

23:9 そこで、大騒おおさわぎとなった。パリサイのある律法りっぽう学者がくしゃたちがって、つよ主張しゅちょうしてった、「われわれは、このひとにはなにわるいことがないとおもう。あるいは、れい天使てんしかが、かれげたのかもれない」。

23:10 こうして、争論そうろんはげしくなったので、千卒長せんそつちょうは、パウロがかれらにかれるのをづかって、兵卒へいそつどもに、りてってパウロをかれらのなかからちからづくでし、兵営へいえいれてるように、めいじた。

23:11 そのしゅがパウロにのぞんでわれた、「しっかりせよ。あなたは、エルサレムでわたしのことをあかししたように、ローマでもあかしをしなくてはならない」。

23:12 けると、ユダヤじんらはもうわせをして、パウロをころすまでは飲食いんしょくをいっさいつと、ちかった。

23:13 この陰謀いんぼうくわわったものは、四十にんあまりであった。

23:14 かれらは、祭司長さいしちょうたちや長老ちょうろうたちのところにって、こうった。「われわれは、パウロをころすまではなにべないと、かたちかいました。

23:15 ついては、あなたがたは議会ぎかいんで、かれのことでなおくわしく取調とりしらべをするようにせかけ、パウロをあなたがたのところにすように、千卒長せんそつちょうたのんでください。われわれとしては、パウロがそこにこないうちにころしてしまうはずをしています」。

23:16 ところが、パウロの姉妹しまいが、この待伏まちぶせのことをみみにし、兵営へいえいにはいってって、パウロにそれをらせた。

23:17 そこでパウロは、百卒長ひゃくそつちょうのひとりをんでった、「この若者わかもの千卒長せんそつちょうのところにれてってください。なに報告ほうこくすることがあるようですから」。

23:18 この百卒長ひゃくそつちょう若者わかものれてき、千卒長せんそつちょうきあわせてった、「囚人しゅうじんのパウロが、この若者わかものがあなたにはなしたいことがあるので、あなたのところにれてってくれるようにと、わたしをんでたのみました」。

23:19 そこで千卒長せんそつちょうは、若者わかものり、ひとのいないところへれてってたずねた、「わたしにはなしたいことというのは、なにか」。

23:20 若者わかものった、「ユダヤじんたちが、パウロのことをもっとくわしく取調とりしらべをするとせかけて、あす議会ぎかいかれすように、あなたにたのむことにめています。

23:21 どうぞ、かれらのたのみをげないでください。四十にんあまりのものが、パウロを待伏まちぶせしているのです。かれらは、パウロをころすまでは飲食いんしょくをいっさいつと、かたちかっています。そして、いまはずをととのえて、あなたの許可きょかっているところなのです」。

23:22 そこで千卒長せんそつちょうは、「このことをわたしにらせたことは、だれにも口外こうがいするな」とめいじて、若者わかものかえした。

23:23 それからかれは、百卒長ひゃくそつちょうふたりをんでった、「歩兵ほへい二百めい騎兵きへい七十めいそうへい二百めいを、カイザリヤに出発しゅっぱつできるように、今夜こんやまでに用意よういせよ。

23:24 また、パウロをせるためにうま用意よういして、かれ総督そうとくペリクスのもとへ無事ぶじれてけ」。

23:25 さらにかれは、つぎのような文面ぶんめん手紙てがみいた。

23:26 「クラウデオ・ルシヤ、つつしんで総督そうとくペリクス閣下かっか平安へいあんいのります。

23:27 本人ほんにんのパウロが、ユダヤじんらにとらえられ、まさにころされようとしていたのを、かれのローマ市民しみんであることをったので、わたしは兵卒へいそつたちをひきいてって、かれすくしました。

23:28 それから、かれうったえられた理由りゆうろうとおもい、かれ議会ぎかいれてきました。

23:29 ところが、かれはユダヤじん律法りっぽう問題もんだいうったえられたものであり、なんら死刑しけいまたは投獄とうごくあたつみのないことがわかりました。

23:30 しかし、このひとたいして陰謀いんぼうがめぐらされているとの報告ほうこくがありましたので、わたしはりあえず、かれ閣下かっかのもとにおおくりすることにし、うったえるものたちには、閣下かっかまえで、かれたいするもうしてをするようにと、めいじておきました」。

23:31 そこで歩兵ほへいたちは、めいじられたとおりパウロをって、よるあいだにアンテパトリスまでれてき、

23:32 翌日よくじつは、騎兵きへいたちにパウロを護送ごそうさせることにして、兵営へいえいかえってった。

23:33 騎兵きへいたちは、カイザリヤにくと、手紙てがみ総督そうとく手渡てわたし、さらにパウロをかれきあわせた。

23:34 総督そうとく手紙てがみんでから、パウロに、どのしゅうものかとたずね、キリキヤのだとって、

23:35 「うったひとたちがきたときに、おまえを調しらべることにする」とった。そして、ヘロデの官邸かんていかれまもっておくようにめいじた。 

第24章 

24:1 五のち大祭司だいさいしアナニヤは、長老ちょうろう数名すうめいと、テルトロという弁護人べんごにんとをれてくだり、総督そうとくにパウロをうったた。

24:2 パウロがされたので、テルトロは論告ろんこくはじめた。

「ペリクス閣下かっか、わたしたちが、閣下かっかのおかげでじゅうぶんに平和へいわたのしみ、またこのくにが、ご配慮はいりょによって、

24:3 あらゆる方面ほうめんに、またいたるところで改善かいぜんされていることは、わたしたちの感謝かんしゃしてやまないところであります。

24:4 しかし、ご迷惑めいわくをかけないように、くどくどとべずに、手短てみじかかにもうげますから、どうぞ、しのんでおりのほど、おねがいいたします。

24:5 さて、このおとこは、疫病えきびょうのような人間にんげんで、世界中せかいじゅうのすべてのユダヤじんなかさわぎをおこしているものであり、また、ナザレびとらの異端いたんのかしらであります。

24:6 このものみやまでもけがそうとしていたので、わたしたちはかれ捕縛ほばくしたのです。〔そして、律法りっぽうにしたがって、さばこうとしていたところ、

24:7 千卒長せんそつちょうルシヤが干渉かんしょうして、かれ無理むりにわたしたちのからはなしてしまい、

24:8 かれうったえたひとたちには、閣下かっかのところにるようにとめいじました。〕それで、閣下かっか自身じしんでお調しらべになれば、わたしたちがかれうった理由りゆうが、全部ぜんぶおわかりになるでしょう」。

24:9 ユダヤじんたちも、このうったえに同調どうちょうして、まったくそのとおりだとった。

24:10 そこで、総督そうとく合図あいずをして発言はつげんうながしたので、パウロは答弁とうべんしてった。

閣下かっかが、多年たねんにわたり、この国民こくみん裁判さいばんをつかさどっておられることを、よく承知しょうちしていますので、わたしはよろこんで、自分じぶんのことを弁明べんめいいたします。

24:11 お調しらべになればわかるはずですが、わたしが礼拝れいはいをしにエルサレムにのぼってから、まだ十二にちそこそこにしかなりません。

24:12 そして、みやうちでも、会堂かいどううちでも、あるいは市内しないでも、わたしがだれかと争論そうろんしたり、群衆ぐんしゅう煽動せんどうしたりするのをたものはありませんし、

24:13 いまわたしをうったていることについて、閣下かっかまえに、その証拠しょうこをあげうるものはありません。

24:14 ただ、わたしはこのことみとめます。わたしは、かれらが異端いたんだとしているみちにしたがって、わたしたちの先祖せんぞかみつかえ、律法りっぽうおしえるところ、また預言者よげんしゃしょいてあることを、ことごとくしんじ、

24:15 また、ただしいものただしくないものも、やがてよみがえるとの希望きぼうを、かみあおいでいだいているものです。この希望きぼうは、かれ自身じしんっているのです。

24:16 わたしはまた、かみたいしまたひとたいして、良心りょうしんめられることのないように、つねつとめています。

24:17 さてわたしは、幾年いくねんぶりかにかえってきて、同胞どうほうほどこしをし、また、そなものをしていました。

24:18 そのとき、かれらはわたしがみやできよめをおこなっているのをただけであって、群衆ぐんしゅうもいず、騒動そうどうもなかったのです。

24:19 ところが、アジヤからきた数人すうにんのユダヤじんが――かれらが、わたしにたいして、なにかとがめてをすることがあったなら、よろしく閣下かっかまえにきて、うったえるべきでした。

24:20 あるいは、なにかわたしに不正ふせいなことがあったなら、わたしが議会ぎかいまえっていたときかれらみずから、それを指摘してきすべきでした。

24:21 ただ、わたしは、かれらのなかって、『わたしは、死人しにんのよみがえりのことで、きょう、あなたがたのまえでさばきをけているのだ』とさけんだだけのことです」。

24:22 ここでペリクスは、このみちのことを相当そうとうわきまえていたので、「千卒長せんそつちょうルシヤがくだってるのをって、おまえたちの事件じけん判決はんけつすることにする」とって、裁判さいばん延期えんきした。

24:23 そして百卒長ひゃくそつちょうに、パウロを監禁かんきんするように、しかしかれ寛大かんだいあつかい、友人ゆうじんらが世話せわをするのをめないようにと、めいじた。

24:24 数日すうじつたってから、ペリクスは、ユダヤじんであるつまドルシラと一緒いっしょにきて、パウロをし、キリスト・イエスにたいする信仰しんこうのことを、かれからいた。

24:25 そこで、パウロが、正義せいぎ節制せっせい未来みらい審判しんぱんなどについてろんじていると、ペリクスは不安ふあんかんじてきて、った、「きょうはこれでかえるがよい。また、よい機会きかいたら、すことにする」。

24:26 かれは、それと同時どうじに、パウロからかねをもらいたいしたごころがあったので、たびたびパウロをしてはかたった。

24:27 さて、二かねんたったとき、ポルキオ・フェストが、ペリクスと交代こうたいしてにんについた。ペリクスは、ユダヤじん歓心かんしんおうとおもって、パウロを監禁かんきんしたままにしておいた。 

第25章 

25:1 さて、フェストは、任地にんちいてから三のち、カイザリヤからエルサレムにのぼったところ、

25:2 祭司長さいしちょうたちやユダヤじん重立おもだったものたちが、パウロをうったて、

25:3 かれをエルサレムにすようはからっていただきたいと、しきりにねがった。かれらは途中とちゅうせして、かれころかんがえであった。

25:4 ところがフェストは、パウロがカイザリヤに監禁かんきんしてあり、自分じぶんもすぐそこへかえることになっているとこたえ、

25:5 そしてった、「では、もしあのおとこなに不都合ふつごうなことがあるなら、おまえたちのうちの有力ゆうりょくしゃらが、わたしと一緒いっしょくだってって、うったえるがよかろう」。

25:6 フェストは、かれらのあいだに八か十ほど滞在たいざいしたのち、カイザリヤにくだってき、その翌日よくじつ裁判さいばんせきについて、パウロをすようにめいじた。

25:7 パウロが姿すがたをあらわすと、エルサレムからくだってきたユダヤじんたちが、かれりかこみ、かれたいしてさまざまのおも罪状ざいじょうもうてたが、いずれもその証拠しょうこをあげることはできなかった。

25:8 パウロは「わたしは、ユダヤじん律法りっぽうたいしても、みやたいしても、またカイザルにたいしても、なんらつみおかしたことはない」と弁明べんめいした。

25:9 ところが、フェストはユダヤじん歓心かんしんおうとおもって、パウロにむかってった、「おまえはエルサレムにのぼり、この事件じけんかんし、わたしからそこで裁判さいばんけることを承知しょうちするか」。

25:10 パウロはった、「わたしはいま、カイザルの法廷ほうていっています。わたしはこの法廷ほうてい裁判さいばんされるべきです。よくご承知しょうちのとおり、わたしはユダヤじんたちに、なにわるいことをしてはいません。

25:11 もしわたしがわるいことをし、あたるようなことをしているのなら、まぬかれようとはしません。しかし、もしかれらのうったえることに、なんの根拠こんきょもないとすれば、だれもわたしをかれらにわた権利けんりはありません。わたしはカイザルに上訴じょうそします」。

25:12 そこでフェストは、陪席ばいせきものたちと協議きょうぎしたうえこたえた、「おまえはカイザルに上訴じょうそもうた。カイザルのところにくがよい」。

25:13 数日すうじつたったのち、アグリッパおうとベルニケとが、フェストに敬意けいいひょうするため、カイザリヤにきた。

25:14 ふたりは、そこになに日間にちかん滞在たいざいしていたので、フェストは、パウロのことをおうはなしてった、「ここに、ペリクスが囚人しゅうじんとしてのこしてったひとりのおとこがいる。

25:15 わたしがエルサレムにったとき、このおとこのことを、祭司長さいしちょうたちやユダヤじん長老ちょうろうたちが、わたしに報告ほうこくし、かれつみさだめるようにと要求ようきゅうした。

25:16 そこでわたしは、かれらにこたえた、『うったえられたものが、うったえたものまえって、告訴こくそたい弁明べんめいする機会きかいあたえられないまえに、そのひと見放みはなしてしまうのは、ローマじん慣例かんれいにはないことである』。

25:17 それで、かれらがここにあつまってきたとき、わたしはときをうつさず、つぎ裁判さいばんせきについて、そのおとこさせた。

25:18 うったえたものたちはがったが、わたしが推測すいそくしていたような悪事あくじは、かれについて何一なにひともうてはしなかった。

25:19 ただ、かれあらそっているのは、かれ自身じしん宗教しゅうきょうかんし、また、んでしまったのにきているとパウロが主張しゅちょうしているイエスなるものかんする問題もんだいぎない。

25:20 これらの問題もんだいを、どうあつかってよいかわからなかったので、わたしはかれに、『エルサレムにって、これらの問題もんだいについて、そこでさばいてもらいたくはないか』とたずねてみた。

25:21 ところがパウロは、皇帝こうてい判決はんけつけるときまで、このまま自分じぶんをとどめておいてほしいとうので、カイザルにかれおくりとどけるときまでとどめておくようにと、めいじておいた」。

25:22 そこで、アグリッパがフェストに「わたしも、そのひとぶんいてたい」とったので、フェストは、「では、あすかれからきとるようにしてあげよう」とこたえた。

25:23 翌日よくじつ、アグリッパとベルニケとは、おおいに威儀いぎをととのえて、千卒長せんそつちょうたちや重立おもだったひとたちとともに、引見所いんけんじょにはいってきた。すると、フェストのめいによって、パウロがそこにされた。

25:24 そこで、フェストがった、「アグリッパおう、ならびにご臨席りんせき諸君しょくん。ごらんになっているこの人物じんぶつは、ユダヤじんたちがこぞって、エルサレムにおいても、また、このにおいても、これ以上いじょうかしておくべきでないとさけんで、わたしにうったているものである。

25:25 しかし、かれあたることはなにもしていないと、わたしはているのだが、かれ自身じしん皇帝こうてい上訴じょうそするとしたので、かれをそちらへおくることにめた。

25:26 ところが、かれについて、主君しゅくんきおくるたしかなものがなにもないので、わたしは、かれ諸君しょくんまえに、とくに、アグリッパおうよ、あなたのまえして、取調とりしらべをしたのち、上書じょうしょすべき材料ざいりょうようとおもう。

25:27 囚人しゅうじんおくるのに、その告訴こくそ理由りゆうしめさないということは、不合理ふごうりだとおもえるからである」。 

第26章 

26:1 アグリッパはパウロに、「おまえ自身じしんのことをはなしてもよい」とった。そこでパウロは、をさしべて、弁明べんめいをしはじめた。

26:2 「アグリッパおうよ、ユダヤじんたちからうったえられているすべてのことかんして、きょう、あなたのまえ弁明べんめいすることになったのは、わたしのしあわせにおもうところであります。

26:3 あなたは、ユダヤじんのあらゆる慣例かんれい問題もんだいを、よくいておられるかたですから、わたしのもうすことを、寛大かんだいなおこころいていただきたいのです。

26:4 さて、わたしはわか時代じだいには、はじめから国民こくみんなかで、またエルサレムでごしたのですが、そのころのわたしの生活せいかつぶりは、ユダヤじんがみんなよくっているところです。

26:5 かれらはわたしをはじめからっているので、証言しょうげんしようとおもえばできるのですが、わたしは、わたしたちの宗教しゅうきょうもっと厳格げんかくにしたがって、パリサイびととしての生活せいかつをしていたのです。

26:6 いまわたしは、かみがわたしたちの先祖せんぞ約束やくそくなさった希望きぼうをいだいているために、裁判さいばんけているのであります。

26:7 わたしたちの十二の部族ぶぞくは、夜昼よるひる熱心ねっしんかみつかえて、その約束やくそくようとのぞんでいるのです。おうよ、この希望きぼうのために、わたしはユダヤじんからうったえられています。

26:8 かみ死人しにんをよみがえらせるということが、あなたがたには、どうしてしんじられないこととおもえるのでしょうか。

26:9 わたし自身じしんも、以前いぜんには、ナザレびとイエスのさからって反対はんたい行動こうどうをすべきだと、おもっていました。

26:10 そしてわたしは、それをエルサレムで敢行かんこうし、祭司長さいしちょうたちから権限けんげんあたえられて、おおくの聖徒せいとたちをごくめ、かれらがころされるときには、それに賛成さんせいあらわしました。

26:11 それから、いたるところの会堂かいどうで、しばしばかれらをばっして、無理むりやりにかみをけがす言葉ことばわせようとし、かれらにたいしてひどくくるい、ついに外国がいこく町々まちまちにまで、迫害はくがいをのばすにいたりました。

26:12 こうして、わたしは、祭司長さいしちょうたちから権限けんげん委任いにんとをけて、ダマスコにったのですが、

26:13 おうよ、その途中とちゅう真昼まひるに、ひかりてんからさしてるのをました。それは、太陽たいようよりも、もっとひかかがやいて、わたしと同行者どうこうしゃたちとをめぐりてらしました。

26:14 わたしたちはみなたおれましたが、そのときヘブルでわたしにこうびかけるこえきました、『サウロ、サウロ、なぜわたしを迫害はくがいするのか。とげのあるむちをければ、きずうだけである』。

26:15 そこで、わたしが『しゅよ、あなたはどなたですか』とたずねると、しゅわれた、『わたしは、あなたが迫害はくがいしているイエスである。

26:16 さあ、きあがって、自分じぶんあしちなさい。わたしがあなたにあらわれたのは、あなたがわたしにったことと、あなたにあらわれてしめそうとしていることとをあかしし、これをつたえるつとめに、あなたをにんじるためである。

26:17 わたしは、この国民こくみん異邦人いほうじんとのなかから、あなたをすくし、あらためてあなたをかれらにつかわすが、

26:18 それは、かれらのひらき、かれらをやみからひかりへ、悪魔あくま支配しはいからかみのみもとへかえらせ、また、かれらがつみのゆるしを、わたしをしんじる信仰しんこうによって、せいべつされた人々ひとびとくわわるためである』。

26:19 それですから、アグリッパおうよ、わたしはてんよりの啓示けいじにそむかず、

26:20 まずはじめにダマスコにいる人々ひとびとに、それからエルサレムにいる人々ひとびと、さらにユダヤ全土ぜんど、ならびに異邦人いほうじんたちに、あらためてかみかえり、悔改くいあらためにふさわしいわざをおこなうようにと、すすめました。

26:21 そのために、ユダヤじんは、わたしをみやとらえてころそうとしたのです。

26:22 しかし、わたしは今日こんにちいたるまでかみ加護かごけ、このようにって、ちいさいものにもおおきいものにもあかしをなし、預言者よげんしゃたちやモーセが、今後こんごおこるべきだとかたったことを、そのままべてきました。

26:23 すなわち、キリストが苦難くなんけること、また、死人しにんなかから最初さいしょによみがえって、この国民こくみん異邦人いほうじんとに、ひかりつたえるにいたることを、あかししたのです」。

26:24 パウロがこのように弁明べんめいをしていると、フェストは大声おおごえった、「パウロよ、おまえはくるっている。博学はくがくが、おまえをくるわせている」。

26:25 パウロがった、「フェスト閣下かっかよ、わたしはくるってはいません。わたしは、まじめな真実しんじつ言葉ことばかたっているだけです。

26:26 おうはこれらのことをよくっておられるので、おうたいしても、率直そっちょくもうげているのです。それは、かたすみでおこなわれたのではないのですから、一つとして、おうのがされたことはないとしんじます。

26:27 アグリッパおうよ、あなたは預言者よげんしゃしんじますか。しんじておられるとおもいます」。

26:28 アグリッパがパウロにった、「おまえはすこいただけで、わたしをクリスチャンにしようとしている」。

26:29 パウロがった、「くことがすこしであろうと、おおくであろうと、わたしがかみいのるのは、ただあなただけでなく、きょう、わたしの言葉ことばいたひともみな、わたしのようになってくださることです。このようなくさりべつですが」。

26:30 それから、おう総督そうとくもベルニケも、また列席れっせき人々ひとびとも、みなちあがった。

26:31 退場たいじょうしてから、たがいかたってった、「あのひとは、投獄とうごくあたるようなことをしてはいない」。

26:32 そして、アグリッパがフェストにった、「あのひとは、カイザルに上訴じょうそしていなかったら、ゆるされたであろうに」。 

第27章 

27:1 さて、わたしたちが、ふねでイタリヤにくことがまったとき、パウロとそのほか数人すうにん囚人しゅうじんとは、近衛このえたい百卒長ひゃくそつちょうユリアスにたくされた。

27:2 そしてわたしたちは、アジヤ沿岸えんがん各所かくしょ寄港きこうすることになっているアドラミテオのふねんで、出帆しゅっぱんした。テサロニケのマケドニヤびとアリスタルコも同行どうこうした。

27:3 つぎ、シドンに入港にゅうこうしたが、ユリアスは、パウロを親切しんせつあつかい、友人ゆうじんをおとずれてかんたいをけることを、ゆるした。

27:4 それからわたしたちは、ここから船出ふなでしたが、逆風ぎゃくふうにあったので、クプロのしまかげを航行こうこうし、

27:5 キリキヤとパンフリヤのおきぎて、ルキヤのミラに入港にゅうこうした。

27:6 そこに、イタリヤきのアレキサンドリヤのふねがあったので、百卒長ひゃくそつちょうは、わたしたちをそのふねませた。

27:7 幾日いくにちものあいだ、ふねすすみがおそくて、わたしたちは、かろうじてクニドの沖合おきあいにきたが、かぜがわたしたちのをはばむので、サルモネのおき、クレテのしまかげを航行こうこうし、

27:8 そのきし沿ってすすみ、かろうじて「みなと」とばれるところいた。そのちかくにラサヤのまちがあった。

27:9 ながとき経過けいかし、断食だんじきぎてしまい、すでに航海こうかい危険きけん季節きせつになったので、パウロは人々ひとびと警告けいこくしてった、

27:10 「みなさん、わたしのるところでは、この航海こうかいでは、積荷つみに船体せんたいばかりでなく、われわれの生命せいめいにも、危害きがいおおきな損失そんしつおよぶであろう」。

27:11 しかし百卒長ひゃくそつちょうは、パウロのよりも、船長せんちょう船主せんしゅほう信頼しんらいした。

27:12 なお、このみなとふゆごすのにてきしないので、大多数だいたすうものは、ここからて、できればなんとかして、南西なんせい北西ほくせいとにめんしているクレテのピニクスこうって、そこでふゆごしたいと主張しゅちょうした。

27:13 ときに、南風なんぷうしずかにいてきたので、かれらは、このときとばかりにいかりをげて、クレテのきし沿って航行こうこうした。

27:14 するともなく、ユーラクロンとばれる暴風ぼうふうが、しまからきおろしてきた。

27:15 そのために、ふねながされてかぜさからうことができないので、わたしたちはながされるままにまかせた。

27:16 それから、クラウダという小島こじまかげに、はいりんだので、わたしたちは、やっとのことで小舟こぶね処置しょちすることができ、

27:17 それをふねげてから、つな船体せんたいきつけた。また、スルテスのげるのをおそれ、をおろしてながれるままにした。

27:18 わたしたちは、暴風ぼうふうにひどくなやまされつづけたので、つぎに、人々ひとびと積荷つみにてはじめ、

27:19 三には、船具ふなぐまでも、てずからげすてた。

27:20 幾日いくにちものあいだ、太陽たいようほしえず、暴風ぼうふうはげしくきすさぶので、わたしたちのたすかる最後さいごのぞみもなくなった。

27:21 みんなのものは、ながいあいだ食事しょくじもしないでいたが、そのとき、パウロがかれらのなかってった、「みなさん、あなたがたが、わたしの忠告ちゅうこくきいれて、クレテからなかったら、このような危害きがい損失そんしつこうむらなくてすんだはずであった。

27:22 だが、このさい、おすすめする。元気げんきしなさい。ふねうしなわれるだけで、あなたがたのなか生命せいめいうしなうものは、ひとりもいないであろう。

27:23 昨夜さくや、わたしがつかえ、またおがんでいるかみからの御使みつかいが、わたしのそばにってった、

27:24 『パウロよ、おそれるな。あなたはかならずカイザルのまえたなければならない。たしかにかみは、あなたと同船どうせんものを、ことごとくあなたにたまわっている』。

27:25 だから、みなさん、元気げんきしなさい。万事ばんじはわたしにげられたとおりにってくと、わたしは、かみかけてしんじている。

27:26 われわれは、どこかのしまちあげられるに相違そういない」。

27:27 わたしたちがアドリヤうみただよってから十四よるになったとき真夜中まよなかごろ、水夫すいふらはどこかの陸地りくちちかづいたようにかんじた。

27:28 そこで、みずふかさをはかってみたところ、二十ひろであることがわかった。それからすこすすんで、もう一度いちどはかってみたら、十五ひろであった。

27:29 わたしたちが、万一まんいち暗礁あんしょうげては大変たいへんだと、人々ひとびとづかって、ともから四つのいかりをげおろし、けるのをちわびていた。

27:30 そのとき水夫すいふらがふねからそうとおもって、へさきからいかりをげおろすとせかけ、小舟こぶねうみにおろしていたので、

27:31 パウロは、百卒長ひゃくそつちょう兵卒へいそつたちにった、「あのひとたちが、ふねのこっていなければ、あなたがたはたすからない」。

27:32 そこで兵卒へいそつたちは、小舟こぶねつなって、そのながれてくままにまかせた。

27:33 けかけたころ、パウロは一同いちどうものに、食事しょくじをするようにすすめてった、「あなたがたが食事しょくじもせずに、見張みはりをつづけてから、なにべないで、きょうが十四あたる。

27:34 だから、いま食事しょくじることをおすすめする。それが、あなたがたをすくうことになるのだから。たしかにかみひとすじでも、あなたがたのあたまからうしなわれることはないであろう」。

27:35 かれはこうって、パンをり、みんなのまえかみ感謝かんしゃし、それをさいてべはじめた。

27:36 そこで、みんなのものもとづいて食事しょくじをした。

27:37 ふねにいたわたしたちは、わせて二百七十六にんであった。

27:38 みんなのものは、じゅうぶんに食事しょくじをしたのち穀物こくもつうみげすててふねかろくした。

27:39 けて、どこの土地とちかよくわからなかったが、砂浜すなはまのある入江いりええたので、できれば、それにふねれようということになった。

27:40 そこで、いかりをはなしてうみて、同時どうじにかじのつなをゆるめ、かぜまえをあげて、砂浜すなはまにむかってすすんだ。

27:41 ところが、潮流ちょうりゅうながところすすんだため、ふね浅瀬あさせりあげてしまって、へさきがめりんでうごかなくなり、とものほう激浪げきろうのためにこわされた。

27:42 兵卒へいそつたちは、囚人しゅうじんらがおよいでげるおそれがあるので、ころしてしまおうとはかったが、

27:43 百卒長ひゃくそつちょうは、パウロをすくいたいとおもうところから、その意図いとをしりぞけ、およげるものはまずうみんでりくき、

27:44 そのものは、いたふね破片はへんってくようにめいじた。こうして、全部ぜんぶもの上陸じょうりくしてすくわれたのであった。 

第28章 

28:1 わたしたちが、こうしてすくわれてからわかったが、これはマルタとばれるしまであった。

28:2 土地とち人々ひとびとは、わたしたちに並々なみなみならぬ親切しんせつをあらわしてくれた。すなわち、りしきるあめさむさをしのぐために、をたいてわたしたち一同いちどうをねぎらってくれたのである。

28:3 そのとき、パウロはひとかかえのしばをたばねてにくべたところ、熱気ねっきのためにまむしがてきて、かれにかみついた。

28:4 土地とち人々ひとびとは、このきものがパウロのからぶらがっているのをて、たがいった、「このひとは、きっと人殺ひとごろしにちがいない。うみからはのがれたが、ディケーの神様かみさまかれかしてはおかないのだ」。

28:5 ところがパウロは、まむしをなかおとして、なんのがいこうむらなかった。

28:6 かれらは、かれもなくはれがるか、あるいは、たちまちたおれてぬだろうと、様子ようすをうかがっていた。しかし、ながあいだうかがっていても、かれになんのかわったこともおこらないのをて、かれらはかんがえをえて、「このひと神様かみさまだ」とした。

28:7 さて、その場所ばしょちかくに、しま首長しゅちょう、ポプリオというひと所有しょゆうがあった。かれは、そこにわたしたちを招待しょうたいして、三のあいだ親切しんせつにもてなしてくれた。

28:8 たまたま、ポプリオのちち赤痢せきりをわずらい、高熱こうねつとこについていた。そこでパウロは、そのひとのところにはいってっていのり、かれうえにおいていやしてやった。

28:9 このことがあってから、ほかに病気びょうきをしているしまひとたちが、ぞくぞくとやってきて、みないやされた。

28:10 かれらはわたしたちを非常ひじょう尊敬そんけいし、出帆しゅっぱんときには、必要ひつよう品々しなじなってきてくれた。

28:11 三かげつたったのち、わたしたちは、このしまふゆごもりをしていたデオスクリのふねかざりのあるアレキサンドリヤのふねで、出帆しゅっぱんした。

28:12 そして、シラクサに寄港きこうして三のあいだ停泊ていはくし、

28:13 そこからすすんでレギオンにった。それから一にちおいて、南風なんぷういてきたのにじょうじ、ふつかにポテオリにいた。

28:14 そこで兄弟きょうだいたちにい、すすめられるまま、かれらのところに七日間なぬかかん滞在たいざいした。それからわたしたちは、ついにローマに到着とうちゃくした。

28:15 ところが、兄弟きょうだいたちは、わたしたちのことをいて、アピオ・ポロおよびトレス・タベルネまで出迎でむかえてくれた。パウロはかれらにって、かみ感謝かんしゃいさった。

28:16 わたしたちがローマにいたのち、パウロは、ひとりの番兵ばんぺいをつけられ、ひとりでむことをゆるされた。

28:17 三たってから、パウロは、重立おもだったユダヤじんたちをまねいた。みんなのものあつまったとき、かれらにった、「兄弟きょうだいたちよ、わたしは、わが国民こくみんたいしても、あるいは先祖せんぞ伝来でんらい慣例かんれいたいしても、何一なにひとつそむく行為こういがなかったのに、エルサレムで囚人しゅうじんとしてローマじんたちのわたされた。

28:18 かれらはわたしを調しらべた結果けっか、なんらあた罪状ざいじょうもないので、わたしを釈放しゃくほうしようとおもったのであるが、

28:19 ユダヤじんたちがこれに反対はんたいしたため、わたしはやむをず、カイザルに上訴じょうそするにいたったのである。しかしわたしは、わが同胞どうほううったえようなどとしているのではない。

28:20 こういうわけで、あなたがたにってかたいたいとねがっていた。事実じじつ、わたしは、イスラエルのいだいている希望きぼうのゆえに、このくさりにつながれているのである」。

28:21 そこでかれらは、パウロにった、「わたしたちは、ユダヤじんたちから、あなたについて、なんの文書ぶんしょっていないし、また、兄弟きょうだいたちのなかからここにきて、あなたについて不利ふり報告ほうこくをしたり、悪口あっこうったりしたものもなかった。

28:22 わたしたちは、あなたのかんがえていることを、直接ちょくせつあなたからくのが、ただしいことだとおもっている。じつは、この宗派しゅうはについては、いたるところで反対はんたいのあることが、わたしたちのみみにもはいっている」。

28:23 そこで、さだめて、おおぜいのひとが、パウロの宿やどにつめかけてきたので、あさからばんまで、パウロはかたつづけ、かみくにのことをあかしし、またモーセの律法りっぽう預言者よげんしゃしょいて、イエスについてかれらの説得せっとくにつとめた。

28:24 あるものはパウロのうことをけいれ、あるものしんじようともしなかった。

28:25 たがい意見いけんわなくて、みんなのものかえろうとしていたとき、パウロはひとことべてった、「聖霊せいれいはよくも預言者よげんしゃイザヤによって、あなたがたの先祖せんぞかたったものである。

28:26 『このたみってえ、あなたがたはくにはくが、けっしてさとらない。るにはるが、けっしてみとめない。

28:27 このたみこころにぶくなり、そのみみきこえにくく、そのじている。それは、かれらがず、みみかず、こころさとらず、あらためていやされることがないためである』。

28:28 そこで、あなたがたはっておくがよい。かみのこのすくい言葉ことばは、異邦人いほうじんおくられたのだ。かれらは、これにきしたがうであろう」。〔

28:29 パウロがこれらのことをおわると、ユダヤじんらは、たがいろんいながらかえってった。〕

28:30 パウロは、自分じぶんりたいえまんねんのあいだんで、たずねて人々ひとびとをみなむかれ、

28:31 はばからず、またさまたげられることもなく、かみくにつたえ、しゅイエス・キリストのことをおしえつづけた。