口語訳聖書(振り仮名付き)

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ルカによる福音ふくいんしょ

第1章    Lk-Audio 

1:1 わたしたちのあいだ成就じょうじゅされた出来事できごとを、最初さいしょからしたしく人々ひとびとであって、

1:2 御言みことばつかえた人々ひとびとつたえたとおり物語ものがたりつらねようと、おおくのひとけましたが、

1:3 テオピロ閣下かっかよ、わたしもすべてのことはじめからくわしく調しらべていますので、ここに、それを順序じゅんじょただしくきつづって、閣下かっかけんじることにしました。

1:4 すでにおきになっていること確実かくじつであることを、これによって十分じゅうぶんっていただきたいためであります。

1:5 ユダヤのおうヘロデのに、アビヤのくみ祭司さいしをザカリヤというものがいた。そのつまはアロンいえむすめのひとりで、をエリサベツといった。

1:6 ふたりともかみのみまえにただしいひとであって、しゅいましめとさだめとを、みな落度おちどなくおこなっていた。

1:7 ところが、エリサベツは不妊ふにんおんなであったため、かれらにはがなく、そしてふたりともすでに年老としおいていた。

1:8 さてザカリヤは、そのくみ当番とうばんになりかみのみまえに祭司さいしつとめをしていたとき、

1:9 祭司さいししょく慣例かんれいしたがってくじをいたところ、しゅ聖所せいじょにはいってこうをたくことになった。

1:10 こうをたいているあいだおおくの民衆みんしゅうはみなそといのっていた。

1:11 するとしゅ御使みつかいあらわれて、こうだんみぎった。

1:12 ザカリヤはこれをて、おじまどい、恐怖きょうふねんおそわれた。

1:13 そこで御使みつかいかれった、「おそれるな、ザカリヤよ、あなたのいのりきいれられたのだ。あなたのつまエリサベツはおとこむであろう。そのをヨハネとづけなさい。

1:14 かれはあなたによろこびとたのしみとをもたらし、おおくの人々ひとびともその誕生たんじょうよろこぶであろう。

1:15 かれしゅのみまえにおおいなるものとなり、ぶどうしゅつよさけをいっさいまず、はは胎内たいないにいるときからすでに聖霊せいれいたされており、

1:16 そして、イスラエルのおおくのらを、しゅなるかれらのかみかえらせるであろう。

1:17 かれはエリヤのれいちからとをもって、みまえに先立さきだってき、ちちこころけさせ、さからうもの義人ぎじんおもいをたせて、ととのえられたたみしゅそなえるであろう」。

1:18 するとザカリヤは御使みつかいった、「どうしてそんなことが、わたしにわかるでしょうか。わたしは老人ろうじんですし、つまとしをとっています」。

1:19 御使みつかいこたえてった、「わたしはかみのみまえにつガブリエルであって、このよろこばしいらせをあなたにかたつたえるために、つかわされたものである。

1:20 ときれば成就じょうじゅするわたしの言葉ことばしんじなかったから、あなたはおしになり、このことおこまで、ものがえなくなる」。

1:21 民衆みんしゅうはザカリヤをっていたので、かれ聖所せいじょないひまどっているのを不思議ふしぎおもっていた。

1:22 ついにかれてきたが、ものえなかったので、人々ひとびとかれ聖所せいじょうちでまぼろしをたのだとさとった。かれかれらに合図あいずをするだけで、きつづき、おしのままでいた。

1:23 それからつとめ期日きじつおわったので、いえかえった。

1:24 そののち、つまエリサベツはみごもり、五かげつのあいだきこもっていたが、

1:25 「しゅは、いまわたしをこころにかけてくださって、人々ひとびとあいだからわたしのはじのぞくために、こうしてくださいました」とった。

1:26 六かげつに、御使みつかいガブリエルが、かみからつかわされて、ナザレというガリラヤのまちいち処女しょじょのもとにきた。

1:27 この処女しょじょはダビデいえであるヨセフというひとのいいなづけになっていて、をマリヤといった。

1:28 御使みつかいがマリヤのところにきてった、「めぐまれたおんなよ、おめでとう、しゅがあなたとともにおられます」。

1:29 この言葉ことばにマリヤはひどく胸騒むなさわぎがして、このあいさつはなんのことであろうかと、おもいめぐらしていた。

1:30 すると御使みつかいった、「おそれるな、マリヤよ、あなたはかみからめぐみをいただいているのです。

1:31 よ、あなたはみごもっておとこむでしょう。そのをイエスとづけなさい。

1:32 かれおおいなるものとなり、いとたかものと、となえられるでしょう。そして、しゅなるかみかれちちダビデの王座おうざをおあたえになり、

1:33 かれはとこしえにヤコブのいえ支配しはいし、その支配しはいかぎりなくつづくでしょう」。

1:34 そこでマリヤは御使みつかいった、「どうして、そんなことがありましょうか。わたしにはまだおっとがありませんのに」。

1:35 御使みつかいこたえてった、「聖霊せいれいがあなたにのぞみ、いとたかものちからがあなたをおおうでしょう。それゆえに、うませいなるものであり、かみと、となえられるでしょう。

1:36 あなたの親族しんぞくエリサベツも老年ろうねんながら宿やどしています。不妊ふにんおんなといわれていたのに、はや六かげつになっています。

1:37 かみには、なんでもできないことはありません」。

1:38 そこでマリヤがった、「わたしはしゅのはしためです。お言葉ことばどおりこのりますように」。そして御使みつかい彼女かのじょからはなれてった。

1:39 そのころ、マリヤはって、大急おおいそぎで山里やまざとへむかいユダのまちき、

1:40 ザカリヤのいえにはいってエリサベツにあいさつした。

1:41 エリサベツがマリヤのあいさつをいたとき、その胎内たいないでおどった。エリサベツは聖霊せいれいたされ、

1:42 こえたかさけんでった、「あなたはおんななか祝福しゅくふくされたかた、あなたのたい祝福しゅくふくされています。

1:43 しゅ母上ははうえがわたしのところにきてくださるとは、なんという光栄こうえいでしょう。

1:44 ごらんなさい。あなたのあいさつのこえがわたしのみみにはいったとき、子供こども胎内たいないよろこびおどりました。

1:45 しゅのおかたりになったことがかなら成就じょうじゅするとしんじたおんなは、なんとさいわいなことでしょう」。

1:46 するとマリヤはった、

「わたしのたましいしゅをあがめ、

1:47 わたしのれい救主すくいぬしなるかみをたたえます。

1:48 このいやしいおんなをさえ、こころにかけてくださいました。いまからのち代々よよ人々ひとびとは、わたしをさいわいなおんなうでしょう、

1:49 ちからあるかたが、わたしにおおきなことをしてくださったからです。そのみはきよく、

1:50 そのあわれみは、代々よよかぎりなくしゅをかしこみおそれるものおよびます。

1:51 しゅはみうでをもってちからをふるい、こころおもいのおごりたかぶるものらし、

1:52 権力けんりょくあるもの王座おうざからきおろし、いやしいものげ、

1:53 えているものいものでかせ、んでいるもの空腹くうふくのままかえらせなさいます。

1:54 しゅは、あわれみをおわすれにならず、そのしもべイスラエルをたすけてくださいました、

1:55 わたしたちの父祖ふそアブラハムとその子孫しそんとをとこしえにあわれむと約束やくそくなさったとおりに」。

1:56 マリヤは、エリサベツのところに三かげつほど滞在たいざいしてから、いえかえった。

1:57 さてエリサベツはつきちて、おとこんだ。

1:58 近所きんじょ人々ひとびと親族しんぞくは、しゅおおきなあわれみを彼女かのじょにおかけになったことをいて、ともどもによろこんだ。

1:59 八日目かめになったので、おさ割礼かつれいをするために人々ひとびとがきて、ちちにちなんでザカリヤというにしようとした。

1:60 ところが、母親ははおやは、「いいえ、ヨハネというにしなくてはいけません」とった。

1:61 人々ひとびとは、「あなたの親族しんぞくなかには、そういうのついたものは、ひとりもいません」と彼女かのじょった。

1:62 そして父親ちちおやに、どんなにしたいのですかと、合図あいずたずねた。

1:63 ザカリヤはかきいたってこさせて、それに「そのはヨハネ」といたので、みんなのもの不思議ふしぎおもった。

1:64 すると、ちどころにザカリヤのくちひらけてしたがゆるみ、かたしてかみをほめたたえた。

1:65 近所きんじょ人々ひとびとはみなおそれをいだき、またユダヤの山里やまざといたるところに、これらのことがことごとくかたつたえられたので、

1:66 ものたちはみなそれをこころめて、「このは、いったい、どんなものになるだろう」とかたった。しゅのみかれともにあった。

1:67 ちちザカリヤは聖霊せいれいたされ、預言よげんしてった、

1:68 「しゅなるイスラエルのかみは、ほむべきかな。かみはそのたみかえりみてこれをあがない、

1:69 わたしたちのためにすくいつのしもべダビデのいえにおてになった。

1:70 ふるくから、せいなる預言者よげんしゃたちのくちによっておかたりになったように、

1:71 わたしたちをてきから、またすべてわたしたちをにくものから、すくすためである。

1:72 こうして、かみはわたしたちの父祖ふそたちにあわれみをかけ、そのせいなる契約けいやく

1:73 すなわち、父祖ふそアブラハムにおてになったちかいをおぼえて、

1:74 わたしたちをてきからすくし、

1:75 きているかぎり、きよくただしく、みまえにおそれなくつかえさせてくださるのである。

1:76 おさよ、あなたは、いとたかもの預言者よげんしゃばれるであろう。しゅのみまえに先立さきだってき、そのみちそなえ、

1:77 つみのゆるしによるすくいそのたみらせるのであるから。

1:78 これはわたしたちのかみのあわれみふかいみこころによる。また、そのあわれみによって、ひかりうえからわたしたちにのぞみ、

1:79 暗黒あんこくかげとにものてらし、わたしたちのあし平和へいわみちみちびくであろう」。

1:80 おさ成長せいちょうし、そのれいつよくなり、そしてイスラエルにあらわれるまで、荒野あらのにいた。 

第2章 

2:1 そのころ、ぜん世界せかい人口じんこう調査ちょうさをせよとの勅令ちょくれいが、皇帝こうていアウグストからた。

2:2 これは、クレニオがシリヤの総督そうとくであったときおこなわれた最初さいしょ人口じんこう調査ちょうさであった。

2:3 人々ひとびとはみな登録とうろくをするために、それぞれ自分じぶんまちかえってった。

2:4 ヨセフもダビデの家系かけいであり、またその血統けっとうであったので、ガリラヤのまちナザレをて、ユダヤのベツレヘムというダビデのまちのぼってった。

2:5 それは、すでに身重みおもになっていたいいなづけのつまマリヤとともに、登録とうろくをするためであった。

2:6 ところが、かれらがベツレヘムに滞在たいざいしているあいだに、マリヤはつきちて、

2:7 初子ういごみ、ぬのにくるんで、飼葉かいばおけのなかかせた。客間きゃくまにはかれらのいる余地よちがなかったからである。

2:8 さて、この地方ちほう羊飼ひつじかいたちがよる野宿のじゅくしながらひつじれのばんをしていた。

2:9 するとしゅ御使みつかいあらわれ、しゅ栄光えいこうかれらをめぐりてらしたので、かれらは非常ひじょうおそれた。

2:10 御使みつかいった、「おそれるな。よ、すべてのたみあたえられるおおきなよろこびを、あなたがたにつたえる。

2:11 きょうダビデのまちに、あなたがたのために救主すくいぬしがおうまれになった。このかたこそしゅなるキリストである。

2:12 あなたがたは、おさぬのにくるまって飼葉かいばおけのなかかしてあるのをるであろう。それが、あなたがたにあたえられるしるしである」。

2:13 するとたちまち、おびただしいてん軍勢ぐんぜいあらわれ、御使みつかい一緒いっしょになってかみをさんびしてった、

2:14 「いとたかきところでは、かみ栄光えいこうがあるように、うえでは、みこころにかなう人々ひとびと平和へいわがあるように」。

2:15 御使みつかいたちがかれらをはなれててんかえったとき、羊飼ひつじかいたちは「さあ、ベツレヘムへって、しゅがおらせくださったその出来事できごとてこようではないか」と、たがいかたった。

2:16 そしていそいでって、マリヤとヨセフ、また飼葉かいばおけにかしてあるおささがしあてた。

2:17 かれらにったうえで、このについて自分じぶんたちにらされたことを、人々ひとびとつたえた。

2:18 人々ひとびとはみな、羊飼ひつじかいたちがはなしてくれたことをいて、不思議ふしぎおもった。

2:19 しかし、マリヤはこれらのことをことごとくこころめて、おもいめぐらしていた。

2:20 羊飼ひつじかいたちは、見聞みききしたことがなにもかも自分じぶんたちにかたられたとおりであったので、かみをあがめ、またさんびしながらかえってった。

2:21 八ぎ、割礼かつれいをほどこすときとなったので、受胎じゅたいのまえに御使みつかいげたとおり、おさをイエスとづけた。

2:22 それから、モーセの律法りっぽうによるかれらのきよめの期間きかんぎたとき、両親りょうしんおされてエルサレムへのぼった。

2:23 それはしゅ律法りっぽうに「ははたいはじめてひらおとこはみな、しゅせいべつされたものと、となえられねばならない」といてあるとおり、おさしゅにささげるためであり、

2:24 またおなしゅ律法りっぽうに、「やまばと一つがい、または、いえばとのひな二」とさだめてあるのにしたがって、犠牲ぎせいをささげるためであった。

2:25 そのとき、エルサレムにシメオンというひとがいた。このひとただしい信仰しんこうふかひとで、イスラエルのなぐさめられるのをのぞんでいた。また聖霊せいれいかれ宿やどっていた。

2:26 そしてしゅのつかわす救主すくいぬしうまではぬことはないと、聖霊せいれいしめしをけていた。

2:27 このひと御霊みたまかんじてみやにはいった。すると律法りっぽうさだめてあることをおこなうため、両親りょうしんもそのイエスをれてはいってきたので、

2:28 シメオンはおさうでいだき、かみをほめたたえてった、

2:29 「しゅよ、いまこそ、あなたはみ言葉ことばのとおりにこのしもべやすらかにらせてくださいます、

2:30 わたしのいまあなたのすくいたのですから。

2:31 このすくいはあなたが万民ばんみんのまえにおそなえになったもので、

2:32 異邦人いほうじんてら啓示けいじひかりたみイスラエルの栄光えいこうであります」。

2:33 ちちははとはおさについてこのようにかたられたことを、不思議ふしぎおもった。

2:34 するとシメオンはかれらをしゅくし、そしてははマリヤにった、「ごらんなさい、このおさは、イスラエルのおおくのひとたおれさせたりちあがらせたりするために、また反対はんたいけるしるしとして、さだめられています。――

2:35 そして、あなた自身じしんもつるぎでむねつらぬかれるでしょう。――それはおおくのひとこころにあるおもいが、あらわれるようになるためです」。

2:36 また、アセルぞくのパヌエルのむすめで、アンナというおんな預言者よげんしゃがいた。彼女かのじょ非常ひじょうとしをとっていた。むすめ時代じだいにとついで、七年間ねんかんだけおっとともみ、

2:37 そののちやもめぐらしをし、八十四さいになっていた。そしてみやはなれずによるひる断食だんじきいのりとをもってかみつかえていた。

2:38 この老女ろうじょも、ちょうどそのとき近寄ちかよってきて、かみ感謝かんしゃをささげ、そしてこのおさのことを、エルサレムのすくいのぞんでいるすべての人々ひとびとかたりきかせた。

2:39 両親りょうしんしゅ律法りっぽうどおりすべてのことをすませたので、ガリラヤへむかい、自分じぶんまちナザレにかえった。

2:40 おさは、ますます成長せいちょうしてつよくなり、知恵ちえち、そしてかみめぐみがそのうえにあった。

2:41 さて、イエスの両親りょうしんは、過越すぎこしまつりには毎年まいとしエルサレムへのぼっていた。

2:42 イエスが十二さいになったときも、慣例かんれいしたがってまつりのために上京じょうきょうした。

2:43 ところが、まつりおわってかえるとき、少年しょうねんイエスはエルサレムに居残いのこっておられたが、両親りょうしんはそれにづかなかった。

2:44 そして道連みちづれのなかにいることとおもいこんで、一にちってしまい、それから、親族しんぞく知人ちじんなかさがしはじめたが、

2:45 つからないので、さがしまわりながらエルサレムへ引返ひきかえした。

2:46 そして三のちに、イエスがみやなか教師きょうしたちのまんなかにすわって、かれらのはなしいたり質問しつもんしたりしておられるのをつけた。

2:47 人々ひとびとはみな、イエスのかしこさやそのこたえ驚嘆きょうたんしていた。

2:48 両親りょうしんはこれをおどろき、そしてははかれった、「どうしてこんなことをしてくれたのです。ごらんなさい、おとうさまもわたしも心配しんぱいして、あなたをさがしていたのです」。

2:49 するとイエスはわれた、「どうしておさがしになったのですか。わたしが自分じぶんちちいえにいるはずのことを、ごぞんじなかったのですか」。

2:50 しかし、両親りょうしんはそのかたられた言葉ことばさとることができなかった。

2:51 それからイエスは両親りょうしん一緒いっしょにナザレにくだってき、かれらにおつかえになった。はははこれらのことをみなこころめていた。

2:52 イエスはますます知恵ちえくわわり、たけもび、そしてかみひとからあいされた。 

第3章 

3:1 皇帝こうていテベリオ在位ざいいだい十五ねん、ポンテオ・ピラトがユダヤの総督そうとく、ヘロデがガリラヤの領主りょうしゅ、その兄弟きょうだいピリポがイツリヤ・テラコニテ地方ちほう領主りょうしゅ、ルサニヤがアビレネの領主りょうしゅ

3:2 アンナスとカヤパとが大祭司だいさいしであったとき、かみことば荒野あらのでザカリヤのヨハネにのぞんだ。

3:3 かれはヨルダンのほとりのぜん地方ちほうって、つみのゆるしをさせる悔改くいあらためのバプテスマをつたえた。

3:4 それは、預言者よげんしゃイザヤの言葉ことばしょいてあるとおりである。すなわち

荒野あらのばわるものこえがする、しゅみちそなえよ、そのみちすじをまっすぐにせよ』。

3:5 すべてのたにめられ、すべてのやまおかとは、たいらにされ、まがったところはまっすぐに、わるいみちはならされ、

3:6 ひとはみなかみすくいるであろう」。

3:7 さて、ヨハネは、かれからバプテスマをけようとしててきた群衆ぐんしゅうにむかってった、「まむしのらよ、せまってきているかみいかりから、のがれられると、おまえたちにだれがおしえたのか。

3:8 だから、悔改くいあらためにふさわしいむすべ。自分じぶんたちのちちにはアブラハムがあるなどと、こころなかおもってもみるな。おまえたちにっておく。かみはこれらのいしころからでも、アブラハムのおこすことができるのだ。

3:9 おのがすでにもとにかれている。だから、むすばないはことごとくられて、なかまれるのだ」。

3:10 そこで群衆ぐんしゅうかれに、「それでは、わたしたちはなにをすればよいのですか」とたずねた。

3:11 かれこたえてった、「下着したぎを二まいもっているものは、たないものけてやりなさい。食物しょくもつっているもの同様どうようにしなさい」。

3:12 取税人しゅぜいにんもバプテスマをけにきて、かれった、「先生せんせい、わたしたちはなにをすればよいのですか」。

3:13 かれらにった、「きまっているもの以上いじょうててはいけない」。

3:14 兵卒へいそつたちもたずねてった、「では、わたしたちはなにをすればよいのですか」。かれった、「ひとをおどかしたり、だましったりしてはいけない。自分じぶん給与きゅうよ満足まんぞくしていなさい」。

3:15 民衆みんしゅう救主すくいぬしのぞんでいたので、みなこころなかでヨハネのことを、もしかしたらこのひとがそれではなかろうかとかんがえていた。

3:16 そこでヨハネはみんなのものにむかってった、「わたしはみずでおまえたちにバプテスマをさづけるが、わたしよりもちからのあるかたが、おいでになる。わたしには、そのくつのひもをうちもない。このかたは、聖霊せいれいとによっておまえたちにバプテスマをおさづけになるであろう。

3:17 また、って、むぎをふるいけ、むぎくらおさめ、からはえないてるであろう」。

3:18 こうしてヨハネはほかにもなお、さまざまのすすめをして、民衆みんしゅうおしえいた。

3:19 ところが領主りょうしゅヘロデは、兄弟きょうだいつまヘロデヤのことで、また自分じぶんがしたあらゆる悪事あくじについて、ヨハネから非難ひなんされていたので、

3:20 かれごくめて、いろいろな悪事あくじうえに、もう一つこの悪事あくじかさねた。

3:21 さて、民衆みんしゅうがみなバプテスマをけたとき、イエスもバプテスマをけていのっておられると、てんひらけて、

3:22 聖霊せいれいがはとのような姿すがたをとってイエスのうえくだり、そしててんからこえがした、「あなたはわたしのあいする、わたしのこころにかなうものである」。

3:23 イエスが宣教せんきょうをはじめられたのは、としおよそ三十さいときであって、人々ひとびとかんがえによれば、ヨセフのであった。ヨセフはヘリの

3:24 それから、さかのぼって、マタテ、レビ、メルキ、ヤンナイ、ヨセフ、

3:25 マタテヤ、アモス、ナホム、エスリ、ナンガイ、

3:26 マハテ、マタテヤ、シメイ、ヨセク、ヨダ、

3:27 ヨハナン、レサ、ゾロバベル、サラテル、ネリ、

3:28 メルキ、アデイ、コサム、エルマダム、エル、

3:29 ヨシュア、エリエゼル、ヨリム、マタテ、レビ、

3:30 シメオン、ユダ、ヨセフ、ヨナム、エリヤキム、

3:31 メレヤ、メナ、マタタ、ナタン、ダビデ、

3:32 エッサイ、オベデ、ボアズ、サラ、ナアソン、

3:33 アミナダブ、アデミン、アルニ、エスロン、パレス、ユダ、

3:34 ヤコブ、イサク、アブラハム、テラ、ナホル、

3:35 セルグ、レウ、ペレグ、エベル、サラ、

3:36 カイナン、アルパクサデ、セム、ノア、ラメク、

3:37 メトセラ、エノク、ヤレデ、マハラレル、カイナン、

3:38 エノス、セツ、アダム、そしてかみにいたる。 

第4章 

4:1 さて、イエスは聖霊せいれいちてヨルダンがわからかえり、

4:2 荒野あらのを四十にちのあいだ御霊みたまにひきまわされて、悪魔あくまこころみにあわれた。そのあいだなにべず、その日数ひかずがつきると、空腹くうふくになられた。

4:3 そこで悪魔あくまった、「もしあなたがかみであるなら、このいしに、パンになれとめいじてごらんなさい」。

4:4 イエスはこたえてわれた、「『ひとはパンだけできるものではない』といてある」。

4:5 それから、悪魔あくまはイエスをたかところれてき、またたくまに世界せかいのすべての国々くにぐにせて

4:6 った、「これらの国々くにぐに権威けんい栄華えいがとをみんな、あなたにあげましょう。それらはわたしにまかせられていて、だれでもきなひとにあげてよいのですから。

4:7 それで、もしあなたがわたしのまえにひざまずくなら、これを全部ぜんぶあなたのものにしてあげましょう」。

4:8 イエスはこたえてわれた、「『しゅなるあなたのかみはいし、ただかみにのみつかえよ』といてある」。

4:9 それから悪魔あくまはイエスをエルサレムにれてき、みや頂上ちょうじょうたせてった、「もしあなたがかみであるなら、ここからしたびおりてごらんなさい。

4:10 『かみはあなたのために、御使みつかいたちにめいじてあなたをまもらせるであろう』とあり、

4:11 また、『あなたのあしいしちつけられないように、かれらはあなたをでささえるであろう』ともいてあります」。

4:12 イエスはこたえてわれた、「『しゅなるあなたのかみこころみてはならない』とわれている」。

4:13 悪魔あくまはあらゆるこころみをしつくして、一時いちじイエスをはなれた。

4:14 それからイエスは御霊みたまちからちあふれてガリラヤへかえられると、そのうわさがその地方ちほう全体ぜんたいにひろまった。

4:15 イエスはしょ会堂かいどうおしえ、みんなのものから尊敬そんけいをおけになった。

4:16 それからおそだちになったナザレにき、安息日あんそくにちにいつものように会堂かいどうにはいり、聖書せいしょ朗読ろうどくしようとしてたれた。

4:17 すると預言者よげんしゃイザヤのしょ手渡てわたされたので、そのしょひらいて、こういてあるところされた、

4:18 「しゅ御霊みたまがわたしに宿やどっている。まずしい人々ひとびと福音ふくいんつたえさせるために、わたしをせいべつしてくださったからである。しゅはわたしをつかわして、囚人しゅうじん解放かいほうされ、盲人もうじんひらかれることをらせ、ちひしがれているもの自由じゆうさせ、

4:19 しゅのめぐみのとしらせるのである」。

4:20 イエスは聖書せいしょいてかかりのものかえし、せきかれると、会堂かいどうにいるみんなのものがイエスにそそがれた。

4:21 そこでイエスは、「このせいは、あなたがたがみみにしたこの成就じょうじゅした」ときはじめられた。

4:22 すると、かれらはみなイエスをほめ、またそのくちからるめぐみの言葉ことば感嘆かんたんしてった、「このひとはヨセフのではないか」。

4:23 そこでかれらにわれた、「あなたがたは、きっと『医者いしゃよ、自分じぶん自身じしんをいやせ』ということわざをいて、カペナウムでおこなわれたといていたことを、あなたの郷里きょうりのこのでもしてくれ、とうであろう」。

4:24 それからわれた、「よくっておく。預言者よげんしゃは、自分じぶん郷里きょうりでは歓迎かんげいされないものである。

4:25 よくいておきなさい。エリヤの時代じだいに、三ねん六かげつにわたっててんじ、イスラエル全土ぜんどだいききんがあったさい、そこにはおおくのやもめがいたのに、

4:26 エリヤはそのうちのだれにもつかわされないで、ただシドンのサレプタにいるひとりのやもめにだけつかわされた。

4:27 また預言者よげんしゃエリシャの時代じだいに、イスラエルにはおおくのらい病人びょうにんがいたのに、そのうちのひとりもきよめられないで、ただシリヤのナアマンだけがきよめられた」。

4:28 会堂かいどうにいたものたちはこれをいて、みないきどおりにち、

4:29 がってイエスをまちそとし、そのまちっているおかのがけまでひっぱってって、おとそうとした。

4:30 しかし、イエスはかれらのまんなかとおけて、ってかれた。

4:31 それから、イエスはガリラヤのまちカペナウムにくだってかれた。そして安息日あんそくにちになると、人々ひとびとをおおしえになったが、

4:32 その言葉ことば権威けんいがあったので、かれらはそのおしえおどろいた。

4:33 すると、けがれた悪霊あくれいにつかれたひと会堂かいどうにいて、大声おおごえさけした、

4:34 「ああ、ナザレのイエスよ、あなたはわたしたちとなんのかかわりがあるのです。わたしたちをほろぼしにこられたのですか。あなたがどなたであるか、わかっています。かみ聖者せいじゃです」。

4:35 イエスはこれをしかって、「だまれ、このひとからけ」とわれた。すると悪霊あくれいかれひとなかにたおし、きずわせずに、そのひとからった。

4:36 みんなのものおどろいて、たがいかたってった、「これは、いったい、なんという言葉ことばだろう。権威けんいちからとをもってけがれたれいめいじられると、かれらはくのだ」。

4:37 こうしてイエスの評判ひょうばんが、その地方ちほうのいたるところにひろまっていった。

4:38 イエスは会堂かいどうてシモンのいえにおはいりになった。ところがシモンのしゅうとめがたかねつんでいたので、人々ひとびと彼女かのじょのためにイエスにおねがいした。

4:39 そこで、イエスはそのまくらもとにって、ねつくようにめいじられると、ねつき、おんなはすぐにがって、かれらをもてなした。

4:40 れると、いろいろな病気びょうきになやむものをかかえている人々ひとびとが、みなそれをイエスのところにれてきたので、そのひとりびとりにいて、おいやしになった。

4:41 悪霊あくれいも「あなたこそかみです」とさけびながらおおくの人々ひとびとからていった。しかし、イエスはかれらをいましめて、ものうことをおゆるしにならなかった。かれらがイエスはキリストだとっていたからである。

4:42 けると、イエスはさびしいところかれたが、群衆ぐんしゅうさがしまわって、みもとにあつまり、自分じぶんたちからはなれてかれないようにと、めた。

4:43 しかしイエスは、「わたしは、ほかの町々まちまちにもかみくに福音ふくいんつたえねばならない。自分じぶんはそのためにつかわされたのである」とわれた。

4:44 そして、ユダヤのしょ会堂かいどうおしえかれた。 

第5章 

5:1 さて、群衆ぐんしゅうかみことばこうとしてせてきたとき、イエスはゲネサレ湖畔こはんっておられたが、

5:2 そこに二そうの小舟こぶねせてあるのをごらんになった。漁師りょうしたちは、ふねからおりてあみあらっていた。

5:3 その一そうはシモンのふねであったが、イエスはそれにみ、シモンにたのんできしからすこしこぎさせ、そしてすわって、ふねなかから群衆ぐんしゅうにおおしえになった。

5:4 はなしがすむと、シモンに「おきへこぎし、あみをおろしてりょうをしてみなさい」とわれた。

5:5 シモンはこたえてった、「先生せんせい、わたしたちは夜通よどおはたらきましたが、なにれませんでした。しかし、お言葉ことばですから、あみをおろしてみましょう」。

5:6 そしてそのとおりにしたところ、おびただしいうおれがはいって、あみやぶれそうになった。

5:7 そこで、もう一そうのふねにいた仲間なかまに、加勢かせいるよう合図あいずをしたので、かれらがきてうお両方りょうほうふねいっぱいにれた。そのために、ふねしずみそうになった。

5:8 これをてシモン・ペテロは、イエスのひざもとにひれしてった、「しゅよ、わたしからはなれてください。わたしは罪深つみふかものです」。

5:9 かれ一緒いっしょにいたものたちもみな、れたうおがおびただしいのにおどろいたからである。

5:10 シモンの仲間なかまであったゼベダイのヤコブとヨハネも、同様どうようであった。すると、イエスがシモンにわれた、「おそれることはない。いまからあなたは人間にんげんをとる漁師りょうしになるのだ」。

5:11 そこでかれらはふねりくげ、いっさいをててイエスにしたがった。

5:12 イエスがあるまちにおられたとき全身ぜんしんらいびょうになっているひとがそこにいた。イエスをると、かおせてねがってった、「しゅよ、みこころでしたら、きよめていただけるのですが」。

5:13 イエスはばしてかれにさわり、「そうしてあげよう、きよくなれ」とわれた。すると、らいびょうがただちにってしまった。

5:14 イエスは、だれにもはなさないようにとかれかせ、「ただって自分じぶんのからだを祭司さいしせ、それからあなたのきよめのため、モーセがめいじたとおりのささげものをして、人々ひとびと証明しょうめいしなさい」とおめいじになった。

5:15 しかし、イエスの評判ひょうばんはますますひろまってき、おびただしい群衆ぐんしゅうが、おしえいたり、病気びょうきをなおしてもらったりするために、あつまってきた。

5:16 しかしイエスは、さびしいところ退しりぞいていのっておられた。

5:17 あるのこと、イエスがおしえておられると、ガリラヤやユダヤの方々ほうぼうむらから、またエルサレムからきたパリサイびと律法りっぽう学者がくしゃたちが、そこにすわっていた。しゅちからはたらいて、イエスは人々ひとびとをいやされた。

5:18 そのとき、ある人々ひとびとが、ひとりの中風ちゅうぶをわずらっているひととこにのせたままれてきて、いえなかはこれ、イエスのまえこうとした。

5:19 ところが、群衆ぐんしゅうのためにどうしてもはこれる方法ほうほうがなかったので、屋根やねにのぼり、かわらをはいで、病人びょうにんとこごと群衆ぐんしゅうのまんなかにつりおろして、イエスのまえにおいた。

5:20 イエスはかれらの信仰しんこうて、「ひとよ、あなたのつみはゆるされた」とわれた。

5:21 すると律法りっぽう学者がくしゃとパリサイびとたちとは、「かみけがすことをうこのひとは、いったい、何者なにものだ。かみおひとりのほかに、だれがつみをゆるすことができるか」とってろんじはじめた。

5:22 イエスはかれらの論議ろんぎぬいて、「あなたがたはこころなかなにろんじているのか。

5:23 あなたのつみはゆるされたとうのと、きてあるけとうのと、どちらがたやすいか。

5:24 しかし、ひと地上ちじょうつみをゆるす権威けんいっていることが、あなたがたにわかるために」とかれらにたいしてい、中風ちゅうぶものにむかって、「あなたにめいじる。きよ、とこげていえかえれ」とわれた。

5:25 すると病人びょうにん即座そくざにみんなのまえきあがり、ていたとこりあげて、かみをあがめながらいえかえってった。

5:26 みんなのもの驚嘆きょうたんしてしまった。そしてかみをあがめ、おそれにたされて、「きょうはおどろくべきことをた」とった。

5:27 そののち、イエスがかれると、レビという取税人しゅぜいにん収税所しゅうぜいしょにすわっているのをて、「わたしにしたがってきなさい」とわれた。

5:28 すると、かれはいっさいをててちあがり、イエスにしたがってきた。

5:29 それから、レビは自分じぶんいえで、イエスのために盛大せいだい宴会えんかいもよおしたが、取税人しゅぜいにんやそのほかおおぜいの人々ひとびとが、とも食卓しょくたくいていた。

5:30 ところが、パリサイびとやその律法りっぽう学者がくしゃたちが、イエスの弟子でしたちにたいしてつぶやいてった、「どうしてあなたがたは、取税人しゅぜいにん罪人つみびとなどと飲食いんしょくともにするのか」。

5:31 イエスはこたえてわれた、「健康けんこうひとには医者いしゃはいらない。いるのは病人びょうにんである。

5:32 わたしがきたのは、義人ぎじんまねくためではなく、罪人つみびとまねいてあらためさせるためである」。

5:33 またかれらはイエスにった、「ヨハネの弟子でしたちは、しばしば断食だんじきをし、またいのりをしており、パリサイびと弟子でしたちもそうしているのに、あなたの弟子でしたちはべたりんだりしています」。

5:34 するとイエスはわれた、「あなたがたは、花婿はなむこ一緒いっしょにいるのに、婚礼こんれいきゃく断食だんじきをさせることができるであろうか。

5:35 しかし、花婿はなむこうばられるる。そのには断食だんじきをするであろう」。

5:36 それからイエスはまた一つのたとえかたられた、「だれも、あたらしい着物きものからぬのぎれをって、ふる着物きものにつぎをてるものはない。もしそんなことをしたら、あたらしい着物きものくことになるし、あたらしいのからったぬのぎれもふるいのにわないであろう。

5:37 まただれも、あたらしいぶどうしゅふるかわぶくろれはしない。もしそんなことをしたら、あたらしいぶどうしゅかわぶくろをはりき、そしてぶどうしゅるし、かわぶくろもむだになるであろう。

5:38 あたらしいぶどうしゅあたらしいかわぶくろれるべきである。

5:39 まただれも、ふるさけんでから、あたらしいのをほしがりはしない。『ふるいのがい』とかんがえているからである」。 

第6章 

6:1 ある安息日あんそくにちにイエスが麦畑むぎばたけなかをとおってかれたとき、弟子でしたちがをつみ、でもみながらべていた。

6:2 すると、あるパリサイびとたちがった、「あなたがたはなぜ、安息日あんそくにちにしてはならぬことをするのか」。

6:3 そこでイエスがこたえてわれた、「あなたがたは、ダビデとそのともものたちとがえていたとき、ダビデのしたことについて、んだことがないのか。

6:4 すなわち、かみいえにはいって、祭司さいしたちのほかだれもべてはならぬそなえのパンをってべ、またともものたちにもあたえたではないか」。

6:5 またかれらにわれた、「ひと安息日あんそくにちしゅである」。

6:6 また、ほかの安息日あんそくにち会堂かいどうにはいっておしえておられたところ、そこに右手みぎてのなえたひとがいた。

6:7 律法りっぽう学者がくしゃやパリサイびとたちは、イエスをうったえる口実こうじつ見付みつけようとおもって、安息日あんそくにちにいやされるかどうかをうかがっていた。

6:8 イエスはかれらのおもっていることをって、そののなえたひとに、「きて、まんなかちなさい」とわれると、がってった。

6:9 そこでイエスはかれらにむかってわれた、「あなたがたにくが、安息日あんそくにちぜんおこなうのとあくおこなうのと、いのちすくうのところすのと、どちらがよいか」。

6:10 そしてかれ一同いちどうまわして、そのひとに「ばしなさい」とわれた。そのとおりにすると、そのもとどおりになった。

6:11 そこでかれらははげしくいかって、イエスをどうかしてやろうと、たがい話合はなしあいをはじめた。

6:12 このころ、イエスはいのるためにやまき、てっしてかみいのられた。

6:13 けると、弟子でしたちをせ、そのなかから十二にんえらし、これに使徒しとというをおあたえになった。

6:14 すなわち、ペテロともばれたシモンとその兄弟きょうだいアンデレ、ヤコブとヨハネ、ピリポとバルトロマイ、

6:15 マタイとトマス、アルパヨのヤコブと、熱心ねっしんとうばれたシモン、

6:16 ヤコブのユダ、それからイスカリオテのユダ。このユダが裏切者うらぎりものとなったのである。

6:17 そして、イエスはかれらと一緒いっしょやまくだって平地ひらちたれたが、おおぜいの弟子でしたちや、ユダヤ全土ぜんど、エルサレム、ツロとシドンの海岸かいがん地方ちほうなどからのだい群衆ぐんしゅうが、

6:18 おしえこうとし、また病気びょうきをなおしてもらおうとして、そこにきていた。そしてけがれたれいなやまされているものたちも、いやされた。

6:19 また群衆ぐんしゅうはイエスにさわろうとつとめた。それはちからがイエスのうちからて、みんなのもの次々つぎつぎにいやしたからである。

6:20 そのとき、イエスはをあげ、弟子でしたちをわれた、

「あなたがたまずしいひとたちは、さいわいだ。かみくにはあなたがたのものである。

6:21 あなたがたいまえているひとたちは、さいわいだ。りるようになるからである。あなたがたいまいているひとたちは、さいわいだ。わらうようになるからである。

6:22 人々ひとびとがあなたがたをにくむとき、またひとのためにあなたがたを排斥はいせきし、ののしり、汚名おめいせるときは、あなたがたはさいわいだ。

6:23 そのにはよろこびおどれ。よ、てんにおいてあなたがたのけるむくいはおおきいのだから。かれらの祖先そせんも、預言者よげんしゃたちにたいしておなじことをしたのである。

6:24 しかしあなたがたんでいるひとたちは、わざわいだ。なぐさめをけてしまっているからである。

6:25 あなたがたいま満腹まんぷくしているひとたちは、わざわいだ。えるようになるからである。あなたがたいまわらっているひとたちは、わざわいだ。かなしみくようになるからである。

6:26 ひとみなあなたがたをほめるときは、あなたがたはわざわいだ。かれらの祖先そせんも、にせ預言者よげんしゃたちにたいしておなじことをしたのである。

6:27 しかし、いているあなたがたにう。てきあいし、にくもの親切しんせつにせよ。

6:28 のろうもの祝福しゅくふくし、はずかしめるもののためにいのれ。

6:29 あなたのほおものにはほかのほおをもけてやり、あなたの上着うわぎうばものには下着したぎをもこばむな。

6:30 あなたにもとめるものにはあたえてやり、あなたのものうばものからはりもどそうとするな。

6:31 人々ひとびとにしてほしいと、あなたがたののぞむことを、人々ひとびとにもそのとおりにせよ。

6:32 自分じぶんあいしてくれるものあいしたからとて、どれほどの手柄てがらになろうか。罪人つみびとでさえ、自分じぶんあいしてくれるものあいしている。

6:33 自分じぶんによくしてくれるものによくしたとて、どれほどの手柄てがらになろうか。罪人つみびとでさえ、それくらいのことはしている。

6:34 またかえしてもらうつもりでしたとて、どれほどの手柄てがらになろうか。罪人つみびとでも、おなじだけのものをかえしてもらおうとして、仲間なかますのである。

6:35 しかし、あなたがたは、てきあいし、ひとによくしてやり、またなにてにしないでしてやれ。そうすればけるむくいはおおきく、あなたがたはいとたかものとなるであろう。いとたかものは、おんらぬものにも悪人あくにんにも、なさけぶかいからである。

6:36 あなたがたのちちなるかみ慈悲じひぶかいように、あなたがたも慈悲じひぶかものとなれ。

6:37 ひとをさばくな。そうすれば、自分じぶんもさばかれることがないであろう。またひとつみさだめるな。そうすれば、自分じぶんつみさだめられることがないであろう。ゆるしてやれ。そうすれば、自分じぶんもゆるされるであろう。

6:38 あたえよ。そうすれば、自分じぶんにもあたえられるであろう。人々ひとびとはおしれ、ゆすりれ、あふれるまでにりょうをよくして、あなたがたのふところにれてくれるであろう。あなたがたのはかるそのはかりで、自分じぶんにもはかりかえされるであろうから」。

6:39 イエスはまた一つのたとえかたられた、「盲人もうじん盲人もうじん手引てびきができようか。ふたりともあなまないだろうか。

6:40 弟子でしはその以上いじょうのものではないが、修業しゅうぎょうをつめば、みなそののようになろう。

6:41 なぜ、兄弟きょうだいにあるちりをながら、自分じぶんにあるはりみとめないのか。

6:42 自分じぶんにあるはりないでいて、どうして兄弟きょうだいにむかって、兄弟きょうだいよ、あなたのにあるちりをらせてください、とえようか。偽善者ぎぜんしゃよ、まず自分じぶんからはりりのけるがよい、そうすれば、はっきりえるようになって、兄弟きょうだいにあるちりをりのけることができるだろう。

6:43 わるのなるはないし、またのなるわるもない。

6:44 はそれぞれ、そのでわかる。いばらからいちじくをることはないし、ばらからぶどうをむこともない。

6:45 善人ぜんにんこころくらからものし、悪人あくにんわるくらからわるものす。こころからあふれることを、くちかたるものである。

6:46 わたしをしゅよ、しゅよ、とびながら、なぜわたしのうことをおこなわないのか。

6:47 わたしのもとにきて、わたしの言葉ことばいておこなものが、なにているか、あなたがたにおしえよう。

6:48 それは、ふかり、いわうえ土台どだいをすえていえてるひとている。洪水こうずい激流げきりゅうがそのいえせてきても、それをうごかすことはできない。よくててあるからである。

6:49 しかしいてもおこなわないひとは、土台どだいなしで、つちうえいえてたひとている。激流げきりゅうがそのいえせてきたら、たちまちたおれてしまい、その被害ひがいおおきいのである」。 

第7章 

7:1 イエスはこれらの言葉ことばをことごとく人々ひとびとかせてしまったのち、カペナウムにかえってこられた。

7:2 ところが、ある百卒長ひゃくそつちょうたのみにしていたしもべが、病気びょうきになってにかかっていた。

7:3 この百卒長ひゃくそつちょうはイエスのことをいて、ユダヤじん長老ちょうろうたちをイエスのところにつかわし、自分じぶんしもべたすけにきてくださるようにと、おねがいした。

7:4 かれらはイエスのところにきて、熱心ねっしんねがってった、「あのひとはそうしていただくねうちがございます。

7:5 わたしたちの国民こくみんあいし、わたしたちのために会堂かいどうててくれたのです」。

7:6 そこで、イエスはかれらとれだっておかけになった。ところが、そのいえからほどとおくないあたりまでこられたとき、百卒長ひゃくそつちょうともだちをおくってイエスにわせた、「しゅよ、どうぞ、ご足労そくろうくださいませんように。わたしの屋根やねしたにあなたをおれする資格しかくは、わたしにはございません。

7:7 それですから、自分じぶんでおむかえにあがるねうちさえないとおもっていたのです。ただ、お言葉ことばください。そして、わたしのしもべをなおしてください。

7:8 わたしも権威けんいしたふくしているものですが、わたしのしたにも兵卒へいそつがいまして、ひとりのものに『け』とえばき、ほかのものに『こい』とえばきますし、また、しもべに『これをせよ』とえば、してくれるのです」。

7:9 イエスはこれをいて非常ひじょう感心かんしんされ、ついてきた群衆ぐんしゅうほういてわれた、「あなたがたにっておくが、これほどの信仰しんこうは、イスラエルのなかでもたことがない」。

7:10 使つかいにきたものたちがいえかえってみると、しもべ元気げんきになっていた。

7:11 そののち、もなく、ナインというまちへおいでになったが、弟子でしたちやおおぜいの群衆ぐんしゅう一緒いっしょった。

7:12 まちもんちかづかれると、ちょうど、あるやもめにとってひとりむすこであったものんだので、ほうむりにすところであった。おおぜいのまちひとたちが、そのははにつきそっていた。

7:13 しゅはこの婦人ふじんふか同情どうじょうせられ、「かないでいなさい」とわれた。

7:14 そして近寄ちかよってかんをかけられると、かついでいるものたちがまったので、「若者わかものよ、さあ、きなさい」とわれた。

7:15 すると、死人しにんがってものした。イエスはかれをそのははにおわたしになった。

7:16 人々ひとびとはみなおそれをいだき、「だい預言者よげんしゃがわたしたちのあいだあらわれた」、また、「かみはそのたみかえりみてくださった」とって、かみをほめたたえた。

7:17 イエスについてのこのはなしは、ユダヤ全土ぜんどおよびその附近ふきんのいたるところにひろまった。

7:18 ヨハネの弟子でしたちは、これらのことを全部ぜんぶかれ報告ほうこくした。するとヨハネは弟子でしなかからふたりのものんで、

7:19 しゅのもとにおくり、「『きたるべきかた』はあなたなのですか。それとも、ほかにだれかをつべきでしょうか」とたずねさせた。

7:20 そこで、このひとたちがイエスのもとにきてった、「わたしたちはバプテスマのヨハネからの使つかいですが、『きたるべきかた』はあなたなのですか、それとも、ほかにだれかをつべきでしょうか、とヨハネがたずねています」。

7:21 そのとき、イエスはさまざまの病苦びょうく悪霊あくれいとになや人々ひとびとをいやし、またおおくの盲人もうじんえるようにしておられたが、

7:22 こたえてわれた、「って、あなたがたが見聞みききしたことを、ヨハネに報告ほうこくしなさい。盲人もうじんえ、あしなえはあるき、らい病人びょうにんはきよまり、みみしいはきこえ、死人しにんきかえり、まずしい人々ひとびと福音ふくいんかされている。

7:23 わたしにつまずかないものは、さいわいである」。

7:24 ヨハネの使つかいってしまうと、イエスはヨハネのことを群衆ぐんしゅうかたりはじめられた、「あなたがたは、なに荒野あらのてきたのか。かぜらぐあしであるか。

7:25 では、なにてきたのか。やわらかい着物きものをまとったひとか。きらびやかにかざって、ぜいたくにくらしている人々ひとびとなら、宮殿きゅうでんにいる。

7:26 では、なにてきたのか。預言者よげんしゃか。そうだ、あなたがたにうが、預言者よげんしゃ以上いじょうものである。

7:27 『よ、わたしは使つかいをあなたのさきにつかわし、あなたのまえに、みちととのえさせるであろう』

いてあるのは、このひとのことである。

7:28 あなたがたにっておく。おんなんだものなかで、ヨハネよりおおきい人物じんぶつはいない。しかし、かみくにもっとちいさいものも、かれよりはおおきい。

7:29 (これをいた民衆みんしゅうみな、また取税人しゅぜいにんたちも、ヨハネのバプテスマをけてかみただしいことをみとめた。

7:30 しかし、パリサイびと律法りっぽう学者がくしゃたちとはかれからバプテスマをけないで、自分じぶんたちにたいするかみのみこころをにした。)

7:31 だからいま時代じだい人々ひとびとなにくらべようか。かれらはなにているか。

7:32 それは子供こどもたちが広場ひろばにすわって、たがいびかけ、

『わたしたちがふえいたのに、あなたたちはおどってくれなかった。とむらいのうたうたったのに、いてくれなかった』
うのにている。

7:33 なぜなら、バプテスマのヨハネがきて、パンをべることも、ぶどうしゅむこともしないと、あなたがたは、あれは悪霊あくれいにつかれているのだ、とい、

7:34 またひとがきてべたりんだりしていると、よ、あれはしょくをむさぼるもの大酒おおざけもの、また取税人しゅぜいにん罪人つみびと仲間なかまだ、とう。

7:35 しかし、知恵ちえただしいことは、そのすべての証明しょうめいする」。

7:36 あるパリサイびとがイエスに、食事しょくじともにしたいともうたので、そのパリサイびといえにはいって食卓しょくたくかれた。

7:37 するとそのとき、そのまちつみおんなであったものが、パリサイびといえ食卓しょくたくいておられることをいて、香油こうゆれてある石膏せっこうのつぼをってきて、

7:38 きながら、イエスのうしろでそのあしもとにり、まずなみだでイエスのあしをぬらし、自分じぶんかみでぬぐい、そして、そのあし接吻せっぷんして、香油こうゆった。

7:39 イエスをまねいたパリサイびとがそれをて、こころなかった、「もしこのひと預言者よげんしゃであるなら、自分じぶんにさわっているおんながだれだか、どんなおんなかわかるはずだ。それはつみおんななのだから」。

7:40 そこでイエスはかれにむかってわれた、「シモン、あなたにうことがある」。かれは「先生せんせい、おっしゃってください」とった。

7:41 イエスがわれた、「ある金貸かねかしにかねをかりたひとがふたりいたが、ひとりは五百デナリ、もうひとりは五十デナリをりていた。

7:42 ところが、かえすことができなかったので、かれはふたりともゆるしてやった。このふたりのうちで、どちらがかれおおあいするだろうか」。

7:43 シモンがこたえてった、「おおくゆるしてもらったほうだとおもいます」。イエスがわれた、「あなたの判断はんだんただしい」。

7:44 それからおんなほういて、シモンにわれた、「このおんなないか。わたしがあなたのいえにはいってきたときに、あなたはあしあらみずをくれなかった。ところが、このおんななみだでわたしのあしをぬらし、かみでふいてくれた。

7:45 あなたはわたしに接吻せっぷんをしてくれなかったが、彼女かのじょはわたしがいえにはいったときから、わたしのあし接吻せっぷんをしてやまなかった。

7:46 あなたはわたしのあたまあぶらってくれなかったが、彼女かのじょはわたしのあし香油こうゆってくれた。

7:47 それであなたにうが、このおんなおおあいしたから、そのおおくのつみはゆるされているのである。すこしだけゆるされたものは、すこしだけしかあいさない」。

7:48 そしておんなに、「あなたのつみはゆるされた」とわれた。

7:49 すると同席どうせきものたちがこころなかいはじめた、「つみをゆるすことさえするこのひとは、いったい、何者なにものだろう」。

7:50 しかし、イエスはおんなにむかってわれた、「あなたの信仰しんこうがあなたをすくったのです。安心あんしんしてきなさい」。 

第8章 

8:1 そののちイエスは、かみくに福音ふくいんきまたつたえながら、町々まちまち村々むらむら巡回じゅんかいつづけられたが、十二弟子でしもおともをした。

8:2 また悪霊あくれいされ病気びょうきをいやされた数名すうめい婦人ふじんたち、すなわち、七つの悪霊あくれいしてもらったマグダラとばれるマリヤ、

8:3 ヘロデの家令かれいクーザのつまヨハンナ、スザンナ、そのほかおおくの婦人ふじんたちも一緒いっしょにいて、自分じぶんたちのものをもって一行いっこう奉仕ほうしした。

8:4 さて、おおぜいの群衆ぐんしゅうあつまり、そのうえ町々まちまちからのひとたちがイエスのところに、ぞくぞくとせてきたので、一つのたとえはなしをされた、

8:5 「たねまきがたねをまきにった。まいているうちに、あるたねみちばたにち、みつけられ、そしてそらとりべられてしまった。

8:6 ほかのたねいわうえち、はえはしたが水気みずけがないのでれてしまった。

8:7 ほかのたねは、いばらのあいだちたので、いばらも一緒いっしょしげってきて、それをふさいでしまった。

8:8 ところが、ほかのたねちたので、はえそだって百ばいものむすんだ」。こうかたられたのち、こえをあげて「みみのあるものくがよい」とわれた。

8:9 弟子でしたちは、このたとえはどういう意味いみでしょうか、とイエスに質問しつもんした。

8:10 そこでわれた、「あなたがたには、かみくに奥義おくぎることがゆるされているが、ほかのひとたちには、てもえず、いてもさとられないために、たとえはなすのである。

8:11 このたとえはこういう意味いみである。たねかみことばである。

8:12 みちばたにちたのは、いたのち、しんじることもすくわれることもないように、悪魔あくまによってそのこころから御言みことばうばられるひとたちのことである。

8:13 いわうえちたのは、御言みことばいたときにはよろこんでけいれるが、いので、しばらくはしんじていても、試錬しれんときると、信仰しんこうてるひとたちのことである。

8:14 いばらのなかちたのは、いてからごすうちに、生活せいかつこころづかいやとみ快楽かいらくにふさがれて、じゅくするまでにならないひとたちのことである。

8:15 ちたのは、御言みことばいたのち、これをただしいこころでしっかりとまもり、しのんでむすぶにいたひとたちのことである。

8:16 だれもあかりをともして、それをなにかのうつわでおおいかぶせたり、寝台しんだいしたいたりはしない。燭台しょくだいうえいて、はいってひとたちにひかりえるようにするのである。

8:17 かくされているもので、あらわにならないものはなく、秘密ひみつにされているもので、ついにはられ、あかるみにされないものはない。

8:18 だから、どうくかに注意ちゅういするがよい。っているひとさらあたえられ、っていないひとは、っているとおもっているものまでも、げられるであろう」。

8:19 さて、イエスのはは兄弟きょうだいたちとがイエスのところにきたが、群衆ぐんしゅうのためそばちかくにくことができなかった。

8:20 それで、だれかが「あなたの母上ははうえ兄弟きょうだいがたが、おにかかろうとおもって、そとっておられます」と取次とりついだ。

8:21 するとイエスは人々ひとびとにむかってわれた、「かみ御言みことばいておこなものこそ、わたしのはは、わたしの兄弟きょうだいなのである」。

8:22 あるのこと、イエスは弟子でしたちとふねみ、「みずうみこうぎしわたろう」とわれたので、一同いちどう船出ふなでした。

8:23 わたってあいだに、イエスはねむってしまわれた。すると突風とっぷうみずうみきおろしてきたので、かれらはみずをかぶって危険きけんになった。

8:24 そこで、みそばにってきてイエスをおこし、「先生せんせい先生せんせい、わたしたちはにそうです」とった。イエスはがって、かぜ荒浪あらなみとをおしかりになると、んでなぎになった。

8:25 イエスはかれらにわれた、「あなたがたの信仰しんこうは、どこにあるのか」。かれらはおそおどろいてたがいった、「いったい、このかたはだれだろう。おめいじになると、かぜみずしたがうとは」。

8:26 それから、かれらはガリラヤの対岸たいがん、ゲラサびとわたった。

8:27 りくにあがられると、そのまちひとで、悪霊あくれいにつかれてながいあいだ着物きものず、いえつかないで墓場はかばにばかりいたひとに、出会であわれた。

8:28 このひとがイエスをさけし、みまえにひれして大声おおごえった、「いとたかかみイエスよ、あなたはわたしとなんのかかわりがあるのです。おねがいです、わたしをくるしめないでください」。

8:29 それは、イエスがけがれたれいに、そのひとからけ、とおめいじになったからである。というのは、悪霊あくれいなんかれをひきとらえたので、かれくさりあしかせとでつながれてされていたが、それをっては悪霊あくれいによって荒野あらのいやられていたのである。

8:30 イエスはかれに「なんという名前なまえか」とおたずねになると、「レギオンといます」とこたえた。かれなかにたくさんの悪霊あくれいがはいりんでいたからである。

8:31 悪霊あくれいどもは、そこれぬところちてくことを自分じぶんたちにおめいじにならぬようにと、イエスにねがいつづけた。

8:32 ところが、そこのやまべにおびただしいぶたれがってあったので、そのぶたなかへはいることをゆるしていただきたいと、悪霊あくれいどもがねがた。イエスはそれをおゆるしになった。

8:33 そこで悪霊あくれいどもは、そのひとからぶたなかへはいりんだ。するとそのれは、がけからみずうみへなだれをってくだり、おぼれんでしまった。

8:34 ものたちは、この出来事できごとして、まち村里むらざとにふれまわった。

8:35 人々ひとびとはこの出来事できごとてきた。そして、イエスのところにきて、悪霊あくれいしてもらったひと着物きものて、正気しょうきになってイエスのあしもとにすわっているのをて、おそれた。

8:36 それをひとたちは、この悪霊あくれいにつかれていたものすくわれた次第しだいを、かれらにかたかせた。

8:37 それから、ゲラサの地方ちほう民衆みんしゅうはこぞって、自分じぶんたちのところからってくださるようにとイエスにたのんだ。かれらが非常ひじょう恐怖きょうふおそわれていたからである。そこで、イエスはふねってかえりかけられた。

8:38 悪霊あくれいしてもらったひとは、おともをしたいと、しきりにねがったが、イエスはこうってかれをおかえしになった。

8:39 「いえかえって、かみがあなたにどんなにおおきなことをしてくださったか、かたかせなさい」。そこでかれって、自分じぶんにイエスがしてくださったことを、ことごとく町中まちじゅういひろめた。

8:40 イエスがかえってこられると、群衆ぐんしゅうよろこむかえた。みんながイエスをちうけていたのである。

8:41 するとそこに、ヤイロというひとがきた。このひと会堂司かいどうづかさであった。イエスのあしもとにひれして、自分じぶんいえにおいでくださるようにと、しきりにねがった。

8:42 かれに十二さいばかりになるひとりむすめがあったが、にかけていた。ところが、イエスがかれる途中とちゅう群衆ぐんしゅうせまってきた。

8:43 ここに、十二年間ねんかんながをわずらっていて、医者いしゃのために自分じぶん身代しんだいをみな使つかはたしてしまったが、だれにもなおしてもらえなかったおんながいた。

8:44 このおんながうしろから近寄ちかよってみころものふさにさわったところ、そのなががたちまちまってしまった。

8:45 イエスはわれた、「わたしにさわったのは、だれか」。人々ひとびとはみな自分じぶんではないとったので、ペテロが「先生せんせい群衆ぐんしゅうがあなたをかこんで、ひしめきっているのです」とこたえた。

8:46 しかしイエスはわれた、「だれかがわたしにさわった。ちからがわたしからったのをかんじたのだ」。

8:47 おんなかくしきれないのをって、ふるえながらすすて、みまえにひれし、イエスにさわったわけと、さわるとたちまちなおったこととを、みんなのまえはなした。

8:48 そこでイエスがおんなわれた、「むすめよ、あなたの信仰しんこうがあなたをすくったのです。安心あんしんしてきなさい」。

8:49 イエスがまだはなしておられるうちに、会堂司かいどうづかさいえからひとがきて、「おじょうさんはなくなられました。このうえ先生せんせいわずらわすにはおよびません」とった。

8:50 しかしイエスはこれをいて会堂司かいどうづかさにむかってわれた、「おそれることはない。ただしんじなさい。むすめたすかるのだ」。

8:51 それからいえにはいられるとき、ペテロ、ヨハネ、ヤコブおよびその父母ふぼのほかは、だれも一緒いっしょにはいってることをおゆるしにならなかった。

8:52 人々ひとびとはみな、むすめのためにかなしんでいた。イエスはわれた、「くな、むすめんだのではない。 ねむっているだけである」。

8:53 人々ひとびとむすめんだことをっていたので、イエスをあざわらった。

8:54 イエスはむすめって、びかけてわれた、「むすめよ、きなさい」。

8:55 するとそのれいがもどってきて、むすめ即座そくざがった。イエスはなにものあたえるように、さしずをされた。

8:56 両親りょうしんおどろいてしまった。イエスはこの出来事できごとをだれにもはなさないようにと、かれらにめいじられた。