口語訳聖書(振り仮名付き)
章: 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
ダニエル書しょ
第1章 Dn-Audio
1:1 ユダの王おうエホヤキムの治世ちせいの第だい三年ねんにバビロンの王おうネブカデネザルはエルサレムにきて、これを攻せめ囲かこんだ。
1:2 主しゅはユダの王おうエホヤキムと、神かみの宮みやの器具きぐの一部いちぶとを、彼かれの手てにわたされたので、彼かれはこれをシナルの地ちの自分じぶんの神かみの宮みやに携たずさえゆき、その器具きぐを自分じぶんの神かみの蔵くらに納おさめた。
1:3 時ときに王おうは宦官かんがんの長ちょうアシペナズに、イスラエルの人々ひとびとの中なかから、王おうの血統けっとうの者ものと、貴族きぞくたる者もの数人すうにんとを、連つれて来くるように命めいじた。
1:4 すなわち身みに傷きずがなく、容姿ようしが美うつくしく、すべての知恵ちえにさとく、知識ちしきがあって、思慮しりょ深ふかく、王おうの宮みやに仕つかえるに足たる若者わかものを連つれてこさせ、これにカルデヤびとの文学ぶんがくと言語げんごとを学まなばせようとした。
1:5 そして王おうは王おうの食たべる食物しょくもつと、王おうの飲のむ酒さけの中なかから、日々ひびの分ぶんを彼かれらに与あたえて、三年ねんのあいだ彼かれらを養やしない育そだて、その後のち、彼かれらをして王おうの前まえに、はべらせようとした。
1:6 彼かれらのうちに、ユダの部族ぶぞくのダニエル、ハナニヤ、ミシャエル、アザリヤがあった。
1:7 宦官かんがんの長ちょうは彼かれらに名なを与あたえて、ダニエルをベルテシャザルと名なづけ、ハナニヤをシャデラクと名なづけ、ミシャエルをメシャクと名なづけ、アザリヤをアベデネゴと名なづけた。
1:8 ダニエルは王おうの食物しょくもつと、王おうの飲のむ酒さけとをもって、自分じぶんを汚けがすまいと、心こころに思おもい定さだめたので、自分じぶんを汚けがさせることのないように、宦官かんがんの長ちょうに求もとめた。
1:9 神かみはダニエルをして、宦官かんがんの長ちょうの前まえに、恵めぐみとあわれみとを得えさせられたので、
1:10 宦官かんがんの長ちょうはダニエルに言いった、「わが主しゅなる王おうは、あなたがたの食たべ物ものと、飲のみ物ものとを定さだめられたので、わたしはあなたがたの健康けんこうの状態じょうたいが、同年輩どうねんぱいの若者わかものたちよりも悪わるいと、王おうが見みられることを恐おそれるのです。そうすればあなたがたのために、わたしのこうべが、王おうの前まえに危あやうくなるでしょう」。
1:11 そこでダニエルは宦官かんがんの長ちょうがダニエル、ハナニヤ、ミシャエルおよびアザリヤの上うえに立たてた家令かれいに言いった、
1:12 「どうぞ、しもべらを十日かの間あいだためしてください。わたしたちにただ野菜やさいを与あたえて食たべさせ、水みずを飲のませ、
1:13 そしてわたしたちの顔色かおいろと、王おうの食物しょくもつを食たべる若者わかものの顔色かおいろとをくらべて見みて、あなたの見みるところにしたがって、しもべらを扱あつかってください」。
1:14 家令かれいはこの事ことについて彼かれらの言いうところを聞ききいれ、十日かの間あいだ、彼かれらをためした。
1:15 十日かの終おわりになってみると、彼かれらの顔色かおいろは王おうの食物しょくもつを食たべたすべての若者わかものよりも美うつくしく、また肉にくも肥こえ太ふとっていた。
1:16 それで家令かれいは彼かれらの食物しょくもつと、彼かれらの飲のむべき酒さけとを除のぞいて、彼かれらに野菜やさいを与あたえた。
1:17 この四人にんの者ものには、神かみは知識ちしきを与あたえ、すべての文学ぶんがくと知恵ちえにさとい者ものとされた。ダニエルはまたすべての幻まぼろしと夢ゆめとを理解りかいした。
1:18 さて、王おうが命めいじたところの若者わかものを召めし入いれるまでの日数にっすうが過すぎたので、宦官かんがんの町まちは彼かれらをネブカデネザルの前まえに連つれていった。
1:19 王おうが彼かれらと語かたってみると、彼かれらすべての中なかにはダニエル、ハナニヤ、ミシャエル、アザリヤにならぶ者ものがなかったので、彼かれらは王おうの前まえにはべることとなった。
1:20 王おうが彼かれらにさまざまの事ことを尋たずねてみると、彼かれらは知恵ちえと理解りかいにおいて、全国ぜんこくの博士はかせ、法ほう術じゅつ士しにまさること十倍ばいであった。
1:21 ダニエルはクロス王おうの元年がんねんまで仕つかえていた。
第2章 2:1 ネブカデネザルの治世ちせいの第だい二年ねんに、ネブカデネザルは夢ゆめを見み、そのために心こころに思おもい悩なやんで眠ねむることができなかった。2:2 そこで王おうは命めいじて王おうのためにその夢ゆめを解とかせようと、博士はかせ、法ほう術じゅつ士し、魔術まじゅつ士し、カルデヤびとを召めさせたので、彼かれらはきて王おうの前まえに立たった。2:3 王おうは彼かれらにむかって、「わたしは夢ゆめを見みたが、その夢ゆめを知しろうと心こころに思おもい悩なやんでいる」と言いったので、2:4 カルデヤびとらはアラム語ごで王おうに言いった、「王おうよ、とこしえに生いきながらえられますように。どうぞしもべらにその夢ゆめをお話はなしください。わたしたちはその解とき明あかしを申もうしあげましょう」。2:5 王おうは答こたえてカルデヤびとに言いった、「わたしの言いうことは必かならず行おこなう。あなたがたがもしその夢ゆめと、その解とき明あかしを、わたしに示しめさないならば、あなたがたの身みは切きり裂さかれ、あなたがたの家いえは滅ほろぼされる。2:6 しかし、その夢ゆめとその解とき明あかしとを示しめすならば、贈おくり物ものと報酬ほうしゅうと大おおいなる栄誉えいよとを、わたしから受うけるだろう。それゆえその夢ゆめとその解とき明あかしとを、わたしに示しめしなさい」。2:7 彼かれらは再ふたたび答こたえて言いった、「王おうよ、しもべらにその夢ゆめをお話はなしください。そうすればわたしたちはその解とき明あかしを示しめしましょう」。2:8 王おうは答こたえて言いった、「あなたがたはわたしが言いったことは、必かならず行おこなうことを承知しょうちしているので、時ときを延のばそうとしているのを、わたしは確たしかに知しっている。2:9 もしその夢ゆめをわたしに示しめさないならば、あなたがたの受うける刑罰けいばつはただ一つあるのみだ。あなたがたは一致いっちして、偽いつわりと、欺あざむきの言葉ことばをわたしの前まえに述のべて、時ときの変かわるのを待まとうとしているのだ。まずその夢ゆめをわたしに示しめしなさい。そうすれば、わたしはあなたがたがその解とき明あかしをも、示しめしうることを知しるだろう」。2:10 カルデヤびとらは王おうの前まえに答こたえて言いった、「世よの中なかには王おうのその要求ようきゅうに応おうじうる者ものはひとりもありません。どんな大おおいなる力ちからある王おうでも、このような事ことを、博士はかせ、法ほう術じゅつ士し、カルデヤびとに尋たずねた者ものはありませんでした。2:11 王おうの尋たずねられる事ことはむずかしい事ことであって、肉にくなる者ものと共ともにおられない神々かみがみを除のぞいては、王おうの前まえにこれを示しめしうる者ものはないでしょう」。 2:12 これによって王おうは怒いかり、かつ大おおいに憤いきどおり、バビロンの知者ちしゃをすべて滅ほろぼせと命めいじた。2:13 この命令めいれいが発はっせられたので、知者ちしゃらは殺ころされることになった。またダニエルとその同僚どうりょうをも殺ころそうと求もとめた。2:14 そして王おうの侍衛じえいの長ちょうアリオクが、バビロンの知者ちしゃらを殺ころそうと出でてきたので、ダニエルは思慮しりょと知恵ちえとをもってこれに応答おうとうした。2:15 すなわち王おうの高官こうかんアリオクに「どうして王おうはそんなにきびしい命令めいれいを出だされたのですか」と言いった。アリオクがその事ことをダニエルに告つげ知しらせると、2:16 ダニエルは王おうのところへはいっていって、その解とき明あかしを示しめすために、しばらくの時ときを与あたえられるよう王おうに願ねがった。 2:17 それからダニエルは家いえに帰かえり、同僚どうりょうのハナニヤ、ミシャエルおよびアザリヤにこの事ことを告つげ知しらせ、2:18 共ともにこの秘密ひみつについて天てんの神かみのあわれみを請こい、ダニエルとその同僚どうりょうとが、他たのバビロンの知者ちしゃと共ともに滅ほろぼされることのないように求もとめた。2:19 ついに夜よるの幻まぼろしのうちにこの秘密ひみつがダニエルに示しめされたので、ダニエルは天てんの神かみをほめたたえた。 2:20 ダニエルは言いった、 「神かみのみ名なは永遠えいえんより永遠えいえんに至いたるまでほむべきかな、知恵ちえと権能けんのうとは神かみのものである。2:21 神かみは時ときと季節きせつとを変へんじ、王おうを廃はいし、王おうを立たて、知者ちしゃに知恵ちえを与あたえ、賢者けんじゃに知識ちしきを授さづけられる。2:22 神かみは深妙しんみょう、秘密ひみつの事ことをあらわし、暗黒あんこくにあるものを知しり、光ひかりをご自身じしんのうちに宿やどす。2:23 わが先祖せんぞたちの神かみよ、あなたはわたしに知恵ちえと力ちからとを賜たまい、今いまわれわれがあなたに請こい求もとめたところのものをわたしに示しめし、王おうの求もとめたことをわれわれに示しめされたので、わたしはあなたに感謝かんしゃし、あなたをさんびします」。2:24 そこでダニエルは、王おうがバビロンの知者ちしゃたちを滅ほろぼすことを命めいじておいたアリオクのもとへ行いって、彼かれにこう言いった、「バビロンの知者ちしゃたちを滅ほろぼしてはなりません。わたしを王おうの前まえに連つれて行いってください。わたしはその解とき明あかしを王おうに示しめします」。 2:25 アリオクは急いそいでダニエルを王おうの前まえに連つれて行いき、王おうにこう言いった、「ユダから捕とらえ移うつした者ものの中なかに、その解とき明あかしを王おうにお知おしらせすることのできる、ひとりの人ひとを見みつけました」。2:26 王おうは答こたえて、ベルテシャザルという名なのダニエルに言いった、「あなたはわたしが見みた夢ゆめと、その解とき明あかしとをわたしに知しらせることができるのか」。2:27 ダニエルは王おうに答こたえて言いった、「王おうが求もとめられる秘密ひみつは、知者ちしゃ、法ほう術じゅつ士し、博士はかせ、占うらない師しなど、これを王おうに示しめすことはできません。2:28 しかし秘密ひみつをあらわすひとりの神かみが天てんにおられます。彼かれは後のちの日ひに起おこるべき事ことを、ネブカデネザル王おうに知しらされたのです。あなたの夢ゆめと、あなたが床とこにあって見みた脳中のうちゅうの幻まぼろしはこれです。2:29 王おうよ、あなたが床とこにおられたとき、この後のちどんな事ことがあろうかと、思おもいまわされたが、秘密ひみつをあらわされるかたが、将来しょうらいどんな事ことが起おこるかを、あなたに知しらされたのです。2:30 この秘密ひみつをわたしにあらわされたのは、すべての生いける者ものにまさって、わたしに知恵ちえがあるためではなく、ただその解とき明あかしを、王おうにお知おしらせすることによって、あなたが心こころに思おもわれたことを、お知しりになるためです。 2:31 王おうよ、あなたは一つの大おおいなる像ぞうが、あなたの前まえに立たっているのを見みられました。その像ぞうは大おおきく、非常ひじょうに光ひかり輝かがやいて、恐おそろしい外観がいかんをもっていました。2:32 その像ぞうの頭あたまは純金じゅんきん、胸むねと両りょう腕うでとは銀ぎん、腹はらと、ももとは青銅せいどう、2:33 すねは鉄てつ、足あしの一部いちぶは鉄てつ、一部いちぶは粘土ねんどです。2:34 あなたが見みておられたとき、一つの石いしが人手ひとでによらずに切きり出だされて、その像ぞうの鉄てつと粘土ねんどとの足あしを撃うち、これを砕くだきました。2:35 こうして鉄てつと、粘土ねんどと、青銅せいどうと、銀ぎんと、金きんとはみな共ともに砕くだけて、夏なつの打うち場ばのもみがらのようになり、風かぜに吹ふき払はらわれて、あとかたもなくなりました。ところがその像ぞうを撃うった石いしは、大おおきな山やまとなって全ぜん地ちに満みちました。 2:36 これがその夢ゆめです。今いまわたしたちはその解とき明あかしを、王おうの前まえに申もうしあげましょう。2:37 王おうよ、あなたは諸王しょおうの王おうであって、天てんの神かみはあなたに国くにと力ちからと勢いきおいと栄さかえとを賜たまい、2:38 また人ひとの子こら、野のの獣けもの、空そらの鳥とりはどこにいるものでも、皆みなこれをあなたの手てに与あたえて、ことごとく治おさめさせられました。あなたはあの金きんの頭あたまです。2:39 あなたの後のちにあなたに劣おとる一つの国くにが起おこります。また第だい三に青銅せいどうの国くにが起おこって、全ぜん世界せかいを治おさめるようになります。2:40 第だい四の国くには鉄てつのように強つよいでしょう。鉄てつはよくすべての物ものをこわし砕くだくからです。鉄てつがこれらをことごとく打うち砕くだくように、その国くにはこわし砕くだくでしょう。2:41 あなたはその足あしと足あしの指ゆびを見みられましたが、その一部いちぶは陶器とうき師しの粘土ねんど、一部いちぶは鉄てつであったので、それは分裂ぶんれつした国くにをさします。しかしあなたが鉄てつと粘土ねんどとの混まじったのを見みられたように、その国くにには鉄てつの強つよさがあるでしょう。2:42 その足あしの指ゆびの一部いちぶは鉄てつ、一部いちぶは粘土ねんどであったように、その国くには一部いちぶは強つよく、一部いちぶはもろいでしょう。2:43 あなたが鉄てつと粘土ねんどとの混まじったのを見みられたように、それらは婚姻こんいんによって、互たがいに混ざるまざるでしょう。しかし鉄てつと粘土ねんどとは相混あいまじらないように、かれとこれと相合そうごうすることはありません。2:44 それらの王おうたちの世よに、天てんの神かみは一つの国くにを立たてられます。これはいつまでも滅ほろびることがなく、その主権しゅけんは他たの民たみにわたされず、かえってこれらのもろもろの国くにを打うち破やぶって滅ほろぼすでしょう。そしてこの国くには立たって永遠えいえんに至いたるのです。2:45 一つの石いしが人手ひとでによらずに山やまから切きり出だされ、その石いしが鉄てつと、青銅せいどうと、粘土ねんどと、銀ぎんと、金きんとを打うち砕くだいたのを、あなたが見みられたのはこの事ことです。大おおいなる神かみがこの後のちに起おこるべきことを、王おうに知しらされたのです。その夢ゆめはまことであって、この解とき明あかしは確たしかです」。 2:46 そこでネブカデネザル王おうはひれ伏ふして、ダニエルを拝はいし、供そなえ物ものと薫香くんこうとを、彼かれにささげることを命めいじた。2:47 そして王おうはダニエルに答こたえて言いった、「あなたがこの秘密ひみつをあらわすことができたのを見みると、まことに、あなたがたの神かみは神々かみがみの神かみ、王おうたちの主しゅであって、秘密ひみつをあらわされるかただ」。2:48 こうして王おうはダニエルに高たかい位くらいを授さづけ、多おおくの大おおいなる贈おくり物ものを与あたえて、彼かれをバビロン全ぜん州しゅうの総督そうとくとし、またバビロンの知者ちしゃたちを統轄とうかつする者ものの長ちょうとした。2:49 王おうはまたダニエルの願ねがいによって、シャデラクとメシャクとアベデネゴを任命にんめいして、バビロン州しゅうの事務じむをつかさどらせた。ただしダニエルは王おうの宮みやにとどまっていた。 第3章 3:1 ネブカデネザル王おうは一つの金きんの像ぞうを造つくった。その高たかさは六十キュビト、その幅はばは六キュビトで、彼かれはこれをバビロン州しゅうのドラの平野へいやに立たてた。3:2 そしてネブカデネザル王おうは、総督そうとく、長官ちょうかん、知事ちじ、参議さんぎ、庫くら官かん、法官ほうかん、高僧こうそうおよび諸しょ州しゅうの官吏かんりたちを召めし集あつめ、ネブカデネザル王おうの立たてたこの像ぞうの落成らくせい式しきに臨のぞませようとした。3:3 そこで、総督そうとく、長官ちょうかん、知事ちじ、参議さんぎ、庫こ官かん、法官ほうかん、高僧こうそうおよび諸しょ州しゅうの官吏かんりたちは、ネブカデネザル王おうの立たてた像ぞうの落成らくせい式しきに臨のぞみ、そのネブカデネザルの立たてた像ぞうの前まえに立たった。3:4 時ときに伝令でんれい者しゃは大声おおごえに呼よばわって言いった、「諸民しょみん、諸しょ族ぞく、諸国しょこく語ごの者ものよ、あなたがたにこう命めいじられる。3:5 角笛つのぶえ、横笛よこぶえ、琴こと、三角琴さんかくごと、立琴たてごと、風笛かざぶえなどの、もろもろの楽器がっきの音ねを聞きく時ときは、ひれ伏ふしてネブカデネザル王おうの立たてた金きんの像ぞうを拝おがまなければならない。3:6 だれでもひれ伏ふして拝おがまない者ものは、ただちに火ひの燃もえる炉ろの中なかに投なげ込こまれる」と。3:7 そこで民たみらはみな、角笛つのぶえ、横笛よこぶえ、琴こと、三角琴さんかくごと、立琴たてごと、風笛かざぶえなどの、もろもろの楽器がっきの音ねを聞きくや、諸民しょみん、諸しょ族ぞく、諸国しょこく語ごの者ものたちはみな、ひれ伏ふして、ネブカデネザル王おうの立たてた金きんの像ぞうを拝おがんだ。 3:8 その時とき、あるカルデヤびとらが進すすみきて、ユダヤ人ひとをあしざまに訴うったえた。3:9 すなわち彼かれらはネブカデネザル王おうに言いった、「王おうよ、とこしえに生いきながらえられますように。3:10 王おうよ、あなたは命令めいれいを出だして仰おおせられました。すべて、角笛つのぶえ、横笛よこぶえ、琴こと、三角琴さんかくごと、立琴たてごと、風笛かざぶえなどの、もろもろの楽器がっきの音ねを聞きく者ものは皆みな、ひれ伏ふして金きんの像ぞうを拝おがまなければならない。3:11 また、だれでもひれ伏ふして拝おがまない者ものはみな、火ひの燃もえる炉ろの中なかに投なげ込こまれると。3:12 ここにあなたが任命にんめいして、バビロン州しゅうの事務じむをつかさどらせられているユダヤ人ひとシャデラク、メシャクおよびアベデネゴがおります。王おうよ、この人々ひとびとはあなたを尊たっとばず、あなたの神々かみがみにも仕つかえず、あなたの立たてられた金きんの像ぞうをも拝おがもうとしません」。 3:13 そこでネブカデネザルは怒いかりかつ憤いきどおって、シャデラク、メシャクおよびアベデネゴを連つれてこいと命めいじたので、この人々ひとびとを王おうの前まえに連つれてきた。3:14 ネブカデネザルは彼かれらに言いった、「シャデラク、メシャク、アベデネゴよ、あなたがたがわが神々かみがみに仕つかえず、またわたしの立たてた金きんの像ぞうを拝おがまないとは、ほんとうなのか。3:15 あなたがたがもし、角笛つのぶえ、横笛よこぶえ、琴こと、三角琴さんかくごと、立琴たてごと、風笛かざぶえなどの、もろもろの楽器がっきの音ねを聞きくときにひれ伏ふして、わたしが立たてた像ぞうを、ただちに拝おがむならば、それでよろしい。しかし、拝おがむことをしないならば、ただちに火ひの燃もえる炉ろの中なかに投なげ込こまれる。いったい、どの神かみが、わたしの手てからあなたがたを救すくうことができようか」。 3:16 シャデラク、メシャクおよびアベデネゴは王おうに答こたえて言いった、「ネブカデネザルよ、この事ことについて、お答こたえする必要ひつようはありません。3:17 もしそんなことになれば、わたしたちの仕つかえている神かみは、その火ひの燃もえる炉ろから、わたしたちを救すくい出だすことができます。また王おうよ、あなたの手てから、わたしたちを救すくい出だされます。3:18 たといそうでなくても、王おうよ、ご承知しょうちください。わたしたちはあなたの神々かみがみに仕つかえず、またあなたの立たてた金きんの像ぞうを拝おがみません」。 3:19 そこでネブカデネザルは怒いかりに満みち、シャデラク、メシャクおよびアベデネゴにむかって、顔色かおいろを変かえ、炉ろを平常へいじょうよりも七倍ばい熱あつくせよと命めいじた。3:20 またその軍勢ぐんぜいの中なかの力ちからの強つよい人々ひとびとを呼よんで、シャデラク、メシャクおよびアベデネゴを縛しばって、彼かれらを火ひの燃もえる炉ろの中なかに投なげ込こめと命めいじた。3:21 そこでこの人々ひとびとは、外套がいとう、下着したぎ、帽子ぼうし、その他たの衣服いふくのまま縛しばられて、火ひの燃もえる炉ろの中なかに投なげ込こまれた。3:22 王おうの命令めいれいはきびしく、かつ炉ろは、はなはだしく熱ねっしていたので、シャデラク、メシャクおよびアベデネゴを引ひきつれていった人々ひとびとは、その火炎かえんに焼やき殺ころされた。3:23 シャデラク、メシャク、アベデネゴの三人にんは縛しばられたままで、火ひの燃もえる炉ろの中なかに落おち込こんだ。 3:24 その時とき、ネブカデネザル王おうは驚おどろいて急いそぎ立たちあがり、大臣だいじんたちに言いった、「われわれはあの三人にんを縛しばって、火ひの中なかに投なげ入いれたではないか」。彼かれらは王おうに答こたえて言いった、「王おうよ、そのとおりです」。3:25 王おうは答こたえて言いった、「しかし、わたしの見みるのに四人にんの者ものがなわめなしに、火ひの中なかを歩あるいているが、なんの害がいをも受うけていない。その第だい四の者ものの様子ようすは神かみの子このようだ」。 3:26 そこでネブカデネザルは、その火ひの燃もえる炉ろの入口いりぐちに近寄ちかよって、「いと高たかき神かみのしもべシャデラク、メシャク、アベデネゴよ、出でてきなさい」と言いったので、シャデラク、メシャク、アベデネゴはその火ひの中なかから出でてきた。3:27 総督そうとく、長官ちょうかん、知事ちじおよび王おうの大臣だいじんたちも集あつまってきて、この人々ひとびとを見みたが、火ひは彼かれらの身みにはなんの力ちからもなく、その頭あたまの毛けは焼やけず、その外套がいとうはそこなわれず、火ひのにおいもこれに付つかなかった。3:28 ネブカデネザルは言いった、「シャデラク、メシャク、アベデネゴの神かみはほむべきかな。神かみはその使者ししゃをつかわして、自分じぶんに寄より頼たのむしもべらを救すくった。また彼かれらは自分じぶんの神かみ以外いがいの神かみに仕つかえ、拝おがむよりも、むしろ王おうの命令めいれいを無視むしし、自分じぶんの身みをも捨すてようとしたのだ。3:29 それでわたしはいま命令めいれいを下くだす。諸民しょみん、諸しょ族ぞく、諸国しょこく語ごの者もののうちだれでも、シャデラク、メシャク、アベデネゴの神かみをののしる者ものがあるならば、その身みは切きり裂さかれ、その家いえは滅ほろぼされなければならない。このように救すくいを施ほどこすことのできる神かみは、ほかにないからだ」。3:30 こうして、王おうはシャデラク、メシャクおよびアベデネゴの位くらいを進すすめて、バビロン州しゅうにおらせた。 第4章 4:1 ネブカデネザル王おうは全ぜん世界せかいに住すむ諸民しょみん、諸しょ族ぞく、諸国しょこく語ごの者ものに告つげる。どうか、あなたがたに平安へいあんが増ますように。4:2 いと高たかき神かみはわたしにしるしと奇跡きせきとを行おこなわれた。わたしはこれを知しらせたいと思おもう。 4:3 ああ、そのしるしの大おおいなること、ああ、その奇跡きせきのすばらしいこと、その国くには永遠えいえんの国くに、その主権しゅけんは世々よよに及およぶ。4:4 われネブカデネザルはわが家やに安やすらかにおり、わが宮みやにあって栄さかえていたが、4:5 わたしは一つの夢ゆめを見みて、そのために恐おそれた。すなわち床とこにあって、その事ことを思おもいめぐらし、わが脳中のうちゅうの幻まぼろしのために心こころを悩なやました。4:6 そこでわたしは命令めいれいを下くだし、バビロンの知者ちしゃをことごとくわが前まえに召めし寄よせて、その夢ゆめの解とき明あかしを示しめさせようとした。4:7 すると、博士はかせ、法ほう術じゅつ士し、カルデヤびと、占うらない師したちがきたので、わたしはその夢ゆめを彼かれらに語かたったが、彼かれらはその解とき明あかしを示しめすことができなかった。4:8 最後さいごにダニエルがわたしの前まえにきた、――彼かれの名なはわが神かみの名なにちなんで、ベルテシャザルととなえられ、彼かれのうちには聖せいなる神かみの霊れいがやどっていた――わたしは彼かれにその夢ゆめを語かたって言いった、4:9 「博士はかせの長ちょうベルテシャザルよ、わたしは知しっている。聖せいなる神かみの霊れいがあなたのうちにやどっているから、どんな秘密ひみつもあなたにはむずかしいことはない。ここにわたしが見みた夢ゆめがある。その解とき明あかしをわたしに告つげなさい。4:10 わたしが床とこにあって見みた脳中のうちゅうの幻まぼろしはこれである。わたしが見みたのに、地ちの中央ちゅうおうに一本ぽんの木きがあって、そのたけが高たかかったが、4:11 その木きは成長せいちょうして強つよくなり、天てんに達たっするほどの高たかさになって、地ちの果はてまでも見みえわたり、4:12 その葉はは美うつくしく、その実みは豊ゆたかで、すべての者ものがその中なかから食物しょくもつを獲え、また野のの獣けものはその陰かげにやどり、空そらの鳥とりはその枝えだにすみ、すべての肉にくなる者ものはこれによって養やしなわれた。 4:13 わたしが床とこにあって見みた脳中のうちゅうの幻まぼろしの中なかに、ひとりの警護者けいごしゃ、ひとりの聖者せいじゃの天てんから下くだるのを見みたが、4:14 彼かれは声こえ高たかく呼よばわって、こう言いった、『この木きを切きり倒たおし、その枝えだを切きりはらい、その葉はをゆり落おとし、その実みを打うち散ちらし、獣けものをその下したから逃にげ去さらせ、鳥とりをその枝えだから飛とび去さらせよ。4:15 ただしその根ねの切きり株かぶを地ちに残のこし、それに鉄てつと青銅せいどうのなわをかけて、野のの若草わかくさの中なかにおき、天てんからくだる露つゆにぬれさせ、また地ちの草くさの中なかで、獣けものと共ともにその分ぶんにあずからせよ。4:16 またその心こころは変かわって人間にんげんの心こころのようでなく、獣けものの心こころが与あたえられて、七つの時ときを過すごさせよ。4:17 この宣言せんげんは警護者けいごしゃたちの命令めいれいによるもの、この決定けっていは聖者せいじゃたちの言葉ことばによるもので、いと高たかき者ものが、人間にんげんの国くにを治おさめて、自分じぶんの意いのままにこれを人ひとに与あたえ、また人ひとのうちの最もっとも卑いやしい者ものを、その上うえに立たてられるという事ことを、すべての者ものに知しらせるためである』と。4:18 われネブカデネザル王おうはこの夢ゆめを見みた。ベルテシャザルよ、あなたはその解とき明あかしをわたしに告つげなさい。わが国くにの知者ちしゃたちは、いずれもその解とき明あかしを、わたしに示しめすことができなかったけれども、あなたにはそれができる。あなたのうちには、聖せいなる神かみの霊れいがやどっているからだ」。 4:19 その時とき、その名なをベルテシャザルととなえるダニエルは、しばらくのあいだ驚おどろき、思おもい悩なやんだので、王おうは彼かれに告つげて言いった、「ベルテシャザルよ、あなたはこの夢ゆめと、その解とき明あかしのために、悩なやむには及およばない」。ベルテシャザルは答こたえて言いった、「わが主しゅよ、どうか、この夢ゆめは、あなたを憎にくむ者ものにかかわるように。この解とき明あかしは、あなたの敵てきに臨のぞむように。4:20 あなたが見みられた木き、すなわちその成長せいちょうして強つよくなり、天てんに達たっするほどの高たかさになって、地ちの果はてまでも見みえわたり、4:21 その葉はは美うつくしく、その実みは豊ゆたかで、すべての者ものがその中なかから食物しょくもつを獲え、また野のの獣けものがその陰かげにやどり、空そらの鳥とりがその枝えだに住すんだ木き、4:22 王おうよ、それはすなわちあなたです。あなたは成長せいちょうして強つよくなり、天てんに達たっするほどに大おおきくなり、あなたの主権しゅけんは地ちの果はてにまで及およびました。4:23 ところが、王おうはひとりの警護者けいごしゃ、ひとりの聖者せいじゃが、天てんから下くだって、こう言いうのを見みられました、『この木きを切きり倒たおして、これを滅ほろぼせ。ただしその根ねの切きり株かぶを地ちに残のこし、それに鉄てつと青銅せいどうのなわをかけて、野のの若草わかくさの中なかにおき、天てんからくだる露つゆにぬれさせ、また野のの獣けものと共ともにその分ぶんにあずからせて、七つの時ときを過すごさせよ』と。4:24 王おうよ、その解とき明あかしはこうです。すなわちこれはいと高たかき者ものの命令めいれいであって、わが主しゅなる王おうに臨のぞまんとするものです。4:25 すなわちあなたは追おわれて世よの人ひとを離はなれ、野のの獣けものと共ともにおり、牛うしのように草くさを食くい、天てんからくだる露つゆにぬれるでしょう。こうして七つの時ときが過すぎて、ついにあなたは、いと高たかき者ものが人間にんげんの国くにを治おさめて、自分じぶんの意いのままに、これを人ひとに与あたえられることを知しるに至いたるでしょう。4:26 また彼かれらはその木きの根ねの切きり株かぶを残のこしおけと命めいじたので、あなたが、天てんはまことの支配者しはいしゃであるということを知しった後のち、あなたの国くにはあなたに確保かくほされるでしょう。4:27 それゆえ王おうよ、あなたはわたしの勧告かんこくをいれ、義ぎを行いって罪つみを離はなれ、しえたげられる者ものをあわれんで、不義ふぎを離はなれなさい。そうすれば、あるいはあなたの繁栄はんえいが、長ながく続つづくかもしれません」。 4:28 この事ことは皆みなネブカデネザル王おうに臨のぞんだ。4:29 十二か月げつを経へて後のち、王おうがバビロンの王宮おうきゅうの屋上おくじょうを歩あるいていたとき、4:30 王おうは自みずから言いった、「この大おおいなるバビロンは、わたしの大おおいなる力ちからをもって建たてた王城おうじょうであって、わが威光いこうを輝かがやかすものではないか」。4:31 その言葉ことばがなお王おうの口くちにあるうちに、天てんから声こえがくだって言いった、「ネブカデネザル王おうよ、あなたに告つげる。国くにはあなたを離はなれ去さった。4:32 あなたは、追おわれて世よの人ひとを離はなれ、野のの獣けものと共ともにおり、牛うしのように草くさを食くい、こうして七つの時ときを経へて、ついにあなたは、いと高たかき者ものが人間にんげんの国くにを治おさめて、自分じぶんの意いのままに、これを人ひとに与あたえられることを知しるに至いたるだろう」。4:33 この言葉ことばは、ただちにネブカデネザルに成就じょうじゅした。彼かれは追おわれて世よの人ひとを離はなれ、牛うしのように草くさを食くい、その身みは天てんからくだる露つゆにぬれ、ついにその毛けは、わしの羽はねのようになり、そのつめは鳥とりのつめのようになった。 4:34 こうしてその期間きかんが満みちた後のち、われネブカデネザルは、目めをあげて天てんを仰あおぎ見みると、わたしの理性りせいが自分じぶんに帰かえったので、わたしはいと高たかき者ものをほめ、その永遠えいえんに生いける者ものをさんびし、かつあがめた。 その主権しゅけんは永遠えいえんの主権しゅけん、その国くには世々よよかぎりなく、4:35 地ちに住すむ民たみはすべて無なき者もののように思おもわれ、天てんの衆しゅう群ぐんにも、地ちに住すむ民たみにも、彼かれはその意いのままに事ことを行おこなわれる。だれも彼かれの手てをおさえて「あなたは何なにをするのか」と言いいうる者ものはない。4:36 この時ときわたしの理性りせいは自分じぶんに帰かえり、またわが国くにの光栄こうえいのために、わが尊厳そんげんと光輝こうきとが、わたしに帰かえった。わが大臣だいじん、わが貴族きぞくらもきて、わたしに求もとめ、わたしは国くにの上うえに堅かたく立たって、前まえにもまさって大おおいなる者ものとなった。4:37 そこでわれネブカデネザルは今いま、天てんの王おうをほめたたえ、かつあがめたてまつる。そのみわざはことごとく真実しんじつで、その道みちは正ただしく、高たかぶり歩あゆむ者ものを低ひくくされる。 第5章 5:1 ベルシャザル王おうは、その大臣だいじん一千人にんのために、盛さかんな酒宴しゅえんを設もうけ、その一千人にんの前まえで酒さけを飲のんでいた。 5:2 酒さけが進すすんだとき、ベルシャザルは、その父ちちネブカデネザルがエルサレムの神殿しんでんから取とってきた金銀きんぎんの器うつわを持もってこいと命めいじた。王おうとその大臣だいじんたち、および王おうの妻つまとそばめらが、これをもって酒さけを飲のむためであった。5:3 そこで人々ひとびとはそのエルサレムの神かみの宮みやすなわち神殿しんでんから取とってきた金銀きんぎんの器うつわを持もってきたので、王おうとその大臣だいじんたち、および王おうの妻つまとそばめらは、これをもって飲のんだ。5:4 すなわち彼かれらは酒さけを飲のんで、金きん、銀ぎん、青銅せいどう、鉄てつ、木き、石いしなどの神々かみがみをほめたたえた。 5:5 すると突然とつぜん人ひとの手ての指ゆびがあらわれて、燭台しょくだいと相対あいたいする王おうの宮殿きゅうでんの塗ぬり壁かべに物ものを書かいた。王おうはその物ものを書かいた手ての先さきを見みた。5:6 そのために王おうの顔色かおいろは変かわり、その心こころは思おもい悩なやんで乱みだれ、その腰こしのつがいはゆるみ、ひざは震ふるえて互たがいに打うちあった。5:7 王おうは大声おおごえに呼よばわって、法ほう術じゅつ士し、カルデヤびと、占うらない師しらを召めしてこさせた。王おうはバビロンの知者ちしゃたちに告つげて言いった、「この文字もじを読よみ、その解とき明あかしをわたしに示しめす者ものには紫むらさきの衣ころもを着きせ、首くびに金きんの鎖くさりをかけさせて、国くにの第だい三のつかさとしよう」と。5:8 王おうの知者ちしゃたちは皆みなはいってきた。しかしその文字もじを読よむことができず、またその解とき明あかしを王おうに示しめすことができなかったので、5:9 ベルシャザル王おうは大おおいに思おもい悩なやんで、その顔色かおいろは変かわり、王おうの大臣だいじんたちも当惑とうわくした。 5:10 時ときに王妃おうひは王おうと大臣だいじんたちの言葉ことばを聞きいて、その宴会場えんかいじょうにはいってきた。そして王妃おうひは言いった、「王おうよ、どうか、とこしえに生いきながらえられますように。あなたは心こころに思おもい悩なやんではなりません。また顔色かおいろを変かえるには及およびません。5:11 あなたの国くにには、聖せいなる神かみの霊れいのやどっているひとりの人ひとがおります。あなたの父ちちの代よに、彼かれは、明知めいち、分別ふんべつおよび神かみのような知恵ちえのあることをあらわしました。あなたの父ちちネブカデネザル王おうは、彼かれを立たてて、博士はかせ、法ほう術じゅつ士し、カルデヤびと、占うらない師しらの長ちょうとされました。5:12 彼かれは、王おうがベルテシャザルという名なを与あたえたダニエルという者ものですが、このダニエルには、すぐれた霊れい、知識ちしき、分別ふんべつがあって、夢ゆめを解とき、なぞを解とき、難問なんもんを解とくことができます。ゆえにダニエルを召めしなさい。彼かれはその解とき明あかしを示しめすでしょう」。 5:13 そこでダニエルは王おうの前まえに召めされた。王おうはダニエルに言いった、「あなたは、わが父ちちの王おうが、ユダからひきつれてきたユダの捕囚ほしゅうのひとりなのか。5:14 聞きくところによると、あなたのうちには、聖せいなる神かみの霊れいがやどっていて、明知めいち、分別ふんべつおよび非凡ひぼんな知恵ちえがあるそうだ。5:15 わたしは、知者ちしゃ、法ほう術じゅつ士しらを、わが前まえに召めしよせて、この文字もじを読よませ、その解とき明あかしを示しめさせようとしたが、彼かれらは、この事ことの解とき明あかしを示しめすことができなかった。5:16 しかしまた聞きくところによると、あなたは解とき明あかしをなし、かつ難問なんもんを解とくことができるそうだ。それで、あなたがもし、この文字もじを読よみ、その解とき明あかしをわたしに示しめすことができたなら、あなたに紫むらさきの衣ころもを着きせ、金きんの鎖くさりを首くびにかけさせて、この国くにの第だい三のつかさとしよう」。 5:17 ダニエルは王おうの前まえに答こたえて言いった、「あなたの賜物たまものは、あなたご自身じしんにとっておき、あなたの贈おくり物ものは、他人たにんにお与あたえください。それでも、わたしは王おうのためにその文字もじを読よみ、その解とき明あかしをお知おしらせいたしましょう。5:18 王おうよ、いと高たかき神かみはあなたの父ちちネブカデネザルに国くにと権勢けんせいと、光栄こうえいと尊厳そんげんとを賜たまいました。5:19 彼かれに権勢けんせいを賜たまわったことによって、諸民しょみん、諸しょ族ぞく、諸国しょこく語ごの者ものはみな、彼かれの前まえにおののき恐おそれました。彼かれは自分じぶんの欲ほっする者ものを殺ころし、自分じぶんの欲ほっする者ものを生いかし、自分じぶんの欲ほっする者ものを上あげ、自分じぶんの欲ほっする者ものを下くだしました。5:20 しかし彼かれは心こころに高たかぶり、かたくなになり、ごうまんにふるまったので、王位おういからしりぞけられ、その光栄こうえいを奪うばわれ、5:21 追おわれて世よの人ひとと離はなれ、その思おもいは獣けもののようになり、そのすまいは野のろばと共ともにあり、牛うしのように草くさを食くい、その身みは天てんからくだる露つゆにぬれ、こうしてついに彼かれは、いと高たかき神かみが人間にんげんの国くにを治おさめて、自分じぶんの意いのままに人ひとを立たてられるということを、知しるようになりました。5:22 ベルシャザルよ、あなたは彼かれの子こであって、この事ことをことごとく知しっていながら、なお心こころを低ひくくせず、5:23 かえって天てんの主しゅにむかって、みずから高たかぶり、その宮みやの器物うつわものをあなたの前まえに持もってこさせ、あなたとあなたの大臣だいじんたちと、あなたの妻つまとそばめたちは、それをもって酒さけを飲のみ、そしてあなたは見みることも、聞きくことも、物ものを知しることもできない金きん、銀ぎん、青銅せいどう、鉄てつ、木き、石いしの神々かみがみをほめたたえたが、あなたの命いのちをその手てににぎり、あなたのすべての道みちをつかさどられる神かみをあがめようとはしなかった。 5:24 それゆえ、彼かれの前まえからこの手てが出でてきて、この文字もじが書かきしるされたのです。5:25 そのしるされた文字もじはこうです。メネ、メネ、テケル、ウパルシン。5:26 その事ことの解とき明あかしはこうです、メネは神かみがあなたの治世ちせいを数かぞえて、これをその終おわりに至いたらせたことをいうのです。5:27 テケルは、あなたがはかりで量はかられて、その量りょうの足たりないことがあらわれたことをいうのです。5:28 ペレスは、あなたの国くにが分わかたれて、メデアとペルシャの人々ひとびとに与あたえられることをいうのです」。 5:29 そこでベルシャザルは命めいじて、ダニエルに紫むらさきの衣ころもを着きせ、金きんの鎖くさりをその首くびにかけさせ、彼かれについて布告ふこくを発はっして、彼かれは国くにの第だい三のつかさであると言いわせた。 5:30 カルデヤびとの王おうベルシャザルは、その夜よるのうちに殺ころされ、5:31 メデアびとダリヨスが、その国くにを受うけた。この時ときダリヨスは、おおよそ六十二歳さいであった。 第6章 6:1 ダリヨスは全国ぜんこくを治おさめるために、その国くにに百二十人にんの総督そうとくを立たてることをよしとし、6:2 また彼かれらの上うえに三人にんの総監そうかんを立たてた。ダニエルはそのひとりであった。これは総督そうとくたちをして、この三人にんの前まえに、その職務しょくむに関かんする報告ほうこくをさせて、王おうに損失そんしつの及およぶことのないようにするためであった。6:3 ダニエルは彼かれのうちにあるすぐれた霊れいのゆえに、他たのすべての総監そうかんおよび総督そうとくたちにまさっていたので、王おうは彼かれを立たてて全国ぜんこくを治おさめさせようとした。6:4 そこで総監そうかんおよび総督そうとくらは、国事こくじについてダニエルを訴うったえるべき口実こうじつを得えようとしたが、訴うったえるべきなんの口実こうじつも、なんのとがをも見みいだすことができなかった。それは彼かれが忠信ちゅうしんな人ひとであって、その身みになんのあやまちも、とがも見みいだされなかったからである。6:5 そこでその人々ひとびとは言いった、「われわれはダニエルの神かみの律法りっぽうに関かんして、彼かれを訴うったえる口実こうじつを得えるのでなければ、ついに彼かれを訴うったえることはできまい」と。 6:6 こうして総監そうかんと総督そうとくらは、王おうのもとに集あつまってきて、王おうに言いった、「ダリヨス王おうよ、どうかとこしえに生いきながらえられますように。6:7 国くにの総監そうかん、長官ちょうかんおよび総督そうとく、参議さんぎおよび知事ちじらは、相あいはかって、王おうが一つのおきてを立たて、一つの禁令きんれいを定さだめられるよう求もとめることになりました。王おうよ、それはこうです。すなわち今いまから三十日にちの間あいだは、ただあなたにのみ願ねがい事ごとをさせ、もしあなたをおいて、神かみまたは人ひとにこれをなす者ものがあれば、すべてその者ものを、ししの穴あなに投なげ入いれるというのです。6:8 それで王おうよ、その禁令きんれいを定さだめ、その文書ぶんしょに署名しょめいして、メデアとペルシャの変かわることのない法律ほうりつのごとく、これを変かえることのできないようにしてください」。6:9 そこでダリヨス王おうは、その禁令きんれいの文書ぶんしょに署名しょめいした。 6:10 ダニエルは、その文書ぶんしょの署名しょめいされたことを知しって家いえに帰かえり、二階かいのへやの、エルサレムに向むかって窓まどの開ひらかれた所ところで、以前いぜんからおこなっていたように、一日にちに三度どずつ、ひざをかがめて神かみの前まえに祈いのり、かつ感謝かんしゃした。6:11 そこでその人々ひとびとは集あつまってきて、ダニエルがその神かみの前まえに祈いのり、かつ求もとめていることを見みたので、6:12 彼かれらは王おうの前まえにきて、王おうの禁令きんれいについて奏上そうじょうして言いった、「王おうよ、あなたは禁令きんれいに署名しょめいして、今いまから三十日にちの間あいだは、ただあなたにのみ願ねがい事ごとをさせ、もしあなたをおいて、神かみまたは人ひとに、これをなす者ものがあれば、すべてその者ものを、ししの穴あなに投なげ入いれると、定さだめられたではありませんか」。王おうは答こたえて言いった、「その事ことは確たしかであって、メデアとペルシャの法律ほうりつのごとく、変かえることのできないものだ」。6:13 彼かれらは王おうの前まえに答こたえて言いった、「王おうよ、ユダから引ひいてきた捕囚ほしゅうのひとりである、かのダニエルは、あなたをも、あなたの署名しょめいされた禁令きんれいをも顧かえりみず、一日にちに三度どずつ、祈いのりをささげています」。 6:14 王おうはこの言葉ことばを聞きいて大おおいに憂うれえ、ダニエルを救すくおうと心こころを用もちい、日ひの入いるまで、彼かれを救すくい出だすことに努つとめた。6:15 時ときにその人々ひとびとは、また王おうのもとに集あつまってきて、王おうに言いった、「王おうよ、メデアとペルシャの法律ほうりつによれば、王おうの立たてた禁令きんれい、または、おきては変かえることのできないものであることを、ご承知しょうちください」。 6:16 そこで王おうは命令めいれいを下くだしたので、ダニエルは引ひき出だされて、ししの穴あなに投なげ入いれられた。王おうはダニエルに言いった、「どうか、あなたの常つねに仕つかえる神かみが、あなたを救すくわれるように」。6:17 そして一つの石いしを持もってきて、穴あなの口くちをふさいだので、王おうは自分じぶんの印いんと、大臣だいじんらの印いんをもって、これに封印ふういんした。これはダニエルの処置しょちを変かえることのないようにするためであった。6:18 こうして王おうはその宮殿きゅうでんに帰かえったが、その夜よるは食しょくをとらず、また、そばめたちを召めし寄よせず、全まったく眠ねむることもしなかった。 6:19 こうして王おうは朝あさまだき起おきて、ししの穴あなへ急いそいで行いったが、6:20 ダニエルのいる穴あなに近ちかづいたとき、悲かなしげな声こえをあげて呼よばわり、ダニエルに言いった、「生いける神かみのしもべダニエルよ、あなたが常つねに仕つかえている神かみはあなたを救すくって、ししの害がいを免まぬかれさせることができたか」。6:21 ダニエルは王おうに言いった、「王おうよ、どうか、とこしえに生いきながらえられますように。6:22 わたしの神かみはその使つかいをおくって、ししの口くちを閉とざされたので、ししはわたしを害がいしませんでした。これはわたしに罪つみのないことが、神かみの前まえに認みとめられたからです。王おうよ、わたしはあなたの前まえにも、何なにも悪わるい事ことをしなかったのです」。6:23 そこで王おうは大おおいに喜よろこび、ダニエルを穴あなの中なかから出だせと命めいじたので、ダニエルは穴あなの中なかから出だされたが、その身みになんの害がいをも受うけていなかった。これは彼かれが自分じぶんの神かみを頼たのみとしていたからである。6:24 王おうはまた命令めいれいを下くだして、ダニエルをあしざまに訴うったえた人々ひとびとを引ひいてこさせ、彼かれらをその妻子さいしと共ともに、ししの穴あなに投なげ入いれさせた。彼かれらが穴あなの底そこに達たっしないうちに、ししは彼かれらにとびかかって、その骨ほねまでもかみ砕くだいた。 6:25 そこでダリヨス王おうは全ぜん世界せかいに住すむ諸民しょみん、諸しょ族ぞく、諸国しょこく語ごの者ものに詔みことのりを書かきおくって言いった、「どうか、あなたがたに平安へいあんが増ますように。6:26 わたしは命令めいれいを出だす。わが国くにのすべての州しゅうの人ひとは、皆みなダニエルの神かみを、おののき恐おそれなければならない。 彼かれは生いける神かみであって、とこしえに変かわることなく、その国くには滅ほろびず、その主権しゅけんは終おわりまで続つづく。6:27 彼かれは救すくいを施ほどこし、助たすけをなし、天てんにおいても、地ちにおいても、しるしと奇跡きせきとをおこない、ダニエルを救すくって、ししの力ちからをのがれさせたかたである」。6:28 こうして、このダニエルはダリヨスの世よと、ペルシャ人ひとクロスの世よにおいて栄さかえた。 第7章 7:1 バビロンの王おうベルシャザルの元年がんねんに、ダニエルは床とこにあって夢ゆめを見み、また脳のう中ちゅうに幻まぼろしを得えたので、彼かれはその夢ゆめをしるして、その事ことの大意たいいを述のべた。7:2 ダニエルは述のべて言いった、「わたしは夜よるの幻まぼろしのうちに見みた。見みよ、天てんの四方しほうからの風かぜが大海おおうみをかきたてると、7:3 四つの大おおきな獣けものが海うみからあがってきた。その形かたちは、おのおの異ことなり、7:4 第だい一のものは、ししのようで、わしの翼つばさをもっていたが、わたしが見みていると、その翼つばさは抜ぬきとられ、また地ちから起おこされて、人ひとのように二本ほんの足あしで立たたせられ、かつ人ひとの心こころが与あたえられた。7:5 見みよ、第だい二の獣けものは熊くまのようであった。これはそのからだの一方いっぽうをあげ、その口くちの歯はの間あいだに、三本ぼんの肋骨ろっこつをくわえていたが、これに向むかって『起おきあがって、多おおくの肉にくを食くらえ』と言いう声こえがあった。7:6 その後のちわたしが見みたのは、ひょうのような獣けもので、その背せには鳥とりの翼つばさが四つあった。またこの獣けものには四つの頭あたまがあり、主権しゅけんが与あたえられた。7:7 その後のちわたしが夜よるの幻まぼろしのうちに見みた第だい四の獣けものは、恐おそろしい、ものすごい、非常ひじょうに強つよいもので、大おおきな鉄てつの歯はがあり、食くらい、かつ、かみ砕くだいて、その残のこりを足あしで踏ふみつけた。これは、その前まえに出でたすべての獣けものと違ちがって、十の角つのを持もっていた。7:8 わたしが、その角つのを注意ちゅういして見みていると、その中なかに、また一つの小ちいさい角つのが出でてきたが、この小ちいさい角つののために、さきの角つののうち三つがその根ねから抜ぬけ落おちた。見みよ、この小ちいさい角つのには、人ひとの目めのような目めがあり、また大おおきな事ことを語かたる口くちがあった。7:9 わたしが見みていると、 もろもろのみ座ざが設もうけられて、日ひの老おいたる者ものが座ざしておられた。その衣ころもは雪ゆきのように白しろく、頭あたまの毛けは混まじりもののない羊ひつじの毛けのようであった。そのみ座ざは火ひの炎ほのおであり、その車輪しゃりんは燃もえる火ひであった。7:10 彼かれの前まえから、ひと筋すじの火ひの流ながれが出でてきた。彼かれに仕つかえる者ものは千々せんせん、彼かれの前まえにはべる者ものは万々まんまん、審判しんぱんを行おこなう者ものはその席せきに着つき、かずかずの書かき物ものが開ひらかれた。7:11 わたしは、その角つのの語かたる大おおいなる言葉ことばの声こえがするので見みていたが、わたしが見みている間あいだにその獣けものは殺ころされ、そのからだはそこなわれて、燃もえる火ひに投なげ入いれられた。7:12 その他たの獣けものはその主権しゅけんを奪うばわれたが、その命いのちは、時ときと季節きせつの来くるまで延のばされた。7:13 わたしはまた夜よるの幻まぼろしのうちに見みていると、 見みよ、人ひとの子このような者ものが、天てんの雲くもに乗のってきて、日ひの老おいたる者もののもとに来くると、その前まえに導みちびかれた。7:14 彼かれに主権しゅけんと光栄こうえいと国くにとを賜たまい、諸民しょみん、諸しょ族ぞく、諸国しょこく語ごの者ものを彼かれに仕つかえさせた。その主権しゅけんは永遠えいえんの主権しゅけんであって、なくなることがなく、その国くには滅ほろびることがない。7:15 そこで、われダニエル、わがうちなる霊れいは憂うれえ、わが脳中のうちゅうの幻まぼろしは、わたしを悩なやましたので、7:16 わたしは、そこに立たっている者もののひとりに近寄ちかよって、このすべての事ことの真意しんいを尋たずねた。するとその者ものは、わたしにこの事ことの解とき明あかしを告つげ知しらせた。7:17 『この四つの大おおきな獣けものは、地ちに起おこらんとする四人にんの王おうである。7:18 しかしついには、いと高たかき者ものの聖徒せいとが国くにを受うけ、永遠えいえんにその国くにを保たもって、世々よよかぎりなく続つづく』。 7:19 そこでわたしは、さらに第だい四の獣けものの真意しんいを知しろうとした。その獣けものは他たの獣けものと異ことなって、はなはだ恐おそろしく、その歯はは鉄てつ、そのつめは青銅せいどうであって、食くらい、かつ、かみ砕くだいて、その残のこりを足あしで踏ふみつけた。7:20 この獣けものの頭あたまには、十の角つのがあったが、そのほかに一つの角つのが出でてきたので、この角つののために、三つの角つのが抜ぬけ落おちた。この角つのには目めがあり、また大おおきな事ことを語かたる口くちがあって、その形かたちは、その同類どうるいのものよりも大おおきく見みえた。7:21 わたしが見みていると、この角つのは聖徒せいとと戦たたかって、彼かれらに勝かったが、7:22 ついに日ひの老おいたる者ものがきて、いと高たかき者ものの聖徒せいとのために審判しんぱんをおこなった。そしてその時ときがきて、この聖徒せいとたちは国くにを受うけた。 7:23 彼かれはこう言いった、『第だい四の獣けものは地上ちじょうの第だい四の国くにである。これはすべての国くにと異ことなって、全ぜん世界せかいを併合へいごうし、これを踏ふみつけ、かつ打うち砕くだく。7:24 十の角つのはこの国くにから起おこる十人にんの王おうである。その後のちにまたひとりの王おうが起おこる。彼かれは先さきの者ものと異ことなり、かつ、その三人にんの王おうを倒たおす。7:25 彼かれは、いと高たかき者ものに敵てきして言葉ことばを出だし、かつ、いと高たかき者ものの聖徒せいとを悩なやます。彼かれはまた時ときと律法りっぽうとを変かえようと望のぞむ。聖徒せいとはひと時ときと、ふた時ときと、半時はんときの間あいだ、彼かれの手てにわたされる。7:26 しかし審判しんぱんが行おこなわれ、彼かれの主権しゅけんは奪うばわれて、永遠えいえんに滅ほろび絶たやされ、7:27 国くにと主権しゅけんと全ぜん天下てんかの国々くにぐにの権威けんいとは、いと高たかき者ものの聖徒せいとたる民たみに与あたえられる。彼かれらの国くには永遠えいえんの国くにであって、諸国しょこくの者ものはみな彼かれらに仕つかえ、かつ従したがう』。7:28 その事ことはここで終おわった。われダニエルは、これを思おもいまわして、非常ひじょうに悩なやみ、顔色かおいろも変かわった。しかし、わたしはこの事ことを心こころに留とめた」。 第8章 8:1 われダニエルは先さきに幻まぼろしを見みたが、後のちまたベルシャザル王おうの治世ちせいの第だい三年ねんに、一つの幻まぼろしがわたしに示しめされた。8:2 その幻まぼろしを見みたのは、エラム州しゅうの首都しゅとスサにいた時ときであって、ウライ川かわのほとりにおいてであった。8:3 わたしが目めをあげて見みると、川かわの岸きしに一匹ぴきの雄羊おひつじが立たっていた。これに二つの角つのがあって、その角つのは共ともに長ながかったが、一つの角つのは他たの角つのよりも長ながかった。その長ながいのは後のちに伸のびたのである。8:4 わたしが見みていると、その雄羊おひつじは、西にし、北きた、南みなみにむかって突撃とつげきしたが、これに当あたることのできる獣けものは一匹ぴきもなく、またその手てから救すくい出だすことのできるものもなかった。これはその心こころのままにふるまい、みずから高たかぶっていた。 8:5 わたしがこれを考かんがえ、見みていると、一匹ぴきの雄おやぎが、全ぜん地ちのおもてを飛とびわたって西にしからきたが、その足あしは土つちを踏ふまなかった。このやぎには、目めの間あいだに著いちじるしい一つの角つのがあった。8:6 この者ものは、さきにわたしが川かわの岸きしに立たっているのを見みた、あの二つの角つののある雄羊おひつじにむかってきて、激はげしく怒いかってこれに走はしり寄よった。8:7 わたしが見みていると、それが雄羊おひつじに近寄ちかよるや、これにむかって怒いかりを発はっし、雄羊おひつじを撃うって、その二つの角つのを砕くだいた。雄羊おひつじには、これに当あたる力ちからがなかったので、やぎは雄羊おひつじを地ちに打うち倒たおして踏ふみつけた。また、その雄羊おひつじを、やぎの力ちからから救すくいうる者ものがなかった。8:8 こうして、その雄おやぎは、はなはだしく高たかぶったが、その盛さかんになった時とき、あの大おおきな角つのが折おれて、その代かわりに四つの著いちじるしい角つのが生しょうじ、天てんの四方しほうに向むかった。 8:9 その角つのの一つから、一つの小ちいさい角つのが出でて、南みなみに向むかい、東ひがしに向むかい、麗うるわしい地ちに向むかって、はなはだしく大おおきくなり、8:10 天てんの衆しゅう群ぐんに及およぶまでに大おおきくなり、星ほしの衆しゅう群ぐんのうちの数個すうこを地ちに投なげ下くだして、これを踏ふみつけ、8:11 またみずから高たかぶって、その衆しゅう群ぐんの主しゅに敵てきし、その常供じょうくの燔祭はんさいを取とり除のぞき、かつその聖所せいじょを倒たおした。8:12 そしてその衆しゅう群ぐんは、罪つみによって、常供じょうくの燔祭はんさいと共ともに、これにわたされた。その角つのはまた真理しんりを地ちに投なげうち、ほしいままにふるまって、みずから栄さかえた。8:13 それから、わたしはひとりの聖者せいじゃの語かたっているのを聞きいた。またひとりの聖者せいじゃがあって、その語かたっている聖者せいじゃにむかって言いった、「常供じょうくの燔祭はんさいと、荒あらすことをなす罪つみと、聖所せいじょとその衆しゅう群ぐんがわたされて、足あしの下したに踏ふみつけられることについて、幻まぼろしにあらわれたことは、いつまでだろうか」と。8:14 彼かれは言いった、「二千三百の夕ゆうと朝あさの間あいだである。そして聖所せいじょは清きよめられてその正ただしい状態じょうたいに復ふくする」。 8:15 われダニエルはこの幻まぼろしを見みて、その意味いみを知しろうと求もとめていた時とき、見みよ、人ひとのように見みえる者ものが、わたしの前まえに立たった。8:16 わたしはウライ川かわの両りょう岸がんの間あいだから人ひとの声こえが出でて、呼よばわるのを聞きいた、「ガブリエルよ、この幻まぼろしをその人ひとに悟さとらせよ」。8:17 すると彼かれはわたしの立たっている所ところにきた。彼かれがきたとき、わたしは恐おそれて、ひれ伏ふした。しかし、彼かれはわたしに言いった、「人ひとの子こよ、悟さとりなさい。この幻まぼろしは終おわりの時ときにかかわるものです」。 8:18 彼かれがわたしに語かたっていた時とき、わたしは地ちにひれ伏ふして、深ふかい眠ねむりに陥おちいったが、彼かれはわたしに手てを触ふれ、わたしを立たたせて、8:19 言いった、「見みよ、わたしは憤いきどおりの終おわりの時ときに起おこるべきことを、あなたに知しらせよう。それは定さだめられた終おわりの時ときにかかわるものであるから。8:20 あなたが見みた、あの二つの角つののある雄羊おひつじは、メデアとペルシャの王おうです。8:21 また、かの雄おやぎはギリシヤの王おうです、その目めの間あいだの大おおきな角つのは、その第だい一の王おうです。8:22 またその角つのが折おれて、その代かわりに四つの角つのが生しょうじたのは、その民たみから四つの国くにが起おこるのです。しかし、第だい一の王おうのような勢力せいりょくはない。8:23 彼かれらの国くにの終おわりの時ときになり、罪つみびとの罪つみが満みちるに及およんで、ひとりの王おうが起おこるでしょう。その顔かおは猛悪もうあくで、彼かれはなぞを解とき、8:24 その勢力せいりょくは盛さかんであって、恐おそろしい破壊はかいをなし、そのなすところ成功せいこうして、有力ゆうりょくな人々ひとびとと、聖徒せいとである民たみを滅ほろぼすでしょう。8:25 彼かれは悪知恵わるぢえをもって、偽いつわりをその手てにおこない遂とげ、みずから心こころに高たかぶり、不意ふいに多おおくの人ひとを打うち滅ほろぼし、また君きみの君きみたる者ものに敵てきするでしょう。しかし、ついに彼かれは人手ひとでによらずに滅ほろぼされるでしょう。8:26 先さきに示しめされた朝夕あさゆうの幻まぼろしは真実しんじつです。しかし、あなたはその幻まぼろしを秘密ひみつにしておかなければならない。これは多おおくの日ひの後のちにかかわる事ことだから」。 8:27 われダニエルは疲つかれはてて、数日すうじつの間あいだ病やみわずらったが、後のち起おきて、王おうの事務じむを執とった。しかし、わたしはこの幻まぼろしの事ことを思おもって驚おどろいた。またこれを悟さとることができなかった。 第9章 9:1 メデアびとアハシュエロスの子こダリヨスが、カルデヤびとの王おうとなったその元年がんねん、9:2 すなわちその治世ちせいの第だい一年ねんに、われダニエルは主しゅが預言者よげんしゃエレミヤに臨のぞんで告つげられたその言葉ことばにより、エルサレムの荒廃こうはいの終おわるまでに経へねばならぬ年ねんの数かずは七十年ねんであることを、文書ぶんしょによって悟さとった。 9:3 それでわたしは、わが顔かおを主しゅなる神かみに向むけ、断食だんじきをなし、荒布あらぬのを着き、灰はいをかぶって祈いのり、かつ願ねがい求もとめた。9:4 すなわちわたしは、わが神かみ、主しゅに祈いのり、ざんげして言いった、「ああ、大おおいなる恐おそるべき神かみ、主しゅ、おのれを愛あいし、おのれの戒いましめを守まもる者もののために契約けいやくを保たもち、いつくしみを施ほどこされる者ものよ、9:5 われわれは罪つみを犯おかし、悪あくをおこない、よこしまなふるまいをなし、そむいて、あなたの戒いましめと、おきてを離はなれました。9:6 われわれはまた、あなたのしもべなる預言者よげんしゃたちが、あなたの名なをもって、われわれの王おうたち、君きみたち、先祖せんぞたち、および国くにのすべての民たみに告つげた言葉ことばに聞きき従したがいませんでした。9:7 主しゅよ、正義せいぎはあなたのものですが、恥はじはわれわれに加くわえられて、今日こんにちのような有様ありさまです。すなわちユダの人々ひとびと、エルサレムの住民じゅうみんおよび全ぜんイスラエルの者ものは、近ちかき者ものも、遠とおき者ものもみな、あなたが追おいやられたすべての国々くにぐにで恥はじをこうむりました。これは彼かれらがあなたにそむいて犯おかした罪つみによるのです。9:8 主しゅよ、恥はじはわれわれのもの、われわれの王おうたち、君きみたちおよび先祖せんぞたちのものです。これはわれわれがあなたにむかって罪つみを犯おかしたからです。9:9 あわれみと、ゆるしはわれわれの神かみ、主しゅのものです。これはわれわれが彼かれにそむいたからです。9:10 またわれわれの神かみ、主しゅのみ声こえに聞きき従したがわず、主しゅがそのしもべ預言者よげんしゃたちによって、われわれの前まえに賜たまわった律法りっぽうを行おこなわなかったからです。9:11 まことにイスラエルの人々ひとびとは皆みなあなたの律法りっぽうを犯おかし、離はなれ去さって、あなたのみ声こえに聞きき従したがわなかったので、神かみのしもべモーセの律法りっぽうにしるされたのろいと誓ちかいが、われわれの上うえに注そそぎかかりました。これはわれわれが神かみにむかって罪つみを犯おかしたからです。9:12 すなわち神かみは大おおいなる災わざわいをわれわれの上うえにくだして、さきにわれわれと、われわれを治おさめたつかさたちにむかって告つげられた言葉ことばを実行じっこうされたのです。あのエルサレムに臨のぞんだような事ことは、全ぜん天下てんかにいまだかつてなかった事ことです。9:13 モーセの律法りっぽうにしるされたように、この災わざわいはすべてわれわれに臨のぞみましたが、なおわれわれの神かみ、主しゅの恵めぐみを請こい求もとめることをせず、その不義ふぎを離はなれて、あなたの真理しんりを悟さとることをもしませんでした。9:14 それゆえ、主しゅはこれを心こころに留とめて、災わざわいをわれわれに下くだされたのです。われわれの神かみ、主しゅは、何事なにごとをされるにも、正ただしくあらせられます。ところが、われわれはそのみ声こえに聞きき従したがわなかったのです。9:15 われわれの神かみ、主しゅよ、あなたは強つよきみ手てをもって、あなたの民たみをエジプトの地ちから導みちびき出だして、今日こんにちのように、み名なをあげられました。われわれは罪つみを犯おかし、よこしまなふるまいをしました。9:16 主しゅよ、どうぞあなたが、これまで正ただしいみわざをなされたように、あなたの町まちエルサレム、あなたの聖せいなる山やまから、あなたの怒いかりと憤いきどおりとを取とり去さってください。これはわれわれの罪つみと、われわれの先祖せんぞの不義ふぎのために、エルサレムと、あなたの民たみが、われわれの周囲しゅういの者ものの物笑ものわらいとなったからです。9:17 それゆえ、われわれの神かみよ、しもべの祈いのりと願ねがいを聞きいてください。主しゅよ、あなたご自身じしんのために、あの荒あれたあなたの聖所せいじょに、あなたのみ顔かおを輝かがやかせてください。9:18 わが神かみよ、耳みみを傾かたむけて聞きいてください。目めを開ひらいて、われわれの荒あれたさまを見み、み名なをもってとなえられる町まちをごらんください。われわれがあなたの前まえに祈いのりをささげるのは、われわれの義ぎによるのではなく、ただあなたの大おおいなるあわれみによるのです。9:19 主しゅよ、聞きいてください。主しゅよ、ゆるしてください。主しゅよ、み心こころに留とめて、おこなってください。わが神かみよ、あなたご自身じしんのために、これを延のばさないでください。あなたの町まちと、あなたの民たみは、み名なをもってとなえられているからです」。 9:20 わたしがこう言いって祈いのり、かつわが罪つみとわが民たみイスラエルの罪つみをざんげし、わが神かみの聖せいなる山やまのために、わが神かみ、主しゅの前まえに願ねがいをしていたとき、9:21 すなわちわたしが祈いのりの言葉ことばを述のべていたとき、わたしが初はじめに幻まぼろしのうちに見みた、かの人ひとガブリエルは、すみやかに飛とんできて、夕ゆうの供そなえ物ものをささげるころ、わたしに近ちかづき、9:22 わたしに告つげて言いった、「ダニエルよ、わたしは今いまあなたに、知恵ちえと悟さとりを与あたえるためにきました。9:23 あなたが祈いのりを始はじめたとき、み言葉ことばが出でたので、それをあなたに告つげるためにきたのです。あなたは大おおいに愛あいせられている者ものです。ゆえに、このみ言葉ことばを考かんがえて、この幻まぼろしを悟さとりなさい。 9:24 あなたの民たみと、あなたの聖せいなる町まちについては、七十週しゅうが定さだめられています。これはとがを終おわらせ、罪つみに終おわりを告つげ、不義ふぎをあがない、永遠えいえんの義ぎをもたらし、幻まぼろしと預言者よげんしゃを封ふうじ、いと聖せいなる者ものに油あぶらを注そそぐためです。9:25 それゆえ、エルサレムを建たて直なおせという命令めいれいが出でてから、メシヤなるひとりの君きみが来くるまで、七週しゅうと六十二週しゅうあることを知しり、かつ悟さとりなさい。その間あいだに、しかも不安ふあんな時代じだいに、エルサレムは広場ひろばと街路がいろとをもって、建たて直なおされるでしょう。9:26 その六十二週しゅうの後のちにメシヤは断たたれるでしょう。ただし自分じぶんのためにではありません。またきたるべき君きみの民たみは、町まちと聖所せいじょとを滅ほろぼすでしょう。その終おわりは洪水こうずいのように臨のぞむでしょう。そしてその終おわりまで戦争せんそうが続つづき、荒廃こうはいは定さだめられています。9:27 彼かれは一週いっしゅうの間あいだ多おおくの者ものと、堅かたく契約けいやくを結むすぶでしょう。そして彼かれはその週しゅうの半なかばに、犠牲ぎせいと供そなえ物ものとを廃はいするでしょう。また荒あらす者ものが憎にくむべき者ものの翼つばさに乗のって来くるでしょう。こうしてついにその定さだまった終おわりが、その荒あらす者ものの上うえに注そそがれるのです」。 第10章 10:1 ペルシャの王おうクロスの第だい三年ねんに、ベルテシャザルと名なづけられたダニエルに、一つの言葉ことばが啓示けいじされたが、その言葉ことばは真実しんじつであり、大おおいなる戦たたかいを意味いみするものであった。彼かれはその言葉ことばに心こころを留とめ、その幻まぼろしを悟さとった。 10:2 そのころ、われダニエルは三週しゅうの間あいだ、悲かなしんでいた。10:3 すなわち三週間しゅうかんの全まったく満みちるまでは、うまい物ものを食たべず、肉にくと酒さけとを口くちにせず、また身みに油あぶらを塗ぬらなかった。10:4 正月しょうがつの二十四日かに、わたしがチグリスという大川おおかわの岸きしに立たっていたとき、10:5 目めをあげて望のぞみ見みると、ひとりの人ひとがいて、亜麻あま布ぬのの衣ころもを着き、ウパズの金きんの帯おびを腰こしにしめていた。10:6 そのからだは緑柱石りょくちゅうせきのごとく、その顔かおは電光でんこうのごとく、その目めは燃もえるたいまつのごとく、その腕うでと足あしは、みがいた青銅せいどうのように輝かがやき、その言葉ことばの声こえは、群衆ぐんしゅうの声こえのようであった。10:7 この幻まぼろしを見みた者ものは、われダニエルのみであって、わたしと共ともにいた人々ひとびとは、この幻まぼろしを見みなかったが、彼かれらは大おおいにおののいて、逃にげかくれた。10:8 それでわたしひとり残のこって、この大おおいなる幻まぼろしを見みたので、力ちからが抜ぬけ去さり、わが顔かおの輝かがやきは恐おそろしく変かわって、全まったく力ちからがなくなった。10:9 わたしはその言葉ことばの声こえを聞きいたが、その言葉ことばの声こえを聞きいたとき、顔かおを伏ふせ、地ちにひれ伏ふして、深ふかい眠ねむりに陥おちいった。 10:10 見みよ、一つの手てがあって、わたしに触ふれたので、わたしは震ふるえながらひざまずき、手てをつくと、10:11 彼かれはわたしに言いった、「大おおいに愛あいせられる人ひとダニエルよ、わたしがあなたに告つげる言葉ことばに心こころを留とめ、立たちあがりなさい。わたしは今いまあなたのもとにつかわされたのです」。彼かれがこの言葉ことばをわたしに告つげているとき、わたしは震ふるえながら立たちあがった。10:12 すると彼かれはわたしに言いった、「ダニエルよ、恐おそれるに及およばない。あなたが悟さとろうと心こころをこめ、あなたの神かみの前まえに身みを悩なやましたその初はじめの日ひから、あなたの言葉ことばは、すでに聞きかれたので、わたしは、あなたの言葉ことばのゆえにきたのです。10:13 ペルシャの国くにの君きみが、二十一日にちの間あいだわたしの前まえに立たちふさがったが、天使てんしの長ちょうのひとりであるミカエルがきて、わたしを助たすけたので、わたしは、彼かれをペルシャの国くにの君きみと共ともに、そこに残のこしておき、10:14 末すえの日ひに、あなたの民たみに臨のぞまんとする事ことを、あなたに悟さとらせるためにきたのです。この幻まぼろしは、なおきたるべき日ひにかかわるものです」。 10:15 彼かれがこれらの言葉ことばを、わたしに述のべていたとき、わたしは、地ちにひれ伏ふして黙だまっていたが、10:16 見みよ、人ひとの子このような者ものが、わたしのくちびるにさわったので、わたしは口くちを開ひらき、わが前まえに立たっている者ものに語かたって言いった、「わが主しゅよ、この幻まぼろしによって、苦くるしみがわたしに臨のぞみ、全まったく力ちからを失うしないました。10:17 わが主しゅのしもべは、どうしてわが主しゅと語かたることができましょう。わたしは全まったく力ちからを失うしない、息いきも止とまるばかりです」。 10:18 人ひとの形かたちをした者ものは、再ふたたびわたしにさわり、わたしを力ちからづけて、10:19 言いった、「大おおいに愛あいせられる人ひとよ、恐おそれるには及およばない。安心あんしんしなさい。心こころを強つよくし、勇気ゆうきを出だしなさい」。彼かれがこう言いったとき、わたしは力ちからづいて言いった、「わが主しゅよ、語かたってください。あなたは、わたしに力ちからをつけてくださったから」。10:20 そこで彼かれは言いった、「あなたは、わたしがなんのためにきたかを知しっていますか。わたしは、今いま帰かえっていって、ペルシャの君きみと戦たたかおうとしているのです。彼かれとの戦たたかいがすむと、ギリシヤの君きみがあらわれるでしょう。10:21 しかしわたしは、まず真理しんりの書しょにしるされている事ことを、あなたに告つげよう。わたしを助たすけて、彼かれらと戦たたかう者ものは、あなたがたの君きみミカエルのほかにはありません。 第11章 11:1 わたしはまたメデアびとダリヨスの元年がんねんに立たって彼かれを強つよめ、彼かれを力ちからづけたことがあります。 11:2 わたしは今いまあなたに真理しんりを示しめそう。見みよ、ペルシャになお三人にんの王おうが起おこるでしょう。その第だい四の者ものは、他たのすべての者ものにまさって富とみ、その富とみによって強つよくなったとき、彼かれはすべてのものを動員どういんして、ギリシヤの国くにを攻せめます。11:3 またひとりの勇いさましい王おうが起おこり、大おおいなる権力けんりょくをもって世よを治おさめ、その意いのままに事ことをなすでしょう。11:4 彼かれが強つよくなった時とき、その国くには破やぶられ、天てんの四方しほうに分わかたれます。それは彼かれの子孫しそんに帰きせず、また彼かれが治おさめたほどの権力けんりょくもなく、彼かれの国くには抜ぬき取とられて、これら以外いがいの者ものどもに帰きするでしょう。 11:5 南みなみの王おうは強つよくなります。しかしその将軍しょうぐんのひとりが、彼かれにまさって強つよくなり、権力けんりょくをふるいます。その権力けんりょくは、大おおいなる権力けんりょくです。11:6 年としを経へて後のち、彼かれらは縁組えんぐみをなし、南みなみの王おうの娘むすめが、北きたの王おうにきて、和親わしんをはかります。しかしその女おんなは、その腕うでの力ちからを保たもつことができず、またその王おうも、その子こも立たつことができません。その女おんなと、その従者じゅうしゃと、その子こおよびその女おんなを獲えた者ものとは、わたされるでしょう。 11:7 そのころ、この女おんなの根ねから、一つの芽めが起おこって彼かれに代かわり、北きたの王おうの軍勢ぐんぜいにむかってきて、その城しろに討うち入いり、これを攻せめて勝かつでしょう。11:8 彼かれはまた彼かれらの神々かみがみ、鋳い像ぞうおよび金銀きんぎんの貴重きちょうな器物うつわものを、エジプトに携たずさえ去さり、そして数年すうねんの間あいだ、北きたの王おうを討うつことを控ひかえます。11:9 その後のち、北きたの王おうは、南みなみの王おうの国くにに討うち入はいるが、自分じぶんの国くにに帰かえるでしょう。 11:10 その子こらはまた憤激ふんげきして、あまたの大軍たいぐんを集あつめ、進すすんで行いって、みなぎりあふれ、通とおり過すぎるが、また行いって、その城しろにまで攻せめ寄よせるでしょう。11:11 そこで南みなみの王おうは、大おおいに怒いかり、出でてきて北きたの王おうと戦たたかいます。彼かれは大軍たいぐんを起おこすけれども、その軍ぐんは相手あいての手てにわたされるでしょう。11:12 彼かれがその軍ぐんを打うち破やぶったとき、その心こころは高たかぶり、数すう万まん人にんを倒たおします。しかし、勝かつことはありません。11:13 それは北きたの王おうがまた初はじめよりも大おおいなる軍ぐんを起おこし、数年すうねんの後のち、大おおいなる軍勢ぐんぜいと多おおくの軍需ぐんじゅ品ひんとをもって、攻せめて来くるからです。 11:14 そのころ多おおくの者ものが起おこって、南みなみの王おうに敵てきします。またあなたの民たみのうちのあらくれ者ものが、みずから高たかぶって事ことをなし、幻まぼろしを成就じょうじゅしようとするが失敗しっぱいするでしょう。11:15 こうして北きたの王おうがきて、塁るいを築きずき、堅固けんごな町まちを取とるが、南みなみの王おうの力ちからは、これに立たち向むかうことができず、またそのえり抜ぬきの民たみも、これに立たち向むかう力ちからがありません。11:16 これに攻せめて来くる者ものは、その心こころのままに事ことをなし、その前まえに立たち向むかうことのできる者ものはなく、彼かれは麗うるわしい地ちに立たち、その地ちは全まったく彼かれのために荒あらされます。11:17 彼かれは全国ぜんこくの力ちからをもって討うち入はいろうと、その顔かおを向むけるが、相手あいてと仲直なかなおりをし、その娘むすめを与あたえて、その国くにを取とろうとします。しかし、その事ことは成ならず、また彼かれの利益りえきにはならないでしょう。11:18 その後のち、彼かれは顔かおを海沿うみぞいの国々くにぐにに向むけて、その多おおくのものを取とります。しかし、ひとりの大将たいしょうがあって、彼かれが与あたえた恥辱ちじょくをそそぎ、その恥辱ちじょくを彼かれの上うえに返かえします。11:19 こうして彼かれは、その顔かおを自分じぶんの国くにの要害ようがいに向むけるが、彼かれはつまずき倒たおれて消きえうせるでしょう。 11:20 彼かれに代かわって起おこる者ものは、栄光えいこうの国くにに人ひとをつかわして、租税そぜいを取とり立たてさせるでしょう。しかし彼かれは、怒いかりにも戦たたかいにもよらず、数日すうじつのうちに滅ほろぼされます。11:21 彼かれに代かわって起おこる者ものは、卑いやしむべき者ものであって、彼かれには、王おうの尊厳そんげんが与あたえられず、彼かれは不意ふいにきて、巧言こうげんをもって国くにを獲えるでしょう。11:22 洪水こうずいのような軍勢ぐんぜいは、彼かれの前まえに押おし流ながされて敗やぶられ、契約けいやくの君きみたる者ものもまた敗やぶられるでしょう。11:23 彼かれは、これと同盟どうめいを結むすんで後のち、偽いつわりのおこないをなし、わずかな民たみをもって強つよくなり、11:24 不意ふいにその州しゅうの最もっとも肥こえた所ところに攻せめ入いり、その父ちちも、その父ちちの父ちちもしなかった事ことをおこない、その奪うばった物もの、かすめた物ものおよび財宝ざいほうを、人々ひとびとの中なかに散ちらすでしょう。彼かれはまた計略けいりゃくをめぐらして、堅固けんごな城しろを攻せめるが、ただし、それは時ときの至いたるまでです。11:25 彼かれはその勢力せいりょくと勇気ゆうきとを奮ふるい起おこし、大軍たいぐんを率ひきいて南みなみの王おうを攻せめます。南みなみの王おうもまたみずから奮ふるい、はなはだ大おおいなる強力きょうりょくな軍勢ぐんぜいをもって戦たたかいます。しかし、彼かれに対たいして、陰謀いんぼうをめぐらす者ものがあるので、これに立たち向むかうことができません。11:26 すなわち彼かれの食物しょくもつを食たべる者ものたちが、彼かれを滅ほろぼします。そして、その軍勢ぐんぜいは押おし流ながされて、多おおくの者ものが倒たおれ死しぬでしょう。11:27 このふたりの王おうは、害がいを与あたえようと心こころにはかり、ひとつ食卓しょくたくに共ともに食しょくして、偽いつわりを語かたるが、それは成功せいこうしません。終おわりはなお定さだまった時ときの来くるまでこないからです。11:28 彼かれは大おおいなる財宝ざいほうをもって、自分じぶんの国くにに帰かえるでしょう。しかし、彼かれの心こころは聖せいなる契約けいやくにそむき、ほしいままに事ことをなして、自分じぶんの国くにに帰かえります。 11:29 定さだまった時ときになって、彼かれはまた南みなみに討うち入いります。しかし、この時ときは前まえの時ときのようではありません。11:30 それはキッテムの船ふねが、彼かれに立たち向むかって来くるので、彼かれは脅おびやかされて帰かえり、聖せいなる契約けいやくに対たいして憤いきどおり、事ことを行おこなうでしょう。彼かれは帰かえっていって、聖せいなる契約けいやくを捨すてる者ものを顧かえりみ用もちいるでしょう。11:31 彼かれから軍勢ぐんぜいが起おこって、神殿しんでんと城郭じょうかくを汚けがし、常供じょうくの燔祭はんさいを取とり除のぞき、荒あらす憎にくむべきものを立たてるでしょう。11:32 彼かれは契約けいやくを破やぶる者ものどもを、巧言こうげんをもってそそのかし、そむかせるが、自分じぶんの神かみを知しる民たみは、堅かたく立たって事ことを行おこないます。11:33 民たみのうちの賢かしこい人々ひとびとは、多おおくの人ひとを悟さとりに至いたらせます。それでも、彼かれらはしばらくの間あいだ、やいばにかかり、火ひに焼やかれ、捕とらわれ、かすめられなどして倒たおれます。11:34 その倒たおれるとき、彼かれらは少すこしの助たすけを獲えます。また多おおくの人ひとが、巧言こうげんをもって彼かれらにくみするでしょう。11:35 また賢かしこい者もののうちのある者ものは、終おわりの時ときまで、自分じぶんを練ねり、清きよめ、白しろくするために倒たおれるでしょう。終おわりはなお定さだまった時ときの来くるまでこないからです。 11:36 この王おうは、その心こころのままに事ことをおこない、すべての神かみを越こえて、自分じぶんを高たかくし、自分じぶんを大おおいにし、神々かみがみの神かみたる者ものにむかって、驚おどろくべき事ことを語かたり、憤いきどおりのやむ時ときまで栄さかえるでしょう。これは定さだめられた事ことが成就じょうじゅするからです。11:37 彼かれはその先祖せんぞの神々かみがみを顧かえりみず、また婦人ふじんの好このむ者ものも、いかなる神かみをも顧かえりみないでしょう。彼かれはすべてにまさって、自分じぶんを大おおいなる者ものとするからです。11:38 彼かれはこれらの者ものの代かわりに、要害ようがいの神かみをあがめ、金きん、銀ぎん、宝石ほうせき、および宝物たからものをもって、その先祖せんぞたちの知しらなかった神かみをあがめ、11:39 異邦いほうの神かみの助たすけによって、最もっとも強固きょうこな城しろにむかって、事ことをなすでしょう。そして彼かれを認みとめる者ものには、栄誉えいよを増まし与あたえ、これに多おおくの人ひとを治おさめさせ、賞与しょうよとして土地とちを分わけ与あたえるでしょう。 11:40 終おわりの時ときになって、南みなみの王おうは彼かれと戦たたかいます。北きたの王おうは、戦車せんしゃと騎兵きへいと、多おおくの船ふねをもって、つむじ風かぜのように彼かれを攻せめ、国々くにぐににはいっていって、みなぎりあふれ、通とおり過すぎるでしょう。11:41 彼かれはまた麗うるわしい国くににはいります。また彼かれによって、多おおくの者ものが滅ほろぼされます。しかし、エドム、モアブ、アンモンびとらのうちのおもな者ものは、彼かれの手てから救すくわれましょう。11:42 彼かれは国々くにぐににその手てを伸のばし、エジプトの地ちも免まぬかれません。11:43 彼かれは金銀きんぎんの財宝ざいほうと、エジプトのすべての宝物たからものを支配しはいし、リビヤびと、エチオピヤびとは、彼かれのあとに従したがいます。11:44 しかし東ひがしと北きたからの知しらせが彼かれを驚おどろかし、彼かれは多おおくの人ひとを滅ほろぼし絶たやそうと、大おおいなる怒いかりをもって出でて行いきます。11:45 彼かれは海うみと麗うるわしい聖山せいざんとの間あいだに、天幕てんまくの宮殿きゅうでんを設もうけるでしょう。しかし、彼かれはついにその終おわりにいたり、彼かれを助たすける者ものはないでしょう。 第12章 12:1 その時ときあなたの民たみを守まもっている大おおいなる君きみミカエルが立たちあがります。また国くにが始はじまってから、その時ときにいたるまで、かつてなかったほどの悩なやみの時ときがあるでしょう。しかし、その時ときあなたの民たみは救すくわれます。すなわちあの書しょに名なをしるされた者ものは皆みな救すくわれます。12:2 また地ちのちりの中なかに眠ねむっている者もののうち、多おおくの者ものは目めをさますでしょう。そのうち永遠えいえんの生命せいめいにいたる者ものもあり、また恥はじと、限かぎりなき恥辱ちじょくをうける者ものもあるでしょう。12:3 賢かしこい者ものは、大空おおぞらの輝かがやきのように輝かがやき、また多おおくの人ひとを義ぎに導みちびく者ものは、星ほしのようになって永遠えいえんにいたるでしょう。12:4 ダニエルよ、あなたは終おわりの時ときまでこの言葉ことばを秘ひし、この書しょを封ふうじておきなさい。多おおくの者ものは、あちこちと探さぐり調しらべ、そして知識ちしきが増ますでしょう」。 12:5 そこで、われダニエルが見みていると、ほかにまたふたりの者ものがあって、ひとりは川かわのこなたの岸きしに、ひとりは川かわのかなたの岸きしに立たっていた。12:6 わたしは、かの亜麻あま布ぬのを着きて川かわの水みずの上うえにいる人ひとにむかって言いった、「この異常いじょうなできごとは、いつになって終おわるでしょうか」と。12:7 かの亜麻あま布ぬのを着きて、川かわの水みずの上うえにいた人ひとが、天てんに向むかって、その右みぎの手てと左ひだりの手てをあげ、永遠えいえんに生いける者ものをさして誓ちかい、それは、ひと時ときとふた時ときと半時はんときである。聖せいなる民たみを打うち砕くだく力ちからが消きえ去さる時ときに、これらの事ことはみな成就じょうじゅするだろうと言いうのを、わたしは聞きいた。12:8 わたしはこれを聞きいたけれども悟さとれなかった。わたしは言いった、「わが主しゅよ、これらの事ことの結末けつまつはどんなでしょうか」。 12:9 彼かれは言いった、「ダニエルよ、あなたの道みちを行いきなさい。この言葉ことばは終おわりの時ときまで秘ひし、かつ封ふうじておかれます。12:10 多おおくの者ものは、自分じぶんを清きよめ、自分じぶんを白しろくし、かつ練ねられるでしょう。しかし、悪わるい者ものは悪わるい事ことをおこない、ひとりも悟さとることはないが、賢かしこい者ものは悟さとるでしょう。 12:11 常供じょうくの燔祭はんさいが取すり除のぞかれ、荒あらす憎にくむべきものが立たてられる時ときから、千二百九十日にちが定さだめられている。12:12 待まっていて千三百三十五日にちに至いたる者ものはさいわいです。12:13 しかし、終おわりまであなたの道みちを行いきなさい。あなたは休やすみに入はいり、定さだめられた日ひの終おわりに立たって、あなたの分ぶんを受うけるでしょう」。
2:1 ネブカデネザルの治世ちせいの第だい二年ねんに、ネブカデネザルは夢ゆめを見み、そのために心こころに思おもい悩なやんで眠ねむることができなかった。
2:2 そこで王おうは命めいじて王おうのためにその夢ゆめを解とかせようと、博士はかせ、法ほう術じゅつ士し、魔術まじゅつ士し、カルデヤびとを召めさせたので、彼かれらはきて王おうの前まえに立たった。
2:3 王おうは彼かれらにむかって、「わたしは夢ゆめを見みたが、その夢ゆめを知しろうと心こころに思おもい悩なやんでいる」と言いったので、
2:4 カルデヤびとらはアラム語ごで王おうに言いった、「王おうよ、とこしえに生いきながらえられますように。どうぞしもべらにその夢ゆめをお話はなしください。わたしたちはその解とき明あかしを申もうしあげましょう」。
2:5 王おうは答こたえてカルデヤびとに言いった、「わたしの言いうことは必かならず行おこなう。あなたがたがもしその夢ゆめと、その解とき明あかしを、わたしに示しめさないならば、あなたがたの身みは切きり裂さかれ、あなたがたの家いえは滅ほろぼされる。
2:6 しかし、その夢ゆめとその解とき明あかしとを示しめすならば、贈おくり物ものと報酬ほうしゅうと大おおいなる栄誉えいよとを、わたしから受うけるだろう。それゆえその夢ゆめとその解とき明あかしとを、わたしに示しめしなさい」。
2:7 彼かれらは再ふたたび答こたえて言いった、「王おうよ、しもべらにその夢ゆめをお話はなしください。そうすればわたしたちはその解とき明あかしを示しめしましょう」。
2:8 王おうは答こたえて言いった、「あなたがたはわたしが言いったことは、必かならず行おこなうことを承知しょうちしているので、時ときを延のばそうとしているのを、わたしは確たしかに知しっている。
2:9 もしその夢ゆめをわたしに示しめさないならば、あなたがたの受うける刑罰けいばつはただ一つあるのみだ。あなたがたは一致いっちして、偽いつわりと、欺あざむきの言葉ことばをわたしの前まえに述のべて、時ときの変かわるのを待まとうとしているのだ。まずその夢ゆめをわたしに示しめしなさい。そうすれば、わたしはあなたがたがその解とき明あかしをも、示しめしうることを知しるだろう」。
2:10 カルデヤびとらは王おうの前まえに答こたえて言いった、「世よの中なかには王おうのその要求ようきゅうに応おうじうる者ものはひとりもありません。どんな大おおいなる力ちからある王おうでも、このような事ことを、博士はかせ、法ほう術じゅつ士し、カルデヤびとに尋たずねた者ものはありませんでした。
2:11 王おうの尋たずねられる事ことはむずかしい事ことであって、肉にくなる者ものと共ともにおられない神々かみがみを除のぞいては、王おうの前まえにこれを示しめしうる者ものはないでしょう」。
2:12 これによって王おうは怒いかり、かつ大おおいに憤いきどおり、バビロンの知者ちしゃをすべて滅ほろぼせと命めいじた。
2:13 この命令めいれいが発はっせられたので、知者ちしゃらは殺ころされることになった。またダニエルとその同僚どうりょうをも殺ころそうと求もとめた。
2:14 そして王おうの侍衛じえいの長ちょうアリオクが、バビロンの知者ちしゃらを殺ころそうと出でてきたので、ダニエルは思慮しりょと知恵ちえとをもってこれに応答おうとうした。
2:15 すなわち王おうの高官こうかんアリオクに「どうして王おうはそんなにきびしい命令めいれいを出だされたのですか」と言いった。アリオクがその事ことをダニエルに告つげ知しらせると、
2:16 ダニエルは王おうのところへはいっていって、その解とき明あかしを示しめすために、しばらくの時ときを与あたえられるよう王おうに願ねがった。
2:17 それからダニエルは家いえに帰かえり、同僚どうりょうのハナニヤ、ミシャエルおよびアザリヤにこの事ことを告つげ知しらせ、
2:18 共ともにこの秘密ひみつについて天てんの神かみのあわれみを請こい、ダニエルとその同僚どうりょうとが、他たのバビロンの知者ちしゃと共ともに滅ほろぼされることのないように求もとめた。
2:19 ついに夜よるの幻まぼろしのうちにこの秘密ひみつがダニエルに示しめされたので、ダニエルは天てんの神かみをほめたたえた。
2:20 ダニエルは言いった、
2:21 神かみは時ときと季節きせつとを変へんじ、王おうを廃はいし、王おうを立たて、知者ちしゃに知恵ちえを与あたえ、賢者けんじゃに知識ちしきを授さづけられる。
2:22 神かみは深妙しんみょう、秘密ひみつの事ことをあらわし、暗黒あんこくにあるものを知しり、光ひかりをご自身じしんのうちに宿やどす。
2:23 わが先祖せんぞたちの神かみよ、あなたはわたしに知恵ちえと力ちからとを賜たまい、今いまわれわれがあなたに請こい求もとめたところのものをわたしに示しめし、王おうの求もとめたことをわれわれに示しめされたので、わたしはあなたに感謝かんしゃし、あなたをさんびします」。
2:24 そこでダニエルは、王おうがバビロンの知者ちしゃたちを滅ほろぼすことを命めいじておいたアリオクのもとへ行いって、彼かれにこう言いった、「バビロンの知者ちしゃたちを滅ほろぼしてはなりません。わたしを王おうの前まえに連つれて行いってください。わたしはその解とき明あかしを王おうに示しめします」。
2:25 アリオクは急いそいでダニエルを王おうの前まえに連つれて行いき、王おうにこう言いった、「ユダから捕とらえ移うつした者ものの中なかに、その解とき明あかしを王おうにお知おしらせすることのできる、ひとりの人ひとを見みつけました」。
2:26 王おうは答こたえて、ベルテシャザルという名なのダニエルに言いった、「あなたはわたしが見みた夢ゆめと、その解とき明あかしとをわたしに知しらせることができるのか」。
2:27 ダニエルは王おうに答こたえて言いった、「王おうが求もとめられる秘密ひみつは、知者ちしゃ、法ほう術じゅつ士し、博士はかせ、占うらない師しなど、これを王おうに示しめすことはできません。
2:28 しかし秘密ひみつをあらわすひとりの神かみが天てんにおられます。彼かれは後のちの日ひに起おこるべき事ことを、ネブカデネザル王おうに知しらされたのです。あなたの夢ゆめと、あなたが床とこにあって見みた脳中のうちゅうの幻まぼろしはこれです。
2:29 王おうよ、あなたが床とこにおられたとき、この後のちどんな事ことがあろうかと、思おもいまわされたが、秘密ひみつをあらわされるかたが、将来しょうらいどんな事ことが起おこるかを、あなたに知しらされたのです。
2:30 この秘密ひみつをわたしにあらわされたのは、すべての生いける者ものにまさって、わたしに知恵ちえがあるためではなく、ただその解とき明あかしを、王おうにお知おしらせすることによって、あなたが心こころに思おもわれたことを、お知しりになるためです。
2:31 王おうよ、あなたは一つの大おおいなる像ぞうが、あなたの前まえに立たっているのを見みられました。その像ぞうは大おおきく、非常ひじょうに光ひかり輝かがやいて、恐おそろしい外観がいかんをもっていました。
2:32 その像ぞうの頭あたまは純金じゅんきん、胸むねと両りょう腕うでとは銀ぎん、腹はらと、ももとは青銅せいどう、
2:33 すねは鉄てつ、足あしの一部いちぶは鉄てつ、一部いちぶは粘土ねんどです。
2:34 あなたが見みておられたとき、一つの石いしが人手ひとでによらずに切きり出だされて、その像ぞうの鉄てつと粘土ねんどとの足あしを撃うち、これを砕くだきました。
2:35 こうして鉄てつと、粘土ねんどと、青銅せいどうと、銀ぎんと、金きんとはみな共ともに砕くだけて、夏なつの打うち場ばのもみがらのようになり、風かぜに吹ふき払はらわれて、あとかたもなくなりました。ところがその像ぞうを撃うった石いしは、大おおきな山やまとなって全ぜん地ちに満みちました。
2:36 これがその夢ゆめです。今いまわたしたちはその解とき明あかしを、王おうの前まえに申もうしあげましょう。
2:37 王おうよ、あなたは諸王しょおうの王おうであって、天てんの神かみはあなたに国くにと力ちからと勢いきおいと栄さかえとを賜たまい、
2:38 また人ひとの子こら、野のの獣けもの、空そらの鳥とりはどこにいるものでも、皆みなこれをあなたの手てに与あたえて、ことごとく治おさめさせられました。あなたはあの金きんの頭あたまです。
2:39 あなたの後のちにあなたに劣おとる一つの国くにが起おこります。また第だい三に青銅せいどうの国くにが起おこって、全ぜん世界せかいを治おさめるようになります。
2:40 第だい四の国くには鉄てつのように強つよいでしょう。鉄てつはよくすべての物ものをこわし砕くだくからです。鉄てつがこれらをことごとく打うち砕くだくように、その国くにはこわし砕くだくでしょう。
2:41 あなたはその足あしと足あしの指ゆびを見みられましたが、その一部いちぶは陶器とうき師しの粘土ねんど、一部いちぶは鉄てつであったので、それは分裂ぶんれつした国くにをさします。しかしあなたが鉄てつと粘土ねんどとの混まじったのを見みられたように、その国くにには鉄てつの強つよさがあるでしょう。
2:42 その足あしの指ゆびの一部いちぶは鉄てつ、一部いちぶは粘土ねんどであったように、その国くには一部いちぶは強つよく、一部いちぶはもろいでしょう。
2:43 あなたが鉄てつと粘土ねんどとの混まじったのを見みられたように、それらは婚姻こんいんによって、互たがいに混ざるまざるでしょう。しかし鉄てつと粘土ねんどとは相混あいまじらないように、かれとこれと相合そうごうすることはありません。
2:44 それらの王おうたちの世よに、天てんの神かみは一つの国くにを立たてられます。これはいつまでも滅ほろびることがなく、その主権しゅけんは他たの民たみにわたされず、かえってこれらのもろもろの国くにを打うち破やぶって滅ほろぼすでしょう。そしてこの国くには立たって永遠えいえんに至いたるのです。
2:45 一つの石いしが人手ひとでによらずに山やまから切きり出だされ、その石いしが鉄てつと、青銅せいどうと、粘土ねんどと、銀ぎんと、金きんとを打うち砕くだいたのを、あなたが見みられたのはこの事ことです。大おおいなる神かみがこの後のちに起おこるべきことを、王おうに知しらされたのです。その夢ゆめはまことであって、この解とき明あかしは確たしかです」。
2:46 そこでネブカデネザル王おうはひれ伏ふして、ダニエルを拝はいし、供そなえ物ものと薫香くんこうとを、彼かれにささげることを命めいじた。
2:47 そして王おうはダニエルに答こたえて言いった、「あなたがこの秘密ひみつをあらわすことができたのを見みると、まことに、あなたがたの神かみは神々かみがみの神かみ、王おうたちの主しゅであって、秘密ひみつをあらわされるかただ」。
2:48 こうして王おうはダニエルに高たかい位くらいを授さづけ、多おおくの大おおいなる贈おくり物ものを与あたえて、彼かれをバビロン全ぜん州しゅうの総督そうとくとし、またバビロンの知者ちしゃたちを統轄とうかつする者ものの長ちょうとした。
2:49 王おうはまたダニエルの願ねがいによって、シャデラクとメシャクとアベデネゴを任命にんめいして、バビロン州しゅうの事務じむをつかさどらせた。ただしダニエルは王おうの宮みやにとどまっていた。
第3章 3:1 ネブカデネザル王おうは一つの金きんの像ぞうを造つくった。その高たかさは六十キュビト、その幅はばは六キュビトで、彼かれはこれをバビロン州しゅうのドラの平野へいやに立たてた。3:2 そしてネブカデネザル王おうは、総督そうとく、長官ちょうかん、知事ちじ、参議さんぎ、庫くら官かん、法官ほうかん、高僧こうそうおよび諸しょ州しゅうの官吏かんりたちを召めし集あつめ、ネブカデネザル王おうの立たてたこの像ぞうの落成らくせい式しきに臨のぞませようとした。3:3 そこで、総督そうとく、長官ちょうかん、知事ちじ、参議さんぎ、庫こ官かん、法官ほうかん、高僧こうそうおよび諸しょ州しゅうの官吏かんりたちは、ネブカデネザル王おうの立たてた像ぞうの落成らくせい式しきに臨のぞみ、そのネブカデネザルの立たてた像ぞうの前まえに立たった。3:4 時ときに伝令でんれい者しゃは大声おおごえに呼よばわって言いった、「諸民しょみん、諸しょ族ぞく、諸国しょこく語ごの者ものよ、あなたがたにこう命めいじられる。3:5 角笛つのぶえ、横笛よこぶえ、琴こと、三角琴さんかくごと、立琴たてごと、風笛かざぶえなどの、もろもろの楽器がっきの音ねを聞きく時ときは、ひれ伏ふしてネブカデネザル王おうの立たてた金きんの像ぞうを拝おがまなければならない。3:6 だれでもひれ伏ふして拝おがまない者ものは、ただちに火ひの燃もえる炉ろの中なかに投なげ込こまれる」と。3:7 そこで民たみらはみな、角笛つのぶえ、横笛よこぶえ、琴こと、三角琴さんかくごと、立琴たてごと、風笛かざぶえなどの、もろもろの楽器がっきの音ねを聞きくや、諸民しょみん、諸しょ族ぞく、諸国しょこく語ごの者ものたちはみな、ひれ伏ふして、ネブカデネザル王おうの立たてた金きんの像ぞうを拝おがんだ。 3:8 その時とき、あるカルデヤびとらが進すすみきて、ユダヤ人ひとをあしざまに訴うったえた。3:9 すなわち彼かれらはネブカデネザル王おうに言いった、「王おうよ、とこしえに生いきながらえられますように。3:10 王おうよ、あなたは命令めいれいを出だして仰おおせられました。すべて、角笛つのぶえ、横笛よこぶえ、琴こと、三角琴さんかくごと、立琴たてごと、風笛かざぶえなどの、もろもろの楽器がっきの音ねを聞きく者ものは皆みな、ひれ伏ふして金きんの像ぞうを拝おがまなければならない。3:11 また、だれでもひれ伏ふして拝おがまない者ものはみな、火ひの燃もえる炉ろの中なかに投なげ込こまれると。3:12 ここにあなたが任命にんめいして、バビロン州しゅうの事務じむをつかさどらせられているユダヤ人ひとシャデラク、メシャクおよびアベデネゴがおります。王おうよ、この人々ひとびとはあなたを尊たっとばず、あなたの神々かみがみにも仕つかえず、あなたの立たてられた金きんの像ぞうをも拝おがもうとしません」。 3:13 そこでネブカデネザルは怒いかりかつ憤いきどおって、シャデラク、メシャクおよびアベデネゴを連つれてこいと命めいじたので、この人々ひとびとを王おうの前まえに連つれてきた。3:14 ネブカデネザルは彼かれらに言いった、「シャデラク、メシャク、アベデネゴよ、あなたがたがわが神々かみがみに仕つかえず、またわたしの立たてた金きんの像ぞうを拝おがまないとは、ほんとうなのか。3:15 あなたがたがもし、角笛つのぶえ、横笛よこぶえ、琴こと、三角琴さんかくごと、立琴たてごと、風笛かざぶえなどの、もろもろの楽器がっきの音ねを聞きくときにひれ伏ふして、わたしが立たてた像ぞうを、ただちに拝おがむならば、それでよろしい。しかし、拝おがむことをしないならば、ただちに火ひの燃もえる炉ろの中なかに投なげ込こまれる。いったい、どの神かみが、わたしの手てからあなたがたを救すくうことができようか」。 3:16 シャデラク、メシャクおよびアベデネゴは王おうに答こたえて言いった、「ネブカデネザルよ、この事ことについて、お答こたえする必要ひつようはありません。3:17 もしそんなことになれば、わたしたちの仕つかえている神かみは、その火ひの燃もえる炉ろから、わたしたちを救すくい出だすことができます。また王おうよ、あなたの手てから、わたしたちを救すくい出だされます。3:18 たといそうでなくても、王おうよ、ご承知しょうちください。わたしたちはあなたの神々かみがみに仕つかえず、またあなたの立たてた金きんの像ぞうを拝おがみません」。 3:19 そこでネブカデネザルは怒いかりに満みち、シャデラク、メシャクおよびアベデネゴにむかって、顔色かおいろを変かえ、炉ろを平常へいじょうよりも七倍ばい熱あつくせよと命めいじた。3:20 またその軍勢ぐんぜいの中なかの力ちからの強つよい人々ひとびとを呼よんで、シャデラク、メシャクおよびアベデネゴを縛しばって、彼かれらを火ひの燃もえる炉ろの中なかに投なげ込こめと命めいじた。3:21 そこでこの人々ひとびとは、外套がいとう、下着したぎ、帽子ぼうし、その他たの衣服いふくのまま縛しばられて、火ひの燃もえる炉ろの中なかに投なげ込こまれた。3:22 王おうの命令めいれいはきびしく、かつ炉ろは、はなはだしく熱ねっしていたので、シャデラク、メシャクおよびアベデネゴを引ひきつれていった人々ひとびとは、その火炎かえんに焼やき殺ころされた。3:23 シャデラク、メシャク、アベデネゴの三人にんは縛しばられたままで、火ひの燃もえる炉ろの中なかに落おち込こんだ。 3:24 その時とき、ネブカデネザル王おうは驚おどろいて急いそぎ立たちあがり、大臣だいじんたちに言いった、「われわれはあの三人にんを縛しばって、火ひの中なかに投なげ入いれたではないか」。彼かれらは王おうに答こたえて言いった、「王おうよ、そのとおりです」。3:25 王おうは答こたえて言いった、「しかし、わたしの見みるのに四人にんの者ものがなわめなしに、火ひの中なかを歩あるいているが、なんの害がいをも受うけていない。その第だい四の者ものの様子ようすは神かみの子このようだ」。 3:26 そこでネブカデネザルは、その火ひの燃もえる炉ろの入口いりぐちに近寄ちかよって、「いと高たかき神かみのしもべシャデラク、メシャク、アベデネゴよ、出でてきなさい」と言いったので、シャデラク、メシャク、アベデネゴはその火ひの中なかから出でてきた。3:27 総督そうとく、長官ちょうかん、知事ちじおよび王おうの大臣だいじんたちも集あつまってきて、この人々ひとびとを見みたが、火ひは彼かれらの身みにはなんの力ちからもなく、その頭あたまの毛けは焼やけず、その外套がいとうはそこなわれず、火ひのにおいもこれに付つかなかった。3:28 ネブカデネザルは言いった、「シャデラク、メシャク、アベデネゴの神かみはほむべきかな。神かみはその使者ししゃをつかわして、自分じぶんに寄より頼たのむしもべらを救すくった。また彼かれらは自分じぶんの神かみ以外いがいの神かみに仕つかえ、拝おがむよりも、むしろ王おうの命令めいれいを無視むしし、自分じぶんの身みをも捨すてようとしたのだ。3:29 それでわたしはいま命令めいれいを下くだす。諸民しょみん、諸しょ族ぞく、諸国しょこく語ごの者もののうちだれでも、シャデラク、メシャク、アベデネゴの神かみをののしる者ものがあるならば、その身みは切きり裂さかれ、その家いえは滅ほろぼされなければならない。このように救すくいを施ほどこすことのできる神かみは、ほかにないからだ」。3:30 こうして、王おうはシャデラク、メシャクおよびアベデネゴの位くらいを進すすめて、バビロン州しゅうにおらせた。 第4章 4:1 ネブカデネザル王おうは全ぜん世界せかいに住すむ諸民しょみん、諸しょ族ぞく、諸国しょこく語ごの者ものに告つげる。どうか、あなたがたに平安へいあんが増ますように。4:2 いと高たかき神かみはわたしにしるしと奇跡きせきとを行おこなわれた。わたしはこれを知しらせたいと思おもう。 4:3 ああ、そのしるしの大おおいなること、ああ、その奇跡きせきのすばらしいこと、その国くには永遠えいえんの国くに、その主権しゅけんは世々よよに及およぶ。4:4 われネブカデネザルはわが家やに安やすらかにおり、わが宮みやにあって栄さかえていたが、4:5 わたしは一つの夢ゆめを見みて、そのために恐おそれた。すなわち床とこにあって、その事ことを思おもいめぐらし、わが脳中のうちゅうの幻まぼろしのために心こころを悩なやました。4:6 そこでわたしは命令めいれいを下くだし、バビロンの知者ちしゃをことごとくわが前まえに召めし寄よせて、その夢ゆめの解とき明あかしを示しめさせようとした。4:7 すると、博士はかせ、法ほう術じゅつ士し、カルデヤびと、占うらない師したちがきたので、わたしはその夢ゆめを彼かれらに語かたったが、彼かれらはその解とき明あかしを示しめすことができなかった。4:8 最後さいごにダニエルがわたしの前まえにきた、――彼かれの名なはわが神かみの名なにちなんで、ベルテシャザルととなえられ、彼かれのうちには聖せいなる神かみの霊れいがやどっていた――わたしは彼かれにその夢ゆめを語かたって言いった、4:9 「博士はかせの長ちょうベルテシャザルよ、わたしは知しっている。聖せいなる神かみの霊れいがあなたのうちにやどっているから、どんな秘密ひみつもあなたにはむずかしいことはない。ここにわたしが見みた夢ゆめがある。その解とき明あかしをわたしに告つげなさい。4:10 わたしが床とこにあって見みた脳中のうちゅうの幻まぼろしはこれである。わたしが見みたのに、地ちの中央ちゅうおうに一本ぽんの木きがあって、そのたけが高たかかったが、4:11 その木きは成長せいちょうして強つよくなり、天てんに達たっするほどの高たかさになって、地ちの果はてまでも見みえわたり、4:12 その葉はは美うつくしく、その実みは豊ゆたかで、すべての者ものがその中なかから食物しょくもつを獲え、また野のの獣けものはその陰かげにやどり、空そらの鳥とりはその枝えだにすみ、すべての肉にくなる者ものはこれによって養やしなわれた。 4:13 わたしが床とこにあって見みた脳中のうちゅうの幻まぼろしの中なかに、ひとりの警護者けいごしゃ、ひとりの聖者せいじゃの天てんから下くだるのを見みたが、4:14 彼かれは声こえ高たかく呼よばわって、こう言いった、『この木きを切きり倒たおし、その枝えだを切きりはらい、その葉はをゆり落おとし、その実みを打うち散ちらし、獣けものをその下したから逃にげ去さらせ、鳥とりをその枝えだから飛とび去さらせよ。4:15 ただしその根ねの切きり株かぶを地ちに残のこし、それに鉄てつと青銅せいどうのなわをかけて、野のの若草わかくさの中なかにおき、天てんからくだる露つゆにぬれさせ、また地ちの草くさの中なかで、獣けものと共ともにその分ぶんにあずからせよ。4:16 またその心こころは変かわって人間にんげんの心こころのようでなく、獣けものの心こころが与あたえられて、七つの時ときを過すごさせよ。4:17 この宣言せんげんは警護者けいごしゃたちの命令めいれいによるもの、この決定けっていは聖者せいじゃたちの言葉ことばによるもので、いと高たかき者ものが、人間にんげんの国くにを治おさめて、自分じぶんの意いのままにこれを人ひとに与あたえ、また人ひとのうちの最もっとも卑いやしい者ものを、その上うえに立たてられるという事ことを、すべての者ものに知しらせるためである』と。4:18 われネブカデネザル王おうはこの夢ゆめを見みた。ベルテシャザルよ、あなたはその解とき明あかしをわたしに告つげなさい。わが国くにの知者ちしゃたちは、いずれもその解とき明あかしを、わたしに示しめすことができなかったけれども、あなたにはそれができる。あなたのうちには、聖せいなる神かみの霊れいがやどっているからだ」。 4:19 その時とき、その名なをベルテシャザルととなえるダニエルは、しばらくのあいだ驚おどろき、思おもい悩なやんだので、王おうは彼かれに告つげて言いった、「ベルテシャザルよ、あなたはこの夢ゆめと、その解とき明あかしのために、悩なやむには及およばない」。ベルテシャザルは答こたえて言いった、「わが主しゅよ、どうか、この夢ゆめは、あなたを憎にくむ者ものにかかわるように。この解とき明あかしは、あなたの敵てきに臨のぞむように。4:20 あなたが見みられた木き、すなわちその成長せいちょうして強つよくなり、天てんに達たっするほどの高たかさになって、地ちの果はてまでも見みえわたり、4:21 その葉はは美うつくしく、その実みは豊ゆたかで、すべての者ものがその中なかから食物しょくもつを獲え、また野のの獣けものがその陰かげにやどり、空そらの鳥とりがその枝えだに住すんだ木き、4:22 王おうよ、それはすなわちあなたです。あなたは成長せいちょうして強つよくなり、天てんに達たっするほどに大おおきくなり、あなたの主権しゅけんは地ちの果はてにまで及およびました。4:23 ところが、王おうはひとりの警護者けいごしゃ、ひとりの聖者せいじゃが、天てんから下くだって、こう言いうのを見みられました、『この木きを切きり倒たおして、これを滅ほろぼせ。ただしその根ねの切きり株かぶを地ちに残のこし、それに鉄てつと青銅せいどうのなわをかけて、野のの若草わかくさの中なかにおき、天てんからくだる露つゆにぬれさせ、また野のの獣けものと共ともにその分ぶんにあずからせて、七つの時ときを過すごさせよ』と。4:24 王おうよ、その解とき明あかしはこうです。すなわちこれはいと高たかき者ものの命令めいれいであって、わが主しゅなる王おうに臨のぞまんとするものです。4:25 すなわちあなたは追おわれて世よの人ひとを離はなれ、野のの獣けものと共ともにおり、牛うしのように草くさを食くい、天てんからくだる露つゆにぬれるでしょう。こうして七つの時ときが過すぎて、ついにあなたは、いと高たかき者ものが人間にんげんの国くにを治おさめて、自分じぶんの意いのままに、これを人ひとに与あたえられることを知しるに至いたるでしょう。4:26 また彼かれらはその木きの根ねの切きり株かぶを残のこしおけと命めいじたので、あなたが、天てんはまことの支配者しはいしゃであるということを知しった後のち、あなたの国くにはあなたに確保かくほされるでしょう。4:27 それゆえ王おうよ、あなたはわたしの勧告かんこくをいれ、義ぎを行いって罪つみを離はなれ、しえたげられる者ものをあわれんで、不義ふぎを離はなれなさい。そうすれば、あるいはあなたの繁栄はんえいが、長ながく続つづくかもしれません」。 4:28 この事ことは皆みなネブカデネザル王おうに臨のぞんだ。4:29 十二か月げつを経へて後のち、王おうがバビロンの王宮おうきゅうの屋上おくじょうを歩あるいていたとき、4:30 王おうは自みずから言いった、「この大おおいなるバビロンは、わたしの大おおいなる力ちからをもって建たてた王城おうじょうであって、わが威光いこうを輝かがやかすものではないか」。4:31 その言葉ことばがなお王おうの口くちにあるうちに、天てんから声こえがくだって言いった、「ネブカデネザル王おうよ、あなたに告つげる。国くにはあなたを離はなれ去さった。4:32 あなたは、追おわれて世よの人ひとを離はなれ、野のの獣けものと共ともにおり、牛うしのように草くさを食くい、こうして七つの時ときを経へて、ついにあなたは、いと高たかき者ものが人間にんげんの国くにを治おさめて、自分じぶんの意いのままに、これを人ひとに与あたえられることを知しるに至いたるだろう」。4:33 この言葉ことばは、ただちにネブカデネザルに成就じょうじゅした。彼かれは追おわれて世よの人ひとを離はなれ、牛うしのように草くさを食くい、その身みは天てんからくだる露つゆにぬれ、ついにその毛けは、わしの羽はねのようになり、そのつめは鳥とりのつめのようになった。 4:34 こうしてその期間きかんが満みちた後のち、われネブカデネザルは、目めをあげて天てんを仰あおぎ見みると、わたしの理性りせいが自分じぶんに帰かえったので、わたしはいと高たかき者ものをほめ、その永遠えいえんに生いける者ものをさんびし、かつあがめた。 その主権しゅけんは永遠えいえんの主権しゅけん、その国くには世々よよかぎりなく、4:35 地ちに住すむ民たみはすべて無なき者もののように思おもわれ、天てんの衆しゅう群ぐんにも、地ちに住すむ民たみにも、彼かれはその意いのままに事ことを行おこなわれる。だれも彼かれの手てをおさえて「あなたは何なにをするのか」と言いいうる者ものはない。4:36 この時ときわたしの理性りせいは自分じぶんに帰かえり、またわが国くにの光栄こうえいのために、わが尊厳そんげんと光輝こうきとが、わたしに帰かえった。わが大臣だいじん、わが貴族きぞくらもきて、わたしに求もとめ、わたしは国くにの上うえに堅かたく立たって、前まえにもまさって大おおいなる者ものとなった。4:37 そこでわれネブカデネザルは今いま、天てんの王おうをほめたたえ、かつあがめたてまつる。そのみわざはことごとく真実しんじつで、その道みちは正ただしく、高たかぶり歩あゆむ者ものを低ひくくされる。 第5章 5:1 ベルシャザル王おうは、その大臣だいじん一千人にんのために、盛さかんな酒宴しゅえんを設もうけ、その一千人にんの前まえで酒さけを飲のんでいた。 5:2 酒さけが進すすんだとき、ベルシャザルは、その父ちちネブカデネザルがエルサレムの神殿しんでんから取とってきた金銀きんぎんの器うつわを持もってこいと命めいじた。王おうとその大臣だいじんたち、および王おうの妻つまとそばめらが、これをもって酒さけを飲のむためであった。5:3 そこで人々ひとびとはそのエルサレムの神かみの宮みやすなわち神殿しんでんから取とってきた金銀きんぎんの器うつわを持もってきたので、王おうとその大臣だいじんたち、および王おうの妻つまとそばめらは、これをもって飲のんだ。5:4 すなわち彼かれらは酒さけを飲のんで、金きん、銀ぎん、青銅せいどう、鉄てつ、木き、石いしなどの神々かみがみをほめたたえた。 5:5 すると突然とつぜん人ひとの手ての指ゆびがあらわれて、燭台しょくだいと相対あいたいする王おうの宮殿きゅうでんの塗ぬり壁かべに物ものを書かいた。王おうはその物ものを書かいた手ての先さきを見みた。5:6 そのために王おうの顔色かおいろは変かわり、その心こころは思おもい悩なやんで乱みだれ、その腰こしのつがいはゆるみ、ひざは震ふるえて互たがいに打うちあった。5:7 王おうは大声おおごえに呼よばわって、法ほう術じゅつ士し、カルデヤびと、占うらない師しらを召めしてこさせた。王おうはバビロンの知者ちしゃたちに告つげて言いった、「この文字もじを読よみ、その解とき明あかしをわたしに示しめす者ものには紫むらさきの衣ころもを着きせ、首くびに金きんの鎖くさりをかけさせて、国くにの第だい三のつかさとしよう」と。5:8 王おうの知者ちしゃたちは皆みなはいってきた。しかしその文字もじを読よむことができず、またその解とき明あかしを王おうに示しめすことができなかったので、5:9 ベルシャザル王おうは大おおいに思おもい悩なやんで、その顔色かおいろは変かわり、王おうの大臣だいじんたちも当惑とうわくした。 5:10 時ときに王妃おうひは王おうと大臣だいじんたちの言葉ことばを聞きいて、その宴会場えんかいじょうにはいってきた。そして王妃おうひは言いった、「王おうよ、どうか、とこしえに生いきながらえられますように。あなたは心こころに思おもい悩なやんではなりません。また顔色かおいろを変かえるには及およびません。5:11 あなたの国くにには、聖せいなる神かみの霊れいのやどっているひとりの人ひとがおります。あなたの父ちちの代よに、彼かれは、明知めいち、分別ふんべつおよび神かみのような知恵ちえのあることをあらわしました。あなたの父ちちネブカデネザル王おうは、彼かれを立たてて、博士はかせ、法ほう術じゅつ士し、カルデヤびと、占うらない師しらの長ちょうとされました。5:12 彼かれは、王おうがベルテシャザルという名なを与あたえたダニエルという者ものですが、このダニエルには、すぐれた霊れい、知識ちしき、分別ふんべつがあって、夢ゆめを解とき、なぞを解とき、難問なんもんを解とくことができます。ゆえにダニエルを召めしなさい。彼かれはその解とき明あかしを示しめすでしょう」。 5:13 そこでダニエルは王おうの前まえに召めされた。王おうはダニエルに言いった、「あなたは、わが父ちちの王おうが、ユダからひきつれてきたユダの捕囚ほしゅうのひとりなのか。5:14 聞きくところによると、あなたのうちには、聖せいなる神かみの霊れいがやどっていて、明知めいち、分別ふんべつおよび非凡ひぼんな知恵ちえがあるそうだ。5:15 わたしは、知者ちしゃ、法ほう術じゅつ士しらを、わが前まえに召めしよせて、この文字もじを読よませ、その解とき明あかしを示しめさせようとしたが、彼かれらは、この事ことの解とき明あかしを示しめすことができなかった。5:16 しかしまた聞きくところによると、あなたは解とき明あかしをなし、かつ難問なんもんを解とくことができるそうだ。それで、あなたがもし、この文字もじを読よみ、その解とき明あかしをわたしに示しめすことができたなら、あなたに紫むらさきの衣ころもを着きせ、金きんの鎖くさりを首くびにかけさせて、この国くにの第だい三のつかさとしよう」。 5:17 ダニエルは王おうの前まえに答こたえて言いった、「あなたの賜物たまものは、あなたご自身じしんにとっておき、あなたの贈おくり物ものは、他人たにんにお与あたえください。それでも、わたしは王おうのためにその文字もじを読よみ、その解とき明あかしをお知おしらせいたしましょう。5:18 王おうよ、いと高たかき神かみはあなたの父ちちネブカデネザルに国くにと権勢けんせいと、光栄こうえいと尊厳そんげんとを賜たまいました。5:19 彼かれに権勢けんせいを賜たまわったことによって、諸民しょみん、諸しょ族ぞく、諸国しょこく語ごの者ものはみな、彼かれの前まえにおののき恐おそれました。彼かれは自分じぶんの欲ほっする者ものを殺ころし、自分じぶんの欲ほっする者ものを生いかし、自分じぶんの欲ほっする者ものを上あげ、自分じぶんの欲ほっする者ものを下くだしました。5:20 しかし彼かれは心こころに高たかぶり、かたくなになり、ごうまんにふるまったので、王位おういからしりぞけられ、その光栄こうえいを奪うばわれ、5:21 追おわれて世よの人ひとと離はなれ、その思おもいは獣けもののようになり、そのすまいは野のろばと共ともにあり、牛うしのように草くさを食くい、その身みは天てんからくだる露つゆにぬれ、こうしてついに彼かれは、いと高たかき神かみが人間にんげんの国くにを治おさめて、自分じぶんの意いのままに人ひとを立たてられるということを、知しるようになりました。5:22 ベルシャザルよ、あなたは彼かれの子こであって、この事ことをことごとく知しっていながら、なお心こころを低ひくくせず、5:23 かえって天てんの主しゅにむかって、みずから高たかぶり、その宮みやの器物うつわものをあなたの前まえに持もってこさせ、あなたとあなたの大臣だいじんたちと、あなたの妻つまとそばめたちは、それをもって酒さけを飲のみ、そしてあなたは見みることも、聞きくことも、物ものを知しることもできない金きん、銀ぎん、青銅せいどう、鉄てつ、木き、石いしの神々かみがみをほめたたえたが、あなたの命いのちをその手てににぎり、あなたのすべての道みちをつかさどられる神かみをあがめようとはしなかった。 5:24 それゆえ、彼かれの前まえからこの手てが出でてきて、この文字もじが書かきしるされたのです。5:25 そのしるされた文字もじはこうです。メネ、メネ、テケル、ウパルシン。5:26 その事ことの解とき明あかしはこうです、メネは神かみがあなたの治世ちせいを数かぞえて、これをその終おわりに至いたらせたことをいうのです。5:27 テケルは、あなたがはかりで量はかられて、その量りょうの足たりないことがあらわれたことをいうのです。5:28 ペレスは、あなたの国くにが分わかたれて、メデアとペルシャの人々ひとびとに与あたえられることをいうのです」。 5:29 そこでベルシャザルは命めいじて、ダニエルに紫むらさきの衣ころもを着きせ、金きんの鎖くさりをその首くびにかけさせ、彼かれについて布告ふこくを発はっして、彼かれは国くにの第だい三のつかさであると言いわせた。 5:30 カルデヤびとの王おうベルシャザルは、その夜よるのうちに殺ころされ、5:31 メデアびとダリヨスが、その国くにを受うけた。この時ときダリヨスは、おおよそ六十二歳さいであった。 第6章 6:1 ダリヨスは全国ぜんこくを治おさめるために、その国くにに百二十人にんの総督そうとくを立たてることをよしとし、6:2 また彼かれらの上うえに三人にんの総監そうかんを立たてた。ダニエルはそのひとりであった。これは総督そうとくたちをして、この三人にんの前まえに、その職務しょくむに関かんする報告ほうこくをさせて、王おうに損失そんしつの及およぶことのないようにするためであった。6:3 ダニエルは彼かれのうちにあるすぐれた霊れいのゆえに、他たのすべての総監そうかんおよび総督そうとくたちにまさっていたので、王おうは彼かれを立たてて全国ぜんこくを治おさめさせようとした。6:4 そこで総監そうかんおよび総督そうとくらは、国事こくじについてダニエルを訴うったえるべき口実こうじつを得えようとしたが、訴うったえるべきなんの口実こうじつも、なんのとがをも見みいだすことができなかった。それは彼かれが忠信ちゅうしんな人ひとであって、その身みになんのあやまちも、とがも見みいだされなかったからである。6:5 そこでその人々ひとびとは言いった、「われわれはダニエルの神かみの律法りっぽうに関かんして、彼かれを訴うったえる口実こうじつを得えるのでなければ、ついに彼かれを訴うったえることはできまい」と。 6:6 こうして総監そうかんと総督そうとくらは、王おうのもとに集あつまってきて、王おうに言いった、「ダリヨス王おうよ、どうかとこしえに生いきながらえられますように。6:7 国くにの総監そうかん、長官ちょうかんおよび総督そうとく、参議さんぎおよび知事ちじらは、相あいはかって、王おうが一つのおきてを立たて、一つの禁令きんれいを定さだめられるよう求もとめることになりました。王おうよ、それはこうです。すなわち今いまから三十日にちの間あいだは、ただあなたにのみ願ねがい事ごとをさせ、もしあなたをおいて、神かみまたは人ひとにこれをなす者ものがあれば、すべてその者ものを、ししの穴あなに投なげ入いれるというのです。6:8 それで王おうよ、その禁令きんれいを定さだめ、その文書ぶんしょに署名しょめいして、メデアとペルシャの変かわることのない法律ほうりつのごとく、これを変かえることのできないようにしてください」。6:9 そこでダリヨス王おうは、その禁令きんれいの文書ぶんしょに署名しょめいした。 6:10 ダニエルは、その文書ぶんしょの署名しょめいされたことを知しって家いえに帰かえり、二階かいのへやの、エルサレムに向むかって窓まどの開ひらかれた所ところで、以前いぜんからおこなっていたように、一日にちに三度どずつ、ひざをかがめて神かみの前まえに祈いのり、かつ感謝かんしゃした。6:11 そこでその人々ひとびとは集あつまってきて、ダニエルがその神かみの前まえに祈いのり、かつ求もとめていることを見みたので、6:12 彼かれらは王おうの前まえにきて、王おうの禁令きんれいについて奏上そうじょうして言いった、「王おうよ、あなたは禁令きんれいに署名しょめいして、今いまから三十日にちの間あいだは、ただあなたにのみ願ねがい事ごとをさせ、もしあなたをおいて、神かみまたは人ひとに、これをなす者ものがあれば、すべてその者ものを、ししの穴あなに投なげ入いれると、定さだめられたではありませんか」。王おうは答こたえて言いった、「その事ことは確たしかであって、メデアとペルシャの法律ほうりつのごとく、変かえることのできないものだ」。6:13 彼かれらは王おうの前まえに答こたえて言いった、「王おうよ、ユダから引ひいてきた捕囚ほしゅうのひとりである、かのダニエルは、あなたをも、あなたの署名しょめいされた禁令きんれいをも顧かえりみず、一日にちに三度どずつ、祈いのりをささげています」。 6:14 王おうはこの言葉ことばを聞きいて大おおいに憂うれえ、ダニエルを救すくおうと心こころを用もちい、日ひの入いるまで、彼かれを救すくい出だすことに努つとめた。6:15 時ときにその人々ひとびとは、また王おうのもとに集あつまってきて、王おうに言いった、「王おうよ、メデアとペルシャの法律ほうりつによれば、王おうの立たてた禁令きんれい、または、おきては変かえることのできないものであることを、ご承知しょうちください」。 6:16 そこで王おうは命令めいれいを下くだしたので、ダニエルは引ひき出だされて、ししの穴あなに投なげ入いれられた。王おうはダニエルに言いった、「どうか、あなたの常つねに仕つかえる神かみが、あなたを救すくわれるように」。6:17 そして一つの石いしを持もってきて、穴あなの口くちをふさいだので、王おうは自分じぶんの印いんと、大臣だいじんらの印いんをもって、これに封印ふういんした。これはダニエルの処置しょちを変かえることのないようにするためであった。6:18 こうして王おうはその宮殿きゅうでんに帰かえったが、その夜よるは食しょくをとらず、また、そばめたちを召めし寄よせず、全まったく眠ねむることもしなかった。 6:19 こうして王おうは朝あさまだき起おきて、ししの穴あなへ急いそいで行いったが、6:20 ダニエルのいる穴あなに近ちかづいたとき、悲かなしげな声こえをあげて呼よばわり、ダニエルに言いった、「生いける神かみのしもべダニエルよ、あなたが常つねに仕つかえている神かみはあなたを救すくって、ししの害がいを免まぬかれさせることができたか」。6:21 ダニエルは王おうに言いった、「王おうよ、どうか、とこしえに生いきながらえられますように。6:22 わたしの神かみはその使つかいをおくって、ししの口くちを閉とざされたので、ししはわたしを害がいしませんでした。これはわたしに罪つみのないことが、神かみの前まえに認みとめられたからです。王おうよ、わたしはあなたの前まえにも、何なにも悪わるい事ことをしなかったのです」。6:23 そこで王おうは大おおいに喜よろこび、ダニエルを穴あなの中なかから出だせと命めいじたので、ダニエルは穴あなの中なかから出だされたが、その身みになんの害がいをも受うけていなかった。これは彼かれが自分じぶんの神かみを頼たのみとしていたからである。6:24 王おうはまた命令めいれいを下くだして、ダニエルをあしざまに訴うったえた人々ひとびとを引ひいてこさせ、彼かれらをその妻子さいしと共ともに、ししの穴あなに投なげ入いれさせた。彼かれらが穴あなの底そこに達たっしないうちに、ししは彼かれらにとびかかって、その骨ほねまでもかみ砕くだいた。 6:25 そこでダリヨス王おうは全ぜん世界せかいに住すむ諸民しょみん、諸しょ族ぞく、諸国しょこく語ごの者ものに詔みことのりを書かきおくって言いった、「どうか、あなたがたに平安へいあんが増ますように。6:26 わたしは命令めいれいを出だす。わが国くにのすべての州しゅうの人ひとは、皆みなダニエルの神かみを、おののき恐おそれなければならない。 彼かれは生いける神かみであって、とこしえに変かわることなく、その国くには滅ほろびず、その主権しゅけんは終おわりまで続つづく。6:27 彼かれは救すくいを施ほどこし、助たすけをなし、天てんにおいても、地ちにおいても、しるしと奇跡きせきとをおこない、ダニエルを救すくって、ししの力ちからをのがれさせたかたである」。6:28 こうして、このダニエルはダリヨスの世よと、ペルシャ人ひとクロスの世よにおいて栄さかえた。 第7章 7:1 バビロンの王おうベルシャザルの元年がんねんに、ダニエルは床とこにあって夢ゆめを見み、また脳のう中ちゅうに幻まぼろしを得えたので、彼かれはその夢ゆめをしるして、その事ことの大意たいいを述のべた。7:2 ダニエルは述のべて言いった、「わたしは夜よるの幻まぼろしのうちに見みた。見みよ、天てんの四方しほうからの風かぜが大海おおうみをかきたてると、7:3 四つの大おおきな獣けものが海うみからあがってきた。その形かたちは、おのおの異ことなり、7:4 第だい一のものは、ししのようで、わしの翼つばさをもっていたが、わたしが見みていると、その翼つばさは抜ぬきとられ、また地ちから起おこされて、人ひとのように二本ほんの足あしで立たたせられ、かつ人ひとの心こころが与あたえられた。7:5 見みよ、第だい二の獣けものは熊くまのようであった。これはそのからだの一方いっぽうをあげ、その口くちの歯はの間あいだに、三本ぼんの肋骨ろっこつをくわえていたが、これに向むかって『起おきあがって、多おおくの肉にくを食くらえ』と言いう声こえがあった。7:6 その後のちわたしが見みたのは、ひょうのような獣けもので、その背せには鳥とりの翼つばさが四つあった。またこの獣けものには四つの頭あたまがあり、主権しゅけんが与あたえられた。7:7 その後のちわたしが夜よるの幻まぼろしのうちに見みた第だい四の獣けものは、恐おそろしい、ものすごい、非常ひじょうに強つよいもので、大おおきな鉄てつの歯はがあり、食くらい、かつ、かみ砕くだいて、その残のこりを足あしで踏ふみつけた。これは、その前まえに出でたすべての獣けものと違ちがって、十の角つのを持もっていた。7:8 わたしが、その角つのを注意ちゅういして見みていると、その中なかに、また一つの小ちいさい角つのが出でてきたが、この小ちいさい角つののために、さきの角つののうち三つがその根ねから抜ぬけ落おちた。見みよ、この小ちいさい角つのには、人ひとの目めのような目めがあり、また大おおきな事ことを語かたる口くちがあった。7:9 わたしが見みていると、 もろもろのみ座ざが設もうけられて、日ひの老おいたる者ものが座ざしておられた。その衣ころもは雪ゆきのように白しろく、頭あたまの毛けは混まじりもののない羊ひつじの毛けのようであった。そのみ座ざは火ひの炎ほのおであり、その車輪しゃりんは燃もえる火ひであった。7:10 彼かれの前まえから、ひと筋すじの火ひの流ながれが出でてきた。彼かれに仕つかえる者ものは千々せんせん、彼かれの前まえにはべる者ものは万々まんまん、審判しんぱんを行おこなう者ものはその席せきに着つき、かずかずの書かき物ものが開ひらかれた。7:11 わたしは、その角つのの語かたる大おおいなる言葉ことばの声こえがするので見みていたが、わたしが見みている間あいだにその獣けものは殺ころされ、そのからだはそこなわれて、燃もえる火ひに投なげ入いれられた。7:12 その他たの獣けものはその主権しゅけんを奪うばわれたが、その命いのちは、時ときと季節きせつの来くるまで延のばされた。7:13 わたしはまた夜よるの幻まぼろしのうちに見みていると、 見みよ、人ひとの子このような者ものが、天てんの雲くもに乗のってきて、日ひの老おいたる者もののもとに来くると、その前まえに導みちびかれた。7:14 彼かれに主権しゅけんと光栄こうえいと国くにとを賜たまい、諸民しょみん、諸しょ族ぞく、諸国しょこく語ごの者ものを彼かれに仕つかえさせた。その主権しゅけんは永遠えいえんの主権しゅけんであって、なくなることがなく、その国くには滅ほろびることがない。7:15 そこで、われダニエル、わがうちなる霊れいは憂うれえ、わが脳中のうちゅうの幻まぼろしは、わたしを悩なやましたので、7:16 わたしは、そこに立たっている者もののひとりに近寄ちかよって、このすべての事ことの真意しんいを尋たずねた。するとその者ものは、わたしにこの事ことの解とき明あかしを告つげ知しらせた。7:17 『この四つの大おおきな獣けものは、地ちに起おこらんとする四人にんの王おうである。7:18 しかしついには、いと高たかき者ものの聖徒せいとが国くにを受うけ、永遠えいえんにその国くにを保たもって、世々よよかぎりなく続つづく』。 7:19 そこでわたしは、さらに第だい四の獣けものの真意しんいを知しろうとした。その獣けものは他たの獣けものと異ことなって、はなはだ恐おそろしく、その歯はは鉄てつ、そのつめは青銅せいどうであって、食くらい、かつ、かみ砕くだいて、その残のこりを足あしで踏ふみつけた。7:20 この獣けものの頭あたまには、十の角つのがあったが、そのほかに一つの角つのが出でてきたので、この角つののために、三つの角つのが抜ぬけ落おちた。この角つのには目めがあり、また大おおきな事ことを語かたる口くちがあって、その形かたちは、その同類どうるいのものよりも大おおきく見みえた。7:21 わたしが見みていると、この角つのは聖徒せいとと戦たたかって、彼かれらに勝かったが、7:22 ついに日ひの老おいたる者ものがきて、いと高たかき者ものの聖徒せいとのために審判しんぱんをおこなった。そしてその時ときがきて、この聖徒せいとたちは国くにを受うけた。 7:23 彼かれはこう言いった、『第だい四の獣けものは地上ちじょうの第だい四の国くにである。これはすべての国くにと異ことなって、全ぜん世界せかいを併合へいごうし、これを踏ふみつけ、かつ打うち砕くだく。7:24 十の角つのはこの国くにから起おこる十人にんの王おうである。その後のちにまたひとりの王おうが起おこる。彼かれは先さきの者ものと異ことなり、かつ、その三人にんの王おうを倒たおす。7:25 彼かれは、いと高たかき者ものに敵てきして言葉ことばを出だし、かつ、いと高たかき者ものの聖徒せいとを悩なやます。彼かれはまた時ときと律法りっぽうとを変かえようと望のぞむ。聖徒せいとはひと時ときと、ふた時ときと、半時はんときの間あいだ、彼かれの手てにわたされる。7:26 しかし審判しんぱんが行おこなわれ、彼かれの主権しゅけんは奪うばわれて、永遠えいえんに滅ほろび絶たやされ、7:27 国くにと主権しゅけんと全ぜん天下てんかの国々くにぐにの権威けんいとは、いと高たかき者ものの聖徒せいとたる民たみに与あたえられる。彼かれらの国くには永遠えいえんの国くにであって、諸国しょこくの者ものはみな彼かれらに仕つかえ、かつ従したがう』。7:28 その事ことはここで終おわった。われダニエルは、これを思おもいまわして、非常ひじょうに悩なやみ、顔色かおいろも変かわった。しかし、わたしはこの事ことを心こころに留とめた」。 第8章 8:1 われダニエルは先さきに幻まぼろしを見みたが、後のちまたベルシャザル王おうの治世ちせいの第だい三年ねんに、一つの幻まぼろしがわたしに示しめされた。8:2 その幻まぼろしを見みたのは、エラム州しゅうの首都しゅとスサにいた時ときであって、ウライ川かわのほとりにおいてであった。8:3 わたしが目めをあげて見みると、川かわの岸きしに一匹ぴきの雄羊おひつじが立たっていた。これに二つの角つのがあって、その角つのは共ともに長ながかったが、一つの角つのは他たの角つのよりも長ながかった。その長ながいのは後のちに伸のびたのである。8:4 わたしが見みていると、その雄羊おひつじは、西にし、北きた、南みなみにむかって突撃とつげきしたが、これに当あたることのできる獣けものは一匹ぴきもなく、またその手てから救すくい出だすことのできるものもなかった。これはその心こころのままにふるまい、みずから高たかぶっていた。 8:5 わたしがこれを考かんがえ、見みていると、一匹ぴきの雄おやぎが、全ぜん地ちのおもてを飛とびわたって西にしからきたが、その足あしは土つちを踏ふまなかった。このやぎには、目めの間あいだに著いちじるしい一つの角つのがあった。8:6 この者ものは、さきにわたしが川かわの岸きしに立たっているのを見みた、あの二つの角つののある雄羊おひつじにむかってきて、激はげしく怒いかってこれに走はしり寄よった。8:7 わたしが見みていると、それが雄羊おひつじに近寄ちかよるや、これにむかって怒いかりを発はっし、雄羊おひつじを撃うって、その二つの角つのを砕くだいた。雄羊おひつじには、これに当あたる力ちからがなかったので、やぎは雄羊おひつじを地ちに打うち倒たおして踏ふみつけた。また、その雄羊おひつじを、やぎの力ちからから救すくいうる者ものがなかった。8:8 こうして、その雄おやぎは、はなはだしく高たかぶったが、その盛さかんになった時とき、あの大おおきな角つのが折おれて、その代かわりに四つの著いちじるしい角つのが生しょうじ、天てんの四方しほうに向むかった。 8:9 その角つのの一つから、一つの小ちいさい角つのが出でて、南みなみに向むかい、東ひがしに向むかい、麗うるわしい地ちに向むかって、はなはだしく大おおきくなり、8:10 天てんの衆しゅう群ぐんに及およぶまでに大おおきくなり、星ほしの衆しゅう群ぐんのうちの数個すうこを地ちに投なげ下くだして、これを踏ふみつけ、8:11 またみずから高たかぶって、その衆しゅう群ぐんの主しゅに敵てきし、その常供じょうくの燔祭はんさいを取とり除のぞき、かつその聖所せいじょを倒たおした。8:12 そしてその衆しゅう群ぐんは、罪つみによって、常供じょうくの燔祭はんさいと共ともに、これにわたされた。その角つのはまた真理しんりを地ちに投なげうち、ほしいままにふるまって、みずから栄さかえた。8:13 それから、わたしはひとりの聖者せいじゃの語かたっているのを聞きいた。またひとりの聖者せいじゃがあって、その語かたっている聖者せいじゃにむかって言いった、「常供じょうくの燔祭はんさいと、荒あらすことをなす罪つみと、聖所せいじょとその衆しゅう群ぐんがわたされて、足あしの下したに踏ふみつけられることについて、幻まぼろしにあらわれたことは、いつまでだろうか」と。8:14 彼かれは言いった、「二千三百の夕ゆうと朝あさの間あいだである。そして聖所せいじょは清きよめられてその正ただしい状態じょうたいに復ふくする」。 8:15 われダニエルはこの幻まぼろしを見みて、その意味いみを知しろうと求もとめていた時とき、見みよ、人ひとのように見みえる者ものが、わたしの前まえに立たった。8:16 わたしはウライ川かわの両りょう岸がんの間あいだから人ひとの声こえが出でて、呼よばわるのを聞きいた、「ガブリエルよ、この幻まぼろしをその人ひとに悟さとらせよ」。8:17 すると彼かれはわたしの立たっている所ところにきた。彼かれがきたとき、わたしは恐おそれて、ひれ伏ふした。しかし、彼かれはわたしに言いった、「人ひとの子こよ、悟さとりなさい。この幻まぼろしは終おわりの時ときにかかわるものです」。 8:18 彼かれがわたしに語かたっていた時とき、わたしは地ちにひれ伏ふして、深ふかい眠ねむりに陥おちいったが、彼かれはわたしに手てを触ふれ、わたしを立たたせて、8:19 言いった、「見みよ、わたしは憤いきどおりの終おわりの時ときに起おこるべきことを、あなたに知しらせよう。それは定さだめられた終おわりの時ときにかかわるものであるから。8:20 あなたが見みた、あの二つの角つののある雄羊おひつじは、メデアとペルシャの王おうです。8:21 また、かの雄おやぎはギリシヤの王おうです、その目めの間あいだの大おおきな角つのは、その第だい一の王おうです。8:22 またその角つのが折おれて、その代かわりに四つの角つのが生しょうじたのは、その民たみから四つの国くにが起おこるのです。しかし、第だい一の王おうのような勢力せいりょくはない。8:23 彼かれらの国くにの終おわりの時ときになり、罪つみびとの罪つみが満みちるに及およんで、ひとりの王おうが起おこるでしょう。その顔かおは猛悪もうあくで、彼かれはなぞを解とき、8:24 その勢力せいりょくは盛さかんであって、恐おそろしい破壊はかいをなし、そのなすところ成功せいこうして、有力ゆうりょくな人々ひとびとと、聖徒せいとである民たみを滅ほろぼすでしょう。8:25 彼かれは悪知恵わるぢえをもって、偽いつわりをその手てにおこない遂とげ、みずから心こころに高たかぶり、不意ふいに多おおくの人ひとを打うち滅ほろぼし、また君きみの君きみたる者ものに敵てきするでしょう。しかし、ついに彼かれは人手ひとでによらずに滅ほろぼされるでしょう。8:26 先さきに示しめされた朝夕あさゆうの幻まぼろしは真実しんじつです。しかし、あなたはその幻まぼろしを秘密ひみつにしておかなければならない。これは多おおくの日ひの後のちにかかわる事ことだから」。 8:27 われダニエルは疲つかれはてて、数日すうじつの間あいだ病やみわずらったが、後のち起おきて、王おうの事務じむを執とった。しかし、わたしはこの幻まぼろしの事ことを思おもって驚おどろいた。またこれを悟さとることができなかった。 第9章 9:1 メデアびとアハシュエロスの子こダリヨスが、カルデヤびとの王おうとなったその元年がんねん、9:2 すなわちその治世ちせいの第だい一年ねんに、われダニエルは主しゅが預言者よげんしゃエレミヤに臨のぞんで告つげられたその言葉ことばにより、エルサレムの荒廃こうはいの終おわるまでに経へねばならぬ年ねんの数かずは七十年ねんであることを、文書ぶんしょによって悟さとった。 9:3 それでわたしは、わが顔かおを主しゅなる神かみに向むけ、断食だんじきをなし、荒布あらぬのを着き、灰はいをかぶって祈いのり、かつ願ねがい求もとめた。9:4 すなわちわたしは、わが神かみ、主しゅに祈いのり、ざんげして言いった、「ああ、大おおいなる恐おそるべき神かみ、主しゅ、おのれを愛あいし、おのれの戒いましめを守まもる者もののために契約けいやくを保たもち、いつくしみを施ほどこされる者ものよ、9:5 われわれは罪つみを犯おかし、悪あくをおこない、よこしまなふるまいをなし、そむいて、あなたの戒いましめと、おきてを離はなれました。9:6 われわれはまた、あなたのしもべなる預言者よげんしゃたちが、あなたの名なをもって、われわれの王おうたち、君きみたち、先祖せんぞたち、および国くにのすべての民たみに告つげた言葉ことばに聞きき従したがいませんでした。9:7 主しゅよ、正義せいぎはあなたのものですが、恥はじはわれわれに加くわえられて、今日こんにちのような有様ありさまです。すなわちユダの人々ひとびと、エルサレムの住民じゅうみんおよび全ぜんイスラエルの者ものは、近ちかき者ものも、遠とおき者ものもみな、あなたが追おいやられたすべての国々くにぐにで恥はじをこうむりました。これは彼かれらがあなたにそむいて犯おかした罪つみによるのです。9:8 主しゅよ、恥はじはわれわれのもの、われわれの王おうたち、君きみたちおよび先祖せんぞたちのものです。これはわれわれがあなたにむかって罪つみを犯おかしたからです。9:9 あわれみと、ゆるしはわれわれの神かみ、主しゅのものです。これはわれわれが彼かれにそむいたからです。9:10 またわれわれの神かみ、主しゅのみ声こえに聞きき従したがわず、主しゅがそのしもべ預言者よげんしゃたちによって、われわれの前まえに賜たまわった律法りっぽうを行おこなわなかったからです。9:11 まことにイスラエルの人々ひとびとは皆みなあなたの律法りっぽうを犯おかし、離はなれ去さって、あなたのみ声こえに聞きき従したがわなかったので、神かみのしもべモーセの律法りっぽうにしるされたのろいと誓ちかいが、われわれの上うえに注そそぎかかりました。これはわれわれが神かみにむかって罪つみを犯おかしたからです。9:12 すなわち神かみは大おおいなる災わざわいをわれわれの上うえにくだして、さきにわれわれと、われわれを治おさめたつかさたちにむかって告つげられた言葉ことばを実行じっこうされたのです。あのエルサレムに臨のぞんだような事ことは、全ぜん天下てんかにいまだかつてなかった事ことです。9:13 モーセの律法りっぽうにしるされたように、この災わざわいはすべてわれわれに臨のぞみましたが、なおわれわれの神かみ、主しゅの恵めぐみを請こい求もとめることをせず、その不義ふぎを離はなれて、あなたの真理しんりを悟さとることをもしませんでした。9:14 それゆえ、主しゅはこれを心こころに留とめて、災わざわいをわれわれに下くだされたのです。われわれの神かみ、主しゅは、何事なにごとをされるにも、正ただしくあらせられます。ところが、われわれはそのみ声こえに聞きき従したがわなかったのです。9:15 われわれの神かみ、主しゅよ、あなたは強つよきみ手てをもって、あなたの民たみをエジプトの地ちから導みちびき出だして、今日こんにちのように、み名なをあげられました。われわれは罪つみを犯おかし、よこしまなふるまいをしました。9:16 主しゅよ、どうぞあなたが、これまで正ただしいみわざをなされたように、あなたの町まちエルサレム、あなたの聖せいなる山やまから、あなたの怒いかりと憤いきどおりとを取とり去さってください。これはわれわれの罪つみと、われわれの先祖せんぞの不義ふぎのために、エルサレムと、あなたの民たみが、われわれの周囲しゅういの者ものの物笑ものわらいとなったからです。9:17 それゆえ、われわれの神かみよ、しもべの祈いのりと願ねがいを聞きいてください。主しゅよ、あなたご自身じしんのために、あの荒あれたあなたの聖所せいじょに、あなたのみ顔かおを輝かがやかせてください。9:18 わが神かみよ、耳みみを傾かたむけて聞きいてください。目めを開ひらいて、われわれの荒あれたさまを見み、み名なをもってとなえられる町まちをごらんください。われわれがあなたの前まえに祈いのりをささげるのは、われわれの義ぎによるのではなく、ただあなたの大おおいなるあわれみによるのです。9:19 主しゅよ、聞きいてください。主しゅよ、ゆるしてください。主しゅよ、み心こころに留とめて、おこなってください。わが神かみよ、あなたご自身じしんのために、これを延のばさないでください。あなたの町まちと、あなたの民たみは、み名なをもってとなえられているからです」。 9:20 わたしがこう言いって祈いのり、かつわが罪つみとわが民たみイスラエルの罪つみをざんげし、わが神かみの聖せいなる山やまのために、わが神かみ、主しゅの前まえに願ねがいをしていたとき、9:21 すなわちわたしが祈いのりの言葉ことばを述のべていたとき、わたしが初はじめに幻まぼろしのうちに見みた、かの人ひとガブリエルは、すみやかに飛とんできて、夕ゆうの供そなえ物ものをささげるころ、わたしに近ちかづき、9:22 わたしに告つげて言いった、「ダニエルよ、わたしは今いまあなたに、知恵ちえと悟さとりを与あたえるためにきました。9:23 あなたが祈いのりを始はじめたとき、み言葉ことばが出でたので、それをあなたに告つげるためにきたのです。あなたは大おおいに愛あいせられている者ものです。ゆえに、このみ言葉ことばを考かんがえて、この幻まぼろしを悟さとりなさい。 9:24 あなたの民たみと、あなたの聖せいなる町まちについては、七十週しゅうが定さだめられています。これはとがを終おわらせ、罪つみに終おわりを告つげ、不義ふぎをあがない、永遠えいえんの義ぎをもたらし、幻まぼろしと預言者よげんしゃを封ふうじ、いと聖せいなる者ものに油あぶらを注そそぐためです。9:25 それゆえ、エルサレムを建たて直なおせという命令めいれいが出でてから、メシヤなるひとりの君きみが来くるまで、七週しゅうと六十二週しゅうあることを知しり、かつ悟さとりなさい。その間あいだに、しかも不安ふあんな時代じだいに、エルサレムは広場ひろばと街路がいろとをもって、建たて直なおされるでしょう。9:26 その六十二週しゅうの後のちにメシヤは断たたれるでしょう。ただし自分じぶんのためにではありません。またきたるべき君きみの民たみは、町まちと聖所せいじょとを滅ほろぼすでしょう。その終おわりは洪水こうずいのように臨のぞむでしょう。そしてその終おわりまで戦争せんそうが続つづき、荒廃こうはいは定さだめられています。9:27 彼かれは一週いっしゅうの間あいだ多おおくの者ものと、堅かたく契約けいやくを結むすぶでしょう。そして彼かれはその週しゅうの半なかばに、犠牲ぎせいと供そなえ物ものとを廃はいするでしょう。また荒あらす者ものが憎にくむべき者ものの翼つばさに乗のって来くるでしょう。こうしてついにその定さだまった終おわりが、その荒あらす者ものの上うえに注そそがれるのです」。 第10章 10:1 ペルシャの王おうクロスの第だい三年ねんに、ベルテシャザルと名なづけられたダニエルに、一つの言葉ことばが啓示けいじされたが、その言葉ことばは真実しんじつであり、大おおいなる戦たたかいを意味いみするものであった。彼かれはその言葉ことばに心こころを留とめ、その幻まぼろしを悟さとった。 10:2 そのころ、われダニエルは三週しゅうの間あいだ、悲かなしんでいた。10:3 すなわち三週間しゅうかんの全まったく満みちるまでは、うまい物ものを食たべず、肉にくと酒さけとを口くちにせず、また身みに油あぶらを塗ぬらなかった。10:4 正月しょうがつの二十四日かに、わたしがチグリスという大川おおかわの岸きしに立たっていたとき、10:5 目めをあげて望のぞみ見みると、ひとりの人ひとがいて、亜麻あま布ぬのの衣ころもを着き、ウパズの金きんの帯おびを腰こしにしめていた。10:6 そのからだは緑柱石りょくちゅうせきのごとく、その顔かおは電光でんこうのごとく、その目めは燃もえるたいまつのごとく、その腕うでと足あしは、みがいた青銅せいどうのように輝かがやき、その言葉ことばの声こえは、群衆ぐんしゅうの声こえのようであった。10:7 この幻まぼろしを見みた者ものは、われダニエルのみであって、わたしと共ともにいた人々ひとびとは、この幻まぼろしを見みなかったが、彼かれらは大おおいにおののいて、逃にげかくれた。10:8 それでわたしひとり残のこって、この大おおいなる幻まぼろしを見みたので、力ちからが抜ぬけ去さり、わが顔かおの輝かがやきは恐おそろしく変かわって、全まったく力ちからがなくなった。10:9 わたしはその言葉ことばの声こえを聞きいたが、その言葉ことばの声こえを聞きいたとき、顔かおを伏ふせ、地ちにひれ伏ふして、深ふかい眠ねむりに陥おちいった。 10:10 見みよ、一つの手てがあって、わたしに触ふれたので、わたしは震ふるえながらひざまずき、手てをつくと、10:11 彼かれはわたしに言いった、「大おおいに愛あいせられる人ひとダニエルよ、わたしがあなたに告つげる言葉ことばに心こころを留とめ、立たちあがりなさい。わたしは今いまあなたのもとにつかわされたのです」。彼かれがこの言葉ことばをわたしに告つげているとき、わたしは震ふるえながら立たちあがった。10:12 すると彼かれはわたしに言いった、「ダニエルよ、恐おそれるに及およばない。あなたが悟さとろうと心こころをこめ、あなたの神かみの前まえに身みを悩なやましたその初はじめの日ひから、あなたの言葉ことばは、すでに聞きかれたので、わたしは、あなたの言葉ことばのゆえにきたのです。10:13 ペルシャの国くにの君きみが、二十一日にちの間あいだわたしの前まえに立たちふさがったが、天使てんしの長ちょうのひとりであるミカエルがきて、わたしを助たすけたので、わたしは、彼かれをペルシャの国くにの君きみと共ともに、そこに残のこしておき、10:14 末すえの日ひに、あなたの民たみに臨のぞまんとする事ことを、あなたに悟さとらせるためにきたのです。この幻まぼろしは、なおきたるべき日ひにかかわるものです」。 10:15 彼かれがこれらの言葉ことばを、わたしに述のべていたとき、わたしは、地ちにひれ伏ふして黙だまっていたが、10:16 見みよ、人ひとの子このような者ものが、わたしのくちびるにさわったので、わたしは口くちを開ひらき、わが前まえに立たっている者ものに語かたって言いった、「わが主しゅよ、この幻まぼろしによって、苦くるしみがわたしに臨のぞみ、全まったく力ちからを失うしないました。10:17 わが主しゅのしもべは、どうしてわが主しゅと語かたることができましょう。わたしは全まったく力ちからを失うしない、息いきも止とまるばかりです」。 10:18 人ひとの形かたちをした者ものは、再ふたたびわたしにさわり、わたしを力ちからづけて、10:19 言いった、「大おおいに愛あいせられる人ひとよ、恐おそれるには及およばない。安心あんしんしなさい。心こころを強つよくし、勇気ゆうきを出だしなさい」。彼かれがこう言いったとき、わたしは力ちからづいて言いった、「わが主しゅよ、語かたってください。あなたは、わたしに力ちからをつけてくださったから」。10:20 そこで彼かれは言いった、「あなたは、わたしがなんのためにきたかを知しっていますか。わたしは、今いま帰かえっていって、ペルシャの君きみと戦たたかおうとしているのです。彼かれとの戦たたかいがすむと、ギリシヤの君きみがあらわれるでしょう。10:21 しかしわたしは、まず真理しんりの書しょにしるされている事ことを、あなたに告つげよう。わたしを助たすけて、彼かれらと戦たたかう者ものは、あなたがたの君きみミカエルのほかにはありません。 第11章 11:1 わたしはまたメデアびとダリヨスの元年がんねんに立たって彼かれを強つよめ、彼かれを力ちからづけたことがあります。 11:2 わたしは今いまあなたに真理しんりを示しめそう。見みよ、ペルシャになお三人にんの王おうが起おこるでしょう。その第だい四の者ものは、他たのすべての者ものにまさって富とみ、その富とみによって強つよくなったとき、彼かれはすべてのものを動員どういんして、ギリシヤの国くにを攻せめます。11:3 またひとりの勇いさましい王おうが起おこり、大おおいなる権力けんりょくをもって世よを治おさめ、その意いのままに事ことをなすでしょう。11:4 彼かれが強つよくなった時とき、その国くには破やぶられ、天てんの四方しほうに分わかたれます。それは彼かれの子孫しそんに帰きせず、また彼かれが治おさめたほどの権力けんりょくもなく、彼かれの国くには抜ぬき取とられて、これら以外いがいの者ものどもに帰きするでしょう。 11:5 南みなみの王おうは強つよくなります。しかしその将軍しょうぐんのひとりが、彼かれにまさって強つよくなり、権力けんりょくをふるいます。その権力けんりょくは、大おおいなる権力けんりょくです。11:6 年としを経へて後のち、彼かれらは縁組えんぐみをなし、南みなみの王おうの娘むすめが、北きたの王おうにきて、和親わしんをはかります。しかしその女おんなは、その腕うでの力ちからを保たもつことができず、またその王おうも、その子こも立たつことができません。その女おんなと、その従者じゅうしゃと、その子こおよびその女おんなを獲えた者ものとは、わたされるでしょう。 11:7 そのころ、この女おんなの根ねから、一つの芽めが起おこって彼かれに代かわり、北きたの王おうの軍勢ぐんぜいにむかってきて、その城しろに討うち入いり、これを攻せめて勝かつでしょう。11:8 彼かれはまた彼かれらの神々かみがみ、鋳い像ぞうおよび金銀きんぎんの貴重きちょうな器物うつわものを、エジプトに携たずさえ去さり、そして数年すうねんの間あいだ、北きたの王おうを討うつことを控ひかえます。11:9 その後のち、北きたの王おうは、南みなみの王おうの国くにに討うち入はいるが、自分じぶんの国くにに帰かえるでしょう。 11:10 その子こらはまた憤激ふんげきして、あまたの大軍たいぐんを集あつめ、進すすんで行いって、みなぎりあふれ、通とおり過すぎるが、また行いって、その城しろにまで攻せめ寄よせるでしょう。11:11 そこで南みなみの王おうは、大おおいに怒いかり、出でてきて北きたの王おうと戦たたかいます。彼かれは大軍たいぐんを起おこすけれども、その軍ぐんは相手あいての手てにわたされるでしょう。11:12 彼かれがその軍ぐんを打うち破やぶったとき、その心こころは高たかぶり、数すう万まん人にんを倒たおします。しかし、勝かつことはありません。11:13 それは北きたの王おうがまた初はじめよりも大おおいなる軍ぐんを起おこし、数年すうねんの後のち、大おおいなる軍勢ぐんぜいと多おおくの軍需ぐんじゅ品ひんとをもって、攻せめて来くるからです。 11:14 そのころ多おおくの者ものが起おこって、南みなみの王おうに敵てきします。またあなたの民たみのうちのあらくれ者ものが、みずから高たかぶって事ことをなし、幻まぼろしを成就じょうじゅしようとするが失敗しっぱいするでしょう。11:15 こうして北きたの王おうがきて、塁るいを築きずき、堅固けんごな町まちを取とるが、南みなみの王おうの力ちからは、これに立たち向むかうことができず、またそのえり抜ぬきの民たみも、これに立たち向むかう力ちからがありません。11:16 これに攻せめて来くる者ものは、その心こころのままに事ことをなし、その前まえに立たち向むかうことのできる者ものはなく、彼かれは麗うるわしい地ちに立たち、その地ちは全まったく彼かれのために荒あらされます。11:17 彼かれは全国ぜんこくの力ちからをもって討うち入はいろうと、その顔かおを向むけるが、相手あいてと仲直なかなおりをし、その娘むすめを与あたえて、その国くにを取とろうとします。しかし、その事ことは成ならず、また彼かれの利益りえきにはならないでしょう。11:18 その後のち、彼かれは顔かおを海沿うみぞいの国々くにぐにに向むけて、その多おおくのものを取とります。しかし、ひとりの大将たいしょうがあって、彼かれが与あたえた恥辱ちじょくをそそぎ、その恥辱ちじょくを彼かれの上うえに返かえします。11:19 こうして彼かれは、その顔かおを自分じぶんの国くにの要害ようがいに向むけるが、彼かれはつまずき倒たおれて消きえうせるでしょう。 11:20 彼かれに代かわって起おこる者ものは、栄光えいこうの国くにに人ひとをつかわして、租税そぜいを取とり立たてさせるでしょう。しかし彼かれは、怒いかりにも戦たたかいにもよらず、数日すうじつのうちに滅ほろぼされます。11:21 彼かれに代かわって起おこる者ものは、卑いやしむべき者ものであって、彼かれには、王おうの尊厳そんげんが与あたえられず、彼かれは不意ふいにきて、巧言こうげんをもって国くにを獲えるでしょう。11:22 洪水こうずいのような軍勢ぐんぜいは、彼かれの前まえに押おし流ながされて敗やぶられ、契約けいやくの君きみたる者ものもまた敗やぶられるでしょう。11:23 彼かれは、これと同盟どうめいを結むすんで後のち、偽いつわりのおこないをなし、わずかな民たみをもって強つよくなり、11:24 不意ふいにその州しゅうの最もっとも肥こえた所ところに攻せめ入いり、その父ちちも、その父ちちの父ちちもしなかった事ことをおこない、その奪うばった物もの、かすめた物ものおよび財宝ざいほうを、人々ひとびとの中なかに散ちらすでしょう。彼かれはまた計略けいりゃくをめぐらして、堅固けんごな城しろを攻せめるが、ただし、それは時ときの至いたるまでです。11:25 彼かれはその勢力せいりょくと勇気ゆうきとを奮ふるい起おこし、大軍たいぐんを率ひきいて南みなみの王おうを攻せめます。南みなみの王おうもまたみずから奮ふるい、はなはだ大おおいなる強力きょうりょくな軍勢ぐんぜいをもって戦たたかいます。しかし、彼かれに対たいして、陰謀いんぼうをめぐらす者ものがあるので、これに立たち向むかうことができません。11:26 すなわち彼かれの食物しょくもつを食たべる者ものたちが、彼かれを滅ほろぼします。そして、その軍勢ぐんぜいは押おし流ながされて、多おおくの者ものが倒たおれ死しぬでしょう。11:27 このふたりの王おうは、害がいを与あたえようと心こころにはかり、ひとつ食卓しょくたくに共ともに食しょくして、偽いつわりを語かたるが、それは成功せいこうしません。終おわりはなお定さだまった時ときの来くるまでこないからです。11:28 彼かれは大おおいなる財宝ざいほうをもって、自分じぶんの国くにに帰かえるでしょう。しかし、彼かれの心こころは聖せいなる契約けいやくにそむき、ほしいままに事ことをなして、自分じぶんの国くにに帰かえります。 11:29 定さだまった時ときになって、彼かれはまた南みなみに討うち入いります。しかし、この時ときは前まえの時ときのようではありません。11:30 それはキッテムの船ふねが、彼かれに立たち向むかって来くるので、彼かれは脅おびやかされて帰かえり、聖せいなる契約けいやくに対たいして憤いきどおり、事ことを行おこなうでしょう。彼かれは帰かえっていって、聖せいなる契約けいやくを捨すてる者ものを顧かえりみ用もちいるでしょう。11:31 彼かれから軍勢ぐんぜいが起おこって、神殿しんでんと城郭じょうかくを汚けがし、常供じょうくの燔祭はんさいを取とり除のぞき、荒あらす憎にくむべきものを立たてるでしょう。11:32 彼かれは契約けいやくを破やぶる者ものどもを、巧言こうげんをもってそそのかし、そむかせるが、自分じぶんの神かみを知しる民たみは、堅かたく立たって事ことを行おこないます。11:33 民たみのうちの賢かしこい人々ひとびとは、多おおくの人ひとを悟さとりに至いたらせます。それでも、彼かれらはしばらくの間あいだ、やいばにかかり、火ひに焼やかれ、捕とらわれ、かすめられなどして倒たおれます。11:34 その倒たおれるとき、彼かれらは少すこしの助たすけを獲えます。また多おおくの人ひとが、巧言こうげんをもって彼かれらにくみするでしょう。11:35 また賢かしこい者もののうちのある者ものは、終おわりの時ときまで、自分じぶんを練ねり、清きよめ、白しろくするために倒たおれるでしょう。終おわりはなお定さだまった時ときの来くるまでこないからです。 11:36 この王おうは、その心こころのままに事ことをおこない、すべての神かみを越こえて、自分じぶんを高たかくし、自分じぶんを大おおいにし、神々かみがみの神かみたる者ものにむかって、驚おどろくべき事ことを語かたり、憤いきどおりのやむ時ときまで栄さかえるでしょう。これは定さだめられた事ことが成就じょうじゅするからです。11:37 彼かれはその先祖せんぞの神々かみがみを顧かえりみず、また婦人ふじんの好このむ者ものも、いかなる神かみをも顧かえりみないでしょう。彼かれはすべてにまさって、自分じぶんを大おおいなる者ものとするからです。11:38 彼かれはこれらの者ものの代かわりに、要害ようがいの神かみをあがめ、金きん、銀ぎん、宝石ほうせき、および宝物たからものをもって、その先祖せんぞたちの知しらなかった神かみをあがめ、11:39 異邦いほうの神かみの助たすけによって、最もっとも強固きょうこな城しろにむかって、事ことをなすでしょう。そして彼かれを認みとめる者ものには、栄誉えいよを増まし与あたえ、これに多おおくの人ひとを治おさめさせ、賞与しょうよとして土地とちを分わけ与あたえるでしょう。 11:40 終おわりの時ときになって、南みなみの王おうは彼かれと戦たたかいます。北きたの王おうは、戦車せんしゃと騎兵きへいと、多おおくの船ふねをもって、つむじ風かぜのように彼かれを攻せめ、国々くにぐににはいっていって、みなぎりあふれ、通とおり過すぎるでしょう。11:41 彼かれはまた麗うるわしい国くににはいります。また彼かれによって、多おおくの者ものが滅ほろぼされます。しかし、エドム、モアブ、アンモンびとらのうちのおもな者ものは、彼かれの手てから救すくわれましょう。11:42 彼かれは国々くにぐににその手てを伸のばし、エジプトの地ちも免まぬかれません。11:43 彼かれは金銀きんぎんの財宝ざいほうと、エジプトのすべての宝物たからものを支配しはいし、リビヤびと、エチオピヤびとは、彼かれのあとに従したがいます。11:44 しかし東ひがしと北きたからの知しらせが彼かれを驚おどろかし、彼かれは多おおくの人ひとを滅ほろぼし絶たやそうと、大おおいなる怒いかりをもって出でて行いきます。11:45 彼かれは海うみと麗うるわしい聖山せいざんとの間あいだに、天幕てんまくの宮殿きゅうでんを設もうけるでしょう。しかし、彼かれはついにその終おわりにいたり、彼かれを助たすける者ものはないでしょう。 第12章 12:1 その時ときあなたの民たみを守まもっている大おおいなる君きみミカエルが立たちあがります。また国くにが始はじまってから、その時ときにいたるまで、かつてなかったほどの悩なやみの時ときがあるでしょう。しかし、その時ときあなたの民たみは救すくわれます。すなわちあの書しょに名なをしるされた者ものは皆みな救すくわれます。12:2 また地ちのちりの中なかに眠ねむっている者もののうち、多おおくの者ものは目めをさますでしょう。そのうち永遠えいえんの生命せいめいにいたる者ものもあり、また恥はじと、限かぎりなき恥辱ちじょくをうける者ものもあるでしょう。12:3 賢かしこい者ものは、大空おおぞらの輝かがやきのように輝かがやき、また多おおくの人ひとを義ぎに導みちびく者ものは、星ほしのようになって永遠えいえんにいたるでしょう。12:4 ダニエルよ、あなたは終おわりの時ときまでこの言葉ことばを秘ひし、この書しょを封ふうじておきなさい。多おおくの者ものは、あちこちと探さぐり調しらべ、そして知識ちしきが増ますでしょう」。 12:5 そこで、われダニエルが見みていると、ほかにまたふたりの者ものがあって、ひとりは川かわのこなたの岸きしに、ひとりは川かわのかなたの岸きしに立たっていた。12:6 わたしは、かの亜麻あま布ぬのを着きて川かわの水みずの上うえにいる人ひとにむかって言いった、「この異常いじょうなできごとは、いつになって終おわるでしょうか」と。12:7 かの亜麻あま布ぬのを着きて、川かわの水みずの上うえにいた人ひとが、天てんに向むかって、その右みぎの手てと左ひだりの手てをあげ、永遠えいえんに生いける者ものをさして誓ちかい、それは、ひと時ときとふた時ときと半時はんときである。聖せいなる民たみを打うち砕くだく力ちからが消きえ去さる時ときに、これらの事ことはみな成就じょうじゅするだろうと言いうのを、わたしは聞きいた。12:8 わたしはこれを聞きいたけれども悟さとれなかった。わたしは言いった、「わが主しゅよ、これらの事ことの結末けつまつはどんなでしょうか」。 12:9 彼かれは言いった、「ダニエルよ、あなたの道みちを行いきなさい。この言葉ことばは終おわりの時ときまで秘ひし、かつ封ふうじておかれます。12:10 多おおくの者ものは、自分じぶんを清きよめ、自分じぶんを白しろくし、かつ練ねられるでしょう。しかし、悪わるい者ものは悪わるい事ことをおこない、ひとりも悟さとることはないが、賢かしこい者ものは悟さとるでしょう。 12:11 常供じょうくの燔祭はんさいが取すり除のぞかれ、荒あらす憎にくむべきものが立たてられる時ときから、千二百九十日にちが定さだめられている。12:12 待まっていて千三百三十五日にちに至いたる者ものはさいわいです。12:13 しかし、終おわりまであなたの道みちを行いきなさい。あなたは休やすみに入はいり、定さだめられた日ひの終おわりに立たって、あなたの分ぶんを受うけるでしょう」。
3:1 ネブカデネザル王おうは一つの金きんの像ぞうを造つくった。その高たかさは六十キュビト、その幅はばは六キュビトで、彼かれはこれをバビロン州しゅうのドラの平野へいやに立たてた。
3:2 そしてネブカデネザル王おうは、総督そうとく、長官ちょうかん、知事ちじ、参議さんぎ、庫くら官かん、法官ほうかん、高僧こうそうおよび諸しょ州しゅうの官吏かんりたちを召めし集あつめ、ネブカデネザル王おうの立たてたこの像ぞうの落成らくせい式しきに臨のぞませようとした。
3:3 そこで、総督そうとく、長官ちょうかん、知事ちじ、参議さんぎ、庫こ官かん、法官ほうかん、高僧こうそうおよび諸しょ州しゅうの官吏かんりたちは、ネブカデネザル王おうの立たてた像ぞうの落成らくせい式しきに臨のぞみ、そのネブカデネザルの立たてた像ぞうの前まえに立たった。
3:4 時ときに伝令でんれい者しゃは大声おおごえに呼よばわって言いった、「諸民しょみん、諸しょ族ぞく、諸国しょこく語ごの者ものよ、あなたがたにこう命めいじられる。
3:5 角笛つのぶえ、横笛よこぶえ、琴こと、三角琴さんかくごと、立琴たてごと、風笛かざぶえなどの、もろもろの楽器がっきの音ねを聞きく時ときは、ひれ伏ふしてネブカデネザル王おうの立たてた金きんの像ぞうを拝おがまなければならない。
3:6 だれでもひれ伏ふして拝おがまない者ものは、ただちに火ひの燃もえる炉ろの中なかに投なげ込こまれる」と。
3:7 そこで民たみらはみな、角笛つのぶえ、横笛よこぶえ、琴こと、三角琴さんかくごと、立琴たてごと、風笛かざぶえなどの、もろもろの楽器がっきの音ねを聞きくや、諸民しょみん、諸しょ族ぞく、諸国しょこく語ごの者ものたちはみな、ひれ伏ふして、ネブカデネザル王おうの立たてた金きんの像ぞうを拝おがんだ。
3:8 その時とき、あるカルデヤびとらが進すすみきて、ユダヤ人ひとをあしざまに訴うったえた。
3:9 すなわち彼かれらはネブカデネザル王おうに言いった、「王おうよ、とこしえに生いきながらえられますように。
3:10 王おうよ、あなたは命令めいれいを出だして仰おおせられました。すべて、角笛つのぶえ、横笛よこぶえ、琴こと、三角琴さんかくごと、立琴たてごと、風笛かざぶえなどの、もろもろの楽器がっきの音ねを聞きく者ものは皆みな、ひれ伏ふして金きんの像ぞうを拝おがまなければならない。
3:11 また、だれでもひれ伏ふして拝おがまない者ものはみな、火ひの燃もえる炉ろの中なかに投なげ込こまれると。
3:12 ここにあなたが任命にんめいして、バビロン州しゅうの事務じむをつかさどらせられているユダヤ人ひとシャデラク、メシャクおよびアベデネゴがおります。王おうよ、この人々ひとびとはあなたを尊たっとばず、あなたの神々かみがみにも仕つかえず、あなたの立たてられた金きんの像ぞうをも拝おがもうとしません」。
3:13 そこでネブカデネザルは怒いかりかつ憤いきどおって、シャデラク、メシャクおよびアベデネゴを連つれてこいと命めいじたので、この人々ひとびとを王おうの前まえに連つれてきた。
3:14 ネブカデネザルは彼かれらに言いった、「シャデラク、メシャク、アベデネゴよ、あなたがたがわが神々かみがみに仕つかえず、またわたしの立たてた金きんの像ぞうを拝おがまないとは、ほんとうなのか。
3:15 あなたがたがもし、角笛つのぶえ、横笛よこぶえ、琴こと、三角琴さんかくごと、立琴たてごと、風笛かざぶえなどの、もろもろの楽器がっきの音ねを聞きくときにひれ伏ふして、わたしが立たてた像ぞうを、ただちに拝おがむならば、それでよろしい。しかし、拝おがむことをしないならば、ただちに火ひの燃もえる炉ろの中なかに投なげ込こまれる。いったい、どの神かみが、わたしの手てからあなたがたを救すくうことができようか」。
3:16 シャデラク、メシャクおよびアベデネゴは王おうに答こたえて言いった、「ネブカデネザルよ、この事ことについて、お答こたえする必要ひつようはありません。
3:17 もしそんなことになれば、わたしたちの仕つかえている神かみは、その火ひの燃もえる炉ろから、わたしたちを救すくい出だすことができます。また王おうよ、あなたの手てから、わたしたちを救すくい出だされます。
3:18 たといそうでなくても、王おうよ、ご承知しょうちください。わたしたちはあなたの神々かみがみに仕つかえず、またあなたの立たてた金きんの像ぞうを拝おがみません」。
3:19 そこでネブカデネザルは怒いかりに満みち、シャデラク、メシャクおよびアベデネゴにむかって、顔色かおいろを変かえ、炉ろを平常へいじょうよりも七倍ばい熱あつくせよと命めいじた。
3:20 またその軍勢ぐんぜいの中なかの力ちからの強つよい人々ひとびとを呼よんで、シャデラク、メシャクおよびアベデネゴを縛しばって、彼かれらを火ひの燃もえる炉ろの中なかに投なげ込こめと命めいじた。
3:21 そこでこの人々ひとびとは、外套がいとう、下着したぎ、帽子ぼうし、その他たの衣服いふくのまま縛しばられて、火ひの燃もえる炉ろの中なかに投なげ込こまれた。
3:22 王おうの命令めいれいはきびしく、かつ炉ろは、はなはだしく熱ねっしていたので、シャデラク、メシャクおよびアベデネゴを引ひきつれていった人々ひとびとは、その火炎かえんに焼やき殺ころされた。
3:23 シャデラク、メシャク、アベデネゴの三人にんは縛しばられたままで、火ひの燃もえる炉ろの中なかに落おち込こんだ。
3:24 その時とき、ネブカデネザル王おうは驚おどろいて急いそぎ立たちあがり、大臣だいじんたちに言いった、「われわれはあの三人にんを縛しばって、火ひの中なかに投なげ入いれたではないか」。彼かれらは王おうに答こたえて言いった、「王おうよ、そのとおりです」。
3:25 王おうは答こたえて言いった、「しかし、わたしの見みるのに四人にんの者ものがなわめなしに、火ひの中なかを歩あるいているが、なんの害がいをも受うけていない。その第だい四の者ものの様子ようすは神かみの子このようだ」。
3:26 そこでネブカデネザルは、その火ひの燃もえる炉ろの入口いりぐちに近寄ちかよって、「いと高たかき神かみのしもべシャデラク、メシャク、アベデネゴよ、出でてきなさい」と言いったので、シャデラク、メシャク、アベデネゴはその火ひの中なかから出でてきた。
3:27 総督そうとく、長官ちょうかん、知事ちじおよび王おうの大臣だいじんたちも集あつまってきて、この人々ひとびとを見みたが、火ひは彼かれらの身みにはなんの力ちからもなく、その頭あたまの毛けは焼やけず、その外套がいとうはそこなわれず、火ひのにおいもこれに付つかなかった。
3:28 ネブカデネザルは言いった、「シャデラク、メシャク、アベデネゴの神かみはほむべきかな。神かみはその使者ししゃをつかわして、自分じぶんに寄より頼たのむしもべらを救すくった。また彼かれらは自分じぶんの神かみ以外いがいの神かみに仕つかえ、拝おがむよりも、むしろ王おうの命令めいれいを無視むしし、自分じぶんの身みをも捨すてようとしたのだ。
3:29 それでわたしはいま命令めいれいを下くだす。諸民しょみん、諸しょ族ぞく、諸国しょこく語ごの者もののうちだれでも、シャデラク、メシャク、アベデネゴの神かみをののしる者ものがあるならば、その身みは切きり裂さかれ、その家いえは滅ほろぼされなければならない。このように救すくいを施ほどこすことのできる神かみは、ほかにないからだ」。
3:30 こうして、王おうはシャデラク、メシャクおよびアベデネゴの位くらいを進すすめて、バビロン州しゅうにおらせた。
第4章 4:1 ネブカデネザル王おうは全ぜん世界せかいに住すむ諸民しょみん、諸しょ族ぞく、諸国しょこく語ごの者ものに告つげる。どうか、あなたがたに平安へいあんが増ますように。4:2 いと高たかき神かみはわたしにしるしと奇跡きせきとを行おこなわれた。わたしはこれを知しらせたいと思おもう。 4:3 ああ、そのしるしの大おおいなること、ああ、その奇跡きせきのすばらしいこと、その国くには永遠えいえんの国くに、その主権しゅけんは世々よよに及およぶ。4:4 われネブカデネザルはわが家やに安やすらかにおり、わが宮みやにあって栄さかえていたが、4:5 わたしは一つの夢ゆめを見みて、そのために恐おそれた。すなわち床とこにあって、その事ことを思おもいめぐらし、わが脳中のうちゅうの幻まぼろしのために心こころを悩なやました。4:6 そこでわたしは命令めいれいを下くだし、バビロンの知者ちしゃをことごとくわが前まえに召めし寄よせて、その夢ゆめの解とき明あかしを示しめさせようとした。4:7 すると、博士はかせ、法ほう術じゅつ士し、カルデヤびと、占うらない師したちがきたので、わたしはその夢ゆめを彼かれらに語かたったが、彼かれらはその解とき明あかしを示しめすことができなかった。4:8 最後さいごにダニエルがわたしの前まえにきた、――彼かれの名なはわが神かみの名なにちなんで、ベルテシャザルととなえられ、彼かれのうちには聖せいなる神かみの霊れいがやどっていた――わたしは彼かれにその夢ゆめを語かたって言いった、4:9 「博士はかせの長ちょうベルテシャザルよ、わたしは知しっている。聖せいなる神かみの霊れいがあなたのうちにやどっているから、どんな秘密ひみつもあなたにはむずかしいことはない。ここにわたしが見みた夢ゆめがある。その解とき明あかしをわたしに告つげなさい。4:10 わたしが床とこにあって見みた脳中のうちゅうの幻まぼろしはこれである。わたしが見みたのに、地ちの中央ちゅうおうに一本ぽんの木きがあって、そのたけが高たかかったが、4:11 その木きは成長せいちょうして強つよくなり、天てんに達たっするほどの高たかさになって、地ちの果はてまでも見みえわたり、4:12 その葉はは美うつくしく、その実みは豊ゆたかで、すべての者ものがその中なかから食物しょくもつを獲え、また野のの獣けものはその陰かげにやどり、空そらの鳥とりはその枝えだにすみ、すべての肉にくなる者ものはこれによって養やしなわれた。 4:13 わたしが床とこにあって見みた脳中のうちゅうの幻まぼろしの中なかに、ひとりの警護者けいごしゃ、ひとりの聖者せいじゃの天てんから下くだるのを見みたが、4:14 彼かれは声こえ高たかく呼よばわって、こう言いった、『この木きを切きり倒たおし、その枝えだを切きりはらい、その葉はをゆり落おとし、その実みを打うち散ちらし、獣けものをその下したから逃にげ去さらせ、鳥とりをその枝えだから飛とび去さらせよ。4:15 ただしその根ねの切きり株かぶを地ちに残のこし、それに鉄てつと青銅せいどうのなわをかけて、野のの若草わかくさの中なかにおき、天てんからくだる露つゆにぬれさせ、また地ちの草くさの中なかで、獣けものと共ともにその分ぶんにあずからせよ。4:16 またその心こころは変かわって人間にんげんの心こころのようでなく、獣けものの心こころが与あたえられて、七つの時ときを過すごさせよ。4:17 この宣言せんげんは警護者けいごしゃたちの命令めいれいによるもの、この決定けっていは聖者せいじゃたちの言葉ことばによるもので、いと高たかき者ものが、人間にんげんの国くにを治おさめて、自分じぶんの意いのままにこれを人ひとに与あたえ、また人ひとのうちの最もっとも卑いやしい者ものを、その上うえに立たてられるという事ことを、すべての者ものに知しらせるためである』と。4:18 われネブカデネザル王おうはこの夢ゆめを見みた。ベルテシャザルよ、あなたはその解とき明あかしをわたしに告つげなさい。わが国くにの知者ちしゃたちは、いずれもその解とき明あかしを、わたしに示しめすことができなかったけれども、あなたにはそれができる。あなたのうちには、聖せいなる神かみの霊れいがやどっているからだ」。 4:19 その時とき、その名なをベルテシャザルととなえるダニエルは、しばらくのあいだ驚おどろき、思おもい悩なやんだので、王おうは彼かれに告つげて言いった、「ベルテシャザルよ、あなたはこの夢ゆめと、その解とき明あかしのために、悩なやむには及およばない」。ベルテシャザルは答こたえて言いった、「わが主しゅよ、どうか、この夢ゆめは、あなたを憎にくむ者ものにかかわるように。この解とき明あかしは、あなたの敵てきに臨のぞむように。4:20 あなたが見みられた木き、すなわちその成長せいちょうして強つよくなり、天てんに達たっするほどの高たかさになって、地ちの果はてまでも見みえわたり、4:21 その葉はは美うつくしく、その実みは豊ゆたかで、すべての者ものがその中なかから食物しょくもつを獲え、また野のの獣けものがその陰かげにやどり、空そらの鳥とりがその枝えだに住すんだ木き、4:22 王おうよ、それはすなわちあなたです。あなたは成長せいちょうして強つよくなり、天てんに達たっするほどに大おおきくなり、あなたの主権しゅけんは地ちの果はてにまで及およびました。4:23 ところが、王おうはひとりの警護者けいごしゃ、ひとりの聖者せいじゃが、天てんから下くだって、こう言いうのを見みられました、『この木きを切きり倒たおして、これを滅ほろぼせ。ただしその根ねの切きり株かぶを地ちに残のこし、それに鉄てつと青銅せいどうのなわをかけて、野のの若草わかくさの中なかにおき、天てんからくだる露つゆにぬれさせ、また野のの獣けものと共ともにその分ぶんにあずからせて、七つの時ときを過すごさせよ』と。4:24 王おうよ、その解とき明あかしはこうです。すなわちこれはいと高たかき者ものの命令めいれいであって、わが主しゅなる王おうに臨のぞまんとするものです。4:25 すなわちあなたは追おわれて世よの人ひとを離はなれ、野のの獣けものと共ともにおり、牛うしのように草くさを食くい、天てんからくだる露つゆにぬれるでしょう。こうして七つの時ときが過すぎて、ついにあなたは、いと高たかき者ものが人間にんげんの国くにを治おさめて、自分じぶんの意いのままに、これを人ひとに与あたえられることを知しるに至いたるでしょう。4:26 また彼かれらはその木きの根ねの切きり株かぶを残のこしおけと命めいじたので、あなたが、天てんはまことの支配者しはいしゃであるということを知しった後のち、あなたの国くにはあなたに確保かくほされるでしょう。4:27 それゆえ王おうよ、あなたはわたしの勧告かんこくをいれ、義ぎを行いって罪つみを離はなれ、しえたげられる者ものをあわれんで、不義ふぎを離はなれなさい。そうすれば、あるいはあなたの繁栄はんえいが、長ながく続つづくかもしれません」。 4:28 この事ことは皆みなネブカデネザル王おうに臨のぞんだ。4:29 十二か月げつを経へて後のち、王おうがバビロンの王宮おうきゅうの屋上おくじょうを歩あるいていたとき、4:30 王おうは自みずから言いった、「この大おおいなるバビロンは、わたしの大おおいなる力ちからをもって建たてた王城おうじょうであって、わが威光いこうを輝かがやかすものではないか」。4:31 その言葉ことばがなお王おうの口くちにあるうちに、天てんから声こえがくだって言いった、「ネブカデネザル王おうよ、あなたに告つげる。国くにはあなたを離はなれ去さった。4:32 あなたは、追おわれて世よの人ひとを離はなれ、野のの獣けものと共ともにおり、牛うしのように草くさを食くい、こうして七つの時ときを経へて、ついにあなたは、いと高たかき者ものが人間にんげんの国くにを治おさめて、自分じぶんの意いのままに、これを人ひとに与あたえられることを知しるに至いたるだろう」。4:33 この言葉ことばは、ただちにネブカデネザルに成就じょうじゅした。彼かれは追おわれて世よの人ひとを離はなれ、牛うしのように草くさを食くい、その身みは天てんからくだる露つゆにぬれ、ついにその毛けは、わしの羽はねのようになり、そのつめは鳥とりのつめのようになった。 4:34 こうしてその期間きかんが満みちた後のち、われネブカデネザルは、目めをあげて天てんを仰あおぎ見みると、わたしの理性りせいが自分じぶんに帰かえったので、わたしはいと高たかき者ものをほめ、その永遠えいえんに生いける者ものをさんびし、かつあがめた。 その主権しゅけんは永遠えいえんの主権しゅけん、その国くには世々よよかぎりなく、4:35 地ちに住すむ民たみはすべて無なき者もののように思おもわれ、天てんの衆しゅう群ぐんにも、地ちに住すむ民たみにも、彼かれはその意いのままに事ことを行おこなわれる。だれも彼かれの手てをおさえて「あなたは何なにをするのか」と言いいうる者ものはない。4:36 この時ときわたしの理性りせいは自分じぶんに帰かえり、またわが国くにの光栄こうえいのために、わが尊厳そんげんと光輝こうきとが、わたしに帰かえった。わが大臣だいじん、わが貴族きぞくらもきて、わたしに求もとめ、わたしは国くにの上うえに堅かたく立たって、前まえにもまさって大おおいなる者ものとなった。4:37 そこでわれネブカデネザルは今いま、天てんの王おうをほめたたえ、かつあがめたてまつる。そのみわざはことごとく真実しんじつで、その道みちは正ただしく、高たかぶり歩あゆむ者ものを低ひくくされる。 第5章 5:1 ベルシャザル王おうは、その大臣だいじん一千人にんのために、盛さかんな酒宴しゅえんを設もうけ、その一千人にんの前まえで酒さけを飲のんでいた。 5:2 酒さけが進すすんだとき、ベルシャザルは、その父ちちネブカデネザルがエルサレムの神殿しんでんから取とってきた金銀きんぎんの器うつわを持もってこいと命めいじた。王おうとその大臣だいじんたち、および王おうの妻つまとそばめらが、これをもって酒さけを飲のむためであった。5:3 そこで人々ひとびとはそのエルサレムの神かみの宮みやすなわち神殿しんでんから取とってきた金銀きんぎんの器うつわを持もってきたので、王おうとその大臣だいじんたち、および王おうの妻つまとそばめらは、これをもって飲のんだ。5:4 すなわち彼かれらは酒さけを飲のんで、金きん、銀ぎん、青銅せいどう、鉄てつ、木き、石いしなどの神々かみがみをほめたたえた。 5:5 すると突然とつぜん人ひとの手ての指ゆびがあらわれて、燭台しょくだいと相対あいたいする王おうの宮殿きゅうでんの塗ぬり壁かべに物ものを書かいた。王おうはその物ものを書かいた手ての先さきを見みた。5:6 そのために王おうの顔色かおいろは変かわり、その心こころは思おもい悩なやんで乱みだれ、その腰こしのつがいはゆるみ、ひざは震ふるえて互たがいに打うちあった。5:7 王おうは大声おおごえに呼よばわって、法ほう術じゅつ士し、カルデヤびと、占うらない師しらを召めしてこさせた。王おうはバビロンの知者ちしゃたちに告つげて言いった、「この文字もじを読よみ、その解とき明あかしをわたしに示しめす者ものには紫むらさきの衣ころもを着きせ、首くびに金きんの鎖くさりをかけさせて、国くにの第だい三のつかさとしよう」と。5:8 王おうの知者ちしゃたちは皆みなはいってきた。しかしその文字もじを読よむことができず、またその解とき明あかしを王おうに示しめすことができなかったので、5:9 ベルシャザル王おうは大おおいに思おもい悩なやんで、その顔色かおいろは変かわり、王おうの大臣だいじんたちも当惑とうわくした。 5:10 時ときに王妃おうひは王おうと大臣だいじんたちの言葉ことばを聞きいて、その宴会場えんかいじょうにはいってきた。そして王妃おうひは言いった、「王おうよ、どうか、とこしえに生いきながらえられますように。あなたは心こころに思おもい悩なやんではなりません。また顔色かおいろを変かえるには及およびません。5:11 あなたの国くにには、聖せいなる神かみの霊れいのやどっているひとりの人ひとがおります。あなたの父ちちの代よに、彼かれは、明知めいち、分別ふんべつおよび神かみのような知恵ちえのあることをあらわしました。あなたの父ちちネブカデネザル王おうは、彼かれを立たてて、博士はかせ、法ほう術じゅつ士し、カルデヤびと、占うらない師しらの長ちょうとされました。5:12 彼かれは、王おうがベルテシャザルという名なを与あたえたダニエルという者ものですが、このダニエルには、すぐれた霊れい、知識ちしき、分別ふんべつがあって、夢ゆめを解とき、なぞを解とき、難問なんもんを解とくことができます。ゆえにダニエルを召めしなさい。彼かれはその解とき明あかしを示しめすでしょう」。 5:13 そこでダニエルは王おうの前まえに召めされた。王おうはダニエルに言いった、「あなたは、わが父ちちの王おうが、ユダからひきつれてきたユダの捕囚ほしゅうのひとりなのか。5:14 聞きくところによると、あなたのうちには、聖せいなる神かみの霊れいがやどっていて、明知めいち、分別ふんべつおよび非凡ひぼんな知恵ちえがあるそうだ。5:15 わたしは、知者ちしゃ、法ほう術じゅつ士しらを、わが前まえに召めしよせて、この文字もじを読よませ、その解とき明あかしを示しめさせようとしたが、彼かれらは、この事ことの解とき明あかしを示しめすことができなかった。5:16 しかしまた聞きくところによると、あなたは解とき明あかしをなし、かつ難問なんもんを解とくことができるそうだ。それで、あなたがもし、この文字もじを読よみ、その解とき明あかしをわたしに示しめすことができたなら、あなたに紫むらさきの衣ころもを着きせ、金きんの鎖くさりを首くびにかけさせて、この国くにの第だい三のつかさとしよう」。 5:17 ダニエルは王おうの前まえに答こたえて言いった、「あなたの賜物たまものは、あなたご自身じしんにとっておき、あなたの贈おくり物ものは、他人たにんにお与あたえください。それでも、わたしは王おうのためにその文字もじを読よみ、その解とき明あかしをお知おしらせいたしましょう。5:18 王おうよ、いと高たかき神かみはあなたの父ちちネブカデネザルに国くにと権勢けんせいと、光栄こうえいと尊厳そんげんとを賜たまいました。5:19 彼かれに権勢けんせいを賜たまわったことによって、諸民しょみん、諸しょ族ぞく、諸国しょこく語ごの者ものはみな、彼かれの前まえにおののき恐おそれました。彼かれは自分じぶんの欲ほっする者ものを殺ころし、自分じぶんの欲ほっする者ものを生いかし、自分じぶんの欲ほっする者ものを上あげ、自分じぶんの欲ほっする者ものを下くだしました。5:20 しかし彼かれは心こころに高たかぶり、かたくなになり、ごうまんにふるまったので、王位おういからしりぞけられ、その光栄こうえいを奪うばわれ、5:21 追おわれて世よの人ひとと離はなれ、その思おもいは獣けもののようになり、そのすまいは野のろばと共ともにあり、牛うしのように草くさを食くい、その身みは天てんからくだる露つゆにぬれ、こうしてついに彼かれは、いと高たかき神かみが人間にんげんの国くにを治おさめて、自分じぶんの意いのままに人ひとを立たてられるということを、知しるようになりました。5:22 ベルシャザルよ、あなたは彼かれの子こであって、この事ことをことごとく知しっていながら、なお心こころを低ひくくせず、5:23 かえって天てんの主しゅにむかって、みずから高たかぶり、その宮みやの器物うつわものをあなたの前まえに持もってこさせ、あなたとあなたの大臣だいじんたちと、あなたの妻つまとそばめたちは、それをもって酒さけを飲のみ、そしてあなたは見みることも、聞きくことも、物ものを知しることもできない金きん、銀ぎん、青銅せいどう、鉄てつ、木き、石いしの神々かみがみをほめたたえたが、あなたの命いのちをその手てににぎり、あなたのすべての道みちをつかさどられる神かみをあがめようとはしなかった。 5:24 それゆえ、彼かれの前まえからこの手てが出でてきて、この文字もじが書かきしるされたのです。5:25 そのしるされた文字もじはこうです。メネ、メネ、テケル、ウパルシン。5:26 その事ことの解とき明あかしはこうです、メネは神かみがあなたの治世ちせいを数かぞえて、これをその終おわりに至いたらせたことをいうのです。5:27 テケルは、あなたがはかりで量はかられて、その量りょうの足たりないことがあらわれたことをいうのです。5:28 ペレスは、あなたの国くにが分わかたれて、メデアとペルシャの人々ひとびとに与あたえられることをいうのです」。 5:29 そこでベルシャザルは命めいじて、ダニエルに紫むらさきの衣ころもを着きせ、金きんの鎖くさりをその首くびにかけさせ、彼かれについて布告ふこくを発はっして、彼かれは国くにの第だい三のつかさであると言いわせた。 5:30 カルデヤびとの王おうベルシャザルは、その夜よるのうちに殺ころされ、5:31 メデアびとダリヨスが、その国くにを受うけた。この時ときダリヨスは、おおよそ六十二歳さいであった。 第6章 6:1 ダリヨスは全国ぜんこくを治おさめるために、その国くにに百二十人にんの総督そうとくを立たてることをよしとし、6:2 また彼かれらの上うえに三人にんの総監そうかんを立たてた。ダニエルはそのひとりであった。これは総督そうとくたちをして、この三人にんの前まえに、その職務しょくむに関かんする報告ほうこくをさせて、王おうに損失そんしつの及およぶことのないようにするためであった。6:3 ダニエルは彼かれのうちにあるすぐれた霊れいのゆえに、他たのすべての総監そうかんおよび総督そうとくたちにまさっていたので、王おうは彼かれを立たてて全国ぜんこくを治おさめさせようとした。6:4 そこで総監そうかんおよび総督そうとくらは、国事こくじについてダニエルを訴うったえるべき口実こうじつを得えようとしたが、訴うったえるべきなんの口実こうじつも、なんのとがをも見みいだすことができなかった。それは彼かれが忠信ちゅうしんな人ひとであって、その身みになんのあやまちも、とがも見みいだされなかったからである。6:5 そこでその人々ひとびとは言いった、「われわれはダニエルの神かみの律法りっぽうに関かんして、彼かれを訴うったえる口実こうじつを得えるのでなければ、ついに彼かれを訴うったえることはできまい」と。 6:6 こうして総監そうかんと総督そうとくらは、王おうのもとに集あつまってきて、王おうに言いった、「ダリヨス王おうよ、どうかとこしえに生いきながらえられますように。6:7 国くにの総監そうかん、長官ちょうかんおよび総督そうとく、参議さんぎおよび知事ちじらは、相あいはかって、王おうが一つのおきてを立たて、一つの禁令きんれいを定さだめられるよう求もとめることになりました。王おうよ、それはこうです。すなわち今いまから三十日にちの間あいだは、ただあなたにのみ願ねがい事ごとをさせ、もしあなたをおいて、神かみまたは人ひとにこれをなす者ものがあれば、すべてその者ものを、ししの穴あなに投なげ入いれるというのです。6:8 それで王おうよ、その禁令きんれいを定さだめ、その文書ぶんしょに署名しょめいして、メデアとペルシャの変かわることのない法律ほうりつのごとく、これを変かえることのできないようにしてください」。6:9 そこでダリヨス王おうは、その禁令きんれいの文書ぶんしょに署名しょめいした。 6:10 ダニエルは、その文書ぶんしょの署名しょめいされたことを知しって家いえに帰かえり、二階かいのへやの、エルサレムに向むかって窓まどの開ひらかれた所ところで、以前いぜんからおこなっていたように、一日にちに三度どずつ、ひざをかがめて神かみの前まえに祈いのり、かつ感謝かんしゃした。6:11 そこでその人々ひとびとは集あつまってきて、ダニエルがその神かみの前まえに祈いのり、かつ求もとめていることを見みたので、6:12 彼かれらは王おうの前まえにきて、王おうの禁令きんれいについて奏上そうじょうして言いった、「王おうよ、あなたは禁令きんれいに署名しょめいして、今いまから三十日にちの間あいだは、ただあなたにのみ願ねがい事ごとをさせ、もしあなたをおいて、神かみまたは人ひとに、これをなす者ものがあれば、すべてその者ものを、ししの穴あなに投なげ入いれると、定さだめられたではありませんか」。王おうは答こたえて言いった、「その事ことは確たしかであって、メデアとペルシャの法律ほうりつのごとく、変かえることのできないものだ」。6:13 彼かれらは王おうの前まえに答こたえて言いった、「王おうよ、ユダから引ひいてきた捕囚ほしゅうのひとりである、かのダニエルは、あなたをも、あなたの署名しょめいされた禁令きんれいをも顧かえりみず、一日にちに三度どずつ、祈いのりをささげています」。 6:14 王おうはこの言葉ことばを聞きいて大おおいに憂うれえ、ダニエルを救すくおうと心こころを用もちい、日ひの入いるまで、彼かれを救すくい出だすことに努つとめた。6:15 時ときにその人々ひとびとは、また王おうのもとに集あつまってきて、王おうに言いった、「王おうよ、メデアとペルシャの法律ほうりつによれば、王おうの立たてた禁令きんれい、または、おきては変かえることのできないものであることを、ご承知しょうちください」。 6:16 そこで王おうは命令めいれいを下くだしたので、ダニエルは引ひき出だされて、ししの穴あなに投なげ入いれられた。王おうはダニエルに言いった、「どうか、あなたの常つねに仕つかえる神かみが、あなたを救すくわれるように」。6:17 そして一つの石いしを持もってきて、穴あなの口くちをふさいだので、王おうは自分じぶんの印いんと、大臣だいじんらの印いんをもって、これに封印ふういんした。これはダニエルの処置しょちを変かえることのないようにするためであった。6:18 こうして王おうはその宮殿きゅうでんに帰かえったが、その夜よるは食しょくをとらず、また、そばめたちを召めし寄よせず、全まったく眠ねむることもしなかった。 6:19 こうして王おうは朝あさまだき起おきて、ししの穴あなへ急いそいで行いったが、6:20 ダニエルのいる穴あなに近ちかづいたとき、悲かなしげな声こえをあげて呼よばわり、ダニエルに言いった、「生いける神かみのしもべダニエルよ、あなたが常つねに仕つかえている神かみはあなたを救すくって、ししの害がいを免まぬかれさせることができたか」。6:21 ダニエルは王おうに言いった、「王おうよ、どうか、とこしえに生いきながらえられますように。6:22 わたしの神かみはその使つかいをおくって、ししの口くちを閉とざされたので、ししはわたしを害がいしませんでした。これはわたしに罪つみのないことが、神かみの前まえに認みとめられたからです。王おうよ、わたしはあなたの前まえにも、何なにも悪わるい事ことをしなかったのです」。6:23 そこで王おうは大おおいに喜よろこび、ダニエルを穴あなの中なかから出だせと命めいじたので、ダニエルは穴あなの中なかから出だされたが、その身みになんの害がいをも受うけていなかった。これは彼かれが自分じぶんの神かみを頼たのみとしていたからである。6:24 王おうはまた命令めいれいを下くだして、ダニエルをあしざまに訴うったえた人々ひとびとを引ひいてこさせ、彼かれらをその妻子さいしと共ともに、ししの穴あなに投なげ入いれさせた。彼かれらが穴あなの底そこに達たっしないうちに、ししは彼かれらにとびかかって、その骨ほねまでもかみ砕くだいた。 6:25 そこでダリヨス王おうは全ぜん世界せかいに住すむ諸民しょみん、諸しょ族ぞく、諸国しょこく語ごの者ものに詔みことのりを書かきおくって言いった、「どうか、あなたがたに平安へいあんが増ますように。6:26 わたしは命令めいれいを出だす。わが国くにのすべての州しゅうの人ひとは、皆みなダニエルの神かみを、おののき恐おそれなければならない。 彼かれは生いける神かみであって、とこしえに変かわることなく、その国くには滅ほろびず、その主権しゅけんは終おわりまで続つづく。6:27 彼かれは救すくいを施ほどこし、助たすけをなし、天てんにおいても、地ちにおいても、しるしと奇跡きせきとをおこない、ダニエルを救すくって、ししの力ちからをのがれさせたかたである」。6:28 こうして、このダニエルはダリヨスの世よと、ペルシャ人ひとクロスの世よにおいて栄さかえた。 第7章 7:1 バビロンの王おうベルシャザルの元年がんねんに、ダニエルは床とこにあって夢ゆめを見み、また脳のう中ちゅうに幻まぼろしを得えたので、彼かれはその夢ゆめをしるして、その事ことの大意たいいを述のべた。7:2 ダニエルは述のべて言いった、「わたしは夜よるの幻まぼろしのうちに見みた。見みよ、天てんの四方しほうからの風かぜが大海おおうみをかきたてると、7:3 四つの大おおきな獣けものが海うみからあがってきた。その形かたちは、おのおの異ことなり、7:4 第だい一のものは、ししのようで、わしの翼つばさをもっていたが、わたしが見みていると、その翼つばさは抜ぬきとられ、また地ちから起おこされて、人ひとのように二本ほんの足あしで立たたせられ、かつ人ひとの心こころが与あたえられた。7:5 見みよ、第だい二の獣けものは熊くまのようであった。これはそのからだの一方いっぽうをあげ、その口くちの歯はの間あいだに、三本ぼんの肋骨ろっこつをくわえていたが、これに向むかって『起おきあがって、多おおくの肉にくを食くらえ』と言いう声こえがあった。7:6 その後のちわたしが見みたのは、ひょうのような獣けもので、その背せには鳥とりの翼つばさが四つあった。またこの獣けものには四つの頭あたまがあり、主権しゅけんが与あたえられた。7:7 その後のちわたしが夜よるの幻まぼろしのうちに見みた第だい四の獣けものは、恐おそろしい、ものすごい、非常ひじょうに強つよいもので、大おおきな鉄てつの歯はがあり、食くらい、かつ、かみ砕くだいて、その残のこりを足あしで踏ふみつけた。これは、その前まえに出でたすべての獣けものと違ちがって、十の角つのを持もっていた。7:8 わたしが、その角つのを注意ちゅういして見みていると、その中なかに、また一つの小ちいさい角つのが出でてきたが、この小ちいさい角つののために、さきの角つののうち三つがその根ねから抜ぬけ落おちた。見みよ、この小ちいさい角つのには、人ひとの目めのような目めがあり、また大おおきな事ことを語かたる口くちがあった。7:9 わたしが見みていると、 もろもろのみ座ざが設もうけられて、日ひの老おいたる者ものが座ざしておられた。その衣ころもは雪ゆきのように白しろく、頭あたまの毛けは混まじりもののない羊ひつじの毛けのようであった。そのみ座ざは火ひの炎ほのおであり、その車輪しゃりんは燃もえる火ひであった。7:10 彼かれの前まえから、ひと筋すじの火ひの流ながれが出でてきた。彼かれに仕つかえる者ものは千々せんせん、彼かれの前まえにはべる者ものは万々まんまん、審判しんぱんを行おこなう者ものはその席せきに着つき、かずかずの書かき物ものが開ひらかれた。7:11 わたしは、その角つのの語かたる大おおいなる言葉ことばの声こえがするので見みていたが、わたしが見みている間あいだにその獣けものは殺ころされ、そのからだはそこなわれて、燃もえる火ひに投なげ入いれられた。7:12 その他たの獣けものはその主権しゅけんを奪うばわれたが、その命いのちは、時ときと季節きせつの来くるまで延のばされた。7:13 わたしはまた夜よるの幻まぼろしのうちに見みていると、 見みよ、人ひとの子このような者ものが、天てんの雲くもに乗のってきて、日ひの老おいたる者もののもとに来くると、その前まえに導みちびかれた。7:14 彼かれに主権しゅけんと光栄こうえいと国くにとを賜たまい、諸民しょみん、諸しょ族ぞく、諸国しょこく語ごの者ものを彼かれに仕つかえさせた。その主権しゅけんは永遠えいえんの主権しゅけんであって、なくなることがなく、その国くには滅ほろびることがない。7:15 そこで、われダニエル、わがうちなる霊れいは憂うれえ、わが脳中のうちゅうの幻まぼろしは、わたしを悩なやましたので、7:16 わたしは、そこに立たっている者もののひとりに近寄ちかよって、このすべての事ことの真意しんいを尋たずねた。するとその者ものは、わたしにこの事ことの解とき明あかしを告つげ知しらせた。7:17 『この四つの大おおきな獣けものは、地ちに起おこらんとする四人にんの王おうである。7:18 しかしついには、いと高たかき者ものの聖徒せいとが国くにを受うけ、永遠えいえんにその国くにを保たもって、世々よよかぎりなく続つづく』。 7:19 そこでわたしは、さらに第だい四の獣けものの真意しんいを知しろうとした。その獣けものは他たの獣けものと異ことなって、はなはだ恐おそろしく、その歯はは鉄てつ、そのつめは青銅せいどうであって、食くらい、かつ、かみ砕くだいて、その残のこりを足あしで踏ふみつけた。7:20 この獣けものの頭あたまには、十の角つのがあったが、そのほかに一つの角つのが出でてきたので、この角つののために、三つの角つのが抜ぬけ落おちた。この角つのには目めがあり、また大おおきな事ことを語かたる口くちがあって、その形かたちは、その同類どうるいのものよりも大おおきく見みえた。7:21 わたしが見みていると、この角つのは聖徒せいとと戦たたかって、彼かれらに勝かったが、7:22 ついに日ひの老おいたる者ものがきて、いと高たかき者ものの聖徒せいとのために審判しんぱんをおこなった。そしてその時ときがきて、この聖徒せいとたちは国くにを受うけた。 7:23 彼かれはこう言いった、『第だい四の獣けものは地上ちじょうの第だい四の国くにである。これはすべての国くにと異ことなって、全ぜん世界せかいを併合へいごうし、これを踏ふみつけ、かつ打うち砕くだく。7:24 十の角つのはこの国くにから起おこる十人にんの王おうである。その後のちにまたひとりの王おうが起おこる。彼かれは先さきの者ものと異ことなり、かつ、その三人にんの王おうを倒たおす。7:25 彼かれは、いと高たかき者ものに敵てきして言葉ことばを出だし、かつ、いと高たかき者ものの聖徒せいとを悩なやます。彼かれはまた時ときと律法りっぽうとを変かえようと望のぞむ。聖徒せいとはひと時ときと、ふた時ときと、半時はんときの間あいだ、彼かれの手てにわたされる。7:26 しかし審判しんぱんが行おこなわれ、彼かれの主権しゅけんは奪うばわれて、永遠えいえんに滅ほろび絶たやされ、7:27 国くにと主権しゅけんと全ぜん天下てんかの国々くにぐにの権威けんいとは、いと高たかき者ものの聖徒せいとたる民たみに与あたえられる。彼かれらの国くには永遠えいえんの国くにであって、諸国しょこくの者ものはみな彼かれらに仕つかえ、かつ従したがう』。7:28 その事ことはここで終おわった。われダニエルは、これを思おもいまわして、非常ひじょうに悩なやみ、顔色かおいろも変かわった。しかし、わたしはこの事ことを心こころに留とめた」。 第8章 8:1 われダニエルは先さきに幻まぼろしを見みたが、後のちまたベルシャザル王おうの治世ちせいの第だい三年ねんに、一つの幻まぼろしがわたしに示しめされた。8:2 その幻まぼろしを見みたのは、エラム州しゅうの首都しゅとスサにいた時ときであって、ウライ川かわのほとりにおいてであった。8:3 わたしが目めをあげて見みると、川かわの岸きしに一匹ぴきの雄羊おひつじが立たっていた。これに二つの角つのがあって、その角つのは共ともに長ながかったが、一つの角つのは他たの角つのよりも長ながかった。その長ながいのは後のちに伸のびたのである。8:4 わたしが見みていると、その雄羊おひつじは、西にし、北きた、南みなみにむかって突撃とつげきしたが、これに当あたることのできる獣けものは一匹ぴきもなく、またその手てから救すくい出だすことのできるものもなかった。これはその心こころのままにふるまい、みずから高たかぶっていた。 8:5 わたしがこれを考かんがえ、見みていると、一匹ぴきの雄おやぎが、全ぜん地ちのおもてを飛とびわたって西にしからきたが、その足あしは土つちを踏ふまなかった。このやぎには、目めの間あいだに著いちじるしい一つの角つのがあった。8:6 この者ものは、さきにわたしが川かわの岸きしに立たっているのを見みた、あの二つの角つののある雄羊おひつじにむかってきて、激はげしく怒いかってこれに走はしり寄よった。8:7 わたしが見みていると、それが雄羊おひつじに近寄ちかよるや、これにむかって怒いかりを発はっし、雄羊おひつじを撃うって、その二つの角つのを砕くだいた。雄羊おひつじには、これに当あたる力ちからがなかったので、やぎは雄羊おひつじを地ちに打うち倒たおして踏ふみつけた。また、その雄羊おひつじを、やぎの力ちからから救すくいうる者ものがなかった。8:8 こうして、その雄おやぎは、はなはだしく高たかぶったが、その盛さかんになった時とき、あの大おおきな角つのが折おれて、その代かわりに四つの著いちじるしい角つのが生しょうじ、天てんの四方しほうに向むかった。 8:9 その角つのの一つから、一つの小ちいさい角つのが出でて、南みなみに向むかい、東ひがしに向むかい、麗うるわしい地ちに向むかって、はなはだしく大おおきくなり、8:10 天てんの衆しゅう群ぐんに及およぶまでに大おおきくなり、星ほしの衆しゅう群ぐんのうちの数個すうこを地ちに投なげ下くだして、これを踏ふみつけ、8:11 またみずから高たかぶって、その衆しゅう群ぐんの主しゅに敵てきし、その常供じょうくの燔祭はんさいを取とり除のぞき、かつその聖所せいじょを倒たおした。8:12 そしてその衆しゅう群ぐんは、罪つみによって、常供じょうくの燔祭はんさいと共ともに、これにわたされた。その角つのはまた真理しんりを地ちに投なげうち、ほしいままにふるまって、みずから栄さかえた。8:13 それから、わたしはひとりの聖者せいじゃの語かたっているのを聞きいた。またひとりの聖者せいじゃがあって、その語かたっている聖者せいじゃにむかって言いった、「常供じょうくの燔祭はんさいと、荒あらすことをなす罪つみと、聖所せいじょとその衆しゅう群ぐんがわたされて、足あしの下したに踏ふみつけられることについて、幻まぼろしにあらわれたことは、いつまでだろうか」と。8:14 彼かれは言いった、「二千三百の夕ゆうと朝あさの間あいだである。そして聖所せいじょは清きよめられてその正ただしい状態じょうたいに復ふくする」。 8:15 われダニエルはこの幻まぼろしを見みて、その意味いみを知しろうと求もとめていた時とき、見みよ、人ひとのように見みえる者ものが、わたしの前まえに立たった。8:16 わたしはウライ川かわの両りょう岸がんの間あいだから人ひとの声こえが出でて、呼よばわるのを聞きいた、「ガブリエルよ、この幻まぼろしをその人ひとに悟さとらせよ」。8:17 すると彼かれはわたしの立たっている所ところにきた。彼かれがきたとき、わたしは恐おそれて、ひれ伏ふした。しかし、彼かれはわたしに言いった、「人ひとの子こよ、悟さとりなさい。この幻まぼろしは終おわりの時ときにかかわるものです」。 8:18 彼かれがわたしに語かたっていた時とき、わたしは地ちにひれ伏ふして、深ふかい眠ねむりに陥おちいったが、彼かれはわたしに手てを触ふれ、わたしを立たたせて、8:19 言いった、「見みよ、わたしは憤いきどおりの終おわりの時ときに起おこるべきことを、あなたに知しらせよう。それは定さだめられた終おわりの時ときにかかわるものであるから。8:20 あなたが見みた、あの二つの角つののある雄羊おひつじは、メデアとペルシャの王おうです。8:21 また、かの雄おやぎはギリシヤの王おうです、その目めの間あいだの大おおきな角つのは、その第だい一の王おうです。8:22 またその角つのが折おれて、その代かわりに四つの角つのが生しょうじたのは、その民たみから四つの国くにが起おこるのです。しかし、第だい一の王おうのような勢力せいりょくはない。8:23 彼かれらの国くにの終おわりの時ときになり、罪つみびとの罪つみが満みちるに及およんで、ひとりの王おうが起おこるでしょう。その顔かおは猛悪もうあくで、彼かれはなぞを解とき、8:24 その勢力せいりょくは盛さかんであって、恐おそろしい破壊はかいをなし、そのなすところ成功せいこうして、有力ゆうりょくな人々ひとびとと、聖徒せいとである民たみを滅ほろぼすでしょう。8:25 彼かれは悪知恵わるぢえをもって、偽いつわりをその手てにおこない遂とげ、みずから心こころに高たかぶり、不意ふいに多おおくの人ひとを打うち滅ほろぼし、また君きみの君きみたる者ものに敵てきするでしょう。しかし、ついに彼かれは人手ひとでによらずに滅ほろぼされるでしょう。8:26 先さきに示しめされた朝夕あさゆうの幻まぼろしは真実しんじつです。しかし、あなたはその幻まぼろしを秘密ひみつにしておかなければならない。これは多おおくの日ひの後のちにかかわる事ことだから」。 8:27 われダニエルは疲つかれはてて、数日すうじつの間あいだ病やみわずらったが、後のち起おきて、王おうの事務じむを執とった。しかし、わたしはこの幻まぼろしの事ことを思おもって驚おどろいた。またこれを悟さとることができなかった。 第9章 9:1 メデアびとアハシュエロスの子こダリヨスが、カルデヤびとの王おうとなったその元年がんねん、9:2 すなわちその治世ちせいの第だい一年ねんに、われダニエルは主しゅが預言者よげんしゃエレミヤに臨のぞんで告つげられたその言葉ことばにより、エルサレムの荒廃こうはいの終おわるまでに経へねばならぬ年ねんの数かずは七十年ねんであることを、文書ぶんしょによって悟さとった。 9:3 それでわたしは、わが顔かおを主しゅなる神かみに向むけ、断食だんじきをなし、荒布あらぬのを着き、灰はいをかぶって祈いのり、かつ願ねがい求もとめた。9:4 すなわちわたしは、わが神かみ、主しゅに祈いのり、ざんげして言いった、「ああ、大おおいなる恐おそるべき神かみ、主しゅ、おのれを愛あいし、おのれの戒いましめを守まもる者もののために契約けいやくを保たもち、いつくしみを施ほどこされる者ものよ、9:5 われわれは罪つみを犯おかし、悪あくをおこない、よこしまなふるまいをなし、そむいて、あなたの戒いましめと、おきてを離はなれました。9:6 われわれはまた、あなたのしもべなる預言者よげんしゃたちが、あなたの名なをもって、われわれの王おうたち、君きみたち、先祖せんぞたち、および国くにのすべての民たみに告つげた言葉ことばに聞きき従したがいませんでした。9:7 主しゅよ、正義せいぎはあなたのものですが、恥はじはわれわれに加くわえられて、今日こんにちのような有様ありさまです。すなわちユダの人々ひとびと、エルサレムの住民じゅうみんおよび全ぜんイスラエルの者ものは、近ちかき者ものも、遠とおき者ものもみな、あなたが追おいやられたすべての国々くにぐにで恥はじをこうむりました。これは彼かれらがあなたにそむいて犯おかした罪つみによるのです。9:8 主しゅよ、恥はじはわれわれのもの、われわれの王おうたち、君きみたちおよび先祖せんぞたちのものです。これはわれわれがあなたにむかって罪つみを犯おかしたからです。9:9 あわれみと、ゆるしはわれわれの神かみ、主しゅのものです。これはわれわれが彼かれにそむいたからです。9:10 またわれわれの神かみ、主しゅのみ声こえに聞きき従したがわず、主しゅがそのしもべ預言者よげんしゃたちによって、われわれの前まえに賜たまわった律法りっぽうを行おこなわなかったからです。9:11 まことにイスラエルの人々ひとびとは皆みなあなたの律法りっぽうを犯おかし、離はなれ去さって、あなたのみ声こえに聞きき従したがわなかったので、神かみのしもべモーセの律法りっぽうにしるされたのろいと誓ちかいが、われわれの上うえに注そそぎかかりました。これはわれわれが神かみにむかって罪つみを犯おかしたからです。9:12 すなわち神かみは大おおいなる災わざわいをわれわれの上うえにくだして、さきにわれわれと、われわれを治おさめたつかさたちにむかって告つげられた言葉ことばを実行じっこうされたのです。あのエルサレムに臨のぞんだような事ことは、全ぜん天下てんかにいまだかつてなかった事ことです。9:13 モーセの律法りっぽうにしるされたように、この災わざわいはすべてわれわれに臨のぞみましたが、なおわれわれの神かみ、主しゅの恵めぐみを請こい求もとめることをせず、その不義ふぎを離はなれて、あなたの真理しんりを悟さとることをもしませんでした。9:14 それゆえ、主しゅはこれを心こころに留とめて、災わざわいをわれわれに下くだされたのです。われわれの神かみ、主しゅは、何事なにごとをされるにも、正ただしくあらせられます。ところが、われわれはそのみ声こえに聞きき従したがわなかったのです。9:15 われわれの神かみ、主しゅよ、あなたは強つよきみ手てをもって、あなたの民たみをエジプトの地ちから導みちびき出だして、今日こんにちのように、み名なをあげられました。われわれは罪つみを犯おかし、よこしまなふるまいをしました。9:16 主しゅよ、どうぞあなたが、これまで正ただしいみわざをなされたように、あなたの町まちエルサレム、あなたの聖せいなる山やまから、あなたの怒いかりと憤いきどおりとを取とり去さってください。これはわれわれの罪つみと、われわれの先祖せんぞの不義ふぎのために、エルサレムと、あなたの民たみが、われわれの周囲しゅういの者ものの物笑ものわらいとなったからです。9:17 それゆえ、われわれの神かみよ、しもべの祈いのりと願ねがいを聞きいてください。主しゅよ、あなたご自身じしんのために、あの荒あれたあなたの聖所せいじょに、あなたのみ顔かおを輝かがやかせてください。9:18 わが神かみよ、耳みみを傾かたむけて聞きいてください。目めを開ひらいて、われわれの荒あれたさまを見み、み名なをもってとなえられる町まちをごらんください。われわれがあなたの前まえに祈いのりをささげるのは、われわれの義ぎによるのではなく、ただあなたの大おおいなるあわれみによるのです。9:19 主しゅよ、聞きいてください。主しゅよ、ゆるしてください。主しゅよ、み心こころに留とめて、おこなってください。わが神かみよ、あなたご自身じしんのために、これを延のばさないでください。あなたの町まちと、あなたの民たみは、み名なをもってとなえられているからです」。 9:20 わたしがこう言いって祈いのり、かつわが罪つみとわが民たみイスラエルの罪つみをざんげし、わが神かみの聖せいなる山やまのために、わが神かみ、主しゅの前まえに願ねがいをしていたとき、9:21 すなわちわたしが祈いのりの言葉ことばを述のべていたとき、わたしが初はじめに幻まぼろしのうちに見みた、かの人ひとガブリエルは、すみやかに飛とんできて、夕ゆうの供そなえ物ものをささげるころ、わたしに近ちかづき、9:22 わたしに告つげて言いった、「ダニエルよ、わたしは今いまあなたに、知恵ちえと悟さとりを与あたえるためにきました。9:23 あなたが祈いのりを始はじめたとき、み言葉ことばが出でたので、それをあなたに告つげるためにきたのです。あなたは大おおいに愛あいせられている者ものです。ゆえに、このみ言葉ことばを考かんがえて、この幻まぼろしを悟さとりなさい。 9:24 あなたの民たみと、あなたの聖せいなる町まちについては、七十週しゅうが定さだめられています。これはとがを終おわらせ、罪つみに終おわりを告つげ、不義ふぎをあがない、永遠えいえんの義ぎをもたらし、幻まぼろしと預言者よげんしゃを封ふうじ、いと聖せいなる者ものに油あぶらを注そそぐためです。9:25 それゆえ、エルサレムを建たて直なおせという命令めいれいが出でてから、メシヤなるひとりの君きみが来くるまで、七週しゅうと六十二週しゅうあることを知しり、かつ悟さとりなさい。その間あいだに、しかも不安ふあんな時代じだいに、エルサレムは広場ひろばと街路がいろとをもって、建たて直なおされるでしょう。9:26 その六十二週しゅうの後のちにメシヤは断たたれるでしょう。ただし自分じぶんのためにではありません。またきたるべき君きみの民たみは、町まちと聖所せいじょとを滅ほろぼすでしょう。その終おわりは洪水こうずいのように臨のぞむでしょう。そしてその終おわりまで戦争せんそうが続つづき、荒廃こうはいは定さだめられています。9:27 彼かれは一週いっしゅうの間あいだ多おおくの者ものと、堅かたく契約けいやくを結むすぶでしょう。そして彼かれはその週しゅうの半なかばに、犠牲ぎせいと供そなえ物ものとを廃はいするでしょう。また荒あらす者ものが憎にくむべき者ものの翼つばさに乗のって来くるでしょう。こうしてついにその定さだまった終おわりが、その荒あらす者ものの上うえに注そそがれるのです」。 第10章 10:1 ペルシャの王おうクロスの第だい三年ねんに、ベルテシャザルと名なづけられたダニエルに、一つの言葉ことばが啓示けいじされたが、その言葉ことばは真実しんじつであり、大おおいなる戦たたかいを意味いみするものであった。彼かれはその言葉ことばに心こころを留とめ、その幻まぼろしを悟さとった。 10:2 そのころ、われダニエルは三週しゅうの間あいだ、悲かなしんでいた。10:3 すなわち三週間しゅうかんの全まったく満みちるまでは、うまい物ものを食たべず、肉にくと酒さけとを口くちにせず、また身みに油あぶらを塗ぬらなかった。10:4 正月しょうがつの二十四日かに、わたしがチグリスという大川おおかわの岸きしに立たっていたとき、10:5 目めをあげて望のぞみ見みると、ひとりの人ひとがいて、亜麻あま布ぬのの衣ころもを着き、ウパズの金きんの帯おびを腰こしにしめていた。10:6 そのからだは緑柱石りょくちゅうせきのごとく、その顔かおは電光でんこうのごとく、その目めは燃もえるたいまつのごとく、その腕うでと足あしは、みがいた青銅せいどうのように輝かがやき、その言葉ことばの声こえは、群衆ぐんしゅうの声こえのようであった。10:7 この幻まぼろしを見みた者ものは、われダニエルのみであって、わたしと共ともにいた人々ひとびとは、この幻まぼろしを見みなかったが、彼かれらは大おおいにおののいて、逃にげかくれた。10:8 それでわたしひとり残のこって、この大おおいなる幻まぼろしを見みたので、力ちからが抜ぬけ去さり、わが顔かおの輝かがやきは恐おそろしく変かわって、全まったく力ちからがなくなった。10:9 わたしはその言葉ことばの声こえを聞きいたが、その言葉ことばの声こえを聞きいたとき、顔かおを伏ふせ、地ちにひれ伏ふして、深ふかい眠ねむりに陥おちいった。 10:10 見みよ、一つの手てがあって、わたしに触ふれたので、わたしは震ふるえながらひざまずき、手てをつくと、10:11 彼かれはわたしに言いった、「大おおいに愛あいせられる人ひとダニエルよ、わたしがあなたに告つげる言葉ことばに心こころを留とめ、立たちあがりなさい。わたしは今いまあなたのもとにつかわされたのです」。彼かれがこの言葉ことばをわたしに告つげているとき、わたしは震ふるえながら立たちあがった。10:12 すると彼かれはわたしに言いった、「ダニエルよ、恐おそれるに及およばない。あなたが悟さとろうと心こころをこめ、あなたの神かみの前まえに身みを悩なやましたその初はじめの日ひから、あなたの言葉ことばは、すでに聞きかれたので、わたしは、あなたの言葉ことばのゆえにきたのです。10:13 ペルシャの国くにの君きみが、二十一日にちの間あいだわたしの前まえに立たちふさがったが、天使てんしの長ちょうのひとりであるミカエルがきて、わたしを助たすけたので、わたしは、彼かれをペルシャの国くにの君きみと共ともに、そこに残のこしておき、10:14 末すえの日ひに、あなたの民たみに臨のぞまんとする事ことを、あなたに悟さとらせるためにきたのです。この幻まぼろしは、なおきたるべき日ひにかかわるものです」。 10:15 彼かれがこれらの言葉ことばを、わたしに述のべていたとき、わたしは、地ちにひれ伏ふして黙だまっていたが、10:16 見みよ、人ひとの子このような者ものが、わたしのくちびるにさわったので、わたしは口くちを開ひらき、わが前まえに立たっている者ものに語かたって言いった、「わが主しゅよ、この幻まぼろしによって、苦くるしみがわたしに臨のぞみ、全まったく力ちからを失うしないました。10:17 わが主しゅのしもべは、どうしてわが主しゅと語かたることができましょう。わたしは全まったく力ちからを失うしない、息いきも止とまるばかりです」。 10:18 人ひとの形かたちをした者ものは、再ふたたびわたしにさわり、わたしを力ちからづけて、10:19 言いった、「大おおいに愛あいせられる人ひとよ、恐おそれるには及およばない。安心あんしんしなさい。心こころを強つよくし、勇気ゆうきを出だしなさい」。彼かれがこう言いったとき、わたしは力ちからづいて言いった、「わが主しゅよ、語かたってください。あなたは、わたしに力ちからをつけてくださったから」。10:20 そこで彼かれは言いった、「あなたは、わたしがなんのためにきたかを知しっていますか。わたしは、今いま帰かえっていって、ペルシャの君きみと戦たたかおうとしているのです。彼かれとの戦たたかいがすむと、ギリシヤの君きみがあらわれるでしょう。10:21 しかしわたしは、まず真理しんりの書しょにしるされている事ことを、あなたに告つげよう。わたしを助たすけて、彼かれらと戦たたかう者ものは、あなたがたの君きみミカエルのほかにはありません。 第11章 11:1 わたしはまたメデアびとダリヨスの元年がんねんに立たって彼かれを強つよめ、彼かれを力ちからづけたことがあります。 11:2 わたしは今いまあなたに真理しんりを示しめそう。見みよ、ペルシャになお三人にんの王おうが起おこるでしょう。その第だい四の者ものは、他たのすべての者ものにまさって富とみ、その富とみによって強つよくなったとき、彼かれはすべてのものを動員どういんして、ギリシヤの国くにを攻せめます。11:3 またひとりの勇いさましい王おうが起おこり、大おおいなる権力けんりょくをもって世よを治おさめ、その意いのままに事ことをなすでしょう。11:4 彼かれが強つよくなった時とき、その国くには破やぶられ、天てんの四方しほうに分わかたれます。それは彼かれの子孫しそんに帰きせず、また彼かれが治おさめたほどの権力けんりょくもなく、彼かれの国くには抜ぬき取とられて、これら以外いがいの者ものどもに帰きするでしょう。 11:5 南みなみの王おうは強つよくなります。しかしその将軍しょうぐんのひとりが、彼かれにまさって強つよくなり、権力けんりょくをふるいます。その権力けんりょくは、大おおいなる権力けんりょくです。11:6 年としを経へて後のち、彼かれらは縁組えんぐみをなし、南みなみの王おうの娘むすめが、北きたの王おうにきて、和親わしんをはかります。しかしその女おんなは、その腕うでの力ちからを保たもつことができず、またその王おうも、その子こも立たつことができません。その女おんなと、その従者じゅうしゃと、その子こおよびその女おんなを獲えた者ものとは、わたされるでしょう。 11:7 そのころ、この女おんなの根ねから、一つの芽めが起おこって彼かれに代かわり、北きたの王おうの軍勢ぐんぜいにむかってきて、その城しろに討うち入いり、これを攻せめて勝かつでしょう。11:8 彼かれはまた彼かれらの神々かみがみ、鋳い像ぞうおよび金銀きんぎんの貴重きちょうな器物うつわものを、エジプトに携たずさえ去さり、そして数年すうねんの間あいだ、北きたの王おうを討うつことを控ひかえます。11:9 その後のち、北きたの王おうは、南みなみの王おうの国くにに討うち入はいるが、自分じぶんの国くにに帰かえるでしょう。 11:10 その子こらはまた憤激ふんげきして、あまたの大軍たいぐんを集あつめ、進すすんで行いって、みなぎりあふれ、通とおり過すぎるが、また行いって、その城しろにまで攻せめ寄よせるでしょう。11:11 そこで南みなみの王おうは、大おおいに怒いかり、出でてきて北きたの王おうと戦たたかいます。彼かれは大軍たいぐんを起おこすけれども、その軍ぐんは相手あいての手てにわたされるでしょう。11:12 彼かれがその軍ぐんを打うち破やぶったとき、その心こころは高たかぶり、数すう万まん人にんを倒たおします。しかし、勝かつことはありません。11:13 それは北きたの王おうがまた初はじめよりも大おおいなる軍ぐんを起おこし、数年すうねんの後のち、大おおいなる軍勢ぐんぜいと多おおくの軍需ぐんじゅ品ひんとをもって、攻せめて来くるからです。 11:14 そのころ多おおくの者ものが起おこって、南みなみの王おうに敵てきします。またあなたの民たみのうちのあらくれ者ものが、みずから高たかぶって事ことをなし、幻まぼろしを成就じょうじゅしようとするが失敗しっぱいするでしょう。11:15 こうして北きたの王おうがきて、塁るいを築きずき、堅固けんごな町まちを取とるが、南みなみの王おうの力ちからは、これに立たち向むかうことができず、またそのえり抜ぬきの民たみも、これに立たち向むかう力ちからがありません。11:16 これに攻せめて来くる者ものは、その心こころのままに事ことをなし、その前まえに立たち向むかうことのできる者ものはなく、彼かれは麗うるわしい地ちに立たち、その地ちは全まったく彼かれのために荒あらされます。11:17 彼かれは全国ぜんこくの力ちからをもって討うち入はいろうと、その顔かおを向むけるが、相手あいてと仲直なかなおりをし、その娘むすめを与あたえて、その国くにを取とろうとします。しかし、その事ことは成ならず、また彼かれの利益りえきにはならないでしょう。11:18 その後のち、彼かれは顔かおを海沿うみぞいの国々くにぐにに向むけて、その多おおくのものを取とります。しかし、ひとりの大将たいしょうがあって、彼かれが与あたえた恥辱ちじょくをそそぎ、その恥辱ちじょくを彼かれの上うえに返かえします。11:19 こうして彼かれは、その顔かおを自分じぶんの国くにの要害ようがいに向むけるが、彼かれはつまずき倒たおれて消きえうせるでしょう。 11:20 彼かれに代かわって起おこる者ものは、栄光えいこうの国くにに人ひとをつかわして、租税そぜいを取とり立たてさせるでしょう。しかし彼かれは、怒いかりにも戦たたかいにもよらず、数日すうじつのうちに滅ほろぼされます。11:21 彼かれに代かわって起おこる者ものは、卑いやしむべき者ものであって、彼かれには、王おうの尊厳そんげんが与あたえられず、彼かれは不意ふいにきて、巧言こうげんをもって国くにを獲えるでしょう。11:22 洪水こうずいのような軍勢ぐんぜいは、彼かれの前まえに押おし流ながされて敗やぶられ、契約けいやくの君きみたる者ものもまた敗やぶられるでしょう。11:23 彼かれは、これと同盟どうめいを結むすんで後のち、偽いつわりのおこないをなし、わずかな民たみをもって強つよくなり、11:24 不意ふいにその州しゅうの最もっとも肥こえた所ところに攻せめ入いり、その父ちちも、その父ちちの父ちちもしなかった事ことをおこない、その奪うばった物もの、かすめた物ものおよび財宝ざいほうを、人々ひとびとの中なかに散ちらすでしょう。彼かれはまた計略けいりゃくをめぐらして、堅固けんごな城しろを攻せめるが、ただし、それは時ときの至いたるまでです。11:25 彼かれはその勢力せいりょくと勇気ゆうきとを奮ふるい起おこし、大軍たいぐんを率ひきいて南みなみの王おうを攻せめます。南みなみの王おうもまたみずから奮ふるい、はなはだ大おおいなる強力きょうりょくな軍勢ぐんぜいをもって戦たたかいます。しかし、彼かれに対たいして、陰謀いんぼうをめぐらす者ものがあるので、これに立たち向むかうことができません。11:26 すなわち彼かれの食物しょくもつを食たべる者ものたちが、彼かれを滅ほろぼします。そして、その軍勢ぐんぜいは押おし流ながされて、多おおくの者ものが倒たおれ死しぬでしょう。11:27 このふたりの王おうは、害がいを与あたえようと心こころにはかり、ひとつ食卓しょくたくに共ともに食しょくして、偽いつわりを語かたるが、それは成功せいこうしません。終おわりはなお定さだまった時ときの来くるまでこないからです。11:28 彼かれは大おおいなる財宝ざいほうをもって、自分じぶんの国くにに帰かえるでしょう。しかし、彼かれの心こころは聖せいなる契約けいやくにそむき、ほしいままに事ことをなして、自分じぶんの国くにに帰かえります。 11:29 定さだまった時ときになって、彼かれはまた南みなみに討うち入いります。しかし、この時ときは前まえの時ときのようではありません。11:30 それはキッテムの船ふねが、彼かれに立たち向むかって来くるので、彼かれは脅おびやかされて帰かえり、聖せいなる契約けいやくに対たいして憤いきどおり、事ことを行おこなうでしょう。彼かれは帰かえっていって、聖せいなる契約けいやくを捨すてる者ものを顧かえりみ用もちいるでしょう。11:31 彼かれから軍勢ぐんぜいが起おこって、神殿しんでんと城郭じょうかくを汚けがし、常供じょうくの燔祭はんさいを取とり除のぞき、荒あらす憎にくむべきものを立たてるでしょう。11:32 彼かれは契約けいやくを破やぶる者ものどもを、巧言こうげんをもってそそのかし、そむかせるが、自分じぶんの神かみを知しる民たみは、堅かたく立たって事ことを行おこないます。11:33 民たみのうちの賢かしこい人々ひとびとは、多おおくの人ひとを悟さとりに至いたらせます。それでも、彼かれらはしばらくの間あいだ、やいばにかかり、火ひに焼やかれ、捕とらわれ、かすめられなどして倒たおれます。11:34 その倒たおれるとき、彼かれらは少すこしの助たすけを獲えます。また多おおくの人ひとが、巧言こうげんをもって彼かれらにくみするでしょう。11:35 また賢かしこい者もののうちのある者ものは、終おわりの時ときまで、自分じぶんを練ねり、清きよめ、白しろくするために倒たおれるでしょう。終おわりはなお定さだまった時ときの来くるまでこないからです。 11:36 この王おうは、その心こころのままに事ことをおこない、すべての神かみを越こえて、自分じぶんを高たかくし、自分じぶんを大おおいにし、神々かみがみの神かみたる者ものにむかって、驚おどろくべき事ことを語かたり、憤いきどおりのやむ時ときまで栄さかえるでしょう。これは定さだめられた事ことが成就じょうじゅするからです。11:37 彼かれはその先祖せんぞの神々かみがみを顧かえりみず、また婦人ふじんの好このむ者ものも、いかなる神かみをも顧かえりみないでしょう。彼かれはすべてにまさって、自分じぶんを大おおいなる者ものとするからです。11:38 彼かれはこれらの者ものの代かわりに、要害ようがいの神かみをあがめ、金きん、銀ぎん、宝石ほうせき、および宝物たからものをもって、その先祖せんぞたちの知しらなかった神かみをあがめ、11:39 異邦いほうの神かみの助たすけによって、最もっとも強固きょうこな城しろにむかって、事ことをなすでしょう。そして彼かれを認みとめる者ものには、栄誉えいよを増まし与あたえ、これに多おおくの人ひとを治おさめさせ、賞与しょうよとして土地とちを分わけ与あたえるでしょう。 11:40 終おわりの時ときになって、南みなみの王おうは彼かれと戦たたかいます。北きたの王おうは、戦車せんしゃと騎兵きへいと、多おおくの船ふねをもって、つむじ風かぜのように彼かれを攻せめ、国々くにぐににはいっていって、みなぎりあふれ、通とおり過すぎるでしょう。11:41 彼かれはまた麗うるわしい国くににはいります。また彼かれによって、多おおくの者ものが滅ほろぼされます。しかし、エドム、モアブ、アンモンびとらのうちのおもな者ものは、彼かれの手てから救すくわれましょう。11:42 彼かれは国々くにぐににその手てを伸のばし、エジプトの地ちも免まぬかれません。11:43 彼かれは金銀きんぎんの財宝ざいほうと、エジプトのすべての宝物たからものを支配しはいし、リビヤびと、エチオピヤびとは、彼かれのあとに従したがいます。11:44 しかし東ひがしと北きたからの知しらせが彼かれを驚おどろかし、彼かれは多おおくの人ひとを滅ほろぼし絶たやそうと、大おおいなる怒いかりをもって出でて行いきます。11:45 彼かれは海うみと麗うるわしい聖山せいざんとの間あいだに、天幕てんまくの宮殿きゅうでんを設もうけるでしょう。しかし、彼かれはついにその終おわりにいたり、彼かれを助たすける者ものはないでしょう。 第12章 12:1 その時ときあなたの民たみを守まもっている大おおいなる君きみミカエルが立たちあがります。また国くにが始はじまってから、その時ときにいたるまで、かつてなかったほどの悩なやみの時ときがあるでしょう。しかし、その時ときあなたの民たみは救すくわれます。すなわちあの書しょに名なをしるされた者ものは皆みな救すくわれます。12:2 また地ちのちりの中なかに眠ねむっている者もののうち、多おおくの者ものは目めをさますでしょう。そのうち永遠えいえんの生命せいめいにいたる者ものもあり、また恥はじと、限かぎりなき恥辱ちじょくをうける者ものもあるでしょう。12:3 賢かしこい者ものは、大空おおぞらの輝かがやきのように輝かがやき、また多おおくの人ひとを義ぎに導みちびく者ものは、星ほしのようになって永遠えいえんにいたるでしょう。12:4 ダニエルよ、あなたは終おわりの時ときまでこの言葉ことばを秘ひし、この書しょを封ふうじておきなさい。多おおくの者ものは、あちこちと探さぐり調しらべ、そして知識ちしきが増ますでしょう」。 12:5 そこで、われダニエルが見みていると、ほかにまたふたりの者ものがあって、ひとりは川かわのこなたの岸きしに、ひとりは川かわのかなたの岸きしに立たっていた。12:6 わたしは、かの亜麻あま布ぬのを着きて川かわの水みずの上うえにいる人ひとにむかって言いった、「この異常いじょうなできごとは、いつになって終おわるでしょうか」と。12:7 かの亜麻あま布ぬのを着きて、川かわの水みずの上うえにいた人ひとが、天てんに向むかって、その右みぎの手てと左ひだりの手てをあげ、永遠えいえんに生いける者ものをさして誓ちかい、それは、ひと時ときとふた時ときと半時はんときである。聖せいなる民たみを打うち砕くだく力ちからが消きえ去さる時ときに、これらの事ことはみな成就じょうじゅするだろうと言いうのを、わたしは聞きいた。12:8 わたしはこれを聞きいたけれども悟さとれなかった。わたしは言いった、「わが主しゅよ、これらの事ことの結末けつまつはどんなでしょうか」。 12:9 彼かれは言いった、「ダニエルよ、あなたの道みちを行いきなさい。この言葉ことばは終おわりの時ときまで秘ひし、かつ封ふうじておかれます。12:10 多おおくの者ものは、自分じぶんを清きよめ、自分じぶんを白しろくし、かつ練ねられるでしょう。しかし、悪わるい者ものは悪わるい事ことをおこない、ひとりも悟さとることはないが、賢かしこい者ものは悟さとるでしょう。 12:11 常供じょうくの燔祭はんさいが取すり除のぞかれ、荒あらす憎にくむべきものが立たてられる時ときから、千二百九十日にちが定さだめられている。12:12 待まっていて千三百三十五日にちに至いたる者ものはさいわいです。12:13 しかし、終おわりまであなたの道みちを行いきなさい。あなたは休やすみに入はいり、定さだめられた日ひの終おわりに立たって、あなたの分ぶんを受うけるでしょう」。
4:1 ネブカデネザル王おうは全ぜん世界せかいに住すむ諸民しょみん、諸しょ族ぞく、諸国しょこく語ごの者ものに告つげる。どうか、あなたがたに平安へいあんが増ますように。
4:2 いと高たかき神かみはわたしにしるしと奇跡きせきとを行おこなわれた。わたしはこれを知しらせたいと思おもう。
4:3 ああ、そのしるしの大おおいなること、ああ、その奇跡きせきのすばらしいこと、その国くには永遠えいえんの国くに、その主権しゅけんは世々よよに及およぶ。
4:4 われネブカデネザルはわが家やに安やすらかにおり、わが宮みやにあって栄さかえていたが、
4:5 わたしは一つの夢ゆめを見みて、そのために恐おそれた。すなわち床とこにあって、その事ことを思おもいめぐらし、わが脳中のうちゅうの幻まぼろしのために心こころを悩なやました。
4:6 そこでわたしは命令めいれいを下くだし、バビロンの知者ちしゃをことごとくわが前まえに召めし寄よせて、その夢ゆめの解とき明あかしを示しめさせようとした。
4:7 すると、博士はかせ、法ほう術じゅつ士し、カルデヤびと、占うらない師したちがきたので、わたしはその夢ゆめを彼かれらに語かたったが、彼かれらはその解とき明あかしを示しめすことができなかった。
4:8 最後さいごにダニエルがわたしの前まえにきた、――彼かれの名なはわが神かみの名なにちなんで、ベルテシャザルととなえられ、彼かれのうちには聖せいなる神かみの霊れいがやどっていた――わたしは彼かれにその夢ゆめを語かたって言いった、
4:9 「博士はかせの長ちょうベルテシャザルよ、わたしは知しっている。聖せいなる神かみの霊れいがあなたのうちにやどっているから、どんな秘密ひみつもあなたにはむずかしいことはない。ここにわたしが見みた夢ゆめがある。その解とき明あかしをわたしに告つげなさい。
4:10 わたしが床とこにあって見みた脳中のうちゅうの幻まぼろしはこれである。わたしが見みたのに、地ちの中央ちゅうおうに一本ぽんの木きがあって、そのたけが高たかかったが、
4:11 その木きは成長せいちょうして強つよくなり、天てんに達たっするほどの高たかさになって、地ちの果はてまでも見みえわたり、
4:12 その葉はは美うつくしく、その実みは豊ゆたかで、すべての者ものがその中なかから食物しょくもつを獲え、また野のの獣けものはその陰かげにやどり、空そらの鳥とりはその枝えだにすみ、すべての肉にくなる者ものはこれによって養やしなわれた。
4:13 わたしが床とこにあって見みた脳中のうちゅうの幻まぼろしの中なかに、ひとりの警護者けいごしゃ、ひとりの聖者せいじゃの天てんから下くだるのを見みたが、
4:14 彼かれは声こえ高たかく呼よばわって、こう言いった、『この木きを切きり倒たおし、その枝えだを切きりはらい、その葉はをゆり落おとし、その実みを打うち散ちらし、獣けものをその下したから逃にげ去さらせ、鳥とりをその枝えだから飛とび去さらせよ。
4:15 ただしその根ねの切きり株かぶを地ちに残のこし、それに鉄てつと青銅せいどうのなわをかけて、野のの若草わかくさの中なかにおき、天てんからくだる露つゆにぬれさせ、また地ちの草くさの中なかで、獣けものと共ともにその分ぶんにあずからせよ。
4:16 またその心こころは変かわって人間にんげんの心こころのようでなく、獣けものの心こころが与あたえられて、七つの時ときを過すごさせよ。
4:17 この宣言せんげんは警護者けいごしゃたちの命令めいれいによるもの、この決定けっていは聖者せいじゃたちの言葉ことばによるもので、いと高たかき者ものが、人間にんげんの国くにを治おさめて、自分じぶんの意いのままにこれを人ひとに与あたえ、また人ひとのうちの最もっとも卑いやしい者ものを、その上うえに立たてられるという事ことを、すべての者ものに知しらせるためである』と。
4:18 われネブカデネザル王おうはこの夢ゆめを見みた。ベルテシャザルよ、あなたはその解とき明あかしをわたしに告つげなさい。わが国くにの知者ちしゃたちは、いずれもその解とき明あかしを、わたしに示しめすことができなかったけれども、あなたにはそれができる。あなたのうちには、聖せいなる神かみの霊れいがやどっているからだ」。
4:19 その時とき、その名なをベルテシャザルととなえるダニエルは、しばらくのあいだ驚おどろき、思おもい悩なやんだので、王おうは彼かれに告つげて言いった、「ベルテシャザルよ、あなたはこの夢ゆめと、その解とき明あかしのために、悩なやむには及およばない」。ベルテシャザルは答こたえて言いった、「わが主しゅよ、どうか、この夢ゆめは、あなたを憎にくむ者ものにかかわるように。この解とき明あかしは、あなたの敵てきに臨のぞむように。
4:20 あなたが見みられた木き、すなわちその成長せいちょうして強つよくなり、天てんに達たっするほどの高たかさになって、地ちの果はてまでも見みえわたり、
4:21 その葉はは美うつくしく、その実みは豊ゆたかで、すべての者ものがその中なかから食物しょくもつを獲え、また野のの獣けものがその陰かげにやどり、空そらの鳥とりがその枝えだに住すんだ木き、
4:22 王おうよ、それはすなわちあなたです。あなたは成長せいちょうして強つよくなり、天てんに達たっするほどに大おおきくなり、あなたの主権しゅけんは地ちの果はてにまで及およびました。
4:23 ところが、王おうはひとりの警護者けいごしゃ、ひとりの聖者せいじゃが、天てんから下くだって、こう言いうのを見みられました、『この木きを切きり倒たおして、これを滅ほろぼせ。ただしその根ねの切きり株かぶを地ちに残のこし、それに鉄てつと青銅せいどうのなわをかけて、野のの若草わかくさの中なかにおき、天てんからくだる露つゆにぬれさせ、また野のの獣けものと共ともにその分ぶんにあずからせて、七つの時ときを過すごさせよ』と。
4:24 王おうよ、その解とき明あかしはこうです。すなわちこれはいと高たかき者ものの命令めいれいであって、わが主しゅなる王おうに臨のぞまんとするものです。
4:25 すなわちあなたは追おわれて世よの人ひとを離はなれ、野のの獣けものと共ともにおり、牛うしのように草くさを食くい、天てんからくだる露つゆにぬれるでしょう。こうして七つの時ときが過すぎて、ついにあなたは、いと高たかき者ものが人間にんげんの国くにを治おさめて、自分じぶんの意いのままに、これを人ひとに与あたえられることを知しるに至いたるでしょう。
4:26 また彼かれらはその木きの根ねの切きり株かぶを残のこしおけと命めいじたので、あなたが、天てんはまことの支配者しはいしゃであるということを知しった後のち、あなたの国くにはあなたに確保かくほされるでしょう。
4:27 それゆえ王おうよ、あなたはわたしの勧告かんこくをいれ、義ぎを行いって罪つみを離はなれ、しえたげられる者ものをあわれんで、不義ふぎを離はなれなさい。そうすれば、あるいはあなたの繁栄はんえいが、長ながく続つづくかもしれません」。
4:28 この事ことは皆みなネブカデネザル王おうに臨のぞんだ。
4:29 十二か月げつを経へて後のち、王おうがバビロンの王宮おうきゅうの屋上おくじょうを歩あるいていたとき、
4:30 王おうは自みずから言いった、「この大おおいなるバビロンは、わたしの大おおいなる力ちからをもって建たてた王城おうじょうであって、わが威光いこうを輝かがやかすものではないか」。
4:31 その言葉ことばがなお王おうの口くちにあるうちに、天てんから声こえがくだって言いった、「ネブカデネザル王おうよ、あなたに告つげる。国くにはあなたを離はなれ去さった。
4:32 あなたは、追おわれて世よの人ひとを離はなれ、野のの獣けものと共ともにおり、牛うしのように草くさを食くい、こうして七つの時ときを経へて、ついにあなたは、いと高たかき者ものが人間にんげんの国くにを治おさめて、自分じぶんの意いのままに、これを人ひとに与あたえられることを知しるに至いたるだろう」。
4:33 この言葉ことばは、ただちにネブカデネザルに成就じょうじゅした。彼かれは追おわれて世よの人ひとを離はなれ、牛うしのように草くさを食くい、その身みは天てんからくだる露つゆにぬれ、ついにその毛けは、わしの羽はねのようになり、そのつめは鳥とりのつめのようになった。
4:34 こうしてその期間きかんが満みちた後のち、われネブカデネザルは、目めをあげて天てんを仰あおぎ見みると、わたしの理性りせいが自分じぶんに帰かえったので、わたしはいと高たかき者ものをほめ、その永遠えいえんに生いける者ものをさんびし、かつあがめた。
4:35 地ちに住すむ民たみはすべて無なき者もののように思おもわれ、天てんの衆しゅう群ぐんにも、地ちに住すむ民たみにも、彼かれはその意いのままに事ことを行おこなわれる。だれも彼かれの手てをおさえて「あなたは何なにをするのか」と言いいうる者ものはない。
4:36 この時ときわたしの理性りせいは自分じぶんに帰かえり、またわが国くにの光栄こうえいのために、わが尊厳そんげんと光輝こうきとが、わたしに帰かえった。わが大臣だいじん、わが貴族きぞくらもきて、わたしに求もとめ、わたしは国くにの上うえに堅かたく立たって、前まえにもまさって大おおいなる者ものとなった。
4:37 そこでわれネブカデネザルは今いま、天てんの王おうをほめたたえ、かつあがめたてまつる。そのみわざはことごとく真実しんじつで、その道みちは正ただしく、高たかぶり歩あゆむ者ものを低ひくくされる。
第5章 5:1 ベルシャザル王おうは、その大臣だいじん一千人にんのために、盛さかんな酒宴しゅえんを設もうけ、その一千人にんの前まえで酒さけを飲のんでいた。 5:2 酒さけが進すすんだとき、ベルシャザルは、その父ちちネブカデネザルがエルサレムの神殿しんでんから取とってきた金銀きんぎんの器うつわを持もってこいと命めいじた。王おうとその大臣だいじんたち、および王おうの妻つまとそばめらが、これをもって酒さけを飲のむためであった。5:3 そこで人々ひとびとはそのエルサレムの神かみの宮みやすなわち神殿しんでんから取とってきた金銀きんぎんの器うつわを持もってきたので、王おうとその大臣だいじんたち、および王おうの妻つまとそばめらは、これをもって飲のんだ。5:4 すなわち彼かれらは酒さけを飲のんで、金きん、銀ぎん、青銅せいどう、鉄てつ、木き、石いしなどの神々かみがみをほめたたえた。 5:5 すると突然とつぜん人ひとの手ての指ゆびがあらわれて、燭台しょくだいと相対あいたいする王おうの宮殿きゅうでんの塗ぬり壁かべに物ものを書かいた。王おうはその物ものを書かいた手ての先さきを見みた。5:6 そのために王おうの顔色かおいろは変かわり、その心こころは思おもい悩なやんで乱みだれ、その腰こしのつがいはゆるみ、ひざは震ふるえて互たがいに打うちあった。5:7 王おうは大声おおごえに呼よばわって、法ほう術じゅつ士し、カルデヤびと、占うらない師しらを召めしてこさせた。王おうはバビロンの知者ちしゃたちに告つげて言いった、「この文字もじを読よみ、その解とき明あかしをわたしに示しめす者ものには紫むらさきの衣ころもを着きせ、首くびに金きんの鎖くさりをかけさせて、国くにの第だい三のつかさとしよう」と。5:8 王おうの知者ちしゃたちは皆みなはいってきた。しかしその文字もじを読よむことができず、またその解とき明あかしを王おうに示しめすことができなかったので、5:9 ベルシャザル王おうは大おおいに思おもい悩なやんで、その顔色かおいろは変かわり、王おうの大臣だいじんたちも当惑とうわくした。 5:10 時ときに王妃おうひは王おうと大臣だいじんたちの言葉ことばを聞きいて、その宴会場えんかいじょうにはいってきた。そして王妃おうひは言いった、「王おうよ、どうか、とこしえに生いきながらえられますように。あなたは心こころに思おもい悩なやんではなりません。また顔色かおいろを変かえるには及およびません。5:11 あなたの国くにには、聖せいなる神かみの霊れいのやどっているひとりの人ひとがおります。あなたの父ちちの代よに、彼かれは、明知めいち、分別ふんべつおよび神かみのような知恵ちえのあることをあらわしました。あなたの父ちちネブカデネザル王おうは、彼かれを立たてて、博士はかせ、法ほう術じゅつ士し、カルデヤびと、占うらない師しらの長ちょうとされました。5:12 彼かれは、王おうがベルテシャザルという名なを与あたえたダニエルという者ものですが、このダニエルには、すぐれた霊れい、知識ちしき、分別ふんべつがあって、夢ゆめを解とき、なぞを解とき、難問なんもんを解とくことができます。ゆえにダニエルを召めしなさい。彼かれはその解とき明あかしを示しめすでしょう」。 5:13 そこでダニエルは王おうの前まえに召めされた。王おうはダニエルに言いった、「あなたは、わが父ちちの王おうが、ユダからひきつれてきたユダの捕囚ほしゅうのひとりなのか。5:14 聞きくところによると、あなたのうちには、聖せいなる神かみの霊れいがやどっていて、明知めいち、分別ふんべつおよび非凡ひぼんな知恵ちえがあるそうだ。5:15 わたしは、知者ちしゃ、法ほう術じゅつ士しらを、わが前まえに召めしよせて、この文字もじを読よませ、その解とき明あかしを示しめさせようとしたが、彼かれらは、この事ことの解とき明あかしを示しめすことができなかった。5:16 しかしまた聞きくところによると、あなたは解とき明あかしをなし、かつ難問なんもんを解とくことができるそうだ。それで、あなたがもし、この文字もじを読よみ、その解とき明あかしをわたしに示しめすことができたなら、あなたに紫むらさきの衣ころもを着きせ、金きんの鎖くさりを首くびにかけさせて、この国くにの第だい三のつかさとしよう」。 5:17 ダニエルは王おうの前まえに答こたえて言いった、「あなたの賜物たまものは、あなたご自身じしんにとっておき、あなたの贈おくり物ものは、他人たにんにお与あたえください。それでも、わたしは王おうのためにその文字もじを読よみ、その解とき明あかしをお知おしらせいたしましょう。5:18 王おうよ、いと高たかき神かみはあなたの父ちちネブカデネザルに国くにと権勢けんせいと、光栄こうえいと尊厳そんげんとを賜たまいました。5:19 彼かれに権勢けんせいを賜たまわったことによって、諸民しょみん、諸しょ族ぞく、諸国しょこく語ごの者ものはみな、彼かれの前まえにおののき恐おそれました。彼かれは自分じぶんの欲ほっする者ものを殺ころし、自分じぶんの欲ほっする者ものを生いかし、自分じぶんの欲ほっする者ものを上あげ、自分じぶんの欲ほっする者ものを下くだしました。5:20 しかし彼かれは心こころに高たかぶり、かたくなになり、ごうまんにふるまったので、王位おういからしりぞけられ、その光栄こうえいを奪うばわれ、5:21 追おわれて世よの人ひとと離はなれ、その思おもいは獣けもののようになり、そのすまいは野のろばと共ともにあり、牛うしのように草くさを食くい、その身みは天てんからくだる露つゆにぬれ、こうしてついに彼かれは、いと高たかき神かみが人間にんげんの国くにを治おさめて、自分じぶんの意いのままに人ひとを立たてられるということを、知しるようになりました。5:22 ベルシャザルよ、あなたは彼かれの子こであって、この事ことをことごとく知しっていながら、なお心こころを低ひくくせず、5:23 かえって天てんの主しゅにむかって、みずから高たかぶり、その宮みやの器物うつわものをあなたの前まえに持もってこさせ、あなたとあなたの大臣だいじんたちと、あなたの妻つまとそばめたちは、それをもって酒さけを飲のみ、そしてあなたは見みることも、聞きくことも、物ものを知しることもできない金きん、銀ぎん、青銅せいどう、鉄てつ、木き、石いしの神々かみがみをほめたたえたが、あなたの命いのちをその手てににぎり、あなたのすべての道みちをつかさどられる神かみをあがめようとはしなかった。 5:24 それゆえ、彼かれの前まえからこの手てが出でてきて、この文字もじが書かきしるされたのです。5:25 そのしるされた文字もじはこうです。メネ、メネ、テケル、ウパルシン。5:26 その事ことの解とき明あかしはこうです、メネは神かみがあなたの治世ちせいを数かぞえて、これをその終おわりに至いたらせたことをいうのです。5:27 テケルは、あなたがはかりで量はかられて、その量りょうの足たりないことがあらわれたことをいうのです。5:28 ペレスは、あなたの国くにが分わかたれて、メデアとペルシャの人々ひとびとに与あたえられることをいうのです」。 5:29 そこでベルシャザルは命めいじて、ダニエルに紫むらさきの衣ころもを着きせ、金きんの鎖くさりをその首くびにかけさせ、彼かれについて布告ふこくを発はっして、彼かれは国くにの第だい三のつかさであると言いわせた。 5:30 カルデヤびとの王おうベルシャザルは、その夜よるのうちに殺ころされ、5:31 メデアびとダリヨスが、その国くにを受うけた。この時ときダリヨスは、おおよそ六十二歳さいであった。 第6章 6:1 ダリヨスは全国ぜんこくを治おさめるために、その国くにに百二十人にんの総督そうとくを立たてることをよしとし、6:2 また彼かれらの上うえに三人にんの総監そうかんを立たてた。ダニエルはそのひとりであった。これは総督そうとくたちをして、この三人にんの前まえに、その職務しょくむに関かんする報告ほうこくをさせて、王おうに損失そんしつの及およぶことのないようにするためであった。6:3 ダニエルは彼かれのうちにあるすぐれた霊れいのゆえに、他たのすべての総監そうかんおよび総督そうとくたちにまさっていたので、王おうは彼かれを立たてて全国ぜんこくを治おさめさせようとした。6:4 そこで総監そうかんおよび総督そうとくらは、国事こくじについてダニエルを訴うったえるべき口実こうじつを得えようとしたが、訴うったえるべきなんの口実こうじつも、なんのとがをも見みいだすことができなかった。それは彼かれが忠信ちゅうしんな人ひとであって、その身みになんのあやまちも、とがも見みいだされなかったからである。6:5 そこでその人々ひとびとは言いった、「われわれはダニエルの神かみの律法りっぽうに関かんして、彼かれを訴うったえる口実こうじつを得えるのでなければ、ついに彼かれを訴うったえることはできまい」と。 6:6 こうして総監そうかんと総督そうとくらは、王おうのもとに集あつまってきて、王おうに言いった、「ダリヨス王おうよ、どうかとこしえに生いきながらえられますように。6:7 国くにの総監そうかん、長官ちょうかんおよび総督そうとく、参議さんぎおよび知事ちじらは、相あいはかって、王おうが一つのおきてを立たて、一つの禁令きんれいを定さだめられるよう求もとめることになりました。王おうよ、それはこうです。すなわち今いまから三十日にちの間あいだは、ただあなたにのみ願ねがい事ごとをさせ、もしあなたをおいて、神かみまたは人ひとにこれをなす者ものがあれば、すべてその者ものを、ししの穴あなに投なげ入いれるというのです。6:8 それで王おうよ、その禁令きんれいを定さだめ、その文書ぶんしょに署名しょめいして、メデアとペルシャの変かわることのない法律ほうりつのごとく、これを変かえることのできないようにしてください」。6:9 そこでダリヨス王おうは、その禁令きんれいの文書ぶんしょに署名しょめいした。 6:10 ダニエルは、その文書ぶんしょの署名しょめいされたことを知しって家いえに帰かえり、二階かいのへやの、エルサレムに向むかって窓まどの開ひらかれた所ところで、以前いぜんからおこなっていたように、一日にちに三度どずつ、ひざをかがめて神かみの前まえに祈いのり、かつ感謝かんしゃした。6:11 そこでその人々ひとびとは集あつまってきて、ダニエルがその神かみの前まえに祈いのり、かつ求もとめていることを見みたので、6:12 彼かれらは王おうの前まえにきて、王おうの禁令きんれいについて奏上そうじょうして言いった、「王おうよ、あなたは禁令きんれいに署名しょめいして、今いまから三十日にちの間あいだは、ただあなたにのみ願ねがい事ごとをさせ、もしあなたをおいて、神かみまたは人ひとに、これをなす者ものがあれば、すべてその者ものを、ししの穴あなに投なげ入いれると、定さだめられたではありませんか」。王おうは答こたえて言いった、「その事ことは確たしかであって、メデアとペルシャの法律ほうりつのごとく、変かえることのできないものだ」。6:13 彼かれらは王おうの前まえに答こたえて言いった、「王おうよ、ユダから引ひいてきた捕囚ほしゅうのひとりである、かのダニエルは、あなたをも、あなたの署名しょめいされた禁令きんれいをも顧かえりみず、一日にちに三度どずつ、祈いのりをささげています」。 6:14 王おうはこの言葉ことばを聞きいて大おおいに憂うれえ、ダニエルを救すくおうと心こころを用もちい、日ひの入いるまで、彼かれを救すくい出だすことに努つとめた。6:15 時ときにその人々ひとびとは、また王おうのもとに集あつまってきて、王おうに言いった、「王おうよ、メデアとペルシャの法律ほうりつによれば、王おうの立たてた禁令きんれい、または、おきては変かえることのできないものであることを、ご承知しょうちください」。 6:16 そこで王おうは命令めいれいを下くだしたので、ダニエルは引ひき出だされて、ししの穴あなに投なげ入いれられた。王おうはダニエルに言いった、「どうか、あなたの常つねに仕つかえる神かみが、あなたを救すくわれるように」。6:17 そして一つの石いしを持もってきて、穴あなの口くちをふさいだので、王おうは自分じぶんの印いんと、大臣だいじんらの印いんをもって、これに封印ふういんした。これはダニエルの処置しょちを変かえることのないようにするためであった。6:18 こうして王おうはその宮殿きゅうでんに帰かえったが、その夜よるは食しょくをとらず、また、そばめたちを召めし寄よせず、全まったく眠ねむることもしなかった。 6:19 こうして王おうは朝あさまだき起おきて、ししの穴あなへ急いそいで行いったが、6:20 ダニエルのいる穴あなに近ちかづいたとき、悲かなしげな声こえをあげて呼よばわり、ダニエルに言いった、「生いける神かみのしもべダニエルよ、あなたが常つねに仕つかえている神かみはあなたを救すくって、ししの害がいを免まぬかれさせることができたか」。6:21 ダニエルは王おうに言いった、「王おうよ、どうか、とこしえに生いきながらえられますように。6:22 わたしの神かみはその使つかいをおくって、ししの口くちを閉とざされたので、ししはわたしを害がいしませんでした。これはわたしに罪つみのないことが、神かみの前まえに認みとめられたからです。王おうよ、わたしはあなたの前まえにも、何なにも悪わるい事ことをしなかったのです」。6:23 そこで王おうは大おおいに喜よろこび、ダニエルを穴あなの中なかから出だせと命めいじたので、ダニエルは穴あなの中なかから出だされたが、その身みになんの害がいをも受うけていなかった。これは彼かれが自分じぶんの神かみを頼たのみとしていたからである。6:24 王おうはまた命令めいれいを下くだして、ダニエルをあしざまに訴うったえた人々ひとびとを引ひいてこさせ、彼かれらをその妻子さいしと共ともに、ししの穴あなに投なげ入いれさせた。彼かれらが穴あなの底そこに達たっしないうちに、ししは彼かれらにとびかかって、その骨ほねまでもかみ砕くだいた。 6:25 そこでダリヨス王おうは全ぜん世界せかいに住すむ諸民しょみん、諸しょ族ぞく、諸国しょこく語ごの者ものに詔みことのりを書かきおくって言いった、「どうか、あなたがたに平安へいあんが増ますように。6:26 わたしは命令めいれいを出だす。わが国くにのすべての州しゅうの人ひとは、皆みなダニエルの神かみを、おののき恐おそれなければならない。 彼かれは生いける神かみであって、とこしえに変かわることなく、その国くには滅ほろびず、その主権しゅけんは終おわりまで続つづく。6:27 彼かれは救すくいを施ほどこし、助たすけをなし、天てんにおいても、地ちにおいても、しるしと奇跡きせきとをおこない、ダニエルを救すくって、ししの力ちからをのがれさせたかたである」。6:28 こうして、このダニエルはダリヨスの世よと、ペルシャ人ひとクロスの世よにおいて栄さかえた。 第7章 7:1 バビロンの王おうベルシャザルの元年がんねんに、ダニエルは床とこにあって夢ゆめを見み、また脳のう中ちゅうに幻まぼろしを得えたので、彼かれはその夢ゆめをしるして、その事ことの大意たいいを述のべた。7:2 ダニエルは述のべて言いった、「わたしは夜よるの幻まぼろしのうちに見みた。見みよ、天てんの四方しほうからの風かぜが大海おおうみをかきたてると、7:3 四つの大おおきな獣けものが海うみからあがってきた。その形かたちは、おのおの異ことなり、7:4 第だい一のものは、ししのようで、わしの翼つばさをもっていたが、わたしが見みていると、その翼つばさは抜ぬきとられ、また地ちから起おこされて、人ひとのように二本ほんの足あしで立たたせられ、かつ人ひとの心こころが与あたえられた。7:5 見みよ、第だい二の獣けものは熊くまのようであった。これはそのからだの一方いっぽうをあげ、その口くちの歯はの間あいだに、三本ぼんの肋骨ろっこつをくわえていたが、これに向むかって『起おきあがって、多おおくの肉にくを食くらえ』と言いう声こえがあった。7:6 その後のちわたしが見みたのは、ひょうのような獣けもので、その背せには鳥とりの翼つばさが四つあった。またこの獣けものには四つの頭あたまがあり、主権しゅけんが与あたえられた。7:7 その後のちわたしが夜よるの幻まぼろしのうちに見みた第だい四の獣けものは、恐おそろしい、ものすごい、非常ひじょうに強つよいもので、大おおきな鉄てつの歯はがあり、食くらい、かつ、かみ砕くだいて、その残のこりを足あしで踏ふみつけた。これは、その前まえに出でたすべての獣けものと違ちがって、十の角つのを持もっていた。7:8 わたしが、その角つのを注意ちゅういして見みていると、その中なかに、また一つの小ちいさい角つのが出でてきたが、この小ちいさい角つののために、さきの角つののうち三つがその根ねから抜ぬけ落おちた。見みよ、この小ちいさい角つのには、人ひとの目めのような目めがあり、また大おおきな事ことを語かたる口くちがあった。7:9 わたしが見みていると、 もろもろのみ座ざが設もうけられて、日ひの老おいたる者ものが座ざしておられた。その衣ころもは雪ゆきのように白しろく、頭あたまの毛けは混まじりもののない羊ひつじの毛けのようであった。そのみ座ざは火ひの炎ほのおであり、その車輪しゃりんは燃もえる火ひであった。7:10 彼かれの前まえから、ひと筋すじの火ひの流ながれが出でてきた。彼かれに仕つかえる者ものは千々せんせん、彼かれの前まえにはべる者ものは万々まんまん、審判しんぱんを行おこなう者ものはその席せきに着つき、かずかずの書かき物ものが開ひらかれた。7:11 わたしは、その角つのの語かたる大おおいなる言葉ことばの声こえがするので見みていたが、わたしが見みている間あいだにその獣けものは殺ころされ、そのからだはそこなわれて、燃もえる火ひに投なげ入いれられた。7:12 その他たの獣けものはその主権しゅけんを奪うばわれたが、その命いのちは、時ときと季節きせつの来くるまで延のばされた。7:13 わたしはまた夜よるの幻まぼろしのうちに見みていると、 見みよ、人ひとの子このような者ものが、天てんの雲くもに乗のってきて、日ひの老おいたる者もののもとに来くると、その前まえに導みちびかれた。7:14 彼かれに主権しゅけんと光栄こうえいと国くにとを賜たまい、諸民しょみん、諸しょ族ぞく、諸国しょこく語ごの者ものを彼かれに仕つかえさせた。その主権しゅけんは永遠えいえんの主権しゅけんであって、なくなることがなく、その国くには滅ほろびることがない。7:15 そこで、われダニエル、わがうちなる霊れいは憂うれえ、わが脳中のうちゅうの幻まぼろしは、わたしを悩なやましたので、7:16 わたしは、そこに立たっている者もののひとりに近寄ちかよって、このすべての事ことの真意しんいを尋たずねた。するとその者ものは、わたしにこの事ことの解とき明あかしを告つげ知しらせた。7:17 『この四つの大おおきな獣けものは、地ちに起おこらんとする四人にんの王おうである。7:18 しかしついには、いと高たかき者ものの聖徒せいとが国くにを受うけ、永遠えいえんにその国くにを保たもって、世々よよかぎりなく続つづく』。 7:19 そこでわたしは、さらに第だい四の獣けものの真意しんいを知しろうとした。その獣けものは他たの獣けものと異ことなって、はなはだ恐おそろしく、その歯はは鉄てつ、そのつめは青銅せいどうであって、食くらい、かつ、かみ砕くだいて、その残のこりを足あしで踏ふみつけた。7:20 この獣けものの頭あたまには、十の角つのがあったが、そのほかに一つの角つのが出でてきたので、この角つののために、三つの角つのが抜ぬけ落おちた。この角つのには目めがあり、また大おおきな事ことを語かたる口くちがあって、その形かたちは、その同類どうるいのものよりも大おおきく見みえた。7:21 わたしが見みていると、この角つのは聖徒せいとと戦たたかって、彼かれらに勝かったが、7:22 ついに日ひの老おいたる者ものがきて、いと高たかき者ものの聖徒せいとのために審判しんぱんをおこなった。そしてその時ときがきて、この聖徒せいとたちは国くにを受うけた。 7:23 彼かれはこう言いった、『第だい四の獣けものは地上ちじょうの第だい四の国くにである。これはすべての国くにと異ことなって、全ぜん世界せかいを併合へいごうし、これを踏ふみつけ、かつ打うち砕くだく。7:24 十の角つのはこの国くにから起おこる十人にんの王おうである。その後のちにまたひとりの王おうが起おこる。彼かれは先さきの者ものと異ことなり、かつ、その三人にんの王おうを倒たおす。7:25 彼かれは、いと高たかき者ものに敵てきして言葉ことばを出だし、かつ、いと高たかき者ものの聖徒せいとを悩なやます。彼かれはまた時ときと律法りっぽうとを変かえようと望のぞむ。聖徒せいとはひと時ときと、ふた時ときと、半時はんときの間あいだ、彼かれの手てにわたされる。7:26 しかし審判しんぱんが行おこなわれ、彼かれの主権しゅけんは奪うばわれて、永遠えいえんに滅ほろび絶たやされ、7:27 国くにと主権しゅけんと全ぜん天下てんかの国々くにぐにの権威けんいとは、いと高たかき者ものの聖徒せいとたる民たみに与あたえられる。彼かれらの国くには永遠えいえんの国くにであって、諸国しょこくの者ものはみな彼かれらに仕つかえ、かつ従したがう』。7:28 その事ことはここで終おわった。われダニエルは、これを思おもいまわして、非常ひじょうに悩なやみ、顔色かおいろも変かわった。しかし、わたしはこの事ことを心こころに留とめた」。 第8章 8:1 われダニエルは先さきに幻まぼろしを見みたが、後のちまたベルシャザル王おうの治世ちせいの第だい三年ねんに、一つの幻まぼろしがわたしに示しめされた。8:2 その幻まぼろしを見みたのは、エラム州しゅうの首都しゅとスサにいた時ときであって、ウライ川かわのほとりにおいてであった。8:3 わたしが目めをあげて見みると、川かわの岸きしに一匹ぴきの雄羊おひつじが立たっていた。これに二つの角つのがあって、その角つのは共ともに長ながかったが、一つの角つのは他たの角つのよりも長ながかった。その長ながいのは後のちに伸のびたのである。8:4 わたしが見みていると、その雄羊おひつじは、西にし、北きた、南みなみにむかって突撃とつげきしたが、これに当あたることのできる獣けものは一匹ぴきもなく、またその手てから救すくい出だすことのできるものもなかった。これはその心こころのままにふるまい、みずから高たかぶっていた。 8:5 わたしがこれを考かんがえ、見みていると、一匹ぴきの雄おやぎが、全ぜん地ちのおもてを飛とびわたって西にしからきたが、その足あしは土つちを踏ふまなかった。このやぎには、目めの間あいだに著いちじるしい一つの角つのがあった。8:6 この者ものは、さきにわたしが川かわの岸きしに立たっているのを見みた、あの二つの角つののある雄羊おひつじにむかってきて、激はげしく怒いかってこれに走はしり寄よった。8:7 わたしが見みていると、それが雄羊おひつじに近寄ちかよるや、これにむかって怒いかりを発はっし、雄羊おひつじを撃うって、その二つの角つのを砕くだいた。雄羊おひつじには、これに当あたる力ちからがなかったので、やぎは雄羊おひつじを地ちに打うち倒たおして踏ふみつけた。また、その雄羊おひつじを、やぎの力ちからから救すくいうる者ものがなかった。8:8 こうして、その雄おやぎは、はなはだしく高たかぶったが、その盛さかんになった時とき、あの大おおきな角つのが折おれて、その代かわりに四つの著いちじるしい角つのが生しょうじ、天てんの四方しほうに向むかった。 8:9 その角つのの一つから、一つの小ちいさい角つのが出でて、南みなみに向むかい、東ひがしに向むかい、麗うるわしい地ちに向むかって、はなはだしく大おおきくなり、8:10 天てんの衆しゅう群ぐんに及およぶまでに大おおきくなり、星ほしの衆しゅう群ぐんのうちの数個すうこを地ちに投なげ下くだして、これを踏ふみつけ、8:11 またみずから高たかぶって、その衆しゅう群ぐんの主しゅに敵てきし、その常供じょうくの燔祭はんさいを取とり除のぞき、かつその聖所せいじょを倒たおした。8:12 そしてその衆しゅう群ぐんは、罪つみによって、常供じょうくの燔祭はんさいと共ともに、これにわたされた。その角つのはまた真理しんりを地ちに投なげうち、ほしいままにふるまって、みずから栄さかえた。8:13 それから、わたしはひとりの聖者せいじゃの語かたっているのを聞きいた。またひとりの聖者せいじゃがあって、その語かたっている聖者せいじゃにむかって言いった、「常供じょうくの燔祭はんさいと、荒あらすことをなす罪つみと、聖所せいじょとその衆しゅう群ぐんがわたされて、足あしの下したに踏ふみつけられることについて、幻まぼろしにあらわれたことは、いつまでだろうか」と。8:14 彼かれは言いった、「二千三百の夕ゆうと朝あさの間あいだである。そして聖所せいじょは清きよめられてその正ただしい状態じょうたいに復ふくする」。 8:15 われダニエルはこの幻まぼろしを見みて、その意味いみを知しろうと求もとめていた時とき、見みよ、人ひとのように見みえる者ものが、わたしの前まえに立たった。8:16 わたしはウライ川かわの両りょう岸がんの間あいだから人ひとの声こえが出でて、呼よばわるのを聞きいた、「ガブリエルよ、この幻まぼろしをその人ひとに悟さとらせよ」。8:17 すると彼かれはわたしの立たっている所ところにきた。彼かれがきたとき、わたしは恐おそれて、ひれ伏ふした。しかし、彼かれはわたしに言いった、「人ひとの子こよ、悟さとりなさい。この幻まぼろしは終おわりの時ときにかかわるものです」。 8:18 彼かれがわたしに語かたっていた時とき、わたしは地ちにひれ伏ふして、深ふかい眠ねむりに陥おちいったが、彼かれはわたしに手てを触ふれ、わたしを立たたせて、8:19 言いった、「見みよ、わたしは憤いきどおりの終おわりの時ときに起おこるべきことを、あなたに知しらせよう。それは定さだめられた終おわりの時ときにかかわるものであるから。8:20 あなたが見みた、あの二つの角つののある雄羊おひつじは、メデアとペルシャの王おうです。8:21 また、かの雄おやぎはギリシヤの王おうです、その目めの間あいだの大おおきな角つのは、その第だい一の王おうです。8:22 またその角つのが折おれて、その代かわりに四つの角つのが生しょうじたのは、その民たみから四つの国くにが起おこるのです。しかし、第だい一の王おうのような勢力せいりょくはない。8:23 彼かれらの国くにの終おわりの時ときになり、罪つみびとの罪つみが満みちるに及およんで、ひとりの王おうが起おこるでしょう。その顔かおは猛悪もうあくで、彼かれはなぞを解とき、8:24 その勢力せいりょくは盛さかんであって、恐おそろしい破壊はかいをなし、そのなすところ成功せいこうして、有力ゆうりょくな人々ひとびとと、聖徒せいとである民たみを滅ほろぼすでしょう。8:25 彼かれは悪知恵わるぢえをもって、偽いつわりをその手てにおこない遂とげ、みずから心こころに高たかぶり、不意ふいに多おおくの人ひとを打うち滅ほろぼし、また君きみの君きみたる者ものに敵てきするでしょう。しかし、ついに彼かれは人手ひとでによらずに滅ほろぼされるでしょう。8:26 先さきに示しめされた朝夕あさゆうの幻まぼろしは真実しんじつです。しかし、あなたはその幻まぼろしを秘密ひみつにしておかなければならない。これは多おおくの日ひの後のちにかかわる事ことだから」。 8:27 われダニエルは疲つかれはてて、数日すうじつの間あいだ病やみわずらったが、後のち起おきて、王おうの事務じむを執とった。しかし、わたしはこの幻まぼろしの事ことを思おもって驚おどろいた。またこれを悟さとることができなかった。 第9章 9:1 メデアびとアハシュエロスの子こダリヨスが、カルデヤびとの王おうとなったその元年がんねん、9:2 すなわちその治世ちせいの第だい一年ねんに、われダニエルは主しゅが預言者よげんしゃエレミヤに臨のぞんで告つげられたその言葉ことばにより、エルサレムの荒廃こうはいの終おわるまでに経へねばならぬ年ねんの数かずは七十年ねんであることを、文書ぶんしょによって悟さとった。 9:3 それでわたしは、わが顔かおを主しゅなる神かみに向むけ、断食だんじきをなし、荒布あらぬのを着き、灰はいをかぶって祈いのり、かつ願ねがい求もとめた。9:4 すなわちわたしは、わが神かみ、主しゅに祈いのり、ざんげして言いった、「ああ、大おおいなる恐おそるべき神かみ、主しゅ、おのれを愛あいし、おのれの戒いましめを守まもる者もののために契約けいやくを保たもち、いつくしみを施ほどこされる者ものよ、9:5 われわれは罪つみを犯おかし、悪あくをおこない、よこしまなふるまいをなし、そむいて、あなたの戒いましめと、おきてを離はなれました。9:6 われわれはまた、あなたのしもべなる預言者よげんしゃたちが、あなたの名なをもって、われわれの王おうたち、君きみたち、先祖せんぞたち、および国くにのすべての民たみに告つげた言葉ことばに聞きき従したがいませんでした。9:7 主しゅよ、正義せいぎはあなたのものですが、恥はじはわれわれに加くわえられて、今日こんにちのような有様ありさまです。すなわちユダの人々ひとびと、エルサレムの住民じゅうみんおよび全ぜんイスラエルの者ものは、近ちかき者ものも、遠とおき者ものもみな、あなたが追おいやられたすべての国々くにぐにで恥はじをこうむりました。これは彼かれらがあなたにそむいて犯おかした罪つみによるのです。9:8 主しゅよ、恥はじはわれわれのもの、われわれの王おうたち、君きみたちおよび先祖せんぞたちのものです。これはわれわれがあなたにむかって罪つみを犯おかしたからです。9:9 あわれみと、ゆるしはわれわれの神かみ、主しゅのものです。これはわれわれが彼かれにそむいたからです。9:10 またわれわれの神かみ、主しゅのみ声こえに聞きき従したがわず、主しゅがそのしもべ預言者よげんしゃたちによって、われわれの前まえに賜たまわった律法りっぽうを行おこなわなかったからです。9:11 まことにイスラエルの人々ひとびとは皆みなあなたの律法りっぽうを犯おかし、離はなれ去さって、あなたのみ声こえに聞きき従したがわなかったので、神かみのしもべモーセの律法りっぽうにしるされたのろいと誓ちかいが、われわれの上うえに注そそぎかかりました。これはわれわれが神かみにむかって罪つみを犯おかしたからです。9:12 すなわち神かみは大おおいなる災わざわいをわれわれの上うえにくだして、さきにわれわれと、われわれを治おさめたつかさたちにむかって告つげられた言葉ことばを実行じっこうされたのです。あのエルサレムに臨のぞんだような事ことは、全ぜん天下てんかにいまだかつてなかった事ことです。9:13 モーセの律法りっぽうにしるされたように、この災わざわいはすべてわれわれに臨のぞみましたが、なおわれわれの神かみ、主しゅの恵めぐみを請こい求もとめることをせず、その不義ふぎを離はなれて、あなたの真理しんりを悟さとることをもしませんでした。9:14 それゆえ、主しゅはこれを心こころに留とめて、災わざわいをわれわれに下くだされたのです。われわれの神かみ、主しゅは、何事なにごとをされるにも、正ただしくあらせられます。ところが、われわれはそのみ声こえに聞きき従したがわなかったのです。9:15 われわれの神かみ、主しゅよ、あなたは強つよきみ手てをもって、あなたの民たみをエジプトの地ちから導みちびき出だして、今日こんにちのように、み名なをあげられました。われわれは罪つみを犯おかし、よこしまなふるまいをしました。9:16 主しゅよ、どうぞあなたが、これまで正ただしいみわざをなされたように、あなたの町まちエルサレム、あなたの聖せいなる山やまから、あなたの怒いかりと憤いきどおりとを取とり去さってください。これはわれわれの罪つみと、われわれの先祖せんぞの不義ふぎのために、エルサレムと、あなたの民たみが、われわれの周囲しゅういの者ものの物笑ものわらいとなったからです。9:17 それゆえ、われわれの神かみよ、しもべの祈いのりと願ねがいを聞きいてください。主しゅよ、あなたご自身じしんのために、あの荒あれたあなたの聖所せいじょに、あなたのみ顔かおを輝かがやかせてください。9:18 わが神かみよ、耳みみを傾かたむけて聞きいてください。目めを開ひらいて、われわれの荒あれたさまを見み、み名なをもってとなえられる町まちをごらんください。われわれがあなたの前まえに祈いのりをささげるのは、われわれの義ぎによるのではなく、ただあなたの大おおいなるあわれみによるのです。9:19 主しゅよ、聞きいてください。主しゅよ、ゆるしてください。主しゅよ、み心こころに留とめて、おこなってください。わが神かみよ、あなたご自身じしんのために、これを延のばさないでください。あなたの町まちと、あなたの民たみは、み名なをもってとなえられているからです」。 9:20 わたしがこう言いって祈いのり、かつわが罪つみとわが民たみイスラエルの罪つみをざんげし、わが神かみの聖せいなる山やまのために、わが神かみ、主しゅの前まえに願ねがいをしていたとき、9:21 すなわちわたしが祈いのりの言葉ことばを述のべていたとき、わたしが初はじめに幻まぼろしのうちに見みた、かの人ひとガブリエルは、すみやかに飛とんできて、夕ゆうの供そなえ物ものをささげるころ、わたしに近ちかづき、9:22 わたしに告つげて言いった、「ダニエルよ、わたしは今いまあなたに、知恵ちえと悟さとりを与あたえるためにきました。9:23 あなたが祈いのりを始はじめたとき、み言葉ことばが出でたので、それをあなたに告つげるためにきたのです。あなたは大おおいに愛あいせられている者ものです。ゆえに、このみ言葉ことばを考かんがえて、この幻まぼろしを悟さとりなさい。 9:24 あなたの民たみと、あなたの聖せいなる町まちについては、七十週しゅうが定さだめられています。これはとがを終おわらせ、罪つみに終おわりを告つげ、不義ふぎをあがない、永遠えいえんの義ぎをもたらし、幻まぼろしと預言者よげんしゃを封ふうじ、いと聖せいなる者ものに油あぶらを注そそぐためです。9:25 それゆえ、エルサレムを建たて直なおせという命令めいれいが出でてから、メシヤなるひとりの君きみが来くるまで、七週しゅうと六十二週しゅうあることを知しり、かつ悟さとりなさい。その間あいだに、しかも不安ふあんな時代じだいに、エルサレムは広場ひろばと街路がいろとをもって、建たて直なおされるでしょう。9:26 その六十二週しゅうの後のちにメシヤは断たたれるでしょう。ただし自分じぶんのためにではありません。またきたるべき君きみの民たみは、町まちと聖所せいじょとを滅ほろぼすでしょう。その終おわりは洪水こうずいのように臨のぞむでしょう。そしてその終おわりまで戦争せんそうが続つづき、荒廃こうはいは定さだめられています。9:27 彼かれは一週いっしゅうの間あいだ多おおくの者ものと、堅かたく契約けいやくを結むすぶでしょう。そして彼かれはその週しゅうの半なかばに、犠牲ぎせいと供そなえ物ものとを廃はいするでしょう。また荒あらす者ものが憎にくむべき者ものの翼つばさに乗のって来くるでしょう。こうしてついにその定さだまった終おわりが、その荒あらす者ものの上うえに注そそがれるのです」。 第10章 10:1 ペルシャの王おうクロスの第だい三年ねんに、ベルテシャザルと名なづけられたダニエルに、一つの言葉ことばが啓示けいじされたが、その言葉ことばは真実しんじつであり、大おおいなる戦たたかいを意味いみするものであった。彼かれはその言葉ことばに心こころを留とめ、その幻まぼろしを悟さとった。 10:2 そのころ、われダニエルは三週しゅうの間あいだ、悲かなしんでいた。10:3 すなわち三週間しゅうかんの全まったく満みちるまでは、うまい物ものを食たべず、肉にくと酒さけとを口くちにせず、また身みに油あぶらを塗ぬらなかった。10:4 正月しょうがつの二十四日かに、わたしがチグリスという大川おおかわの岸きしに立たっていたとき、10:5 目めをあげて望のぞみ見みると、ひとりの人ひとがいて、亜麻あま布ぬのの衣ころもを着き、ウパズの金きんの帯おびを腰こしにしめていた。10:6 そのからだは緑柱石りょくちゅうせきのごとく、その顔かおは電光でんこうのごとく、その目めは燃もえるたいまつのごとく、その腕うでと足あしは、みがいた青銅せいどうのように輝かがやき、その言葉ことばの声こえは、群衆ぐんしゅうの声こえのようであった。10:7 この幻まぼろしを見みた者ものは、われダニエルのみであって、わたしと共ともにいた人々ひとびとは、この幻まぼろしを見みなかったが、彼かれらは大おおいにおののいて、逃にげかくれた。10:8 それでわたしひとり残のこって、この大おおいなる幻まぼろしを見みたので、力ちからが抜ぬけ去さり、わが顔かおの輝かがやきは恐おそろしく変かわって、全まったく力ちからがなくなった。10:9 わたしはその言葉ことばの声こえを聞きいたが、その言葉ことばの声こえを聞きいたとき、顔かおを伏ふせ、地ちにひれ伏ふして、深ふかい眠ねむりに陥おちいった。 10:10 見みよ、一つの手てがあって、わたしに触ふれたので、わたしは震ふるえながらひざまずき、手てをつくと、10:11 彼かれはわたしに言いった、「大おおいに愛あいせられる人ひとダニエルよ、わたしがあなたに告つげる言葉ことばに心こころを留とめ、立たちあがりなさい。わたしは今いまあなたのもとにつかわされたのです」。彼かれがこの言葉ことばをわたしに告つげているとき、わたしは震ふるえながら立たちあがった。10:12 すると彼かれはわたしに言いった、「ダニエルよ、恐おそれるに及およばない。あなたが悟さとろうと心こころをこめ、あなたの神かみの前まえに身みを悩なやましたその初はじめの日ひから、あなたの言葉ことばは、すでに聞きかれたので、わたしは、あなたの言葉ことばのゆえにきたのです。10:13 ペルシャの国くにの君きみが、二十一日にちの間あいだわたしの前まえに立たちふさがったが、天使てんしの長ちょうのひとりであるミカエルがきて、わたしを助たすけたので、わたしは、彼かれをペルシャの国くにの君きみと共ともに、そこに残のこしておき、10:14 末すえの日ひに、あなたの民たみに臨のぞまんとする事ことを、あなたに悟さとらせるためにきたのです。この幻まぼろしは、なおきたるべき日ひにかかわるものです」。 10:15 彼かれがこれらの言葉ことばを、わたしに述のべていたとき、わたしは、地ちにひれ伏ふして黙だまっていたが、10:16 見みよ、人ひとの子このような者ものが、わたしのくちびるにさわったので、わたしは口くちを開ひらき、わが前まえに立たっている者ものに語かたって言いった、「わが主しゅよ、この幻まぼろしによって、苦くるしみがわたしに臨のぞみ、全まったく力ちからを失うしないました。10:17 わが主しゅのしもべは、どうしてわが主しゅと語かたることができましょう。わたしは全まったく力ちからを失うしない、息いきも止とまるばかりです」。 10:18 人ひとの形かたちをした者ものは、再ふたたびわたしにさわり、わたしを力ちからづけて、10:19 言いった、「大おおいに愛あいせられる人ひとよ、恐おそれるには及およばない。安心あんしんしなさい。心こころを強つよくし、勇気ゆうきを出だしなさい」。彼かれがこう言いったとき、わたしは力ちからづいて言いった、「わが主しゅよ、語かたってください。あなたは、わたしに力ちからをつけてくださったから」。10:20 そこで彼かれは言いった、「あなたは、わたしがなんのためにきたかを知しっていますか。わたしは、今いま帰かえっていって、ペルシャの君きみと戦たたかおうとしているのです。彼かれとの戦たたかいがすむと、ギリシヤの君きみがあらわれるでしょう。10:21 しかしわたしは、まず真理しんりの書しょにしるされている事ことを、あなたに告つげよう。わたしを助たすけて、彼かれらと戦たたかう者ものは、あなたがたの君きみミカエルのほかにはありません。 第11章 11:1 わたしはまたメデアびとダリヨスの元年がんねんに立たって彼かれを強つよめ、彼かれを力ちからづけたことがあります。 11:2 わたしは今いまあなたに真理しんりを示しめそう。見みよ、ペルシャになお三人にんの王おうが起おこるでしょう。その第だい四の者ものは、他たのすべての者ものにまさって富とみ、その富とみによって強つよくなったとき、彼かれはすべてのものを動員どういんして、ギリシヤの国くにを攻せめます。11:3 またひとりの勇いさましい王おうが起おこり、大おおいなる権力けんりょくをもって世よを治おさめ、その意いのままに事ことをなすでしょう。11:4 彼かれが強つよくなった時とき、その国くには破やぶられ、天てんの四方しほうに分わかたれます。それは彼かれの子孫しそんに帰きせず、また彼かれが治おさめたほどの権力けんりょくもなく、彼かれの国くには抜ぬき取とられて、これら以外いがいの者ものどもに帰きするでしょう。 11:5 南みなみの王おうは強つよくなります。しかしその将軍しょうぐんのひとりが、彼かれにまさって強つよくなり、権力けんりょくをふるいます。その権力けんりょくは、大おおいなる権力けんりょくです。11:6 年としを経へて後のち、彼かれらは縁組えんぐみをなし、南みなみの王おうの娘むすめが、北きたの王おうにきて、和親わしんをはかります。しかしその女おんなは、その腕うでの力ちからを保たもつことができず、またその王おうも、その子こも立たつことができません。その女おんなと、その従者じゅうしゃと、その子こおよびその女おんなを獲えた者ものとは、わたされるでしょう。 11:7 そのころ、この女おんなの根ねから、一つの芽めが起おこって彼かれに代かわり、北きたの王おうの軍勢ぐんぜいにむかってきて、その城しろに討うち入いり、これを攻せめて勝かつでしょう。11:8 彼かれはまた彼かれらの神々かみがみ、鋳い像ぞうおよび金銀きんぎんの貴重きちょうな器物うつわものを、エジプトに携たずさえ去さり、そして数年すうねんの間あいだ、北きたの王おうを討うつことを控ひかえます。11:9 その後のち、北きたの王おうは、南みなみの王おうの国くにに討うち入はいるが、自分じぶんの国くにに帰かえるでしょう。 11:10 その子こらはまた憤激ふんげきして、あまたの大軍たいぐんを集あつめ、進すすんで行いって、みなぎりあふれ、通とおり過すぎるが、また行いって、その城しろにまで攻せめ寄よせるでしょう。11:11 そこで南みなみの王おうは、大おおいに怒いかり、出でてきて北きたの王おうと戦たたかいます。彼かれは大軍たいぐんを起おこすけれども、その軍ぐんは相手あいての手てにわたされるでしょう。11:12 彼かれがその軍ぐんを打うち破やぶったとき、その心こころは高たかぶり、数すう万まん人にんを倒たおします。しかし、勝かつことはありません。11:13 それは北きたの王おうがまた初はじめよりも大おおいなる軍ぐんを起おこし、数年すうねんの後のち、大おおいなる軍勢ぐんぜいと多おおくの軍需ぐんじゅ品ひんとをもって、攻せめて来くるからです。 11:14 そのころ多おおくの者ものが起おこって、南みなみの王おうに敵てきします。またあなたの民たみのうちのあらくれ者ものが、みずから高たかぶって事ことをなし、幻まぼろしを成就じょうじゅしようとするが失敗しっぱいするでしょう。11:15 こうして北きたの王おうがきて、塁るいを築きずき、堅固けんごな町まちを取とるが、南みなみの王おうの力ちからは、これに立たち向むかうことができず、またそのえり抜ぬきの民たみも、これに立たち向むかう力ちからがありません。11:16 これに攻せめて来くる者ものは、その心こころのままに事ことをなし、その前まえに立たち向むかうことのできる者ものはなく、彼かれは麗うるわしい地ちに立たち、その地ちは全まったく彼かれのために荒あらされます。11:17 彼かれは全国ぜんこくの力ちからをもって討うち入はいろうと、その顔かおを向むけるが、相手あいてと仲直なかなおりをし、その娘むすめを与あたえて、その国くにを取とろうとします。しかし、その事ことは成ならず、また彼かれの利益りえきにはならないでしょう。11:18 その後のち、彼かれは顔かおを海沿うみぞいの国々くにぐにに向むけて、その多おおくのものを取とります。しかし、ひとりの大将たいしょうがあって、彼かれが与あたえた恥辱ちじょくをそそぎ、その恥辱ちじょくを彼かれの上うえに返かえします。11:19 こうして彼かれは、その顔かおを自分じぶんの国くにの要害ようがいに向むけるが、彼かれはつまずき倒たおれて消きえうせるでしょう。 11:20 彼かれに代かわって起おこる者ものは、栄光えいこうの国くにに人ひとをつかわして、租税そぜいを取とり立たてさせるでしょう。しかし彼かれは、怒いかりにも戦たたかいにもよらず、数日すうじつのうちに滅ほろぼされます。11:21 彼かれに代かわって起おこる者ものは、卑いやしむべき者ものであって、彼かれには、王おうの尊厳そんげんが与あたえられず、彼かれは不意ふいにきて、巧言こうげんをもって国くにを獲えるでしょう。11:22 洪水こうずいのような軍勢ぐんぜいは、彼かれの前まえに押おし流ながされて敗やぶられ、契約けいやくの君きみたる者ものもまた敗やぶられるでしょう。11:23 彼かれは、これと同盟どうめいを結むすんで後のち、偽いつわりのおこないをなし、わずかな民たみをもって強つよくなり、11:24 不意ふいにその州しゅうの最もっとも肥こえた所ところに攻せめ入いり、その父ちちも、その父ちちの父ちちもしなかった事ことをおこない、その奪うばった物もの、かすめた物ものおよび財宝ざいほうを、人々ひとびとの中なかに散ちらすでしょう。彼かれはまた計略けいりゃくをめぐらして、堅固けんごな城しろを攻せめるが、ただし、それは時ときの至いたるまでです。11:25 彼かれはその勢力せいりょくと勇気ゆうきとを奮ふるい起おこし、大軍たいぐんを率ひきいて南みなみの王おうを攻せめます。南みなみの王おうもまたみずから奮ふるい、はなはだ大おおいなる強力きょうりょくな軍勢ぐんぜいをもって戦たたかいます。しかし、彼かれに対たいして、陰謀いんぼうをめぐらす者ものがあるので、これに立たち向むかうことができません。11:26 すなわち彼かれの食物しょくもつを食たべる者ものたちが、彼かれを滅ほろぼします。そして、その軍勢ぐんぜいは押おし流ながされて、多おおくの者ものが倒たおれ死しぬでしょう。11:27 このふたりの王おうは、害がいを与あたえようと心こころにはかり、ひとつ食卓しょくたくに共ともに食しょくして、偽いつわりを語かたるが、それは成功せいこうしません。終おわりはなお定さだまった時ときの来くるまでこないからです。11:28 彼かれは大おおいなる財宝ざいほうをもって、自分じぶんの国くにに帰かえるでしょう。しかし、彼かれの心こころは聖せいなる契約けいやくにそむき、ほしいままに事ことをなして、自分じぶんの国くにに帰かえります。 11:29 定さだまった時ときになって、彼かれはまた南みなみに討うち入いります。しかし、この時ときは前まえの時ときのようではありません。11:30 それはキッテムの船ふねが、彼かれに立たち向むかって来くるので、彼かれは脅おびやかされて帰かえり、聖せいなる契約けいやくに対たいして憤いきどおり、事ことを行おこなうでしょう。彼かれは帰かえっていって、聖せいなる契約けいやくを捨すてる者ものを顧かえりみ用もちいるでしょう。11:31 彼かれから軍勢ぐんぜいが起おこって、神殿しんでんと城郭じょうかくを汚けがし、常供じょうくの燔祭はんさいを取とり除のぞき、荒あらす憎にくむべきものを立たてるでしょう。11:32 彼かれは契約けいやくを破やぶる者ものどもを、巧言こうげんをもってそそのかし、そむかせるが、自分じぶんの神かみを知しる民たみは、堅かたく立たって事ことを行おこないます。11:33 民たみのうちの賢かしこい人々ひとびとは、多おおくの人ひとを悟さとりに至いたらせます。それでも、彼かれらはしばらくの間あいだ、やいばにかかり、火ひに焼やかれ、捕とらわれ、かすめられなどして倒たおれます。11:34 その倒たおれるとき、彼かれらは少すこしの助たすけを獲えます。また多おおくの人ひとが、巧言こうげんをもって彼かれらにくみするでしょう。11:35 また賢かしこい者もののうちのある者ものは、終おわりの時ときまで、自分じぶんを練ねり、清きよめ、白しろくするために倒たおれるでしょう。終おわりはなお定さだまった時ときの来くるまでこないからです。 11:36 この王おうは、その心こころのままに事ことをおこない、すべての神かみを越こえて、自分じぶんを高たかくし、自分じぶんを大おおいにし、神々かみがみの神かみたる者ものにむかって、驚おどろくべき事ことを語かたり、憤いきどおりのやむ時ときまで栄さかえるでしょう。これは定さだめられた事ことが成就じょうじゅするからです。11:37 彼かれはその先祖せんぞの神々かみがみを顧かえりみず、また婦人ふじんの好このむ者ものも、いかなる神かみをも顧かえりみないでしょう。彼かれはすべてにまさって、自分じぶんを大おおいなる者ものとするからです。11:38 彼かれはこれらの者ものの代かわりに、要害ようがいの神かみをあがめ、金きん、銀ぎん、宝石ほうせき、および宝物たからものをもって、その先祖せんぞたちの知しらなかった神かみをあがめ、11:39 異邦いほうの神かみの助たすけによって、最もっとも強固きょうこな城しろにむかって、事ことをなすでしょう。そして彼かれを認みとめる者ものには、栄誉えいよを増まし与あたえ、これに多おおくの人ひとを治おさめさせ、賞与しょうよとして土地とちを分わけ与あたえるでしょう。 11:40 終おわりの時ときになって、南みなみの王おうは彼かれと戦たたかいます。北きたの王おうは、戦車せんしゃと騎兵きへいと、多おおくの船ふねをもって、つむじ風かぜのように彼かれを攻せめ、国々くにぐににはいっていって、みなぎりあふれ、通とおり過すぎるでしょう。11:41 彼かれはまた麗うるわしい国くににはいります。また彼かれによって、多おおくの者ものが滅ほろぼされます。しかし、エドム、モアブ、アンモンびとらのうちのおもな者ものは、彼かれの手てから救すくわれましょう。11:42 彼かれは国々くにぐににその手てを伸のばし、エジプトの地ちも免まぬかれません。11:43 彼かれは金銀きんぎんの財宝ざいほうと、エジプトのすべての宝物たからものを支配しはいし、リビヤびと、エチオピヤびとは、彼かれのあとに従したがいます。11:44 しかし東ひがしと北きたからの知しらせが彼かれを驚おどろかし、彼かれは多おおくの人ひとを滅ほろぼし絶たやそうと、大おおいなる怒いかりをもって出でて行いきます。11:45 彼かれは海うみと麗うるわしい聖山せいざんとの間あいだに、天幕てんまくの宮殿きゅうでんを設もうけるでしょう。しかし、彼かれはついにその終おわりにいたり、彼かれを助たすける者ものはないでしょう。 第12章 12:1 その時ときあなたの民たみを守まもっている大おおいなる君きみミカエルが立たちあがります。また国くにが始はじまってから、その時ときにいたるまで、かつてなかったほどの悩なやみの時ときがあるでしょう。しかし、その時ときあなたの民たみは救すくわれます。すなわちあの書しょに名なをしるされた者ものは皆みな救すくわれます。12:2 また地ちのちりの中なかに眠ねむっている者もののうち、多おおくの者ものは目めをさますでしょう。そのうち永遠えいえんの生命せいめいにいたる者ものもあり、また恥はじと、限かぎりなき恥辱ちじょくをうける者ものもあるでしょう。12:3 賢かしこい者ものは、大空おおぞらの輝かがやきのように輝かがやき、また多おおくの人ひとを義ぎに導みちびく者ものは、星ほしのようになって永遠えいえんにいたるでしょう。12:4 ダニエルよ、あなたは終おわりの時ときまでこの言葉ことばを秘ひし、この書しょを封ふうじておきなさい。多おおくの者ものは、あちこちと探さぐり調しらべ、そして知識ちしきが増ますでしょう」。 12:5 そこで、われダニエルが見みていると、ほかにまたふたりの者ものがあって、ひとりは川かわのこなたの岸きしに、ひとりは川かわのかなたの岸きしに立たっていた。12:6 わたしは、かの亜麻あま布ぬのを着きて川かわの水みずの上うえにいる人ひとにむかって言いった、「この異常いじょうなできごとは、いつになって終おわるでしょうか」と。12:7 かの亜麻あま布ぬのを着きて、川かわの水みずの上うえにいた人ひとが、天てんに向むかって、その右みぎの手てと左ひだりの手てをあげ、永遠えいえんに生いける者ものをさして誓ちかい、それは、ひと時ときとふた時ときと半時はんときである。聖せいなる民たみを打うち砕くだく力ちからが消きえ去さる時ときに、これらの事ことはみな成就じょうじゅするだろうと言いうのを、わたしは聞きいた。12:8 わたしはこれを聞きいたけれども悟さとれなかった。わたしは言いった、「わが主しゅよ、これらの事ことの結末けつまつはどんなでしょうか」。 12:9 彼かれは言いった、「ダニエルよ、あなたの道みちを行いきなさい。この言葉ことばは終おわりの時ときまで秘ひし、かつ封ふうじておかれます。12:10 多おおくの者ものは、自分じぶんを清きよめ、自分じぶんを白しろくし、かつ練ねられるでしょう。しかし、悪わるい者ものは悪わるい事ことをおこない、ひとりも悟さとることはないが、賢かしこい者ものは悟さとるでしょう。 12:11 常供じょうくの燔祭はんさいが取すり除のぞかれ、荒あらす憎にくむべきものが立たてられる時ときから、千二百九十日にちが定さだめられている。12:12 待まっていて千三百三十五日にちに至いたる者ものはさいわいです。12:13 しかし、終おわりまであなたの道みちを行いきなさい。あなたは休やすみに入はいり、定さだめられた日ひの終おわりに立たって、あなたの分ぶんを受うけるでしょう」。
5:1 ベルシャザル王おうは、その大臣だいじん一千人にんのために、盛さかんな酒宴しゅえんを設もうけ、その一千人にんの前まえで酒さけを飲のんでいた。
5:2 酒さけが進すすんだとき、ベルシャザルは、その父ちちネブカデネザルがエルサレムの神殿しんでんから取とってきた金銀きんぎんの器うつわを持もってこいと命めいじた。王おうとその大臣だいじんたち、および王おうの妻つまとそばめらが、これをもって酒さけを飲のむためであった。
5:3 そこで人々ひとびとはそのエルサレムの神かみの宮みやすなわち神殿しんでんから取とってきた金銀きんぎんの器うつわを持もってきたので、王おうとその大臣だいじんたち、および王おうの妻つまとそばめらは、これをもって飲のんだ。
5:4 すなわち彼かれらは酒さけを飲のんで、金きん、銀ぎん、青銅せいどう、鉄てつ、木き、石いしなどの神々かみがみをほめたたえた。
5:5 すると突然とつぜん人ひとの手ての指ゆびがあらわれて、燭台しょくだいと相対あいたいする王おうの宮殿きゅうでんの塗ぬり壁かべに物ものを書かいた。王おうはその物ものを書かいた手ての先さきを見みた。
5:6 そのために王おうの顔色かおいろは変かわり、その心こころは思おもい悩なやんで乱みだれ、その腰こしのつがいはゆるみ、ひざは震ふるえて互たがいに打うちあった。
5:7 王おうは大声おおごえに呼よばわって、法ほう術じゅつ士し、カルデヤびと、占うらない師しらを召めしてこさせた。王おうはバビロンの知者ちしゃたちに告つげて言いった、「この文字もじを読よみ、その解とき明あかしをわたしに示しめす者ものには紫むらさきの衣ころもを着きせ、首くびに金きんの鎖くさりをかけさせて、国くにの第だい三のつかさとしよう」と。
5:8 王おうの知者ちしゃたちは皆みなはいってきた。しかしその文字もじを読よむことができず、またその解とき明あかしを王おうに示しめすことができなかったので、
5:9 ベルシャザル王おうは大おおいに思おもい悩なやんで、その顔色かおいろは変かわり、王おうの大臣だいじんたちも当惑とうわくした。
5:10 時ときに王妃おうひは王おうと大臣だいじんたちの言葉ことばを聞きいて、その宴会場えんかいじょうにはいってきた。そして王妃おうひは言いった、「王おうよ、どうか、とこしえに生いきながらえられますように。あなたは心こころに思おもい悩なやんではなりません。また顔色かおいろを変かえるには及およびません。
5:11 あなたの国くにには、聖せいなる神かみの霊れいのやどっているひとりの人ひとがおります。あなたの父ちちの代よに、彼かれは、明知めいち、分別ふんべつおよび神かみのような知恵ちえのあることをあらわしました。あなたの父ちちネブカデネザル王おうは、彼かれを立たてて、博士はかせ、法ほう術じゅつ士し、カルデヤびと、占うらない師しらの長ちょうとされました。
5:12 彼かれは、王おうがベルテシャザルという名なを与あたえたダニエルという者ものですが、このダニエルには、すぐれた霊れい、知識ちしき、分別ふんべつがあって、夢ゆめを解とき、なぞを解とき、難問なんもんを解とくことができます。ゆえにダニエルを召めしなさい。彼かれはその解とき明あかしを示しめすでしょう」。
5:13 そこでダニエルは王おうの前まえに召めされた。王おうはダニエルに言いった、「あなたは、わが父ちちの王おうが、ユダからひきつれてきたユダの捕囚ほしゅうのひとりなのか。
5:14 聞きくところによると、あなたのうちには、聖せいなる神かみの霊れいがやどっていて、明知めいち、分別ふんべつおよび非凡ひぼんな知恵ちえがあるそうだ。
5:15 わたしは、知者ちしゃ、法ほう術じゅつ士しらを、わが前まえに召めしよせて、この文字もじを読よませ、その解とき明あかしを示しめさせようとしたが、彼かれらは、この事ことの解とき明あかしを示しめすことができなかった。
5:16 しかしまた聞きくところによると、あなたは解とき明あかしをなし、かつ難問なんもんを解とくことができるそうだ。それで、あなたがもし、この文字もじを読よみ、その解とき明あかしをわたしに示しめすことができたなら、あなたに紫むらさきの衣ころもを着きせ、金きんの鎖くさりを首くびにかけさせて、この国くにの第だい三のつかさとしよう」。
5:17 ダニエルは王おうの前まえに答こたえて言いった、「あなたの賜物たまものは、あなたご自身じしんにとっておき、あなたの贈おくり物ものは、他人たにんにお与あたえください。それでも、わたしは王おうのためにその文字もじを読よみ、その解とき明あかしをお知おしらせいたしましょう。
5:18 王おうよ、いと高たかき神かみはあなたの父ちちネブカデネザルに国くにと権勢けんせいと、光栄こうえいと尊厳そんげんとを賜たまいました。
5:19 彼かれに権勢けんせいを賜たまわったことによって、諸民しょみん、諸しょ族ぞく、諸国しょこく語ごの者ものはみな、彼かれの前まえにおののき恐おそれました。彼かれは自分じぶんの欲ほっする者ものを殺ころし、自分じぶんの欲ほっする者ものを生いかし、自分じぶんの欲ほっする者ものを上あげ、自分じぶんの欲ほっする者ものを下くだしました。
5:20 しかし彼かれは心こころに高たかぶり、かたくなになり、ごうまんにふるまったので、王位おういからしりぞけられ、その光栄こうえいを奪うばわれ、
5:21 追おわれて世よの人ひとと離はなれ、その思おもいは獣けもののようになり、そのすまいは野のろばと共ともにあり、牛うしのように草くさを食くい、その身みは天てんからくだる露つゆにぬれ、こうしてついに彼かれは、いと高たかき神かみが人間にんげんの国くにを治おさめて、自分じぶんの意いのままに人ひとを立たてられるということを、知しるようになりました。
5:22 ベルシャザルよ、あなたは彼かれの子こであって、この事ことをことごとく知しっていながら、なお心こころを低ひくくせず、
5:23 かえって天てんの主しゅにむかって、みずから高たかぶり、その宮みやの器物うつわものをあなたの前まえに持もってこさせ、あなたとあなたの大臣だいじんたちと、あなたの妻つまとそばめたちは、それをもって酒さけを飲のみ、そしてあなたは見みることも、聞きくことも、物ものを知しることもできない金きん、銀ぎん、青銅せいどう、鉄てつ、木き、石いしの神々かみがみをほめたたえたが、あなたの命いのちをその手てににぎり、あなたのすべての道みちをつかさどられる神かみをあがめようとはしなかった。
5:24 それゆえ、彼かれの前まえからこの手てが出でてきて、この文字もじが書かきしるされたのです。
5:25 そのしるされた文字もじはこうです。メネ、メネ、テケル、ウパルシン。
5:26 その事ことの解とき明あかしはこうです、メネは神かみがあなたの治世ちせいを数かぞえて、これをその終おわりに至いたらせたことをいうのです。
5:27 テケルは、あなたがはかりで量はかられて、その量りょうの足たりないことがあらわれたことをいうのです。
5:28 ペレスは、あなたの国くにが分わかたれて、メデアとペルシャの人々ひとびとに与あたえられることをいうのです」。
5:29 そこでベルシャザルは命めいじて、ダニエルに紫むらさきの衣ころもを着きせ、金きんの鎖くさりをその首くびにかけさせ、彼かれについて布告ふこくを発はっして、彼かれは国くにの第だい三のつかさであると言いわせた。
5:30 カルデヤびとの王おうベルシャザルは、その夜よるのうちに殺ころされ、
5:31 メデアびとダリヨスが、その国くにを受うけた。この時ときダリヨスは、おおよそ六十二歳さいであった。
第6章 6:1 ダリヨスは全国ぜんこくを治おさめるために、その国くにに百二十人にんの総督そうとくを立たてることをよしとし、6:2 また彼かれらの上うえに三人にんの総監そうかんを立たてた。ダニエルはそのひとりであった。これは総督そうとくたちをして、この三人にんの前まえに、その職務しょくむに関かんする報告ほうこくをさせて、王おうに損失そんしつの及およぶことのないようにするためであった。6:3 ダニエルは彼かれのうちにあるすぐれた霊れいのゆえに、他たのすべての総監そうかんおよび総督そうとくたちにまさっていたので、王おうは彼かれを立たてて全国ぜんこくを治おさめさせようとした。6:4 そこで総監そうかんおよび総督そうとくらは、国事こくじについてダニエルを訴うったえるべき口実こうじつを得えようとしたが、訴うったえるべきなんの口実こうじつも、なんのとがをも見みいだすことができなかった。それは彼かれが忠信ちゅうしんな人ひとであって、その身みになんのあやまちも、とがも見みいだされなかったからである。6:5 そこでその人々ひとびとは言いった、「われわれはダニエルの神かみの律法りっぽうに関かんして、彼かれを訴うったえる口実こうじつを得えるのでなければ、ついに彼かれを訴うったえることはできまい」と。 6:6 こうして総監そうかんと総督そうとくらは、王おうのもとに集あつまってきて、王おうに言いった、「ダリヨス王おうよ、どうかとこしえに生いきながらえられますように。6:7 国くにの総監そうかん、長官ちょうかんおよび総督そうとく、参議さんぎおよび知事ちじらは、相あいはかって、王おうが一つのおきてを立たて、一つの禁令きんれいを定さだめられるよう求もとめることになりました。王おうよ、それはこうです。すなわち今いまから三十日にちの間あいだは、ただあなたにのみ願ねがい事ごとをさせ、もしあなたをおいて、神かみまたは人ひとにこれをなす者ものがあれば、すべてその者ものを、ししの穴あなに投なげ入いれるというのです。6:8 それで王おうよ、その禁令きんれいを定さだめ、その文書ぶんしょに署名しょめいして、メデアとペルシャの変かわることのない法律ほうりつのごとく、これを変かえることのできないようにしてください」。6:9 そこでダリヨス王おうは、その禁令きんれいの文書ぶんしょに署名しょめいした。 6:10 ダニエルは、その文書ぶんしょの署名しょめいされたことを知しって家いえに帰かえり、二階かいのへやの、エルサレムに向むかって窓まどの開ひらかれた所ところで、以前いぜんからおこなっていたように、一日にちに三度どずつ、ひざをかがめて神かみの前まえに祈いのり、かつ感謝かんしゃした。6:11 そこでその人々ひとびとは集あつまってきて、ダニエルがその神かみの前まえに祈いのり、かつ求もとめていることを見みたので、6:12 彼かれらは王おうの前まえにきて、王おうの禁令きんれいについて奏上そうじょうして言いった、「王おうよ、あなたは禁令きんれいに署名しょめいして、今いまから三十日にちの間あいだは、ただあなたにのみ願ねがい事ごとをさせ、もしあなたをおいて、神かみまたは人ひとに、これをなす者ものがあれば、すべてその者ものを、ししの穴あなに投なげ入いれると、定さだめられたではありませんか」。王おうは答こたえて言いった、「その事ことは確たしかであって、メデアとペルシャの法律ほうりつのごとく、変かえることのできないものだ」。6:13 彼かれらは王おうの前まえに答こたえて言いった、「王おうよ、ユダから引ひいてきた捕囚ほしゅうのひとりである、かのダニエルは、あなたをも、あなたの署名しょめいされた禁令きんれいをも顧かえりみず、一日にちに三度どずつ、祈いのりをささげています」。 6:14 王おうはこの言葉ことばを聞きいて大おおいに憂うれえ、ダニエルを救すくおうと心こころを用もちい、日ひの入いるまで、彼かれを救すくい出だすことに努つとめた。6:15 時ときにその人々ひとびとは、また王おうのもとに集あつまってきて、王おうに言いった、「王おうよ、メデアとペルシャの法律ほうりつによれば、王おうの立たてた禁令きんれい、または、おきては変かえることのできないものであることを、ご承知しょうちください」。 6:16 そこで王おうは命令めいれいを下くだしたので、ダニエルは引ひき出だされて、ししの穴あなに投なげ入いれられた。王おうはダニエルに言いった、「どうか、あなたの常つねに仕つかえる神かみが、あなたを救すくわれるように」。6:17 そして一つの石いしを持もってきて、穴あなの口くちをふさいだので、王おうは自分じぶんの印いんと、大臣だいじんらの印いんをもって、これに封印ふういんした。これはダニエルの処置しょちを変かえることのないようにするためであった。6:18 こうして王おうはその宮殿きゅうでんに帰かえったが、その夜よるは食しょくをとらず、また、そばめたちを召めし寄よせず、全まったく眠ねむることもしなかった。 6:19 こうして王おうは朝あさまだき起おきて、ししの穴あなへ急いそいで行いったが、6:20 ダニエルのいる穴あなに近ちかづいたとき、悲かなしげな声こえをあげて呼よばわり、ダニエルに言いった、「生いける神かみのしもべダニエルよ、あなたが常つねに仕つかえている神かみはあなたを救すくって、ししの害がいを免まぬかれさせることができたか」。6:21 ダニエルは王おうに言いった、「王おうよ、どうか、とこしえに生いきながらえられますように。6:22 わたしの神かみはその使つかいをおくって、ししの口くちを閉とざされたので、ししはわたしを害がいしませんでした。これはわたしに罪つみのないことが、神かみの前まえに認みとめられたからです。王おうよ、わたしはあなたの前まえにも、何なにも悪わるい事ことをしなかったのです」。6:23 そこで王おうは大おおいに喜よろこび、ダニエルを穴あなの中なかから出だせと命めいじたので、ダニエルは穴あなの中なかから出だされたが、その身みになんの害がいをも受うけていなかった。これは彼かれが自分じぶんの神かみを頼たのみとしていたからである。6:24 王おうはまた命令めいれいを下くだして、ダニエルをあしざまに訴うったえた人々ひとびとを引ひいてこさせ、彼かれらをその妻子さいしと共ともに、ししの穴あなに投なげ入いれさせた。彼かれらが穴あなの底そこに達たっしないうちに、ししは彼かれらにとびかかって、その骨ほねまでもかみ砕くだいた。 6:25 そこでダリヨス王おうは全ぜん世界せかいに住すむ諸民しょみん、諸しょ族ぞく、諸国しょこく語ごの者ものに詔みことのりを書かきおくって言いった、「どうか、あなたがたに平安へいあんが増ますように。6:26 わたしは命令めいれいを出だす。わが国くにのすべての州しゅうの人ひとは、皆みなダニエルの神かみを、おののき恐おそれなければならない。 彼かれは生いける神かみであって、とこしえに変かわることなく、その国くには滅ほろびず、その主権しゅけんは終おわりまで続つづく。6:27 彼かれは救すくいを施ほどこし、助たすけをなし、天てんにおいても、地ちにおいても、しるしと奇跡きせきとをおこない、ダニエルを救すくって、ししの力ちからをのがれさせたかたである」。6:28 こうして、このダニエルはダリヨスの世よと、ペルシャ人ひとクロスの世よにおいて栄さかえた。 第7章 7:1 バビロンの王おうベルシャザルの元年がんねんに、ダニエルは床とこにあって夢ゆめを見み、また脳のう中ちゅうに幻まぼろしを得えたので、彼かれはその夢ゆめをしるして、その事ことの大意たいいを述のべた。7:2 ダニエルは述のべて言いった、「わたしは夜よるの幻まぼろしのうちに見みた。見みよ、天てんの四方しほうからの風かぜが大海おおうみをかきたてると、7:3 四つの大おおきな獣けものが海うみからあがってきた。その形かたちは、おのおの異ことなり、7:4 第だい一のものは、ししのようで、わしの翼つばさをもっていたが、わたしが見みていると、その翼つばさは抜ぬきとられ、また地ちから起おこされて、人ひとのように二本ほんの足あしで立たたせられ、かつ人ひとの心こころが与あたえられた。7:5 見みよ、第だい二の獣けものは熊くまのようであった。これはそのからだの一方いっぽうをあげ、その口くちの歯はの間あいだに、三本ぼんの肋骨ろっこつをくわえていたが、これに向むかって『起おきあがって、多おおくの肉にくを食くらえ』と言いう声こえがあった。7:6 その後のちわたしが見みたのは、ひょうのような獣けもので、その背せには鳥とりの翼つばさが四つあった。またこの獣けものには四つの頭あたまがあり、主権しゅけんが与あたえられた。7:7 その後のちわたしが夜よるの幻まぼろしのうちに見みた第だい四の獣けものは、恐おそろしい、ものすごい、非常ひじょうに強つよいもので、大おおきな鉄てつの歯はがあり、食くらい、かつ、かみ砕くだいて、その残のこりを足あしで踏ふみつけた。これは、その前まえに出でたすべての獣けものと違ちがって、十の角つのを持もっていた。7:8 わたしが、その角つのを注意ちゅういして見みていると、その中なかに、また一つの小ちいさい角つのが出でてきたが、この小ちいさい角つののために、さきの角つののうち三つがその根ねから抜ぬけ落おちた。見みよ、この小ちいさい角つのには、人ひとの目めのような目めがあり、また大おおきな事ことを語かたる口くちがあった。7:9 わたしが見みていると、 もろもろのみ座ざが設もうけられて、日ひの老おいたる者ものが座ざしておられた。その衣ころもは雪ゆきのように白しろく、頭あたまの毛けは混まじりもののない羊ひつじの毛けのようであった。そのみ座ざは火ひの炎ほのおであり、その車輪しゃりんは燃もえる火ひであった。7:10 彼かれの前まえから、ひと筋すじの火ひの流ながれが出でてきた。彼かれに仕つかえる者ものは千々せんせん、彼かれの前まえにはべる者ものは万々まんまん、審判しんぱんを行おこなう者ものはその席せきに着つき、かずかずの書かき物ものが開ひらかれた。7:11 わたしは、その角つのの語かたる大おおいなる言葉ことばの声こえがするので見みていたが、わたしが見みている間あいだにその獣けものは殺ころされ、そのからだはそこなわれて、燃もえる火ひに投なげ入いれられた。7:12 その他たの獣けものはその主権しゅけんを奪うばわれたが、その命いのちは、時ときと季節きせつの来くるまで延のばされた。7:13 わたしはまた夜よるの幻まぼろしのうちに見みていると、 見みよ、人ひとの子このような者ものが、天てんの雲くもに乗のってきて、日ひの老おいたる者もののもとに来くると、その前まえに導みちびかれた。7:14 彼かれに主権しゅけんと光栄こうえいと国くにとを賜たまい、諸民しょみん、諸しょ族ぞく、諸国しょこく語ごの者ものを彼かれに仕つかえさせた。その主権しゅけんは永遠えいえんの主権しゅけんであって、なくなることがなく、その国くには滅ほろびることがない。7:15 そこで、われダニエル、わがうちなる霊れいは憂うれえ、わが脳中のうちゅうの幻まぼろしは、わたしを悩なやましたので、7:16 わたしは、そこに立たっている者もののひとりに近寄ちかよって、このすべての事ことの真意しんいを尋たずねた。するとその者ものは、わたしにこの事ことの解とき明あかしを告つげ知しらせた。7:17 『この四つの大おおきな獣けものは、地ちに起おこらんとする四人にんの王おうである。7:18 しかしついには、いと高たかき者ものの聖徒せいとが国くにを受うけ、永遠えいえんにその国くにを保たもって、世々よよかぎりなく続つづく』。 7:19 そこでわたしは、さらに第だい四の獣けものの真意しんいを知しろうとした。その獣けものは他たの獣けものと異ことなって、はなはだ恐おそろしく、その歯はは鉄てつ、そのつめは青銅せいどうであって、食くらい、かつ、かみ砕くだいて、その残のこりを足あしで踏ふみつけた。7:20 この獣けものの頭あたまには、十の角つのがあったが、そのほかに一つの角つのが出でてきたので、この角つののために、三つの角つのが抜ぬけ落おちた。この角つのには目めがあり、また大おおきな事ことを語かたる口くちがあって、その形かたちは、その同類どうるいのものよりも大おおきく見みえた。7:21 わたしが見みていると、この角つのは聖徒せいとと戦たたかって、彼かれらに勝かったが、7:22 ついに日ひの老おいたる者ものがきて、いと高たかき者ものの聖徒せいとのために審判しんぱんをおこなった。そしてその時ときがきて、この聖徒せいとたちは国くにを受うけた。 7:23 彼かれはこう言いった、『第だい四の獣けものは地上ちじょうの第だい四の国くにである。これはすべての国くにと異ことなって、全ぜん世界せかいを併合へいごうし、これを踏ふみつけ、かつ打うち砕くだく。7:24 十の角つのはこの国くにから起おこる十人にんの王おうである。その後のちにまたひとりの王おうが起おこる。彼かれは先さきの者ものと異ことなり、かつ、その三人にんの王おうを倒たおす。7:25 彼かれは、いと高たかき者ものに敵てきして言葉ことばを出だし、かつ、いと高たかき者ものの聖徒せいとを悩なやます。彼かれはまた時ときと律法りっぽうとを変かえようと望のぞむ。聖徒せいとはひと時ときと、ふた時ときと、半時はんときの間あいだ、彼かれの手てにわたされる。7:26 しかし審判しんぱんが行おこなわれ、彼かれの主権しゅけんは奪うばわれて、永遠えいえんに滅ほろび絶たやされ、7:27 国くにと主権しゅけんと全ぜん天下てんかの国々くにぐにの権威けんいとは、いと高たかき者ものの聖徒せいとたる民たみに与あたえられる。彼かれらの国くには永遠えいえんの国くにであって、諸国しょこくの者ものはみな彼かれらに仕つかえ、かつ従したがう』。7:28 その事ことはここで終おわった。われダニエルは、これを思おもいまわして、非常ひじょうに悩なやみ、顔色かおいろも変かわった。しかし、わたしはこの事ことを心こころに留とめた」。 第8章 8:1 われダニエルは先さきに幻まぼろしを見みたが、後のちまたベルシャザル王おうの治世ちせいの第だい三年ねんに、一つの幻まぼろしがわたしに示しめされた。8:2 その幻まぼろしを見みたのは、エラム州しゅうの首都しゅとスサにいた時ときであって、ウライ川かわのほとりにおいてであった。8:3 わたしが目めをあげて見みると、川かわの岸きしに一匹ぴきの雄羊おひつじが立たっていた。これに二つの角つのがあって、その角つのは共ともに長ながかったが、一つの角つのは他たの角つのよりも長ながかった。その長ながいのは後のちに伸のびたのである。8:4 わたしが見みていると、その雄羊おひつじは、西にし、北きた、南みなみにむかって突撃とつげきしたが、これに当あたることのできる獣けものは一匹ぴきもなく、またその手てから救すくい出だすことのできるものもなかった。これはその心こころのままにふるまい、みずから高たかぶっていた。 8:5 わたしがこれを考かんがえ、見みていると、一匹ぴきの雄おやぎが、全ぜん地ちのおもてを飛とびわたって西にしからきたが、その足あしは土つちを踏ふまなかった。このやぎには、目めの間あいだに著いちじるしい一つの角つのがあった。8:6 この者ものは、さきにわたしが川かわの岸きしに立たっているのを見みた、あの二つの角つののある雄羊おひつじにむかってきて、激はげしく怒いかってこれに走はしり寄よった。8:7 わたしが見みていると、それが雄羊おひつじに近寄ちかよるや、これにむかって怒いかりを発はっし、雄羊おひつじを撃うって、その二つの角つのを砕くだいた。雄羊おひつじには、これに当あたる力ちからがなかったので、やぎは雄羊おひつじを地ちに打うち倒たおして踏ふみつけた。また、その雄羊おひつじを、やぎの力ちからから救すくいうる者ものがなかった。8:8 こうして、その雄おやぎは、はなはだしく高たかぶったが、その盛さかんになった時とき、あの大おおきな角つのが折おれて、その代かわりに四つの著いちじるしい角つのが生しょうじ、天てんの四方しほうに向むかった。 8:9 その角つのの一つから、一つの小ちいさい角つのが出でて、南みなみに向むかい、東ひがしに向むかい、麗うるわしい地ちに向むかって、はなはだしく大おおきくなり、8:10 天てんの衆しゅう群ぐんに及およぶまでに大おおきくなり、星ほしの衆しゅう群ぐんのうちの数個すうこを地ちに投なげ下くだして、これを踏ふみつけ、8:11 またみずから高たかぶって、その衆しゅう群ぐんの主しゅに敵てきし、その常供じょうくの燔祭はんさいを取とり除のぞき、かつその聖所せいじょを倒たおした。8:12 そしてその衆しゅう群ぐんは、罪つみによって、常供じょうくの燔祭はんさいと共ともに、これにわたされた。その角つのはまた真理しんりを地ちに投なげうち、ほしいままにふるまって、みずから栄さかえた。8:13 それから、わたしはひとりの聖者せいじゃの語かたっているのを聞きいた。またひとりの聖者せいじゃがあって、その語かたっている聖者せいじゃにむかって言いった、「常供じょうくの燔祭はんさいと、荒あらすことをなす罪つみと、聖所せいじょとその衆しゅう群ぐんがわたされて、足あしの下したに踏ふみつけられることについて、幻まぼろしにあらわれたことは、いつまでだろうか」と。8:14 彼かれは言いった、「二千三百の夕ゆうと朝あさの間あいだである。そして聖所せいじょは清きよめられてその正ただしい状態じょうたいに復ふくする」。 8:15 われダニエルはこの幻まぼろしを見みて、その意味いみを知しろうと求もとめていた時とき、見みよ、人ひとのように見みえる者ものが、わたしの前まえに立たった。8:16 わたしはウライ川かわの両りょう岸がんの間あいだから人ひとの声こえが出でて、呼よばわるのを聞きいた、「ガブリエルよ、この幻まぼろしをその人ひとに悟さとらせよ」。8:17 すると彼かれはわたしの立たっている所ところにきた。彼かれがきたとき、わたしは恐おそれて、ひれ伏ふした。しかし、彼かれはわたしに言いった、「人ひとの子こよ、悟さとりなさい。この幻まぼろしは終おわりの時ときにかかわるものです」。 8:18 彼かれがわたしに語かたっていた時とき、わたしは地ちにひれ伏ふして、深ふかい眠ねむりに陥おちいったが、彼かれはわたしに手てを触ふれ、わたしを立たたせて、8:19 言いった、「見みよ、わたしは憤いきどおりの終おわりの時ときに起おこるべきことを、あなたに知しらせよう。それは定さだめられた終おわりの時ときにかかわるものであるから。8:20 あなたが見みた、あの二つの角つののある雄羊おひつじは、メデアとペルシャの王おうです。8:21 また、かの雄おやぎはギリシヤの王おうです、その目めの間あいだの大おおきな角つのは、その第だい一の王おうです。8:22 またその角つのが折おれて、その代かわりに四つの角つのが生しょうじたのは、その民たみから四つの国くにが起おこるのです。しかし、第だい一の王おうのような勢力せいりょくはない。8:23 彼かれらの国くにの終おわりの時ときになり、罪つみびとの罪つみが満みちるに及およんで、ひとりの王おうが起おこるでしょう。その顔かおは猛悪もうあくで、彼かれはなぞを解とき、8:24 その勢力せいりょくは盛さかんであって、恐おそろしい破壊はかいをなし、そのなすところ成功せいこうして、有力ゆうりょくな人々ひとびとと、聖徒せいとである民たみを滅ほろぼすでしょう。8:25 彼かれは悪知恵わるぢえをもって、偽いつわりをその手てにおこない遂とげ、みずから心こころに高たかぶり、不意ふいに多おおくの人ひとを打うち滅ほろぼし、また君きみの君きみたる者ものに敵てきするでしょう。しかし、ついに彼かれは人手ひとでによらずに滅ほろぼされるでしょう。8:26 先さきに示しめされた朝夕あさゆうの幻まぼろしは真実しんじつです。しかし、あなたはその幻まぼろしを秘密ひみつにしておかなければならない。これは多おおくの日ひの後のちにかかわる事ことだから」。 8:27 われダニエルは疲つかれはてて、数日すうじつの間あいだ病やみわずらったが、後のち起おきて、王おうの事務じむを執とった。しかし、わたしはこの幻まぼろしの事ことを思おもって驚おどろいた。またこれを悟さとることができなかった。 第9章 9:1 メデアびとアハシュエロスの子こダリヨスが、カルデヤびとの王おうとなったその元年がんねん、9:2 すなわちその治世ちせいの第だい一年ねんに、われダニエルは主しゅが預言者よげんしゃエレミヤに臨のぞんで告つげられたその言葉ことばにより、エルサレムの荒廃こうはいの終おわるまでに経へねばならぬ年ねんの数かずは七十年ねんであることを、文書ぶんしょによって悟さとった。 9:3 それでわたしは、わが顔かおを主しゅなる神かみに向むけ、断食だんじきをなし、荒布あらぬのを着き、灰はいをかぶって祈いのり、かつ願ねがい求もとめた。9:4 すなわちわたしは、わが神かみ、主しゅに祈いのり、ざんげして言いった、「ああ、大おおいなる恐おそるべき神かみ、主しゅ、おのれを愛あいし、おのれの戒いましめを守まもる者もののために契約けいやくを保たもち、いつくしみを施ほどこされる者ものよ、9:5 われわれは罪つみを犯おかし、悪あくをおこない、よこしまなふるまいをなし、そむいて、あなたの戒いましめと、おきてを離はなれました。9:6 われわれはまた、あなたのしもべなる預言者よげんしゃたちが、あなたの名なをもって、われわれの王おうたち、君きみたち、先祖せんぞたち、および国くにのすべての民たみに告つげた言葉ことばに聞きき従したがいませんでした。9:7 主しゅよ、正義せいぎはあなたのものですが、恥はじはわれわれに加くわえられて、今日こんにちのような有様ありさまです。すなわちユダの人々ひとびと、エルサレムの住民じゅうみんおよび全ぜんイスラエルの者ものは、近ちかき者ものも、遠とおき者ものもみな、あなたが追おいやられたすべての国々くにぐにで恥はじをこうむりました。これは彼かれらがあなたにそむいて犯おかした罪つみによるのです。9:8 主しゅよ、恥はじはわれわれのもの、われわれの王おうたち、君きみたちおよび先祖せんぞたちのものです。これはわれわれがあなたにむかって罪つみを犯おかしたからです。9:9 あわれみと、ゆるしはわれわれの神かみ、主しゅのものです。これはわれわれが彼かれにそむいたからです。9:10 またわれわれの神かみ、主しゅのみ声こえに聞きき従したがわず、主しゅがそのしもべ預言者よげんしゃたちによって、われわれの前まえに賜たまわった律法りっぽうを行おこなわなかったからです。9:11 まことにイスラエルの人々ひとびとは皆みなあなたの律法りっぽうを犯おかし、離はなれ去さって、あなたのみ声こえに聞きき従したがわなかったので、神かみのしもべモーセの律法りっぽうにしるされたのろいと誓ちかいが、われわれの上うえに注そそぎかかりました。これはわれわれが神かみにむかって罪つみを犯おかしたからです。9:12 すなわち神かみは大おおいなる災わざわいをわれわれの上うえにくだして、さきにわれわれと、われわれを治おさめたつかさたちにむかって告つげられた言葉ことばを実行じっこうされたのです。あのエルサレムに臨のぞんだような事ことは、全ぜん天下てんかにいまだかつてなかった事ことです。9:13 モーセの律法りっぽうにしるされたように、この災わざわいはすべてわれわれに臨のぞみましたが、なおわれわれの神かみ、主しゅの恵めぐみを請こい求もとめることをせず、その不義ふぎを離はなれて、あなたの真理しんりを悟さとることをもしませんでした。9:14 それゆえ、主しゅはこれを心こころに留とめて、災わざわいをわれわれに下くだされたのです。われわれの神かみ、主しゅは、何事なにごとをされるにも、正ただしくあらせられます。ところが、われわれはそのみ声こえに聞きき従したがわなかったのです。9:15 われわれの神かみ、主しゅよ、あなたは強つよきみ手てをもって、あなたの民たみをエジプトの地ちから導みちびき出だして、今日こんにちのように、み名なをあげられました。われわれは罪つみを犯おかし、よこしまなふるまいをしました。9:16 主しゅよ、どうぞあなたが、これまで正ただしいみわざをなされたように、あなたの町まちエルサレム、あなたの聖せいなる山やまから、あなたの怒いかりと憤いきどおりとを取とり去さってください。これはわれわれの罪つみと、われわれの先祖せんぞの不義ふぎのために、エルサレムと、あなたの民たみが、われわれの周囲しゅういの者ものの物笑ものわらいとなったからです。9:17 それゆえ、われわれの神かみよ、しもべの祈いのりと願ねがいを聞きいてください。主しゅよ、あなたご自身じしんのために、あの荒あれたあなたの聖所せいじょに、あなたのみ顔かおを輝かがやかせてください。9:18 わが神かみよ、耳みみを傾かたむけて聞きいてください。目めを開ひらいて、われわれの荒あれたさまを見み、み名なをもってとなえられる町まちをごらんください。われわれがあなたの前まえに祈いのりをささげるのは、われわれの義ぎによるのではなく、ただあなたの大おおいなるあわれみによるのです。9:19 主しゅよ、聞きいてください。主しゅよ、ゆるしてください。主しゅよ、み心こころに留とめて、おこなってください。わが神かみよ、あなたご自身じしんのために、これを延のばさないでください。あなたの町まちと、あなたの民たみは、み名なをもってとなえられているからです」。 9:20 わたしがこう言いって祈いのり、かつわが罪つみとわが民たみイスラエルの罪つみをざんげし、わが神かみの聖せいなる山やまのために、わが神かみ、主しゅの前まえに願ねがいをしていたとき、9:21 すなわちわたしが祈いのりの言葉ことばを述のべていたとき、わたしが初はじめに幻まぼろしのうちに見みた、かの人ひとガブリエルは、すみやかに飛とんできて、夕ゆうの供そなえ物ものをささげるころ、わたしに近ちかづき、9:22 わたしに告つげて言いった、「ダニエルよ、わたしは今いまあなたに、知恵ちえと悟さとりを与あたえるためにきました。9:23 あなたが祈いのりを始はじめたとき、み言葉ことばが出でたので、それをあなたに告つげるためにきたのです。あなたは大おおいに愛あいせられている者ものです。ゆえに、このみ言葉ことばを考かんがえて、この幻まぼろしを悟さとりなさい。 9:24 あなたの民たみと、あなたの聖せいなる町まちについては、七十週しゅうが定さだめられています。これはとがを終おわらせ、罪つみに終おわりを告つげ、不義ふぎをあがない、永遠えいえんの義ぎをもたらし、幻まぼろしと預言者よげんしゃを封ふうじ、いと聖せいなる者ものに油あぶらを注そそぐためです。9:25 それゆえ、エルサレムを建たて直なおせという命令めいれいが出でてから、メシヤなるひとりの君きみが来くるまで、七週しゅうと六十二週しゅうあることを知しり、かつ悟さとりなさい。その間あいだに、しかも不安ふあんな時代じだいに、エルサレムは広場ひろばと街路がいろとをもって、建たて直なおされるでしょう。9:26 その六十二週しゅうの後のちにメシヤは断たたれるでしょう。ただし自分じぶんのためにではありません。またきたるべき君きみの民たみは、町まちと聖所せいじょとを滅ほろぼすでしょう。その終おわりは洪水こうずいのように臨のぞむでしょう。そしてその終おわりまで戦争せんそうが続つづき、荒廃こうはいは定さだめられています。9:27 彼かれは一週いっしゅうの間あいだ多おおくの者ものと、堅かたく契約けいやくを結むすぶでしょう。そして彼かれはその週しゅうの半なかばに、犠牲ぎせいと供そなえ物ものとを廃はいするでしょう。また荒あらす者ものが憎にくむべき者ものの翼つばさに乗のって来くるでしょう。こうしてついにその定さだまった終おわりが、その荒あらす者ものの上うえに注そそがれるのです」。 第10章 10:1 ペルシャの王おうクロスの第だい三年ねんに、ベルテシャザルと名なづけられたダニエルに、一つの言葉ことばが啓示けいじされたが、その言葉ことばは真実しんじつであり、大おおいなる戦たたかいを意味いみするものであった。彼かれはその言葉ことばに心こころを留とめ、その幻まぼろしを悟さとった。 10:2 そのころ、われダニエルは三週しゅうの間あいだ、悲かなしんでいた。10:3 すなわち三週間しゅうかんの全まったく満みちるまでは、うまい物ものを食たべず、肉にくと酒さけとを口くちにせず、また身みに油あぶらを塗ぬらなかった。10:4 正月しょうがつの二十四日かに、わたしがチグリスという大川おおかわの岸きしに立たっていたとき、10:5 目めをあげて望のぞみ見みると、ひとりの人ひとがいて、亜麻あま布ぬのの衣ころもを着き、ウパズの金きんの帯おびを腰こしにしめていた。10:6 そのからだは緑柱石りょくちゅうせきのごとく、その顔かおは電光でんこうのごとく、その目めは燃もえるたいまつのごとく、その腕うでと足あしは、みがいた青銅せいどうのように輝かがやき、その言葉ことばの声こえは、群衆ぐんしゅうの声こえのようであった。10:7 この幻まぼろしを見みた者ものは、われダニエルのみであって、わたしと共ともにいた人々ひとびとは、この幻まぼろしを見みなかったが、彼かれらは大おおいにおののいて、逃にげかくれた。10:8 それでわたしひとり残のこって、この大おおいなる幻まぼろしを見みたので、力ちからが抜ぬけ去さり、わが顔かおの輝かがやきは恐おそろしく変かわって、全まったく力ちからがなくなった。10:9 わたしはその言葉ことばの声こえを聞きいたが、その言葉ことばの声こえを聞きいたとき、顔かおを伏ふせ、地ちにひれ伏ふして、深ふかい眠ねむりに陥おちいった。 10:10 見みよ、一つの手てがあって、わたしに触ふれたので、わたしは震ふるえながらひざまずき、手てをつくと、10:11 彼かれはわたしに言いった、「大おおいに愛あいせられる人ひとダニエルよ、わたしがあなたに告つげる言葉ことばに心こころを留とめ、立たちあがりなさい。わたしは今いまあなたのもとにつかわされたのです」。彼かれがこの言葉ことばをわたしに告つげているとき、わたしは震ふるえながら立たちあがった。10:12 すると彼かれはわたしに言いった、「ダニエルよ、恐おそれるに及およばない。あなたが悟さとろうと心こころをこめ、あなたの神かみの前まえに身みを悩なやましたその初はじめの日ひから、あなたの言葉ことばは、すでに聞きかれたので、わたしは、あなたの言葉ことばのゆえにきたのです。10:13 ペルシャの国くにの君きみが、二十一日にちの間あいだわたしの前まえに立たちふさがったが、天使てんしの長ちょうのひとりであるミカエルがきて、わたしを助たすけたので、わたしは、彼かれをペルシャの国くにの君きみと共ともに、そこに残のこしておき、10:14 末すえの日ひに、あなたの民たみに臨のぞまんとする事ことを、あなたに悟さとらせるためにきたのです。この幻まぼろしは、なおきたるべき日ひにかかわるものです」。 10:15 彼かれがこれらの言葉ことばを、わたしに述のべていたとき、わたしは、地ちにひれ伏ふして黙だまっていたが、10:16 見みよ、人ひとの子このような者ものが、わたしのくちびるにさわったので、わたしは口くちを開ひらき、わが前まえに立たっている者ものに語かたって言いった、「わが主しゅよ、この幻まぼろしによって、苦くるしみがわたしに臨のぞみ、全まったく力ちからを失うしないました。10:17 わが主しゅのしもべは、どうしてわが主しゅと語かたることができましょう。わたしは全まったく力ちからを失うしない、息いきも止とまるばかりです」。 10:18 人ひとの形かたちをした者ものは、再ふたたびわたしにさわり、わたしを力ちからづけて、10:19 言いった、「大おおいに愛あいせられる人ひとよ、恐おそれるには及およばない。安心あんしんしなさい。心こころを強つよくし、勇気ゆうきを出だしなさい」。彼かれがこう言いったとき、わたしは力ちからづいて言いった、「わが主しゅよ、語かたってください。あなたは、わたしに力ちからをつけてくださったから」。10:20 そこで彼かれは言いった、「あなたは、わたしがなんのためにきたかを知しっていますか。わたしは、今いま帰かえっていって、ペルシャの君きみと戦たたかおうとしているのです。彼かれとの戦たたかいがすむと、ギリシヤの君きみがあらわれるでしょう。10:21 しかしわたしは、まず真理しんりの書しょにしるされている事ことを、あなたに告つげよう。わたしを助たすけて、彼かれらと戦たたかう者ものは、あなたがたの君きみミカエルのほかにはありません。 第11章 11:1 わたしはまたメデアびとダリヨスの元年がんねんに立たって彼かれを強つよめ、彼かれを力ちからづけたことがあります。 11:2 わたしは今いまあなたに真理しんりを示しめそう。見みよ、ペルシャになお三人にんの王おうが起おこるでしょう。その第だい四の者ものは、他たのすべての者ものにまさって富とみ、その富とみによって強つよくなったとき、彼かれはすべてのものを動員どういんして、ギリシヤの国くにを攻せめます。11:3 またひとりの勇いさましい王おうが起おこり、大おおいなる権力けんりょくをもって世よを治おさめ、その意いのままに事ことをなすでしょう。11:4 彼かれが強つよくなった時とき、その国くには破やぶられ、天てんの四方しほうに分わかたれます。それは彼かれの子孫しそんに帰きせず、また彼かれが治おさめたほどの権力けんりょくもなく、彼かれの国くには抜ぬき取とられて、これら以外いがいの者ものどもに帰きするでしょう。 11:5 南みなみの王おうは強つよくなります。しかしその将軍しょうぐんのひとりが、彼かれにまさって強つよくなり、権力けんりょくをふるいます。その権力けんりょくは、大おおいなる権力けんりょくです。11:6 年としを経へて後のち、彼かれらは縁組えんぐみをなし、南みなみの王おうの娘むすめが、北きたの王おうにきて、和親わしんをはかります。しかしその女おんなは、その腕うでの力ちからを保たもつことができず、またその王おうも、その子こも立たつことができません。その女おんなと、その従者じゅうしゃと、その子こおよびその女おんなを獲えた者ものとは、わたされるでしょう。 11:7 そのころ、この女おんなの根ねから、一つの芽めが起おこって彼かれに代かわり、北きたの王おうの軍勢ぐんぜいにむかってきて、その城しろに討うち入いり、これを攻せめて勝かつでしょう。11:8 彼かれはまた彼かれらの神々かみがみ、鋳い像ぞうおよび金銀きんぎんの貴重きちょうな器物うつわものを、エジプトに携たずさえ去さり、そして数年すうねんの間あいだ、北きたの王おうを討うつことを控ひかえます。11:9 その後のち、北きたの王おうは、南みなみの王おうの国くにに討うち入はいるが、自分じぶんの国くにに帰かえるでしょう。 11:10 その子こらはまた憤激ふんげきして、あまたの大軍たいぐんを集あつめ、進すすんで行いって、みなぎりあふれ、通とおり過すぎるが、また行いって、その城しろにまで攻せめ寄よせるでしょう。11:11 そこで南みなみの王おうは、大おおいに怒いかり、出でてきて北きたの王おうと戦たたかいます。彼かれは大軍たいぐんを起おこすけれども、その軍ぐんは相手あいての手てにわたされるでしょう。11:12 彼かれがその軍ぐんを打うち破やぶったとき、その心こころは高たかぶり、数すう万まん人にんを倒たおします。しかし、勝かつことはありません。11:13 それは北きたの王おうがまた初はじめよりも大おおいなる軍ぐんを起おこし、数年すうねんの後のち、大おおいなる軍勢ぐんぜいと多おおくの軍需ぐんじゅ品ひんとをもって、攻せめて来くるからです。 11:14 そのころ多おおくの者ものが起おこって、南みなみの王おうに敵てきします。またあなたの民たみのうちのあらくれ者ものが、みずから高たかぶって事ことをなし、幻まぼろしを成就じょうじゅしようとするが失敗しっぱいするでしょう。11:15 こうして北きたの王おうがきて、塁るいを築きずき、堅固けんごな町まちを取とるが、南みなみの王おうの力ちからは、これに立たち向むかうことができず、またそのえり抜ぬきの民たみも、これに立たち向むかう力ちからがありません。11:16 これに攻せめて来くる者ものは、その心こころのままに事ことをなし、その前まえに立たち向むかうことのできる者ものはなく、彼かれは麗うるわしい地ちに立たち、その地ちは全まったく彼かれのために荒あらされます。11:17 彼かれは全国ぜんこくの力ちからをもって討うち入はいろうと、その顔かおを向むけるが、相手あいてと仲直なかなおりをし、その娘むすめを与あたえて、その国くにを取とろうとします。しかし、その事ことは成ならず、また彼かれの利益りえきにはならないでしょう。11:18 その後のち、彼かれは顔かおを海沿うみぞいの国々くにぐにに向むけて、その多おおくのものを取とります。しかし、ひとりの大将たいしょうがあって、彼かれが与あたえた恥辱ちじょくをそそぎ、その恥辱ちじょくを彼かれの上うえに返かえします。11:19 こうして彼かれは、その顔かおを自分じぶんの国くにの要害ようがいに向むけるが、彼かれはつまずき倒たおれて消きえうせるでしょう。 11:20 彼かれに代かわって起おこる者ものは、栄光えいこうの国くにに人ひとをつかわして、租税そぜいを取とり立たてさせるでしょう。しかし彼かれは、怒いかりにも戦たたかいにもよらず、数日すうじつのうちに滅ほろぼされます。11:21 彼かれに代かわって起おこる者ものは、卑いやしむべき者ものであって、彼かれには、王おうの尊厳そんげんが与あたえられず、彼かれは不意ふいにきて、巧言こうげんをもって国くにを獲えるでしょう。11:22 洪水こうずいのような軍勢ぐんぜいは、彼かれの前まえに押おし流ながされて敗やぶられ、契約けいやくの君きみたる者ものもまた敗やぶられるでしょう。11:23 彼かれは、これと同盟どうめいを結むすんで後のち、偽いつわりのおこないをなし、わずかな民たみをもって強つよくなり、11:24 不意ふいにその州しゅうの最もっとも肥こえた所ところに攻せめ入いり、その父ちちも、その父ちちの父ちちもしなかった事ことをおこない、その奪うばった物もの、かすめた物ものおよび財宝ざいほうを、人々ひとびとの中なかに散ちらすでしょう。彼かれはまた計略けいりゃくをめぐらして、堅固けんごな城しろを攻せめるが、ただし、それは時ときの至いたるまでです。11:25 彼かれはその勢力せいりょくと勇気ゆうきとを奮ふるい起おこし、大軍たいぐんを率ひきいて南みなみの王おうを攻せめます。南みなみの王おうもまたみずから奮ふるい、はなはだ大おおいなる強力きょうりょくな軍勢ぐんぜいをもって戦たたかいます。しかし、彼かれに対たいして、陰謀いんぼうをめぐらす者ものがあるので、これに立たち向むかうことができません。11:26 すなわち彼かれの食物しょくもつを食たべる者ものたちが、彼かれを滅ほろぼします。そして、その軍勢ぐんぜいは押おし流ながされて、多おおくの者ものが倒たおれ死しぬでしょう。11:27 このふたりの王おうは、害がいを与あたえようと心こころにはかり、ひとつ食卓しょくたくに共ともに食しょくして、偽いつわりを語かたるが、それは成功せいこうしません。終おわりはなお定さだまった時ときの来くるまでこないからです。11:28 彼かれは大おおいなる財宝ざいほうをもって、自分じぶんの国くにに帰かえるでしょう。しかし、彼かれの心こころは聖せいなる契約けいやくにそむき、ほしいままに事ことをなして、自分じぶんの国くにに帰かえります。 11:29 定さだまった時ときになって、彼かれはまた南みなみに討うち入いります。しかし、この時ときは前まえの時ときのようではありません。11:30 それはキッテムの船ふねが、彼かれに立たち向むかって来くるので、彼かれは脅おびやかされて帰かえり、聖せいなる契約けいやくに対たいして憤いきどおり、事ことを行おこなうでしょう。彼かれは帰かえっていって、聖せいなる契約けいやくを捨すてる者ものを顧かえりみ用もちいるでしょう。11:31 彼かれから軍勢ぐんぜいが起おこって、神殿しんでんと城郭じょうかくを汚けがし、常供じょうくの燔祭はんさいを取とり除のぞき、荒あらす憎にくむべきものを立たてるでしょう。11:32 彼かれは契約けいやくを破やぶる者ものどもを、巧言こうげんをもってそそのかし、そむかせるが、自分じぶんの神かみを知しる民たみは、堅かたく立たって事ことを行おこないます。11:33 民たみのうちの賢かしこい人々ひとびとは、多おおくの人ひとを悟さとりに至いたらせます。それでも、彼かれらはしばらくの間あいだ、やいばにかかり、火ひに焼やかれ、捕とらわれ、かすめられなどして倒たおれます。11:34 その倒たおれるとき、彼かれらは少すこしの助たすけを獲えます。また多おおくの人ひとが、巧言こうげんをもって彼かれらにくみするでしょう。11:35 また賢かしこい者もののうちのある者ものは、終おわりの時ときまで、自分じぶんを練ねり、清きよめ、白しろくするために倒たおれるでしょう。終おわりはなお定さだまった時ときの来くるまでこないからです。 11:36 この王おうは、その心こころのままに事ことをおこない、すべての神かみを越こえて、自分じぶんを高たかくし、自分じぶんを大おおいにし、神々かみがみの神かみたる者ものにむかって、驚おどろくべき事ことを語かたり、憤いきどおりのやむ時ときまで栄さかえるでしょう。これは定さだめられた事ことが成就じょうじゅするからです。11:37 彼かれはその先祖せんぞの神々かみがみを顧かえりみず、また婦人ふじんの好このむ者ものも、いかなる神かみをも顧かえりみないでしょう。彼かれはすべてにまさって、自分じぶんを大おおいなる者ものとするからです。11:38 彼かれはこれらの者ものの代かわりに、要害ようがいの神かみをあがめ、金きん、銀ぎん、宝石ほうせき、および宝物たからものをもって、その先祖せんぞたちの知しらなかった神かみをあがめ、11:39 異邦いほうの神かみの助たすけによって、最もっとも強固きょうこな城しろにむかって、事ことをなすでしょう。そして彼かれを認みとめる者ものには、栄誉えいよを増まし与あたえ、これに多おおくの人ひとを治おさめさせ、賞与しょうよとして土地とちを分わけ与あたえるでしょう。 11:40 終おわりの時ときになって、南みなみの王おうは彼かれと戦たたかいます。北きたの王おうは、戦車せんしゃと騎兵きへいと、多おおくの船ふねをもって、つむじ風かぜのように彼かれを攻せめ、国々くにぐににはいっていって、みなぎりあふれ、通とおり過すぎるでしょう。11:41 彼かれはまた麗うるわしい国くににはいります。また彼かれによって、多おおくの者ものが滅ほろぼされます。しかし、エドム、モアブ、アンモンびとらのうちのおもな者ものは、彼かれの手てから救すくわれましょう。11:42 彼かれは国々くにぐににその手てを伸のばし、エジプトの地ちも免まぬかれません。11:43 彼かれは金銀きんぎんの財宝ざいほうと、エジプトのすべての宝物たからものを支配しはいし、リビヤびと、エチオピヤびとは、彼かれのあとに従したがいます。11:44 しかし東ひがしと北きたからの知しらせが彼かれを驚おどろかし、彼かれは多おおくの人ひとを滅ほろぼし絶たやそうと、大おおいなる怒いかりをもって出でて行いきます。11:45 彼かれは海うみと麗うるわしい聖山せいざんとの間あいだに、天幕てんまくの宮殿きゅうでんを設もうけるでしょう。しかし、彼かれはついにその終おわりにいたり、彼かれを助たすける者ものはないでしょう。 第12章 12:1 その時ときあなたの民たみを守まもっている大おおいなる君きみミカエルが立たちあがります。また国くにが始はじまってから、その時ときにいたるまで、かつてなかったほどの悩なやみの時ときがあるでしょう。しかし、その時ときあなたの民たみは救すくわれます。すなわちあの書しょに名なをしるされた者ものは皆みな救すくわれます。12:2 また地ちのちりの中なかに眠ねむっている者もののうち、多おおくの者ものは目めをさますでしょう。そのうち永遠えいえんの生命せいめいにいたる者ものもあり、また恥はじと、限かぎりなき恥辱ちじょくをうける者ものもあるでしょう。12:3 賢かしこい者ものは、大空おおぞらの輝かがやきのように輝かがやき、また多おおくの人ひとを義ぎに導みちびく者ものは、星ほしのようになって永遠えいえんにいたるでしょう。12:4 ダニエルよ、あなたは終おわりの時ときまでこの言葉ことばを秘ひし、この書しょを封ふうじておきなさい。多おおくの者ものは、あちこちと探さぐり調しらべ、そして知識ちしきが増ますでしょう」。 12:5 そこで、われダニエルが見みていると、ほかにまたふたりの者ものがあって、ひとりは川かわのこなたの岸きしに、ひとりは川かわのかなたの岸きしに立たっていた。12:6 わたしは、かの亜麻あま布ぬのを着きて川かわの水みずの上うえにいる人ひとにむかって言いった、「この異常いじょうなできごとは、いつになって終おわるでしょうか」と。12:7 かの亜麻あま布ぬのを着きて、川かわの水みずの上うえにいた人ひとが、天てんに向むかって、その右みぎの手てと左ひだりの手てをあげ、永遠えいえんに生いける者ものをさして誓ちかい、それは、ひと時ときとふた時ときと半時はんときである。聖せいなる民たみを打うち砕くだく力ちからが消きえ去さる時ときに、これらの事ことはみな成就じょうじゅするだろうと言いうのを、わたしは聞きいた。12:8 わたしはこれを聞きいたけれども悟さとれなかった。わたしは言いった、「わが主しゅよ、これらの事ことの結末けつまつはどんなでしょうか」。 12:9 彼かれは言いった、「ダニエルよ、あなたの道みちを行いきなさい。この言葉ことばは終おわりの時ときまで秘ひし、かつ封ふうじておかれます。12:10 多おおくの者ものは、自分じぶんを清きよめ、自分じぶんを白しろくし、かつ練ねられるでしょう。しかし、悪わるい者ものは悪わるい事ことをおこない、ひとりも悟さとることはないが、賢かしこい者ものは悟さとるでしょう。 12:11 常供じょうくの燔祭はんさいが取すり除のぞかれ、荒あらす憎にくむべきものが立たてられる時ときから、千二百九十日にちが定さだめられている。12:12 待まっていて千三百三十五日にちに至いたる者ものはさいわいです。12:13 しかし、終おわりまであなたの道みちを行いきなさい。あなたは休やすみに入はいり、定さだめられた日ひの終おわりに立たって、あなたの分ぶんを受うけるでしょう」。
6:1 ダリヨスは全国ぜんこくを治おさめるために、その国くにに百二十人にんの総督そうとくを立たてることをよしとし、
6:2 また彼かれらの上うえに三人にんの総監そうかんを立たてた。ダニエルはそのひとりであった。これは総督そうとくたちをして、この三人にんの前まえに、その職務しょくむに関かんする報告ほうこくをさせて、王おうに損失そんしつの及およぶことのないようにするためであった。
6:3 ダニエルは彼かれのうちにあるすぐれた霊れいのゆえに、他たのすべての総監そうかんおよび総督そうとくたちにまさっていたので、王おうは彼かれを立たてて全国ぜんこくを治おさめさせようとした。
6:4 そこで総監そうかんおよび総督そうとくらは、国事こくじについてダニエルを訴うったえるべき口実こうじつを得えようとしたが、訴うったえるべきなんの口実こうじつも、なんのとがをも見みいだすことができなかった。それは彼かれが忠信ちゅうしんな人ひとであって、その身みになんのあやまちも、とがも見みいだされなかったからである。
6:5 そこでその人々ひとびとは言いった、「われわれはダニエルの神かみの律法りっぽうに関かんして、彼かれを訴うったえる口実こうじつを得えるのでなければ、ついに彼かれを訴うったえることはできまい」と。
6:6 こうして総監そうかんと総督そうとくらは、王おうのもとに集あつまってきて、王おうに言いった、「ダリヨス王おうよ、どうかとこしえに生いきながらえられますように。
6:7 国くにの総監そうかん、長官ちょうかんおよび総督そうとく、参議さんぎおよび知事ちじらは、相あいはかって、王おうが一つのおきてを立たて、一つの禁令きんれいを定さだめられるよう求もとめることになりました。王おうよ、それはこうです。すなわち今いまから三十日にちの間あいだは、ただあなたにのみ願ねがい事ごとをさせ、もしあなたをおいて、神かみまたは人ひとにこれをなす者ものがあれば、すべてその者ものを、ししの穴あなに投なげ入いれるというのです。
6:8 それで王おうよ、その禁令きんれいを定さだめ、その文書ぶんしょに署名しょめいして、メデアとペルシャの変かわることのない法律ほうりつのごとく、これを変かえることのできないようにしてください」。
6:9 そこでダリヨス王おうは、その禁令きんれいの文書ぶんしょに署名しょめいした。
6:10 ダニエルは、その文書ぶんしょの署名しょめいされたことを知しって家いえに帰かえり、二階かいのへやの、エルサレムに向むかって窓まどの開ひらかれた所ところで、以前いぜんからおこなっていたように、一日にちに三度どずつ、ひざをかがめて神かみの前まえに祈いのり、かつ感謝かんしゃした。
6:11 そこでその人々ひとびとは集あつまってきて、ダニエルがその神かみの前まえに祈いのり、かつ求もとめていることを見みたので、
6:12 彼かれらは王おうの前まえにきて、王おうの禁令きんれいについて奏上そうじょうして言いった、「王おうよ、あなたは禁令きんれいに署名しょめいして、今いまから三十日にちの間あいだは、ただあなたにのみ願ねがい事ごとをさせ、もしあなたをおいて、神かみまたは人ひとに、これをなす者ものがあれば、すべてその者ものを、ししの穴あなに投なげ入いれると、定さだめられたではありませんか」。王おうは答こたえて言いった、「その事ことは確たしかであって、メデアとペルシャの法律ほうりつのごとく、変かえることのできないものだ」。
6:13 彼かれらは王おうの前まえに答こたえて言いった、「王おうよ、ユダから引ひいてきた捕囚ほしゅうのひとりである、かのダニエルは、あなたをも、あなたの署名しょめいされた禁令きんれいをも顧かえりみず、一日にちに三度どずつ、祈いのりをささげています」。
6:14 王おうはこの言葉ことばを聞きいて大おおいに憂うれえ、ダニエルを救すくおうと心こころを用もちい、日ひの入いるまで、彼かれを救すくい出だすことに努つとめた。
6:15 時ときにその人々ひとびとは、また王おうのもとに集あつまってきて、王おうに言いった、「王おうよ、メデアとペルシャの法律ほうりつによれば、王おうの立たてた禁令きんれい、または、おきては変かえることのできないものであることを、ご承知しょうちください」。
6:16 そこで王おうは命令めいれいを下くだしたので、ダニエルは引ひき出だされて、ししの穴あなに投なげ入いれられた。王おうはダニエルに言いった、「どうか、あなたの常つねに仕つかえる神かみが、あなたを救すくわれるように」。
6:17 そして一つの石いしを持もってきて、穴あなの口くちをふさいだので、王おうは自分じぶんの印いんと、大臣だいじんらの印いんをもって、これに封印ふういんした。これはダニエルの処置しょちを変かえることのないようにするためであった。
6:18 こうして王おうはその宮殿きゅうでんに帰かえったが、その夜よるは食しょくをとらず、また、そばめたちを召めし寄よせず、全まったく眠ねむることもしなかった。
6:19 こうして王おうは朝あさまだき起おきて、ししの穴あなへ急いそいで行いったが、
6:20 ダニエルのいる穴あなに近ちかづいたとき、悲かなしげな声こえをあげて呼よばわり、ダニエルに言いった、「生いける神かみのしもべダニエルよ、あなたが常つねに仕つかえている神かみはあなたを救すくって、ししの害がいを免まぬかれさせることができたか」。
6:21 ダニエルは王おうに言いった、「王おうよ、どうか、とこしえに生いきながらえられますように。
6:22 わたしの神かみはその使つかいをおくって、ししの口くちを閉とざされたので、ししはわたしを害がいしませんでした。これはわたしに罪つみのないことが、神かみの前まえに認みとめられたからです。王おうよ、わたしはあなたの前まえにも、何なにも悪わるい事ことをしなかったのです」。
6:23 そこで王おうは大おおいに喜よろこび、ダニエルを穴あなの中なかから出だせと命めいじたので、ダニエルは穴あなの中なかから出だされたが、その身みになんの害がいをも受うけていなかった。これは彼かれが自分じぶんの神かみを頼たのみとしていたからである。
6:24 王おうはまた命令めいれいを下くだして、ダニエルをあしざまに訴うったえた人々ひとびとを引ひいてこさせ、彼かれらをその妻子さいしと共ともに、ししの穴あなに投なげ入いれさせた。彼かれらが穴あなの底そこに達たっしないうちに、ししは彼かれらにとびかかって、その骨ほねまでもかみ砕くだいた。
6:25 そこでダリヨス王おうは全ぜん世界せかいに住すむ諸民しょみん、諸しょ族ぞく、諸国しょこく語ごの者ものに詔みことのりを書かきおくって言いった、「どうか、あなたがたに平安へいあんが増ますように。
6:26 わたしは命令めいれいを出だす。わが国くにのすべての州しゅうの人ひとは、皆みなダニエルの神かみを、おののき恐おそれなければならない。
6:27 彼かれは救すくいを施ほどこし、助たすけをなし、天てんにおいても、地ちにおいても、しるしと奇跡きせきとをおこない、ダニエルを救すくって、ししの力ちからをのがれさせたかたである」。
6:28 こうして、このダニエルはダリヨスの世よと、ペルシャ人ひとクロスの世よにおいて栄さかえた。
第7章 7:1 バビロンの王おうベルシャザルの元年がんねんに、ダニエルは床とこにあって夢ゆめを見み、また脳のう中ちゅうに幻まぼろしを得えたので、彼かれはその夢ゆめをしるして、その事ことの大意たいいを述のべた。7:2 ダニエルは述のべて言いった、「わたしは夜よるの幻まぼろしのうちに見みた。見みよ、天てんの四方しほうからの風かぜが大海おおうみをかきたてると、7:3 四つの大おおきな獣けものが海うみからあがってきた。その形かたちは、おのおの異ことなり、7:4 第だい一のものは、ししのようで、わしの翼つばさをもっていたが、わたしが見みていると、その翼つばさは抜ぬきとられ、また地ちから起おこされて、人ひとのように二本ほんの足あしで立たたせられ、かつ人ひとの心こころが与あたえられた。7:5 見みよ、第だい二の獣けものは熊くまのようであった。これはそのからだの一方いっぽうをあげ、その口くちの歯はの間あいだに、三本ぼんの肋骨ろっこつをくわえていたが、これに向むかって『起おきあがって、多おおくの肉にくを食くらえ』と言いう声こえがあった。7:6 その後のちわたしが見みたのは、ひょうのような獣けもので、その背せには鳥とりの翼つばさが四つあった。またこの獣けものには四つの頭あたまがあり、主権しゅけんが与あたえられた。7:7 その後のちわたしが夜よるの幻まぼろしのうちに見みた第だい四の獣けものは、恐おそろしい、ものすごい、非常ひじょうに強つよいもので、大おおきな鉄てつの歯はがあり、食くらい、かつ、かみ砕くだいて、その残のこりを足あしで踏ふみつけた。これは、その前まえに出でたすべての獣けものと違ちがって、十の角つのを持もっていた。7:8 わたしが、その角つのを注意ちゅういして見みていると、その中なかに、また一つの小ちいさい角つのが出でてきたが、この小ちいさい角つののために、さきの角つののうち三つがその根ねから抜ぬけ落おちた。見みよ、この小ちいさい角つのには、人ひとの目めのような目めがあり、また大おおきな事ことを語かたる口くちがあった。7:9 わたしが見みていると、 もろもろのみ座ざが設もうけられて、日ひの老おいたる者ものが座ざしておられた。その衣ころもは雪ゆきのように白しろく、頭あたまの毛けは混まじりもののない羊ひつじの毛けのようであった。そのみ座ざは火ひの炎ほのおであり、その車輪しゃりんは燃もえる火ひであった。7:10 彼かれの前まえから、ひと筋すじの火ひの流ながれが出でてきた。彼かれに仕つかえる者ものは千々せんせん、彼かれの前まえにはべる者ものは万々まんまん、審判しんぱんを行おこなう者ものはその席せきに着つき、かずかずの書かき物ものが開ひらかれた。7:11 わたしは、その角つのの語かたる大おおいなる言葉ことばの声こえがするので見みていたが、わたしが見みている間あいだにその獣けものは殺ころされ、そのからだはそこなわれて、燃もえる火ひに投なげ入いれられた。7:12 その他たの獣けものはその主権しゅけんを奪うばわれたが、その命いのちは、時ときと季節きせつの来くるまで延のばされた。7:13 わたしはまた夜よるの幻まぼろしのうちに見みていると、 見みよ、人ひとの子このような者ものが、天てんの雲くもに乗のってきて、日ひの老おいたる者もののもとに来くると、その前まえに導みちびかれた。7:14 彼かれに主権しゅけんと光栄こうえいと国くにとを賜たまい、諸民しょみん、諸しょ族ぞく、諸国しょこく語ごの者ものを彼かれに仕つかえさせた。その主権しゅけんは永遠えいえんの主権しゅけんであって、なくなることがなく、その国くには滅ほろびることがない。7:15 そこで、われダニエル、わがうちなる霊れいは憂うれえ、わが脳中のうちゅうの幻まぼろしは、わたしを悩なやましたので、7:16 わたしは、そこに立たっている者もののひとりに近寄ちかよって、このすべての事ことの真意しんいを尋たずねた。するとその者ものは、わたしにこの事ことの解とき明あかしを告つげ知しらせた。7:17 『この四つの大おおきな獣けものは、地ちに起おこらんとする四人にんの王おうである。7:18 しかしついには、いと高たかき者ものの聖徒せいとが国くにを受うけ、永遠えいえんにその国くにを保たもって、世々よよかぎりなく続つづく』。 7:19 そこでわたしは、さらに第だい四の獣けものの真意しんいを知しろうとした。その獣けものは他たの獣けものと異ことなって、はなはだ恐おそろしく、その歯はは鉄てつ、そのつめは青銅せいどうであって、食くらい、かつ、かみ砕くだいて、その残のこりを足あしで踏ふみつけた。7:20 この獣けものの頭あたまには、十の角つのがあったが、そのほかに一つの角つのが出でてきたので、この角つののために、三つの角つのが抜ぬけ落おちた。この角つのには目めがあり、また大おおきな事ことを語かたる口くちがあって、その形かたちは、その同類どうるいのものよりも大おおきく見みえた。7:21 わたしが見みていると、この角つのは聖徒せいとと戦たたかって、彼かれらに勝かったが、7:22 ついに日ひの老おいたる者ものがきて、いと高たかき者ものの聖徒せいとのために審判しんぱんをおこなった。そしてその時ときがきて、この聖徒せいとたちは国くにを受うけた。 7:23 彼かれはこう言いった、『第だい四の獣けものは地上ちじょうの第だい四の国くにである。これはすべての国くにと異ことなって、全ぜん世界せかいを併合へいごうし、これを踏ふみつけ、かつ打うち砕くだく。7:24 十の角つのはこの国くにから起おこる十人にんの王おうである。その後のちにまたひとりの王おうが起おこる。彼かれは先さきの者ものと異ことなり、かつ、その三人にんの王おうを倒たおす。7:25 彼かれは、いと高たかき者ものに敵てきして言葉ことばを出だし、かつ、いと高たかき者ものの聖徒せいとを悩なやます。彼かれはまた時ときと律法りっぽうとを変かえようと望のぞむ。聖徒せいとはひと時ときと、ふた時ときと、半時はんときの間あいだ、彼かれの手てにわたされる。7:26 しかし審判しんぱんが行おこなわれ、彼かれの主権しゅけんは奪うばわれて、永遠えいえんに滅ほろび絶たやされ、7:27 国くにと主権しゅけんと全ぜん天下てんかの国々くにぐにの権威けんいとは、いと高たかき者ものの聖徒せいとたる民たみに与あたえられる。彼かれらの国くには永遠えいえんの国くにであって、諸国しょこくの者ものはみな彼かれらに仕つかえ、かつ従したがう』。7:28 その事ことはここで終おわった。われダニエルは、これを思おもいまわして、非常ひじょうに悩なやみ、顔色かおいろも変かわった。しかし、わたしはこの事ことを心こころに留とめた」。 第8章 8:1 われダニエルは先さきに幻まぼろしを見みたが、後のちまたベルシャザル王おうの治世ちせいの第だい三年ねんに、一つの幻まぼろしがわたしに示しめされた。8:2 その幻まぼろしを見みたのは、エラム州しゅうの首都しゅとスサにいた時ときであって、ウライ川かわのほとりにおいてであった。8:3 わたしが目めをあげて見みると、川かわの岸きしに一匹ぴきの雄羊おひつじが立たっていた。これに二つの角つのがあって、その角つのは共ともに長ながかったが、一つの角つのは他たの角つのよりも長ながかった。その長ながいのは後のちに伸のびたのである。8:4 わたしが見みていると、その雄羊おひつじは、西にし、北きた、南みなみにむかって突撃とつげきしたが、これに当あたることのできる獣けものは一匹ぴきもなく、またその手てから救すくい出だすことのできるものもなかった。これはその心こころのままにふるまい、みずから高たかぶっていた。 8:5 わたしがこれを考かんがえ、見みていると、一匹ぴきの雄おやぎが、全ぜん地ちのおもてを飛とびわたって西にしからきたが、その足あしは土つちを踏ふまなかった。このやぎには、目めの間あいだに著いちじるしい一つの角つのがあった。8:6 この者ものは、さきにわたしが川かわの岸きしに立たっているのを見みた、あの二つの角つののある雄羊おひつじにむかってきて、激はげしく怒いかってこれに走はしり寄よった。8:7 わたしが見みていると、それが雄羊おひつじに近寄ちかよるや、これにむかって怒いかりを発はっし、雄羊おひつじを撃うって、その二つの角つのを砕くだいた。雄羊おひつじには、これに当あたる力ちからがなかったので、やぎは雄羊おひつじを地ちに打うち倒たおして踏ふみつけた。また、その雄羊おひつじを、やぎの力ちからから救すくいうる者ものがなかった。8:8 こうして、その雄おやぎは、はなはだしく高たかぶったが、その盛さかんになった時とき、あの大おおきな角つのが折おれて、その代かわりに四つの著いちじるしい角つのが生しょうじ、天てんの四方しほうに向むかった。 8:9 その角つのの一つから、一つの小ちいさい角つのが出でて、南みなみに向むかい、東ひがしに向むかい、麗うるわしい地ちに向むかって、はなはだしく大おおきくなり、8:10 天てんの衆しゅう群ぐんに及およぶまでに大おおきくなり、星ほしの衆しゅう群ぐんのうちの数個すうこを地ちに投なげ下くだして、これを踏ふみつけ、8:11 またみずから高たかぶって、その衆しゅう群ぐんの主しゅに敵てきし、その常供じょうくの燔祭はんさいを取とり除のぞき、かつその聖所せいじょを倒たおした。8:12 そしてその衆しゅう群ぐんは、罪つみによって、常供じょうくの燔祭はんさいと共ともに、これにわたされた。その角つのはまた真理しんりを地ちに投なげうち、ほしいままにふるまって、みずから栄さかえた。8:13 それから、わたしはひとりの聖者せいじゃの語かたっているのを聞きいた。またひとりの聖者せいじゃがあって、その語かたっている聖者せいじゃにむかって言いった、「常供じょうくの燔祭はんさいと、荒あらすことをなす罪つみと、聖所せいじょとその衆しゅう群ぐんがわたされて、足あしの下したに踏ふみつけられることについて、幻まぼろしにあらわれたことは、いつまでだろうか」と。8:14 彼かれは言いった、「二千三百の夕ゆうと朝あさの間あいだである。そして聖所せいじょは清きよめられてその正ただしい状態じょうたいに復ふくする」。 8:15 われダニエルはこの幻まぼろしを見みて、その意味いみを知しろうと求もとめていた時とき、見みよ、人ひとのように見みえる者ものが、わたしの前まえに立たった。8:16 わたしはウライ川かわの両りょう岸がんの間あいだから人ひとの声こえが出でて、呼よばわるのを聞きいた、「ガブリエルよ、この幻まぼろしをその人ひとに悟さとらせよ」。8:17 すると彼かれはわたしの立たっている所ところにきた。彼かれがきたとき、わたしは恐おそれて、ひれ伏ふした。しかし、彼かれはわたしに言いった、「人ひとの子こよ、悟さとりなさい。この幻まぼろしは終おわりの時ときにかかわるものです」。 8:18 彼かれがわたしに語かたっていた時とき、わたしは地ちにひれ伏ふして、深ふかい眠ねむりに陥おちいったが、彼かれはわたしに手てを触ふれ、わたしを立たたせて、8:19 言いった、「見みよ、わたしは憤いきどおりの終おわりの時ときに起おこるべきことを、あなたに知しらせよう。それは定さだめられた終おわりの時ときにかかわるものであるから。8:20 あなたが見みた、あの二つの角つののある雄羊おひつじは、メデアとペルシャの王おうです。8:21 また、かの雄おやぎはギリシヤの王おうです、その目めの間あいだの大おおきな角つのは、その第だい一の王おうです。8:22 またその角つのが折おれて、その代かわりに四つの角つのが生しょうじたのは、その民たみから四つの国くにが起おこるのです。しかし、第だい一の王おうのような勢力せいりょくはない。8:23 彼かれらの国くにの終おわりの時ときになり、罪つみびとの罪つみが満みちるに及およんで、ひとりの王おうが起おこるでしょう。その顔かおは猛悪もうあくで、彼かれはなぞを解とき、8:24 その勢力せいりょくは盛さかんであって、恐おそろしい破壊はかいをなし、そのなすところ成功せいこうして、有力ゆうりょくな人々ひとびとと、聖徒せいとである民たみを滅ほろぼすでしょう。8:25 彼かれは悪知恵わるぢえをもって、偽いつわりをその手てにおこない遂とげ、みずから心こころに高たかぶり、不意ふいに多おおくの人ひとを打うち滅ほろぼし、また君きみの君きみたる者ものに敵てきするでしょう。しかし、ついに彼かれは人手ひとでによらずに滅ほろぼされるでしょう。8:26 先さきに示しめされた朝夕あさゆうの幻まぼろしは真実しんじつです。しかし、あなたはその幻まぼろしを秘密ひみつにしておかなければならない。これは多おおくの日ひの後のちにかかわる事ことだから」。 8:27 われダニエルは疲つかれはてて、数日すうじつの間あいだ病やみわずらったが、後のち起おきて、王おうの事務じむを執とった。しかし、わたしはこの幻まぼろしの事ことを思おもって驚おどろいた。またこれを悟さとることができなかった。 第9章 9:1 メデアびとアハシュエロスの子こダリヨスが、カルデヤびとの王おうとなったその元年がんねん、9:2 すなわちその治世ちせいの第だい一年ねんに、われダニエルは主しゅが預言者よげんしゃエレミヤに臨のぞんで告つげられたその言葉ことばにより、エルサレムの荒廃こうはいの終おわるまでに経へねばならぬ年ねんの数かずは七十年ねんであることを、文書ぶんしょによって悟さとった。 9:3 それでわたしは、わが顔かおを主しゅなる神かみに向むけ、断食だんじきをなし、荒布あらぬのを着き、灰はいをかぶって祈いのり、かつ願ねがい求もとめた。9:4 すなわちわたしは、わが神かみ、主しゅに祈いのり、ざんげして言いった、「ああ、大おおいなる恐おそるべき神かみ、主しゅ、おのれを愛あいし、おのれの戒いましめを守まもる者もののために契約けいやくを保たもち、いつくしみを施ほどこされる者ものよ、9:5 われわれは罪つみを犯おかし、悪あくをおこない、よこしまなふるまいをなし、そむいて、あなたの戒いましめと、おきてを離はなれました。9:6 われわれはまた、あなたのしもべなる預言者よげんしゃたちが、あなたの名なをもって、われわれの王おうたち、君きみたち、先祖せんぞたち、および国くにのすべての民たみに告つげた言葉ことばに聞きき従したがいませんでした。9:7 主しゅよ、正義せいぎはあなたのものですが、恥はじはわれわれに加くわえられて、今日こんにちのような有様ありさまです。すなわちユダの人々ひとびと、エルサレムの住民じゅうみんおよび全ぜんイスラエルの者ものは、近ちかき者ものも、遠とおき者ものもみな、あなたが追おいやられたすべての国々くにぐにで恥はじをこうむりました。これは彼かれらがあなたにそむいて犯おかした罪つみによるのです。9:8 主しゅよ、恥はじはわれわれのもの、われわれの王おうたち、君きみたちおよび先祖せんぞたちのものです。これはわれわれがあなたにむかって罪つみを犯おかしたからです。9:9 あわれみと、ゆるしはわれわれの神かみ、主しゅのものです。これはわれわれが彼かれにそむいたからです。9:10 またわれわれの神かみ、主しゅのみ声こえに聞きき従したがわず、主しゅがそのしもべ預言者よげんしゃたちによって、われわれの前まえに賜たまわった律法りっぽうを行おこなわなかったからです。9:11 まことにイスラエルの人々ひとびとは皆みなあなたの律法りっぽうを犯おかし、離はなれ去さって、あなたのみ声こえに聞きき従したがわなかったので、神かみのしもべモーセの律法りっぽうにしるされたのろいと誓ちかいが、われわれの上うえに注そそぎかかりました。これはわれわれが神かみにむかって罪つみを犯おかしたからです。9:12 すなわち神かみは大おおいなる災わざわいをわれわれの上うえにくだして、さきにわれわれと、われわれを治おさめたつかさたちにむかって告つげられた言葉ことばを実行じっこうされたのです。あのエルサレムに臨のぞんだような事ことは、全ぜん天下てんかにいまだかつてなかった事ことです。9:13 モーセの律法りっぽうにしるされたように、この災わざわいはすべてわれわれに臨のぞみましたが、なおわれわれの神かみ、主しゅの恵めぐみを請こい求もとめることをせず、その不義ふぎを離はなれて、あなたの真理しんりを悟さとることをもしませんでした。9:14 それゆえ、主しゅはこれを心こころに留とめて、災わざわいをわれわれに下くだされたのです。われわれの神かみ、主しゅは、何事なにごとをされるにも、正ただしくあらせられます。ところが、われわれはそのみ声こえに聞きき従したがわなかったのです。9:15 われわれの神かみ、主しゅよ、あなたは強つよきみ手てをもって、あなたの民たみをエジプトの地ちから導みちびき出だして、今日こんにちのように、み名なをあげられました。われわれは罪つみを犯おかし、よこしまなふるまいをしました。9:16 主しゅよ、どうぞあなたが、これまで正ただしいみわざをなされたように、あなたの町まちエルサレム、あなたの聖せいなる山やまから、あなたの怒いかりと憤いきどおりとを取とり去さってください。これはわれわれの罪つみと、われわれの先祖せんぞの不義ふぎのために、エルサレムと、あなたの民たみが、われわれの周囲しゅういの者ものの物笑ものわらいとなったからです。9:17 それゆえ、われわれの神かみよ、しもべの祈いのりと願ねがいを聞きいてください。主しゅよ、あなたご自身じしんのために、あの荒あれたあなたの聖所せいじょに、あなたのみ顔かおを輝かがやかせてください。9:18 わが神かみよ、耳みみを傾かたむけて聞きいてください。目めを開ひらいて、われわれの荒あれたさまを見み、み名なをもってとなえられる町まちをごらんください。われわれがあなたの前まえに祈いのりをささげるのは、われわれの義ぎによるのではなく、ただあなたの大おおいなるあわれみによるのです。9:19 主しゅよ、聞きいてください。主しゅよ、ゆるしてください。主しゅよ、み心こころに留とめて、おこなってください。わが神かみよ、あなたご自身じしんのために、これを延のばさないでください。あなたの町まちと、あなたの民たみは、み名なをもってとなえられているからです」。 9:20 わたしがこう言いって祈いのり、かつわが罪つみとわが民たみイスラエルの罪つみをざんげし、わが神かみの聖せいなる山やまのために、わが神かみ、主しゅの前まえに願ねがいをしていたとき、9:21 すなわちわたしが祈いのりの言葉ことばを述のべていたとき、わたしが初はじめに幻まぼろしのうちに見みた、かの人ひとガブリエルは、すみやかに飛とんできて、夕ゆうの供そなえ物ものをささげるころ、わたしに近ちかづき、9:22 わたしに告つげて言いった、「ダニエルよ、わたしは今いまあなたに、知恵ちえと悟さとりを与あたえるためにきました。9:23 あなたが祈いのりを始はじめたとき、み言葉ことばが出でたので、それをあなたに告つげるためにきたのです。あなたは大おおいに愛あいせられている者ものです。ゆえに、このみ言葉ことばを考かんがえて、この幻まぼろしを悟さとりなさい。 9:24 あなたの民たみと、あなたの聖せいなる町まちについては、七十週しゅうが定さだめられています。これはとがを終おわらせ、罪つみに終おわりを告つげ、不義ふぎをあがない、永遠えいえんの義ぎをもたらし、幻まぼろしと預言者よげんしゃを封ふうじ、いと聖せいなる者ものに油あぶらを注そそぐためです。9:25 それゆえ、エルサレムを建たて直なおせという命令めいれいが出でてから、メシヤなるひとりの君きみが来くるまで、七週しゅうと六十二週しゅうあることを知しり、かつ悟さとりなさい。その間あいだに、しかも不安ふあんな時代じだいに、エルサレムは広場ひろばと街路がいろとをもって、建たて直なおされるでしょう。9:26 その六十二週しゅうの後のちにメシヤは断たたれるでしょう。ただし自分じぶんのためにではありません。またきたるべき君きみの民たみは、町まちと聖所せいじょとを滅ほろぼすでしょう。その終おわりは洪水こうずいのように臨のぞむでしょう。そしてその終おわりまで戦争せんそうが続つづき、荒廃こうはいは定さだめられています。9:27 彼かれは一週いっしゅうの間あいだ多おおくの者ものと、堅かたく契約けいやくを結むすぶでしょう。そして彼かれはその週しゅうの半なかばに、犠牲ぎせいと供そなえ物ものとを廃はいするでしょう。また荒あらす者ものが憎にくむべき者ものの翼つばさに乗のって来くるでしょう。こうしてついにその定さだまった終おわりが、その荒あらす者ものの上うえに注そそがれるのです」。 第10章 10:1 ペルシャの王おうクロスの第だい三年ねんに、ベルテシャザルと名なづけられたダニエルに、一つの言葉ことばが啓示けいじされたが、その言葉ことばは真実しんじつであり、大おおいなる戦たたかいを意味いみするものであった。彼かれはその言葉ことばに心こころを留とめ、その幻まぼろしを悟さとった。 10:2 そのころ、われダニエルは三週しゅうの間あいだ、悲かなしんでいた。10:3 すなわち三週間しゅうかんの全まったく満みちるまでは、うまい物ものを食たべず、肉にくと酒さけとを口くちにせず、また身みに油あぶらを塗ぬらなかった。10:4 正月しょうがつの二十四日かに、わたしがチグリスという大川おおかわの岸きしに立たっていたとき、10:5 目めをあげて望のぞみ見みると、ひとりの人ひとがいて、亜麻あま布ぬのの衣ころもを着き、ウパズの金きんの帯おびを腰こしにしめていた。10:6 そのからだは緑柱石りょくちゅうせきのごとく、その顔かおは電光でんこうのごとく、その目めは燃もえるたいまつのごとく、その腕うでと足あしは、みがいた青銅せいどうのように輝かがやき、その言葉ことばの声こえは、群衆ぐんしゅうの声こえのようであった。10:7 この幻まぼろしを見みた者ものは、われダニエルのみであって、わたしと共ともにいた人々ひとびとは、この幻まぼろしを見みなかったが、彼かれらは大おおいにおののいて、逃にげかくれた。10:8 それでわたしひとり残のこって、この大おおいなる幻まぼろしを見みたので、力ちからが抜ぬけ去さり、わが顔かおの輝かがやきは恐おそろしく変かわって、全まったく力ちからがなくなった。10:9 わたしはその言葉ことばの声こえを聞きいたが、その言葉ことばの声こえを聞きいたとき、顔かおを伏ふせ、地ちにひれ伏ふして、深ふかい眠ねむりに陥おちいった。 10:10 見みよ、一つの手てがあって、わたしに触ふれたので、わたしは震ふるえながらひざまずき、手てをつくと、10:11 彼かれはわたしに言いった、「大おおいに愛あいせられる人ひとダニエルよ、わたしがあなたに告つげる言葉ことばに心こころを留とめ、立たちあがりなさい。わたしは今いまあなたのもとにつかわされたのです」。彼かれがこの言葉ことばをわたしに告つげているとき、わたしは震ふるえながら立たちあがった。10:12 すると彼かれはわたしに言いった、「ダニエルよ、恐おそれるに及およばない。あなたが悟さとろうと心こころをこめ、あなたの神かみの前まえに身みを悩なやましたその初はじめの日ひから、あなたの言葉ことばは、すでに聞きかれたので、わたしは、あなたの言葉ことばのゆえにきたのです。10:13 ペルシャの国くにの君きみが、二十一日にちの間あいだわたしの前まえに立たちふさがったが、天使てんしの長ちょうのひとりであるミカエルがきて、わたしを助たすけたので、わたしは、彼かれをペルシャの国くにの君きみと共ともに、そこに残のこしておき、10:14 末すえの日ひに、あなたの民たみに臨のぞまんとする事ことを、あなたに悟さとらせるためにきたのです。この幻まぼろしは、なおきたるべき日ひにかかわるものです」。 10:15 彼かれがこれらの言葉ことばを、わたしに述のべていたとき、わたしは、地ちにひれ伏ふして黙だまっていたが、10:16 見みよ、人ひとの子このような者ものが、わたしのくちびるにさわったので、わたしは口くちを開ひらき、わが前まえに立たっている者ものに語かたって言いった、「わが主しゅよ、この幻まぼろしによって、苦くるしみがわたしに臨のぞみ、全まったく力ちからを失うしないました。10:17 わが主しゅのしもべは、どうしてわが主しゅと語かたることができましょう。わたしは全まったく力ちからを失うしない、息いきも止とまるばかりです」。 10:18 人ひとの形かたちをした者ものは、再ふたたびわたしにさわり、わたしを力ちからづけて、10:19 言いった、「大おおいに愛あいせられる人ひとよ、恐おそれるには及およばない。安心あんしんしなさい。心こころを強つよくし、勇気ゆうきを出だしなさい」。彼かれがこう言いったとき、わたしは力ちからづいて言いった、「わが主しゅよ、語かたってください。あなたは、わたしに力ちからをつけてくださったから」。10:20 そこで彼かれは言いった、「あなたは、わたしがなんのためにきたかを知しっていますか。わたしは、今いま帰かえっていって、ペルシャの君きみと戦たたかおうとしているのです。彼かれとの戦たたかいがすむと、ギリシヤの君きみがあらわれるでしょう。10:21 しかしわたしは、まず真理しんりの書しょにしるされている事ことを、あなたに告つげよう。わたしを助たすけて、彼かれらと戦たたかう者ものは、あなたがたの君きみミカエルのほかにはありません。 第11章 11:1 わたしはまたメデアびとダリヨスの元年がんねんに立たって彼かれを強つよめ、彼かれを力ちからづけたことがあります。 11:2 わたしは今いまあなたに真理しんりを示しめそう。見みよ、ペルシャになお三人にんの王おうが起おこるでしょう。その第だい四の者ものは、他たのすべての者ものにまさって富とみ、その富とみによって強つよくなったとき、彼かれはすべてのものを動員どういんして、ギリシヤの国くにを攻せめます。11:3 またひとりの勇いさましい王おうが起おこり、大おおいなる権力けんりょくをもって世よを治おさめ、その意いのままに事ことをなすでしょう。11:4 彼かれが強つよくなった時とき、その国くには破やぶられ、天てんの四方しほうに分わかたれます。それは彼かれの子孫しそんに帰きせず、また彼かれが治おさめたほどの権力けんりょくもなく、彼かれの国くには抜ぬき取とられて、これら以外いがいの者ものどもに帰きするでしょう。 11:5 南みなみの王おうは強つよくなります。しかしその将軍しょうぐんのひとりが、彼かれにまさって強つよくなり、権力けんりょくをふるいます。その権力けんりょくは、大おおいなる権力けんりょくです。11:6 年としを経へて後のち、彼かれらは縁組えんぐみをなし、南みなみの王おうの娘むすめが、北きたの王おうにきて、和親わしんをはかります。しかしその女おんなは、その腕うでの力ちからを保たもつことができず、またその王おうも、その子こも立たつことができません。その女おんなと、その従者じゅうしゃと、その子こおよびその女おんなを獲えた者ものとは、わたされるでしょう。 11:7 そのころ、この女おんなの根ねから、一つの芽めが起おこって彼かれに代かわり、北きたの王おうの軍勢ぐんぜいにむかってきて、その城しろに討うち入いり、これを攻せめて勝かつでしょう。11:8 彼かれはまた彼かれらの神々かみがみ、鋳い像ぞうおよび金銀きんぎんの貴重きちょうな器物うつわものを、エジプトに携たずさえ去さり、そして数年すうねんの間あいだ、北きたの王おうを討うつことを控ひかえます。11:9 その後のち、北きたの王おうは、南みなみの王おうの国くにに討うち入はいるが、自分じぶんの国くにに帰かえるでしょう。 11:10 その子こらはまた憤激ふんげきして、あまたの大軍たいぐんを集あつめ、進すすんで行いって、みなぎりあふれ、通とおり過すぎるが、また行いって、その城しろにまで攻せめ寄よせるでしょう。11:11 そこで南みなみの王おうは、大おおいに怒いかり、出でてきて北きたの王おうと戦たたかいます。彼かれは大軍たいぐんを起おこすけれども、その軍ぐんは相手あいての手てにわたされるでしょう。11:12 彼かれがその軍ぐんを打うち破やぶったとき、その心こころは高たかぶり、数すう万まん人にんを倒たおします。しかし、勝かつことはありません。11:13 それは北きたの王おうがまた初はじめよりも大おおいなる軍ぐんを起おこし、数年すうねんの後のち、大おおいなる軍勢ぐんぜいと多おおくの軍需ぐんじゅ品ひんとをもって、攻せめて来くるからです。 11:14 そのころ多おおくの者ものが起おこって、南みなみの王おうに敵てきします。またあなたの民たみのうちのあらくれ者ものが、みずから高たかぶって事ことをなし、幻まぼろしを成就じょうじゅしようとするが失敗しっぱいするでしょう。11:15 こうして北きたの王おうがきて、塁るいを築きずき、堅固けんごな町まちを取とるが、南みなみの王おうの力ちからは、これに立たち向むかうことができず、またそのえり抜ぬきの民たみも、これに立たち向むかう力ちからがありません。11:16 これに攻せめて来くる者ものは、その心こころのままに事ことをなし、その前まえに立たち向むかうことのできる者ものはなく、彼かれは麗うるわしい地ちに立たち、その地ちは全まったく彼かれのために荒あらされます。11:17 彼かれは全国ぜんこくの力ちからをもって討うち入はいろうと、その顔かおを向むけるが、相手あいてと仲直なかなおりをし、その娘むすめを与あたえて、その国くにを取とろうとします。しかし、その事ことは成ならず、また彼かれの利益りえきにはならないでしょう。11:18 その後のち、彼かれは顔かおを海沿うみぞいの国々くにぐにに向むけて、その多おおくのものを取とります。しかし、ひとりの大将たいしょうがあって、彼かれが与あたえた恥辱ちじょくをそそぎ、その恥辱ちじょくを彼かれの上うえに返かえします。11:19 こうして彼かれは、その顔かおを自分じぶんの国くにの要害ようがいに向むけるが、彼かれはつまずき倒たおれて消きえうせるでしょう。 11:20 彼かれに代かわって起おこる者ものは、栄光えいこうの国くにに人ひとをつかわして、租税そぜいを取とり立たてさせるでしょう。しかし彼かれは、怒いかりにも戦たたかいにもよらず、数日すうじつのうちに滅ほろぼされます。11:21 彼かれに代かわって起おこる者ものは、卑いやしむべき者ものであって、彼かれには、王おうの尊厳そんげんが与あたえられず、彼かれは不意ふいにきて、巧言こうげんをもって国くにを獲えるでしょう。11:22 洪水こうずいのような軍勢ぐんぜいは、彼かれの前まえに押おし流ながされて敗やぶられ、契約けいやくの君きみたる者ものもまた敗やぶられるでしょう。11:23 彼かれは、これと同盟どうめいを結むすんで後のち、偽いつわりのおこないをなし、わずかな民たみをもって強つよくなり、11:24 不意ふいにその州しゅうの最もっとも肥こえた所ところに攻せめ入いり、その父ちちも、その父ちちの父ちちもしなかった事ことをおこない、その奪うばった物もの、かすめた物ものおよび財宝ざいほうを、人々ひとびとの中なかに散ちらすでしょう。彼かれはまた計略けいりゃくをめぐらして、堅固けんごな城しろを攻せめるが、ただし、それは時ときの至いたるまでです。11:25 彼かれはその勢力せいりょくと勇気ゆうきとを奮ふるい起おこし、大軍たいぐんを率ひきいて南みなみの王おうを攻せめます。南みなみの王おうもまたみずから奮ふるい、はなはだ大おおいなる強力きょうりょくな軍勢ぐんぜいをもって戦たたかいます。しかし、彼かれに対たいして、陰謀いんぼうをめぐらす者ものがあるので、これに立たち向むかうことができません。11:26 すなわち彼かれの食物しょくもつを食たべる者ものたちが、彼かれを滅ほろぼします。そして、その軍勢ぐんぜいは押おし流ながされて、多おおくの者ものが倒たおれ死しぬでしょう。11:27 このふたりの王おうは、害がいを与あたえようと心こころにはかり、ひとつ食卓しょくたくに共ともに食しょくして、偽いつわりを語かたるが、それは成功せいこうしません。終おわりはなお定さだまった時ときの来くるまでこないからです。11:28 彼かれは大おおいなる財宝ざいほうをもって、自分じぶんの国くにに帰かえるでしょう。しかし、彼かれの心こころは聖せいなる契約けいやくにそむき、ほしいままに事ことをなして、自分じぶんの国くにに帰かえります。 11:29 定さだまった時ときになって、彼かれはまた南みなみに討うち入いります。しかし、この時ときは前まえの時ときのようではありません。11:30 それはキッテムの船ふねが、彼かれに立たち向むかって来くるので、彼かれは脅おびやかされて帰かえり、聖せいなる契約けいやくに対たいして憤いきどおり、事ことを行おこなうでしょう。彼かれは帰かえっていって、聖せいなる契約けいやくを捨すてる者ものを顧かえりみ用もちいるでしょう。11:31 彼かれから軍勢ぐんぜいが起おこって、神殿しんでんと城郭じょうかくを汚けがし、常供じょうくの燔祭はんさいを取とり除のぞき、荒あらす憎にくむべきものを立たてるでしょう。11:32 彼かれは契約けいやくを破やぶる者ものどもを、巧言こうげんをもってそそのかし、そむかせるが、自分じぶんの神かみを知しる民たみは、堅かたく立たって事ことを行おこないます。11:33 民たみのうちの賢かしこい人々ひとびとは、多おおくの人ひとを悟さとりに至いたらせます。それでも、彼かれらはしばらくの間あいだ、やいばにかかり、火ひに焼やかれ、捕とらわれ、かすめられなどして倒たおれます。11:34 その倒たおれるとき、彼かれらは少すこしの助たすけを獲えます。また多おおくの人ひとが、巧言こうげんをもって彼かれらにくみするでしょう。11:35 また賢かしこい者もののうちのある者ものは、終おわりの時ときまで、自分じぶんを練ねり、清きよめ、白しろくするために倒たおれるでしょう。終おわりはなお定さだまった時ときの来くるまでこないからです。 11:36 この王おうは、その心こころのままに事ことをおこない、すべての神かみを越こえて、自分じぶんを高たかくし、自分じぶんを大おおいにし、神々かみがみの神かみたる者ものにむかって、驚おどろくべき事ことを語かたり、憤いきどおりのやむ時ときまで栄さかえるでしょう。これは定さだめられた事ことが成就じょうじゅするからです。11:37 彼かれはその先祖せんぞの神々かみがみを顧かえりみず、また婦人ふじんの好このむ者ものも、いかなる神かみをも顧かえりみないでしょう。彼かれはすべてにまさって、自分じぶんを大おおいなる者ものとするからです。11:38 彼かれはこれらの者ものの代かわりに、要害ようがいの神かみをあがめ、金きん、銀ぎん、宝石ほうせき、および宝物たからものをもって、その先祖せんぞたちの知しらなかった神かみをあがめ、11:39 異邦いほうの神かみの助たすけによって、最もっとも強固きょうこな城しろにむかって、事ことをなすでしょう。そして彼かれを認みとめる者ものには、栄誉えいよを増まし与あたえ、これに多おおくの人ひとを治おさめさせ、賞与しょうよとして土地とちを分わけ与あたえるでしょう。 11:40 終おわりの時ときになって、南みなみの王おうは彼かれと戦たたかいます。北きたの王おうは、戦車せんしゃと騎兵きへいと、多おおくの船ふねをもって、つむじ風かぜのように彼かれを攻せめ、国々くにぐににはいっていって、みなぎりあふれ、通とおり過すぎるでしょう。11:41 彼かれはまた麗うるわしい国くににはいります。また彼かれによって、多おおくの者ものが滅ほろぼされます。しかし、エドム、モアブ、アンモンびとらのうちのおもな者ものは、彼かれの手てから救すくわれましょう。11:42 彼かれは国々くにぐににその手てを伸のばし、エジプトの地ちも免まぬかれません。11:43 彼かれは金銀きんぎんの財宝ざいほうと、エジプトのすべての宝物たからものを支配しはいし、リビヤびと、エチオピヤびとは、彼かれのあとに従したがいます。11:44 しかし東ひがしと北きたからの知しらせが彼かれを驚おどろかし、彼かれは多おおくの人ひとを滅ほろぼし絶たやそうと、大おおいなる怒いかりをもって出でて行いきます。11:45 彼かれは海うみと麗うるわしい聖山せいざんとの間あいだに、天幕てんまくの宮殿きゅうでんを設もうけるでしょう。しかし、彼かれはついにその終おわりにいたり、彼かれを助たすける者ものはないでしょう。 第12章 12:1 その時ときあなたの民たみを守まもっている大おおいなる君きみミカエルが立たちあがります。また国くにが始はじまってから、その時ときにいたるまで、かつてなかったほどの悩なやみの時ときがあるでしょう。しかし、その時ときあなたの民たみは救すくわれます。すなわちあの書しょに名なをしるされた者ものは皆みな救すくわれます。12:2 また地ちのちりの中なかに眠ねむっている者もののうち、多おおくの者ものは目めをさますでしょう。そのうち永遠えいえんの生命せいめいにいたる者ものもあり、また恥はじと、限かぎりなき恥辱ちじょくをうける者ものもあるでしょう。12:3 賢かしこい者ものは、大空おおぞらの輝かがやきのように輝かがやき、また多おおくの人ひとを義ぎに導みちびく者ものは、星ほしのようになって永遠えいえんにいたるでしょう。12:4 ダニエルよ、あなたは終おわりの時ときまでこの言葉ことばを秘ひし、この書しょを封ふうじておきなさい。多おおくの者ものは、あちこちと探さぐり調しらべ、そして知識ちしきが増ますでしょう」。 12:5 そこで、われダニエルが見みていると、ほかにまたふたりの者ものがあって、ひとりは川かわのこなたの岸きしに、ひとりは川かわのかなたの岸きしに立たっていた。12:6 わたしは、かの亜麻あま布ぬのを着きて川かわの水みずの上うえにいる人ひとにむかって言いった、「この異常いじょうなできごとは、いつになって終おわるでしょうか」と。12:7 かの亜麻あま布ぬのを着きて、川かわの水みずの上うえにいた人ひとが、天てんに向むかって、その右みぎの手てと左ひだりの手てをあげ、永遠えいえんに生いける者ものをさして誓ちかい、それは、ひと時ときとふた時ときと半時はんときである。聖せいなる民たみを打うち砕くだく力ちからが消きえ去さる時ときに、これらの事ことはみな成就じょうじゅするだろうと言いうのを、わたしは聞きいた。12:8 わたしはこれを聞きいたけれども悟さとれなかった。わたしは言いった、「わが主しゅよ、これらの事ことの結末けつまつはどんなでしょうか」。 12:9 彼かれは言いった、「ダニエルよ、あなたの道みちを行いきなさい。この言葉ことばは終おわりの時ときまで秘ひし、かつ封ふうじておかれます。12:10 多おおくの者ものは、自分じぶんを清きよめ、自分じぶんを白しろくし、かつ練ねられるでしょう。しかし、悪わるい者ものは悪わるい事ことをおこない、ひとりも悟さとることはないが、賢かしこい者ものは悟さとるでしょう。 12:11 常供じょうくの燔祭はんさいが取すり除のぞかれ、荒あらす憎にくむべきものが立たてられる時ときから、千二百九十日にちが定さだめられている。12:12 待まっていて千三百三十五日にちに至いたる者ものはさいわいです。12:13 しかし、終おわりまであなたの道みちを行いきなさい。あなたは休やすみに入はいり、定さだめられた日ひの終おわりに立たって、あなたの分ぶんを受うけるでしょう」。
7:1 バビロンの王おうベルシャザルの元年がんねんに、ダニエルは床とこにあって夢ゆめを見み、また脳のう中ちゅうに幻まぼろしを得えたので、彼かれはその夢ゆめをしるして、その事ことの大意たいいを述のべた。
7:2 ダニエルは述のべて言いった、「わたしは夜よるの幻まぼろしのうちに見みた。見みよ、天てんの四方しほうからの風かぜが大海おおうみをかきたてると、
7:3 四つの大おおきな獣けものが海うみからあがってきた。その形かたちは、おのおの異ことなり、
7:4 第だい一のものは、ししのようで、わしの翼つばさをもっていたが、わたしが見みていると、その翼つばさは抜ぬきとられ、また地ちから起おこされて、人ひとのように二本ほんの足あしで立たたせられ、かつ人ひとの心こころが与あたえられた。
7:5 見みよ、第だい二の獣けものは熊くまのようであった。これはそのからだの一方いっぽうをあげ、その口くちの歯はの間あいだに、三本ぼんの肋骨ろっこつをくわえていたが、これに向むかって『起おきあがって、多おおくの肉にくを食くらえ』と言いう声こえがあった。
7:6 その後のちわたしが見みたのは、ひょうのような獣けもので、その背せには鳥とりの翼つばさが四つあった。またこの獣けものには四つの頭あたまがあり、主権しゅけんが与あたえられた。
7:7 その後のちわたしが夜よるの幻まぼろしのうちに見みた第だい四の獣けものは、恐おそろしい、ものすごい、非常ひじょうに強つよいもので、大おおきな鉄てつの歯はがあり、食くらい、かつ、かみ砕くだいて、その残のこりを足あしで踏ふみつけた。これは、その前まえに出でたすべての獣けものと違ちがって、十の角つのを持もっていた。
7:8 わたしが、その角つのを注意ちゅういして見みていると、その中なかに、また一つの小ちいさい角つのが出でてきたが、この小ちいさい角つののために、さきの角つののうち三つがその根ねから抜ぬけ落おちた。見みよ、この小ちいさい角つのには、人ひとの目めのような目めがあり、また大おおきな事ことを語かたる口くちがあった。
7:9 わたしが見みていると、
7:10 彼かれの前まえから、ひと筋すじの火ひの流ながれが出でてきた。彼かれに仕つかえる者ものは千々せんせん、彼かれの前まえにはべる者ものは万々まんまん、審判しんぱんを行おこなう者ものはその席せきに着つき、かずかずの書かき物ものが開ひらかれた。
7:11 わたしは、その角つのの語かたる大おおいなる言葉ことばの声こえがするので見みていたが、わたしが見みている間あいだにその獣けものは殺ころされ、そのからだはそこなわれて、燃もえる火ひに投なげ入いれられた。
7:12 その他たの獣けものはその主権しゅけんを奪うばわれたが、その命いのちは、時ときと季節きせつの来くるまで延のばされた。
7:13 わたしはまた夜よるの幻まぼろしのうちに見みていると、
7:14 彼かれに主権しゅけんと光栄こうえいと国くにとを賜たまい、諸民しょみん、諸しょ族ぞく、諸国しょこく語ごの者ものを彼かれに仕つかえさせた。その主権しゅけんは永遠えいえんの主権しゅけんであって、なくなることがなく、その国くには滅ほろびることがない。
7:15 そこで、われダニエル、わがうちなる霊れいは憂うれえ、わが脳中のうちゅうの幻まぼろしは、わたしを悩なやましたので、
7:16 わたしは、そこに立たっている者もののひとりに近寄ちかよって、このすべての事ことの真意しんいを尋たずねた。するとその者ものは、わたしにこの事ことの解とき明あかしを告つげ知しらせた。
7:17 『この四つの大おおきな獣けものは、地ちに起おこらんとする四人にんの王おうである。
7:18 しかしついには、いと高たかき者ものの聖徒せいとが国くにを受うけ、永遠えいえんにその国くにを保たもって、世々よよかぎりなく続つづく』。
7:19 そこでわたしは、さらに第だい四の獣けものの真意しんいを知しろうとした。その獣けものは他たの獣けものと異ことなって、はなはだ恐おそろしく、その歯はは鉄てつ、そのつめは青銅せいどうであって、食くらい、かつ、かみ砕くだいて、その残のこりを足あしで踏ふみつけた。
7:20 この獣けものの頭あたまには、十の角つのがあったが、そのほかに一つの角つのが出でてきたので、この角つののために、三つの角つのが抜ぬけ落おちた。この角つのには目めがあり、また大おおきな事ことを語かたる口くちがあって、その形かたちは、その同類どうるいのものよりも大おおきく見みえた。
7:21 わたしが見みていると、この角つのは聖徒せいとと戦たたかって、彼かれらに勝かったが、
7:22 ついに日ひの老おいたる者ものがきて、いと高たかき者ものの聖徒せいとのために審判しんぱんをおこなった。そしてその時ときがきて、この聖徒せいとたちは国くにを受うけた。
7:23 彼かれはこう言いった、『第だい四の獣けものは地上ちじょうの第だい四の国くにである。これはすべての国くにと異ことなって、全ぜん世界せかいを併合へいごうし、これを踏ふみつけ、かつ打うち砕くだく。
7:24 十の角つのはこの国くにから起おこる十人にんの王おうである。その後のちにまたひとりの王おうが起おこる。彼かれは先さきの者ものと異ことなり、かつ、その三人にんの王おうを倒たおす。
7:25 彼かれは、いと高たかき者ものに敵てきして言葉ことばを出だし、かつ、いと高たかき者ものの聖徒せいとを悩なやます。彼かれはまた時ときと律法りっぽうとを変かえようと望のぞむ。聖徒せいとはひと時ときと、ふた時ときと、半時はんときの間あいだ、彼かれの手てにわたされる。
7:26 しかし審判しんぱんが行おこなわれ、彼かれの主権しゅけんは奪うばわれて、永遠えいえんに滅ほろび絶たやされ、
7:27 国くにと主権しゅけんと全ぜん天下てんかの国々くにぐにの権威けんいとは、いと高たかき者ものの聖徒せいとたる民たみに与あたえられる。彼かれらの国くには永遠えいえんの国くにであって、諸国しょこくの者ものはみな彼かれらに仕つかえ、かつ従したがう』。
7:28 その事ことはここで終おわった。われダニエルは、これを思おもいまわして、非常ひじょうに悩なやみ、顔色かおいろも変かわった。しかし、わたしはこの事ことを心こころに留とめた」。
第8章 8:1 われダニエルは先さきに幻まぼろしを見みたが、後のちまたベルシャザル王おうの治世ちせいの第だい三年ねんに、一つの幻まぼろしがわたしに示しめされた。8:2 その幻まぼろしを見みたのは、エラム州しゅうの首都しゅとスサにいた時ときであって、ウライ川かわのほとりにおいてであった。8:3 わたしが目めをあげて見みると、川かわの岸きしに一匹ぴきの雄羊おひつじが立たっていた。これに二つの角つのがあって、その角つのは共ともに長ながかったが、一つの角つのは他たの角つのよりも長ながかった。その長ながいのは後のちに伸のびたのである。8:4 わたしが見みていると、その雄羊おひつじは、西にし、北きた、南みなみにむかって突撃とつげきしたが、これに当あたることのできる獣けものは一匹ぴきもなく、またその手てから救すくい出だすことのできるものもなかった。これはその心こころのままにふるまい、みずから高たかぶっていた。 8:5 わたしがこれを考かんがえ、見みていると、一匹ぴきの雄おやぎが、全ぜん地ちのおもてを飛とびわたって西にしからきたが、その足あしは土つちを踏ふまなかった。このやぎには、目めの間あいだに著いちじるしい一つの角つのがあった。8:6 この者ものは、さきにわたしが川かわの岸きしに立たっているのを見みた、あの二つの角つののある雄羊おひつじにむかってきて、激はげしく怒いかってこれに走はしり寄よった。8:7 わたしが見みていると、それが雄羊おひつじに近寄ちかよるや、これにむかって怒いかりを発はっし、雄羊おひつじを撃うって、その二つの角つのを砕くだいた。雄羊おひつじには、これに当あたる力ちからがなかったので、やぎは雄羊おひつじを地ちに打うち倒たおして踏ふみつけた。また、その雄羊おひつじを、やぎの力ちからから救すくいうる者ものがなかった。8:8 こうして、その雄おやぎは、はなはだしく高たかぶったが、その盛さかんになった時とき、あの大おおきな角つのが折おれて、その代かわりに四つの著いちじるしい角つのが生しょうじ、天てんの四方しほうに向むかった。 8:9 その角つのの一つから、一つの小ちいさい角つのが出でて、南みなみに向むかい、東ひがしに向むかい、麗うるわしい地ちに向むかって、はなはだしく大おおきくなり、8:10 天てんの衆しゅう群ぐんに及およぶまでに大おおきくなり、星ほしの衆しゅう群ぐんのうちの数個すうこを地ちに投なげ下くだして、これを踏ふみつけ、8:11 またみずから高たかぶって、その衆しゅう群ぐんの主しゅに敵てきし、その常供じょうくの燔祭はんさいを取とり除のぞき、かつその聖所せいじょを倒たおした。8:12 そしてその衆しゅう群ぐんは、罪つみによって、常供じょうくの燔祭はんさいと共ともに、これにわたされた。その角つのはまた真理しんりを地ちに投なげうち、ほしいままにふるまって、みずから栄さかえた。8:13 それから、わたしはひとりの聖者せいじゃの語かたっているのを聞きいた。またひとりの聖者せいじゃがあって、その語かたっている聖者せいじゃにむかって言いった、「常供じょうくの燔祭はんさいと、荒あらすことをなす罪つみと、聖所せいじょとその衆しゅう群ぐんがわたされて、足あしの下したに踏ふみつけられることについて、幻まぼろしにあらわれたことは、いつまでだろうか」と。8:14 彼かれは言いった、「二千三百の夕ゆうと朝あさの間あいだである。そして聖所せいじょは清きよめられてその正ただしい状態じょうたいに復ふくする」。 8:15 われダニエルはこの幻まぼろしを見みて、その意味いみを知しろうと求もとめていた時とき、見みよ、人ひとのように見みえる者ものが、わたしの前まえに立たった。8:16 わたしはウライ川かわの両りょう岸がんの間あいだから人ひとの声こえが出でて、呼よばわるのを聞きいた、「ガブリエルよ、この幻まぼろしをその人ひとに悟さとらせよ」。8:17 すると彼かれはわたしの立たっている所ところにきた。彼かれがきたとき、わたしは恐おそれて、ひれ伏ふした。しかし、彼かれはわたしに言いった、「人ひとの子こよ、悟さとりなさい。この幻まぼろしは終おわりの時ときにかかわるものです」。 8:18 彼かれがわたしに語かたっていた時とき、わたしは地ちにひれ伏ふして、深ふかい眠ねむりに陥おちいったが、彼かれはわたしに手てを触ふれ、わたしを立たたせて、8:19 言いった、「見みよ、わたしは憤いきどおりの終おわりの時ときに起おこるべきことを、あなたに知しらせよう。それは定さだめられた終おわりの時ときにかかわるものであるから。8:20 あなたが見みた、あの二つの角つののある雄羊おひつじは、メデアとペルシャの王おうです。8:21 また、かの雄おやぎはギリシヤの王おうです、その目めの間あいだの大おおきな角つのは、その第だい一の王おうです。8:22 またその角つのが折おれて、その代かわりに四つの角つのが生しょうじたのは、その民たみから四つの国くにが起おこるのです。しかし、第だい一の王おうのような勢力せいりょくはない。8:23 彼かれらの国くにの終おわりの時ときになり、罪つみびとの罪つみが満みちるに及およんで、ひとりの王おうが起おこるでしょう。その顔かおは猛悪もうあくで、彼かれはなぞを解とき、8:24 その勢力せいりょくは盛さかんであって、恐おそろしい破壊はかいをなし、そのなすところ成功せいこうして、有力ゆうりょくな人々ひとびとと、聖徒せいとである民たみを滅ほろぼすでしょう。8:25 彼かれは悪知恵わるぢえをもって、偽いつわりをその手てにおこない遂とげ、みずから心こころに高たかぶり、不意ふいに多おおくの人ひとを打うち滅ほろぼし、また君きみの君きみたる者ものに敵てきするでしょう。しかし、ついに彼かれは人手ひとでによらずに滅ほろぼされるでしょう。8:26 先さきに示しめされた朝夕あさゆうの幻まぼろしは真実しんじつです。しかし、あなたはその幻まぼろしを秘密ひみつにしておかなければならない。これは多おおくの日ひの後のちにかかわる事ことだから」。 8:27 われダニエルは疲つかれはてて、数日すうじつの間あいだ病やみわずらったが、後のち起おきて、王おうの事務じむを執とった。しかし、わたしはこの幻まぼろしの事ことを思おもって驚おどろいた。またこれを悟さとることができなかった。 第9章 9:1 メデアびとアハシュエロスの子こダリヨスが、カルデヤびとの王おうとなったその元年がんねん、9:2 すなわちその治世ちせいの第だい一年ねんに、われダニエルは主しゅが預言者よげんしゃエレミヤに臨のぞんで告つげられたその言葉ことばにより、エルサレムの荒廃こうはいの終おわるまでに経へねばならぬ年ねんの数かずは七十年ねんであることを、文書ぶんしょによって悟さとった。 9:3 それでわたしは、わが顔かおを主しゅなる神かみに向むけ、断食だんじきをなし、荒布あらぬのを着き、灰はいをかぶって祈いのり、かつ願ねがい求もとめた。9:4 すなわちわたしは、わが神かみ、主しゅに祈いのり、ざんげして言いった、「ああ、大おおいなる恐おそるべき神かみ、主しゅ、おのれを愛あいし、おのれの戒いましめを守まもる者もののために契約けいやくを保たもち、いつくしみを施ほどこされる者ものよ、9:5 われわれは罪つみを犯おかし、悪あくをおこない、よこしまなふるまいをなし、そむいて、あなたの戒いましめと、おきてを離はなれました。9:6 われわれはまた、あなたのしもべなる預言者よげんしゃたちが、あなたの名なをもって、われわれの王おうたち、君きみたち、先祖せんぞたち、および国くにのすべての民たみに告つげた言葉ことばに聞きき従したがいませんでした。9:7 主しゅよ、正義せいぎはあなたのものですが、恥はじはわれわれに加くわえられて、今日こんにちのような有様ありさまです。すなわちユダの人々ひとびと、エルサレムの住民じゅうみんおよび全ぜんイスラエルの者ものは、近ちかき者ものも、遠とおき者ものもみな、あなたが追おいやられたすべての国々くにぐにで恥はじをこうむりました。これは彼かれらがあなたにそむいて犯おかした罪つみによるのです。9:8 主しゅよ、恥はじはわれわれのもの、われわれの王おうたち、君きみたちおよび先祖せんぞたちのものです。これはわれわれがあなたにむかって罪つみを犯おかしたからです。9:9 あわれみと、ゆるしはわれわれの神かみ、主しゅのものです。これはわれわれが彼かれにそむいたからです。9:10 またわれわれの神かみ、主しゅのみ声こえに聞きき従したがわず、主しゅがそのしもべ預言者よげんしゃたちによって、われわれの前まえに賜たまわった律法りっぽうを行おこなわなかったからです。9:11 まことにイスラエルの人々ひとびとは皆みなあなたの律法りっぽうを犯おかし、離はなれ去さって、あなたのみ声こえに聞きき従したがわなかったので、神かみのしもべモーセの律法りっぽうにしるされたのろいと誓ちかいが、われわれの上うえに注そそぎかかりました。これはわれわれが神かみにむかって罪つみを犯おかしたからです。9:12 すなわち神かみは大おおいなる災わざわいをわれわれの上うえにくだして、さきにわれわれと、われわれを治おさめたつかさたちにむかって告つげられた言葉ことばを実行じっこうされたのです。あのエルサレムに臨のぞんだような事ことは、全ぜん天下てんかにいまだかつてなかった事ことです。9:13 モーセの律法りっぽうにしるされたように、この災わざわいはすべてわれわれに臨のぞみましたが、なおわれわれの神かみ、主しゅの恵めぐみを請こい求もとめることをせず、その不義ふぎを離はなれて、あなたの真理しんりを悟さとることをもしませんでした。9:14 それゆえ、主しゅはこれを心こころに留とめて、災わざわいをわれわれに下くだされたのです。われわれの神かみ、主しゅは、何事なにごとをされるにも、正ただしくあらせられます。ところが、われわれはそのみ声こえに聞きき従したがわなかったのです。9:15 われわれの神かみ、主しゅよ、あなたは強つよきみ手てをもって、あなたの民たみをエジプトの地ちから導みちびき出だして、今日こんにちのように、み名なをあげられました。われわれは罪つみを犯おかし、よこしまなふるまいをしました。9:16 主しゅよ、どうぞあなたが、これまで正ただしいみわざをなされたように、あなたの町まちエルサレム、あなたの聖せいなる山やまから、あなたの怒いかりと憤いきどおりとを取とり去さってください。これはわれわれの罪つみと、われわれの先祖せんぞの不義ふぎのために、エルサレムと、あなたの民たみが、われわれの周囲しゅういの者ものの物笑ものわらいとなったからです。9:17 それゆえ、われわれの神かみよ、しもべの祈いのりと願ねがいを聞きいてください。主しゅよ、あなたご自身じしんのために、あの荒あれたあなたの聖所せいじょに、あなたのみ顔かおを輝かがやかせてください。9:18 わが神かみよ、耳みみを傾かたむけて聞きいてください。目めを開ひらいて、われわれの荒あれたさまを見み、み名なをもってとなえられる町まちをごらんください。われわれがあなたの前まえに祈いのりをささげるのは、われわれの義ぎによるのではなく、ただあなたの大おおいなるあわれみによるのです。9:19 主しゅよ、聞きいてください。主しゅよ、ゆるしてください。主しゅよ、み心こころに留とめて、おこなってください。わが神かみよ、あなたご自身じしんのために、これを延のばさないでください。あなたの町まちと、あなたの民たみは、み名なをもってとなえられているからです」。 9:20 わたしがこう言いって祈いのり、かつわが罪つみとわが民たみイスラエルの罪つみをざんげし、わが神かみの聖せいなる山やまのために、わが神かみ、主しゅの前まえに願ねがいをしていたとき、9:21 すなわちわたしが祈いのりの言葉ことばを述のべていたとき、わたしが初はじめに幻まぼろしのうちに見みた、かの人ひとガブリエルは、すみやかに飛とんできて、夕ゆうの供そなえ物ものをささげるころ、わたしに近ちかづき、9:22 わたしに告つげて言いった、「ダニエルよ、わたしは今いまあなたに、知恵ちえと悟さとりを与あたえるためにきました。9:23 あなたが祈いのりを始はじめたとき、み言葉ことばが出でたので、それをあなたに告つげるためにきたのです。あなたは大おおいに愛あいせられている者ものです。ゆえに、このみ言葉ことばを考かんがえて、この幻まぼろしを悟さとりなさい。 9:24 あなたの民たみと、あなたの聖せいなる町まちについては、七十週しゅうが定さだめられています。これはとがを終おわらせ、罪つみに終おわりを告つげ、不義ふぎをあがない、永遠えいえんの義ぎをもたらし、幻まぼろしと預言者よげんしゃを封ふうじ、いと聖せいなる者ものに油あぶらを注そそぐためです。9:25 それゆえ、エルサレムを建たて直なおせという命令めいれいが出でてから、メシヤなるひとりの君きみが来くるまで、七週しゅうと六十二週しゅうあることを知しり、かつ悟さとりなさい。その間あいだに、しかも不安ふあんな時代じだいに、エルサレムは広場ひろばと街路がいろとをもって、建たて直なおされるでしょう。9:26 その六十二週しゅうの後のちにメシヤは断たたれるでしょう。ただし自分じぶんのためにではありません。またきたるべき君きみの民たみは、町まちと聖所せいじょとを滅ほろぼすでしょう。その終おわりは洪水こうずいのように臨のぞむでしょう。そしてその終おわりまで戦争せんそうが続つづき、荒廃こうはいは定さだめられています。9:27 彼かれは一週いっしゅうの間あいだ多おおくの者ものと、堅かたく契約けいやくを結むすぶでしょう。そして彼かれはその週しゅうの半なかばに、犠牲ぎせいと供そなえ物ものとを廃はいするでしょう。また荒あらす者ものが憎にくむべき者ものの翼つばさに乗のって来くるでしょう。こうしてついにその定さだまった終おわりが、その荒あらす者ものの上うえに注そそがれるのです」。 第10章 10:1 ペルシャの王おうクロスの第だい三年ねんに、ベルテシャザルと名なづけられたダニエルに、一つの言葉ことばが啓示けいじされたが、その言葉ことばは真実しんじつであり、大おおいなる戦たたかいを意味いみするものであった。彼かれはその言葉ことばに心こころを留とめ、その幻まぼろしを悟さとった。 10:2 そのころ、われダニエルは三週しゅうの間あいだ、悲かなしんでいた。10:3 すなわち三週間しゅうかんの全まったく満みちるまでは、うまい物ものを食たべず、肉にくと酒さけとを口くちにせず、また身みに油あぶらを塗ぬらなかった。10:4 正月しょうがつの二十四日かに、わたしがチグリスという大川おおかわの岸きしに立たっていたとき、10:5 目めをあげて望のぞみ見みると、ひとりの人ひとがいて、亜麻あま布ぬのの衣ころもを着き、ウパズの金きんの帯おびを腰こしにしめていた。10:6 そのからだは緑柱石りょくちゅうせきのごとく、その顔かおは電光でんこうのごとく、その目めは燃もえるたいまつのごとく、その腕うでと足あしは、みがいた青銅せいどうのように輝かがやき、その言葉ことばの声こえは、群衆ぐんしゅうの声こえのようであった。10:7 この幻まぼろしを見みた者ものは、われダニエルのみであって、わたしと共ともにいた人々ひとびとは、この幻まぼろしを見みなかったが、彼かれらは大おおいにおののいて、逃にげかくれた。10:8 それでわたしひとり残のこって、この大おおいなる幻まぼろしを見みたので、力ちからが抜ぬけ去さり、わが顔かおの輝かがやきは恐おそろしく変かわって、全まったく力ちからがなくなった。10:9 わたしはその言葉ことばの声こえを聞きいたが、その言葉ことばの声こえを聞きいたとき、顔かおを伏ふせ、地ちにひれ伏ふして、深ふかい眠ねむりに陥おちいった。 10:10 見みよ、一つの手てがあって、わたしに触ふれたので、わたしは震ふるえながらひざまずき、手てをつくと、10:11 彼かれはわたしに言いった、「大おおいに愛あいせられる人ひとダニエルよ、わたしがあなたに告つげる言葉ことばに心こころを留とめ、立たちあがりなさい。わたしは今いまあなたのもとにつかわされたのです」。彼かれがこの言葉ことばをわたしに告つげているとき、わたしは震ふるえながら立たちあがった。10:12 すると彼かれはわたしに言いった、「ダニエルよ、恐おそれるに及およばない。あなたが悟さとろうと心こころをこめ、あなたの神かみの前まえに身みを悩なやましたその初はじめの日ひから、あなたの言葉ことばは、すでに聞きかれたので、わたしは、あなたの言葉ことばのゆえにきたのです。10:13 ペルシャの国くにの君きみが、二十一日にちの間あいだわたしの前まえに立たちふさがったが、天使てんしの長ちょうのひとりであるミカエルがきて、わたしを助たすけたので、わたしは、彼かれをペルシャの国くにの君きみと共ともに、そこに残のこしておき、10:14 末すえの日ひに、あなたの民たみに臨のぞまんとする事ことを、あなたに悟さとらせるためにきたのです。この幻まぼろしは、なおきたるべき日ひにかかわるものです」。 10:15 彼かれがこれらの言葉ことばを、わたしに述のべていたとき、わたしは、地ちにひれ伏ふして黙だまっていたが、10:16 見みよ、人ひとの子このような者ものが、わたしのくちびるにさわったので、わたしは口くちを開ひらき、わが前まえに立たっている者ものに語かたって言いった、「わが主しゅよ、この幻まぼろしによって、苦くるしみがわたしに臨のぞみ、全まったく力ちからを失うしないました。10:17 わが主しゅのしもべは、どうしてわが主しゅと語かたることができましょう。わたしは全まったく力ちからを失うしない、息いきも止とまるばかりです」。 10:18 人ひとの形かたちをした者ものは、再ふたたびわたしにさわり、わたしを力ちからづけて、10:19 言いった、「大おおいに愛あいせられる人ひとよ、恐おそれるには及およばない。安心あんしんしなさい。心こころを強つよくし、勇気ゆうきを出だしなさい」。彼かれがこう言いったとき、わたしは力ちからづいて言いった、「わが主しゅよ、語かたってください。あなたは、わたしに力ちからをつけてくださったから」。10:20 そこで彼かれは言いった、「あなたは、わたしがなんのためにきたかを知しっていますか。わたしは、今いま帰かえっていって、ペルシャの君きみと戦たたかおうとしているのです。彼かれとの戦たたかいがすむと、ギリシヤの君きみがあらわれるでしょう。10:21 しかしわたしは、まず真理しんりの書しょにしるされている事ことを、あなたに告つげよう。わたしを助たすけて、彼かれらと戦たたかう者ものは、あなたがたの君きみミカエルのほかにはありません。 第11章 11:1 わたしはまたメデアびとダリヨスの元年がんねんに立たって彼かれを強つよめ、彼かれを力ちからづけたことがあります。 11:2 わたしは今いまあなたに真理しんりを示しめそう。見みよ、ペルシャになお三人にんの王おうが起おこるでしょう。その第だい四の者ものは、他たのすべての者ものにまさって富とみ、その富とみによって強つよくなったとき、彼かれはすべてのものを動員どういんして、ギリシヤの国くにを攻せめます。11:3 またひとりの勇いさましい王おうが起おこり、大おおいなる権力けんりょくをもって世よを治おさめ、その意いのままに事ことをなすでしょう。11:4 彼かれが強つよくなった時とき、その国くには破やぶられ、天てんの四方しほうに分わかたれます。それは彼かれの子孫しそんに帰きせず、また彼かれが治おさめたほどの権力けんりょくもなく、彼かれの国くには抜ぬき取とられて、これら以外いがいの者ものどもに帰きするでしょう。 11:5 南みなみの王おうは強つよくなります。しかしその将軍しょうぐんのひとりが、彼かれにまさって強つよくなり、権力けんりょくをふるいます。その権力けんりょくは、大おおいなる権力けんりょくです。11:6 年としを経へて後のち、彼かれらは縁組えんぐみをなし、南みなみの王おうの娘むすめが、北きたの王おうにきて、和親わしんをはかります。しかしその女おんなは、その腕うでの力ちからを保たもつことができず、またその王おうも、その子こも立たつことができません。その女おんなと、その従者じゅうしゃと、その子こおよびその女おんなを獲えた者ものとは、わたされるでしょう。 11:7 そのころ、この女おんなの根ねから、一つの芽めが起おこって彼かれに代かわり、北きたの王おうの軍勢ぐんぜいにむかってきて、その城しろに討うち入いり、これを攻せめて勝かつでしょう。11:8 彼かれはまた彼かれらの神々かみがみ、鋳い像ぞうおよび金銀きんぎんの貴重きちょうな器物うつわものを、エジプトに携たずさえ去さり、そして数年すうねんの間あいだ、北きたの王おうを討うつことを控ひかえます。11:9 その後のち、北きたの王おうは、南みなみの王おうの国くにに討うち入はいるが、自分じぶんの国くにに帰かえるでしょう。 11:10 その子こらはまた憤激ふんげきして、あまたの大軍たいぐんを集あつめ、進すすんで行いって、みなぎりあふれ、通とおり過すぎるが、また行いって、その城しろにまで攻せめ寄よせるでしょう。11:11 そこで南みなみの王おうは、大おおいに怒いかり、出でてきて北きたの王おうと戦たたかいます。彼かれは大軍たいぐんを起おこすけれども、その軍ぐんは相手あいての手てにわたされるでしょう。11:12 彼かれがその軍ぐんを打うち破やぶったとき、その心こころは高たかぶり、数すう万まん人にんを倒たおします。しかし、勝かつことはありません。11:13 それは北きたの王おうがまた初はじめよりも大おおいなる軍ぐんを起おこし、数年すうねんの後のち、大おおいなる軍勢ぐんぜいと多おおくの軍需ぐんじゅ品ひんとをもって、攻せめて来くるからです。 11:14 そのころ多おおくの者ものが起おこって、南みなみの王おうに敵てきします。またあなたの民たみのうちのあらくれ者ものが、みずから高たかぶって事ことをなし、幻まぼろしを成就じょうじゅしようとするが失敗しっぱいするでしょう。11:15 こうして北きたの王おうがきて、塁るいを築きずき、堅固けんごな町まちを取とるが、南みなみの王おうの力ちからは、これに立たち向むかうことができず、またそのえり抜ぬきの民たみも、これに立たち向むかう力ちからがありません。11:16 これに攻せめて来くる者ものは、その心こころのままに事ことをなし、その前まえに立たち向むかうことのできる者ものはなく、彼かれは麗うるわしい地ちに立たち、その地ちは全まったく彼かれのために荒あらされます。11:17 彼かれは全国ぜんこくの力ちからをもって討うち入はいろうと、その顔かおを向むけるが、相手あいてと仲直なかなおりをし、その娘むすめを与あたえて、その国くにを取とろうとします。しかし、その事ことは成ならず、また彼かれの利益りえきにはならないでしょう。11:18 その後のち、彼かれは顔かおを海沿うみぞいの国々くにぐにに向むけて、その多おおくのものを取とります。しかし、ひとりの大将たいしょうがあって、彼かれが与あたえた恥辱ちじょくをそそぎ、その恥辱ちじょくを彼かれの上うえに返かえします。11:19 こうして彼かれは、その顔かおを自分じぶんの国くにの要害ようがいに向むけるが、彼かれはつまずき倒たおれて消きえうせるでしょう。 11:20 彼かれに代かわって起おこる者ものは、栄光えいこうの国くにに人ひとをつかわして、租税そぜいを取とり立たてさせるでしょう。しかし彼かれは、怒いかりにも戦たたかいにもよらず、数日すうじつのうちに滅ほろぼされます。11:21 彼かれに代かわって起おこる者ものは、卑いやしむべき者ものであって、彼かれには、王おうの尊厳そんげんが与あたえられず、彼かれは不意ふいにきて、巧言こうげんをもって国くにを獲えるでしょう。11:22 洪水こうずいのような軍勢ぐんぜいは、彼かれの前まえに押おし流ながされて敗やぶられ、契約けいやくの君きみたる者ものもまた敗やぶられるでしょう。11:23 彼かれは、これと同盟どうめいを結むすんで後のち、偽いつわりのおこないをなし、わずかな民たみをもって強つよくなり、11:24 不意ふいにその州しゅうの最もっとも肥こえた所ところに攻せめ入いり、その父ちちも、その父ちちの父ちちもしなかった事ことをおこない、その奪うばった物もの、かすめた物ものおよび財宝ざいほうを、人々ひとびとの中なかに散ちらすでしょう。彼かれはまた計略けいりゃくをめぐらして、堅固けんごな城しろを攻せめるが、ただし、それは時ときの至いたるまでです。11:25 彼かれはその勢力せいりょくと勇気ゆうきとを奮ふるい起おこし、大軍たいぐんを率ひきいて南みなみの王おうを攻せめます。南みなみの王おうもまたみずから奮ふるい、はなはだ大おおいなる強力きょうりょくな軍勢ぐんぜいをもって戦たたかいます。しかし、彼かれに対たいして、陰謀いんぼうをめぐらす者ものがあるので、これに立たち向むかうことができません。11:26 すなわち彼かれの食物しょくもつを食たべる者ものたちが、彼かれを滅ほろぼします。そして、その軍勢ぐんぜいは押おし流ながされて、多おおくの者ものが倒たおれ死しぬでしょう。11:27 このふたりの王おうは、害がいを与あたえようと心こころにはかり、ひとつ食卓しょくたくに共ともに食しょくして、偽いつわりを語かたるが、それは成功せいこうしません。終おわりはなお定さだまった時ときの来くるまでこないからです。11:28 彼かれは大おおいなる財宝ざいほうをもって、自分じぶんの国くにに帰かえるでしょう。しかし、彼かれの心こころは聖せいなる契約けいやくにそむき、ほしいままに事ことをなして、自分じぶんの国くにに帰かえります。 11:29 定さだまった時ときになって、彼かれはまた南みなみに討うち入いります。しかし、この時ときは前まえの時ときのようではありません。11:30 それはキッテムの船ふねが、彼かれに立たち向むかって来くるので、彼かれは脅おびやかされて帰かえり、聖せいなる契約けいやくに対たいして憤いきどおり、事ことを行おこなうでしょう。彼かれは帰かえっていって、聖せいなる契約けいやくを捨すてる者ものを顧かえりみ用もちいるでしょう。11:31 彼かれから軍勢ぐんぜいが起おこって、神殿しんでんと城郭じょうかくを汚けがし、常供じょうくの燔祭はんさいを取とり除のぞき、荒あらす憎にくむべきものを立たてるでしょう。11:32 彼かれは契約けいやくを破やぶる者ものどもを、巧言こうげんをもってそそのかし、そむかせるが、自分じぶんの神かみを知しる民たみは、堅かたく立たって事ことを行おこないます。11:33 民たみのうちの賢かしこい人々ひとびとは、多おおくの人ひとを悟さとりに至いたらせます。それでも、彼かれらはしばらくの間あいだ、やいばにかかり、火ひに焼やかれ、捕とらわれ、かすめられなどして倒たおれます。11:34 その倒たおれるとき、彼かれらは少すこしの助たすけを獲えます。また多おおくの人ひとが、巧言こうげんをもって彼かれらにくみするでしょう。11:35 また賢かしこい者もののうちのある者ものは、終おわりの時ときまで、自分じぶんを練ねり、清きよめ、白しろくするために倒たおれるでしょう。終おわりはなお定さだまった時ときの来くるまでこないからです。 11:36 この王おうは、その心こころのままに事ことをおこない、すべての神かみを越こえて、自分じぶんを高たかくし、自分じぶんを大おおいにし、神々かみがみの神かみたる者ものにむかって、驚おどろくべき事ことを語かたり、憤いきどおりのやむ時ときまで栄さかえるでしょう。これは定さだめられた事ことが成就じょうじゅするからです。11:37 彼かれはその先祖せんぞの神々かみがみを顧かえりみず、また婦人ふじんの好このむ者ものも、いかなる神かみをも顧かえりみないでしょう。彼かれはすべてにまさって、自分じぶんを大おおいなる者ものとするからです。11:38 彼かれはこれらの者ものの代かわりに、要害ようがいの神かみをあがめ、金きん、銀ぎん、宝石ほうせき、および宝物たからものをもって、その先祖せんぞたちの知しらなかった神かみをあがめ、11:39 異邦いほうの神かみの助たすけによって、最もっとも強固きょうこな城しろにむかって、事ことをなすでしょう。そして彼かれを認みとめる者ものには、栄誉えいよを増まし与あたえ、これに多おおくの人ひとを治おさめさせ、賞与しょうよとして土地とちを分わけ与あたえるでしょう。 11:40 終おわりの時ときになって、南みなみの王おうは彼かれと戦たたかいます。北きたの王おうは、戦車せんしゃと騎兵きへいと、多おおくの船ふねをもって、つむじ風かぜのように彼かれを攻せめ、国々くにぐににはいっていって、みなぎりあふれ、通とおり過すぎるでしょう。11:41 彼かれはまた麗うるわしい国くににはいります。また彼かれによって、多おおくの者ものが滅ほろぼされます。しかし、エドム、モアブ、アンモンびとらのうちのおもな者ものは、彼かれの手てから救すくわれましょう。11:42 彼かれは国々くにぐににその手てを伸のばし、エジプトの地ちも免まぬかれません。11:43 彼かれは金銀きんぎんの財宝ざいほうと、エジプトのすべての宝物たからものを支配しはいし、リビヤびと、エチオピヤびとは、彼かれのあとに従したがいます。11:44 しかし東ひがしと北きたからの知しらせが彼かれを驚おどろかし、彼かれは多おおくの人ひとを滅ほろぼし絶たやそうと、大おおいなる怒いかりをもって出でて行いきます。11:45 彼かれは海うみと麗うるわしい聖山せいざんとの間あいだに、天幕てんまくの宮殿きゅうでんを設もうけるでしょう。しかし、彼かれはついにその終おわりにいたり、彼かれを助たすける者ものはないでしょう。 第12章 12:1 その時ときあなたの民たみを守まもっている大おおいなる君きみミカエルが立たちあがります。また国くにが始はじまってから、その時ときにいたるまで、かつてなかったほどの悩なやみの時ときがあるでしょう。しかし、その時ときあなたの民たみは救すくわれます。すなわちあの書しょに名なをしるされた者ものは皆みな救すくわれます。12:2 また地ちのちりの中なかに眠ねむっている者もののうち、多おおくの者ものは目めをさますでしょう。そのうち永遠えいえんの生命せいめいにいたる者ものもあり、また恥はじと、限かぎりなき恥辱ちじょくをうける者ものもあるでしょう。12:3 賢かしこい者ものは、大空おおぞらの輝かがやきのように輝かがやき、また多おおくの人ひとを義ぎに導みちびく者ものは、星ほしのようになって永遠えいえんにいたるでしょう。12:4 ダニエルよ、あなたは終おわりの時ときまでこの言葉ことばを秘ひし、この書しょを封ふうじておきなさい。多おおくの者ものは、あちこちと探さぐり調しらべ、そして知識ちしきが増ますでしょう」。 12:5 そこで、われダニエルが見みていると、ほかにまたふたりの者ものがあって、ひとりは川かわのこなたの岸きしに、ひとりは川かわのかなたの岸きしに立たっていた。12:6 わたしは、かの亜麻あま布ぬのを着きて川かわの水みずの上うえにいる人ひとにむかって言いった、「この異常いじょうなできごとは、いつになって終おわるでしょうか」と。12:7 かの亜麻あま布ぬのを着きて、川かわの水みずの上うえにいた人ひとが、天てんに向むかって、その右みぎの手てと左ひだりの手てをあげ、永遠えいえんに生いける者ものをさして誓ちかい、それは、ひと時ときとふた時ときと半時はんときである。聖せいなる民たみを打うち砕くだく力ちからが消きえ去さる時ときに、これらの事ことはみな成就じょうじゅするだろうと言いうのを、わたしは聞きいた。12:8 わたしはこれを聞きいたけれども悟さとれなかった。わたしは言いった、「わが主しゅよ、これらの事ことの結末けつまつはどんなでしょうか」。 12:9 彼かれは言いった、「ダニエルよ、あなたの道みちを行いきなさい。この言葉ことばは終おわりの時ときまで秘ひし、かつ封ふうじておかれます。12:10 多おおくの者ものは、自分じぶんを清きよめ、自分じぶんを白しろくし、かつ練ねられるでしょう。しかし、悪わるい者ものは悪わるい事ことをおこない、ひとりも悟さとることはないが、賢かしこい者ものは悟さとるでしょう。 12:11 常供じょうくの燔祭はんさいが取すり除のぞかれ、荒あらす憎にくむべきものが立たてられる時ときから、千二百九十日にちが定さだめられている。12:12 待まっていて千三百三十五日にちに至いたる者ものはさいわいです。12:13 しかし、終おわりまであなたの道みちを行いきなさい。あなたは休やすみに入はいり、定さだめられた日ひの終おわりに立たって、あなたの分ぶんを受うけるでしょう」。
8:1 われダニエルは先さきに幻まぼろしを見みたが、後のちまたベルシャザル王おうの治世ちせいの第だい三年ねんに、一つの幻まぼろしがわたしに示しめされた。
8:2 その幻まぼろしを見みたのは、エラム州しゅうの首都しゅとスサにいた時ときであって、ウライ川かわのほとりにおいてであった。
8:3 わたしが目めをあげて見みると、川かわの岸きしに一匹ぴきの雄羊おひつじが立たっていた。これに二つの角つのがあって、その角つのは共ともに長ながかったが、一つの角つのは他たの角つのよりも長ながかった。その長ながいのは後のちに伸のびたのである。
8:4 わたしが見みていると、その雄羊おひつじは、西にし、北きた、南みなみにむかって突撃とつげきしたが、これに当あたることのできる獣けものは一匹ぴきもなく、またその手てから救すくい出だすことのできるものもなかった。これはその心こころのままにふるまい、みずから高たかぶっていた。
8:5 わたしがこれを考かんがえ、見みていると、一匹ぴきの雄おやぎが、全ぜん地ちのおもてを飛とびわたって西にしからきたが、その足あしは土つちを踏ふまなかった。このやぎには、目めの間あいだに著いちじるしい一つの角つのがあった。
8:6 この者ものは、さきにわたしが川かわの岸きしに立たっているのを見みた、あの二つの角つののある雄羊おひつじにむかってきて、激はげしく怒いかってこれに走はしり寄よった。
8:7 わたしが見みていると、それが雄羊おひつじに近寄ちかよるや、これにむかって怒いかりを発はっし、雄羊おひつじを撃うって、その二つの角つのを砕くだいた。雄羊おひつじには、これに当あたる力ちからがなかったので、やぎは雄羊おひつじを地ちに打うち倒たおして踏ふみつけた。また、その雄羊おひつじを、やぎの力ちからから救すくいうる者ものがなかった。
8:8 こうして、その雄おやぎは、はなはだしく高たかぶったが、その盛さかんになった時とき、あの大おおきな角つのが折おれて、その代かわりに四つの著いちじるしい角つのが生しょうじ、天てんの四方しほうに向むかった。
8:9 その角つのの一つから、一つの小ちいさい角つのが出でて、南みなみに向むかい、東ひがしに向むかい、麗うるわしい地ちに向むかって、はなはだしく大おおきくなり、
8:10 天てんの衆しゅう群ぐんに及およぶまでに大おおきくなり、星ほしの衆しゅう群ぐんのうちの数個すうこを地ちに投なげ下くだして、これを踏ふみつけ、
8:11 またみずから高たかぶって、その衆しゅう群ぐんの主しゅに敵てきし、その常供じょうくの燔祭はんさいを取とり除のぞき、かつその聖所せいじょを倒たおした。
8:12 そしてその衆しゅう群ぐんは、罪つみによって、常供じょうくの燔祭はんさいと共ともに、これにわたされた。その角つのはまた真理しんりを地ちに投なげうち、ほしいままにふるまって、みずから栄さかえた。
8:13 それから、わたしはひとりの聖者せいじゃの語かたっているのを聞きいた。またひとりの聖者せいじゃがあって、その語かたっている聖者せいじゃにむかって言いった、「常供じょうくの燔祭はんさいと、荒あらすことをなす罪つみと、聖所せいじょとその衆しゅう群ぐんがわたされて、足あしの下したに踏ふみつけられることについて、幻まぼろしにあらわれたことは、いつまでだろうか」と。
8:14 彼かれは言いった、「二千三百の夕ゆうと朝あさの間あいだである。そして聖所せいじょは清きよめられてその正ただしい状態じょうたいに復ふくする」。
8:15 われダニエルはこの幻まぼろしを見みて、その意味いみを知しろうと求もとめていた時とき、見みよ、人ひとのように見みえる者ものが、わたしの前まえに立たった。
8:16 わたしはウライ川かわの両りょう岸がんの間あいだから人ひとの声こえが出でて、呼よばわるのを聞きいた、「ガブリエルよ、この幻まぼろしをその人ひとに悟さとらせよ」。
8:17 すると彼かれはわたしの立たっている所ところにきた。彼かれがきたとき、わたしは恐おそれて、ひれ伏ふした。しかし、彼かれはわたしに言いった、「人ひとの子こよ、悟さとりなさい。この幻まぼろしは終おわりの時ときにかかわるものです」。
8:18 彼かれがわたしに語かたっていた時とき、わたしは地ちにひれ伏ふして、深ふかい眠ねむりに陥おちいったが、彼かれはわたしに手てを触ふれ、わたしを立たたせて、
8:19 言いった、「見みよ、わたしは憤いきどおりの終おわりの時ときに起おこるべきことを、あなたに知しらせよう。それは定さだめられた終おわりの時ときにかかわるものであるから。
8:20 あなたが見みた、あの二つの角つののある雄羊おひつじは、メデアとペルシャの王おうです。
8:21 また、かの雄おやぎはギリシヤの王おうです、その目めの間あいだの大おおきな角つのは、その第だい一の王おうです。
8:22 またその角つのが折おれて、その代かわりに四つの角つのが生しょうじたのは、その民たみから四つの国くにが起おこるのです。しかし、第だい一の王おうのような勢力せいりょくはない。
8:23 彼かれらの国くにの終おわりの時ときになり、罪つみびとの罪つみが満みちるに及およんで、ひとりの王おうが起おこるでしょう。その顔かおは猛悪もうあくで、彼かれはなぞを解とき、
8:24 その勢力せいりょくは盛さかんであって、恐おそろしい破壊はかいをなし、そのなすところ成功せいこうして、有力ゆうりょくな人々ひとびとと、聖徒せいとである民たみを滅ほろぼすでしょう。
8:25 彼かれは悪知恵わるぢえをもって、偽いつわりをその手てにおこない遂とげ、みずから心こころに高たかぶり、不意ふいに多おおくの人ひとを打うち滅ほろぼし、また君きみの君きみたる者ものに敵てきするでしょう。しかし、ついに彼かれは人手ひとでによらずに滅ほろぼされるでしょう。
8:26 先さきに示しめされた朝夕あさゆうの幻まぼろしは真実しんじつです。しかし、あなたはその幻まぼろしを秘密ひみつにしておかなければならない。これは多おおくの日ひの後のちにかかわる事ことだから」。
8:27 われダニエルは疲つかれはてて、数日すうじつの間あいだ病やみわずらったが、後のち起おきて、王おうの事務じむを執とった。しかし、わたしはこの幻まぼろしの事ことを思おもって驚おどろいた。またこれを悟さとることができなかった。
第9章 9:1 メデアびとアハシュエロスの子こダリヨスが、カルデヤびとの王おうとなったその元年がんねん、9:2 すなわちその治世ちせいの第だい一年ねんに、われダニエルは主しゅが預言者よげんしゃエレミヤに臨のぞんで告つげられたその言葉ことばにより、エルサレムの荒廃こうはいの終おわるまでに経へねばならぬ年ねんの数かずは七十年ねんであることを、文書ぶんしょによって悟さとった。 9:3 それでわたしは、わが顔かおを主しゅなる神かみに向むけ、断食だんじきをなし、荒布あらぬのを着き、灰はいをかぶって祈いのり、かつ願ねがい求もとめた。9:4 すなわちわたしは、わが神かみ、主しゅに祈いのり、ざんげして言いった、「ああ、大おおいなる恐おそるべき神かみ、主しゅ、おのれを愛あいし、おのれの戒いましめを守まもる者もののために契約けいやくを保たもち、いつくしみを施ほどこされる者ものよ、9:5 われわれは罪つみを犯おかし、悪あくをおこない、よこしまなふるまいをなし、そむいて、あなたの戒いましめと、おきてを離はなれました。9:6 われわれはまた、あなたのしもべなる預言者よげんしゃたちが、あなたの名なをもって、われわれの王おうたち、君きみたち、先祖せんぞたち、および国くにのすべての民たみに告つげた言葉ことばに聞きき従したがいませんでした。9:7 主しゅよ、正義せいぎはあなたのものですが、恥はじはわれわれに加くわえられて、今日こんにちのような有様ありさまです。すなわちユダの人々ひとびと、エルサレムの住民じゅうみんおよび全ぜんイスラエルの者ものは、近ちかき者ものも、遠とおき者ものもみな、あなたが追おいやられたすべての国々くにぐにで恥はじをこうむりました。これは彼かれらがあなたにそむいて犯おかした罪つみによるのです。9:8 主しゅよ、恥はじはわれわれのもの、われわれの王おうたち、君きみたちおよび先祖せんぞたちのものです。これはわれわれがあなたにむかって罪つみを犯おかしたからです。9:9 あわれみと、ゆるしはわれわれの神かみ、主しゅのものです。これはわれわれが彼かれにそむいたからです。9:10 またわれわれの神かみ、主しゅのみ声こえに聞きき従したがわず、主しゅがそのしもべ預言者よげんしゃたちによって、われわれの前まえに賜たまわった律法りっぽうを行おこなわなかったからです。9:11 まことにイスラエルの人々ひとびとは皆みなあなたの律法りっぽうを犯おかし、離はなれ去さって、あなたのみ声こえに聞きき従したがわなかったので、神かみのしもべモーセの律法りっぽうにしるされたのろいと誓ちかいが、われわれの上うえに注そそぎかかりました。これはわれわれが神かみにむかって罪つみを犯おかしたからです。9:12 すなわち神かみは大おおいなる災わざわいをわれわれの上うえにくだして、さきにわれわれと、われわれを治おさめたつかさたちにむかって告つげられた言葉ことばを実行じっこうされたのです。あのエルサレムに臨のぞんだような事ことは、全ぜん天下てんかにいまだかつてなかった事ことです。9:13 モーセの律法りっぽうにしるされたように、この災わざわいはすべてわれわれに臨のぞみましたが、なおわれわれの神かみ、主しゅの恵めぐみを請こい求もとめることをせず、その不義ふぎを離はなれて、あなたの真理しんりを悟さとることをもしませんでした。9:14 それゆえ、主しゅはこれを心こころに留とめて、災わざわいをわれわれに下くだされたのです。われわれの神かみ、主しゅは、何事なにごとをされるにも、正ただしくあらせられます。ところが、われわれはそのみ声こえに聞きき従したがわなかったのです。9:15 われわれの神かみ、主しゅよ、あなたは強つよきみ手てをもって、あなたの民たみをエジプトの地ちから導みちびき出だして、今日こんにちのように、み名なをあげられました。われわれは罪つみを犯おかし、よこしまなふるまいをしました。9:16 主しゅよ、どうぞあなたが、これまで正ただしいみわざをなされたように、あなたの町まちエルサレム、あなたの聖せいなる山やまから、あなたの怒いかりと憤いきどおりとを取とり去さってください。これはわれわれの罪つみと、われわれの先祖せんぞの不義ふぎのために、エルサレムと、あなたの民たみが、われわれの周囲しゅういの者ものの物笑ものわらいとなったからです。9:17 それゆえ、われわれの神かみよ、しもべの祈いのりと願ねがいを聞きいてください。主しゅよ、あなたご自身じしんのために、あの荒あれたあなたの聖所せいじょに、あなたのみ顔かおを輝かがやかせてください。9:18 わが神かみよ、耳みみを傾かたむけて聞きいてください。目めを開ひらいて、われわれの荒あれたさまを見み、み名なをもってとなえられる町まちをごらんください。われわれがあなたの前まえに祈いのりをささげるのは、われわれの義ぎによるのではなく、ただあなたの大おおいなるあわれみによるのです。9:19 主しゅよ、聞きいてください。主しゅよ、ゆるしてください。主しゅよ、み心こころに留とめて、おこなってください。わが神かみよ、あなたご自身じしんのために、これを延のばさないでください。あなたの町まちと、あなたの民たみは、み名なをもってとなえられているからです」。 9:20 わたしがこう言いって祈いのり、かつわが罪つみとわが民たみイスラエルの罪つみをざんげし、わが神かみの聖せいなる山やまのために、わが神かみ、主しゅの前まえに願ねがいをしていたとき、9:21 すなわちわたしが祈いのりの言葉ことばを述のべていたとき、わたしが初はじめに幻まぼろしのうちに見みた、かの人ひとガブリエルは、すみやかに飛とんできて、夕ゆうの供そなえ物ものをささげるころ、わたしに近ちかづき、9:22 わたしに告つげて言いった、「ダニエルよ、わたしは今いまあなたに、知恵ちえと悟さとりを与あたえるためにきました。9:23 あなたが祈いのりを始はじめたとき、み言葉ことばが出でたので、それをあなたに告つげるためにきたのです。あなたは大おおいに愛あいせられている者ものです。ゆえに、このみ言葉ことばを考かんがえて、この幻まぼろしを悟さとりなさい。 9:24 あなたの民たみと、あなたの聖せいなる町まちについては、七十週しゅうが定さだめられています。これはとがを終おわらせ、罪つみに終おわりを告つげ、不義ふぎをあがない、永遠えいえんの義ぎをもたらし、幻まぼろしと預言者よげんしゃを封ふうじ、いと聖せいなる者ものに油あぶらを注そそぐためです。9:25 それゆえ、エルサレムを建たて直なおせという命令めいれいが出でてから、メシヤなるひとりの君きみが来くるまで、七週しゅうと六十二週しゅうあることを知しり、かつ悟さとりなさい。その間あいだに、しかも不安ふあんな時代じだいに、エルサレムは広場ひろばと街路がいろとをもって、建たて直なおされるでしょう。9:26 その六十二週しゅうの後のちにメシヤは断たたれるでしょう。ただし自分じぶんのためにではありません。またきたるべき君きみの民たみは、町まちと聖所せいじょとを滅ほろぼすでしょう。その終おわりは洪水こうずいのように臨のぞむでしょう。そしてその終おわりまで戦争せんそうが続つづき、荒廃こうはいは定さだめられています。9:27 彼かれは一週いっしゅうの間あいだ多おおくの者ものと、堅かたく契約けいやくを結むすぶでしょう。そして彼かれはその週しゅうの半なかばに、犠牲ぎせいと供そなえ物ものとを廃はいするでしょう。また荒あらす者ものが憎にくむべき者ものの翼つばさに乗のって来くるでしょう。こうしてついにその定さだまった終おわりが、その荒あらす者ものの上うえに注そそがれるのです」。 第10章 10:1 ペルシャの王おうクロスの第だい三年ねんに、ベルテシャザルと名なづけられたダニエルに、一つの言葉ことばが啓示けいじされたが、その言葉ことばは真実しんじつであり、大おおいなる戦たたかいを意味いみするものであった。彼かれはその言葉ことばに心こころを留とめ、その幻まぼろしを悟さとった。 10:2 そのころ、われダニエルは三週しゅうの間あいだ、悲かなしんでいた。10:3 すなわち三週間しゅうかんの全まったく満みちるまでは、うまい物ものを食たべず、肉にくと酒さけとを口くちにせず、また身みに油あぶらを塗ぬらなかった。10:4 正月しょうがつの二十四日かに、わたしがチグリスという大川おおかわの岸きしに立たっていたとき、10:5 目めをあげて望のぞみ見みると、ひとりの人ひとがいて、亜麻あま布ぬのの衣ころもを着き、ウパズの金きんの帯おびを腰こしにしめていた。10:6 そのからだは緑柱石りょくちゅうせきのごとく、その顔かおは電光でんこうのごとく、その目めは燃もえるたいまつのごとく、その腕うでと足あしは、みがいた青銅せいどうのように輝かがやき、その言葉ことばの声こえは、群衆ぐんしゅうの声こえのようであった。10:7 この幻まぼろしを見みた者ものは、われダニエルのみであって、わたしと共ともにいた人々ひとびとは、この幻まぼろしを見みなかったが、彼かれらは大おおいにおののいて、逃にげかくれた。10:8 それでわたしひとり残のこって、この大おおいなる幻まぼろしを見みたので、力ちからが抜ぬけ去さり、わが顔かおの輝かがやきは恐おそろしく変かわって、全まったく力ちからがなくなった。10:9 わたしはその言葉ことばの声こえを聞きいたが、その言葉ことばの声こえを聞きいたとき、顔かおを伏ふせ、地ちにひれ伏ふして、深ふかい眠ねむりに陥おちいった。 10:10 見みよ、一つの手てがあって、わたしに触ふれたので、わたしは震ふるえながらひざまずき、手てをつくと、10:11 彼かれはわたしに言いった、「大おおいに愛あいせられる人ひとダニエルよ、わたしがあなたに告つげる言葉ことばに心こころを留とめ、立たちあがりなさい。わたしは今いまあなたのもとにつかわされたのです」。彼かれがこの言葉ことばをわたしに告つげているとき、わたしは震ふるえながら立たちあがった。10:12 すると彼かれはわたしに言いった、「ダニエルよ、恐おそれるに及およばない。あなたが悟さとろうと心こころをこめ、あなたの神かみの前まえに身みを悩なやましたその初はじめの日ひから、あなたの言葉ことばは、すでに聞きかれたので、わたしは、あなたの言葉ことばのゆえにきたのです。10:13 ペルシャの国くにの君きみが、二十一日にちの間あいだわたしの前まえに立たちふさがったが、天使てんしの長ちょうのひとりであるミカエルがきて、わたしを助たすけたので、わたしは、彼かれをペルシャの国くにの君きみと共ともに、そこに残のこしておき、10:14 末すえの日ひに、あなたの民たみに臨のぞまんとする事ことを、あなたに悟さとらせるためにきたのです。この幻まぼろしは、なおきたるべき日ひにかかわるものです」。 10:15 彼かれがこれらの言葉ことばを、わたしに述のべていたとき、わたしは、地ちにひれ伏ふして黙だまっていたが、10:16 見みよ、人ひとの子このような者ものが、わたしのくちびるにさわったので、わたしは口くちを開ひらき、わが前まえに立たっている者ものに語かたって言いった、「わが主しゅよ、この幻まぼろしによって、苦くるしみがわたしに臨のぞみ、全まったく力ちからを失うしないました。10:17 わが主しゅのしもべは、どうしてわが主しゅと語かたることができましょう。わたしは全まったく力ちからを失うしない、息いきも止とまるばかりです」。 10:18 人ひとの形かたちをした者ものは、再ふたたびわたしにさわり、わたしを力ちからづけて、10:19 言いった、「大おおいに愛あいせられる人ひとよ、恐おそれるには及およばない。安心あんしんしなさい。心こころを強つよくし、勇気ゆうきを出だしなさい」。彼かれがこう言いったとき、わたしは力ちからづいて言いった、「わが主しゅよ、語かたってください。あなたは、わたしに力ちからをつけてくださったから」。10:20 そこで彼かれは言いった、「あなたは、わたしがなんのためにきたかを知しっていますか。わたしは、今いま帰かえっていって、ペルシャの君きみと戦たたかおうとしているのです。彼かれとの戦たたかいがすむと、ギリシヤの君きみがあらわれるでしょう。10:21 しかしわたしは、まず真理しんりの書しょにしるされている事ことを、あなたに告つげよう。わたしを助たすけて、彼かれらと戦たたかう者ものは、あなたがたの君きみミカエルのほかにはありません。 第11章 11:1 わたしはまたメデアびとダリヨスの元年がんねんに立たって彼かれを強つよめ、彼かれを力ちからづけたことがあります。 11:2 わたしは今いまあなたに真理しんりを示しめそう。見みよ、ペルシャになお三人にんの王おうが起おこるでしょう。その第だい四の者ものは、他たのすべての者ものにまさって富とみ、その富とみによって強つよくなったとき、彼かれはすべてのものを動員どういんして、ギリシヤの国くにを攻せめます。11:3 またひとりの勇いさましい王おうが起おこり、大おおいなる権力けんりょくをもって世よを治おさめ、その意いのままに事ことをなすでしょう。11:4 彼かれが強つよくなった時とき、その国くには破やぶられ、天てんの四方しほうに分わかたれます。それは彼かれの子孫しそんに帰きせず、また彼かれが治おさめたほどの権力けんりょくもなく、彼かれの国くには抜ぬき取とられて、これら以外いがいの者ものどもに帰きするでしょう。 11:5 南みなみの王おうは強つよくなります。しかしその将軍しょうぐんのひとりが、彼かれにまさって強つよくなり、権力けんりょくをふるいます。その権力けんりょくは、大おおいなる権力けんりょくです。11:6 年としを経へて後のち、彼かれらは縁組えんぐみをなし、南みなみの王おうの娘むすめが、北きたの王おうにきて、和親わしんをはかります。しかしその女おんなは、その腕うでの力ちからを保たもつことができず、またその王おうも、その子こも立たつことができません。その女おんなと、その従者じゅうしゃと、その子こおよびその女おんなを獲えた者ものとは、わたされるでしょう。 11:7 そのころ、この女おんなの根ねから、一つの芽めが起おこって彼かれに代かわり、北きたの王おうの軍勢ぐんぜいにむかってきて、その城しろに討うち入いり、これを攻せめて勝かつでしょう。11:8 彼かれはまた彼かれらの神々かみがみ、鋳い像ぞうおよび金銀きんぎんの貴重きちょうな器物うつわものを、エジプトに携たずさえ去さり、そして数年すうねんの間あいだ、北きたの王おうを討うつことを控ひかえます。11:9 その後のち、北きたの王おうは、南みなみの王おうの国くにに討うち入はいるが、自分じぶんの国くにに帰かえるでしょう。 11:10 その子こらはまた憤激ふんげきして、あまたの大軍たいぐんを集あつめ、進すすんで行いって、みなぎりあふれ、通とおり過すぎるが、また行いって、その城しろにまで攻せめ寄よせるでしょう。11:11 そこで南みなみの王おうは、大おおいに怒いかり、出でてきて北きたの王おうと戦たたかいます。彼かれは大軍たいぐんを起おこすけれども、その軍ぐんは相手あいての手てにわたされるでしょう。11:12 彼かれがその軍ぐんを打うち破やぶったとき、その心こころは高たかぶり、数すう万まん人にんを倒たおします。しかし、勝かつことはありません。11:13 それは北きたの王おうがまた初はじめよりも大おおいなる軍ぐんを起おこし、数年すうねんの後のち、大おおいなる軍勢ぐんぜいと多おおくの軍需ぐんじゅ品ひんとをもって、攻せめて来くるからです。 11:14 そのころ多おおくの者ものが起おこって、南みなみの王おうに敵てきします。またあなたの民たみのうちのあらくれ者ものが、みずから高たかぶって事ことをなし、幻まぼろしを成就じょうじゅしようとするが失敗しっぱいするでしょう。11:15 こうして北きたの王おうがきて、塁るいを築きずき、堅固けんごな町まちを取とるが、南みなみの王おうの力ちからは、これに立たち向むかうことができず、またそのえり抜ぬきの民たみも、これに立たち向むかう力ちからがありません。11:16 これに攻せめて来くる者ものは、その心こころのままに事ことをなし、その前まえに立たち向むかうことのできる者ものはなく、彼かれは麗うるわしい地ちに立たち、その地ちは全まったく彼かれのために荒あらされます。11:17 彼かれは全国ぜんこくの力ちからをもって討うち入はいろうと、その顔かおを向むけるが、相手あいてと仲直なかなおりをし、その娘むすめを与あたえて、その国くにを取とろうとします。しかし、その事ことは成ならず、また彼かれの利益りえきにはならないでしょう。11:18 その後のち、彼かれは顔かおを海沿うみぞいの国々くにぐにに向むけて、その多おおくのものを取とります。しかし、ひとりの大将たいしょうがあって、彼かれが与あたえた恥辱ちじょくをそそぎ、その恥辱ちじょくを彼かれの上うえに返かえします。11:19 こうして彼かれは、その顔かおを自分じぶんの国くにの要害ようがいに向むけるが、彼かれはつまずき倒たおれて消きえうせるでしょう。 11:20 彼かれに代かわって起おこる者ものは、栄光えいこうの国くにに人ひとをつかわして、租税そぜいを取とり立たてさせるでしょう。しかし彼かれは、怒いかりにも戦たたかいにもよらず、数日すうじつのうちに滅ほろぼされます。11:21 彼かれに代かわって起おこる者ものは、卑いやしむべき者ものであって、彼かれには、王おうの尊厳そんげんが与あたえられず、彼かれは不意ふいにきて、巧言こうげんをもって国くにを獲えるでしょう。11:22 洪水こうずいのような軍勢ぐんぜいは、彼かれの前まえに押おし流ながされて敗やぶられ、契約けいやくの君きみたる者ものもまた敗やぶられるでしょう。11:23 彼かれは、これと同盟どうめいを結むすんで後のち、偽いつわりのおこないをなし、わずかな民たみをもって強つよくなり、11:24 不意ふいにその州しゅうの最もっとも肥こえた所ところに攻せめ入いり、その父ちちも、その父ちちの父ちちもしなかった事ことをおこない、その奪うばった物もの、かすめた物ものおよび財宝ざいほうを、人々ひとびとの中なかに散ちらすでしょう。彼かれはまた計略けいりゃくをめぐらして、堅固けんごな城しろを攻せめるが、ただし、それは時ときの至いたるまでです。11:25 彼かれはその勢力せいりょくと勇気ゆうきとを奮ふるい起おこし、大軍たいぐんを率ひきいて南みなみの王おうを攻せめます。南みなみの王おうもまたみずから奮ふるい、はなはだ大おおいなる強力きょうりょくな軍勢ぐんぜいをもって戦たたかいます。しかし、彼かれに対たいして、陰謀いんぼうをめぐらす者ものがあるので、これに立たち向むかうことができません。11:26 すなわち彼かれの食物しょくもつを食たべる者ものたちが、彼かれを滅ほろぼします。そして、その軍勢ぐんぜいは押おし流ながされて、多おおくの者ものが倒たおれ死しぬでしょう。11:27 このふたりの王おうは、害がいを与あたえようと心こころにはかり、ひとつ食卓しょくたくに共ともに食しょくして、偽いつわりを語かたるが、それは成功せいこうしません。終おわりはなお定さだまった時ときの来くるまでこないからです。11:28 彼かれは大おおいなる財宝ざいほうをもって、自分じぶんの国くにに帰かえるでしょう。しかし、彼かれの心こころは聖せいなる契約けいやくにそむき、ほしいままに事ことをなして、自分じぶんの国くにに帰かえります。 11:29 定さだまった時ときになって、彼かれはまた南みなみに討うち入いります。しかし、この時ときは前まえの時ときのようではありません。11:30 それはキッテムの船ふねが、彼かれに立たち向むかって来くるので、彼かれは脅おびやかされて帰かえり、聖せいなる契約けいやくに対たいして憤いきどおり、事ことを行おこなうでしょう。彼かれは帰かえっていって、聖せいなる契約けいやくを捨すてる者ものを顧かえりみ用もちいるでしょう。11:31 彼かれから軍勢ぐんぜいが起おこって、神殿しんでんと城郭じょうかくを汚けがし、常供じょうくの燔祭はんさいを取とり除のぞき、荒あらす憎にくむべきものを立たてるでしょう。11:32 彼かれは契約けいやくを破やぶる者ものどもを、巧言こうげんをもってそそのかし、そむかせるが、自分じぶんの神かみを知しる民たみは、堅かたく立たって事ことを行おこないます。11:33 民たみのうちの賢かしこい人々ひとびとは、多おおくの人ひとを悟さとりに至いたらせます。それでも、彼かれらはしばらくの間あいだ、やいばにかかり、火ひに焼やかれ、捕とらわれ、かすめられなどして倒たおれます。11:34 その倒たおれるとき、彼かれらは少すこしの助たすけを獲えます。また多おおくの人ひとが、巧言こうげんをもって彼かれらにくみするでしょう。11:35 また賢かしこい者もののうちのある者ものは、終おわりの時ときまで、自分じぶんを練ねり、清きよめ、白しろくするために倒たおれるでしょう。終おわりはなお定さだまった時ときの来くるまでこないからです。 11:36 この王おうは、その心こころのままに事ことをおこない、すべての神かみを越こえて、自分じぶんを高たかくし、自分じぶんを大おおいにし、神々かみがみの神かみたる者ものにむかって、驚おどろくべき事ことを語かたり、憤いきどおりのやむ時ときまで栄さかえるでしょう。これは定さだめられた事ことが成就じょうじゅするからです。11:37 彼かれはその先祖せんぞの神々かみがみを顧かえりみず、また婦人ふじんの好このむ者ものも、いかなる神かみをも顧かえりみないでしょう。彼かれはすべてにまさって、自分じぶんを大おおいなる者ものとするからです。11:38 彼かれはこれらの者ものの代かわりに、要害ようがいの神かみをあがめ、金きん、銀ぎん、宝石ほうせき、および宝物たからものをもって、その先祖せんぞたちの知しらなかった神かみをあがめ、11:39 異邦いほうの神かみの助たすけによって、最もっとも強固きょうこな城しろにむかって、事ことをなすでしょう。そして彼かれを認みとめる者ものには、栄誉えいよを増まし与あたえ、これに多おおくの人ひとを治おさめさせ、賞与しょうよとして土地とちを分わけ与あたえるでしょう。 11:40 終おわりの時ときになって、南みなみの王おうは彼かれと戦たたかいます。北きたの王おうは、戦車せんしゃと騎兵きへいと、多おおくの船ふねをもって、つむじ風かぜのように彼かれを攻せめ、国々くにぐににはいっていって、みなぎりあふれ、通とおり過すぎるでしょう。11:41 彼かれはまた麗うるわしい国くににはいります。また彼かれによって、多おおくの者ものが滅ほろぼされます。しかし、エドム、モアブ、アンモンびとらのうちのおもな者ものは、彼かれの手てから救すくわれましょう。11:42 彼かれは国々くにぐににその手てを伸のばし、エジプトの地ちも免まぬかれません。11:43 彼かれは金銀きんぎんの財宝ざいほうと、エジプトのすべての宝物たからものを支配しはいし、リビヤびと、エチオピヤびとは、彼かれのあとに従したがいます。11:44 しかし東ひがしと北きたからの知しらせが彼かれを驚おどろかし、彼かれは多おおくの人ひとを滅ほろぼし絶たやそうと、大おおいなる怒いかりをもって出でて行いきます。11:45 彼かれは海うみと麗うるわしい聖山せいざんとの間あいだに、天幕てんまくの宮殿きゅうでんを設もうけるでしょう。しかし、彼かれはついにその終おわりにいたり、彼かれを助たすける者ものはないでしょう。 第12章 12:1 その時ときあなたの民たみを守まもっている大おおいなる君きみミカエルが立たちあがります。また国くにが始はじまってから、その時ときにいたるまで、かつてなかったほどの悩なやみの時ときがあるでしょう。しかし、その時ときあなたの民たみは救すくわれます。すなわちあの書しょに名なをしるされた者ものは皆みな救すくわれます。12:2 また地ちのちりの中なかに眠ねむっている者もののうち、多おおくの者ものは目めをさますでしょう。そのうち永遠えいえんの生命せいめいにいたる者ものもあり、また恥はじと、限かぎりなき恥辱ちじょくをうける者ものもあるでしょう。12:3 賢かしこい者ものは、大空おおぞらの輝かがやきのように輝かがやき、また多おおくの人ひとを義ぎに導みちびく者ものは、星ほしのようになって永遠えいえんにいたるでしょう。12:4 ダニエルよ、あなたは終おわりの時ときまでこの言葉ことばを秘ひし、この書しょを封ふうじておきなさい。多おおくの者ものは、あちこちと探さぐり調しらべ、そして知識ちしきが増ますでしょう」。 12:5 そこで、われダニエルが見みていると、ほかにまたふたりの者ものがあって、ひとりは川かわのこなたの岸きしに、ひとりは川かわのかなたの岸きしに立たっていた。12:6 わたしは、かの亜麻あま布ぬのを着きて川かわの水みずの上うえにいる人ひとにむかって言いった、「この異常いじょうなできごとは、いつになって終おわるでしょうか」と。12:7 かの亜麻あま布ぬのを着きて、川かわの水みずの上うえにいた人ひとが、天てんに向むかって、その右みぎの手てと左ひだりの手てをあげ、永遠えいえんに生いける者ものをさして誓ちかい、それは、ひと時ときとふた時ときと半時はんときである。聖せいなる民たみを打うち砕くだく力ちからが消きえ去さる時ときに、これらの事ことはみな成就じょうじゅするだろうと言いうのを、わたしは聞きいた。12:8 わたしはこれを聞きいたけれども悟さとれなかった。わたしは言いった、「わが主しゅよ、これらの事ことの結末けつまつはどんなでしょうか」。 12:9 彼かれは言いった、「ダニエルよ、あなたの道みちを行いきなさい。この言葉ことばは終おわりの時ときまで秘ひし、かつ封ふうじておかれます。12:10 多おおくの者ものは、自分じぶんを清きよめ、自分じぶんを白しろくし、かつ練ねられるでしょう。しかし、悪わるい者ものは悪わるい事ことをおこない、ひとりも悟さとることはないが、賢かしこい者ものは悟さとるでしょう。 12:11 常供じょうくの燔祭はんさいが取すり除のぞかれ、荒あらす憎にくむべきものが立たてられる時ときから、千二百九十日にちが定さだめられている。12:12 待まっていて千三百三十五日にちに至いたる者ものはさいわいです。12:13 しかし、終おわりまであなたの道みちを行いきなさい。あなたは休やすみに入はいり、定さだめられた日ひの終おわりに立たって、あなたの分ぶんを受うけるでしょう」。
9:1 メデアびとアハシュエロスの子こダリヨスが、カルデヤびとの王おうとなったその元年がんねん、
9:2 すなわちその治世ちせいの第だい一年ねんに、われダニエルは主しゅが預言者よげんしゃエレミヤに臨のぞんで告つげられたその言葉ことばにより、エルサレムの荒廃こうはいの終おわるまでに経へねばならぬ年ねんの数かずは七十年ねんであることを、文書ぶんしょによって悟さとった。
9:3 それでわたしは、わが顔かおを主しゅなる神かみに向むけ、断食だんじきをなし、荒布あらぬのを着き、灰はいをかぶって祈いのり、かつ願ねがい求もとめた。
9:4 すなわちわたしは、わが神かみ、主しゅに祈いのり、ざんげして言いった、「ああ、大おおいなる恐おそるべき神かみ、主しゅ、おのれを愛あいし、おのれの戒いましめを守まもる者もののために契約けいやくを保たもち、いつくしみを施ほどこされる者ものよ、
9:5 われわれは罪つみを犯おかし、悪あくをおこない、よこしまなふるまいをなし、そむいて、あなたの戒いましめと、おきてを離はなれました。
9:6 われわれはまた、あなたのしもべなる預言者よげんしゃたちが、あなたの名なをもって、われわれの王おうたち、君きみたち、先祖せんぞたち、および国くにのすべての民たみに告つげた言葉ことばに聞きき従したがいませんでした。
9:7 主しゅよ、正義せいぎはあなたのものですが、恥はじはわれわれに加くわえられて、今日こんにちのような有様ありさまです。すなわちユダの人々ひとびと、エルサレムの住民じゅうみんおよび全ぜんイスラエルの者ものは、近ちかき者ものも、遠とおき者ものもみな、あなたが追おいやられたすべての国々くにぐにで恥はじをこうむりました。これは彼かれらがあなたにそむいて犯おかした罪つみによるのです。
9:8 主しゅよ、恥はじはわれわれのもの、われわれの王おうたち、君きみたちおよび先祖せんぞたちのものです。これはわれわれがあなたにむかって罪つみを犯おかしたからです。
9:9 あわれみと、ゆるしはわれわれの神かみ、主しゅのものです。これはわれわれが彼かれにそむいたからです。
9:10 またわれわれの神かみ、主しゅのみ声こえに聞きき従したがわず、主しゅがそのしもべ預言者よげんしゃたちによって、われわれの前まえに賜たまわった律法りっぽうを行おこなわなかったからです。
9:11 まことにイスラエルの人々ひとびとは皆みなあなたの律法りっぽうを犯おかし、離はなれ去さって、あなたのみ声こえに聞きき従したがわなかったので、神かみのしもべモーセの律法りっぽうにしるされたのろいと誓ちかいが、われわれの上うえに注そそぎかかりました。これはわれわれが神かみにむかって罪つみを犯おかしたからです。
9:12 すなわち神かみは大おおいなる災わざわいをわれわれの上うえにくだして、さきにわれわれと、われわれを治おさめたつかさたちにむかって告つげられた言葉ことばを実行じっこうされたのです。あのエルサレムに臨のぞんだような事ことは、全ぜん天下てんかにいまだかつてなかった事ことです。
9:13 モーセの律法りっぽうにしるされたように、この災わざわいはすべてわれわれに臨のぞみましたが、なおわれわれの神かみ、主しゅの恵めぐみを請こい求もとめることをせず、その不義ふぎを離はなれて、あなたの真理しんりを悟さとることをもしませんでした。
9:14 それゆえ、主しゅはこれを心こころに留とめて、災わざわいをわれわれに下くだされたのです。われわれの神かみ、主しゅは、何事なにごとをされるにも、正ただしくあらせられます。ところが、われわれはそのみ声こえに聞きき従したがわなかったのです。
9:15 われわれの神かみ、主しゅよ、あなたは強つよきみ手てをもって、あなたの民たみをエジプトの地ちから導みちびき出だして、今日こんにちのように、み名なをあげられました。われわれは罪つみを犯おかし、よこしまなふるまいをしました。
9:16 主しゅよ、どうぞあなたが、これまで正ただしいみわざをなされたように、あなたの町まちエルサレム、あなたの聖せいなる山やまから、あなたの怒いかりと憤いきどおりとを取とり去さってください。これはわれわれの罪つみと、われわれの先祖せんぞの不義ふぎのために、エルサレムと、あなたの民たみが、われわれの周囲しゅういの者ものの物笑ものわらいとなったからです。
9:17 それゆえ、われわれの神かみよ、しもべの祈いのりと願ねがいを聞きいてください。主しゅよ、あなたご自身じしんのために、あの荒あれたあなたの聖所せいじょに、あなたのみ顔かおを輝かがやかせてください。
9:18 わが神かみよ、耳みみを傾かたむけて聞きいてください。目めを開ひらいて、われわれの荒あれたさまを見み、み名なをもってとなえられる町まちをごらんください。われわれがあなたの前まえに祈いのりをささげるのは、われわれの義ぎによるのではなく、ただあなたの大おおいなるあわれみによるのです。
9:19 主しゅよ、聞きいてください。主しゅよ、ゆるしてください。主しゅよ、み心こころに留とめて、おこなってください。わが神かみよ、あなたご自身じしんのために、これを延のばさないでください。あなたの町まちと、あなたの民たみは、み名なをもってとなえられているからです」。
9:20 わたしがこう言いって祈いのり、かつわが罪つみとわが民たみイスラエルの罪つみをざんげし、わが神かみの聖せいなる山やまのために、わが神かみ、主しゅの前まえに願ねがいをしていたとき、
9:21 すなわちわたしが祈いのりの言葉ことばを述のべていたとき、わたしが初はじめに幻まぼろしのうちに見みた、かの人ひとガブリエルは、すみやかに飛とんできて、夕ゆうの供そなえ物ものをささげるころ、わたしに近ちかづき、
9:22 わたしに告つげて言いった、「ダニエルよ、わたしは今いまあなたに、知恵ちえと悟さとりを与あたえるためにきました。
9:23 あなたが祈いのりを始はじめたとき、み言葉ことばが出でたので、それをあなたに告つげるためにきたのです。あなたは大おおいに愛あいせられている者ものです。ゆえに、このみ言葉ことばを考かんがえて、この幻まぼろしを悟さとりなさい。
9:24 あなたの民たみと、あなたの聖せいなる町まちについては、七十週しゅうが定さだめられています。これはとがを終おわらせ、罪つみに終おわりを告つげ、不義ふぎをあがない、永遠えいえんの義ぎをもたらし、幻まぼろしと預言者よげんしゃを封ふうじ、いと聖せいなる者ものに油あぶらを注そそぐためです。
9:25 それゆえ、エルサレムを建たて直なおせという命令めいれいが出でてから、メシヤなるひとりの君きみが来くるまで、七週しゅうと六十二週しゅうあることを知しり、かつ悟さとりなさい。その間あいだに、しかも不安ふあんな時代じだいに、エルサレムは広場ひろばと街路がいろとをもって、建たて直なおされるでしょう。
9:26 その六十二週しゅうの後のちにメシヤは断たたれるでしょう。ただし自分じぶんのためにではありません。またきたるべき君きみの民たみは、町まちと聖所せいじょとを滅ほろぼすでしょう。その終おわりは洪水こうずいのように臨のぞむでしょう。そしてその終おわりまで戦争せんそうが続つづき、荒廃こうはいは定さだめられています。
9:27 彼かれは一週いっしゅうの間あいだ多おおくの者ものと、堅かたく契約けいやくを結むすぶでしょう。そして彼かれはその週しゅうの半なかばに、犠牲ぎせいと供そなえ物ものとを廃はいするでしょう。また荒あらす者ものが憎にくむべき者ものの翼つばさに乗のって来くるでしょう。こうしてついにその定さだまった終おわりが、その荒あらす者ものの上うえに注そそがれるのです」。
第10章 10:1 ペルシャの王おうクロスの第だい三年ねんに、ベルテシャザルと名なづけられたダニエルに、一つの言葉ことばが啓示けいじされたが、その言葉ことばは真実しんじつであり、大おおいなる戦たたかいを意味いみするものであった。彼かれはその言葉ことばに心こころを留とめ、その幻まぼろしを悟さとった。 10:2 そのころ、われダニエルは三週しゅうの間あいだ、悲かなしんでいた。10:3 すなわち三週間しゅうかんの全まったく満みちるまでは、うまい物ものを食たべず、肉にくと酒さけとを口くちにせず、また身みに油あぶらを塗ぬらなかった。10:4 正月しょうがつの二十四日かに、わたしがチグリスという大川おおかわの岸きしに立たっていたとき、10:5 目めをあげて望のぞみ見みると、ひとりの人ひとがいて、亜麻あま布ぬのの衣ころもを着き、ウパズの金きんの帯おびを腰こしにしめていた。10:6 そのからだは緑柱石りょくちゅうせきのごとく、その顔かおは電光でんこうのごとく、その目めは燃もえるたいまつのごとく、その腕うでと足あしは、みがいた青銅せいどうのように輝かがやき、その言葉ことばの声こえは、群衆ぐんしゅうの声こえのようであった。10:7 この幻まぼろしを見みた者ものは、われダニエルのみであって、わたしと共ともにいた人々ひとびとは、この幻まぼろしを見みなかったが、彼かれらは大おおいにおののいて、逃にげかくれた。10:8 それでわたしひとり残のこって、この大おおいなる幻まぼろしを見みたので、力ちからが抜ぬけ去さり、わが顔かおの輝かがやきは恐おそろしく変かわって、全まったく力ちからがなくなった。10:9 わたしはその言葉ことばの声こえを聞きいたが、その言葉ことばの声こえを聞きいたとき、顔かおを伏ふせ、地ちにひれ伏ふして、深ふかい眠ねむりに陥おちいった。 10:10 見みよ、一つの手てがあって、わたしに触ふれたので、わたしは震ふるえながらひざまずき、手てをつくと、10:11 彼かれはわたしに言いった、「大おおいに愛あいせられる人ひとダニエルよ、わたしがあなたに告つげる言葉ことばに心こころを留とめ、立たちあがりなさい。わたしは今いまあなたのもとにつかわされたのです」。彼かれがこの言葉ことばをわたしに告つげているとき、わたしは震ふるえながら立たちあがった。10:12 すると彼かれはわたしに言いった、「ダニエルよ、恐おそれるに及およばない。あなたが悟さとろうと心こころをこめ、あなたの神かみの前まえに身みを悩なやましたその初はじめの日ひから、あなたの言葉ことばは、すでに聞きかれたので、わたしは、あなたの言葉ことばのゆえにきたのです。10:13 ペルシャの国くにの君きみが、二十一日にちの間あいだわたしの前まえに立たちふさがったが、天使てんしの長ちょうのひとりであるミカエルがきて、わたしを助たすけたので、わたしは、彼かれをペルシャの国くにの君きみと共ともに、そこに残のこしておき、10:14 末すえの日ひに、あなたの民たみに臨のぞまんとする事ことを、あなたに悟さとらせるためにきたのです。この幻まぼろしは、なおきたるべき日ひにかかわるものです」。 10:15 彼かれがこれらの言葉ことばを、わたしに述のべていたとき、わたしは、地ちにひれ伏ふして黙だまっていたが、10:16 見みよ、人ひとの子このような者ものが、わたしのくちびるにさわったので、わたしは口くちを開ひらき、わが前まえに立たっている者ものに語かたって言いった、「わが主しゅよ、この幻まぼろしによって、苦くるしみがわたしに臨のぞみ、全まったく力ちからを失うしないました。10:17 わが主しゅのしもべは、どうしてわが主しゅと語かたることができましょう。わたしは全まったく力ちからを失うしない、息いきも止とまるばかりです」。 10:18 人ひとの形かたちをした者ものは、再ふたたびわたしにさわり、わたしを力ちからづけて、10:19 言いった、「大おおいに愛あいせられる人ひとよ、恐おそれるには及およばない。安心あんしんしなさい。心こころを強つよくし、勇気ゆうきを出だしなさい」。彼かれがこう言いったとき、わたしは力ちからづいて言いった、「わが主しゅよ、語かたってください。あなたは、わたしに力ちからをつけてくださったから」。10:20 そこで彼かれは言いった、「あなたは、わたしがなんのためにきたかを知しっていますか。わたしは、今いま帰かえっていって、ペルシャの君きみと戦たたかおうとしているのです。彼かれとの戦たたかいがすむと、ギリシヤの君きみがあらわれるでしょう。10:21 しかしわたしは、まず真理しんりの書しょにしるされている事ことを、あなたに告つげよう。わたしを助たすけて、彼かれらと戦たたかう者ものは、あなたがたの君きみミカエルのほかにはありません。 第11章 11:1 わたしはまたメデアびとダリヨスの元年がんねんに立たって彼かれを強つよめ、彼かれを力ちからづけたことがあります。 11:2 わたしは今いまあなたに真理しんりを示しめそう。見みよ、ペルシャになお三人にんの王おうが起おこるでしょう。その第だい四の者ものは、他たのすべての者ものにまさって富とみ、その富とみによって強つよくなったとき、彼かれはすべてのものを動員どういんして、ギリシヤの国くにを攻せめます。11:3 またひとりの勇いさましい王おうが起おこり、大おおいなる権力けんりょくをもって世よを治おさめ、その意いのままに事ことをなすでしょう。11:4 彼かれが強つよくなった時とき、その国くには破やぶられ、天てんの四方しほうに分わかたれます。それは彼かれの子孫しそんに帰きせず、また彼かれが治おさめたほどの権力けんりょくもなく、彼かれの国くには抜ぬき取とられて、これら以外いがいの者ものどもに帰きするでしょう。 11:5 南みなみの王おうは強つよくなります。しかしその将軍しょうぐんのひとりが、彼かれにまさって強つよくなり、権力けんりょくをふるいます。その権力けんりょくは、大おおいなる権力けんりょくです。11:6 年としを経へて後のち、彼かれらは縁組えんぐみをなし、南みなみの王おうの娘むすめが、北きたの王おうにきて、和親わしんをはかります。しかしその女おんなは、その腕うでの力ちからを保たもつことができず、またその王おうも、その子こも立たつことができません。その女おんなと、その従者じゅうしゃと、その子こおよびその女おんなを獲えた者ものとは、わたされるでしょう。 11:7 そのころ、この女おんなの根ねから、一つの芽めが起おこって彼かれに代かわり、北きたの王おうの軍勢ぐんぜいにむかってきて、その城しろに討うち入いり、これを攻せめて勝かつでしょう。11:8 彼かれはまた彼かれらの神々かみがみ、鋳い像ぞうおよび金銀きんぎんの貴重きちょうな器物うつわものを、エジプトに携たずさえ去さり、そして数年すうねんの間あいだ、北きたの王おうを討うつことを控ひかえます。11:9 その後のち、北きたの王おうは、南みなみの王おうの国くにに討うち入はいるが、自分じぶんの国くにに帰かえるでしょう。 11:10 その子こらはまた憤激ふんげきして、あまたの大軍たいぐんを集あつめ、進すすんで行いって、みなぎりあふれ、通とおり過すぎるが、また行いって、その城しろにまで攻せめ寄よせるでしょう。11:11 そこで南みなみの王おうは、大おおいに怒いかり、出でてきて北きたの王おうと戦たたかいます。彼かれは大軍たいぐんを起おこすけれども、その軍ぐんは相手あいての手てにわたされるでしょう。11:12 彼かれがその軍ぐんを打うち破やぶったとき、その心こころは高たかぶり、数すう万まん人にんを倒たおします。しかし、勝かつことはありません。11:13 それは北きたの王おうがまた初はじめよりも大おおいなる軍ぐんを起おこし、数年すうねんの後のち、大おおいなる軍勢ぐんぜいと多おおくの軍需ぐんじゅ品ひんとをもって、攻せめて来くるからです。 11:14 そのころ多おおくの者ものが起おこって、南みなみの王おうに敵てきします。またあなたの民たみのうちのあらくれ者ものが、みずから高たかぶって事ことをなし、幻まぼろしを成就じょうじゅしようとするが失敗しっぱいするでしょう。11:15 こうして北きたの王おうがきて、塁るいを築きずき、堅固けんごな町まちを取とるが、南みなみの王おうの力ちからは、これに立たち向むかうことができず、またそのえり抜ぬきの民たみも、これに立たち向むかう力ちからがありません。11:16 これに攻せめて来くる者ものは、その心こころのままに事ことをなし、その前まえに立たち向むかうことのできる者ものはなく、彼かれは麗うるわしい地ちに立たち、その地ちは全まったく彼かれのために荒あらされます。11:17 彼かれは全国ぜんこくの力ちからをもって討うち入はいろうと、その顔かおを向むけるが、相手あいてと仲直なかなおりをし、その娘むすめを与あたえて、その国くにを取とろうとします。しかし、その事ことは成ならず、また彼かれの利益りえきにはならないでしょう。11:18 その後のち、彼かれは顔かおを海沿うみぞいの国々くにぐにに向むけて、その多おおくのものを取とります。しかし、ひとりの大将たいしょうがあって、彼かれが与あたえた恥辱ちじょくをそそぎ、その恥辱ちじょくを彼かれの上うえに返かえします。11:19 こうして彼かれは、その顔かおを自分じぶんの国くにの要害ようがいに向むけるが、彼かれはつまずき倒たおれて消きえうせるでしょう。 11:20 彼かれに代かわって起おこる者ものは、栄光えいこうの国くにに人ひとをつかわして、租税そぜいを取とり立たてさせるでしょう。しかし彼かれは、怒いかりにも戦たたかいにもよらず、数日すうじつのうちに滅ほろぼされます。11:21 彼かれに代かわって起おこる者ものは、卑いやしむべき者ものであって、彼かれには、王おうの尊厳そんげんが与あたえられず、彼かれは不意ふいにきて、巧言こうげんをもって国くにを獲えるでしょう。11:22 洪水こうずいのような軍勢ぐんぜいは、彼かれの前まえに押おし流ながされて敗やぶられ、契約けいやくの君きみたる者ものもまた敗やぶられるでしょう。11:23 彼かれは、これと同盟どうめいを結むすんで後のち、偽いつわりのおこないをなし、わずかな民たみをもって強つよくなり、11:24 不意ふいにその州しゅうの最もっとも肥こえた所ところに攻せめ入いり、その父ちちも、その父ちちの父ちちもしなかった事ことをおこない、その奪うばった物もの、かすめた物ものおよび財宝ざいほうを、人々ひとびとの中なかに散ちらすでしょう。彼かれはまた計略けいりゃくをめぐらして、堅固けんごな城しろを攻せめるが、ただし、それは時ときの至いたるまでです。11:25 彼かれはその勢力せいりょくと勇気ゆうきとを奮ふるい起おこし、大軍たいぐんを率ひきいて南みなみの王おうを攻せめます。南みなみの王おうもまたみずから奮ふるい、はなはだ大おおいなる強力きょうりょくな軍勢ぐんぜいをもって戦たたかいます。しかし、彼かれに対たいして、陰謀いんぼうをめぐらす者ものがあるので、これに立たち向むかうことができません。11:26 すなわち彼かれの食物しょくもつを食たべる者ものたちが、彼かれを滅ほろぼします。そして、その軍勢ぐんぜいは押おし流ながされて、多おおくの者ものが倒たおれ死しぬでしょう。11:27 このふたりの王おうは、害がいを与あたえようと心こころにはかり、ひとつ食卓しょくたくに共ともに食しょくして、偽いつわりを語かたるが、それは成功せいこうしません。終おわりはなお定さだまった時ときの来くるまでこないからです。11:28 彼かれは大おおいなる財宝ざいほうをもって、自分じぶんの国くにに帰かえるでしょう。しかし、彼かれの心こころは聖せいなる契約けいやくにそむき、ほしいままに事ことをなして、自分じぶんの国くにに帰かえります。 11:29 定さだまった時ときになって、彼かれはまた南みなみに討うち入いります。しかし、この時ときは前まえの時ときのようではありません。11:30 それはキッテムの船ふねが、彼かれに立たち向むかって来くるので、彼かれは脅おびやかされて帰かえり、聖せいなる契約けいやくに対たいして憤いきどおり、事ことを行おこなうでしょう。彼かれは帰かえっていって、聖せいなる契約けいやくを捨すてる者ものを顧かえりみ用もちいるでしょう。11:31 彼かれから軍勢ぐんぜいが起おこって、神殿しんでんと城郭じょうかくを汚けがし、常供じょうくの燔祭はんさいを取とり除のぞき、荒あらす憎にくむべきものを立たてるでしょう。11:32 彼かれは契約けいやくを破やぶる者ものどもを、巧言こうげんをもってそそのかし、そむかせるが、自分じぶんの神かみを知しる民たみは、堅かたく立たって事ことを行おこないます。11:33 民たみのうちの賢かしこい人々ひとびとは、多おおくの人ひとを悟さとりに至いたらせます。それでも、彼かれらはしばらくの間あいだ、やいばにかかり、火ひに焼やかれ、捕とらわれ、かすめられなどして倒たおれます。11:34 その倒たおれるとき、彼かれらは少すこしの助たすけを獲えます。また多おおくの人ひとが、巧言こうげんをもって彼かれらにくみするでしょう。11:35 また賢かしこい者もののうちのある者ものは、終おわりの時ときまで、自分じぶんを練ねり、清きよめ、白しろくするために倒たおれるでしょう。終おわりはなお定さだまった時ときの来くるまでこないからです。 11:36 この王おうは、その心こころのままに事ことをおこない、すべての神かみを越こえて、自分じぶんを高たかくし、自分じぶんを大おおいにし、神々かみがみの神かみたる者ものにむかって、驚おどろくべき事ことを語かたり、憤いきどおりのやむ時ときまで栄さかえるでしょう。これは定さだめられた事ことが成就じょうじゅするからです。11:37 彼かれはその先祖せんぞの神々かみがみを顧かえりみず、また婦人ふじんの好このむ者ものも、いかなる神かみをも顧かえりみないでしょう。彼かれはすべてにまさって、自分じぶんを大おおいなる者ものとするからです。11:38 彼かれはこれらの者ものの代かわりに、要害ようがいの神かみをあがめ、金きん、銀ぎん、宝石ほうせき、および宝物たからものをもって、その先祖せんぞたちの知しらなかった神かみをあがめ、11:39 異邦いほうの神かみの助たすけによって、最もっとも強固きょうこな城しろにむかって、事ことをなすでしょう。そして彼かれを認みとめる者ものには、栄誉えいよを増まし与あたえ、これに多おおくの人ひとを治おさめさせ、賞与しょうよとして土地とちを分わけ与あたえるでしょう。 11:40 終おわりの時ときになって、南みなみの王おうは彼かれと戦たたかいます。北きたの王おうは、戦車せんしゃと騎兵きへいと、多おおくの船ふねをもって、つむじ風かぜのように彼かれを攻せめ、国々くにぐににはいっていって、みなぎりあふれ、通とおり過すぎるでしょう。11:41 彼かれはまた麗うるわしい国くににはいります。また彼かれによって、多おおくの者ものが滅ほろぼされます。しかし、エドム、モアブ、アンモンびとらのうちのおもな者ものは、彼かれの手てから救すくわれましょう。11:42 彼かれは国々くにぐににその手てを伸のばし、エジプトの地ちも免まぬかれません。11:43 彼かれは金銀きんぎんの財宝ざいほうと、エジプトのすべての宝物たからものを支配しはいし、リビヤびと、エチオピヤびとは、彼かれのあとに従したがいます。11:44 しかし東ひがしと北きたからの知しらせが彼かれを驚おどろかし、彼かれは多おおくの人ひとを滅ほろぼし絶たやそうと、大おおいなる怒いかりをもって出でて行いきます。11:45 彼かれは海うみと麗うるわしい聖山せいざんとの間あいだに、天幕てんまくの宮殿きゅうでんを設もうけるでしょう。しかし、彼かれはついにその終おわりにいたり、彼かれを助たすける者ものはないでしょう。 第12章 12:1 その時ときあなたの民たみを守まもっている大おおいなる君きみミカエルが立たちあがります。また国くにが始はじまってから、その時ときにいたるまで、かつてなかったほどの悩なやみの時ときがあるでしょう。しかし、その時ときあなたの民たみは救すくわれます。すなわちあの書しょに名なをしるされた者ものは皆みな救すくわれます。12:2 また地ちのちりの中なかに眠ねむっている者もののうち、多おおくの者ものは目めをさますでしょう。そのうち永遠えいえんの生命せいめいにいたる者ものもあり、また恥はじと、限かぎりなき恥辱ちじょくをうける者ものもあるでしょう。12:3 賢かしこい者ものは、大空おおぞらの輝かがやきのように輝かがやき、また多おおくの人ひとを義ぎに導みちびく者ものは、星ほしのようになって永遠えいえんにいたるでしょう。12:4 ダニエルよ、あなたは終おわりの時ときまでこの言葉ことばを秘ひし、この書しょを封ふうじておきなさい。多おおくの者ものは、あちこちと探さぐり調しらべ、そして知識ちしきが増ますでしょう」。 12:5 そこで、われダニエルが見みていると、ほかにまたふたりの者ものがあって、ひとりは川かわのこなたの岸きしに、ひとりは川かわのかなたの岸きしに立たっていた。12:6 わたしは、かの亜麻あま布ぬのを着きて川かわの水みずの上うえにいる人ひとにむかって言いった、「この異常いじょうなできごとは、いつになって終おわるでしょうか」と。12:7 かの亜麻あま布ぬのを着きて、川かわの水みずの上うえにいた人ひとが、天てんに向むかって、その右みぎの手てと左ひだりの手てをあげ、永遠えいえんに生いける者ものをさして誓ちかい、それは、ひと時ときとふた時ときと半時はんときである。聖せいなる民たみを打うち砕くだく力ちからが消きえ去さる時ときに、これらの事ことはみな成就じょうじゅするだろうと言いうのを、わたしは聞きいた。12:8 わたしはこれを聞きいたけれども悟さとれなかった。わたしは言いった、「わが主しゅよ、これらの事ことの結末けつまつはどんなでしょうか」。 12:9 彼かれは言いった、「ダニエルよ、あなたの道みちを行いきなさい。この言葉ことばは終おわりの時ときまで秘ひし、かつ封ふうじておかれます。12:10 多おおくの者ものは、自分じぶんを清きよめ、自分じぶんを白しろくし、かつ練ねられるでしょう。しかし、悪わるい者ものは悪わるい事ことをおこない、ひとりも悟さとることはないが、賢かしこい者ものは悟さとるでしょう。 12:11 常供じょうくの燔祭はんさいが取すり除のぞかれ、荒あらす憎にくむべきものが立たてられる時ときから、千二百九十日にちが定さだめられている。12:12 待まっていて千三百三十五日にちに至いたる者ものはさいわいです。12:13 しかし、終おわりまであなたの道みちを行いきなさい。あなたは休やすみに入はいり、定さだめられた日ひの終おわりに立たって、あなたの分ぶんを受うけるでしょう」。
10:1 ペルシャの王おうクロスの第だい三年ねんに、ベルテシャザルと名なづけられたダニエルに、一つの言葉ことばが啓示けいじされたが、その言葉ことばは真実しんじつであり、大おおいなる戦たたかいを意味いみするものであった。彼かれはその言葉ことばに心こころを留とめ、その幻まぼろしを悟さとった。
10:2 そのころ、われダニエルは三週しゅうの間あいだ、悲かなしんでいた。
10:3 すなわち三週間しゅうかんの全まったく満みちるまでは、うまい物ものを食たべず、肉にくと酒さけとを口くちにせず、また身みに油あぶらを塗ぬらなかった。
10:4 正月しょうがつの二十四日かに、わたしがチグリスという大川おおかわの岸きしに立たっていたとき、
10:5 目めをあげて望のぞみ見みると、ひとりの人ひとがいて、亜麻あま布ぬのの衣ころもを着き、ウパズの金きんの帯おびを腰こしにしめていた。
10:6 そのからだは緑柱石りょくちゅうせきのごとく、その顔かおは電光でんこうのごとく、その目めは燃もえるたいまつのごとく、その腕うでと足あしは、みがいた青銅せいどうのように輝かがやき、その言葉ことばの声こえは、群衆ぐんしゅうの声こえのようであった。
10:7 この幻まぼろしを見みた者ものは、われダニエルのみであって、わたしと共ともにいた人々ひとびとは、この幻まぼろしを見みなかったが、彼かれらは大おおいにおののいて、逃にげかくれた。
10:8 それでわたしひとり残のこって、この大おおいなる幻まぼろしを見みたので、力ちからが抜ぬけ去さり、わが顔かおの輝かがやきは恐おそろしく変かわって、全まったく力ちからがなくなった。
10:9 わたしはその言葉ことばの声こえを聞きいたが、その言葉ことばの声こえを聞きいたとき、顔かおを伏ふせ、地ちにひれ伏ふして、深ふかい眠ねむりに陥おちいった。
10:10 見みよ、一つの手てがあって、わたしに触ふれたので、わたしは震ふるえながらひざまずき、手てをつくと、
10:11 彼かれはわたしに言いった、「大おおいに愛あいせられる人ひとダニエルよ、わたしがあなたに告つげる言葉ことばに心こころを留とめ、立たちあがりなさい。わたしは今いまあなたのもとにつかわされたのです」。彼かれがこの言葉ことばをわたしに告つげているとき、わたしは震ふるえながら立たちあがった。
10:12 すると彼かれはわたしに言いった、「ダニエルよ、恐おそれるに及およばない。あなたが悟さとろうと心こころをこめ、あなたの神かみの前まえに身みを悩なやましたその初はじめの日ひから、あなたの言葉ことばは、すでに聞きかれたので、わたしは、あなたの言葉ことばのゆえにきたのです。
10:13 ペルシャの国くにの君きみが、二十一日にちの間あいだわたしの前まえに立たちふさがったが、天使てんしの長ちょうのひとりであるミカエルがきて、わたしを助たすけたので、わたしは、彼かれをペルシャの国くにの君きみと共ともに、そこに残のこしておき、
10:14 末すえの日ひに、あなたの民たみに臨のぞまんとする事ことを、あなたに悟さとらせるためにきたのです。この幻まぼろしは、なおきたるべき日ひにかかわるものです」。
10:15 彼かれがこれらの言葉ことばを、わたしに述のべていたとき、わたしは、地ちにひれ伏ふして黙だまっていたが、
10:16 見みよ、人ひとの子このような者ものが、わたしのくちびるにさわったので、わたしは口くちを開ひらき、わが前まえに立たっている者ものに語かたって言いった、「わが主しゅよ、この幻まぼろしによって、苦くるしみがわたしに臨のぞみ、全まったく力ちからを失うしないました。
10:17 わが主しゅのしもべは、どうしてわが主しゅと語かたることができましょう。わたしは全まったく力ちからを失うしない、息いきも止とまるばかりです」。
10:18 人ひとの形かたちをした者ものは、再ふたたびわたしにさわり、わたしを力ちからづけて、
10:19 言いった、「大おおいに愛あいせられる人ひとよ、恐おそれるには及およばない。安心あんしんしなさい。心こころを強つよくし、勇気ゆうきを出だしなさい」。彼かれがこう言いったとき、わたしは力ちからづいて言いった、「わが主しゅよ、語かたってください。あなたは、わたしに力ちからをつけてくださったから」。
10:20 そこで彼かれは言いった、「あなたは、わたしがなんのためにきたかを知しっていますか。わたしは、今いま帰かえっていって、ペルシャの君きみと戦たたかおうとしているのです。彼かれとの戦たたかいがすむと、ギリシヤの君きみがあらわれるでしょう。
10:21 しかしわたしは、まず真理しんりの書しょにしるされている事ことを、あなたに告つげよう。わたしを助たすけて、彼かれらと戦たたかう者ものは、あなたがたの君きみミカエルのほかにはありません。
第11章 11:1 わたしはまたメデアびとダリヨスの元年がんねんに立たって彼かれを強つよめ、彼かれを力ちからづけたことがあります。 11:2 わたしは今いまあなたに真理しんりを示しめそう。見みよ、ペルシャになお三人にんの王おうが起おこるでしょう。その第だい四の者ものは、他たのすべての者ものにまさって富とみ、その富とみによって強つよくなったとき、彼かれはすべてのものを動員どういんして、ギリシヤの国くにを攻せめます。11:3 またひとりの勇いさましい王おうが起おこり、大おおいなる権力けんりょくをもって世よを治おさめ、その意いのままに事ことをなすでしょう。11:4 彼かれが強つよくなった時とき、その国くには破やぶられ、天てんの四方しほうに分わかたれます。それは彼かれの子孫しそんに帰きせず、また彼かれが治おさめたほどの権力けんりょくもなく、彼かれの国くには抜ぬき取とられて、これら以外いがいの者ものどもに帰きするでしょう。 11:5 南みなみの王おうは強つよくなります。しかしその将軍しょうぐんのひとりが、彼かれにまさって強つよくなり、権力けんりょくをふるいます。その権力けんりょくは、大おおいなる権力けんりょくです。11:6 年としを経へて後のち、彼かれらは縁組えんぐみをなし、南みなみの王おうの娘むすめが、北きたの王おうにきて、和親わしんをはかります。しかしその女おんなは、その腕うでの力ちからを保たもつことができず、またその王おうも、その子こも立たつことができません。その女おんなと、その従者じゅうしゃと、その子こおよびその女おんなを獲えた者ものとは、わたされるでしょう。 11:7 そのころ、この女おんなの根ねから、一つの芽めが起おこって彼かれに代かわり、北きたの王おうの軍勢ぐんぜいにむかってきて、その城しろに討うち入いり、これを攻せめて勝かつでしょう。11:8 彼かれはまた彼かれらの神々かみがみ、鋳い像ぞうおよび金銀きんぎんの貴重きちょうな器物うつわものを、エジプトに携たずさえ去さり、そして数年すうねんの間あいだ、北きたの王おうを討うつことを控ひかえます。11:9 その後のち、北きたの王おうは、南みなみの王おうの国くにに討うち入はいるが、自分じぶんの国くにに帰かえるでしょう。 11:10 その子こらはまた憤激ふんげきして、あまたの大軍たいぐんを集あつめ、進すすんで行いって、みなぎりあふれ、通とおり過すぎるが、また行いって、その城しろにまで攻せめ寄よせるでしょう。11:11 そこで南みなみの王おうは、大おおいに怒いかり、出でてきて北きたの王おうと戦たたかいます。彼かれは大軍たいぐんを起おこすけれども、その軍ぐんは相手あいての手てにわたされるでしょう。11:12 彼かれがその軍ぐんを打うち破やぶったとき、その心こころは高たかぶり、数すう万まん人にんを倒たおします。しかし、勝かつことはありません。11:13 それは北きたの王おうがまた初はじめよりも大おおいなる軍ぐんを起おこし、数年すうねんの後のち、大おおいなる軍勢ぐんぜいと多おおくの軍需ぐんじゅ品ひんとをもって、攻せめて来くるからです。 11:14 そのころ多おおくの者ものが起おこって、南みなみの王おうに敵てきします。またあなたの民たみのうちのあらくれ者ものが、みずから高たかぶって事ことをなし、幻まぼろしを成就じょうじゅしようとするが失敗しっぱいするでしょう。11:15 こうして北きたの王おうがきて、塁るいを築きずき、堅固けんごな町まちを取とるが、南みなみの王おうの力ちからは、これに立たち向むかうことができず、またそのえり抜ぬきの民たみも、これに立たち向むかう力ちからがありません。11:16 これに攻せめて来くる者ものは、その心こころのままに事ことをなし、その前まえに立たち向むかうことのできる者ものはなく、彼かれは麗うるわしい地ちに立たち、その地ちは全まったく彼かれのために荒あらされます。11:17 彼かれは全国ぜんこくの力ちからをもって討うち入はいろうと、その顔かおを向むけるが、相手あいてと仲直なかなおりをし、その娘むすめを与あたえて、その国くにを取とろうとします。しかし、その事ことは成ならず、また彼かれの利益りえきにはならないでしょう。11:18 その後のち、彼かれは顔かおを海沿うみぞいの国々くにぐにに向むけて、その多おおくのものを取とります。しかし、ひとりの大将たいしょうがあって、彼かれが与あたえた恥辱ちじょくをそそぎ、その恥辱ちじょくを彼かれの上うえに返かえします。11:19 こうして彼かれは、その顔かおを自分じぶんの国くにの要害ようがいに向むけるが、彼かれはつまずき倒たおれて消きえうせるでしょう。 11:20 彼かれに代かわって起おこる者ものは、栄光えいこうの国くにに人ひとをつかわして、租税そぜいを取とり立たてさせるでしょう。しかし彼かれは、怒いかりにも戦たたかいにもよらず、数日すうじつのうちに滅ほろぼされます。11:21 彼かれに代かわって起おこる者ものは、卑いやしむべき者ものであって、彼かれには、王おうの尊厳そんげんが与あたえられず、彼かれは不意ふいにきて、巧言こうげんをもって国くにを獲えるでしょう。11:22 洪水こうずいのような軍勢ぐんぜいは、彼かれの前まえに押おし流ながされて敗やぶられ、契約けいやくの君きみたる者ものもまた敗やぶられるでしょう。11:23 彼かれは、これと同盟どうめいを結むすんで後のち、偽いつわりのおこないをなし、わずかな民たみをもって強つよくなり、11:24 不意ふいにその州しゅうの最もっとも肥こえた所ところに攻せめ入いり、その父ちちも、その父ちちの父ちちもしなかった事ことをおこない、その奪うばった物もの、かすめた物ものおよび財宝ざいほうを、人々ひとびとの中なかに散ちらすでしょう。彼かれはまた計略けいりゃくをめぐらして、堅固けんごな城しろを攻せめるが、ただし、それは時ときの至いたるまでです。11:25 彼かれはその勢力せいりょくと勇気ゆうきとを奮ふるい起おこし、大軍たいぐんを率ひきいて南みなみの王おうを攻せめます。南みなみの王おうもまたみずから奮ふるい、はなはだ大おおいなる強力きょうりょくな軍勢ぐんぜいをもって戦たたかいます。しかし、彼かれに対たいして、陰謀いんぼうをめぐらす者ものがあるので、これに立たち向むかうことができません。11:26 すなわち彼かれの食物しょくもつを食たべる者ものたちが、彼かれを滅ほろぼします。そして、その軍勢ぐんぜいは押おし流ながされて、多おおくの者ものが倒たおれ死しぬでしょう。11:27 このふたりの王おうは、害がいを与あたえようと心こころにはかり、ひとつ食卓しょくたくに共ともに食しょくして、偽いつわりを語かたるが、それは成功せいこうしません。終おわりはなお定さだまった時ときの来くるまでこないからです。11:28 彼かれは大おおいなる財宝ざいほうをもって、自分じぶんの国くにに帰かえるでしょう。しかし、彼かれの心こころは聖せいなる契約けいやくにそむき、ほしいままに事ことをなして、自分じぶんの国くにに帰かえります。 11:29 定さだまった時ときになって、彼かれはまた南みなみに討うち入いります。しかし、この時ときは前まえの時ときのようではありません。11:30 それはキッテムの船ふねが、彼かれに立たち向むかって来くるので、彼かれは脅おびやかされて帰かえり、聖せいなる契約けいやくに対たいして憤いきどおり、事ことを行おこなうでしょう。彼かれは帰かえっていって、聖せいなる契約けいやくを捨すてる者ものを顧かえりみ用もちいるでしょう。11:31 彼かれから軍勢ぐんぜいが起おこって、神殿しんでんと城郭じょうかくを汚けがし、常供じょうくの燔祭はんさいを取とり除のぞき、荒あらす憎にくむべきものを立たてるでしょう。11:32 彼かれは契約けいやくを破やぶる者ものどもを、巧言こうげんをもってそそのかし、そむかせるが、自分じぶんの神かみを知しる民たみは、堅かたく立たって事ことを行おこないます。11:33 民たみのうちの賢かしこい人々ひとびとは、多おおくの人ひとを悟さとりに至いたらせます。それでも、彼かれらはしばらくの間あいだ、やいばにかかり、火ひに焼やかれ、捕とらわれ、かすめられなどして倒たおれます。11:34 その倒たおれるとき、彼かれらは少すこしの助たすけを獲えます。また多おおくの人ひとが、巧言こうげんをもって彼かれらにくみするでしょう。11:35 また賢かしこい者もののうちのある者ものは、終おわりの時ときまで、自分じぶんを練ねり、清きよめ、白しろくするために倒たおれるでしょう。終おわりはなお定さだまった時ときの来くるまでこないからです。 11:36 この王おうは、その心こころのままに事ことをおこない、すべての神かみを越こえて、自分じぶんを高たかくし、自分じぶんを大おおいにし、神々かみがみの神かみたる者ものにむかって、驚おどろくべき事ことを語かたり、憤いきどおりのやむ時ときまで栄さかえるでしょう。これは定さだめられた事ことが成就じょうじゅするからです。11:37 彼かれはその先祖せんぞの神々かみがみを顧かえりみず、また婦人ふじんの好このむ者ものも、いかなる神かみをも顧かえりみないでしょう。彼かれはすべてにまさって、自分じぶんを大おおいなる者ものとするからです。11:38 彼かれはこれらの者ものの代かわりに、要害ようがいの神かみをあがめ、金きん、銀ぎん、宝石ほうせき、および宝物たからものをもって、その先祖せんぞたちの知しらなかった神かみをあがめ、11:39 異邦いほうの神かみの助たすけによって、最もっとも強固きょうこな城しろにむかって、事ことをなすでしょう。そして彼かれを認みとめる者ものには、栄誉えいよを増まし与あたえ、これに多おおくの人ひとを治おさめさせ、賞与しょうよとして土地とちを分わけ与あたえるでしょう。 11:40 終おわりの時ときになって、南みなみの王おうは彼かれと戦たたかいます。北きたの王おうは、戦車せんしゃと騎兵きへいと、多おおくの船ふねをもって、つむじ風かぜのように彼かれを攻せめ、国々くにぐににはいっていって、みなぎりあふれ、通とおり過すぎるでしょう。11:41 彼かれはまた麗うるわしい国くににはいります。また彼かれによって、多おおくの者ものが滅ほろぼされます。しかし、エドム、モアブ、アンモンびとらのうちのおもな者ものは、彼かれの手てから救すくわれましょう。11:42 彼かれは国々くにぐににその手てを伸のばし、エジプトの地ちも免まぬかれません。11:43 彼かれは金銀きんぎんの財宝ざいほうと、エジプトのすべての宝物たからものを支配しはいし、リビヤびと、エチオピヤびとは、彼かれのあとに従したがいます。11:44 しかし東ひがしと北きたからの知しらせが彼かれを驚おどろかし、彼かれは多おおくの人ひとを滅ほろぼし絶たやそうと、大おおいなる怒いかりをもって出でて行いきます。11:45 彼かれは海うみと麗うるわしい聖山せいざんとの間あいだに、天幕てんまくの宮殿きゅうでんを設もうけるでしょう。しかし、彼かれはついにその終おわりにいたり、彼かれを助たすける者ものはないでしょう。 第12章 12:1 その時ときあなたの民たみを守まもっている大おおいなる君きみミカエルが立たちあがります。また国くにが始はじまってから、その時ときにいたるまで、かつてなかったほどの悩なやみの時ときがあるでしょう。しかし、その時ときあなたの民たみは救すくわれます。すなわちあの書しょに名なをしるされた者ものは皆みな救すくわれます。12:2 また地ちのちりの中なかに眠ねむっている者もののうち、多おおくの者ものは目めをさますでしょう。そのうち永遠えいえんの生命せいめいにいたる者ものもあり、また恥はじと、限かぎりなき恥辱ちじょくをうける者ものもあるでしょう。12:3 賢かしこい者ものは、大空おおぞらの輝かがやきのように輝かがやき、また多おおくの人ひとを義ぎに導みちびく者ものは、星ほしのようになって永遠えいえんにいたるでしょう。12:4 ダニエルよ、あなたは終おわりの時ときまでこの言葉ことばを秘ひし、この書しょを封ふうじておきなさい。多おおくの者ものは、あちこちと探さぐり調しらべ、そして知識ちしきが増ますでしょう」。 12:5 そこで、われダニエルが見みていると、ほかにまたふたりの者ものがあって、ひとりは川かわのこなたの岸きしに、ひとりは川かわのかなたの岸きしに立たっていた。12:6 わたしは、かの亜麻あま布ぬのを着きて川かわの水みずの上うえにいる人ひとにむかって言いった、「この異常いじょうなできごとは、いつになって終おわるでしょうか」と。12:7 かの亜麻あま布ぬのを着きて、川かわの水みずの上うえにいた人ひとが、天てんに向むかって、その右みぎの手てと左ひだりの手てをあげ、永遠えいえんに生いける者ものをさして誓ちかい、それは、ひと時ときとふた時ときと半時はんときである。聖せいなる民たみを打うち砕くだく力ちからが消きえ去さる時ときに、これらの事ことはみな成就じょうじゅするだろうと言いうのを、わたしは聞きいた。12:8 わたしはこれを聞きいたけれども悟さとれなかった。わたしは言いった、「わが主しゅよ、これらの事ことの結末けつまつはどんなでしょうか」。 12:9 彼かれは言いった、「ダニエルよ、あなたの道みちを行いきなさい。この言葉ことばは終おわりの時ときまで秘ひし、かつ封ふうじておかれます。12:10 多おおくの者ものは、自分じぶんを清きよめ、自分じぶんを白しろくし、かつ練ねられるでしょう。しかし、悪わるい者ものは悪わるい事ことをおこない、ひとりも悟さとることはないが、賢かしこい者ものは悟さとるでしょう。 12:11 常供じょうくの燔祭はんさいが取すり除のぞかれ、荒あらす憎にくむべきものが立たてられる時ときから、千二百九十日にちが定さだめられている。12:12 待まっていて千三百三十五日にちに至いたる者ものはさいわいです。12:13 しかし、終おわりまであなたの道みちを行いきなさい。あなたは休やすみに入はいり、定さだめられた日ひの終おわりに立たって、あなたの分ぶんを受うけるでしょう」。
11:1 わたしはまたメデアびとダリヨスの元年がんねんに立たって彼かれを強つよめ、彼かれを力ちからづけたことがあります。
11:2 わたしは今いまあなたに真理しんりを示しめそう。見みよ、ペルシャになお三人にんの王おうが起おこるでしょう。その第だい四の者ものは、他たのすべての者ものにまさって富とみ、その富とみによって強つよくなったとき、彼かれはすべてのものを動員どういんして、ギリシヤの国くにを攻せめます。
11:3 またひとりの勇いさましい王おうが起おこり、大おおいなる権力けんりょくをもって世よを治おさめ、その意いのままに事ことをなすでしょう。
11:4 彼かれが強つよくなった時とき、その国くには破やぶられ、天てんの四方しほうに分わかたれます。それは彼かれの子孫しそんに帰きせず、また彼かれが治おさめたほどの権力けんりょくもなく、彼かれの国くには抜ぬき取とられて、これら以外いがいの者ものどもに帰きするでしょう。
11:5 南みなみの王おうは強つよくなります。しかしその将軍しょうぐんのひとりが、彼かれにまさって強つよくなり、権力けんりょくをふるいます。その権力けんりょくは、大おおいなる権力けんりょくです。
11:6 年としを経へて後のち、彼かれらは縁組えんぐみをなし、南みなみの王おうの娘むすめが、北きたの王おうにきて、和親わしんをはかります。しかしその女おんなは、その腕うでの力ちからを保たもつことができず、またその王おうも、その子こも立たつことができません。その女おんなと、その従者じゅうしゃと、その子こおよびその女おんなを獲えた者ものとは、わたされるでしょう。
11:7 そのころ、この女おんなの根ねから、一つの芽めが起おこって彼かれに代かわり、北きたの王おうの軍勢ぐんぜいにむかってきて、その城しろに討うち入いり、これを攻せめて勝かつでしょう。
11:8 彼かれはまた彼かれらの神々かみがみ、鋳い像ぞうおよび金銀きんぎんの貴重きちょうな器物うつわものを、エジプトに携たずさえ去さり、そして数年すうねんの間あいだ、北きたの王おうを討うつことを控ひかえます。
11:9 その後のち、北きたの王おうは、南みなみの王おうの国くにに討うち入はいるが、自分じぶんの国くにに帰かえるでしょう。
11:10 その子こらはまた憤激ふんげきして、あまたの大軍たいぐんを集あつめ、進すすんで行いって、みなぎりあふれ、通とおり過すぎるが、また行いって、その城しろにまで攻せめ寄よせるでしょう。
11:11 そこで南みなみの王おうは、大おおいに怒いかり、出でてきて北きたの王おうと戦たたかいます。彼かれは大軍たいぐんを起おこすけれども、その軍ぐんは相手あいての手てにわたされるでしょう。
11:12 彼かれがその軍ぐんを打うち破やぶったとき、その心こころは高たかぶり、数すう万まん人にんを倒たおします。しかし、勝かつことはありません。
11:13 それは北きたの王おうがまた初はじめよりも大おおいなる軍ぐんを起おこし、数年すうねんの後のち、大おおいなる軍勢ぐんぜいと多おおくの軍需ぐんじゅ品ひんとをもって、攻せめて来くるからです。
11:14 そのころ多おおくの者ものが起おこって、南みなみの王おうに敵てきします。またあなたの民たみのうちのあらくれ者ものが、みずから高たかぶって事ことをなし、幻まぼろしを成就じょうじゅしようとするが失敗しっぱいするでしょう。
11:15 こうして北きたの王おうがきて、塁るいを築きずき、堅固けんごな町まちを取とるが、南みなみの王おうの力ちからは、これに立たち向むかうことができず、またそのえり抜ぬきの民たみも、これに立たち向むかう力ちからがありません。
11:16 これに攻せめて来くる者ものは、その心こころのままに事ことをなし、その前まえに立たち向むかうことのできる者ものはなく、彼かれは麗うるわしい地ちに立たち、その地ちは全まったく彼かれのために荒あらされます。
11:17 彼かれは全国ぜんこくの力ちからをもって討うち入はいろうと、その顔かおを向むけるが、相手あいてと仲直なかなおりをし、その娘むすめを与あたえて、その国くにを取とろうとします。しかし、その事ことは成ならず、また彼かれの利益りえきにはならないでしょう。
11:18 その後のち、彼かれは顔かおを海沿うみぞいの国々くにぐにに向むけて、その多おおくのものを取とります。しかし、ひとりの大将たいしょうがあって、彼かれが与あたえた恥辱ちじょくをそそぎ、その恥辱ちじょくを彼かれの上うえに返かえします。
11:19 こうして彼かれは、その顔かおを自分じぶんの国くにの要害ようがいに向むけるが、彼かれはつまずき倒たおれて消きえうせるでしょう。
11:20 彼かれに代かわって起おこる者ものは、栄光えいこうの国くにに人ひとをつかわして、租税そぜいを取とり立たてさせるでしょう。しかし彼かれは、怒いかりにも戦たたかいにもよらず、数日すうじつのうちに滅ほろぼされます。
11:21 彼かれに代かわって起おこる者ものは、卑いやしむべき者ものであって、彼かれには、王おうの尊厳そんげんが与あたえられず、彼かれは不意ふいにきて、巧言こうげんをもって国くにを獲えるでしょう。
11:22 洪水こうずいのような軍勢ぐんぜいは、彼かれの前まえに押おし流ながされて敗やぶられ、契約けいやくの君きみたる者ものもまた敗やぶられるでしょう。
11:23 彼かれは、これと同盟どうめいを結むすんで後のち、偽いつわりのおこないをなし、わずかな民たみをもって強つよくなり、
11:24 不意ふいにその州しゅうの最もっとも肥こえた所ところに攻せめ入いり、その父ちちも、その父ちちの父ちちもしなかった事ことをおこない、その奪うばった物もの、かすめた物ものおよび財宝ざいほうを、人々ひとびとの中なかに散ちらすでしょう。彼かれはまた計略けいりゃくをめぐらして、堅固けんごな城しろを攻せめるが、ただし、それは時ときの至いたるまでです。
11:25 彼かれはその勢力せいりょくと勇気ゆうきとを奮ふるい起おこし、大軍たいぐんを率ひきいて南みなみの王おうを攻せめます。南みなみの王おうもまたみずから奮ふるい、はなはだ大おおいなる強力きょうりょくな軍勢ぐんぜいをもって戦たたかいます。しかし、彼かれに対たいして、陰謀いんぼうをめぐらす者ものがあるので、これに立たち向むかうことができません。
11:26 すなわち彼かれの食物しょくもつを食たべる者ものたちが、彼かれを滅ほろぼします。そして、その軍勢ぐんぜいは押おし流ながされて、多おおくの者ものが倒たおれ死しぬでしょう。
11:27 このふたりの王おうは、害がいを与あたえようと心こころにはかり、ひとつ食卓しょくたくに共ともに食しょくして、偽いつわりを語かたるが、それは成功せいこうしません。終おわりはなお定さだまった時ときの来くるまでこないからです。
11:28 彼かれは大おおいなる財宝ざいほうをもって、自分じぶんの国くにに帰かえるでしょう。しかし、彼かれの心こころは聖せいなる契約けいやくにそむき、ほしいままに事ことをなして、自分じぶんの国くにに帰かえります。
11:29 定さだまった時ときになって、彼かれはまた南みなみに討うち入いります。しかし、この時ときは前まえの時ときのようではありません。
11:30 それはキッテムの船ふねが、彼かれに立たち向むかって来くるので、彼かれは脅おびやかされて帰かえり、聖せいなる契約けいやくに対たいして憤いきどおり、事ことを行おこなうでしょう。彼かれは帰かえっていって、聖せいなる契約けいやくを捨すてる者ものを顧かえりみ用もちいるでしょう。
11:31 彼かれから軍勢ぐんぜいが起おこって、神殿しんでんと城郭じょうかくを汚けがし、常供じょうくの燔祭はんさいを取とり除のぞき、荒あらす憎にくむべきものを立たてるでしょう。
11:32 彼かれは契約けいやくを破やぶる者ものどもを、巧言こうげんをもってそそのかし、そむかせるが、自分じぶんの神かみを知しる民たみは、堅かたく立たって事ことを行おこないます。
11:33 民たみのうちの賢かしこい人々ひとびとは、多おおくの人ひとを悟さとりに至いたらせます。それでも、彼かれらはしばらくの間あいだ、やいばにかかり、火ひに焼やかれ、捕とらわれ、かすめられなどして倒たおれます。
11:34 その倒たおれるとき、彼かれらは少すこしの助たすけを獲えます。また多おおくの人ひとが、巧言こうげんをもって彼かれらにくみするでしょう。
11:35 また賢かしこい者もののうちのある者ものは、終おわりの時ときまで、自分じぶんを練ねり、清きよめ、白しろくするために倒たおれるでしょう。終おわりはなお定さだまった時ときの来くるまでこないからです。
11:36 この王おうは、その心こころのままに事ことをおこない、すべての神かみを越こえて、自分じぶんを高たかくし、自分じぶんを大おおいにし、神々かみがみの神かみたる者ものにむかって、驚おどろくべき事ことを語かたり、憤いきどおりのやむ時ときまで栄さかえるでしょう。これは定さだめられた事ことが成就じょうじゅするからです。
11:37 彼かれはその先祖せんぞの神々かみがみを顧かえりみず、また婦人ふじんの好このむ者ものも、いかなる神かみをも顧かえりみないでしょう。彼かれはすべてにまさって、自分じぶんを大おおいなる者ものとするからです。
11:38 彼かれはこれらの者ものの代かわりに、要害ようがいの神かみをあがめ、金きん、銀ぎん、宝石ほうせき、および宝物たからものをもって、その先祖せんぞたちの知しらなかった神かみをあがめ、
11:39 異邦いほうの神かみの助たすけによって、最もっとも強固きょうこな城しろにむかって、事ことをなすでしょう。そして彼かれを認みとめる者ものには、栄誉えいよを増まし与あたえ、これに多おおくの人ひとを治おさめさせ、賞与しょうよとして土地とちを分わけ与あたえるでしょう。
11:40 終おわりの時ときになって、南みなみの王おうは彼かれと戦たたかいます。北きたの王おうは、戦車せんしゃと騎兵きへいと、多おおくの船ふねをもって、つむじ風かぜのように彼かれを攻せめ、国々くにぐににはいっていって、みなぎりあふれ、通とおり過すぎるでしょう。
11:41 彼かれはまた麗うるわしい国くににはいります。また彼かれによって、多おおくの者ものが滅ほろぼされます。しかし、エドム、モアブ、アンモンびとらのうちのおもな者ものは、彼かれの手てから救すくわれましょう。
11:42 彼かれは国々くにぐににその手てを伸のばし、エジプトの地ちも免まぬかれません。
11:43 彼かれは金銀きんぎんの財宝ざいほうと、エジプトのすべての宝物たからものを支配しはいし、リビヤびと、エチオピヤびとは、彼かれのあとに従したがいます。
11:44 しかし東ひがしと北きたからの知しらせが彼かれを驚おどろかし、彼かれは多おおくの人ひとを滅ほろぼし絶たやそうと、大おおいなる怒いかりをもって出でて行いきます。
11:45 彼かれは海うみと麗うるわしい聖山せいざんとの間あいだに、天幕てんまくの宮殿きゅうでんを設もうけるでしょう。しかし、彼かれはついにその終おわりにいたり、彼かれを助たすける者ものはないでしょう。
第12章 12:1 その時ときあなたの民たみを守まもっている大おおいなる君きみミカエルが立たちあがります。また国くにが始はじまってから、その時ときにいたるまで、かつてなかったほどの悩なやみの時ときがあるでしょう。しかし、その時ときあなたの民たみは救すくわれます。すなわちあの書しょに名なをしるされた者ものは皆みな救すくわれます。12:2 また地ちのちりの中なかに眠ねむっている者もののうち、多おおくの者ものは目めをさますでしょう。そのうち永遠えいえんの生命せいめいにいたる者ものもあり、また恥はじと、限かぎりなき恥辱ちじょくをうける者ものもあるでしょう。12:3 賢かしこい者ものは、大空おおぞらの輝かがやきのように輝かがやき、また多おおくの人ひとを義ぎに導みちびく者ものは、星ほしのようになって永遠えいえんにいたるでしょう。12:4 ダニエルよ、あなたは終おわりの時ときまでこの言葉ことばを秘ひし、この書しょを封ふうじておきなさい。多おおくの者ものは、あちこちと探さぐり調しらべ、そして知識ちしきが増ますでしょう」。 12:5 そこで、われダニエルが見みていると、ほかにまたふたりの者ものがあって、ひとりは川かわのこなたの岸きしに、ひとりは川かわのかなたの岸きしに立たっていた。12:6 わたしは、かの亜麻あま布ぬのを着きて川かわの水みずの上うえにいる人ひとにむかって言いった、「この異常いじょうなできごとは、いつになって終おわるでしょうか」と。12:7 かの亜麻あま布ぬのを着きて、川かわの水みずの上うえにいた人ひとが、天てんに向むかって、その右みぎの手てと左ひだりの手てをあげ、永遠えいえんに生いける者ものをさして誓ちかい、それは、ひと時ときとふた時ときと半時はんときである。聖せいなる民たみを打うち砕くだく力ちからが消きえ去さる時ときに、これらの事ことはみな成就じょうじゅするだろうと言いうのを、わたしは聞きいた。12:8 わたしはこれを聞きいたけれども悟さとれなかった。わたしは言いった、「わが主しゅよ、これらの事ことの結末けつまつはどんなでしょうか」。 12:9 彼かれは言いった、「ダニエルよ、あなたの道みちを行いきなさい。この言葉ことばは終おわりの時ときまで秘ひし、かつ封ふうじておかれます。12:10 多おおくの者ものは、自分じぶんを清きよめ、自分じぶんを白しろくし、かつ練ねられるでしょう。しかし、悪わるい者ものは悪わるい事ことをおこない、ひとりも悟さとることはないが、賢かしこい者ものは悟さとるでしょう。 12:11 常供じょうくの燔祭はんさいが取すり除のぞかれ、荒あらす憎にくむべきものが立たてられる時ときから、千二百九十日にちが定さだめられている。12:12 待まっていて千三百三十五日にちに至いたる者ものはさいわいです。12:13 しかし、終おわりまであなたの道みちを行いきなさい。あなたは休やすみに入はいり、定さだめられた日ひの終おわりに立たって、あなたの分ぶんを受うけるでしょう」。
12:1 その時ときあなたの民たみを守まもっている大おおいなる君きみミカエルが立たちあがります。また国くにが始はじまってから、その時ときにいたるまで、かつてなかったほどの悩なやみの時ときがあるでしょう。しかし、その時ときあなたの民たみは救すくわれます。すなわちあの書しょに名なをしるされた者ものは皆みな救すくわれます。
12:2 また地ちのちりの中なかに眠ねむっている者もののうち、多おおくの者ものは目めをさますでしょう。そのうち永遠えいえんの生命せいめいにいたる者ものもあり、また恥はじと、限かぎりなき恥辱ちじょくをうける者ものもあるでしょう。
12:3 賢かしこい者ものは、大空おおぞらの輝かがやきのように輝かがやき、また多おおくの人ひとを義ぎに導みちびく者ものは、星ほしのようになって永遠えいえんにいたるでしょう。
12:4 ダニエルよ、あなたは終おわりの時ときまでこの言葉ことばを秘ひし、この書しょを封ふうじておきなさい。多おおくの者ものは、あちこちと探さぐり調しらべ、そして知識ちしきが増ますでしょう」。
12:5 そこで、われダニエルが見みていると、ほかにまたふたりの者ものがあって、ひとりは川かわのこなたの岸きしに、ひとりは川かわのかなたの岸きしに立たっていた。
12:6 わたしは、かの亜麻あま布ぬのを着きて川かわの水みずの上うえにいる人ひとにむかって言いった、「この異常いじょうなできごとは、いつになって終おわるでしょうか」と。
12:7 かの亜麻あま布ぬのを着きて、川かわの水みずの上うえにいた人ひとが、天てんに向むかって、その右みぎの手てと左ひだりの手てをあげ、永遠えいえんに生いける者ものをさして誓ちかい、それは、ひと時ときとふた時ときと半時はんときである。聖せいなる民たみを打うち砕くだく力ちからが消きえ去さる時ときに、これらの事ことはみな成就じょうじゅするだろうと言いうのを、わたしは聞きいた。
12:8 わたしはこれを聞きいたけれども悟さとれなかった。わたしは言いった、「わが主しゅよ、これらの事ことの結末けつまつはどんなでしょうか」。
12:9 彼かれは言いった、「ダニエルよ、あなたの道みちを行いきなさい。この言葉ことばは終おわりの時ときまで秘ひし、かつ封ふうじておかれます。
12:10 多おおくの者ものは、自分じぶんを清きよめ、自分じぶんを白しろくし、かつ練ねられるでしょう。しかし、悪わるい者ものは悪わるい事ことをおこない、ひとりも悟さとることはないが、賢かしこい者ものは悟さとるでしょう。
12:11 常供じょうくの燔祭はんさいが取すり除のぞかれ、荒あらす憎にくむべきものが立たてられる時ときから、千二百九十日にちが定さだめられている。
12:12 待まっていて千三百三十五日にちに至いたる者ものはさいわいです。
12:13 しかし、終おわりまであなたの道みちを行いきなさい。あなたは休やすみに入はいり、定さだめられた日ひの終おわりに立たって、あなたの分ぶんを受うけるでしょう」。